遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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誰か……ブラックコーヒーをください……。

デュエル回です。


彼の日の向く方

「お、響。どうした、一人で」

 

「兄さんこそ、一人ッスか? お二人と一緒かと思ったんスけど」

 

 校舎内の店を回っていると、日向はばったり響と遭遇した。

 

「孝之は姉に引っ張られてどっかいった。星河はさっき遊羽と走ってたな」

 

 日向が思い出しながら言うと、響にも話すよう目で促し、彼女も口を開く。

 

「自分は、最初から一人ッスよ。真田たちに誘われたッスけど、断ったッス」

 

 日向はそうか、とだけ答え、少し考えるように目を瞑り開ける。

 

「なら、一緒に行くか」

 

 問いとも、強制とも取れない彼の言葉に、響は抵抗なく頷く。

 

「あの・・・・・・兄さん」

 

「ん?」

 

 少し恥じらいながら響が兄を呼び、応答された後躊躇い、決心したように日向の目を見て、やはり顔を逸らす。

 

「手、握っても・・・・・・いいッスか?」

 

「もちろん。・・・・・・じゃ、行くか」

 

 笑顔で響の手を取り、日向は歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・なんだか、いけない現場を見た気分ですね」

 

「・・・・・・ああ、そうだな」

 

 日向と響を見かけ、声をかけようとしていた遊羽と虹花だったが、二人の雰囲気に思わず隠れた物陰で声を潜める。

 

「私達も・・・・・・手、繋ぎますか?」

 

 遠慮がちに虹花が訊くが、遊羽は少し迷う。

 

 彼ら二人は、ある約束をしている。それは、十八になるまで夜の営みはしない、キスもしない、というものだ。

 別にキスくらいはいいかもしれないが、キスをしてしまうと、お互いに溜まっているものが抑えられなくなってしまうかもしれない。手を繋ぐことも同じだ。

 

 何をバカなと思うかもしれないが、二人はいたって真面目である。それくらい、お互いに対する欲望が溜まっているのだ。

 

「・・・・・・まあ、学園祭くらい、いいかもな」

 

 遊羽が肯定したことに虹花は安堵し、そして手を繋ぐと同時に襲ってきた感情に冷や汗を流す。それは、遊羽も同じこと。

 

(今日、持つかな、俺の理性)

(耐えられるんでしょうか、私の理性)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そして、さらに後ろから、二人を見る影が二つ。

 

「僕らも手、繋ぐ? 遥」

 

 ニコニコスマイルで戦が話し掛けるのは、顔を真っ赤にした遥だ。

 

 先程デュエルで負けたため、名前で呼ぶことを許可させられ、羞恥心が限界に達している彼女に、答える余裕はない。

 

(無言を肯定と受け取って・・・・・・やめとこ。これ以上は暴走しそうだし、今の遥を見ている方が楽しいし)

 

 手を握ろうと浮かせた腕を下ろし、戦はしばらく遥を見つめ続けることにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 最後に、屋台の中から遊羽と虹花、戦と遥を見ていた遊兎と彩葉。

 

「・・・・・・手、繋ぐ?」

 

「へっ!? い、いや、(オレ)たちにはまだ、その・・・・・・」

 

 彩葉の問いかけに驚き、しどろもどろになってしまう遊兎。初である。

 

「ん、わかった・・・・・・」

 

 そう言いながら、遊兎の腕に抱き付く彩葉。

 

「なっ、彩葉!?」

 

「手は、繋いでない」

 

 そこで「確かにそうだけど・・・・・・!」となるあたりが、遊兎がデュエルで勝てない理由なのだろう。良くも悪くも素直なのである。(ワル)を名乗っているが。

 

「しばらく・・・・・・こうしてて、いい?」

 

 上目遣いで自身を見上げる彩葉と腕に当たる柔らかい感触により、遊兎は完全にノックアウトされた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 裏でそんなことが起きているとは知らない日向と響は、周囲の視線に顔を赤くしながらも、店を見て回っていた。

