遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
今回から数話は過去編となります。
デュエル回です。
星と闇竜と
デュエルスクール、アベシ校への道。
一枚のカードを片手に持ちながら歩く男子生徒が一人。
(これ、結局何だったんだろうな・・・・・・)
そのカード―――『真竜機兵ダースメタトロン』を眺めながら登校しているのは、水瀬 日向(みなせ ひゅうが)。今年から高等部一年になった生徒だ。
「あー、あとでお礼しにいかないとな。響も助けてもらったし」
自分と妹を助けてくれた少年のことを思い出し、何気なく呟く。
(しかし、何なんだったんだ、あれ? 何もないところからいきなり衝撃が来て、かと思ったらドラゴンが現れるし・・・・・・)
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先日、プロデュエリストになった記念に妹とファミレスを訪れた時のことだった。
注文した料理が来るのを待っていた二人の耳を唐突に襲った悲鳴。何事かと声の方向を見れば倒れていく店員や他の客。そして二人に訪れた衝撃。吹き飛ばされた際に痛めた頭を抑えながら、何とか妹を守ろうと抱きしめ、自分たちがいた場所に目を向ければ、金色のドラゴンが暴れていた。
(なるほど・・・・・・おれたちはここで死ぬのか)
状況がわからずとも、実感できた。
己の、死を。
(なぁ、神様。本当にいるなら、うまれてはじめて希うよ。せめて妹だけは、助けてくれ)
荒れ狂うドラゴンを見ながら、日向はただただ祈った。己の命ではなく、妹の無事を。
そして、そのドラゴンの爪が彼らを切り裂こうとした瞬間。
―――――そこに、一迅の風が吹いた。
「ドラゴンだ!! ドラゴンだろう!? なあ ドラゴンだろうお前
当時流行り始めていたバスター・ブレイダーが主人公の漫画の決め台詞を叫びながら日向の見慣れたカードを取り出しそばにいた橙色の竜と合体し金色の竜と
数分経って、金色の竜を殺して抜け殻となったカードを見て舌打ちをしたその少年は、自らを見る日向の視線に気がついたらしく、そのカードを投げてきた。
「コイツをやるから、俺のことは他の奴に言うんじゃねぇ」
口封じの為に渡されたカード。それが、『真竜機兵ダースメタトロン』だった。
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(うん、とてもいい思い出とはいえないような出来事だなぁ)
死にかけたかと思えば、助けに現れたのは正義のヒーローではなく自分よりも年下の少年。
その事実に、日向は少なからずショックを受けた。
(そうだな・・・・・・プロになったんだし、一般人じゃ手に入れられないくらい強いカードをゲットしよう。そんで、今度はおれがあいつを助けてやるんだ)
固く決心し、ふと前方を見れば、彼のようにドラゴンを連れた青年が前を歩いていた。
(あ、あいつに訊けば、あれが何だったのかわかるかも)
日向は走ってその青年に追いつき、声をかけた。
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「とまあ、こんな所だな」
精霊についての説明を終えた星河は、反応を伺うように相手を見る。
少しチャラチャラした印象を与える明るい色の髪の毛と装飾品、そして少し着崩した制服。
「サンキュー
明るく笑う日向に、星河は疑問を覚える。
(先日まで、此奴は精霊が見えなかった筈だ。なのに何故・・・・・・)
その疑問を解消するべく、星河は日向に質問する。
「何か事件などに巻き込まれたりしたのか? 精霊からの攻撃がきっかけになって、精霊が見えるようになる者もいるらしいんだが」
その言葉を聞いてポンと手を打つ日向。どうやら、そのようだ。
「なるほど。精霊と接触したのか」
「ああ。ついこのあいだ、ファミレスで」
ファミレス、と聞き、星河は自身の記憶を探る。
