遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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ソロモン(ハーメルン)よ、私は帰ってきた!

デュエル回です。


孤独姫と結希

『・・・・・・さみしい』

 

 ひとり、体育座りで儚げに佇む少女。その金髪から覗く瞳に浮かぶのは、涙だ。

 

『一人ぼっちは、さみしい。一人で戦うのは、くるしい。あの子の為に戦うのは・・・・・・』

 

 そこで言葉を区切り、彼女は俯き己の膝に視線を下げる。

 

『・・・・・・明日が、来なければいいのに』

 

 彼女の呟きを聞く者は、誰もいなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 彼らが高等部に入学してから、一月ほど経った。

 

 本日の授業は、第七デュエル場でのデュエルである。

 

「それじゃ皆、デュエルの相手は隣の席の人とだ。各自終わったらデータを送信するように」

 

 担任であるダイ・グレファー似の男教師の声に、各々デュエルを始める。

 

「デュエル!」

 

「・・・・・・デュエッ」

 

決闘(ディアハ)!」

 

 次々と開始されるデュエルに、星河もまたディスクを構え、相手に目を向ける。

 

「よろしくね、銀。まあ、私にあなたの相手が務まるか、わかんないけど」

 

 望月結希。最近席替えで隣の席になった彼女はどこか諦めた様子でディスクを構えると、軽くため息をついた。

 

「? まあいい。行くぞ」

 

「「デュエル!」」

 

 ディスクが示した先攻は結希。しかし、彼女は手札を見るなりまたため息をつき、デッキの上に手を置いた。

 

「サレンダーよ、銀」

 

「・・・・・・!?」

 

 意味がわからず、否、脳が理解せず一瞬固まる星河。

 授業のデュエルでサレンダーを行うということは、授業をエスケープしているのとほぼ同じだ。しかし、結希はどこか言い訳じみた口調でそれを否定する。

 

「手札事故よ。それも相当の」

 

 ほら、と結希が見せた手札は、確かに酷いものだった。

 

 『閃刀術式-ジャミングウェーブ』が二枚、『閃刀術式-アフターバーナー』が二枚、そして『錬成融合』。壊滅的な手札だった。

 

「これは・・・・・・酷いな・・・・・・」

 

 何とも言えない表情で固まる星河に、結希は次にドローするはずだったカードを引いてみせる。

 『閃刀機-イーグルブースター』だった。

 

「ね、事故でしょう? これでもドローソースとか入れてるし、これ全部デッキにこの枚数しか入ってないの」

 

 結希はそう話すと、悲しそうに微笑んだ。

 

「そういうわけだから」

 

 言って、結希はデータを教師に送る。

 

 そしてトボトボ歩き去る背中と、()()()()()()()()()()()()見ながら、星河はこれからすべきことを考えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 放課後。

 星河が人を探しながら校舎内を歩き回っていると、その人物は丁度職員室に入るところだった。

 

「・・・・・・望月、いっそデッキを変えてみたらどうだ? せめて授業くらいはマトモにデュエルできないと、進学できないぞ」

 

「・・・・・・はい・・・・・・わかってます」

 

 聞こえてくる会話から、星河は話の内容を理解する。

 

「失礼しました。・・・・・・あ」

 

 扉を閉めるなり星河と目が合い、結希はばつが悪そうにそっぽを向く。

 

「聞こえてたかしら?」

 

「ああ」

 

 星河が即答すると、結希は足元に視線を下げ、悔しそうに唇を噛む。

 

「・・・・・・俺で良ければ話くらいは聞こう。多少は楽になるかもしれない」

 

 結希は驚いた顔で星河を見、躊躇って逡巡し、頷いた。

 

「場所を移そう」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 星河の案内に従い、結希は校庭のベンチに腰掛ける。

 

 その横に星河も座り、結希の言葉を待つ。

 

「・・・・・・私、中学までは一般の学校に行ってたのよ」

 

 ポツリと、観念した結希は話し始めた。

 

 結希には親友がいた。共に学び、遊び、毎日デュエルをした。

 そんな二人はデュエルスクールを受験し、見事結希は合格した。

 

 そう、結希だけが。

 

 親友は涙を流しながら、入学祝だと言って、結希に一枚のカードをプレゼントした。

 

「それが、これ」

 

