戸山香澄になっちゃった!?   作:カルチホ

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12話です。
サブタイで想像つくと思いますが、ようやくこのキャラ達を出す事が出来ます。
そんな訳で、12話をどうぞ。


12話:笑顔少女と気怠け少女

 

 

 

「でっか………」

 

 

俺の視線の先に聳えるは巨大な建物。白を基調とした洋風なデザインは、まるで中世のお城を思わせるようだ。

 

 

「あら?香澄は以前ここに来なかったかしら?」

 

 

隣には口に人差し指を差し、可愛らしく首を傾げる金髪の少女。

 

 

「や!ほら!改めてそう思って!」

 

 

金髪の少女に俺は慌ててそう弁解する。画面でなら見た事はある。事実としてとんでもない大きさなのも知っている。だがしかし、実際に目の当たりにすると思わず声が出てしまうような代物だったのだ。この、"弦巻家"は。

 

 

「そうなの?まあいいわ!皆行きましょう!」

 

 

そう言って金髪の少女、"弦巻こころ"は俺達にとびっきりの笑顔を見せたのだった。

 

なんでこうなってるのかと言うと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、有咲…本当にやるのか…?」

 

「あーもう覚悟決めろって!大丈夫!多分!」

 

「多分ってお前…」

 

 

現在の時刻は昼休み。いつもならポピパでお昼なところなのだが、今日は理由を聞かれる間も無く颯爽と抜け出して有咲と合流した。「ごっめーん!今日ちょっと用事あるの!」といったところか。いやこれじゃ戻った後問い詰められるよね?という冗談は置いといて、実際は花音先輩に呼ばれた、という理由にしておいた。二年生のクラスは別の階だし、今日の目的を考えると最悪後で口裏を合わせてもらってもよい。

 

 

「早く行けって!下手したら見つかるから!」

 

「わ、分かったって…」

 

 

有咲にそう言われ、俺は覚悟を決める。深呼吸してから、目の前の扉を開くのだった。

 

 

「こ、こーころーん!!」

 

「あら?かーすみー!」

 

 

そう、俺が突撃したのは1-C組。ハロハピのボーカル、弦巻こころがいるクラスだ。

 

 

「わー!こころーん!」

 

「かすみー!」

 

 

考えるのはやめた。自分でも何をやっているのか分からないが、香澄…つまり俺に向かって嬉しそうに走ってくるこころに、なるべくバカっぽい感じで答える。

 

 

「……え?なにこれ…?」

 

 

視界の端に黒髪セミロングヘアーの少女が写る。この意味不明な急展開に付いて行けてない様子で、俺とこころの事を交互にチラチラと見ている。

 

 

「……ええ!?なにこれ!?」

 

 

完全に同じ事しか言えなくなっている彼女こそ、忘れてはいけない1-C組にもう一人いるハロハピのメンバー。DJ担当、奥沢美咲である。まあ厳密にはちょっと違うのだが、それは今は置いておこう。

 

 

「あー…どうも。」

 

「い、市ヶ谷さん…あの、あれは…?」

 

 

美咲を落ち着かせるため、タイミングを見計らって有咲が教室に入ってくる。

 

 

「いや、まあ…いつもの暴走っていうか…」

 

「そ、そうなの…?なんというか戸山さんってこころよりかはギリギリ会話が成り立つと思ってたけど…」

 

 

その先は言わなかったが、香澄はやばいという事を再認識したといったところだろうか。

 

 

「イエーイ!」

 

「わっ!………い、イエーイ…!」

 

 

こころは勢いそのままに、俺に向かって抱き着いてきた。役得と言いたいところだが、(状況が状況なので昔よりは慣れたとはいえ)女性免疫があまり無い俺に美少女が抱き着いてくるというのは色んな意味で大変よろしくない。しかし、演技をしなくてはならないので、ふんわりとした感触だとか美少女特有の良い匂いだとか何とは言わないけど小さな身体の割に意外とむにっとしてるものとか色々なものに耐え……た、耐え、俺もノリに乗ってる演技をする。

 

 

(笑顔がすげー引き攣ってるな蒼の奴…)

 

 

有咲からけいべ…なんとも言えない視線を感じつつ、抱きしめ合うのは程々にして自然に、どう考えても自然にこころから体を離す。

 

 

「あら?どうして離れちゃうのかしら?」

 

 

あら?じゃねーんだよ!自然にいけたんだから追求してくるなよ!え?自然じゃ無かった?自然じゃ無かったかな?

