戸山香澄になっちゃった!?   作:カルチホ

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お久しぶりです。
リアルが忙しいとかリアルが忙しいとかでなかなか進みませんでしたが、なんとかちまちまと進めて投稿です。
今後もう少し不定期のめちゃ遅更新が続く可能性がありますが、長い目で見ていただけると幸いです。


14話:仮初めの告白

 

 

 

「うぅっ…さむ…」

 

 

思わず独りそう語散る。季節は暦的にはまだ秋だが、11月後半ともなれば冬に向けて段々と空気が冷たくなってくる。特に今日は風が強く、体感温度はまさしく冬のそれと言ってもいいものだった。

 

 

「はぁ〜…」

 

 

息が白くならないかと吐いてみたが、流石にまだそこまででは無いらしい。しかし寒い。何故こんなに寒いのかと言うと、原因は自身の服装にあった。

 

 

(二次元の世界の学生服ってスカート短いよな…花女のはワンピースみたいな一体型のタイプだしスカートの長さも調整しようが無いんだよな…。これ考えたやつ絶対変態だよ、良くやった。)

 

 

そう、俺は今絶賛登校中である。正確には有咲の家に向かっている。合流してから学校に向かうのだ。そして制服な為にスカートな訳だが、これがまた寒い。脚がマジ寒い。タイツを履けば少しマシになると思うのだが、香澄は制服着用時にはタイツを履いておらず、普通のハイソックスだ。なので一応その形に習って同じものを履いている訳だが…

 

 

(脚ホント寒い…)

 

 

いやホント寒いもんは寒い。もう気にせずタイツとか履けば良かったわと心底思う。よく考えたら私服の時にはタイツ履いてたりするので別に制服の時だっていいのではないだろうかと思ってしまう。現実…というか、元の世界でもそうなのだが、冬でも脚を出して平気そうにしているJK達はなんなのだろうか。目の保養あざっすなんて事を思っていた事は口が裂けても言えないが、自分がその立場になろうとは考えてもみなかった。

 

 

(…着いたか。)

 

 

そうこう言っている間に市ヶ谷宅へ到着。いつものように有咲を呼びに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…なんでそんなに震えてるんだ?」

 

 

有咲と合流し、二人学校への道。そんな半ばで有咲は俺にそう尋ねた。そんなに震えていたのだろうか?

 

 

「あー…ちょっと寒くってね…」

 

「そうか?まあ冷えてきたとは思うけど…そんな冬みたいに震える程か?」

 

「いや、あの…脚がね…」

 

「脚?」

 

 

そう言って有咲はこちらの脚を見てくる。そんなに見つめてもこのすべすべの脚は触らせてあげないぞっ。

 

 

「…まーたなんかキモい事考えてるだろ…」

 

「ぇえ?い、いやぁ…別に?」

 

 

なんで心の声が分かるんですかね…いや確かにキモかったとは思ったけどもついね?悪ノリ的なね?いやそれじゃ悪いじゃん。

 

 

「はぁ…まあいいけど…。寒いならタイツとか履けば良かったのに。」

 

「いやほらあの娘制服だと履かないじゃん?」

 

「なんか語弊を招きそうな言い方だけど…確かに言われてみれば制服の時はいつも普通のソックスだったな…」

 

 

そこまで言ってから、有咲は少し考え込むような表情をする。

 

 

「どうした?」

 

「いや…なんか不思議だよなって。改めて思っちゃったんだけど、見た目完全に香澄な人と、まるでここにいない人の話をするように香澄の話をするとかさ。」

 

「あー…」

 

 

有咲に悪気は無いのだろうが、そう言われると少し罪悪感が生まれる。

 

 

「あっ、いや、ごめん。そんな事言われたってしょうがないよな…。ふと思っちゃっただけだから、気にしないで。」

 

「…まあ、なんにせよどうにかしなくちゃな、これ。」

 

「…そうだな。…そうなんだけどなぁ…」

 

「…あとはポピパだけか…」

 

 

昨日こころ達から貰った曲のデータには、俺が知らない楽曲は無かったし、もちろん知ってる物で入っていないのも無かった。つまり、今回も外れという訳だ。あと調べられていないのはポピパのものだけ。色々とあって後回しになってしまったが、よく考えれば香澄に起こった話なのだし、それの手掛かりがあるとすればやはりポピパ内での何かだろう。まあ裏付けという意味では他バンドのものも調べた事には意味はあったとは思うが。