 『閃刀姫-レイ』。星河はそのカードに鋭い視線を向けたが、すぐにそれを引っ込めると、続きを促すように結希を見た。

 

「それから、春休みの時間を使って私は今のデッキを作った。この子が一番活躍できるデッキを、ね」

 

 しかし、ここである問題が起こった。

 

「どうしても事故るのよ、このデッキ」

 

 本当、どうすればいいのかしらね、と結希は続ける。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 星河にはわかる。彼女が何を望んでいるのか、どうすればいいのか。

 

 しかし、それを教えるにはまず精霊の存在を教えなければならない。そして、それは危険なことだ。

 

(精霊の存在を教えずに、この問題を解決しなければならない)

 

 そう結論を出し、星河は俯く彼女に言う。

 

「デッキを作り直そう。【純閃刀姫】でしかそのカードは活躍できないなんてことはないはずだ」

 

 星河の提案に、結希は驚き、躊躇う。

 

 今のデッキも使いこなせないでいるのに、他のデッキを使えるのか。そして、それは親友への裏切りではないのか。

 

 そんな彼女の心情を読み取った星河は、重ねて言う。

 

「そのカードが―――『閃刀姫-レイ』が切り札になるデッキを作る。別のデッキにするのではなく、作り直すんだ」

 

「でもっ」

 

 結希は俯いていた顔を上げ、反論しようとする。

 そして、どこまでも真剣な星河の目に、貫かれる。

 

 結希の中では、星河は孝之や日向たちと共にふざけているだけの人間だった。自分のしたいことだけをするのだと思っていた。

 だが、今は違う。彼は、自分だけのために真剣な目をしてくれている。

 

(・・・・・・ずるい)

 

 何となく、結希はそう思った。しかし、それを声に出すことはせず、代わりに別の言葉を告げる。

 

「わかった。でも、貴方にも手伝って欲しいわ。このカードを生かすデッキなんて、私は思いつかないもの」

 

 彼女の言葉に、星河は首肯し、ケータイを取り出す。

 

「? 誰に連絡するのよ?」

 

「何、俺一人よりも、三人の方がアイデアは出ると思ってな」

 

 悪戯っ子のように笑う星河に、結希は疑問を深くするばかりだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 翌日、放課後。空き教室。

 学園モノなのに授業描写が殆どないが、学園モノなんてそんなものだろう。遊戯王ではよくあることだ。

 

 それはともかく。

 

「・・・・・・」

 

 結希は言葉を失った。目の前にあるのは、幾つもの詰まれたカードの山。wikiを始めとした大量の資料。そして、三人の男共。

 

「あ、望月。ちわーっす」

 

「聞いたぜ、デッキを作るんだろ? カードとか集めてるから、目、通しといてくれ」

 

 星河だけでなく日向と孝之までもがデッキ作りを手伝うようだ。そのことに、結希はどこか残念に思いながら腹を立てる。

 

「何で、こんな奴らに手伝わせてるのよ! よりにもよってコイツらに!」

 

 ビシィッと指差しながら叫ぶ結希。日向と孝之はよよよと涙を拭う真似をする。

 

「聞きました? 水瀬さん。『こんな奴ら』ですって」

 

「ええ聞きましたよ瑞浪さん。『よりにもよってコイツら』とも言っていましたわ」

 

 オロロンオロロンと泣き真似し早速ふざけ始める二人に目頭を押さえながら、星河は言う。

 

「そこはもうワンオクターブ声を上げた方がそれっぽいぞ。それと口調がまだ曖昧だ、統一するべきだ」

 

 アドバイスを。

 

 絶句する結希に星河は安心しろ、と前置きして、

 

「コイツらは口が固い。・・・・・・信じられないかと思うが、事実だ」

 

 訝しむような目をする結希に星河は弁明する。

 結希も彼らが他人の悪口などを言っているのを聞いたことがないと思い出し、一応大丈夫だと思うことにした。

 

「それで、どんなデッキなの?」

 

 結希が訊くと、三人は「は?」と目を丸くする。

 

「え、何? 何なのよその顔」

 

「何でオレたちが決めるんだよ?」

 

「お前のデッキだろ?」

 

「俺は手伝うとしか言っていないぞ」

 

 三人のセリフから、結希は自分の認識が間違っていたのだと理解する。

 

