遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
前話を読んでいない方はそちらからお願いします。
「「デュエル!」」
鴻上式
LP8000
龍塚息吹
LP8000
「自分のターンです。先ずは速攻魔法、クイック・リボルブ発動。デッキからヴァレット・トレーサーを特殊召喚します」
ヴァレット・トレーサー ☆4 チューナー 守備力1000
赤い弾丸竜がフィールドに現れると、息吹はひゅうと口笛を吹く。
「キミもドラゴンを使うのか♪ いいね、もっとドラゴン使いが増えて欲しい」
そんな彼に「なんだこいつ」という顔をする式。彼女から見てもある息吹は変人にジャンル分けされるらしい。
「フィールド魔法、リボルブート・セクターを発動します。効果でヴァレットモンスターの攻守は300アップします」
ヴァレット・トレーサー 守備力1000→1300
銃のリボルバー部分と思わしき回転円柱がフィールドに出現。
「リボルブート・セクターの第二の効果。手札からヴァレットモンスター二種を特殊召喚します」
シルバーヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力100→400
マグナヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力1200→1500
円柱から射出された二種の弾丸竜。それぞれ形が異なるのに、同じリボルバーに何故入れるのだろうか。
「ヴァレット・トレーサーの効果。場の表のカード、リボルブート・セクターを破壊して、デッキからヴァレットモンスターを特殊召喚します」
メタルヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力1400→1700
トレーサーが円柱に突っ込み爆発し、若干焦げたトレーサーが黒ずんでしまった鋼の弾丸竜を連行してくる。
「開け、我が道を照らす未来回路」
現れる
「ヴァレット・トレーサーとメタルヴァレットでリンク召喚。リンクツー、ブースター・ドラゴン」
ブースター・ドラゴン link2 攻撃力1000
式のデッキが「ヴァレット」を中心にしているとわかっていた息吹だが、これまでの展開で守護竜を混ぜていない純ヴァレットだろうと推測する。というか、
「ブースター・ドラゴンの効果を発動します。場の表のモンスター一体を対象に、攻守を500アップします」
ビシッ、とシルバーヴァレットを指差す式。ブースター・ドラゴンが力を注ぐと、銀の弾丸竜がそれに反応する。
「シルバーヴァレットの効果。リンクモンスターの効果の対象となった時、このカードを破壊することで、相手のエクストラデッキを見て一枚を除外します」
「言ってること随分ムチャクチャだね!?」
後輩の邪魔はするまいと黙っていた息吹だったが、その効果に思わず声を上げる。
「では、エクストラデッキを拝見します」
「どーぞー」
息吹の声に反応せず、ディスクを操作し彼のエクストラデッキを確認する。
(・・・・・・? 彼はペンデュラム使いだと銀先輩に聞いていましたが、デッキを変えたのでしょうか」
表示された彼のエクストラデッキには『ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム』などはなく、代わりに『天球の聖刻印』などのドラゴン族リンクモンスターが三枚ずつと、『ブラックローズ・ドラゴン』などの汎用ドラゴンが入っているのみだった。
「ではNo.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシーを除外します」
シルバーヴァレットが弾丸にメタモルフォーゼし、ブースター・ドラゴンが発射はできないので息吹のエクストラデッキ目掛けて投擲した。
「場にヴァレットモンスターがいることで、手札からアブソルーター・ドラゴンを特殊召喚します」
アブソルーター・ドラゴン ☆7 守備力2800
弾丸ホイホイ機械竜。
「ブースター・ドラゴンとマグナヴァレット、アブソルーターでリンク召喚。リンクフォー、ヴァレルロード・ドラゴン」
ヴァレルロード・ドラゴン link4 攻撃力3000
門から顕現したるは弾丸竜の
「アブソルーターの効果でデッキからメタルヴァレットを手札に加え、エンドフェイズ。シルバーヴァレットの効果でデッキからマグナヴァレットを特殊召喚します。これでターンを終了します」
鴻上式
LP8000 手札1
場 エクストラ:ヴァレルロード・ドラゴン メイン:マグナヴァレット・ドラゴン
手札は割れているが、それでも恐ろしい盤面だ。二体の効果を合わせれば、フリーチェーンでモンスターを墓地へ送ることができる。
「オレのターン、ドロー♪ じゃあ、バイス・ドラゴンを特殊召喚」
バイス・ドラゴン ☆5 守備力2400→1200
懐かしいモンスターだが、式は存在を知らないらしく首を傾げ、ディスクを操作して効果を見る。
(なるほど、あまり強くは感じませんね。放置していいでしょう)
式はヴァレルロードの効果を使わずスルーした。
「バイス・ドラゴンをリリースして、アドバンス召喚! さあ舞い踊れ! オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
現れた赤い竜とその召喚方法に、式は驚く。
(オッドアイズカテゴリーにあんなカードは無かったはず・・・・・・それに、アドバンス召喚? あんな化石召喚法をいったい何故?)