 

「お、このネックレス、響に似合うんじゃないか?」

 

 日向が青い宝石に翼を装飾したネックレスを手に取り、響に薦める。

 

「いや、自分はこんなの似合わないッスよ!」

 

 両手をブンブンと顔の前で振る響に、いいからいいからと日向はネックレスを着ける。

 

「ど、どうッスか?」

 

 恐る恐る響が訊くと、日向は笑顔で答える。

 

「似合ってるぜ、響。流石はマイリトルシスターだ」

 

 いつもならばツッコむところなのだが、恥じらいと嬉しさでそれどころじゃない響は顔を真っ赤にしたまま俯いている。

 

 そんな響を見て嬉しくなった日向は、店員を呼ぶ。

 

「すいません。これ、幾らですか?」

 

 返ってきた値段に響が驚いていると、日向は手早く会計を済ませてしまう。

 

「ちょ、兄さん、こんな高いもの・・・・・・」

 

「プロで稼いでるから問題ないって。ほら、次行こう」

 

 笑って響の手を取り、歩き出す日向。

 

 尚、学園祭でこんなアクセサリーが売っているのかと言えば、それはデュエルスクールが特殊なだけである。

 

 しばらく歩くと、休憩スペースらしきベンチがあったため、二人はそこへ座る。

 

「・・・・・・兄さん。あの、自分・・・・・・」

 

 何かを言おうとする響に、日向は黙って続きを待つ。

 

「あ、日向さん! って、あ、」

 

 丁度そこに割り込んできた白髪の少年に、響は顔を真っ赤にしながら睨む。

 

「あ、えーと、すいません!」

 

 冷や汗をダラダラと流しながら謝る彼に、響は暫く睨み付けたままだったが、やがて諦めたかのように溜め息をつき、半眼で口を開く。

 

「で、どなたッスか? 兄さんの名前を知ってるみたいッスけど」

 

 「知り合いッスか?」と響は日向に訊くが、彼はいんやと首を振る。

 

「あ、俺は白羽です。どうぞ宜しく」

 

 名字は訊かないでください、とにこやかに続いた言葉に、日向は何か事情があるのだろうと察する。

 

 しかし、完全に気づいたのが響である。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 例えるならば、「うーわーマジかコイツうーわー」という顔で白羽を見る響。白羽はそのことに気付きながらも全力で視界に入れないようにしている。

 

「んで、おれたちに何か用か?」

 

 鈍感な日向は気にせず白羽に要件を促し、白羽もまた逃げ出したい衝動に駆られながらも退くわけにはいかないと話を続ける。

 

「俺、三羽烏のファンなんです。是非、デュエルして欲しいなと思って」

 

 嘘は言っていない。

 

「じゃあ、さっさとデュエルしようか」

 

 じゃないと響が暴走しそうだ、と黒いオーラが見えるほどにじーっと見つめている彼女を想いながら、ベンチを立つ。

 

「あー、本当にすんません」

 

 再び頭を下げる白羽にヒラヒラと手を振り、ディスクを腕に装着する。

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

白羽

LP8000

 

(うわ・・・・・・おれのデッキ、殺る気マックスかよ)

 

 自身の手札を見るなり日向は若干引く。

 

「おれのターン。ドラゴノイド・ジェネレーター、及び冥界の宝札を発動。ドラゴノイド・トークン二体を特殊召喚して、リリースしアドバンス召喚! 来い、クラッキング・ドラゴン!」

 

水瀬日向

LP8000→7000

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 冥界の宝札により更にカードを引き、それを見た日向はまたも驚く。

 

(マジか・・・・・・これでは完全にmeの勝ちじゃないか!)