 彼らがするのはあくまで『手伝い』。どんなデッキにするか、どう戦うのか、それを決めるのは自分自身なのだ。

 

「じゃ、じゃあ、この資料は?」

 

 ならばこの山は何なのか。

 

「『閃刀姫-レイ』と相性のいいカード、デッキのサンプル、カテゴリー研究、イラスト、小説。少しでも関連のあるものを集めたものだ」

 

 星河が何でもない事のように言うが、それは途方もなく大変だったハズだ。それを、彼らは弱音の一つも吐かずに行っている。

 

「・・・・・・でも、なんでイラストや小説まで?」

 

「何か、アイデアが沸くかもしれないだろう。このネオス関連カードっぽい題名の小説にも出ているぞ」

 

「使用者が敵サイドだった気がするのだけど」

 

 敵サイドの方が強かったりするので、むしろ好都合だ。

 

「あ、これは主人公が使ってるな。・・・・・・運命力だけで回してるっぽいから、参考にはならなそうだ」

 

 オッドアイズとサイバースと閃刀姫の混合デッキという内容に、孝之はそれから目を離した。

 

「・・・・・・何で、そこまでしてくれるの? 私、貴方たちにこうまでされるようなこと、した覚えはないわよ」

 

 理由がわからなければ、信用できないのが人間というものだ。

 

「?」

 

 首を傾げ、『困っている奴がいたら、助けるのは当然だろ?』と口にしようとした孝之を、日向が止める。余計疑われるだけだ、と。

 

「・・・・・・なら、これは一つ貸しだ。後でこれと見合うだけ返してもらう」

 

 それでいいか? と星河が目で聞くと、結希は渋々といった様子ながらも頷く。

 

「・・・・・・それで、私はこの山全てに目を通さないといけないのかしら」

 

「嫌だというなら一部でいい。優先順位も付けてある」

 

 よく見れば、『最優先』『優先』『そこそこ?』『まあまあ』『なんじゃこりゃ』『何でこれを資料としたのか、オレにもわからない』『ネタカード』『ネタのセンスが作者レベルにない』などの付箋が資料には貼られている。でも最後のは酷いと思うんだ。

 

「いえ、いいわ。全部に目を通す」

 

 ハイライトが消え、据わった目になった結希は手近にあった資料を手に取り、読み始める。少なくとも後ろ四つの付箋のは読まなくていいのでは? と星河は考えたが、止めておいた。

 

 無粋だと思ったからだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ふぁ〜、ねむ。いやー、はたらいたなぁ」

 

 日向はそう言いながら先ほど星河に差し入れされた『神の恵み、フリッグのりんごジュース100%』を飲む。

 

「お疲れサンデーマンデーチューズデー。まあ、確かに疲れたわな」

 

 『辛い時こそ笑え! スマイル・ポーション』をちびちびと飲みながら、孝之も苦笑する。

 

「うぅ~、頭が痛いわ・・・・・・何でこんなに資料が多いのよ・・・・・・」

 

 『マジシャン・オブ・ブラックカオスMAXコーヒー』の缶を額に当てながら、結希は椅子の上で溶けるように脱力する。商品の名前が長いので略称を考えようという話があるとかないとか。

 

 だが、デッキはできた。いや、駄洒落じゃなく。

 

「試運転は明日にしよう。今日はもう遅いからな」

 

 そう言って、星河は・X・(エクシード)ポテトを食べる。Xの形をしたフライドポテトでありコンビニの人気商品だ。

 

「そうね。暗くなってきたし、もう下校時間になるわ」

 

 窓の外の空と腕時計とを見て結希は言う。

 その言葉をきっかけに、各自荷物をまとめ始める。

 

(さて・・・・・・後は明日どうなるか、だな)

 

 この日は、これで解散となった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 更に翌日、放課後。

 本当に授業の描写がなくて大丈夫かという作者の心配を余所に、彼らは第五デュエル場へと集まっていた。

 

「私、まだ試運転もしてないんだけど・・・・・・」

 

「このデュエルが試運転だ。一人回しよりも、対人戦の方がいいだろう?」

 

 それもそうね、と納得する結希。デッキをセットし、ディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

望月結希

LP8000

 

銀星河

LP8000

 

「私のターン」

 

 結希は手札を見て、久しぶりに戦えそうだと笑う。

 