(先日、ファミレスで悪霊が発生したとは聞いている。そして、それが民間人によって討伐されたとも)
如月 遊羽。それが、悪霊を狩った者の名前だ。
(彼が何者か・・・・・・把握しておかなければなるまい)
セキュリティ特務課、銀 星河は己のやるべきことを一つ増やした。
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幸い、というべきか、目標との邂逅はすぐに起こった。
「あ」
「あ?」
校門をくぐろうとしたタイミングで、日向が声をあげ、それに一人の少年が反応する。
「この前の・・・・・・」
「誰だ、お前?」
少年の後ろに佇む橙色の竜に日向が思わずといった様子で声を漏らすのとほぼ同時に、少年は眉を顰める。
「・・・・・・ああ、ファミレスにいた人か。何か用か?」
思い出したように遊羽が言うと、日向が頷き肯定する。
その二人から一歩引いた場所からする星河は遊羽を観察する。
(殺気立った瞳に、警戒を解かない姿勢。そして、精霊の存在)
この頃の遊羽は、虹花という心の支えこそあったものの、相当荒れていた。そのため、星河の眼には敵意の塊のように映ったのだ。
「おれは水瀬 日向。おれと妹を助けてくれたことに、一言お礼をいいたくてな。ありがとう」
日向が頭を下げると、遊羽は若干戸惑うが特に反応しない。彼からすれば、ただ悪霊を狩っただけなのに、お礼を言われる理由がわからないためだ。
「用はそれだけか? なら俺は行くぞ」
日向に訝しむような目線をむけたまま遊羽は告げ、踵を返す。
「待て」
しかし、星河が彼を呼び止める。
「・・・・・・何だよ、まだ何かあるのか?」
不快感を隠そうともせずに振り返った遊羽に、星河は端的に言う。
「放課後、俺とデュエルしてくれないか? 悪霊を狩れるほどの君の力を見てみたい」
一切の嘘をつかず、しかし本音を語ることもしない。セキュリティの常套手段である。嫌な組織だ。
「・・・・・・嫌だと言ったら?」
「何もない。受けるか否かは君の自由だ」
平然と答える星河に、遊羽は疑いを強める。
(この余裕そうな態度・・・・・・断っても何もしないっての、嘘だろうな。俺はともかく、虹花が危険な目に合うことを考えれば・・・・・・)
ただの考え過ぎである。
「いいぜ。そのデュエル、受けてやる」
しかし、荒れている彼がそのことに気付くはずもなく、遊羽は勘違いしたままデュエルを受けた。
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面倒な授業描写などはすっ飛ばし、放課後。
日向と星河が授業中でデュエルをしそのことで一人の生徒がやたら話し掛けてくるようになったこと以外特に変わったことはなく、二人は遊羽とのデュエルをするために第七デュエル場へ向かっていた。
「あ。おれたち、どのデュエル場でデュエルするか、彼につたえたっけ?」
「問題ない。彼のデュエルディスクへと送っておいた」
そうだったのか、と安心する日向。
鈍い彼は気付いていないが、普通は何故遊羽の連絡先を知っているのか気にするところである。星河はセキュリティの仕事で把握しているだけなのだが、遊羽の不信感を強める結果になっていた。
デュエル場に着くと、既に遊羽はディスクを構えて待っていた。
「悪い、またせたか?」
「当たり前だろ。高等部と中等部じゃ授業の長さが違ぇ」
日向と星河は揃って「あ」という顔をした。
「・・・・・・デュエルだ」
「今すげぇさらっと流したけど俺待たされたんだからな?」
遊羽のツッコミも受け流し、星河はディスクを構える。
「「デュエル!」」
銀星河
LP8000
如月遊羽
LP8000
「俺のターン。フォトン・スラッシャーを特殊召喚し、更にフォトン・バニッシャーを特殊召喚」
フォトン・スラッシャー ☆4 攻撃力2100
フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000
並ぶ二体の光子戦士に、遊羽は星河のデッキを予測する。
