遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
折角お金が貯まったのにハリファイバーを買いにいく時間がない。
学校からお送りする、デュエル回後編です。
生徒会。選ばれた生徒のみが入ることを許された神聖なる球団ではなく会である。
「はぁ、はぁ、仕事に追い詰められるこの感覚、この快感・・・・・・! 実にイイ!」
・・・・・・選ばれた生徒のみが入ることを許された神聖な会である。
「なー、学校にライディングデュエル用のコースって設置できないかなー?」
・・・・・・選ばれた生徒のみが・・・・・・
「皆、真面目に働こう! まずはお菓子を食べて、ゲームをすることから!」
・・・・・・選ばれた生徒が残念な会である。
「・・・・・・」
彼らを無視しながら、淡々と仕事をこなす虹花。彼女が生徒会長になれたのは、外見の美しさの他に、この仕事力の高さもある。
「ほら、真宮くんも! まずはお菓子を・・・・・・」
残念の一人が虹花に『オーバー・ザ・レイン棒』を差し出すが、遊羽が軽く睨むとその手を引っ込めた。
「・・・・・・失敗したな。生徒会がこんなところなら、もっと早くから手伝えばよかったぜ」
書類をまとめ、判子を押し、新たに書類を作りながら、遊羽は呟く。
「大丈夫ですよ、遊羽。彼らには彼らの仕事がありますから」
パソコンを使って今月の出費額をまとめ終わった虹花は、伸びをしながら答える。
その際、決して小さくない胸が強調されたが、それに目を向ける者はいなかった。
一人はドM、一人はマイペース、一人はアホだからだ。
「会長、もっと仕事ありませんか? なるべく今日中で終わらなそうなモノで」
その内のドM、副会長の五木 葵(いつき あおい)は自身をもっと追い詰めるべく仕事を要求する。それが終われば次の仕事、終わらなければ先生方からの説教、どちらも美味しい結末のため、躊躇はない。
「んー、なら自販機の下の方にボタンを付けようよー。背が低い子のためには、それがいいと思うなー」
マイペースそうな雰囲気を醸し出すのは会計の轟 真緒(とどろき まお)。因みにその案は先月も出されており、予算の問題で踏み台を設置することで議決している。
「ふーむ、ならばキミにもお菓子をあげよう。『遊戯王ウエハース』というありそうでないお菓子だ! なんでないんだろうな! バトスピやデュエマにはあるのにな!」
その結果がポテチであると気づかないアホが書記の水卜 奈津(みうら なつ)。字は達筆で記憶力もいいが、いかんせんアホの子なので成績もそこそこなアホだ。
「なー副会長、コースはいい案だと思うんだよなー。ライディングデュエルの授業もした方がいいって、なー?」
ライディングデュエルのためのD-ホイールに乗るのに専用のライセンスが必要であり、それを手に入れるための研修があり、更にそれにはお金がかかるとまで書けば予算が足らないということに誰でも気付くだろう。そもそも、コースを造るお金もない。
「いえ、予算が足りませんし工事のためのスペースもありません。できて夏休みですが今年の夏休みは中等部の方で使うそうなので無理です。それと工事の騒音について配布物や近所への謝罪もしなくては、っはあ、考えただけで涎が・・・・・・実行できないのが残念で仕方ありません」
完全にアウトな顔で答える
「んー? 美味い、なにこれ」
「ああ! それって
ちなみにこのアホ、栗棒などを製造している大手お菓子メーカーの社長の息子なのである。
「なるほどなー。なー、今度ウチで栗棒フェアやろうと思うんだけど、どう?」
このマイペース、大手ショッピングモール会社の跡継ぎなのである。
「ふむ! いいだろう! 商談成立だ!」
ガッシリと握手mを交わす二人。尚、今は昼休みで、ここは学校である。
「・・・・・・虹花、何でこんな奴らが生徒会に選ばれたんだ?」
「投票前の演説で、それぞれ企業の商品を校内で格安販売すると宣言したんです」
狂っているな、この学校。
遊羽はそう再認識した。
ーーーーーーーーーー
「なら、デュエル続行だね」
戦がそう言うと、スターヴが融合の渦の中へと沈んでいき、グラットンがソリッドビジョンで映し出される。トラックブラックは食い散らかされたままだ。
「? どういう・・・・・・」
「グラットンには融合、シンクロ、エクシーズの素材にできないっていう効果があるんだよ。だから、ルール的にはスターヴじゃ食べられない」
