遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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カクリヨノチザクラが可愛くて、モチベーションが上がったので二つ目・・・・・・と思ったら、日付変わってますね。

デュエル回です。


覇王と少年

「あれ? 覇王さんがいないんだけど?」

 

 モグモグとフランクフルトを頬張っていた黒髪の少年がふと周囲を見渡すと、彼らの主たる少年が見当たらない。

 

「っ!? そうでした、我が覇王は現在子供の姿でしたね。はぐれやすいことを忘れていました」

 

 そばにいた白髪の青年もそのことに気がつくと、しまったというように額に手を当てる。

 

「チッ! おいユーザ、お前保護者だろぉが。何見失ってんだよ!」

 

「煩いですね、ユーガ。今はそれどころじゃないでしょう。早く捜さねば」

 

 紫髪の少年は苛立ったように口の中のプランキッズキャンディを噛み砕き、辺りを見回す。

 

「なら、あそこにある青眼の白龍のモニュメントの前に集合だぁ」

 

 そう言うが早いか、校舎の方向に向けて走り出した。

 

「僕たちも行こう、ユーザさん」

 

「そうですね、ユーノ。私はあちらを捜します。あなたは向こうを」

 

「わかったよユーザさん!」

 

 そして、二人を覇王の捜索を開始した。

 

 

 ・・・・・・尚、もう一名行方不明者のトマトがいるが、完全に忘れられている。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ワンキル・ソリティア研究会。

 デュエルスクールきっての変人集団と呼ばれる彼らだが、出し物は至って普通のものだった。

 

「はーい、こちら、研究会のデッキ体験会でーす」

 

 結希が看板を掲げ、宣伝している通り、彼らの出し物はデッキ体験会。ここだけ見れば、とても普通のイベントだ。

 

「よろしくクマー。とっても楽しくて面白いクマよー」

 

 その横で客引きするのは、星河に指示された仕事、クマの着ぐるみによる宣伝をしている息吹だ。

 

「うわ、何だこのデッキ!? どうやって回すんだよ!?」

 

「こんなデッキを普段から使ってるとか、君たちキチガイか!?」

 

 部屋の中から聞こえるのは悲鳴やら怒声やら。

 そう、彼らは自分たちが作ったソリティアデッキを一般人に体験させているのだ。何て恐ろしいことを。

 

「うーん・・・・・・ミラnsネクロリベssデーモンssガンサーチ発動シンクロワンハンssミラコピ効果ネクロリベssデーモンssネクロサーチry」

 

「すいませんでした!!」

 

 その一角では、白髪に緑のメッシュが入った少年が、調子に乗ってマスタールール3で挑んできた部員を打ちのめしていた。

 

「全く、ここはこんな奴ら(キチガイ)ばっかりなのか? 何か三人ともはぐれちまったし」

 

「あはは、そうですねぇ。まあきっと、彼らなら見つけてくれますって! 気長に待ちましょう!」

 

 そう言って、トマトカラーの髪をした少年は笑った。

 

 二人がそんなやり取りをしていると、部室の扉が音を立てて開いた。

 驚いてそちらを見ると、そこには白髪でヘッドホンを首に掛けた少年がいた。

 

「えーと、研究会ってのはここであってますかね?」

 

「そうクマよー。ここが研究会クマー」

 

 クマニーサン言葉でしゃべりながら息吹が教えると、その少年は驚いてクマを二度見する。

 

「は、え? クマ? でもその声、息吹さん?」

 

「ん? オレを知ってるクマー?」

 

 首を傾げる息吹クマにその少年はあ、いえ、と手を顔の前で振って誤魔化す。

 

(うーん、若い頃の星河さんになら勝てるかなって来たけど、見当たんないなぁ・・・・・・って、え!?)

 

 部室を見回す少年の目に入ったのは白髪緑メッシュ。彼は驚いて声をあげる。

 

「何でここにズァーk「MA☆TTE! ネタバレはよくないからMA☆TTE!」あ、はい」

 

 それを一瞬緑色のオーラを出しながら高速移動し止める白髪緑メッシュ―――覇王。

 

「えーとですね、今はお忍びっていうか、そんな感じでして」

 

 秘密にして欲しいな、と振り子メンタルトマト―――二色は唇に人差し指を当ててささやく。

 

「あー、じゃあどうすっかなぁ。星河さんとデュエルしたくて来たんだけど・・・・・・」

 

 髪を掻きながら呟く少年に、覇王はならばと提案する。

 

「デュエルなら俺がするぜ。俺の正体を知ってるってことは、その実力もわかるだろ?」

 

 覇王はそう言ってディスクを構える。

 

「んー、そうだな。じゃあよろしく頼むよ覇王さん。俺は白羽(しろは)。名字は効かないでくれ」

 

「わかった、じゃあ行くぞ」

 

