戸山香澄になっちゃった!?   作:カルチホ

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お待たせいたしました。
ちょこっとシリアスします。


2話:決意しちゃった!

「なぁ…香澄のやつどうしたんだ…?」ヒソヒソ

 

 

時間は放課後。無事に授業を終えた俺はまたしても机に突っ伏していた。

 

 

「分かんない…ただ昼休み終わるぐらいからなんか妙に落ち込んでる?というか…」

 

 

何故落ち込んでいるのか?その答えを教えるには、少し時間を遡る事になる

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ〜食べた食べた!」

 

 

昼休み、沙綾の言った通りこのタイミングに事は起こった。

何が起こったのか?皆でお昼ご飯を食べ終わり教室に向かっている途中、それは突然に訪れた…

 

 

「……っ!?」

 

 

突如自身の身体に襲い掛かる感覚。この感覚はそう、家で考えるのを後回しにしていたやつだ。普通に考えて避けられる訳も無いのに今の今まで一切考えなかったやつだ。

 

 

「……」

 

 

有り体に言ってしまうと、トイレに行きたくなった。いつかは来るなんて分かってたはずなのに、もうめちゃめちゃ焦った。この身体でトイレに行けと!?いや、しかし行かなかった場合待ち受けてるのは…

 

 

「香澄ちゃん?」

 

「えっ!?」

 

 

見るとりみが心配そうにこちらへ顔を覗かせている。他の皆も同様だ。

 

 

「どうかしたの?」

 

「や、えっとトイレ!トイレ行ってくるね!」

 

 

誤魔化したようで特に何も誤魔化してない返答をしてトイレに向かう。皆がこれまたきょとんとした表情をしてた気がする。ちょっと怪しかっただろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

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「来てしまった…」

 

 

女子トイレの前に立つ俺。今更だけどいいのだろうか。ここに入るという事は…

 

 

(…しょうがないよな、俺は悪くない、悪くないぞ…)

 

 

自己暗示を掛け、重い歩を進めた…

 

 

 

 

 

 

 

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「………」

 

 

……やってしまった……俺は罪悪感やら興奮やらでもうどういう状態かよく分からなくなっていた。女子のトイレの仕方に関してはアニメやら漫画やらのシーンでたまにあるのでまあ意外と困らなかった。がしかし…うん、やめよう。トイレについて考察し続けるなんてまるで変態じゃかいか!うんやめよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

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これが起こった出来事である。やめようとか思いつつ結局色々と考えてしまってそんな自分に嫌気が差したりしてたのである。男は男である限り皆変態であるみたいな事をどっかで聞いてとても共感したものだが、俺にはその精神が足りないようだ。や、これ足りない方がいいんじゃね?足りない方が人として良くね?

 

 

「香澄保健室?」

 

「や、保健室はもういーよ…」

 

 

どんだけ保健室推しなんですかねこの子…気に入ったの?保健室というフレーズ気に入っちゃったの?

 

 

「なんだか知らねーけど、今日はとっとと帰って休んだら?練習もないしな」

 

「そうだね、香澄ちゃん今日は調子悪いみたいだし…」

 

 

調子が悪い訳では無いのだが…まあそういう事にしとこーかな…

 

 

「うーん、そうみたい。今日は寄り道せず帰るよ〜」

 

「えらく素直だな…ちょっと駄々こねるかと思ったが」

 

 

あー、香澄だったら多少調子悪くても遊びたがるのかもなぁ…

 

 

「取りあえず帰ろっか。香澄にもしっかり休んでほしいし」

 

「は〜い」

 

 

そんなこんなで5人で帰路に就くのだった

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいま〜…」

 

 

香澄だったら元気良く言い放つのがらしいのだが、ついついおどおどした感じになってしまった。朝すぐ出て行っちゃったから下手したら学校よりまだ慣れてないな…

 

 

「香澄!アンタお弁当持って行かなかったでしょ!今日の夕飯お弁当だからね!」

 

「ご、ごめ〜ん…」

 

 