先程スターヴが食べたのはあくまで『具現化したグラットン』であって、カードのグラットンではない。
簡単に言うと、先程のスターヴの行動は、デュエルに何ら関係のないことだった、ということだ。作者のミスによる苦しい言い訳だが、どうか許していただきたい。
「・・・・・・なら遠慮なくやらせてもらいます! グラットンでスターダスト・チャージ・ウォリアーに攻撃! 効果発動! 攻撃対象モンスターを除外する!」
『もう十分にドローしたぜ・・・・・・』とグラットンに喰われるチャージ・ウォリアー。しかし途中で喰われることに抵抗が出てきたのかもがき出したが、既に口の中だった。
「月鏡の盾の効果で、フィールドを離れたときに500ライフを払ってデッキの上か下に行くよ。デッキボトムへ」
遊民戦
LP6500→6000
「シールでトラックブラック、の残骸? を攻撃!」
遊民戦
LP6000→5600
スターヴに食われて残った彼の一部を、シールは遠慮がちに吹き飛ばした。
「メインフェイズ2! 貪欲な壺を発動します! フォルゴ、フェニックス、マーメイド、ハリファイバー、サイキック・リフレクターをデッキに戻して二枚ドロー! シールの効果を発動して、手札からフィロを特殊召喚します。来い、フィロ!」
空牙団の伝令 フィロ ☆1 守備力0
シールが文書を作成すると、それを届けるべくフィロが駆け寄る。
「シールの効果発動! 墓地のラファールを手札に加えます! そしてフィロの効果でラファールを特殊召喚。来い、ラファール!」
空牙団の英雄 ラファール ☆8 攻撃力2800
フィロから伝令を受け取ったラファールが戦線に復帰し、さらに仲間を集めるべく吠える。
「ラファールの効果と、フィロの効果を発動! フィロの効果で墓地からビートを特殊召喚! ラファールの効果でデッキの上から四枚を見て、ウィズを手札に加える!」
しかし、これで場は埋まった。ならば、次にすることは決まっている。
「シール、フィロ、グラットンをリンクマーカーにセット! その刀で押し通すは、背中に背負った大義! リンク召喚! 空牙団の大義 フォルゴ!」
空牙団の大義 フォルゴ link3 攻撃力2400
仲間の呼びかけに応え、大義を掲げる獣戦士が復活する。
「フォルゴの効果で、リンク素材になった種族以外の空牙団をデッキから特殊召喚します! 来い、リコン!」
空牙団の飛哨 リコン ☆2 守備力500
ドンパの仇を討たんとばかりに、リコンがフォルゴの召集に応じる。
「ビートの効果でデッキからヘルマーを手札に加える! そしてビートの効果で特殊召喚。来い、ヘルマー!」
空牙団の舵手 ヘルマー ☆3 守備力2000
ビートがデッキから引き籠もり気味の舵手を引っ張り出す。
「リコンの効果発動! 相手フィールドに伏せられたカードを破壊する! 一番右のカードです!」
特にチェーンもなく破壊される戦の『立ちはだかる強敵』。
「相手カードが破壊されたことで、フォルゴの効果! 三枚ドロー!」
なんというか、回りすぎな気もするが、そこは流石主席ということだろう。
「ヘルマーの効果で手札から空牙団を特殊召喚! 来い、ウィズ!」
空牙団の叡智 ウィズ ☆7 守備力2800
ヘルマーがコミュ障を発揮し仲間との間に溝ができそうなところで、ウィズが助けに入る。
「ウィズの効果! ウィズ以外のフィールドの空牙団の種類だけライフを回復する! 更にヘルマーの効果! 手札を一枚捨てて、一枚ドロー!」
久我修也
LP8000→10500
「ヘルマーとビートでリンク召喚! トロイメア・フェニックス!」
トロイメア・フェニックス link2 攻撃力1900
増えた手札から『サイキック・リフレクター』がコストにされ、戦の伏せカードを割る。
「・・・・・・『奇跡の蘇生』?」
「そう。このタイミングじゃ使えないね」
疑問を覚えた修也だったが、気にしないことにした。
「リコンの効果発動! 手札のダイナを特殊召喚! 来い、ダイナ!」
空牙団の豪傑 ダイナ ☆6 攻撃力2500
出番がないことを不満に思ったのか、ダイナがリコンを驚かし、笑いながらフィールドに出る。墓地からブラーヴォの『俺は?』という声が聞こえたかもしれないが気のせいだろう。
「ダイナの効果! 場のダイナ以外の空牙団の数、相手の墓地のカードを除外します! オレが選ぶのはチューニング・サポーター三枚とスターダスト・チャージ・ウォリアー」
あの大量ドローがよほどトラウマだったのか、本能的に修也はそれを選んだ。