 

 

「ポピパの楽曲データはりみが持ってるんだったよな?」

 

「ちゃんとしたのはな。なんとか調べたいところだけど…」

 

 

以前にも言ったが、りみ一人ならごり押しが効くかもしれない。しかし、そうするには俺と有咲とりみの三人という状況を作らなくてはいけない訳で、意図的にそれを作るのは少々難しい。しかも聞いた時にりみがデータを持っているという確信も無い。出来なくは無いだろうが、これも以前のハロハピに対してと同じように作戦会議が必要だろう。

 

 

「ん〜…それとも先にまだ会ってない人に会ってみるとか?」

 

 

そう有咲が提案する。確かに、AfterglowやPastel*Palettesの二組は曲目こそ知っていれど、まだ会っていないメンバーが存在する。ここまで来るとその辺りもシロなのではないかとも思うが、決め付けは出来ないし事が事なので会っておいた方がいいかもしれない。

 

 

「でもこっちはこっちで何か口実考えないとだよなぁ。」

 

「CIRCLEはどうだ?偶然タイミング合う必要はあるけど、自然だとは思う。」

 

「いや、CIRCLEだとポピパ揃ってないと不自然じゃないか?今の状態で上手く行くかな…?」

 

 

今、沙綾達とはなんとも言えない距離感だ。ギスギスしている訳では無いのだが…

 

 

「ん〜…やっぱりポピパの方をなんとかした方がいいのかね…」

 

「なんとかって言ったってなぁ…」

 

 

結局答えが出る訳でも無く、俺達は学校への歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれから、この話はまた後でという事で有咲と別れた。いつも通り教室に入り、いつも通り元気に挨拶し、香澄を演じる。もう慣れたものではあるのだが、元来俺はこういうテンションの人では無いので疲れると言えば疲れる。

 

 

「みんなおっはよー!」

 

 

挨拶と言えば、もちろんポピパの三人にする事も忘れない。

 

 

「おはよう香澄。」

 

「おはよう香澄。今日も元気だね。」

 

「香澄ちゃんおはよう。」

 

 

三人はいつも通りに挨拶を返してくれる。沙綾なんかは俺の元気っぷりに苦笑いしているのだが…しかしやはりこう、微妙に思う所がありそうに見える。たえやりみもそうだ。表面上は普通に見えるが、やはり香澄の様子が変ではないかと思っているのだろう。もしかしたら有咲と何かあったという事も、実は気付いているのかもしれない。それでも何も聞いてこないのは、いつか言ってくれるのを信じているからだろうか?それとも、何か考えがあるのだろうか?諦めたという事が無いのは断言できる。有咲に負けず劣らず、香澄と皆の信頼関係はとても強いはずだ。香澄を信じているはずなのだ。

 

 

「…」

 

 

…だからこそ、信じているはずのその人が、実は本当はいないと知ったらどうなるのだろうか。ここに、戸山香澄はいない。いるのは蒼川蒼という人物だ。俺は彼女らを知っているが、彼女らは俺の事を知らない。自分達の仲間で、友達で、そんな香澄に全く知らない人物が成り代わっていると知った時、彼女らは…

 

 

「香澄?」

 

「へっ?」

 

「…なんか考え込んでた?」

 

「えっ…あっ、いやー!なんかボーッとしちゃった!昨日あんまり眠れなかったからかな〜…」

 

「…あのさ、」

 

 

沙綾が何かを言い掛けた時、朝のHRを知らせるチャイムが鳴った。俺はそれをいい事に一言二言話してから席に着いた。今、沙綾は何を言おうとしたのだろうか?そんな事を考えようとして、やっぱりやめた。あまり考えたく無かった。なんだか哀しそうな目をしている気がしたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「お腹空いた〜…」

 

 

どこからともなくそんな声が聞こえてくる。4限目が終わり、時刻はお昼休みだ。俺も正直かなりお腹は空いたので、そそくさと弁当の準備をする。有咲以外の三人とは微妙な距離感とは言ったが、一緒にお昼ご飯を食べる事は欠かしていない。ぶっちゃけ何を言われるかとひやひやするのだが、戸山香澄である為には必要な事だ。そんな訳で今日も…

