遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
虹花の着付けを終え、着物姿の彼女と共に家を出る遊羽。こちらはいつもの普段着だ。いつもではない普段着とは何だろうか。
連れ立って歩く二人が向かうのは『アベシ神宮』。ネーミングセンス皆無だが、【ABC-ドラゴン・バスター】を象徴とし、【オベリスクの巨神兵】を祀っているそこそこ由緒正しき神社である。
道行く人は虹花と同じく浴衣を来ていたり、おめかししている女性が多かった。浴衣を着た男性もいたが、そちらは少数だ。
黒いジーパンにオレンジのTシャツといった装いの遊羽はそれらの人々には目もくれず、虹花と彼女の着る浴衣を見ていた。前を見ろ前を。
赤い下地を白い花が彩り、腰に巻いている帯は朱色で、全体的に派手すぎない色合いだった。白い髪はお団子にしてカンザシで止めてある。
男性達の視線を集め、ある者は彼女らしき人に叩かれ、ある者は歩みを止め、またある者は電柱にぶつかった。
しかし、彼らが彼女に声をかけることはない。隣で遊羽が彼女にしか向けない穏やかな笑みを携え、時折人一人殺せそうな視線を周囲に振りまいているからだ。何より、虹花もまた遊羽の方を向いていて、光の加減で輝く左手の薬指の指輪が彼らを諦めさせていた。
鳥居をくぐり、少々人の多い神社の中を真っ直ぐ進む。
「危ねぇ」
参拝を終えたらしきカップルが前を見ていなかったため虹花にぶつかりそうになり、遊羽は腕を引いて彼女を抱き留め、それを回避する。
「あ、すみません!」
謝罪してきた男性を黙って睨みつけ、何も言わずに虹花の手を引いて進む。
「ありがとうございます、遊羽」
「いや、気にしないでいい」
彼に握られた腕を見て笑みを浮かべる虹花。その程度の触れ合いでさえ、彼らにとっては喜びであった。
二度お辞儀して、パンパン、と柏手二つ。もう一度礼をして、ガランガランと濁った音の鈴を鳴らす。
手を合わせて願い事を済ませると、おみくじを引きに行こうと石階段を下る。
「遊羽、何をお願いしたんですか?」
「そんなこと、言うまでもないだろ」
指輪のある左手を絡ませてくる虹花に、遊羽は自分を抑えるためにも少しぶっきらぼうに返す。彼女の浴衣姿もあってか、少々頬が赤い。
「それでも、聞きたいんですよ」
「そうか」
せーので言いましょう? という彼女の提案に頷き、石階段を降りきる。
「せーのっ」
「「来年も
予定調和のように揃った言葉にお互い微笑み、周囲の目など気にせず歩き出す。『一生』と祈っても良かったのだが、そもそも【オベリスクの巨神兵】は の神だ。*1願う対象として間違っている。
『アベシ饅頭』を安く小さくした『ミニアベシ焼き』やその影響を受けて他の地域でも考案された『ヴィーウ煎餅』*2『クスィーゼ饅頭』*3などを売っている隣のおみくじの列に並ぼうとすると、声をかけられた。
「あれ、遊羽と真宮。やっぱり来てたんだね♪」
「あけましておめでとうございます、なのです」
声の方向に顔を向ければ、軽く手を上げながらスマいる*4息吹と水色に【青眼の白龍】が描かれた浴衣姿で『クスィーゼ饅頭』を片手に持った手鞠がいた。
「あけましておめでとうございます、二人とも」
「今年も一年よろしくな、手鞠」
二人に微笑む虹花と、息吹をスルーし手鞠に挨拶する遊羽。無視された息吹はその場でおいおいと泣き真似をして妹にド突かれた。
「全く、これだからお兄様は・・・・・・浴衣に対して何も言ってくれないし・・・・・・」
それは小さい呟きだったが、ドラゴンである遊羽がそれを聞き逃すことはなく。
「浴衣、似合ってるぜ」
言いながら、彼女の頭に手を置き、その髪を乱す。
遊羽は身内に甘い。そして中学生の頃から知っていて、ドラゴン好きという共通点のある手鞠には、かなり甘い。
「あ、ありがとう、なのです・・・・・・」
くすぐったそうにしてから、頬を軽く染めてそっぽを向く手鞠。それに遊羽は少しだけ笑みを浮かべて、手を離した。
「悪いな、虹花」
「いえ、問題ないですよ。さあ、おみくじを買いましょう」
虹花は嫉妬した様子藻なく、ただ微笑んでいた。
彼女は遊羽を信用しきっている。彼が自分より他人を優先することはないし、自分が彼の一番だとわかっている。それは自惚れでもなければ過信でもなく、ただ二人にとっての『事実』だった。
「中吉・・・・・・『探し物が見つかる』ですか」
「凶、『大切なものを失う』ねぇ・・・・・・」
引いたおみくじの結果に首を傾げる虹花と、不快そうに眉を寄せる遊羽。だが所詮はおみくじだな、と切り捨てた。
「ゲッ、大凶!?」
「お兄様は日頃の行いが悪いから当然なのです。もちろん私は大吉なのです!」
そんなバナナ、とガックリうなだれる息吹とふんすと鼻を鳴らす手鞠の声を聞きながら、おみくじを御神体から張ってある紐に縛り付ける。大切なものを失わないように、縛り付ける。
「遊羽?」
「・・・・・・ああ、悪い。少しボーッとしてた」
おみくじの両端を掴んだままの遊羽に虹花が声をかけると、正気に戻ったようで彼女を振り返った。
「・・・・・・じゃ、帰るか」
「ええ、そうしましょうか」
並んで歩き出す遊羽と虹花。慣れない下駄の彼女の左手を遊羽は少し乱雑に握った。
大切なものを失わないと、強く決意しながら。
皆様、あけましておめでとうございます。去年は如何でしたか? 新ルールの発表、制限改訂、『ラッシュデュエル』という謎のデュエルと、色んなことがありましたね。
私個人としては、テストとか課題とか研究発表とか大掃除とか指揮官とか人類最後のマスターとか審神者とかで忙しかったです。後半は気にしないでください。
【スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン】、アレいいですよね。【ドラグニティ】でも【地獄の暴走召喚】使えば出せるの素晴らしい。
二月には【マシンナーズ】のストラクが発売されますが、順当に行けば次は【ドラグニティ】。今から楽しみですね。
今年も『遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ』を宜しくお願いします。
・・・・・・更新遅れてすいませんでしたッ!