ちょっとしゅんとしてしまった。母親に怒られるなんて久々だな。や、母親じゃないけども。というか何気に初対面なんだよな、朝顔見ずに出ちゃったし。ハッキリとは覚えてなかったが、そういえばアニメでこんな顔だったな。

 

 

「あれ?そういえば髪下ろしてるの珍しいわね。高校入ってから欠かさずセットしてたのに」

 

「あ〜、まあちょっとイメチェンをね〜」

 

「ふ〜ん…好きな人でも出来た?」

 

 

ニヤッと笑いそんな事を聞いてくるお母さん。残念ながらそういうんじゃないんだよなぁ〜…

 

 

「いや、違うから…取りあえず着替えて来るからね」

 

 

 

適当に受け流し自室、もとい香澄の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「っ、はぁ〜……………」

 

 

ドサッ、と制服のままベッドに仰向けになる。今日は疲れた。

 

 

(普通に学校行っただけだけど…こんな疲れるなんて…)

 

 

これを毎日こなしてる学生超凄いって思ったが、まあ戸山香澄に成りきるというオプションが付いている事は勿論疲れに繋がっているのだろう。周りの環境もアニメやゲームと合致するところこそあるが、それも所詮は絵での話であり、実際に自分がそこで立ち回るとなれば話は別だ。結局は殆ど知らない環境のようなものなのだ。むしろちょっと知ってる分やりづらい。

 

 

(こんな事なら設定まで詳しいオタクになるべきだったか…いや、それなってもこの状況じゃ大して変わらなくね?)

 

 

バンドリは大好きなつもりだが、そこまで細かい設定を覚えてる訳でも無いし、そもそも知らないものもきっとあるだろう。アニメで出てきた『Glitter*Green』というバンドもあるが。名前をしっかり覚えているのは二人だけだ。

 

 

(あのバンドもやっぱり普通にいるのかな…?)

 

 

花咲川女子学園、花女の3年生4人で固められたバンドだが、ゲームの方には楽曲と一部シナリオのみでしか出てない。その出たキャラも俺が覚えてる二人だけだ。まあ覚えてる理由としてはゲームに出たからとかではなく、一人がメインキャラの姉、もう一人があまりにもキャラが強烈だったからだが…

 

 

(今のところ皆を見た訳では無いけど…はぐみとイヴは同じクラスにいた。そうなるとやはり他のバンドのキャラも皆いると考えるべきか…)

 

 

『他のバンドのキャラ』、はぐみとイヴの所属しているもの以外にも、『Afterglow』『Roselia』という2つのバンドがある。Afterglowの方は全員違う学校、羽丘女子学園というところに在籍しているはずなので、学校に行ってるだけでは会うことは無いのだろう。まあ今俺が香澄になっているという事を考えなければだが…

 

 

(そして…)

 

 

Roseliaだが、メンバーが羽女の2年二人、中等部3年が一人、花女の2年に二人なので、普通ならやはり接点は持たない。まあ香澄だし10月って事考えるともう持った後な気はするが…

 

 

「…取りあえずアレだな。当面の目標を考えよう」

 

 

そう言いよしっ、と気合いを入れる。

 

 

「香澄ーー!ご飯だよ〜!」

 

 

と、気合いを入れたところでガクッ、と倒れる。どうやら目標決めは後回しのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あれ?お姉ちゃんその髪型は」

 

「イメチェンでーす」

 

「え、ちょ、なにその投げやりな感じ」

 

 

会う人会う人に聞かれる質問な為、ちょっと返しが雑になってしまったぜ。皆やっぱあの星型ヘアーのイメージ強いのな。

 

 

「だってもうその質問されるの明日香で何回目〜?って感じなんだも〜ん」

 

 

明日香への接し方はこんなものだろうか?戸山姉妹のシーンそんなに沢山あった訳じゃないからな…うろ覚えだ。

 

 

「…明日香?」

 

「え…?」

 

 

え?なにその反応は…あっ…

 

 

「あー!あー!じゃなくてあっちゃん!ねー!ちょっとたまには呼び捨てしたりなんかしちゃったりしてー?あはははは……!」

 

 

やべえかなりテンパった感じになってしまった…まずったな…明日香の事はあだ名呼びだったそういえば…

 

 

「えぇ…?いや、まあ別にいいんだけどさ…なんでそんなに慌ててるの…」

 

「な、なんでもないから!なんでもなさすぎて逆に焦っちゃった…あはは…」

 

 

なんだよ逆に焦っちゃったって意味分かんねーよ…とっさの言い訳下手か!