 

 

「香澄〜、お客さんだよ〜。」

 

「え?」

 

 

今日も弁当タイムと洒落込もうとしたら、まさかの待ったが入った。中川さんである。いや誰だよとか思うかもしれないが、所謂モブ子さんだ。アニメを見たり、ゲームをやったりする上では名も無き女の子達だが、当然名前はあるのだ。なんやかんや香澄になってから暫く経つので、クラスメイトの名前くらいは覚えた。中川さんはその一人だ。

 

 

「お客さんって…」

 

 

いつの間にか近くにいた沙綾達と、教室の入口を見る。すると、そこにはとても見慣れた、しかしこの目では見慣れていない人物が立っていた。

 

 

「…え!?まるっ…!彩先輩!?」

 

 

ふんわりとしたピンク色の髪を揺らしながら、可愛らしい微笑みを向けてこちらに手を振っている人物。それはまさしくPastel*Palettes…パスパレのボーカル担当、"丸山彩"だったのだ。

 

 

「まる?」

 

 

うっかり言いかけたその言葉をたえはしっかり聞いていたようで、意味を催促するかのようにそう呟く。まる、というのは元の世界にいた時に彼女の事を苗字呼び、つまり丸山と呼んでいたから咄嗟に出てしまった言葉だ。丸山って苗字可愛いよね…というか丸山彩が可愛さを体現したかのような女の子でやばいよね。

 

 

「あー、い、いや何でもないよ、何でも。」

 

 

あははー…と笑ってそう誤魔化す。誤魔化せているかは微妙だが、こうすれば人は五割方突っ込んではこない。半分じゃねーか!

 

 

「そっか。」

 

 

しかし今回はその五割勝負に勝ったらしい。たえはそれ以降特に何も聞いてこなかった。沙綾やりみも、最初に聞いた本人が興味を無くしたからか同じく聞いては来なかった。

 

 

「よく分からないけど、行ってきたら?彩先輩がわざわざ訪ねてくるなんて何かあったのかも。」

 

「うーん…分かった。ちょっと行ってくるね!」

 

 

弁当を一旦机に置き、彩の元へと駆け出す。

 

 

「彩先輩!どうかしましたか?」

 

 

すぐ目の前までやってきた俺は、取りあえず用件を聞いてみた。というか可愛いなオイ!間近で見るとさらにやばいっすね…。

 

 

「ごめんね急に呼んじゃって…。香澄ちゃん!私と一緒にお弁当食べない?」

 

「………えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うーん!お日様があったかいね〜!」

 

 

ぐい〜っと伸びをしながら言う彩。朝は結構寒かったが、風も止んできて日が出ているおかげでなかなかに心地良い陽気だ。

 

 

「あはは…」

 

 

ところで制服の仕様的にぐいっと伸びをするとスカートも上に上がってくので自重してくれませんかね…。健康的なお御足が通常時よりも露わになって目のやりどころに困るんだけど…。べ、別にいいぞもっとやれなんて思ってないんだからねっ!

 

 

「香澄ちゃん?」

 

「あ、何でもないです。」

 

 

あぶねーあぶねー罪悪感のあまり土下座するところだった…。

 

 

「それにしても普段はそんなに来ないけど…屋上ってとっても気持ちいいね!」

 

「そうですね!」

 

 

そう、ここは屋上である。一緒にお弁当を食べたいという彩先輩たっての希望により、この場所に一緒に来たのだ。机の上に一旦置いた弁当もちゃんと持ってきた。ちなみに、憑依現象が起こってからは彩とは初対面となる為、髪型の事とかも言われたが大体いつも通りの流れなので割愛。

 

 

「それにしても…珍しいですね?彩先輩が急にご飯に誘ってくれるなんて。」

 

「えへへ…実はとある話を聞いてね…」

 

 

言ってから、もし描写されてないだけでお昼はよく一緒に食べてるとかだったらどうしようとか思ったがそれは杞憂なようだ。それよりも、とある話とは何なのだろうか?