「サモン・プリーストを召喚、効果で錬成融合をコストにデッキからアステル・ドローンを特殊召喚よ!」

 

召喚僧サモン・プリースト ☆4 攻撃力800→守備力1600

 

アステル・ドローン ☆4 守備力1000

 

「魔法カード、エクシーズ・チェンジ・タクティクス! そしてサモン・プリーストとアステル・ドローンでオーバーレイ! 来なさい、希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

 汎用性もあり専用デッキも組める大正義の下敷きカード。ドローンとタクティクスでそれぞれドローする。

 

望月結希

LP8000→7500

 

(ライトニングまで行けるけど・・・・・・最初からホープ関連を出し過ぎると息切れするわね)

 

 彼女のデッキは純粋な【希望皇ホープ】ではないため、エクストラデッキのホープ関連カードを全て三枚積みにはできなかった。そのため、不用意にランクアップできないのである。

 それと、あまりライフポイントを使うと、簡単に負けてしまうからである。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了よ」

 

望月結希

LP7500 手札2

場 エクストラ:No.39希望皇ホープ 魔法・罠:伏せカード×2 エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「俺のターン」

 

 宣言と共にカードを引き、結希の盤面に目を向ける。

 

(伏せカードは恐らく閃刀速攻魔法・・・・・・いや、魔法カードを捨てられるからツイン・ツイスターなどもあり得るか)

 

 星河たちは完成した結希のデッキを見ていない。故に、どんなカードが伏せられているかわからないのである。

 

「手札の銀河剣聖をコストに銀河戦士を特殊召喚、銀河眼の光子竜を手札に加えトレード・インを発動。フォトン・バニッシャーを特殊召喚し効果でデッキから銀河眼の光子竜を手札に加え再びトレード・イン」

 

 トレード・インが二枚という手札からデッキを回し始める星河。

 

「銀河戦士とバニッシャーでリンク召喚。リンク2、銀河眼の煌光竜」

 

銀河眼の煌光竜 link2 攻撃力2000

 

 門から煌めく竜が舞うと、墓地の『銀河眼の光子竜』が星河の手札へと戻る。

 

「フォトン・クラッシャーを通常召喚し、フォトン・アドバンサーを特殊召喚。そして二体のモンスターをリリース! 逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

 星河が赤い十字架を投擲すると、十字架は光子の戦士たちを取り込み、竜へと昇華する。

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『ホープとの対面とはな・・・・・・原作再現、と言ったところか』

 

 若干のメタ発言をしながら身体を震わすフォトン。再現のためか、身体の色は黒い。

 

「バトルだ。フォトンでホープに攻撃し、効果発動! 自身とホープを除外する!」

 

『ゲートオープン、界放!』

 

 フォトンが銀河(除外ゾーン)へのゲートを開き、そこにホープを巻き込みながら突入する。

 

「次だ。ソルフレアで攻撃」

 

 ソルフレアが口元に光を溜め込み、ブレスを放とうとする。

 

「リバースカード、シャークキャノン発動よ! 銀、アンタの墓地のフォトン・バニッシャーをもらうわ」

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

「・・・・・・ふむ」

 

 現れた光子の銃士を攻撃すれば相打ち。しかし、残せばエクシーズ素材となる。ホープが戻れば閃刀魔法カードは無力化できるので、あえてモンスターを残す必要はない。

 

「ソルフレアの攻撃続行だ。吹き飛ばせ」

 

 ブレスを放つソルフレアに対し、バニッシャーは銃でその口元を撃ち貫く。結果、両者共に爆発した。

 

「バトルフェイズ終了、そしてフォトンが帰ってくる」

 

 再びゲートが開き、ホープが吐き出され、フォトンは彼の持っていたオーバーレイユニットを奪う。奪ったユニットを食らい、フォトンの身体が輝いた。

 

銀河眼の光子竜 攻撃力3000→4000

 

「そう言えばあったわね、そんな効果・・・・・・」

 

 普段は除外までしか使われないため、かなり忘れられている効果だ。

 

「俺はカードを一枚伏せ、ターン終了だ」

 

銀星河

LP8000 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

(ホープが残った・・・・・・モンスターをどかす手段を増やすべきかしらね)

 

 以前のデッキを基準に組んでしまったため、魔法カードとモンスターカードの比率がよくわからない。

 