 

 

「んー!もう一回よ!」

 

 

えいっ!と言わんばかりにもう一回抱き着きタックルをかましてくるこころ。ちょっとやめて!俺のライフはもう0よ!

 

 

「えーい!」

 

「ちょっ!」

 

 

今度は胸元に顔を埋めてスリスリと擦りつけてくる。えー…何この生き物可愛い…。理性がぶっとびそうだが既の所で耐え、考える。こころってこういうキャラだっけか?香澄と仲良いのは分かってるが、ここまで…まるで甘えん坊かのようにスキンシップを図ってくるような性格だったっけ…?どちらかと言うと、ハチャメチャな言動をしつつもなんやかんやで皆を引っ張っているような印象を持っていたが…

 

 

「ぷはーっ!香澄!久し振りね!」

 

「え?」

 

 

満足したのかスリスリをやめ、こころはこちらを見上げてくる。上目遣い可愛いとか思ったのは置いておく。

 

 

「はいはい、こころ、戸山さん困ってるから。」

 

 

そう言って俺とこころの間に割って入ってくる美咲。嫉妬してる…訳では無さそうだが、俺の様子もとい香澄の様子にやや困惑しているように見える。多分香澄ならもっとノリノリで抱き着き返すと思っているのだろう。抱き着き魔だしな…。

 

 

「なあ、奥沢さん…弦巻さん、なんかいつもより…」

 

「あー…実はね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「美咲!」

 

「はい!?」

 

 

それは昨日の事。時刻は放課後、机で作業をしていたところに突然現れるこころ。少しびっくりして美咲はやや上擦った声になってしまう。

 

 

「最近香澄と会っていないわ!」

 

「えっ…?あー…そだね。」

 

 

あまりにも唐突だったが、一応言ってる事は合っていたので取りあえずの相槌をうつ美咲。確かに同じ学校同じ学年、そしてこころと香澄は結構仲が良かった筈だが、二人が一緒にいるところは最近見ないと美咲は思った。

 

 

「えーと、まあ、会えばいいんじゃない?」

 

「ええ!行きましょう美咲!」

 

「あ、私も行くんですね…」

 

 

最早こころに引っ張り回される事に諦めを覚えている美咲は、大人しくこころに着いていく事にした。まあ本人もそんな状態が悪くないと思っていたりするのは周知の事実である

 

 

 

 

 

 

 

「ええ!?いないの!?」

 

 

凄まじいスピードで走っていったこころに追い付くと、聞こえてきたのはこころの残念そうな声だった。

 

 

「もう…こころ速すぎ…。」

 

「美咲!大変よ!香澄がいないわ!」

 

 

こころの困り顔はなんだか珍しいなんて事を思いつつも、美咲は至極冷静に言葉を返す。

 

 

「いや、いない時だってあるでしょ…」

 

「残念ね…。」

 

 

分かりやすく落ち込んでいるこころ。遊びたいと思った友達が不在でここまでがっくりと露骨に落ち込むこころを見て、なんというか純粋だなと思う美咲。

 

 

「まあ、明日また行けばいいでしょ。昼休みだったらいないって事も無いだろうし。」

 

 

電話すれば?と思ったが今いないという事は遊びか何かはともかく用事があるのだろう。邪魔するのは申し訳無いと思い美咲は提案しなかった。

 

 

「仕方ないわね…明日絶対に遊ぶわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「と、いう事がありまして…。」

 

 

ざっくりと纏める美咲。今の話を聞くに…

 

 

「香澄!寂しかったわ!」

 

 

なるほど…多分香澄とこころは定期的に遊ぶくらいに仲が良かったが、俺が避けていたせいで一ヶ月もの間お預けになった結果この激かわ甘えん坊こころんが爆誕した訳か…

 