 

 

「香澄ちゃん、なんでも最近色んなバンドに楽曲の事聞いてるんだってね?」

 

「…え?」

 

 

何故それを知っているのだろうか?という事が咄嗟に言葉に出てこないぐらいには驚いた。パスパレの楽曲に関しては公式に公開されていたので、そちらを使って調べた。直接話は聞いていないので知らないはずなのだが…

 

 

「スランプ…になってるんだよね…?」

 

 

少し悲し気な表情になる彩。スランプというのはハロハピの曲目を教えてもらう為に昨日使った手だが…

 

 

「ど、どうしてそれを…?」

 

「噂になってたの。香澄ちゃんが最近作詞に苦労してて、皆に色々聞いて回ってるって…。噂だったから、違ったらそれはそれで良かったんだけど…その反応的に、本当だったんだね…。」

 

 

噂…?もしかしてハロハピの誰かが…?まあ確かに内密にとは言っていないのだが、これはあまり良くないかもしれない。ポピパの他のメンバーにこの話が伝わっていたら、更に心配をかけることに…なんなら既に伝わっている可能性もある。一応朝見た感じではその辺りの違和感は無かったようには思うが…。

 

 

「だ、誰から聞いたんですか?」

 

「え?うーん…誰からっていうか、結構みんな話してたからそれを聞いたって感じかな〜…?」

 

 

と言うことは、噂を広めた発端は分からないという事か。おかしい。誰からと言わずとも耳に入ってくるぐらいには噂話になっていたという事だが、いくらなんでも昨日の今日で規模が大きくなりすぎだろう。どうして?

 

 

「だからほら!私達の曲も参考にしてもらえたらなって。ポピパの曲っていろんなジャンルがあるけど、可愛い系な曲もけっこう多いし!パスパレの曲も割と参考に出来るんじゃないかな?」

 

 

なるほど、それで俺は呼び出されたのか。噂話の件は気になるが、少なくとも彩は善意100%でこの提案をしているのは分かった。ならば言い方は悪いがこれは使えるかもしれない。

 

 

「実は曲は公式のサイトに載っていたので知ってるんですが…。」

 

「あっ…そ、そうだったね、そう言えば…。」

 

 

そういえばそうだったと、ばつが悪そうな顔をする彩。

 

 

「あっ!でも一つお願いがあるんです!」

 

「お願い?」

 

「予定が合えばでいいんですが…パスパレの皆さんと一緒に遊びたいな〜って…」

 

 

言いつつちょっと脈絡が無さすぎるのではないかと思い、頬を掻く。だがそれは杞憂だったようで、

 

 

「えっ?そんな事でいいの?」

 

「是非お願いします!」

 

 

こうしてパスパレメンバーとのお出掛けが決定したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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…とは言っても、予定が合えばの話である。メンバーは五人もいるし、ましてや彼女達はアイドルだ。正直同時に都合がつくかは怪しい。彩とはあの後、「また連絡するね!」と言われて別れてきたが、果たして上手く行くのだろうか?

 

 

「んん〜〜っ…!」

 

 

ベッドに仰向けで横たわりながら、ぐいっと伸びをする。現在俺は晩御飯もお風呂も済ませて部屋で絶賛ダラダラタイム中だ。

 

 

「あ゛〜…」

 

 

疲れ過ぎて女の子にあるまじき声が出る。俺は女の子じゃないのでセーフでお願いします。いやでももはやこの状況だと女の子なのか?体は間違い無く女の子だけども。

彩…なんか呼び捨てにするとアイドルに彼氏面してるみたいでアレなので、心の中でも彩先輩と呼ぼう。彩先輩と話した内容は、有咲以外のポピパ三人にもざっくりとだが話した。スランプ気味だと言う事はただの言い訳だったので、本来なら伝える筈は無かったのだが状況が変わった。なかなかの規模で既に噂話になっているようだし、遅かれ早かれ三人にも話が伝わるだろう。第三者から先にその話を聞いてしまえば、トラブルになる可能性があると考えた結果の判断だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『スランプ?』

 

 

三人の声が重なる。クラスのHRが終わり、有咲待ちの状態の時に、俺は昼休みあった事を話した。

 

 

「うん…ごめんね、黙ってて…。、」

 

「そうだったんだ…。ううん、私達こそ香澄ちゃんが辛い思いしてるの、気付かなかったから…。」

 

 

