10話:少しだけ変わった日常
「…嫌…」
夢を見た。
「やだよ…こんなの…」
絶望に満ちた少女の表情は、とても見ていられなくて、でも目を逸らす事は許されなくて。
「嫌……うあああああああっ…!!!」
その悲痛な叫びは、強く俺の頭に残ったのだ。
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「…はっ…!」
…気が付くとそこは、既にすっかり見慣れてしまった部屋。暫定的に自室という扱いになっている、戸山香澄の部屋である。
「…もう朝…」
少し早めに目が覚めたようだ。今日は学校があるので準備しなくてはならない。
「…なんか…夢を見たような…」
見たような気がするのだが、内容が思い出せない。しかし、一つだけ頭に残っているものがあった。
「…誰かが叫んでいたような…」
誰なのか分からないが、ふわっと覚えてる声質的には女性だった気がする。と言っても叫び声というのは普段なかなか聞かないので、その声質で判断というのも難しいのだが。
「…取りあえず準備するか…」
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あれから、と言っても日曜日を挟んで二日しか経っていないのだが、俺の生活は少しだけ変わった。
「おはようございます!」
「あら、おはよう香澄ちゃん。」
俺の挨拶に和やかに返してくれるのは、市ヶ谷…なんだっけ、おばあちゃんにも名前が設定されていた筈だが如何せん覚えていない。まあお察しだと思うが、有咲のおばあちゃんだ。
「一昨日はありがとねぇ。そしてごめんなさい、ウチの有咲が迷惑を掛けて…」
「そ、そんな事無いです!」
一昨日、有咲と握手を交した後、有咲のおばあちゃんや花音の事を思い出して急いで連絡したのは記憶に新しい。と言ってもおばあちゃんに連絡したのは有咲で、俺が連絡したのは花音だが。有咲が見つかった事を知らせると、とても嬉しそうに安堵の声を出した花音。そのまま帰っていいよと言われたのだが、どうしても直接会ってお礼を言いたかった俺は、時間的にどうかとも思ったのだが松原家へ向かう事にした。そのとき有咲も謝りたいと、着いてきたのだ。
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「花音先輩!」
ちょうど自宅の扉を開こうとしていた花音を見つけた俺と有咲。
「えっ…?香澄ちゃん…に、有咲ちゃん?」
振り向いた彼女は、俺や有咲に負けず劣らず全身びしょ濡れだった。きっと必死に探してくれたのだろう。というか見つけた時点で先に連絡してあげればと後悔したのだが、今更そんな事を言ってもしょうがないので改めてお礼を言う事にする。
「あの…本当に色々とありがとうございました!」
「わ、私も…ありがとうございました!」
二人で頭を下げる俺達に、花音はふわりとした笑顔を向けてこう言った。
「もう…帰ってもいいよって言ったのに…でも良かった…えへへ、なんだか上手くいったみたいで嬉しいな…」
かのちゃん先輩マジ大天使、とか空気読まない事をうっかり思ってしまう程の天使っぷりを見せ付けられたが、二人で改めて感謝の意を示した。「良かったら今日泊まっていく?」という提案をされたが、流石にそれは遠慮した。多分同じくびしょ濡れな俺達を見てそう言ったのだろう。後日花音には改めてお礼をしようと、有咲と話したのだった。
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「香澄ちゃんは良い子だねぇ…良かったら今後とも有咲と仲良くしてやってね?」
「はいっ!」
香澄よろしく元気よく答える。と、そこへこちらにやって来る足音が。
「お、来たな。」
そう微笑みながら声を掛けてくるのは、市ヶ谷有咲。あれから変わった事と言えば、有咲は香澄にではなく俺に対して喋り掛けてくるようになった。到底信じられないような話を一昨日彼女にはしてしまったが、彼女なりに折り合いをつけて一先ず信じてくれた。
「ふふっ、それじゃあ行ってらっしゃい。」
「はい!行ってきます!」
「行ってきま〜す。」
おばあちゃんに見送られ、俺は有咲と共に市ヶ谷家を後にした。
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「…アレだな。知らなかったから違和感持って見てたけど、知ってる上で見たらそれなりに演技は様になってるな。」
「ああ…まあ一応ね。それでも有咲の目は誤魔化せなかったし、他のポピパのメンバーも多分そうなんだろう。それに、家族も今の生活スタイルだと関わる時間が短いからまだいいけど…怪しまれるのも時間の問題じゃないかな。というか既に怪しまれてる可能性もありそう。」