「モンスターゲートを発動するわ。ホープをリリース・・・・・・残念。一枚目はサモン・プリーストね。更にトラブル・ダイバーを特殊召喚。二体のモンスターでオーバーレイ、エクシーズ召喚! もう一度現れなさい、希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

望月結希

LP7500→7000

 

 これでホープの残機は一体。そう考えて、星河は思い出す。

 

(ホープ・ダブルは元祖ホープ以外にもなれる。ダブル・アップ・チャンスの恩恵が得られなくとも、ライトニングやONEも出せるのか)

 

 直接攻撃はできないのでONEはまだいいが、ライトニングはまずい。素材を使わずに常時攻撃力5000だ。嫌すぎる。

 

「召喚成功時、月の書を発動だ。ホープには裏側になってもらう」

 

「そうはさせないわ。速攻魔法、RUM-クイック・カオス! ホープでオーバーレイネットワークを再構築よ! カオス・エクシーズ・チェンジ! CNo.39希望皇ホープレイV!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV ★5 攻撃力2600

 

望月結希

LP7000→6500

 

 どこぞの司書(TGハイパーライブラリアン)のものであろう鈍器()がホープの意識を奪うべく飛来したが、バリアンのチカラによって回避され、代償として闇墜ちした。なんて大きい代償なんだ。

 

「速攻魔法のランクアップマジックか。そんなのをいれていたんだなぁ」

 

「懐かしいねぇ。最近はダブルから出せるから、あんまり使われてる印象はないわな」

 

 外野が煩いが、つまりそういうことだ。

 

「ホープレイVの効果発動よ。オーバーレイユニットを一つ使って、銀河眼の光子竜を破壊し、その攻撃力分のダメージを与えるわ!」

 

 Vの剣によって砕かれる相棒に顔を顰めながら、星河はカードを発動する。

 

「・・・・・・手札のクリフォトンの効果発動だ。ライフを2000支払い、このターン受けるダメージを0にする」

 

銀星河

LP8000→6000

 

 星河としてはあまり切りたくないカードだったが、結希はまだ召喚権を使っていない上、タクティクスで増えた手札がある。下手に展開されるよりは、ここで牽制しておきたかった。

 

(うーん・・・・・・ここで壁を作っても、閃刀カードの邪魔になるだけなのよね。なら、モンスターは出さないでいるべき、か)

 

 星河の思惑通りに結希はそれ以上は展開せず、ターン終了を宣言した。

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:CNo.39希望皇ホープレイV 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「俺のターン。復活の福音を発動だ。蘇れ、フォトン!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 福音の音色に墓地から目覚めるフォトン。先ほどは簡単に退場させられたが、今は墓地に福音がある。

 

「さて。泥臭い消耗戦と行こうか」

 

 口角を少し持ち上げながら、星河はバトルフェイズに入る。

 

「フォトンで攻撃! 効果発動だ!」

 

「速攻魔法、閃刀機-イーグルブースター! ホープレイVは効果を受けず、墓地に魔法カードが三枚以上あるから戦闘破壊されないわ!」

 

 フォトンが銀河への穴を開き、Vを押し込もうとするが、Vは背中に装着したブースターで加速し脱出する。どうしてこんなにゴツい身体でブースターを付けられるのかわからないが、ZWを装備できるのだからきっとできるのだろう。

 

「逆順処理により、フォトンのみ除外される。バトルフェイズ終了、戻ってこいフォトン」

 

 姿が掻き消え、数秒後に帰還するフォトン。なんともシュールだ。

 

「ターンエンド。さあ、どうする?」

 

銀星河

LP6000 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜

 

「私のターン」

 

 結希はカードを引き、現状でできることを確認する。

 モンスターを展開することはできる。しかしそうした場合、閃刀魔法カードは発動できない。そして、Vがいるのでエクストラデッキから新たにモンスターを出すことも難しい。先ほどの「どうする?」とは、そのことだろう。

 

「・・・・・・確かに消耗戦ね。ホープレイVの効果、銀河眼の光子竜を破壊するわ!」

 

 Vが漆黒の剣を振るい、フォトンを斬り砕こうとする。

 

「復活の福音の効果発動だ。墓地から除外し、破壊を無効にする」

 

 Vの斬撃は、フォトンの前に出現した竜の石像によって阻まれた。

 