 

「カードを二枚伏せる。ターン終了だ」

 

水瀬日向

LP7000 手札2

場 メイン:クラッキング・ドラゴン 魔法・罠:冥界の宝札 ドラゴノイド・ジェネレーター 伏せカード×2

 

 ターン終了の宣言と共に白羽のフィールドにトークンが二体現れ、クラッキング・ドラゴンが吠える。

 

ドラゴノイド・トークン ☆1 攻撃力300→100

 

白羽

LP8000→7800→7600

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 勢いよくカードを引いて手札に加え、別のカードを取り、ディスクに置く。

 

「ユニゾンビを召喚!」

 

「クラッキング・ドラゴンの効果が発動し、チェーンしてリバースカード、連撃の帝王、帝王の烈旋発動!」

 

「ウェ!?」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 攻撃力1300→700

 

白羽

LP7600→7000

 

 ユニゾンビとクラッキング・ドラゴンが竜巻に飲み込まれ、新たなモンスターが姿を現す。

 

「来い、虚無の統括者」

 

虚無の統括者 ☆8 攻撃力2500

 

 くすくすとマントを握った手で口元を隠し、笑いながら君臨する、虚無の天使。

 

「げ、そのカードは!」

 

「そう、きみの特殊召喚を全て封じるモンスターだ」

 

 冥界の宝札の効果で二枚ドローしながら、日向は答える。

 

(アンデット・ワールド引けなかっただけでこれか!)

 

 アンデット以外をアドバンス召喚できないという隠れた効果を持つアンデット・ワールド。しかし、白羽はそれを引けていなかった。

 

「ドラゴノイド・トークンを守備表示に変更! これでターンエンドだ」

 

白羽

LP7000 手札5

場 メイン:ドラゴノイド・トークン×2

 

 特殊召喚不可能な状態では、白羽は何もできない。

 

「おれのターン、ドロー」

 

 これで日向の手札は五枚。これだけの盤面を作りながらデュエル開始時と変わっていないという事実に、白羽はもう苦笑するしかない。

 

「死者蘇生を発動。来い、クラッキング・ドラゴン! ドラゴノイド・ジェネレーターの効果でトークンを特殊召喚し、アドバンス召喚! 来い、V・HEROウィッチ・レイド!」

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

V・HEROウィッチ・レイド ☆8 攻撃力2700

 

 並ぶ三体のモンスター。ウィッチ・レイドの姿に、白羽は伏せカードがあっても無意味だったと思い知らされる。

 

「バトルだ。虚無の統括者とウィッチ・レイドでトークンを破壊!」

 

 くすくすと嘲笑いながら虚無の統括者がトークンを蹴飛ばし、ウィッチ・レイドが杖で撲殺する。

 

「クラッキング・ドラゴンでダイレクトアタック! クラックアップ・フィニッシュ!」

 

 クラッキング・ドラゴンが白羽に噛みつき、ライフを半分近く貪る。

 

白羽

LP7000→4000

 

「カードを伏せて、ターン終了だ」

 

水瀬日向

LP7000 手札4

場 メイン:虚無の統括者 クラッキング・ドラゴン V・HEROウィッチ・レイド 魔法・罠:冥界の宝札 ドラゴノイド・ジェネレーター 連撃の帝王 伏せカード

 

「くっ、俺のターン!」

 

 半分となったライフに焦りながらカードを引き、そのままディスクに叩きつけるように発動する。

 

「吹き飛べ! サンダー・ボルト!」

 

 ディスクによって投影された緑色のカードからイナズマが走り、日向のモンスターたちを撃ち抜く―――――かに見えた。

 

「悪いな。おれのデッキは、相当勝ちたいらしい」

 

 イナズマによる一瞬の閃光が晴れると、そこには金色の竜が佇んでいた。

 

真竜輝兵ダース・メタトロン ☆8 攻撃力3000

 

「なっ、ウソだろ・・・・・・」

 

 白羽が見る日向のフィールドからはモンスターの他に冥界の宝札と連撃の帝王が消えており。

 

(連撃の帝王の効果で、アドバンス召喚したのか!)