当たり前と言えば当たり前だが、有咲以外の前では未だに香澄としての演技は続けているし、有咲も一緒にいる時は話を合わせてくれている。今周りに人通りが無いのをいい事に素で話しているが、これがなかなか安らぐのだ。既に事実を知っている有咲とは"俺"として会話する事が出来る。この世界に来てずっと戸山香澄を演じていた俺には、こうして話す事が出来るのが凄い新鮮だし、気も楽だったのだ。
「…他の皆には言わないの?」
「…信じて貰えると思うか?」
「…さあな…」
ポピパを信じている有咲ですら曖昧な返答になってしまうのは、この話があまりにも現実離れしているからだろう。俺も自分自身がそうなっているから現実として受け止めているが、有咲達の立場だったとして信じられるかは怪しい。いや、信じなかっただろう。
「…取りあえず、今日蔵来いよ。」
「え?」
「憑依現象の事。もうちょっとちゃんと聞きたいし。私も協力するんだし、知っとかないとだろ?」
なるほど…確かにまだ全部の事を話した訳では無いし、改めてそういう機会を設けるのはいいのかもしれない。しかし、一つ悩んでいるのが、この世界がバンドリという作品に非常に類似した世界、つまり違う世界という事を言うべきかどうかだ。まあここまで信じてくれたのだ。恐らく言えば、完全に信じてくれるかは分からないがなんとか呑み込んではくれるだろう。しかしショッキングな話には変わりない。これ以上有咲に考える事を強いるのもなんだか気が引ける。そう思うと、全ての情報を開示してもいいものかという気持ちになってしまった。
「…分かった。と言っても、他のメンバーはどうするんだ?」
「どうするって?」
「ほら、今蔵練が俺だけ不参加の状態になってるだろ?」
戸山香澄になってから初めて蔵練に出た際、一部の曲を碌に演奏出来なかった時。あの時以降、俺のみ不参加という形になっており、それは今も続いている。ポピパのメンバーの事だ。俺と有咲の間に確かに存在していた壁が取り払われた事を、恐らく過敏に察知するだろう。そうなれば自ずと暫く参加していなかった蔵練どうするの?という話になる可能性があるのではなかろうか。
「ああ…なるほど…」
と、口に出してまだ説明した訳ではないのだが有咲はなんとなく納得したようだ。まあニュアンスで面倒事になるのではというのは伝わったのだろう。
「まあ別に今までも特別避けたりとかしてた訳じゃないし…ただ一緒に行くと面倒かもな…」
「蔵でってのももしかしたらまずいんじゃないか?あそこある意味ポピパの溜まり場みたいになってるし、ふらっと誰か来る事もあったりしないのか?」
「あ〜…おたえとかは結構…」
あ、やっぱ来るんだ…俺もそういう事しそうなのは、おたえかなとは思ったけども。
「…じゃあ、そっちの家にするか?」
「その方がいいかもな。」
香澄の家なら流石に何も無いのに急には来ないだろう。香澄が病欠したとかならお見舞いに来るとかはあるかもしれないが。
「じゃあ学校終わったら蒼は普通に家帰ってくれ。私はどっかで適当に時間潰してから向かうから。」
「了解。」
そんなこんな話してる途中に駅まで辿り着く。話は決まったし、後は放課後まで取りあえずいつも通り過ごせばオーケーだな。いつも通りだね。…うん、ごめんなさい言ってみたかっただけです。
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時は進んでお昼休み。授業やらはいつも通り華麗(適当)にこなした。恒例のポピパお弁当タイムである。
「あ、ごめん、私トイレ行くから先行ってて?」
うん、お弁当タイムの前にトイレタイムが先だったね。ちょっと催してきちゃったぜ。
「あー分かった。じゃあ先に…トイレ!?」
いつもと同じように返事をしようとした有咲が、突然大声を出すもんだから、俺含め皆がびっくりしてビクッと体を震わせた。あ、よく見たらおたえはそうでも無かった。
「どうしたの?」
おたえは不思議そうに有咲を見る。ぶっちゃけ俺にはなんとなく理由が想像つくのだが、想像通りなら有咲はここで理由は言えないだろう。
「え、やー…はは…なんでも…なんでも、ない…はは…」
ハハハと笑っているがすっごく引き攣っている。相変わらず分かりやすいなこの子。
「ほ、ほんとにどうしたの?」
「い、今変な事言ってた…?」
沙綾とりみも思わず有咲にそう尋ねる。が、有咲はいやー…とかあはは…とか言ってばかりだ。
「わ、私も!私もトイレ行くわ!皆先行っててくれ!」
え?有咲も行くの?それ絶対トイレ行きたい訳じゃないよね?もれなく俺に用あるよね?
