「まだかな…」
俺はショッピングモール前の噴水広場にて、とある人物と待ち合わせしていた。いや、まあ勿体ぶらずに言うと有咲なんだけども。
「まあ遅れるって連絡あったしな…まだ来ないか…」
時刻は現在10時25分。10時半に待ち合わせていたのだが、少し前に遅れるかもという謝罪の連絡が来た。電話越しでもよく伝わる非常に申し訳無さそうな声色だったもので、全然気にしていない旨は伝えたが…
「有咲真面目だし、それでも気にしちゃうかもな〜…」
しかし気にしてはいないのだが、それはそれとして有咲はそれこそ真面目なので遅刻という事態になるのは珍しいのでは?という疑問は湧いている。何かあったのだろうか?
「それはそうと…」
近くにあるウィンドウに映る自分の姿を見る。
「うーん…やはり美少女…」
そんな傍から聞けばナルシストな発言を小声で呟いてしまう。慣れたとは言っても、こんな可愛い子はいくら見ても全く飽きない。
「ちょっと試しに…」
知識が無いなりに適当にそれっぽいポーズをとってみるが、なかなか様になっている。やはり可愛いは正義なのだろうか?
「こんなんとか?こんな感じとか?」
「何やってんだ…」
「何ってポーズを…え?」
声が聞こえた方向に振り向くと、そこには若干引き気味の声の主…というか有咲が立っていた。
「おわっ…わっ…わ〜…き、来てたのか…アハハ…」
「…で、今のは何。」
冷たい!!いくら何でも冷たすぎるよ!!お願いだからもうちょっと優しくして!?
「いや、その…な、なんでもいいだろ!ほら行こう!」
「うわ〜…」
勢いで誤魔化…せてない気がするけど、誤魔化して歩を進めた俺を、きっと彼女は呆れた顔で見てそうだけど、確認したくない!怖い!
「まあいいや…取りあえず行こっか。」
「そうしようそうしよう!」
取りあえず流してくれるらしい彼女のご厚意に甘えつつ、二人でショッピングモールに入っていくのであった。
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「ふ〜む…」
歩きながら、俺は隣にいる有咲をチラチラと見ていた。なんというか、こう、やたらと可愛い…いや、普段から可愛いのだが、なんかこう特別…
「あの…なんか変…?」
そんな風に見ていたら、有咲が不安そうに問い掛けて来た。なんだかいつもよりしおらしいがどうしたのだろうか。
「いや、変な訳じゃなくて…こう…」
そういえば、先程はそれどころじゃなくてあまり気にしなかったが、今日の有咲は髪を下ろしている。これが雰囲気が違う理由?いや、それもあるがそれだけでは無いような気がする。
「ん〜…なんか特別な感じ?」
「特別…!そ、そっか…!」
俯いてしまったが、横から見える表情は嬉しそうだ。髪を指でくるくると弄りながら、照れくさそうに笑っている。
「というか!その…今日は遅れちゃってごめんな。」
「いや、そんな大した時間でもないし気にしてないよ。」
「そ、そうなんだ…ありがと…」
なんなんだろうか可愛いな。今日はやけに大人しいというか、悪い感じでは無いからまあそこまで気にする事ではないのだろうが…
「えっと、今日は花音先輩へのお礼を何か探すんだよな。」
「ああ。」
そう。今日ここに来た目的は、有咲に憑依現象の件で真実を伝えた時に、助けてくれた花音に何かお礼の品を見繕いたいというものなのだ。
「結局まともにお礼出来てなかったからな…本人に聞いても遠慮しちゃうだろうし、ここはサプライズプレゼントするしかない!」
「だな…でもそれはいいけど、何をあげたら喜んでくれるかな…」
「あの人の事だから、正直余程意味分からないもので無ければなんでも喜んでくれそうではあるけど…」
どうせなら、プレゼントという付加価値を抜きにしてもとても嬉しいと思ってくれる物をあげたい。重たすぎるようにはしない方がいいとは思うが。
「取りあえずクラゲが好きなのは知ってるから、なんかクラゲがデザインされてるやつがいいのかな。」
「クラゲデザインか…自分で探した事無いけど、普通に置いてあるもんなんかな?」
「さぁ…?」
二人してこんな感じなので不安も残るが、探してみないと分からないので取りあえず適当にお店を回ってみる事にした。
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「無い!無いな!」
「いや、そんなえばって言う事じゃないから…」
有咲と二人で探してみるも、ピンと来るどころかそもそもクラゲ系の物が見つからない。
「マイナーなのか?」
「うーん…たまたま見つけてないだけかもしれないし…」
「……考えててもしょうがない。そろそろいい時間だし、お昼にしないか?」
12時を回っていた事もあり、俺の提案に有咲は二つ返事で了承した。
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「フードコート…なんか感慨深いかもな…」
「感慨深い?」
「ほら、前に有咲と来た時はまだ香澄の演技してただろ?」
「ああ…」
何を隠そう…という程でも無いが、ここは前に有咲と二人で遊びに来たショッピングモールと同じ場所である。というかこの辺に大きいショッピングモールはここぐらいしか無い。
「確かうどん食べたよな。何食べるか聞いたら凄い元気にうどん!って言うし。」
「あれは割と実際に俺が食べたかったんだよな。うどん美味いし。」
「それは良いけど天ぷら取りすぎて残してたよな?」
「うっ…あれは男の時のノリで取っちゃってな…」
「ああ、そういう事だったのか…」
なるほどと納得する有咲。食べ物はなるべく残したく無かったが、女子高生の胃袋の小ささを舐めていた。いや、これは別に女子高生関係ないのか?