 

 モンスターは一体しかリリースしていないため冥界の宝札によるドローはないが、代わりにダース・メタトロンは完全耐性を持った。

 

「でも、これで俺は特殊召喚ができる! 牛頭鬼を召喚し、効果で馬頭鬼を墓地へ! 馬頭鬼を除外し、ユニゾンビを特殊召喚! 効果でデッキから屍界のバンシーを墓地へ! 除外して発動、アンデットワールド!」

 

 かけられていた制限が解けたことで回り出す白羽のデッキ。しかし、それだけでは足りない。

 

「ユニゾンビと牛頭鬼でリンク召喚! 来いハリファイバー! 効果でグローアップ・ブルームを特殊召喚し、牛頭鬼の効果でユニゾンビを除外しゾンビ・マスター特殊召喚! 更にリンク召喚! デコード・トーカー! ブルームの効果、除外して、来いドーハスーラ!」

 

デコード・トーカー link3 攻撃力2300→3300

 

死霊王ドーハスーラ ☆8 攻撃力2800

 

ゾンビ・マスター ☆4 攻撃力1800

 

「ゾンビ・マスターの効果で手札一枚をコストに墓地から牛頭鬼を特殊召喚! 次だ、オーバーレイ! 希望皇ホープからホープレイ大正義!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 雷と共に大正義皇が腕を組んで立つと、日向が顔を引きつらせる。

 

(虹花ちゃんと似たデッキかと思ったけど、全然違うなぁ。展開力に全振りしてる感じだ)

 

 そんな日向に構わず、白羽はバトルを宣言する。

 

「ライトニングでダース・メタトロンに攻撃!」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→5000

 

 ライトニングが剣を振るい、メタトロンを両断する。

 

水瀬日向

LP7000→5000

 

「次だ! ドーハスーラでダイレクトアタック!」

 

「リバースカード、聖なるバリアーミラーフォース! 全員破壊だ」

 

 閃光、反射、爆発。

 

 白羽のモンスターは、これで全滅。

 

「……ターン終了だ」

 

白羽

LP4000 手札2

場 フィールド:アンデット・ワールド

 

「おれのターン。ドローフェイズにサイクロン発動だ。アンデット・ワールドを破壊するぜ」

 

「……マジか」

 

 たった今引いたカードによって屍の世界は崩れ、白羽のフィールドは更地となる。

 

「ジェスター・コンフィを特殊召喚、ドラゴノイド・ジェネレーターの効果でトークンを特殊召喚して、リリース! 来い、ドレッド・ルート!」

 

邪神ドレッド・ルート ☆10 攻撃力4000

 

 顕現したるは、日向が駆る邪神の一体、ドレッド・ルート。本来は裁定の面倒な効果があるのだが、今回はその圧倒的な攻撃力が役に立つ。

 

「ドレッド・ルートでダイレクトアタック! フェーズノックダウン!」

 

白羽

LP4000→0

 

「うあー、やっぱそう簡単には勝てないかぁ」

 

 悔しそうに白羽は呟き、苦笑する。

 

「お邪魔しました。それじゃ、さっきの続きをどうぞ」

 

 そう告げて、白羽はどこかへ去る。

 

 白羽に言われ、デュエル前に言いかけたことを思い出し、赤面する響。日向も思い出したように彼女を見る。

 

「なあ、響。デュエルの前、何を言おうとしたんだ?」

 

「し、知らないッス! 休憩はもう十分ッスよね、次行くッスよ!」

 

「えぇ……おれ今のデュエルでつかれたんだけど」

 

 がっくりと項垂れる日向だがそんなことにはお構いなしに響は日向の手を引く。

 

「ほら、行くッスよ!」

 

「締まらない終わり方だなぁ」

 

 お前が言うんかい、と周囲の生徒は心の中でツッコんだ。




皆様、活動報告へのコメントありがとうございます。
予想以上に今のままがいいというコメントが多くて驚いています。

……というか、何で今までこの題名の作品なかったんでしょう。誰でも思いつきそうなのに。

テストがあるので、暫く投稿できないかもです。
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