(『フォトン』の切り札は基本的に『銀河眼の光子竜』。恐らくギャラクシーとの混合デッキだな。そして奴からは精霊の気配もする。気をつけねぇとな)
フォトン・バニッシャーの効果で星河がデッキから一枚のカードを手札に加え、そのままディスクに叩きつけるように置く。
「逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」
銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000
そのカードから発せられる気配に、遊羽は呟く。
「・・・・・・精霊か」
『ご名答だ。私は星河の精霊、銀河眼の光子竜。キャラが被っている気がしないでもないが』
後半のセリフを意識の外へ追いやると、遊羽は盤面に目を向ける。
「俺はカードを一枚伏せ、ターン終了だ」
銀星河
LP8000 手札2
場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード
「俺のターン、ドロー」
引いたカードを遊羽は感慨もなく眺め、効果を発動する。
「サイバー・ダーク・カノンの効果。手札から捨てることで、デッキからサイバー・ダーク・エッジを手札に加える。そして通常召喚」
サイバー・ダーク・エッジ ☆4 攻撃力800
遊羽のフィールドに歪んだ機械の竜が現れ、墓地のカノンを装備する。
サイバー・ダーク・エッジ 攻撃力800→2400
「バトルだ。エッジは攻撃力を半分にすることで直接攻撃ができる。やれ、エッジ」
エッジがフォトンの存在を無視し、彼の主を傷つける。
銀星河
LP8000→6800
カノンの効果で遊羽のデッキから『サイバー・ダーク・クロー』が墓地へ送られ、メインフェイズ2となる。
「カードを二枚伏せてターンエンドだ」
如月遊羽
LP8000 手札4
場 メイン:サイバー・ダーク・エッジ 魔法・罠:サイバー・ダーク・カノン(装備:エッジ) 伏せカード
「俺のターン。バトルだ、フォトンの攻撃。破滅の、フォトン・ストリィ「トラップ発動、聖なるバリア-ミラーフォース-だ」・・・・・・」
星河の絶叫を遮り、遊羽は無慈悲にフォトンを破壊する。
「・・・・・・ならばメイン2、復活の福音を発動。蘇れ、フォトン!」
銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000
再び現れた光の竜に、墓地に復活の福音を置くためにフォトンの効果を発動しなかったのだろうと遊羽は推測する。
それだけではなく、カノンの効果を発動させないようにした、というのもあるのだが。
「ターン終了だ」
銀星河
LP6800 手札2
場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード
「俺のターン。カノンをコストにパラレル・ツイスター発動だ。銀河眼の光子竜を破壊する」
早速剥がされる福音に、星河は顔をしかめる。
「カノンの効果で一枚ドロー。そしてフィールド魔法、竜の渓谷を発動。手札一枚をコストにデッキからドラグニティ-アキュリスを手札に加えるぜ。調和の宝札を発動して手札交換、そしてサイバー・ダーク・キールを召喚するぜ」
サイバー・ダーク・キール ☆4 攻撃力800→1800
場に出るなり墓地のアキュリスを装備するキール。遊羽のデッキの流れが変わったことを、星河は感じ取る。
「二枚目のパラレル・ツイスターだ。飛べ、アキュリス」
突如起きた竜巻によってアキュリスがフォトンに突っ込み、爆発。竜巻は伏せられたカードを割る。
(反射光子流!? 何でそんなカード入れてんだ? オネストでいいだろ)
破壊したカードに対し驚きを隠せない遊羽だが、かぶりを振ってデュエルへ意識を戻す。
「エッジとキールでオーバーレイ。来い銀河影竜」
銀河影竜 ★4 攻撃力2000
霞のごとく姿を見せた竜に、星河は驚く。
(そのカード・・・・・・名前的に俺が使うべきだろう! 何をしている作者!)
