遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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お久しぶりです皆様。お待たせしました。

内容覚えている人、いるのだろうか。


彼らの現状

 決戦まで、残り4日となったその日。

 

 遊羽の(虹花との愛の巣)でデッキを組み終わった遊兎だが、自分に自信を持てない系男子の彼はこれでいいのだうかとカード達を見直す。【レスキューラビット】という汎用性はあるが中途半端なカード、それを『主軸』にすることは、とても難しい。【天威】を使おうにも特殊召喚した通常モンスターはターン終了時には破壊され、エクシーズ召喚などの素材にすれば【幻皇龍】などの通常モンスター限定サポートは受けられない。それらをどうにかするためのデッキだが、正直上手く回るのか不安でしかない。

 

「・・・・・・遊兎?」

 

 黙ってデッキを見つめる彼に、息吹は心配から声をかける。息吹は【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を軸にしたデッキを少し前から使っており、白紙になったカードも少なかった。そのため、ワンキル・ソリティア研究会の人脈を活かしてカードを集めることに尽力していたのだが。

 

「いや、なんでもない」

 

 彼の精霊、【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】が伏せっていることを、遊兎は聞いていた。息吹は、彼女を看病したい気持ちを抑えてここにいてくれているのだ。自分も不安がっている場合じゃないと、遊兎は首を振って答えた。

 

「そっか。なあ遊兎、これ、受け取ってくれないか?」

 

 自分の心情を悟らせない、柔らかい笑みで二枚のカードを差し出す息吹。二枚とも全く知らないカードだったが、どういったコンセプトのものかはイラストや効果からわかった。

 

「!? 息吹、これは?」

 

「いいからいいから」

 

 遊兎の質問に答えることなくグイグイとカードを押し付ける息吹。

 

「遊兎に使って欲しいんだよ。オレのデッキには合わないからさ♪」

 

 彼は、あっけらかんと笑って言った。遊兎はその笑顔に押され、カードを受け取る。

 

「なんだ遊兎、デッキ出来たのか? なら俺とデュエルしてくれ、今のデッキがどのくらい戦えるのか試したい」

 

 戦と共に少し休憩していた遊羽が、二人の会話を耳にしたのかディスクを腕に付け出した。じゃ、頑張って♪と言って肩を叩き休憩に入る息吹に戸惑いながらも、遊兎は歩き出した遊羽に続いて部屋を出た。

 

「・・・・・・それで、そっちは大丈夫なの?」

 

 息吹はなるべく普段と変わらない口調を心がけて戦へ振り向く。彼はテーブルの上にデッキを広げていた。

 それは、機械族の脳筋テーマである【サイバー・ドラゴン】。随分と思い切ったなと息吹は思うが、使っていなかっただけで少し前からカードは集めていたらしい。

 

「うん、デッキ作りは順調だよ。【機械族】は元から強いからね。後は細かい調整だけ」

 

 しらを切る戦に息吹は一つ息をついて、そうじゃなくて、と踏み込む。

 

「精神面での話。結構無理してるんじゃない?」

 

 元々、戦は自分の過去から、両親の死から目を背けていた。悲しい心を押さえつけて、「弱い」という単語に過剰反応することでそれを乗り越えたと自分を偽り、痛みを見ない振りしていた。心がある程度読める息吹は、それがよくわかる。

 

(ま、わかっていて放置していたオレも、どうしようもないろくでなしだけどね♪)

 

 その内なんとかなるだろう。そんな甘い見積もりは、彼の父親が姿を見せたことで砕け散った。死者の復活なんて有り得ない話だと思っていたが、虹花は【屍界のバンシー】の精霊であると同時に既に死んだ人(アンデット)でもある。その時点で、何か手を打っておくべきだった。

 

「・・・・・・大丈夫。ほら僕、自分の感情から目を背けるの、得意だしね」

 

 その笑みに無理を感じるのは、息吹だけだろうか。だが、それを考えてもどうしようもない。4日後には彼らと戦わねばならない。

 例えそれが、自分の死を受け入れる行為であっても。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 家の裏にあるデュエル場に移動し、お互い距離をとって睨み合う。

