戸山香澄になっちゃった!?   作:カルチホ

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お待たせしました。
関係無いですが、お気に入り登録が結構沢山されている事に気付きましたので、ここでお礼を述べさせていただきます。
ありがとうございますm(_ _)m

それでは7話をどうぞ。


7話:誘われちゃった!

どうも、蒼川蒼です。誰だよって?ほら、今現在戸山香澄になっちゃってるあの人です。香澄と名乗り香澄と呼ばれてうっかり自分の名前を忘れそうだぜ。いやまあ流石に忘れないけども。

 

 

「香澄、そろそろお腹空かないか?」

 

 

言ってる側から香澄と呼ばれてしまった。そりゃそうなんだが。そんな風に俺を呼ぶのはお馴染みツインテツンデレ少女の市ヶ谷有咲である。

 

 

「そだね〜、色々回ってたらもうお腹ぺこぺこかも〜…」

 

 

香澄的な感じでしょんぼりしつつそう答える。というか実際結構空いてるのでまあまあしょんぼりしているかもしれない。有咲と二人で何をしてるのかと言うと、ショッピングモールに遊びに来ているのだ。なぜそんな事に?と思うかもしれないが、こうなった経緯は昨晩まで遡る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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♪〜

 

 

「ん?」

 

 

パジャマも着てもう寝る準備万端の時に、香澄のスマートホンから聞こえてくる聴きなれた通知音。言ってしまえばLINEアプリの通知音である。

 

 

「なんだろ…」

 

 

スマホの画面を見ると、送り主は有咲のようだ。「明日暇か?」と書かれている。

 

 

「明日、ねえ。」

 

 

明日は土曜日だが、特に予定は無い。ホントはハロハピの誰かと接触したいというのもあったのだが、なかなか上手い方法が思い付かなくて少し保留にしていたのだ。なんせハロハピである。え?おかしい?いやいや、だってハロハピだぞ?接触自体は恐らく容易い。なんならハロハピのメンバーの一人、はぐみが同じクラスだ。しかし、目的としているのは今現在なんの楽曲があるかという事を聞き出す事である。俺が香澄みたいにガンガンなんでも突っ込んでいける性格なら良かったのだが、生憎そうでもない。なんの脈絡も無く尋ねるにはどうなんだこの質問とか考えてしまう。それに体良く聞けたとしても、はぐみが分からなければ他のメンバーに聞く事になるだろう。恐らくだが美咲…奥沢美咲という子を頼る可能性が高い。この子はかなりの常識人な方だし別にいいのだが、そうすると弦巻こころという少女がセットで付いてくる事が大いに考えられる。弦巻こころとは、一言で言うと色々とぶっ飛んでいる女の子だ。はぐみのテンションに合わせるのも結構大変なのに、こころと上手く話せるだろうか?というのが心配だ。しかもこころは確か他の人の本質を見極めたりするのが得意、みたいな設定があったと思う。戸山香澄が、今本当は戸山香澄じゃない事がこころには分かる、というのも有り得ないとは言い切れないのが怖いところだ。

 

 

「『暇だよー♪どうかした?』、と…」

 

 

LINEの履歴を漁って香澄っぽい言葉使いを作り返信する。ちなみにパスパレだが、よく考えたらプロのアイドルだし楽曲の一覧ぐらい見れるんじゃね?という事に気付き、インターネットを使い調べた。結果、やはり知ってる曲は全てある事を確認。Afterglowが楽曲提供をした『Y.O.L.O!!!!!』も載っていた。楽曲提供の話については割愛するが、まあこれもイベントストーリーで色々あったのだ。

 

 

♪〜

 

「お、返信来た…なになに…?」

 

 

そこに書いてあったのは、「暇なら遊びにいかないか?無理なら別にいい」という文章だった。なんというか、色々考えた結果結局最低限の事だけ書いて送った姿が目に浮かぶ。だが、随分と珍しい。LINEの履歴を見た限りでは、有咲の方から純粋に遊びに誘うような事は今まで無かった。直接言っていれば分からないが、有咲のキャラ的にそれも考えにくい。しかもこの微妙な関係性になっている時にだ。何かを考えて誘ってきているのは明らかだろう。用事をでっち上げて断ってもいいが、ここはあえて乗ってみるとしよう。とにかく行動しなければ現状は変わらないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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と、まあこんな感じで有咲とのお出掛けが決まったのである。今のところはまあ普通にお店を回っているだけのように思える。雑貨、アクセサリー、服などだ。何かを買ってたりしている訳ではなく、所謂ウィンドウショッピングというやつだろう。ぶっちゃけ興味が無いので暇だったりするのだが、戸山香澄なら恐らくどれでも目をキラキラさせて見ると思うので、俺もなるべく楽しそうにする。それに、有咲もそれなりに楽しそうにはしているので、そんな有咲を見て癒やされるのは悪くない。悪くないというか、なんなら役得である。