「まあそんな事より、席探そうぜ?結構混んでるし。」
「そうだな…早く見つかるといいけど…」
そうして二人で人混みの波を掻き分けて、席が空いてないか探しに行く。しかしどうして、なかなか二人すら座れる場所が空いていない。
「いや〜、流石に休日昼時のフードコートはやばいか…」
「だな〜…もう結構疲れたぞ私…」
本来インドア派な有咲はなかなか参ってるようで、がっくりと項垂れている。いかんな…有咲の為にもさっさと席を…
「あ。」
そんな事を思っていたら、目の前のテーブル席にいた家族であろう四人組が席を立った。お皿等を返しに行くあたり、もうフードコートからは出るようだ。しかし…
「うーん…やむを得んか…?」
この混み具合で四人席に二人で座るのは少し抵抗がある。しかし有咲の事もあるので、やはり座ってしまおうかと思ったその時だった。
「あれ…?香澄と有咲?」
「おやおや〜?これはこれは、奇遇ですな〜。」
声を掛けてきた二人組。片方は以前にも会ったAfterglowのギターボーカル、美竹蘭。そしてもう片方は…
「蘭ちゃんに…モカちゃん?」
同じくAfterglowのギター、青葉モカの姿がそこにはあった。
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「二人ともこんな所で会うなんて、すっごい偶然だね〜!」
二人の登場により、俺は香澄を演じるモードに切り替える。今日はこれやる気無かったのに!
「いや、この辺住んでたら会う可能性はそこそこある場所だと思うけど…」
蘭ちゃんそういう事言わないの!メッ!いや確かにそうなんだけど。急に演技させられてるから内容結構適当になっちゃったぞ。
「ら〜ん〜、デートを邪魔されたからってそんなに怒っちゃ駄目だよ〜?」
「いやデートじゃないし…というか別に怒ってないよ。」
ゆっくりとした独特な口調で蘭を茶化すのは、先程も言ったがAfterglowのギターであり、蘭の親友とも言っていい女の子、青葉モカである。例に漏れず、彼女もバンドリのキャラクターであり、初対面ではあるがキャラはよく知っている。
「またまた〜蘭は恥ずかしがり屋さんだな〜。」
「はいはい…。」
モカの言葉を慣れた様子で適当に流す蘭。この二人はこんな感じのやり取りが多い印象がある。それはそれとして、丁度二人も席を探していたところらしく、折角四人席が空いたところに四人いる形になったので、一緒に座る事にした。
「ところで、お二人もここでデートですかな〜?」
「なっ…!や、ち、ちげーし!」
モカの茶化し対象が有咲に変わる。彼女はこんな感じで人とじゃれ合うのが好き…というのはバンドリのストーリーを見て思った事だ。飄々としているというか、あまり本音をしっかりとは見せないが、頭の中では結構色々と考えていると思われる。多分。
「まったく…」
「あはは…」
呆れる蘭を横目に、苦笑を浮かべながらチラッ、と有咲の様子を確認する。モカが面白がってからかっているのに対し、恥ずかしそうに顔を赤らめている。デート…デートか…。まあ傍から見れば女子同士の仲睦まじいお出掛けなんだが、俺は中身男だし、それを有咲も分かってはいるので男女二人でお出掛け…という事にはなるのか?
「ま、まあまあモカちゃ〜ん…有咲が茹で上がっちゃうしその辺で…」
言ってからこの台詞はあまり香澄っぽく無いなとは思った。が、流石に乗っかって抱きついたりするのはちょっとな…や、俺はいいけどね?望むところだぐらいなんだけど、有咲がどう思うかな?みたいな?
「…まあ恥ずかしがる有咲からしか摂取出来ない成分を取れたので良しとしますか〜。」
「ど、どんな成分だよ…」
散々からかわれて疲れ果てている有咲。それはそうと、モカが一瞬懐疑的な目でこちらを見たのは気のせいか…?窘めるなんて正直香澄っぽくない事をしたからだろうか…。
「それで、二人は何してたの?買い物?」
「えっと〜、まあそんなところ!」
蘭からの質問に適当に濁して答える。花音へのプレゼント選びと正直に言えば、何があったのかを聞かれるかもしれない。花音にお世話になった件は、憑依現象の事がきっかけなので、そこをぼかして伝えるのも面倒臭い。
「蘭ちゃん達はどうしたの?」
取りあえず聞き返してみる。
「ああ、それは…」
そう蘭が言い掛けたその時だった。
「あれ?香澄ちゃん…?と、なんだか珍しい組み合わせ?」
「え?」
後ろから聞こえた優しい声に、顔を振り向かせる。
「こんにちは。こんな所で奇遇だね?」
「花音…先輩!?」
そこに満面の笑みで立っていたのは、まさにプレゼントを渡す予定の松原花音であった。
「私もいるのだけれど…ふふ、少しお邪魔だったかしら?」
「白鷺先輩まで!?」
なんとパスパレの白鷺千聖まで一緒である。この二人は親友と言えるくらいの仲なので、一緒にウィンドウショッピング的な感じなのだろうか。二人と会う事自体はまあ別にいいのだが、如何せんタイミングがよろしく無い。これは…どうしたものか…
To Be Continued…
若干切りどころが微妙かなと思いつつも、取りあえず切らせていただきました。
この創作の主人公は香澄推しですが、私自身の推しは花音ちゃんです(贔屓)
まあ皆好きなのですが。