「「デュエル!」」

 

白羽

LP8000

 

覇王

LP8000

 

「俺のターン! 最初っから飛ばすぜ、来いゾンビ・マスター! 効果で不知火の隠者を特殊召喚、からのユニゾンビ!」

 

ゾンビ・マスター ☆4 攻撃力1800

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

 フィールドに並ぶアンデットたち。ユニゾンビの効果で馬頭鬼と妖刀-不知火が墓地へ行き、隠者が蘇生される。

 

ユニゾンビ ☆3→4

 

不知火の隠者 ☆4→5 守備力0

 

「レベル4になったユニゾンビでゾンビ・マスターをチューニング、来いPSYフレームロード・Ω!」

 

PSYフレームロード・Ω ☆8 攻撃力2800

 

「これでターンエンドだ! さあ、覇王さんのターンだぜ!」

 

白羽

LP8000 手札2

場 エクストラ:PSYフレームロード・Ω メイン:不知火の隠者

 

「俺のターン、ドロー」

 

「Ωの効果で、馬頭鬼を墓地へ戻す」

 

 厄介な動きだな、と覇王は眉を顰める。

 

「ドラゴノイド・ジェネレーター発動! 効果でドラゴノイド・トークンを二体特殊召喚し、リリース! 来い、轟雷帝ザボルグ!」

 

覇王

LP8000→7000

 

轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800

 

「なっ、ズァーク帝か!? しかも自爆テロマンじゃんか!」

 

 その風評被害に『解せぬ』とザボルグが切腹し、お互いのエクストラデッキを爆破しにかかる。

 

「ならそこでΩだ! 除外するぜ!」

 

 『はーい失礼しまーす』と《カード・アドバンス》のカードを奪い消えるΩ。

 

「そう来るよな。じゃ、ヌトスオバサンの出番だ」

 

 テロによって巻き込まれたヌトスがゾンビ・マスターに八つ当たりし、破壊する。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了だ」

 

ドラゴノイド・トークン ☆3 攻撃力300

 

覇王

LP7000 手札1

場 魔法・罠:ドラゴノイド・ジェネレーター 伏せカード×2

 

「テロのアフロめ、ぜってー許さん! 俺のターン、ドロー!」

 

 小言を一つ言って、白羽はカードを引く。

 

「スタンバイフェイズ、カムバックΩ!」

 

「こっちもキメラフレシアの効果発動だ、ミラクルシンクロフュージョンをサーチ」

 

PSYフレームロード・Ω ☆8 攻撃力2800

 

 奪ったカードをしっかり両手で持って返品した後、Ωがフィールドに戻る。

 

「まずはアンデット・ワールド発動! 次はトークンの掃除だな。二体でリンク召喚、デスポリス! ついでに隠者も入れてデコード・トーカー!」

 

デコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 青い電脳戦士が剣を構えるが、敵も味方もいないためどこに向けていいかわからず視線を右往左往させる。

 

「墓地の馬頭鬼の効果で来いユニゾンビ、効果で更に馬頭鬼おかわりだ! ユニゾンビとデコード・トーカーでリンク召喚! トポロジック・ボマー・ドラゴン!」

 

トポロジック・ボマー・ドラゴン link4 攻撃力3000

 

 名前がドラゴン詐欺な爆弾サイバースが門をくぐって着地する。

 

 白羽は残り三枚となったエクストラに渋面し、しかし気にせず続けた。

 

「攻撃できないけどまあいっか! 墓地の妖刀-不知火の効果! 墓地のゾンビ・マスターと共に除外シンクロ! 来いアンデット・スカル・デーモン!」

 

アンデット・スカル・デーモン ☆6 攻撃力2500

 

 デーモンがトポロジックの後ろに並ぶと、『らめぇぇぇっ体が勝手にフルオーバーラップしちゃうぅぅぅっ』と叫び嫌々と首を振りながらも両翼が円形の光を纏いデーモンを襲うが骨ゆえの軽い身のこなしで全て避ける。Ωは普通に光線を食らっているが自力で耐えている。

 

(あれ、バリアーとかじゃなくて避けてるだけだったのかよ・・・・・・)

 

(流石はデーモンさん、今日もいい動きだぜ)

 

「んじゃまあバトル! トポロジックで攻撃! 荷電粒子砲!」

 

「その攻撃名、大丈夫なのか?」

 

覇王

LP7000→4000

 

白羽

LP8000 手札2

場 エクストラ:トポロジック・ボマー・ドラゴン メイン:アンデット・スカル・デーモン PSYフレームロード・Ω フィールド:アンデット・ワールド

 

「俺のターン! そのデーモンは邪魔だな、お願いカメさん!」

 

「カメエエエエエ!?」

 

海亀壊獣ガメシエル ☆8 攻撃力2200

 

 骨ゆえに軽くもろい体はカメの重量の前に呆気なく壊れた。

 

(けど、さっき戻した馬頭鬼がいるから蘇生はできる・・・・・・あ、このターンのスタンバイな?)