「銀河影竜の効果発動。来い、ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」
ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600
遊羽の背後にいた竜が羽ばたき、フィールドへ舞う。その両腕には、爪が三つずつ付いたクローが装備されていた。
「サイバー・ダーク・クロー・・・・・・」
「ああ。当然、レヴが装備しても効果は使えるぜ」
遊羽がそう言うと共に、レヴは爪を構える。
「バトルだ。レヴでダイレクトアタック」
クローの効果でエクストラデッキから『シューティング・クエーサー・ドラゴン』が墓地へ送られる。
「くっ」
銀星河
LP6800→4200
「ターンエンド」
如月遊羽
LP8000 手札1
場 エクストラ:銀河影竜 メイン:ドラグニティアームズ-レヴァテイン 魔法・罠:サイバー・ダーク・クロー(装備:レヴァテイン)
「・・・・・・俺のターン。強欲で貪欲な壺を発動。二枚ドロー。手札一枚をコストに銀河戦士を特殊召喚。効果でデッキから銀河騎士を手札に加え、妥協召喚。効果で墓地のフォトンを特殊召喚」
銀河戦士 ☆5 守備力0
銀河騎士 ☆8 攻撃力2800→1800
銀河眼の光子竜 ☆8 守備力2500
一瞬で並んだモンスターたちに、遊羽は警戒を強める。
「そしてフォトン・バニッシャーを特殊召喚し、デッキから二枚目の銀河眼の光子竜を手札に加える」
フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000
「開け、銀河を震わすサーキット。俺はフォトン・バニッシャーと銀河戦士をリンクマーカーにセット。リンク召喚! 来い、ハイパースター!」
ハイパースター link2 攻撃力1400→1900
門から何とも言えないファッションセンスの星が飛び出し、ダンスを始める。
「フォトンと銀河騎士でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! No.62銀河眼の光子竜皇!」
No.62銀河眼の光子竜皇 ★8 攻撃力4000→4500
『久しぶりだな、この姿になるのは』
感触を確かめるようにフォトンは身体を動かす。
「バトルだ。プライムで銀河影竜に攻撃! 効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、攻撃力を場のランク分だけ上昇させる! プライム・アキュミレィト!」
No.62銀河眼の光子竜皇 攻撃力4500→6900
如月遊羽
LP8000→3100
一撃で半分以上吹き飛んだライフポイントに遊羽は舌打ちし、残ったレヴを見る。
(だが、ハイパースターでレヴは・・・・・・待てよ、光属性なら・・・・・・)
「ハイパースターでレヴァテインに攻撃、
ハイパースター 攻撃力1900→4500
如月遊羽
LP3100→1200
「ターン終了だ」
銀星河
LP4200 手札0
場 エクストラ:ハイパースター メイン:No.62銀河眼の光子竜皇
「俺のターン。サイバー・ダーク・ホーンを召喚。効果でアキュリスを装備。そしてホーンを除外し、蘇れ! ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」
ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600
再びレヴの両腕に装備される爪。
「更にドラグニティの神槍を発動! レヴに装備だ」
クローが翼のように展開し、神槍がレヴの右手に収まる。
ドラグニティアームズ-レヴァテイン 攻撃力2600→3400
「神槍の効果でデッキからブランディストックを装備! バトルだ! レヴでハイパースターに攻撃!」
『応!』
レヴが羽ばたき、ハイパースターへ両槍を向ける。
「クローの効果でエクストラデッキの旧神ヌトスを墓地へ送り、効果でプライムを破壊する!」
レヴの背中でクローが蠢き、ヌトスの杖が発射される。
『くっ。しかし、私は・・・・・・』
『銀河眼の光子竜を素材としているから復活できる、と言いたいのか? そこまでデュエルが続くとでも?』
現在、レヴの攻撃力は神槍の効果で上昇している。故に、星河のライフを削りきることができる。
銀星河
LP4200→2700
「これでトドメだ! レヴでダイレクトアタック! レヴェンティンスラッシュ!」
「・・・・・・ふっ」
銀星河
LP2700→0
デュエルが終了し、ソリッドビジョンが消える。
「おー、すげーデュエルだったなぁ。なあ遊羽、次はおれとデュエルしようぜ!」
観戦していた日向が二人へ感想を述べ、遊羽にデュエルを申し込む。
「何でだよ。面倒くせぇ」
「えー、いーじゃんかよー」
日向を冷たくあしらう遊羽を見ながら、星河は考える。
(如月遊羽・・・・・・サイバー・ダークこそ使っているものの、デッキは恐らくドラグニティ。そして、今のデュエル・・・・・・)
相手のカードをとことん破壊し、攻撃を通しに行く戦い方。星河はそこに、真っ直ぐな信念を感じた。
『彼は大丈夫だろう。闇に堕ちたとしても、我々が助ければいい』
(そうだな。それに、あれほど真っ直ぐなデュエルをするんだ、闇堕ちしたとしても、自分がどうすればいいか判断できるだろう)
こうして、彼らは出会った。烏の残り
星河のデュエル内容ですが、彼はまだ研究会に入っていないので、そこまでソリティアしていません。舐めプではないです。
時系列的には、これは本編開始から二年ほど前の話です。
それと、Twitterなるものを始めたので、詳しくは作者ページから。