そう言って落ち込むりみは、あまり見ていられるものでは無かった。様子がおかしかったのはこれのせいだったんだと思っているようだ。実際は違う話なのだが、りみや隣で一緒に落ち込んでいる沙綾やたえを見て申し訳ない気持ちになる。

 

 

「そ、それは違うよ…!私、言わなかったんだもん…言わなくちゃ、言われなきゃ分からないと思う…。」

 

 

実際そうだ。分かり合ってるからって、何も言わなければ分からない。何となく察する事は出来ても、精々当たりをつけてそれが合っている事もあるかもしれない程度だ。まあ、今回の話はそういう話でも無いのだが…。

 

 

「…あのさ、もしかして、有咲はこの話知ってるの…かな?」

 

「えっと…」

 

 

おずおずと、沙綾がそう訊ねてくる。この質問をしてくる辺り、有咲の様子の変化もやはりちゃんと気付いていたのだろう。

 

 

「知ってたよ。」

 

 

沙綾の疑問に答えたのは、俺では無かった。

 

 

「…有咲…。」

 

 

HRが終わったのだろう。どこから話を聞いていたのか分からないが、いつの間にか教室に彼女は入ってきていた。

 

 

「あー、その…相談、受けたんだよ…ちょっと前にな。」

 

「相談?スランプの事?」

 

「ああ。」

 

 

たえに目を合わせて相槌を打ったあと、全員を見回してから話を続ける。

 

 

「香澄は黙ってるつもりみたいだったけど、どうしてもおかしいと思って、二人の時に問い詰めたら白状したよ。それでも、迷惑掛けたく無いから他の皆には黙っててくれって。だから、私も言わなかった。香澄の気持ちも分からないでも無いからな…」

 

 

そんな事実は、無い。つまり、今これだけのそれらしい話を彼女はでっち上げたのだ。つくづく彼女には助けられる。

 

 

「でも、こうして噂にまでなっちゃった以上な…。」

 

「有咲ちゃんのクラスでは話が出てたの?」

 

「まあ、ちょっとな…」

 

 

二年生だけでは無い。もう一年生の方にも話が来ているらしい。もしかしたら三年生の方にも広まっているのだろうか?しかし、こうやって聞くと、香澄達ポピパが学校では結構有名人なのを改めて認識する。文化祭でライブをやったのはやはり大きいのだろうか。そもそも、香澄のキャラ的に知り合いが多いのか。

 

 

「とにかく、そういう事だから香澄は色んなところに話聞いたりしてるって事。私も話聞いてからは一緒に行ったりもしてる。」

 

「だから、今度彩先輩達にも話を聞こうと思って、そのお話もしてきたんだ。」

 

「そうだったんだ…」

 

「ごめんね沙綾…りみりんにおたえも。心配かけちゃうけど、もう少し待ってもらえないかな?私、もうちょっと頑張ってみたい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんな訳で、なんとか三人には納得してもらえたのだった。後で「貸し一つな。」と言ってきた有咲の表情が少し暗い気がしたのは、きっと気のせいでは無い。有咲だって嘘をつくのは苦しい筈だ。それは今までの事から知っている。しかも、今回の相手はポピパのメンバー。仲間で、親友で。そんな相手に嘘をついた彼女はどんな気持ちだったのだろうか?それは、想像に難くない。

 

 

「あー…もう駄目だ、寝よ…」

 

 

何故こんなにも噂が広まっているのかなど、まだ気になる事はあるのだが、今考えたところで答えは出ない。何より、精神的疲労が強い俺にこれ以上考える余裕は無かったのだった。

 

 

「…おやすみ…」

 

 

誰に言うでもなく、ぼそりとそう言いながら俺は目を閉じた。パスパレのメンバーとの邂逅。いつになるかは分からないが、何かのヒントがあればいいと思いながら。そして、結局原因があるのはポピパ内の何かでは無いのかという疑念から、なんとなく目を逸らして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued…




丸山ちゃん初登場です。また、中川さんという謎の存在がいましたが、オリキャラとかそういう訳ではないのであまり気にしなくてもいいです。単にモブもちゃんと生きてますよアピールです。


長らく更新出来ていなかったにも関わらず、お気に入り登録等増えていてとても温かい気持ちになりました。ありがとうございますm(_ _)m
次回もよろしければよろしくお願いします。

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