 遊兎は向かいの遊羽の顔をなにともなしに眺めた。虹花と過ごす時間が減っているためか、どこかやつれたような目や頬、しかし闘士の燃える瞳。もし虹花を失えば、彼は更に酷い状態になるのだろう。それは、嫌だった。

 

「・・・・・・いくぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

月見遊兎

LP8000

 

 先攻となった遊羽は手札を見てわずかに目を細め、そして一枚のカードを手に取る。

 

「手札の【風霊媒師ウィン】の効果! 手札のモンスター一枚ごとコストにすることで、【WW-アイス・ベル】を手札に加えるぜ。そのまま効果でデッキの【WW-グラス・ベル】共々特殊召喚だ」

 

WW-アイス・ベル ☆3 チューナー 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 守備力1500

 

 現れたのは彼に似つかわしくない魔女っ娘達が現れ、それぞれチェーンを組んで効果が発動する。鎖っていいよねとか考えてしまって末期症状がひどい。

 

「アイス・ベルの効果で500ダメージと、グラス・ベルの効果でデッキから【WW-スノウ・ベル】を手札に加えるぜ。そして特殊召喚だ」

 

月見遊兎

LP8000→7500

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力500

 

 アイス・ベルが氷塊を遊兎に投げつけ、グラス・ベルは箒を振るってスノウ・ベルを召喚する。使い魔か。

 

「グラス・ベルでアイス・ベルをチューニング、シンクロ召喚! 来い【クリアウィング・シンクロ・ドラゴン】! 更にスノウ・ベルをチューニング、シンクロ召喚。【クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン】!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 舞い踊る水晶の竜。姿的にもステータス的にもふつくしい。

 

「ターンエンドだ」

 

 

如月遊羽

LP8000 手札3

 

□□□□□

□□□□□

 □ ク

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP8000 手札5

 

ク:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

 

 

 遊兎のターン。彼は新たなデッキからカードを引く。

 

「・・・・・・(オレ)は手札から、【ゴブリンドバーグ】を通常召喚! 効果発動にチェーンして、【カゲトカゲ】の効果発動だ!」

 

「(ランク4で【No.39希望皇ホープ】から【SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング】はキツいが、攻撃力は上げておくか・・・・・・)クリスタルウィングの効果発動だ。それを無効にし、【カゲトカゲ】の攻撃力分攻撃力を得る」

 

 戦闘機に乗ったゴブリンの影から石竜子(トカゲ)が這い出ると、水晶竜がそれを爪で潰す。

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→

 

「【ゴブリンドバーグ】の効果で手札から【ヴェルズ・ヘリオローブ】を特殊召喚!」

 

ヴェルズ・ヘリオローブ ☆4 攻撃力1950

 

 シンセノキセウホ ダンズロク ルレサダリズキヒ リヨキツデ。ヴェルズ語でお送りします。

 

「【ゴブリンドバーグ】と【ヴェルズ・ヘリオローブ】でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来てくれ、【No.39希望皇ホープ】!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 現れた金色の戦士に、やっぱりかと遊羽は眉をしかめる。

 

「ホープ一体でオーバーレイ! シャイニング・エクシーズ・チェンジ! 【SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング】!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 皆大好き大正義。【RUMシャイニング・フォース】のOCG化はまだだろうか。

 

「バトルだ! ライトニングでクリスタルウィングに攻撃! そしてライトニングの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使って、攻撃力を5000にする!」

 

 そこはかとなくデジャビュを感じながら、遊羽は袈裟斬りにされるクリスタルウィングを見た。

 

如月遊羽

LP8000→7500

 

「ターンエンドだ!」

 

 

如月遊羽

LP7500 手札3

 

□□□□□

□□□□□

 ホ □

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP8000 手札3

 

ホ:SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

 

 

 お互い手札をあまり消費せず旧ルールに縛られながらのデュエル。ライトニングの下に【CNo.39希望皇ホープレイ】が重なっていないのはエクストラデッキに余裕がないからか。