「・・・・・・ホープレイVを守備表示に変更するわ。カードを伏せて、ターンエンドよ」

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:CNo.39希望皇ホープレイV 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

 再びカードが伏せられるが、恐らくこのターン引いたカードだろう。結希の残り二枚の手札はモンスターを展開するためのカードだと推測している星河はそう考える。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認すると躊躇いなく発動する。

 

「破滅のフォトン・ストリーム発動だ。伏せカードを除外する!」

 

 フォトンの咆哮により吹き飛ぶ伏せカード。発動しないところを見ると、ミラフォなどのトラップかブラフだろう。

 

「銀河騎士を妥協召喚し、効果で墓地の銀河眼の光子竜を特殊召喚。三体のモンスターでオーバーレイッ! 逆巻く銀河よ、今こそ真の姿を現さん。出でよ、超銀河眼の光子龍!」

 

超銀河眼の光子龍 ★8 攻撃力4500

 

 黒い渦に赤い十字架と二つの光点が呑まれ、紅に燃える銀河竜が爆誕する。

 

「超銀河眼の光子龍の効果発動! ホープレイVのオーバーレイユニットを奪い、攻撃力を得る!」

 

超銀河眼の光子龍 攻撃力4500→5000

 

 攻撃力が増し咆哮をあげるフォトンに、星河はアイコンタクトを送る。

 

(頼むぞ、フォトン)

 

『ああ、わかっている』

 

 フォトンが頷いたのを見て、星河はバトルフェイズを宣言する。

 

「超銀河眼の光子龍で攻撃! アルティメット・フォトン・ストリーム!」

 

 フォトンがブレスを放ち、Vを貫く。その紅のブレスの中に一筋だけ青い光があったことに、結希は気づかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ブレスを介して結希のデッキの世界へと入ったフォトンは、早速探し人を見つけられたことに安堵する。

 

『・・・・・・誰?』

 

 流れるような金髪に、近未来的な衣装。

 閃刀姫-レイ。結希の持つ精霊のカードであり、デッキ事故の原因だ。

 

『私は銀河眼の光子竜。主からはフォトンと呼ばれている』

 

『そう。それで、勝手に人の世界に入ってきて、何の用?』

 

 立ち上がり、どこからか剣を取り出し構えるレイ。それに対し、フォトンは戦闘の意思はないと両手を上げて示す。

 

『私は戦いに来たわけではない。・・・・・・この姿ならば信じて貰えるか?」

 

 フォトンが人間の姿へと変化すると、彼の精霊力が小さくなったことを確認したレイが剣を下ろす。

 

『なら、何故この世界へ来たのですか? ……私のような、捨てられた精霊に用があるとは思えないのですが』

 

 少し自嘲気味な笑むレイに、フォトンは疑問符を浮かべる。

 

「捨てられた? どういうことだ?」

 

『どうもこうもありませんよ。私は、マスターに出逢ったその日に他人の手に渡った、捨てられたのです! それか売られたのでしょう』

 

 フォトンから見て、レイはまだ精霊として幼い。恐らく、結希の親友が初めてのマスターだったのだろう。そして、彼女が結希にレイを渡したことで、捨てられたと思い込んでしまったらしい。

 

「君は捨てられてなどいない。君のマスターは、君を親友へプレゼントしただけだ」

 

『だとしても! ・・・・・・あの子は私を一人で戦わせようとしました。たった一人で、戦えるわけがないのに』

 

 なるほど、とフォトンは頷く。

 

 彼女は、幼いだけだ。幼い故に友人を求め、しかし彼女のテーマがそれを難しいものにした。

 レイが属す閃刀姫は一人で戦うことに特化したテーマであり、彼女を最大限に活かそうとすれば、彼女以外のモンスターは手札誘発以外は入れないだろう。

 そして、結希は手札誘発モンスターすら入れなかった。純閃刀姫を使いこなしてからにしよう、と思っていたのだ。

 

「それで、この世界に引き篭もったのか」

 

『・・・・・・そうです。そうすれば、あの子は私を手放すでしょうから』

 

 引き篭もり、自分や自分を戦いに出そうとするカードを引けないようにした。

 

「・・・・・・はぁ。呆れたよ、君は結希が君のためにしていることを知ろうともしていない!」

 