 

 

「…なんかお姉ちゃん朝から変じゃない?大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫…うん、大丈夫だから」

 

「ホントかなぁ…」

 

 

明日香に心配させるのは申し訳無いが、香澄が香澄では無い限りしょうがないのだろう。妹やポピパのメンバー等近しい者達にはやはり疑問を思わせるところだったりを出してしまっていると思う。母親もまだ接触回数が少ないだけで、時間の問題かもしれない。いつまで自分が香澄じゃない事を誤魔化せるか分からないが、悟られる訳にもいかない。実は朝起きたら香澄になっていた別人です、なんて言っても信じてもらえるとは思えない。本気で言ってる事は信じてもらえても、精神的な方の不調を疑われるだけだろう。これが無くなる為には戸山香澄本人がこの身体に戻るしかないのだ。その為に俺がやる事は…

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……」

 

 

現在俺はお風呂に入ってる。

 

 

「肌が若い…」

 

 

勿論戸山香澄の身体でである。恥ずかしいし罪悪感もあるし興奮も無いとは言わないが、だからと言って入らない訳にもいかない。華の女子高生だぞ?入らない訳にはいかんだろ…それにもうトイレに行ってしまった身だ。今更慌てる事は無い。無いと思ってたんだが…

 

 

「……」

 

 

うん、トイレで上半身は出さなかったからね。トイレをこなした俺は最早無敵かと思ってたが、まだ男のロマンが残ってたよ、うん。

 

 

「もう出るか…」

 

 

湯船から立ち上がった際、うっかり鏡で全身を見てしまい見惚れてしまう。くっ…いたいけな女子高生の身体に男の俺の魂?が入ってしまうとは…神様ありがと…じゃなくてなんて酷い事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さて…」

 

 

パジャマに着替えて自室にやって来た。こっからが俺のやりたかった事だ。今の状態を改めてしっかりと確認し、当面の目標を考える。

 

 

(と、言っても最終的な目標は決まってるよな…)

 

 

最終的な目標。それは、元の身体に戻り、自分の生活を取り戻すという事だ。俺は元の世界が嫌になったとかは特に無いし、今の経験は貴重ってレベルでは収まらない程レアだが、それでも俺は元に戻りたかった。あちらの世界には残してきたものが沢山ある。家族、オタク友達、録り溜めたアニメ、ゲーム…あれ?意外と少ないし後半行くに連れてしょぼくなってったな…あ、仕事はノーカンで。

 

 

「そういえば、元の俺の世界での俺はどうなってるんだ?」

 

 

眠っている?香澄が代わりに入っている?そもそも時間が進んでない?香澄が代わりに入ってるのはまずいなぁ…高校生がいきなり社会人として放り出されて上手くやれる気がしない…言っちゃなんだけど香澄だと特に…そもそも俺なんかの身体に香澄が入ってる状態は申し訳無さ過ぎて死にたくなるな、うん。

 

 

「あるいは…」

 

 

この身体の中で香澄の精神は眠り続けてる、とか?

 

 

「……」

 

 

眠り続けてるならまだいい。ただ、一つ考えたくない可能性があった。もし、もしそうなら俺は…

 

 

「……そもそも、香澄の精神は残っているのか…?」

 

 

もし、俺がこの身体に来た拍子に消えてしまったのなら。それは、最早俺が香澄を殺してしまったも同然では無いのだろうか…最も考えたくない可能性だし、そんな確証がある訳でも無い。だがしかし考えてしまうのだ、そんな最悪な可能性を。

 

 

「……」

 

 