「う、うん…分かった。」
微妙に心配そうな顔をしている沙綾だったが、取りあえず納得してくれたようだ。
「それじゃ、後でね?」
そう言って中庭の方に歩く沙綾に、りみやおたえも続いていった。りみも終始困ったような表情だったが、特に問い詰めては来なかった。というかりみはこういう時問い詰めるような性格でもないか。おたえは相変わらずおたえ検定を受けてすらいない俺には心中察する事は困難だった。なんだおたえ検定って。あるなら是非とも受けたいです。うん、何言ってんだろうね。
「ほら!香澄行くぞ!」
「えっ、わっ!ちょ、引っ張らなくても行くから!」
こうして、半ば引っ張られる形で女子トイレ(というか女子校なので教員用以外は基本それしか無いのだが)に連行されるのであった。
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「手が痛い…」
「ご、ごめん…」
よっぽど焦ったのかなかなかに強い力で掴まれた手は、まあまあ赤くなっていた。有咲もちょっと罪悪感を感じたのか謝まってくる。
「って!そうじゃなくてだな!」
「うわっ、な、なに…?」
まあ、「なに?」とは聞いたが彼女が言いたい事はなんとなーく察しがついている。俺的には凄く今更だが。
「お、お前…その…その体で、トイレ行ってたの、か…?」
「いや、行くでしょそりゃ…」
手が痛いのとやっぱりという気持ちと今更感とで、つい凄くげんなりとした感じで答えてしまった。
「で、で、でも!香澄の体だぞ…?」
「その下りもう一ヶ月前ぐらいにやったからね?」
「うっ…、いや…まあ…そうだよな…」
彼女も馬鹿ではないので分かってはいるらしい。分かってはいるが色々と考えてしまったのだろう。
「なんか…凄いあっさりしてたし、ついな…」
「ああ、そう…」
「そ、その…別に蒼を責める訳じゃないんだけど…なんも思わなかった、訳じゃないよな…?」
「そりゃそうでしょ…それはもう計り知れない程の葛藤があったよ?お風呂とかもね。」
「風呂っ!?」
なんかいちいちびっくりしてて可愛いなとか思ったのは秘密である。
「そ、そうか…そりゃそうか…」
なんか一人でブツブツ言ってる有咲が可愛い…ってついさっきやったわこれ。
「…取りあえず、やる事やっていいですかね…?ちょっと危なくなってきたんだけど…」
「えっ?あ、ああ…いいよ、うん…」
有咲からのお許しを頂いたので、俺は手近な個室に入るのだった。入ってからも有咲の独り言は止まなかったが、あまり気にしない事にした。
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またまた時間は進んで放課後。え?お昼はどうしたのかって?特に普段と変わらなかったのでカットで。というか有咲と秘密を共有した以外は特に変わった事は無いので、トイレにびっくりされた以外は至っていつもと変わらずである。
「今日は私用事あるから先帰るね〜。」
「そっか、また明日ね。」
「バイバイ、香澄ちゃん。」
「またね。」