 

 セリフによって入れられなかった描写を補いながら白羽はまだ余裕だと判断する。

 

「ミラクルシンクロフュージョン! 墓地のブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン、クリスタルウィングシンクロ・ドラゴン、グリーディーヴェノム・フュージョン・ドラゴンを除外する! 四天の龍を統べ、第5の次元に君臨する究極龍よ! 今こそこの我と一つとなるのだ! 統合召喚! 出でよ、覇王龍ズァーク!」

 

覇王龍ズァーク ☆12 攻撃力4000

 

 登場したのは彼自身たる龍。しかし、まだ完全ではないためか、かなり小型で背丈も人間ほどである。

 

「どうした覇王さん、ちっさいぜ?」

 

「仕方ないだろ、まだ完全版じゃないんだよ」

 

 そんなやり取りを挟み、改めて効果を使う。

 

ズァーク()が場に出たから、お前のカード全部破壊な」

 

「相変わらず理不尽な効果だよ、ホント」

 

 ズァークの小柄な体躯から溢れ出るオーラによって、トポロジックたちが『い、いやだあああ! おれは、死にたくないいいぃぃ!』とのたまわりながら破壊される。Ωはまた《カード・アドバンス》を道連れに避難した。

 

「バトル! ズァーク()で攻撃! 天上天下唯我独尊砲!」

 

「それ別ゲームですよ!?」

 

 外野の二色からの突っ込みは、ブレスに掻き消され、残念ながら届かなかった。

 

白羽

LP8000→4000

 

「痛ってぇなぁ」

 

 一気に半分になったライフに、白羽は呟く。

 

「ターン終了」

 

覇王

LP4000 手札1

場 エクストラ:覇王龍ズァーク 魔法・罠:伏せカード×2

 

「俺のターン、Ωが帰ってくるぜ。馬頭鬼の効果でユニゾンビ、2枚目で隠者! ユニゾンビの効果でドーハスーラを落としてレベルアップ! シンクロ、サベージ!」

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 アンデットお得意の蘇生によって突破口を開く白羽。サベージにはトポロジックを装備する。

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン 攻撃力3000→4500

 

 『大丈夫だよな・・・・・・マーカーこっち向いてるけど、爆発しないよな?』と怖じ気づいているサベージに、装備されたトポロジックは大丈夫だとサムズアップ。

 

「何か普通に打点超えられてるんだけど、俺」

 

「世代交代したからだろ? 通常召喚牛頭鬼からの馬頭鬼落として蘇れデーモンさん」

 

アンデット・スカル・デーモン ☆6 攻撃力2500

 

 『もう少し老骨を労ってくれないか?』と疲れ気味なデーモンに手刀を切り、バトルフェイズを宣言する。

 

「サベージでズァークを攻撃!」

 

「ミラフォ二枚あっても無意味じゃねぇか!?」

 

 ミラフォは役に立たないというフラグをしっかり回収しながらズァークを破壊される覇王。

 

覇王

Lp4000→2500

 

「トドメはよろしくデーモンさん!」

 

 Ωと牛頭鬼が『え? 俺は?』という目で見るが、流石に覇王相手にオーバーキルは失礼だろうということで納得する。

 

覇王

LP2500→0

 

「ダメージピッタリ! ボーナスは?」

 

「ないでーす」

 

 覇王に代わって二色が答えると、白羽は残念がる様子もなく笑った。

 

「あ、ここにいたんだ覇王さん! ・・・・・・と、トマト」

 

「あっれぇワタクシ忘れられてはございませんよね!?」

 

「ごめんユーア、僕は嘘をつくよ」

 

 いつも通りの酷い扱いにその場に崩れる二色。そしてユーアという呼び方に覇王が反応する。

 

「黒、やめておけ」

 

「そうだね。ごめん、覇王さん」

 

 その会話に疑問符を浮かべた白羽だが、まあいいかと気にしないことにした。

 

(戦騎も楽しんでるかな? あ、星河さん探しに行こうっと。後日向さんと孝之さん、それから・・・・・・)

 

 未だに勝利できていない人物たちを脳内にリストアップしながら、白羽は騒がしくなった研究会の部室を後にする。

 この時代の覇王に勝てたのだから、他の人たちにも勝てるかもしれない、と楽しみに思った。

 

 彼の名前は如月 白羽。戦騎と同じく、未来からの来訪者だ。




こちら、ちっこい覇王龍↓


【挿絵表示】


・・・・・・私のイラストって、需要あるんですかね?

次回は一週間以内に投稿できたらいいなーと。

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