 

「俺のターン。【竜の渓谷】を発動! 効果で手札一枚をコストにデッキから【ドラグニティ-ファランクス】を手札に加えるぜ。【調和の宝札】でファランクスをコストに二枚ドロー」

 

 流れるように入れ替わる遊羽の手札。【WW】はカード数が少ない分【ドラグニティ】の動きの邪魔になりにくい。

 

「【ドラグニティ-ドゥクス】を通常召喚だ。効果でファランクスを装備し装備解除で特殊召喚。更に風属性が二体以上いることで【WW-スノウ・ベル】を特殊召喚」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500→1700

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力500

 

 連続して展開される風属性達。【風霊媒師ウィン】の登場によって強化されたこのデッキは、その効果を活かすために風属性しか入っていない。

 

「ファランクスでドゥクスをチューニング、シンクロ召喚。【ドラグニティナイト-ガジャルグ】。ガジャルグの効果でデッキから【ドラグニティアームズ-レヴァテイン】を手札に加え、そのまま墓地へ」

 

「レヴが墓地に・・・・・・!」

 

 警戒した様子の遊兎に少し笑って、遊羽はすぐさま顔を引き締めた。

 

「スノウ・ベルでガジャルグをチューニング、シンクロ召喚。【クリアウィング・ファスト・ドラゴン】!」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン ☆7 シンクロ ペンデュラム 攻撃力2500

 

 緑混じりの白竜は、ユーザが使っていたので息吹に探してもらったカードだ。使えるものは全て使っておきたい。

 

「ファストの効果発動だ。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター一体の効果を無効にし、攻撃力を0にする」

 

 白竜が雄叫びをあげ、それがライトニングへの重圧となってのしかかる。

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→0

 

 戦闘ではほぼ負けなしのライトニングも、メインフェイズでは非力だ。

 

「バトル、ファストでライトニングに攻撃だ」

 

「くっ!」

 

 ファストが飛翔し、その翼でライトニングを切り裂く。

 

月見遊兎

LP8000→5500

 

「もうやれることはねぇな。ターンエンドだ」

 

 

如月遊羽

LP7500 手札1

 

□□□□□

□□□□□竜

 □ フ

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP5500 手札3

 

フ:クリアウィング・ファスト・ドラゴン

竜:竜の渓谷

 

 

 ターンの回った遊兎はカードを引き、そして遊羽を見る。

 

 切羽詰まって、常に気を張って、どこまでも真っ直ぐな彼は、きっとこのままだと折れてしまうだろう。虹花という支えを失ってしまえば、いとも簡単に壊れてしまう。

 

(だから・・・・・・(オレ)は、もっと強くなりたい。遊羽が(オレ)をどう思っていても関係ない、ただあいつがこれ以上無茶しないでいられるようにしたい)

 

 遊羽と息吹は、遊兎が初めて仲良くなれた人間だ。誰よりも人間らしい遊兎が、彼らを失いたくないと思うのは、当然だ。

 

「【レスキューラビット】を召喚、効果発動だ!」

 

ヴェルズ・ヘリオローブ ☆4 攻撃力1950

 

 兎に呼ばれ、遊兎に力を貸すべく現れる二体の戦士達。タシマエカヒ ハゴズルェヴ ハイカンコ。

 

「ヘリオローブ二体でオーバーレイ! 闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、【ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 闇の牙持つ黒竜が、戦場のド真ん中で白竜と相対する。エクストラモンスターゾーンのためお互い横を向いていて大変そうだ。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使う。ファストの攻撃力を半分にして、その分攻撃力が上がる!」

 

「ファストの効果発動だ。ダーク・リベリオンの効果を無効にし、攻撃力を0にする」

 

 黒竜の放った霆を錐揉み回転でかわし、空気のブレスで傅かせる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→0

 

「ああ、使うと思ったぜ!」

 

「あ? ッ、まさか・・・・・・」

 

 遊羽の脳裏に、一枚のカードが浮かぶ。はたして、それは的中した。

 

「【RUM幻影騎士団・ラウンチ】発動! ダーク・リベリオンをランクアップさせる!