 かなり怒った様子のフォトンに、レイは身を震わせる。

 

「彼女は、結希は! 君と共に戦おうと、それ以外のデッキを使わず、事故するとわかっていながらもずっとそのデッキを使い続けていたのだぞ! それでも駄目だったから、君のためにデッキを作り直し、そして、今デュエルしている!」

 

 フォトンは結希に干渉し、彼女の見た光景を映し出す。

 

 それは、結希がレイのために資料を読み漁り、頭を捻りながらデッキを組み、そしてデュエルしている場面だった。

 

「君が引き篭もっている間、彼女は苦悩し、苦しんでいた。それを君は知ろうともせずに・・・・・・!」

 

 フォトンは星河に似て正義感が強い。そのため、彼女の我儘な行いに激昂していた。

 

『・・・・・・、あの子は、何でそんなに』

 

「決まっているだろう。君を大切に思い、君と共に戦いたいと望んだからだ」

 

 フォトンの言葉に、レイは驚愕する。

 

「後は君次第だ。彼女と共に戦うか、まだここに引き籠もるか。好きにするといい」

 

 そう言って、フォトンは竜の姿へ戻ると、結希のデッキ世界から出て行った。

 

「・・・・・・私、は」

 

 残されたレイは、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 星河がターンを終了し、次は結希のターンだ。

 

(やっぱりミラフォは破壊される運命なのね・・・・・・まあ、どうしようもないか)

 

 先程破滅のフォトン・ストリームで除外されたカードに苦笑しながら、結希はデッキに指をかける。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認し、結希は目を見開く。

 

「・・・・・・最高のタイミングじゃない。さあ、初陣よ! 閃刀姫-レイを召喚!」

 

閃刀姫-レイ ☆4 攻撃力1500

 

『・・・・・・初めまして、マスター。閃刀姫-レイ、出撃します』

 

 登場するなり結希へ頭を下げるレイ。そのことに結希は驚きつつも応える。

 

「! ええ、頼むわよレイ! 術式展開、モードウォーター!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-シズク、換装!』

 

閃刀姫-シズク link1 攻撃力1500

 

 レイの頭上から青い門が降り、レイの武装となる。

 

「シズクの効果で、超銀河眼の光子龍の攻撃力はダウンするけど・・・・・・あまり関係ないわね。カードを一枚伏せてターンエンド、終了時にシズクの効果でデッキから閃刀起動-エンゲージを手札に加えるわ」

 

超銀河眼の光子龍 攻撃力4500→4100

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:閃刀姫-シズク 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「・・・・・・上手くいったようだな、フォトン」

 

『ああ、説教臭いことをしてしまった。今思い出すと羞恥心で死ねる』

 

 紅の身体で頬を染めるフォトン。正義感から言った言葉に、今更恥ずかしくなったらしい。

 

「恥ずかしがることじゃない。己の正義に従った結果なら、胸を張るべきだ」

 

『・・・・・・星河、君は本当に私より年下か? 君の父親が君くらいの年齢だった時は、もっと子供らしかったのだが』

 

 それについては星河の出自なども関わってくるため、星河は話を切った。

 

「俺のターン。バトルフェイズに入る」

 

 フォトンで攻撃しようとした星河に、結希は伏せていたカードを発動する。

 

「リバースカード、星遺物の目醒め! リンク召喚を行うわ! 術式展開、モードランド!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-カイナ、換装!』

 

閃刀姫-カイナ link1 攻撃力1500

 

 茶色の門がシズクのアーマーを外したレイを足元から包み込み、四本の腕と鎧へと変わる。

 

「相手ターンにリンク召喚か・・・・・・星遺物の目醒めが速攻魔法でなくて良かったと本当に思う」

 

 そうした場合、かなりの壊れカードになっていただろう。並べたモンスターで殴り、ヴァレルソードに変えて追撃、といった具合で。

 

「カイナの効果で、超銀河眼の光子龍はこのターン攻撃できないわ」

 

 カイナがフォトンの四肢を押さえ込み、行動できないようにする。

 

「・・・・・・カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

 

銀星河

LP6000 手札1

場 エクストラ:超銀河眼の光子龍 魔法・罠:伏せカード

 

「私のターン。このターンで終わりにするわ、銀!」

 

「やってみろ、望月」

 