「オレはカードを伏せてターンエンド! お待たせしました、先輩のターンです」
久我修也
LP10500 手札5
場 エクストラ:空牙団の大義 フォルゴ メイン:空牙団の英雄 ラファール 空牙団の飛哨 リコン 空牙団の叡智 ウィズ 空牙団の豪傑 ダイナ トロイメア・フェニックス 魔法・罠:伏せカード×2
「僕のターン、ドロー」
これで戦の手札は五枚。しかし伏せていたカードの半分は破壊され、墓地のカードも除外されている。
(でも良かった。本命が破壊されなくて)
戦はそうほくそ笑む。
「異次元をからの埋葬発動。除外されたチューニング・サポーターとジェット・シンクロン、ボルト・ヘッジホッグを墓地に戻すよ。そして大欲な壺を発動。残りのサポーターとチャージ・ウォリアーをデッキに戻して一枚ドロー」
これでは芸がないけれど、と戦は前置きして、一枚のカードを使う。
「ダーク・バーストを発動してジャンク・シンクロンを手札に戻して召喚! 効果で墓地からチューニング・サポーターを特殊召喚して、地獄の暴走召喚!」
「幽鬼うさぎ!」
毎度過労死する調律師に、うさぎは刀でもって殺さんとす。
しかし、それは足下から伸びた手によって遮られた。
「墓穴の指名者」
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300
チューニング・サポーター ☆1 守備力500
前のターンをなぞるように展開される盤面。
「シンクロ召喚。レベル6、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」
スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000
若干ゲッソリとしながら剣を構える星戦士。
「効果で四枚ドロー。そしてジェット・シンクロンとボルト・ヘッジホッグを前のターンと同じように特殊召喚」
ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0
ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800
修也の本能がヤバいということと安心感を伝えてきたが、彼にはそれが何故か全くわからなかった。
「三体でリンク召喚! リンク3、デコード・トーカー・エクステンド!」
デコード・トーカー・エクステンド link3 攻撃力2300
門をくぐってデコード・トーカーが現れ、通り抜けた門が新たな鎧へと変化し金色の電脳戦士が誕生する。
「バトルフェイズ、速攻魔法ライバル・アライバルを発動! 手札からモンスターを召喚する! おいで、ジャンク・シンクロン」
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300
チューニング・サポーター ☆1 守備力500
オレンジ帽子の調律師がフライパンロボを墓地から引っ張り出すと、それに便乗して黒ずくめの怪し気な戦士が姿を表した。
ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800
「リバースカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」
「な、バトルフェイズ中に召喚してシンクロ召喚!?」
驚愕する修也だが、戦にとってはいつも通りだ。
「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング! 集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! ジャンク・ウォリアー!」
ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300
『ようやく、よーやく出番ですぞ!』
ぶんぶん腕を回しながらフィールドに踊り出るジャン。しかし、この盤面をどう覆すのか。
「ジャンク・ウォリアーの効果、チェーンしてエクステンドの効果、チェーンしてリビングデッドの呼び声、更にチェーンして奇跡の蘇生!」
「二枚目!?」
ならば、先程破壊したのはブラフだったのか、と修也は察した。
「奇跡の蘇生の効果でナイトエンド・ソーサラーを、リビングデッドの効果でハンディ・ギャロップを特殊召喚!」
ナイトエンド・ソーサラー ☆2 チューナー 攻撃力1300
ハンディ・ギャロップ ☆1 攻撃力?