 

「……」

 

 

またしても有咲に軽蔑…なんとも言えない視線を向けられて…うんもう言っちゃったね。多分心読まれて心底キモがられてますねこれは…。

 

 

「えへへー、ごめんね?最近忙しくてー…。」

 

「あら、そうだったの?それはそうと香澄!遊びましょう!今日!」

 

 

なんか軽く流された気がしたが、タイミング的には都合がいい。作戦としては、先程のノリでこころに近づいて率直に遊ぼうと伝える作戦だった。なにそれ全然作戦ってレベルじゃ無いんだけど、悪い意味で。と思うかもしれないが、こころに変化球で行こうとしても余計な怪我をするのではという有咲からの提案によりこういった形となったのだ。

 

 

「うん!ね!それじゃハロハピの皆も誘おうよ!ポピパも誘うからさ!」

 

 

嘘である。事実を知らない沙綾達に来られても色々と都合が悪い。ここでハロハピの皆を誘ってもらい、ポピパは誘うフリして皆都合が悪いという事にする、という作戦だ。うん、さっきよりは作戦っぽいよね。

 

 

「いいわね!誘ってみましょう!」

 

 

そう言うやいなや、こころは自分のスマホを取り出して何かメッセージを打つ。LINEか何かだろうか?こちらもポピパを誘うフリしつつ待っていると、美咲から「これじゃ伝わんないでしょ…」みたいな呟きが聞こえてくる。

 

 

「…取りあえず、上手く行きそうか…?」

 

 

有咲にひそひそとそう言われる。ちょっと近いって。ドキドキするでしょーが。俺のドキドキとか誰得なんだよ…。嫌な人は香澄のドキドキに置き換えて考えてね!

 

 

「ほい、これで良しっと…」

 

 

そう言って、美咲はスマホを打つ手を止める。こころの文章じゃ伝わらないと考え、多分翻訳解説的な事をしたのだろう。

 

 

「あ!皆から返事が来たわ!」

 

「大丈夫、みたいだね。」

 

 

返信早いなと思ったが、よく考えたら昼休みだしそんなにおかしくはないだろう。メンバーの一人はこの学校ではなく羽丘の方だが、学校が違うからと言って昼休みの時間がそこまで違うとも思えない。

 

 

「そっちはどう?」

 

「えっとー…それがー…」

 

 

すごーく申し訳無さそうに、こころと美咲に皆の予定がつかない事を伝えた。

 

 

「あらー…残念ね…」

 

「三人も予定が合わないって結構珍しいね?」

 

 

こころは純粋に落ち込み、美咲は少しびっくりしていた。まあ五人中三人が予定が合わないというのが珍しいというのは分かる。まあ、嘘なんだけども。

 

 

「というか市ヶ谷さんはいいの?」

 

「えっ?あー、私は大丈夫だぞ?」

 

「そ、そっか。」

 

 

なんだかまた少し驚いているように見える。よく考えたらこういう展開の時の有咲って「また何言ってんだ香澄ー!」みたいな感じになるのか。俺(香澄)からも提案せず、有咲も既に参加する事になっていて本人も特に疑問を抱いていないという事に違和感を持たせたかもしれない。少し失敗したなとは思ったが、そこまで問題ではないと判断し、話を先に進めた。

 

 

「ねーねー!それじゃあこころん家行ってもいいかな?」

 

「ええ!勿論いいわよ!」

 

「あー、じゃあ他三人にはこころの家行くよう伝えとくね〜。」

 

 

そう言って再びスマホにメッセージを打つ美咲。どうでもいいけどもうこころには美咲がずっと付いていてあげた方がいいのでは?みさここは正義ゲフンゲフン。

 

 

「よーし!それじゃあ今日の放課後はいっぱい遊ぶわよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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という訳で今に至る。ここまで来る際、ポピパ他三人と鉢合わせないように集合地点は少し気を使って貰った。細かく言うと少し準備がある事にして学校外集合にしてもらった。他三人は部活動があるとの事で、終わり次第弦巻家に向かうとの連絡が入っている。

 

 

