遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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今回はそんなに時間をおかずに投稿。

デュエルありです。


開幕の混沌

 本日は学園祭。

 

 デュエルスクールアベシ校は多くの人で賑わっていた。

 

「さて。折角外出したのですし、有用なデータを集めなければ」

 

「研究も程々にね、魔導院」

 

 二人組の少女や、

 

「それじゃあ、青眼倶楽部に突撃よ!」

 

 独り拳を突き上げた後周囲からの視線で正気に戻り赤面して走り去る少女や、

 

「俺の時代には、学園祭なんてなかったなー」

 

「アカデミアにもねぇな」

 

「私はそもそも、学校に行けませんでしたし」

 

「僕はあったけど、こんなに賑やかじゃなかったなぁ」

 

「ワタクシの学校はここと同じ程度の規模でしたね!」

 

「「「トマトには訊いてない」」」

 

「厳しい!?」

 

 白髪に緑のメッシュを入れた少年を筆頭とした五人組や、

 

「じゃま、全力で楽しむとするか!」

 

「まずは屋台全店たべあるきからか?」

 

「いや、購買で限定メニューがあるらしい。そっちもだな」

 

 三羽烏や、

 

「行くか」

 

『そうね。今日くらいは羽目を外していいんじゃないかしら?』

 

『そ~そ~♪』

 

「あ、射的だってさ♪ 賞品全部落としてやろうぜ♪」

 

 研究会の会長と副会長や、

 

「ん。遊兎、一緒に回ろ?」

 

「! お、おう! どこから回る?」

 

 兎と少女や、

 

「メイド服、似合ってるよ。遥」

 

「ちょ、名前! それに何でボクがー!?」

 

 ドS脳筋とその彼女や、

 

「生徒会が終わったら合流しましょう、遊羽」

 

「おう」

 

 もう夫婦でいいんじゃねえかという幼なじみ。

 

 そして、

 

「ほら、早く行こうぜ! 今日1日だけなんだからさ!」

 

「そうだね。折角ホッさんが繋げてくれたんだし」

 

 二人の、少年。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「祭りだ祭りだー! 買い食い祭りだー!」

 

「そのネタ、通じるか微妙じゃないか?」

 

「カードゲームアニメだけで二人ほどいるからな」

 

 どこかメタい話をしながら食べ歩きするのは、皆さんご存知三羽烏。彼らもクラスでの仕事はあるが、午後からであるために今のうちにメニューを制覇しようとしている。

 

「たこ焼きうめぇ、ピザもうめぇ、プリンもうめぇ!」

 

「あ、そっち(バディファイト)の方か」

 

「いや、ピザもあるからバトスピではないと言い切れないな」

 

 遊戯王のネタにしろよ。

 

「・・・・・・そろそろか」

 

 小一時間ほど散財した頃、ベンチで買ったものを食べていた星河は腰をあげる。

 

「ん? 何か用事か?」

 

「ああ」

 

 口の中のものを飲み込んで質問する孝之に、星河は頷く。

 

「ちょっとカチコミに行ってくる」

 

「いてら~」

 

 ヒラヒラと手を振る日向に軽く返しながら、星河は立ち去る。

 

(冥が青眼倶楽部に行くのなら、俺は真紅眼倶楽部に行くべきか? 少し心配だな・・・・・・)

 

『冥ならタキオンが付いていったぞ。問題はないと思うが』

 

 相棒とそんなやりとりをしながら。

 

「・・・・・・よし。じゃあオレは未来ある子供たちをソリティアの世界へ引きずり込むとするか」

 

「ほどほどになー」

 

 孝之もまた席を立ち、一人残された日向もまた、歩き出す。

 

 ゴミ捨て場に。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「皆の衆、青眼せんべいの売れ行きはどうだ!?」

 

「絶好調です部長!」

 

「ただ、青眼が食べられる姿に、我々の心は痛む一方です!」

 

 白髪青目の青年が問うと、同じような髪色目色の部員たちが答える。

 

「狼狽えるな! それも青眼を愛する心があれば乗り切れる! 自分を信じろ! そして青眼を信じろ! 全ては青眼のために!」

 

「「「全ては青眼のために!」」」

 

 もはや一種の宗教と化しているが、お客さんはこれも演出だろうと笑って見ている。

 

「・・・・・・うわぁ」

 

 そして、彼らを見てドン引きする少女が一人。

 

(これ、殴り込んでなんとかなるのかしら? まあ、最悪ドラゴン体になって逃げればいいわよね)

 