墓地からフィールドに降り立つ二体のモンスター。
「攻撃力が、決まってない?」
「ハンディ・ギャロップの攻撃力は、君と僕のライフポイントの差分だけ上がる。つまり」
ハンディ・ギャロップ 攻撃力?→4900
かなりのハンデに燃えるギャロップ。名前の通りだ。
「攻撃力、4900!?」
またも驚愕する修也だが、本当に恐ろしいのはこれからだ。
「エクステンドの効果で、このターンエクステンドは二回攻撃できる。そして、ジャンク・ウォリアーの効果。僕の場のレベル2以下の攻撃力分、自身の攻撃力を上げる」
「!?」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→8500
新入生は反応が新鮮でいいね、とドS思考に走りながら、戦は処理を進める。
「ナイトエンド・ソーサラーの効果で、墓地のグラットンは除外してもらうよ」
スパンッ!と杖に魔力の刃を精製し切り裂くナイトエンド・ソーサラー。
(よし、これで純粋にデュエルできる)
まあ、もう終盤なのだが。
「速攻魔法、スクラップ・フィスト。ジャンク・ウォリアーに戦闘ダメージ倍、守備貫通、破壊さえない、破壊できなくても倒す、それと相手の効果発動を封じる効果を付与するよ」
「ッ!?」
では、伏せてあった『空牙団の修練』も、先程伏せた『聖なるバリア-ミラーフォース-』も意味がなくなってしまう。
「それじゃ、楽しいデュエルだったよ」
それが、死刑宣告だった。
『スクラップ・フィストォ!』
ジャンが放った拳はフォルゴを襲う。彼も刀で競り合うが、文字通り力の格が違う。
刀は中間ほどでへし折れ、その余波が修也のライフを刈り取った。
久我修也
LP10500→0
ーーーーーーーーーー
放課後、空き教室。修也は戦に呼ばれていた。
「先輩、ご迷惑おかけして、すいませんでした」
そう謝罪し、頭を下げる。
「いや、気にしなくていいよ。それより、
ヒラヒラと手を振って問題ないと示し、それから闇のカードについて訊く。
「それが、何も。何であのカードを持っていたのか、昨日の夜から何をしていたのか、さっぱり覚えてないんです」
「やっぱりな」
戦のそばで話を聞いていた遊羽は軽く舌打ちする。
「やっぱり、っていうのは?」
「いや、何でもねぇ。とにかく、お前はもう何ともないってことだ。良かったな」
もう用は済んだと帰り支度を始める遊羽に、修也は食い下がる。
「待ってくださいよ。オレは巻き込まれたんだ、どういうことなのか聞く権利があるはずだ!」
「ねぇよ」
バッサリと切り捨てる遊羽に、修也は言葉を詰まらせる。
「呼んだのだって、手がかりを探すためだ。お前をこれ以上関わらせるつもりはねぇ」
それだけ言うと、遊羽は空き教室から出て行った。
呆然とする修也に、戦は軽く声をかける。
「えっと、久我くん、だっけ?」
名前を呼ばれ、振り返る修也。
「君は、精霊が見える?」
戦が何もないところを指し示し、修也は困惑する。
「なら、やっぱり関わらない方がいいよ。危ないしね」
意味がわからない修也を置いて、戦もまた教室を後にした。
ーーーーーーーーーー
「何であんなキツい言い方したの、遊羽くん」
虹花のところにでも行くのか、生徒会室の方向へ歩く遊羽に追いついた戦。
「戦力は足りてるだろ。それに、主席を危険に曝してみろ、また面倒なことになる」
淡々と言う遊羽だが、戦は彼の真意をなんとなく察した。
「彼をこれ以上巻き込まないために、わざと突き放す言い方をしたんでしょ?」
少しからかうようなニュアンスを含んだ戦の物言いに顔をしかめながら、遊羽はそれを肯定する。
「ああ。いたとしても、足手まといだからな」
ならば、いない方が、巻き込まない方がいい。
「それと、グラットンに乗っ取られていた時の記憶はないんだろ? それを思い出して苦しむかもしれねぇ」
不安要素はなるべく遠ざけたい。遊羽はどこまでも冷たかった。
「そうだね。今はただのカードだから、彼が持っていて問題ないけど。それに、結構弱い部類だったし」
カードに縛られ、デュエルの中でしか実体化できない。力はそんなに強くなかったのだろう。
「元々あんな奴じゃなかったってことは、今年の一年は期待しても良さそうだな」
彼が朝に述べたようなことは、なかったということだ。
「そうだね。じゃ、僕はもう帰るね」
「ああ、またな」
そう挨拶して戦と別れると、遊羽は虹花の手伝いをしに生徒会室へ向かった。
あのメンバーに対して不安しかなかったからだ。
空牙団は強い。でも脳筋の方が強い。
さて、皆様は生徒会の彼らを、男女どちらで読みましたか? どっちの性別にもありそうな名前で書きましたが。
男子だと思った方は女子として、女子だと思った方は男子として読んでみてください。面白いですよ、多分。きっと。メイビー。