そもそも、ここはゲームの世界なんかでは無いと考えるべきだろう。異世界、というのは非現実的だがこの状況においては認めざるをえない。しかし、今こうして俺がここにいて、皆が生きている。紛れもなく、皆がここで生きているのだ。世界の仕組み、なんて言ったら到底分かる問題では無いが、この限りなくバンドリに似た世界は、確かにどこかに存在しているのだ。そんな世界で俺は一人の少女の人生を、現在進行系で奪ってしまっている。自分の意思では無いかもしれない。だがこの事実は間違い無い。下手をしたら先程言ったように殺してしまった可能性すらある。

 

 

「あ…」

 

 

気が付いたら涙が出ていた。考えれば考える程悪い方向に考えてしまう。昔からの悪い癖だ。お気楽に生きているつもりでいてもどうしても色々と悪い方向に考えて、勝手に苦労して勝手に自己嫌悪して…悪い癖だと分かっていてもなかなか直せない。クラスの皆は遅刻した俺を暖かく迎え入れてくれた。皆おはようと言ってくれた。弁当を忘れた俺に、ポピパの皆はおかずを分けてくれた。嫌そうな顔なんて一つもせず、友達なんだからこのくらい当然だと。だがこれは、本当は戸山香澄が受けるはずだったのだ。今までここで生きてきていたはずの、戸山香澄の行いがあったからこそなはずなのだ。そんな皆の優しさを、俺は自分が戸山香澄ですと偽って皆から受け取ってしまった。改めて考えて、この事実が自分にのしかかる。

 

 

「まいったな…」

 

 

夢かもしれないとも思った。だがそんな浅はかな希望は今日一日で打ち砕かれた。この世界でたった一日、たった一日過ごすだけで、生きている人達を見るだけでどうしようもなくここは現実だと思い知らされたのだ。そもそも、夢の中では現実か夢か分からないが、現実は現実だとハッキリ分かる。結局は逃げていただけだ、この非現実的状況から。俺は間違いなくこの世界で戸山香澄になってしまったのだ。そうする事で、戸山香澄を…

 

 

prrrrr…

 

 

「え?」

 

 

思考の泥沼に嵌っていた頭を掬い上げたのはスマートホンへの着信だった。

 

 

「〈ありさ〉…」

 

 

平仮名で登録してるのがなんとなく香澄らしいと思いつつ、俺はスマホを手に取った。

 

 

「…もしもし?」

 

『あ、もしもし…?って、する方はもしもし言わなくていいのか…』

 

 

有咲から電話が来るとはあまり思ってなかったが、この様子だとなんだか意を決して電話したような…?

 

 

「どうしたの?」

 

『あー、なんかさ…その、アレだよ…ちょっと心…配…というか…』

 

 

心配…かなり恥ずかしがってるのは簡単に想像できるが、それでやたらと緊張したような声だったのか。

 

 

『お前さ〜、なんか今日やっぱ変だな…ってちょっと思って…大丈夫とは言ってたけど…』

 

「有咲…」

 

 

まただ、また香澄に向けられるはずの優しさを俺が…

 

 

『ほら…前にこんな流れでさ、私がやらかしちゃったし…』

 

「え…?」

 

『えっと…二重の虹(ダブルレインボウ)作った時にちょっと一悶着あったろ…?まあ、大体私のせいなんだけどさ…』

 

 

二重の虹か…ゲームと同じ話をしてるんだろうかとは思っていたが…。二重の虹とは、ゲームでのバンドストーリーといういわゆるメインの話(メインストーリーという名のものは別にあるが、こちらをメインと言ってもいいような内容ではあるだろう)でのポピパ編2章に当たる話だ。ざっくりと説明すると、有咲が少し無茶をしてしまい仲違いのような形になってしまうのだが、香澄がもう一度皆を繋ぎ直す為に奔走。最終的には皆仲直りし二重の虹(ダブルレインボウ)という曲でクライブ(蔵でのライブ)をするという内容だ。

 

 

『だから〜その~…気のせいだったら私の勝手な勘違いだからいいんだけどよ…、なんかあるなら…アレ、一人で思い詰めんなっていうか…』

 

「……有咲はさ、もしも自分が知らない場所に来ちゃったら、どうする?」

 

 