 黒髪でメイド服を着こなす少女はもちろん冥。殴り込みに来たものの、あまりのカオスさにどうすればいいのかわからない状況だ。

 

「(まあ、なるようになるわね)たのもー!」

 

 道場破りのようなことを言いながら青眼倶楽部の屋台に乗り込む冥。

 

「な、何だ貴様は!?」

 

「なんだかんだと訊かれたら、って違う!」

 

 ついノってしまった自分にセルフツッコミをし、改めてと仕切り直す。

 

「青眼なんて、ただの強くて観賞用にもなるだけのカードじゃない!」

 

「乗り込んで来て褒めるとかどんなカチコミだ!?」

 

「うっさいわね! そんな青眼よりも、混沌帝龍の方が素晴らしいと教えてあげるわ! デュエルしなさい!」

 

 部長と呼ばれていた青年をビシッと指刺し、決まったとドヤ顔する冥。

 

「よくわからんが・・・・・・いいだろう! デュエルならば受けて立つ!」

 

 青眼倶楽部の部長はカウンターを部員の一人に任せると、冥に付いて来いと合図し、屋台から出る。

 

「ここならば、往来の邪魔にもならず、店の宣伝もできる! 何より、青眼の白龍の勇姿を誰もが拝むことができる! 正にカンペキな場所だ!」

 

 彼らが向き合うのは、屋台の上。冥はスカートの中を気にしながらディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

LP8000

 

青眼倶楽部部長

LP8000

 

「私のターン、まずはカードガンナーを召喚、そして機械複製術! デッキから更に二体特殊召喚するわ!」

 

カードガンナー ☆3 攻撃力400

 

「カードガンナーの効果を発動! デッキからカードを三枚まで墓地に送って、その数だけ攻撃力を上げる! 三枚送って、これを三回」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900

 

 攻撃力が上がり、シュッシュとシャドーボクシングするカードガンナーだが、複製された方は守備表示のためあまり意味はない。

 

「フン、流石は潤滑油だな」

 

「カードガンナー二体でオーバーレイ! 来なさい、彼岸の旅人ダンテ!」

 

彼岸の旅人ダンテ ★3 守備力2500

 

 『お嬢ちゃん、オレの出番かい?』と笑みを向けるダンテをなるべく視界に入れないようにしながら、冥はデュエルを進める。

 

「ダンテの効果で、更に墓地を三枚肥やすわ。カードを伏せて、ターンエンド」

 

LP8000 手札2

場 エクストラ:彼岸の旅人ダンテ メイン:カードガンナー 魔法・罠:伏せカード

 

「ワンターンで墓地を十二枚肥やすとはな・・・・・・だが、オレはその上を行く! 魔法カード、名推理! さあ、レベルを宣言しろ!」

 

「当然8よ」

 

 部長のデッキからカードがめくられていく。

 

「チキンレース、成金ゴブリン、疑似空間、デビルズ・サンクチュアリ、疑似空間、モンスターゲート、青眼の亜白龍、スケープ・ゴート、ワンタイム・パスコード、ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン、閃刀起動エンゲージ、おろかな重葬、青眼の亜白龍、閃刀機ホーネット・ビット、成金ゴブリン、閃刀機関マルチロール、モンスターゲート、アームズ・ホール、手札抹殺、打ち出の小槌、ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン、青眼の白龍! レベル8のため墓地へ送られるが、問題ない。むしろいい」

 

 墓地へ送られたカードの内容からどんなデッキかわかった冥は、失敗したと言うように顔をしかめる。

 

「装備魔法カード、光の導き! 墓地の青眼の白龍を特殊召喚し装備! 青眼の白龍は、墓地のブルーアイズの数だけ攻撃できる! スゴイぞ~! カッコいいぞ~!」

 

青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 興奮のあまりおかしくなっている部長だが、それも仕方のないことと言えよう。

 

「そしておろかな重葬を発動! ライフを半分支払い、エクストラデッキから青眼の究極龍を墓地へ送る!」

 

青眼倶楽部部長

LP8000→4000

 

「バトルだ! 青眼の白龍で攻撃! 滅びのバースト・ストリーム、グォレンダァ!」

 

「うくっ!」

 

LP8000→5000→2000

 

 ブレスの直撃を受け、冥のモンスターは全滅し、ライフがごっそりと減る。

 

「墓地のネクロ・ガードナーの効果! 除外することで、攻撃は無効よ!」

 

 最後の攻撃をギリギリで防ぐ。

 

「仕留め損ねたか。ターンエンド。さあ、貴様のターンだ」

 

