遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
テスト勉強? しても無駄なんですよ。
デュエルなしです。
「ふー、疲れた疲れた」
そう言いながら、息吹は校門をくぐる。
「でも、異世界は楽しかったのです!」
その隣で手鞠が元気いっぱいに言うと、息吹は穏やかな笑みを浮かべながら、内心で別のことを思う。
(まあ、知り合い増やして搾られてデュエルしただけで、異世界らしいことはあんまりしてない気がするけどね♪)
彼の思う『異世界らしいこと』とは屍のお姫様のような転生や俺TUEEEEEEEなので、デュエリストとしての認識のズレがある。
「あれ? 龍塚くん、この時間クラスの当番だって言ってなかった?」
彼らがデュエルスクールに入ると丁度そこにいた戦が首を傾げる。遥もこの時間にクラスの当番のため、覚えていたのだ。
「・・・・・・ヤバ。忘れてた♪」
「ちょ、お兄様!? 今すぐ行くのです! 職務怠慢はよくないのです!」
慌てて手鞠が息吹の背中を押して教室に連れていこうとするが、息吹は笑って自分で歩く。
教室に着き、扉を開けると、そこには遊羽がいた。
「・・・・・・って遊羽!?」
息吹のクラスの出し物、『月見くん危機一髪』の列の近くに違和感なくいたのは、腕組みをして立つ遊羽だった。
「お前に仕込んでおいたレヴの羽の反応が消えてたぜ。さあ、どこで何をしていたのか白状しろ」
無表情で修羅のごときオーラを漂わせる遊羽に、息吹は冷や汗を流す。
(ゴメン骸坂くん、オレ約束守れないかもしれない)
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数分後、なんとか骸坂との約束を守り切った息吹は、脱力した様子で椅子に腰掛けていた。
「そうか・・・・・・里香さん、来てたのか。それに記憶喪失って・・・・・・」
出来れば、異世界での一件から成長したことを確認するために一戦交えたかった遊羽だが、また別の厄介事に巻き込まれていると知り、今回は諦めるとする。
「それで、今どこにいるんだ?」
「狭間の世界、だってさ♪」
それについては訊かないで♪と続ける息吹に、遊羽は不信感を覚えながらも頷く。
「それと遊羽、今日は駅の方に行かないことをオススメするよ♪ 特にラーメン屋付近」
指を立てながら言った息吹に疑問符を浮かべた遊羽だが、一応気にとめておくことにした。
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『それでは。学園祭、これにて閉会とします』
壇上の校長が宣言し、学園祭が終わる。
「あーあー、これでもう終わりかいな」
どこかの方便を混ぜながら言うのは孝之だ。その隣には日向と星河もおり、学園祭の余韻を噛み締めていた。
「そうだなぁ」
「ああ。祭りは終わり、そして――――」
一泊の躊躇いの後、星河は告げる。
「残るは、卒業だけだ」
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「美味しかったですね、ラーメン」
「ああ。久し振りだったけど、中々だったな」
夜の駅前を歩くのは、遊羽と虹花。遊羽はラーメン屋に行くつもりはなかったのだが、虹花が食べたいと言い出したため同行したのだ。息吹の忠告よりも、虹花を優先するらしい。
そして、二人が歩いていると、別の二人組と遭遇する。
「あ」
「え?」
「げっ」
「あっ、虹花おねーちゃん!」
異世界で出逢った二人、骸坂とシュカだった。
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「で、何でお風呂に入っているの、僕ら?」
カポーン、と音が響く。
「さあな、俺が訊きたい」
実際には二人に遭遇して虹花とシュカがガールズトークに花を咲かせ、シュカが「また虹花お姉ちゃんとお風呂入りたい!」と言い出したのがことの発端だ。
「・・・・・・今回は、僕をフルボッコにしないんだね」
包帯など巻かれていない自分の身体を眺めながら、骸坂は切り出す。
「ああ。あの時は虹花と二人っきりのところにお前が出て来たからな」
要は、別に骸坂だからボコボコにしたわけではないということだ。出て来たのが骸坂以外ならば殺気を込めた視線を送る程度だっただろう。
「最近、どうだ? 島はちゃんと復興できたか?」
まるで親戚のおじさんのような切り出し方に、骸坂は半笑いで返す。
「上手くいってるよ。何で急にそんなことを?」
「いや・・・・・・」
少しバツが悪そうな顔をする遊羽を見て、骸坂は察する。
(なるほど・・・・・・遊羽君って不器用なのか)
大切な人を守るために、戦う以外の方法を知らないのだ、遊羽は。
故に外敵に過剰に反応し、排除しようとする。
そうわかれば、あまり怖くはない。
「君はどうなの? 虹花ちゃんとは上手くいってるの?」
少しからかうようなニュアンスを含めた口調で彼が問うと、遊羽は真顔で答える。
「一切進展させてねぇ。今日も手を繋いだだけで理性が飛びそうになったんだ、進展させられねぇ」
「・・・・・・なんかごめん」
気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのは遊羽だった。
「旅行、楽しんでいけよ」
「うん、そうさせてもらうよ」
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「やっぱり、お姉ちゃんのお肌スベスベ! どうしたらそんな綺麗な肌になるの?」
純粋な瞳を輝かせながら隣に座るシュカに苦笑を浮かべながら、虹花は答えに窮する。
(別段、特別なことはしていないんですが・・・・・・え? まさか、アレですか? 毎晩遊羽を想ってシテいる、アレですか!?)
自分の考えを必死に打ち消し、虹花は答える。
「私もよくわからないんですが、適度な運動は身体にいいと聞きますね」
「へー、虹花お姉ちゃんって運動してるんだ! 何してるの? スポーツ?」
ぐっ、と虹花は言葉を詰まらせる。どう無難に返すべきか、生徒会長の頭脳をフルに使用し考える。
「そうですね・・・・・・簡単なスパーリングを、毎日」
「そうなんだ。今度骸坂に頼んでみるね!」
後日大変な思いをするであろう骸坂に虹花は心の中で謝る。
「・・・・・・でも、どうして急にお風呂に入りたいなんて言い出したんですか? シュカちゃん」
ふと、疑問に思っていたことを口に出す虹花に、シュカはえへへっと笑い、
「シュカ、遊羽お兄ちゃんと骸坂に、仲良くなって欲しいくて」
遊羽と骸坂。どちらも、シュカにとって大切な人だ。
しかし、骸坂がノットヴァースから人間へと転生あいたとき、遊羽にボコボコにされたのはシュカも知っている。
だから仲良くなって欲しいのだろうと気付いた虹花は、シュカの優しさに思わず小さく笑ってしまう。
「虹花お姉ちゃん?」
「大丈夫ですよ、シュカちゃん。遊羽は、骸坂くんを許しています。きっと、男湯で仲良くしていると思いますよ」
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「それじゃ、またね! 遊羽お兄ちゃん、虹花お姉ちゃん!」
「はい、またいつか」
「次に会った時は、リベンジデュエルをさせてもらうよ」
「ああ。楽しみにしてるぜ」
今回、yunnn様の作品『遊戸 里香の表裏生活』より、骸坂くんとシュカさんをお借りしました。
yunnnさん、キャラをお貸しいただきありがとうございます。口調等おかしな点がございましたら、メッセージをください。
それにしても、200話って凄いですよね。作者がこのSSを書き始めて半年以上経ちますが、未だに80話、平均文字数は4000ちょっと・・・・・・差が大きい。
それと、これにて四章完結です。アンケートも締め切ります。
タイトルは変更しません。皆様、貴重な御意見ありがとうございました。