 自身を指差し宣言する結希に、星河は笑みを浮かべながら答える。

 

「先ずはエンゲージでホーネットビットを手札に加えて一枚引くわ。発動して、トークンを特殊召喚! モンスターゲート!」

 

 墓地に魔法カードを増やすつもりか、と察した星河。

 

『一枚目でモンスターカードだったら面白いな』

 

(フォトン、折角のレイの晴れ舞台で、なんというフラグを)

 

 案の定、一枚目はモンスターカードだった。

 

「『フォトン・スラッシャー』・・・・・・通常召喚できないカードだから、問題なしね!」

 

「フラグを回収しながらも止まらないだと!?」

 

 これには星河もびっくりだ。

 

「マルチロール、ジャミングウェーブ、おろかな副葬、エリアゼロ、ベクタードブラスト、ウィドウアンカー、ハーキュリーベース、エクシーズ・チェンジ・タクティクス、ダブル・アップ・チャンス、RUMクイック・カオス、アステル・ドローン。アステル・ドローンを特殊召喚するわ」

 

アステル・ドローン ☆4 守備力1000

 

 送られた魔法カードは十枚。レイが出たためか、デッキが結希の味方をしている。

 

「通常召喚よ、召喚僧サモン・プリースト。サモン・プリーストとアステル・ドローンでオーバーレイ、エクシーズ召喚! No.39希望皇ホープ・ダブル!」

 

No.39希望皇ホープ・ダブル ★4 攻撃力2000

 

 カイナのリンク先に霊体のホープが浮遊する。

 

「ホープ・ダブル・・・・・・!」

 

「効果発動よ! オーバーレイユニットを一つ使って、ホープをエクシーズ召喚! デッキからダブル・アップ・チャンスを手札に加えるわ」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500→5000

 

 ホープが実体を得、その喜びで攻撃力が倍になる。

 

「次よ! 術式展開、モードフレイム!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-カガリ、換装!』

 

閃刀姫-カガリ link1 攻撃力1500

 

 赤い門がレイの左腕から通り、右手まできたところで刀の形を取る。

 

「カガリの攻撃力は、私の墓地の魔法カードの数だけ上がるわ!」

 

閃刀姫-カガリ 攻撃力1500→3200

 

 墓地には十七枚の魔法カード。よって攻撃力は1700上昇する。

 

「バトル! ホープで超銀河眼の光子竜を攻撃!」

 

 ホープが有頂天でフォトンの首に落とす。

 

『くっ、これだから主人公のカードは・・・・・・』

 

 そう悪態をつき、フォトンは破壊される。

 

銀星河

LP6000→5500

 

 小さく、しかし確かに削られる星河のライフ。

 

「カガリで攻撃、ここでホープの効果発動よ! 攻撃を無効にするわ!」

 

『フルチャージにて待機します』

 

 カガリが剣に炎を纏わせ、上段に構えた所で止める。

 

「速攻魔法、ダブル・アップ・チャンス! カガリの攻撃力は倍に、そしてもう一度攻撃できるようになるわ!」

 

閃刀姫-カガリ 攻撃力3200→6400

 

『オーバーチャージ! いつでも行けます、マスター!』

 

「カガリでダイレクトアタック! フレイム・スラッシュストライク!」

 

 大きく膨れ上がった焔を纏った剣が、振り下ろされる。

 

(いいムードだし、この辺りが潮時か)

 

 星河の手札には、二枚目の『クリフォトン』がある。しかし、それを使わず攻撃を受けた。

 

銀星河

LP5500→0

 

 デュエルが終わり、結希はしばし勝利の余韻に浸る。そして、星河の方を向いた。

 

「それじゃ、説明してもらうわよ? この子のこと」

 

 結希は自分のそばで佇むレイを指しながら、見惚れるほどの笑みを浮かべた。




作者のスーパー言い訳タイム

テストが終わったと思ったら直後に遠足、そして一週間後に体育祭。そして図書委員の仕事でリレー小説やビブリオバトル。このハードスケジュールではハーメルンを開くことも難しかったのです。
・・・・・・いえ、本当デスヨ? 決して感想欄に出没してたとか、そんなことはないデスヨ?

……はい、すいませんでした。1万2千字行ったんで許してください。

過去編だから他作品ネタが微妙に使い辛い今日この頃。それでも使うんですが。
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