 漆黒の闇より、亡霊達を癒やす永久(とわ)の鎮魂歌! 【ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン】!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ★5 エクシーズ 攻撃力3000

 

 ダーク・リベリオンの翼が七色に割れ、その身体には骨が浮き出る。ステンドグラスの彩りが、闇の中でただ輝いていた。

 

「ダーク・レクイエムの効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、ファスト・ドラゴンの効果を無効にし、攻撃力を0にする! そして、その分の攻撃力を得る!」

 

 威力を増した黒霆が、ファストに絡みつきその力を奪う。

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン 攻撃力2500→0

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3000→5500

 

「バトルだ! ダーク・レクイエムでファスト・ドラゴンに攻撃!」

 

 ステンドグラスの翼を広げ、ダーク・レクイエムは咆哮する。そして身をかがめ、そのアギトで白竜を刺し貫いた。

 

如月遊羽

LP7500→2000

 

 大きく減ったライフに、遊羽は顔を歪ませる。

 

(ファストの効果を使えば、レクイエムの効果で無効化されてエクシーズモンスターを出される、か・・・・・・)

 

 そのままエクストラデッキへ送られる【クリアウィング・ファスト・ドラゴン】。ペンデュラム召喚でなければ特殊召喚できなくなった。

 

「これでターンエンドだ!」

 

 

如月遊羽

LP2000 手札1

 

□□□□□

□□□□□竜

 ダ □

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP5500 手札2

 

ダ:ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン

竜:竜の渓谷

 

 

 遊羽は己の残った手札を確認し、一度目を瞑ってから、ギンッと見開いた。

 

「俺はユーザと覇王とやらをぶっ飛ばさねぇとなんでな。こんなところじゃ負けられねぇ」

 

 そして、デッキに指をかける。使えるカードが減る中、魂を込めて作ったデッキ。ならば、それが応えてくれるのもまた必然。

 

「ドロー!」

 

 引いたカードを見て、遊羽は笑った。

 

「【貪欲な壺】を発動ッ! 【風霊媒師ウィン】【WW-アイス・ベル】【WW-グラス・ベル】【WW-スノウ・ベル】【ドラグニティ-ドゥクス】をデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

 そして引いた二枚の内片方をそのままフィールドに出す。

 

「【簡易融合】を発動! エクストラデッキから【召喚獣ライディーン】を融合召喚!」

 

如月遊羽

LP2000→1000

 

召喚獣ライディーン ☆5 融合 守備力2400

 

 『1000』とパッケージに描かれたカップ麺にお湯が注がれ、それを現れたライディーンが正座して割り箸で食べ始める。シュールだ。

 

「ライディーンの効果発動、ダーク・レクイエムを裏側表示にする!」

 

「ッ、ダーク・レクイエムの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使って、その効果を無効にして破壊する! そして、墓地から【ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 カップ麺を啜るライディーンをダーク・レクイエムが蹴り飛ばし、己の過去の姿を蘇生する。

 

「次だ、【竜の渓谷】の効果発動! 手札一枚をコストに、デッキから【ドラグニティ-ドゥクス】を手札に加える! そしてそのまま召喚、効果で【ドラグニティ-ファランクス】を装備!

 そしてドラグニティを装備したモンスター、ドゥクスを除外! 来い【ドラグニティアームズ-レヴァテイン】!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 大剣を構え、レヴがフィールドへ舞い出でる。

 

『私の効果発動だ。【ドラグニティ-ファランクス】を装備する』

 

「そして装備解除! レヴにファランクスをチューニング、シンクロ召喚! 神々打ち砕く大いなる神槍、【ドラグニティナイト-アスカロン】!」

 

ドラグニティナイト-アスカロン ☆10 シンクロ 攻撃力3300

 

 巨大な竜に、乗っているのは【ドラグニティ-ドゥクス】。息吹に探してもらったカードの一枚であり、【ドラグニティ】における切り札。

 