(廊下もあり得ない程広いな…)

 

 

現在俺達は、弦巻家の中の廊下を歩いている。どの辺なのかはさっぱりだが、取りあえず歩いているだけでも非日常感を感じられるぐらいには凄い光景だ。元の世界でいわゆる豪邸の中に入った事が無いので比較対象は無いのだが、設定通りなら弦巻家の規模は世界レベルだったはず。

 

 

「こちらでございます。」

 

「ありがとう!黒服さん!」

 

 

俺達を案内していたのは例の黒服だ。弦巻家はその規模ゆえか、通称"黒服"というサングラスに全身黒尽くめのスーツを纏ったSPのような集団がいる。ちなみに全員女性。今案内をしてくれている分には普通だが、こころにピンチ(そんなものは殆ど無いが)があればどこからでも一瞬で駆け付けて助けるし、こころの要望(頼む訳では無く、こころがポロッと口から零したりするのを拾っている)があれば即座に叶えたり…とにかくその働きは現実離れしており、こころ自身もそうだが黒服達も超人と言ってもいいレベルだろう。戦いとか挑んだらまず勝てる気がしない。いや挑まないけども。

 

 

「ここはいつ来ても綺麗ね!」

 

 

案内されたのは中庭のような場所。白を基調としたテーブルやイスが並んでおり、その上には既に完璧に用意された色とりどりなお菓子やケーキ、そして恐らく淹れたてな紅茶が揃っている。黒服こえぇ…。有咲なんか隣で目をぱちくりとさせている。

 

 

「あー、ここね…。」

 

 

美咲は来た覚えがあったのか、特に驚いてはないようだ。というかいつもこころと一緒にいるのだから、ちょっとやそっとじゃびっくりする事も無いのだろう。と言っても恐らくそんな状況でもなお驚くような体験もしているとは思うのだが。

 

 

「あ、相変わらずすげーな…」

 

 

ようやく口を開いた有咲から出てきた言葉は語彙力も無い単純な感想だったが、しょうがないだろう。いやだって俺もすげーくらいしか思えないし…

 

 

「ここで一緒にお話しましょう!」

 

 

満面の笑顔で振り向きそう言うこころ。笑顔じゃない時の方が少ないのではないだろうか?という疑問はさておき、こころにしてはお淑やかな遊び方だと思った俺は多分悪くないはずだ。だが、冷静に考えるとストーリーやアニメなどでこんな一幕もあったような気もする。常識では計り知れない破天荒な女の子だが、女の子らしくおしゃべりが好きな一面も持ち合わせてはいるのかも。まあ彼女とおしゃべりの尺度を合わせられる人間は決して多くは無さそうではある。ある意味性格次第では強い孤独に苛まれるスペックの持ち主だったのかも?と思ったが、そんなifの話には意味無いかと思い、考えるのはやめた。

 

 

「しっかし色々あるねー…」

 

 

なんだか分からないがどれも高そうである。食べ終わってからお金を請求されたらうっかり卒倒するレベル。そんな事しないだろうけどね。

 

 

「好きな物を食べていいのよ!ねえ香澄!最近の貴女の話を聞かせてちょうだい?」

 

 

相変わらず話をポンポン進める彼女に少し苦笑しつつも、微妙に答えづらい質問だと思った。さて、どうしたものか…

 

 

「あー、香澄はいつも通りだよ。いつも通り授業中に寝て。いつも通りギターに没頭してて。…いつもより度が過ぎて授業の方取り戻すのに時間掛かったんだよな?取り戻せたかは置いといて。」

 

 

そう言いながら俺の方を見て、アイコンタクトを取ってくる有咲。…取ったよね?多分取ったんだと思うんだけど…。

 

 

「ちょ、ちょっとー!その話はやめてよー!取り戻せたから!取り戻せたよ!?」

 

 

と言いつつ、そもそも補習があっただとかは無いし、ギターに没頭という事実も無い。練習はしてたからやってはいたが、没頭というレベルでは無いだろう。要するに、香澄がいつもと同じように過ごしていた上で、こころとなかなか遊ぶ暇が無かった理由を有咲は作ってくれたのだ。まあまあ残念な理由なのは我が推しキャラながら悲しくなったが…