青眼倶楽部部長

LP4000 手札3

場 メイン:青眼の白龍 魔法・罠:光の導き(装備:青眼の白龍)

 

「・・・・・・私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見、伏せた『スキルドレイン』に目を向けるが、使わない方がいいと判断する。

 

「仕方ないわね。カオスの儀式を発動!」

 

「な、儀式魔法!?」

 

 部長が驚いた声をあげるが、それを無視して冥は墓地に触る。

 

「墓地の儀式魔人リリーサー、プレサイダー、デモリッシャーをコストとして除外し、儀式召喚! 混沌の力をモノにせし剣士よ、今その剣ですべてを切り裂け! おいで、私のエース! カオス・ソルジャー!」

 

カオス・ソルジャー ☆8 攻撃力3000

 

 混沌を司る剣士が儀式に応じて現れるなり冥に笑顔を向ける。

 

『やあマイハニー。相変わらず美しいね。その闇夜のように黒い髪、水晶のように透き通った瞳、スレンダーなボディと全てが、存在が美しい!』

 

「う、うっさいわね、デュエルに集中しなさい!」

 

 冥は顔を真っ赤に染め、小声で叫ぶという器用なことをする。

 

『いいじゃねぇか、お嬢ちゃん。こんないい男、そう居ないぜ?』

 

「ダンテも墓地からどうやって、って何で足透けてんのよ!? そんな演出いらないから!」

 

 ホラー系統が苦手なためか、半分悲鳴のような小声をあげる冥。

 

「貴様、一人で何をやっている?」

 

「・・・・・・気にしないで欲しいわ」

 

 怪訝そうな目を向けてくる部長に受け答えしながら、冥は周りから見えないようにカオス・ソルジャーの足をゲシゲシと蹴る。

 

「墓地のオッドアイズ・ドラゴンとダンテを除外して、混沌帝龍-終焉の使者-を特殊召喚!」

 

混沌帝龍-終焉の使者- ☆8 攻撃力3000

 

 ダンテが『お嬢ちゃん、そりゃないぜ・・・・・・』と言いながらかき消えたのと同時に、彼女自身である龍が君臨する。

 

「装備魔法、最強の盾! カオス・ソルジャーの攻撃力を、守備力の分アップする!」

 

カオス・ソルジャー 攻撃力3000→5500

 

 『ハニー、流石に盾二つで戦えというのは・・・・・・』というカオス・ソルジャーの声を無視し、冥は宣言する。

 

「バトルよ! カオス・ソルジャーで青眼の白龍を攻撃!」

 

『フッ、仕方ないね。ハニーのためだ、退場願おうか』

 

 二つとなった盾でカオス・ソルジャーは青眼の白龍を撲殺する。

 

青眼倶楽部部長

LP4000→1500

 

 儀式魔人の効果でドローするが、あまり重要ではない。

 

「クッ、まさか青眼がやられるとは・・・・・・」

 

 悔しそうに歯噛みする部長。勝負を急ぎ、おろかな重葬を使ったのが災いした。

 

「これでフィニッシュ! 混沌帝龍でダイレクトアタック! 終焉のカオス・ストリーム!」

 

「パクリか!? 攻撃名パクリだな!?」

 

 部長のツッコミは、混沌帝龍のブレスで掻き消された。

 

青眼倶楽部部長

LP1500→0

 

「ふぅ。これでわかったかしら。青眼の白龍よりも、混沌帝龍の方が素晴らしいってことが!」

 

 「この素晴らしい混沌帝龍に祝福を!」と両手をあげ勝ち誇った顔をした冥は、一仕事終えたと立ち去ろうとする。

 

 だが、事はそれで済まなかった。

 

「部長の敵ぃ!」

 

「かかれぇ!」

 

 青眼倶楽部の部員たちが、一斉にデュエルを仕掛けてくるかと思いきや、一列に並んで一人ずつデュエルを挑んできたからである。

 

「こ、こんな予定じゃなかったのにぃ!!」

 

 一人ずつのデュエルのため、勝てはするものの時間がかかり、冥は学園祭の殆どをここで過ごすことになった。




次回予告

他の方の遊戯王小説を読んでいると、凄くやる気が出て、一気に筆が進むんですよね。
すると何故かその作品の影響を受けてしまい、ネタを使ってしまうんです。
いつもネタを使わせてもらっている皆様、ありがとうございます。
そして、いつもすみません。

次回、『あとがきで書くことが無くなってきた』 デュエルスタンバイ!

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