その疑問を読み取った息吹は、口角を上げながら解説フェイズへ移行する。
「アドバンスがアドバンス召喚に成功したとき、相手のモンスター一体を選んで破壊し、その攻撃力分だけダメージを与えるよ♪」
「っ!? ヴァレルロードの効果をマグナヴァレットを対象に発動します! マグナヴァレットの効果で、このカードを破壊しそのドラゴンを墓地送りにします」
アドバンスが吠え、ヴァレルロードに噛み付くと、ヴァレルロードはマグナヴァレットを取り込んで弾丸にし、撃ち出す。
結果は相打ちだった。
鴻上式
LP8000→5000
しかし、これで式のフィールドはがら空き。手札もメタルヴァレットだと割れている。
「バイス・ドラゴンを除外してワイバースターを特殊召喚、そしてワイバースターでリンク召喚、守護竜エルピィ♪ ワイバースターの効果でコラプサーペントを手札に加えて、特殊召喚♪」
守護竜エルピィ link1 攻撃力1000
暗黒竜コラプサーペント ☆4 攻撃力1800
流れるような連続召喚。そして締めとばかりに一枚のカードを発動する。
「復活の福音発動♪ 蘇れ、アドバンス!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
復活するアドバンス。効果は発動しないが、打点としては十分だ。
「バトル♪ コラプとエルピィでダイレクトアタック!」
鴻上式
LP5000→4000→2200
抵抗できずにドンドンと削られるライフ。先行の展開に全てを費やした結果だ。
「アドバンスでトドメだ♪」
鴻上式
LP2200→0
うなだれ、言葉を発さない式に、息吹は心配になり声をかける。
「え、あの、大丈夫? オレ何かした?」
その狼狽えようはかなりのもので、新入生を泣かせたらマズい、という危機感が滲み出ている。
「・・・・・・もう一回、もう一回お願いします」
「え?」
泣いていた訳じゃないのか、という安心感と困惑から聞き返す。
「もう一回お願いします。今度は自分が後攻で。次は勝ちます」
なるほど、負けず嫌いなのか。
息吹は完全に理解した。
「えーと、今時間ないんだけど・・・・・・」
「いえ、お願いします。大丈夫です、五分で終わらせます」
連撃の帝王や天球の聖刻印で相手ターンにもアドバンスを出すからそんなに早くは終わらないと考える息吹だが、デッキ内容がバレるため躊躇していると式が例の『満足アンカー』を射出し息吹のデュエルディスクを強制デュエルモードにする。
「え、ちょ、あのっ?」
「どうぞ、カードを五枚引いて始めてください」
困惑する息吹の左腕を、誰かが掴んだ。
「『満足アンカー』には安全装置が設計されている。だから、やり方さえ知ってれば誰でも外すことができるぜ」
解説と共に『満足アンカー』を息吹のディスクから外したのは、我らが主人公遊羽だ。
「遊羽・・・・・・!」
「じゃ、さっさとどけ。次のデュエルが詰まってるんだよ」
感涙する息吹を無造作にスタジアムから下ろし、次の相手を案内する。
「次、仁藤。一年相手だからって手加減しなくていいぞ」
「了解いたした。全力を出させていただこう」
久しぶりの登場、仁藤実篤。二刀流デッキというガガガザムライとチャンバライダーを軸にしたデッキは今も健在だ。
「遊羽、オレを助けたのって・・・・・・」
「順番が詰まっていたからだ。他にどんな理由があるんだ?」
ですよねー、とため息をつく息吹。二人が仲良くなる日はまだまだ遠い。というか来るかどうかも怪しい。
久しぶりの出番の仁藤くん。服部? ああ、そのうち出るのではないでしょうか、そのうち・・・・・・。
次回は遊羽の春休みまで遡ります。幕間のようなものですね。
二週間以内には投稿したいですね。