 

 

「どーだか?色々と危ないんじゃねーか?成績とかあと成績とか。」

 

「もー!成績成績言わないで!」

 

 

あ、あのー?有咲さん?成績弄りはもうその辺で…。俺自身学生時代、微妙に成績がアレだった身なのでなんだか居た堪れない気持ちになってくる。

 

 

「やー、なんか、戸山さんの成績はやっぱそういう…」

 

「ち、違う!違うよ!?大丈夫だよ!?うん!多分!」

 

「成績ってそんなに大事なのかしら?」

 

 

えぇ…そういう事言っちゃう?でも俺も全力でそんなものはどうでもいい事だとか言いたい。どうでもよくは無いけど…

 

 

「大事っちゃ大事だろ…」

 

「市ヶ谷さんは確か学年トップとかだったよね。」

 

「いや…ま、まあ…」

 

 

分かりやすく照れておらっしゃる。

 

 

「あら!有咲はとっても凄いのね!素晴らしいわ!」

 

「つ、弦巻さんは分かって言ってるのか…?なんか適当に言ってない?」

 

 

取りあえず"トップ"って言葉があったから褒めた感も無くもないが、心の底から褒めている気はする。こころだけに。

 

 

「寒い。」

 

「心を読まないで。」

 

 

なんかデジャヴを感じるこのやり取り。

 

 

「そういえば、弦巻さんってその辺どーなんだ?」

 

「私?私は…どうだったかしら?」

 

 

きょとんとするな可愛い。こころは自身の成績に興味とかは無いだろうなぁとは思ってたが。

 

 

「こころは…なんやかんや多分結構上行ってるんじゃない…?」

 

「そうかしら?」

 

「うん、まあ、多分だけどね。」

 

 

なんだその謎の信頼はと言いたいところだが、美咲の言わんとしてる事は分かる。弦巻こころは天才なのだ。まあバンドリで天才扱いされるキャラは他にいるのだが、それはそれとして彼女も天才キャラだとされている。"こころだから"で色々と許されるようなキャラだ。かくいう俺もその天才性を上手く説明は出来ないのだが、彼女をそれなりに知っている人ならば、そう思うはずだ。勿論それだけでは無いと思っている。彼女がバンドをするに至った理由は、「世界を笑顔にしたい」という願いだ。規模こそとてつもなく大きいが、その想いはとても純粋で綺麗なものだろう。汚れなど知らず、あるとも思っておらず、本気で世界全てを笑顔にしようとしている。それは彼女が天才だとか、名家のお嬢様だとか関係無しに、とても眩しいものだと…

 

 

「香澄?」

 

「うわっ!」

 

 

気が付くと、数センチと行った距離にこころの顔があった。

 

 

「なんか考え込んでたみたいだけど、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫大丈夫!あはは…」

 

 

美咲に言われ、取り繕うように笑う。が、こころの瞳は俺を捉えて離さなかった。

 

 

「香澄…なんだかあなた…」

 

「…!?」

 

 

その瞳はまるで吸い込まれるようで、全てを見通すようで…このままではマズイ、何かがマズイと、そう思った時だった。

 

 

「おや、面白そうな事をしているね?」

 

 

妙に静かになっていた空間に突然響いたその声は、否が応にも注目を集めた。画面の向こうでだが、とても聞いた事のある声。

 

 

「あっ…」

 

「薫…さん…」

 

 

最初に彼女の名前を呼んだのは、美咲だった。

 

 

「フッ…ご機嫌よう、子猫ちゃん達…」

 

 

紫がかった前髪を手で払い、そう言い放つ。まるで容姿端麗な男性かと一瞬見間違うような、しかしよく見れば女性らしい綺麗さも持ち合わせたその人物。やってきたのは、ハロハピのメンバーの一人、ギター担当の瀬田薫であった。

 

 

(は………儚い………)

 

 

あまりのビジュアルの良さにそう思ってしまった俺は悪くない…はずである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued…




ハロハピのターンはもうちょっとだけ続くんじゃ()

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