少し……有咲の優しさに申し訳無さを感じつつも、人の声を聞けて、頑張って素直になって心配している、そんな優しい声を聞いて気が緩んでしまった。

 

 

『…なんだそれ…?どうするって言われてもな…なんとか帰ろうとするんじゃないか?』

 

「そっか…そうだよね…なら…頑張っても帰れなさそうな時は?」

 

『…?まあそうだな…最悪そこで頑張るとか、そこに誰か人がいれば協力してもらうとか、か?』

 

 

協力してもらう、か…だけど、協力してもらう訳にはいかないし、ここで頑張ってもいずれボロが出る。何より香澄が…

 

 

「…そこで頑張る事も、協力してもらう事も出来なかったら?」

 

『……』

 

 

返答が、途絶えた。

 

 

『香澄』

 

「…?」

 

『それが…それが、今お前を悩ませてる何か、なのか?』

 

「……」

 

 

…答えられなかった。油断した、と思った。何故ここまで核心に近づけるような事を訊いてしまったのだろうか。

 

 

『香澄さ…正直香澄の置かれてる状況は、さっぱり想像がつかない。何があってそんな質問をしてきたのかも。だけど…相当参ってるんじゃないの?』

 

「ち、違う違う!ちょっと聞いてみただけだよー!びっくりしたー?」

 

 

咄嗟に自分を取り繕う。今更手遅れ感が強いが、そうせざるを得なかった。

 

 

『…無理には聞かない…でもさ、どうしても耐えられなくなったら…私達、いや私だけでもいい。私じゃなくても、りみ、沙綾、おたえ、誰でもいい。ポピパの誰かに相談しろよ。ポピパは香澄が繋いでくれた…い、いやなんでもねー!とにかく!近い内に私達の誰かに相談しろ!いい!?』

 

「……うん。ありがと、有咲。」

 

 

…香澄は愛されてるな…有咲に。いや、きっと皆から愛されてるのだろう。友達からも。妹からも。母親からも。有咲以外のポピパの面々の心配も表にこそあまり出さないようにしていたが、学校にいた時や帰り道で痛い程伝わってきた。だから俺は、

 

 

『…そういう事だからな!じゃあな!お休み!』

 

「うん、お休み有咲」

 

 

こんな皆に愛されている戸山香澄を取り戻すべきなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「やるべき事…目標…」

 

 

俺の生活を取り戻すだけじゃない。戸山香澄の生活も取り戻す。精神云々考えても時間の無駄だ。今はやれる事を地道にやっていこう。有咲のおかげで悪い方向へ向いていた思考を切り替える事が出来た。こんなに愛されている子だ。それを奪っていい道理は無い。その想いは変わらない。だからこそ、今奪ってしまっている俺が取り戻す為に頑張るべきなのだろう。戸山香澄という少女に、戸山香澄としての人生を取り戻させる。これが最大の目標だ。何がどうなったかなんてここで考えてもしょうがない。取りあえずは一旦周りに悟られないようにしつつ、色々と調べるべきだろう。きっとこうなった事には何か原因があるはずだ。こんなファンタジーな話の原因を調べるなんてどれだけ大変か想像もつかないが、それでもやるべきだ。

 

 

「…よしっ!!」

 

 

頬を両手で叩き気持ちを切り替える。明日もまた学校だ。今日はもう寝て英気を養おう。

 

 

(きっと取り戻してみせる…!)

 

 

その想いを胸に、眠りにつくのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued…




お疲れ様でした。
そんな訳で主人公の決意の回です。
この回でお分かりになったと思いますが、この話は主人公が戸山香澄として戸山香澄という存在を取り戻すのがメインテーマです。
ちょっとメンタル弱くし過ぎかな?とかネガティブ過ぎかな?とか思わなくも無いですが、知らない世界にいきなり来たなんて状況だしまあいいかなって感じですかね。まあそういうもんかってくらいの気持ちで見て頂ければと思います。私だったらもう諦めて楽しむ方向にシフトチェンジするかもしれません。
果たして主人公、蒼は戸山香澄を取り戻せるのか!?というよくある煽り文を付けてまた次回とさせて頂きます。

それでは、ありがとうございました。

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