「アスカロンの効果発動! 墓地の【ドラグニティ】を除外し、相手モンスター一体を除外する! この効果にターン1制限はない!」

 

 アスカロンが二体の黒竜に突撃し、諸共吹き飛ばす。

 

「くっ、けど、それじゃ(オレ)のライフは削り切れない!」

 

 あるんだろう。遊兎は確信を持って言う。

 

「ああ、あるぜ! 【ドラグニティの神槍】をアスカロンに装備、その効果でデッキから【ドラグニティ-ブランディストック】をアスカロンに装備する!」

 

ドラグニティナイト-アスカロン 攻撃力3300→4300

 

 アスカロンの上で持つ槍が増えたドゥクスが慌てふためく。下の竜は呆れたように首を振った。

 

「バトルだ、アスカロンで二回攻撃! これでトドメだ!」

 

月見遊兎

LP5500→1200→0

 

「くっそー!」

 

 遊兎は叫び、遊羽はまだ改良が足らないと部屋に戻る。

 

 遊兎は少し余韻に浸ってから、食べ物でも買おうとコンビニに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「報告します。如月遊羽ら四名は、ここ数日自身のデッキを改良することに専念しているようです。

 また、カードの白紙化現象ですが、現在解析中とのことです。わかったのは、白紙化しているのはいずれも精霊のカードで、かなり力の弱い部類だったようです」

 

 デュエルセキュリティの、とある室にて。

 鴻上式は、そのベッドで佇む青年に話した。

 

「・・・・・・例の、黒髪の少年の目撃情報は」

 

「ありません」

 

 そうか、と表情のない顔でベッドの主―――星河は頷いた。

 ベッドの横にある簡素な引き出しの上には彼のデッキが置かれ、一番上のカードは枠のみでイラストも文字もなかった。

 

「引き続き、調査を頼む。彼らに危険が及ばないよう、悪霊祓いの方もな」

 

「了解しました」

 

 セキュリティ最年少に当たる式はそう言って、医務室を出ていった。

 

「・・・・・・何かが、起きているのだろう」

 

 それが何かは、星河にはわからない。知る術も、力も失ってしまった。

 

「今の俺にできるのは、サポートが精々。なら、それに注力するしかないか」

 

 自嘲気味にそう笑って、星河は自身のデッキに触れた。

 

 嫌味なくらい月の輝く、綺麗な夜だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同時刻、如月家の屋上。

 

 レヴは一人、夜空を眺めていた。

 

(遊羽は、勝てるだろうか。彼らに)

 

 考えるのは、そのことばかりだ。

 

 自分という、大して強くない上に腐ることもあるようなカードを抱えて、そんなデッキで、勝てるだろうか。勝てたとして、ユーザ達は約束を守るだろうか。

 

(精霊を消すことが目的で、デュエルに負ければあっさり手を引く。そんな虫のいい話があるのだろうか)

 

 罠かもしれない。真の目的は、遊羽達の精霊力を奪うことで、精霊をこの世界から消すことを、続行するかもしれない。

 けれど、それでも。

 

(・・・・・・やるしかない、か)

 

 どの道、デュエルに応じなければ精霊は消されてしまうのだ。自分は消えてもいいが、虹花も巻き添えになって遊羽が悲しむことは避けたい。

 

 決戦まで、あと四日。レヴはその事実を実感すると、遊羽の様子を見るべく部屋へ戻った。




三ヶ月も投稿していない間に、色んなことが起きました。新作始めたり、新しいゲーム始めたり、課題テストで苦しんだり、他の作者のアカウントがロックされたり、コラボしたり。

あ、現在kndm様の「波動竜の少女」にてコラボさせていただいています。

ついでに「遊戯王 スプレッド・ストーリーズ」というどっかで見たことあるキャラクターがいる作品と
「遥か彼方の彼らが見えない」というOCG次元のssも書き始めました。

・・・・・・こっち更新しないで何やってるんだろう私。

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