沙綾達に別れを告げ、教室を出る俺。もしかしたら彼女達も色々と聞きたい気持ちはあるのかもしれないが、今のところ何も言わないでくれているのは感謝すると同時に、申し訳無い気持ちもある。有咲が結果的に信じてくれたのだから、沙綾、りみ、おたえだって…なんて事も考えるが、それは希望的観測だ。有咲の時は最終的になんとかなったが、他三人がそれで済むとは限らない。いや、まあ信じたい気持ちはあるのだが、それを押し付ける訳にもいかない。
「はぁ…」
色々と思考してしまい、なんとなく気分が落ち込む。なんやかんやと言ったが、結局は拒絶される事が怖いのだろう。俺はそういう人間だ。というか誰だって拒絶なんて出来ればされたくはないはずだ。多分…
(…すっかり夕焼けだなぁ。)
季節はもう冬に近い。日が落ちるのも早く、放課後の時間になれば既に外には綺麗な夕焼けが広がっていた。夕焼けを見ると、とあるバンドを思い出す。
(…Afterglow、まだ二人としか会ってないんだよな。)
以前商店街でバッタリと会った美竹蘭、そしてその後向かった羽沢珈琲店で出会った羽沢つぐみ。今のところこれだけだ。Afterglowにはあと三人のメンバーがいるのだが…
(学校も違うし、前みたいにバッタリ会うか、会おうとして会わないと会えないよなぁ。)
既に彼女等の曲目は蘭から聞いたのだが、念の為残り三人にも会っておきたいというのはあった。何がこの事態の解決に繋がるか分からないからだ。個人的に見てみたいという気持ちもあるのは秘密だ。そういう意味では、パスパレにも会ってはおきたい。どこかで機会を伺ってもいいかもしれないなと思った。
(ま、何はともあれハロハピだよな…)
自身のバンドであるポピパを除けば唯一曲目を知れてないバンドだ。ポピパに関しては、有咲が既に事情を知っているのでいつでも聞ける。
(ただなぁ…)
キャラとしては大好きだが、自分が話すとなると対応に困りそうなのが三人程いるのが少し憂鬱なのであった。
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「ふはー……」
無事何事も無く家に着いた俺は、自室に入るとベッドにダイブする形でうつ伏せに倒れ込んだ。元の体の時もよくやってたやつである。
「……」
チラッと目を横にやる。そこには出しっぱなしにされているランダムスター。ちまちま練習を続けて少しは上達したとは思うが、未だ一曲通しで弾ける程ではない。厳密に言うなら、香澄の体が覚えてるものなら多少誤魔化しを入れればなんとかなるが、その補正が無くなればまだまだだ。
「はぁ〜……」
どうにか楽して上手くなんねーかなぁ、という叶いもしない事を考えつつ、また顔をベッドに埋もれさせた。
「うーん……」
この後有咲が来るはずだが、ウトウトと睡魔が俺を襲う。いかんいかん、起き上がらなきゃと思いつつも体は全然動かず、そのまま寝る勢いだ。というか、そのままうっかり寝てしまったのであった。
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「………ーい!」
(………)
「………う!」
(………ん……?)
「………きろって!」
「……ん?」
「蒼!」
名前を呼ばれた事に気付き、顔をガバッと上げるとそこには金髪の女の子の姿が…というか有咲がいた。
「……あ。」
「全く…やっと起きたよ……家行くって言っただろ〜…?」
やれやれと言わんばかりの呆れ具合である。そうか、結局寝てしまったのか俺は。多分有咲は母親に通して貰ったのだろう。
「ごめんごめん…」
「まあいいけどさ…あと自室とはいえ人来るのにその寝相はどーなんだ…」
「むっ、この寝方に文句を付けるとは…究極に疲れ取れるんだぞ。」
「いや…あー、まあいいや…」
おい、ツッコミを放棄するな。お前がツッコミやめたら誰がツッコミをするんだ。
「それにしても…」
「ん?」
「…香澄の部屋って何気に殆ど来た事無いんだよな…基本蔵集まるし。」
「あぁ…」
確かに、今ポピパが蔵、つまりまあ市ヶ谷家以外に訪れる事はあまり無いだろう。あ、山吹家もそれなりか。あと確かアニメでは花園家は行ってたな。
「あ…この写真…」
気付くと有咲の視線は机に置いてある写真に向けられていた。
「ああ、それか。仲良さそうだなーとは思ったんだけど、ポピパで遊んだ時のか?」
そこに置いてあるのは、海をバックに撮った水着姿のポピパ五人の写真に、山っぽい所で撮ったこれまたポピパ五人の写真。水着はOVAでそんな話があった気がするのでそれの写真かと思っていたのだが、山の方はよく分からなかった。というか山なのかも分からん。雰囲気で言ったけど。
「どっちも夏休みの時のだな。海は確か沙綾が希望したんだっけ。」
俺の記憶だとOVAもそういう感じだった気がするので、やっぱりその時の物なのだろう。
「こっちは夏休みの終わり前に山にキャンプに行ったんだよ。」
「へえ、キャンプか。なんかいいな、そういうの。」
俺もそういう青春送りたかったとか思ってないんだからねっ!うん、キモいね。
「まあ…そうだな、どっちも結構楽しかった、かな。」
少し顔を赤くしながらそう言う有咲。これでも以前と比べればかなり素直になったのかもしれないな。ここに当人達がいないのもあるかもしれない。いや、ある意味当人いるんだけども。
「わ、私の事はいいんだよ!それより蒼の事だって!」
「お、おう…」
「何ちょっと引いてるんだよ。」
「必死だなぁとか思ってないから心配するな。」
「うるせーよ!!」
頂きました渾身の「うるせーよ」。細かく言うと必死に話題変えようとする姿が可愛いなぁとか思ったんだが、そこまで言うと有咲に照れ死(なんだそれ)させてしまうような気がしたので黙っておいた。
「はぁ…ていうかホントにいいんだって。今日は蒼の話を聞きに来たんだし。」
「…そうだな…」
俺は未だ決めかねていた。有咲に全てを事細かに伝えるかどうか。余計な重荷を背負わせてしまうかもしれない。ただでさえ憑依現象が非現実的なのに、そこに更に実は違う世界の人ですなんて付けたら厄介この上無い。
「…あのさ。」
「なんだ?」
「…今更、遠慮するなよな。」
「…え。」
まるで今の心の中の葛藤を見透かされたような言葉に、思わず唖然としてしまう。
「なんというか、まだ蒼は私に敢えて何かを隠してる気がするんだ。私の勘…というか、蒼を見てる限りでそう思ったっつーか…」
「……」
「その反応的に、やっぱり何かあるんだな…」
有咲は俺を見て少し考えた後、こう言った。
「もうさ、私は信じるって決めたから。ちゃんと全部知って、それでちゃんと考えたい。これからどうするべきなのか…」
「…有咲は、強いんだな。」
「強くなんかねーよ…ただ…腹括ったっていうか…その…独りじゃないって、言ったしな…」
そう言いながら恥ずかしくなったのか、顔を俯かせる有咲。だが、この言葉は悩んでる俺に答えを出させるには十分だった。
「はぁ…そこまで言われたら、言うしかないよな…」
彼女は腹を括ったのだ。なら、俺も括るしか無いだろう。教えよう、全部。きっと受け止めてくれる。今度は希望的観測なんかじゃない。目の前の彼女を見た上で、これは確信だと言える。だから、信じよう。
「俺は、俺はさ…」
「うん…」
「……多分、この世界の人間じゃない……」
To Be Continued…
おばあちゃんの名前が気になる人は調べてみよう!というのは置いといて、二章スタートまでなんとか漕ぎ着ける事が出来ました。よろしければ今後もよろしくお願いします。
※お気に入り300突破したみたいで嬉しいです。ありがとうございますm(_ _)m