 

 

「取りあえずフードコート行くか?」

 

「そだね、一旦そこで休憩しよっか!」

 

 

方針を決め、フードコートに向かって二人並んで歩き始める。ちなみに今日の有咲の服装は、ピンクのセーターに青いロングスカート的なやつだ。厳密に言うと何か名前があるのかもしれんが、服の事は詳しくないのであまり分からん。なんかゲームのカードの覚醒前とかで見た事ある気がするが…。髪型はいつものツインテールで、歩く度にゆらゆら揺れてるのは可愛いと思います。まあこれはいつもなんだけど。あ、ちなみに俺、というか香澄の格好は、この間CiRCLEに行った時と大体同じである。ゲームで見た事ある感じにすればまあ概ね間違いないよね!自分のセンスが無さすぎてオリジナリティな着合わせをする気にならないんですよねー。

 

 

「それにしても残念だね〜…他の皆は来れなくて…」

 

「ん?ああ…なんか皆用事があるみたいだな〜。」

 

 

他の皆とは、ポピパの残りのメンバー三人の事である。知っての通り、ポピパはとてもとても仲良しだ。わざわざ休日に遊びに行くとなれば、取りあえず誘わないという事は無いだろう。実は昨晩有咲に他のメンバーの事を聞いたのだが、「三人とも用事があって行けないみたいだ」との回答を貰った。なんというか、流石にそんな事あるんだろうか?と思ってしまった。だがまあ有り得ない訳でもない。可能性として考えられるのは、1:本当に言った通り誘ったけど三人とも用事があって断った。2:ポピパの他四人で相談して、何かの理由のもと有咲のみで香澄と出掛ける事にした。3:そもそも他三人は誘っておらず、なんらかの目的で香澄と二人で出掛ける為の有咲の独断行動。ざっと有り得るのはこの三つだろう。まあ理由だの目的だの言ったが、悪い意味ではなく、この状況を改善なりする為の何かではないだろうか。

 

 

「あ、着いたよフードコート。」

 

 

道中あまり会話も無く、目的地へと辿り着く。きっと香澄本人ならば、もっと有咲にベタベタくっついたりだとか、脈絡も無く話し掛けたりとかしそうなのだが、残念ながら俺にそんなコミュ力は無いのである。今の関係性だと尚更だ。というか歩いてるだけでポンポン話題出てくる人って最早何かの才能があると思うんだけど?お店で何か見ながらならそれについての事とかで話せたりはするんだけどな…

 

 

「香澄何食べるよ?」

 

「えっとね〜…うどん!」

 

「うどん!?なんかチョイスが渋いなおい…いや、まあ私も好きだけど…もっとこう、女子高生らしいものとかにしないのか…?いや、うどんも案外…?」

 

 

後半ぶつぶつと小声で言っていたせいで聞こえなかった…なんて事は無く、バッチリ聞こえてたぞオイ。うどんいいだろ!と、言いたいところだが、俺も言ってからうどんってどうなんだろうと思ったので何も言えない。しかし有咲もこういう時のセオリー?がしっかり分かってるかというと微妙なところなので、まあ大丈夫だろう。

 

 

「あ、あー、じゃあ私もうどんにしようかな…」

 

「えー!?嫌いなら無理しなくてもいいよー!?」

 

「いや嫌いじゃねーから!香澄のチョイスが個人的に意外だったっつーか…」

 

「私だってうどんくらい食べるよー。」

 

「あ、まあそうだよな…別にうどんくらい食べるよな…」

 

 

びっくりされたお返しにちょっとからかってみる。今のはいい感じに雰囲気を解せたかもしれん。というか言っといてなんだがうどん嫌いな人ってほとんど見た事無いな。いない訳では無いんだろうけど。

 

 

「結構並んでるな…」

 

 

そんな訳で二人揃って某うどん屋の前に来た訳だが、それなりの人が並んでいる。よくある注文してうどんを貰ってから、天ぷらなどを選び最後に会計する方式だ。年齢層を見ると、普通に若い女の子とかもいたりするのでちょっと安心。というかなんなら老若男女いますね、ハイ。さすが俺の好物だぜ、うどんっていいよね!!と、そんなアホな事を考えている間に順番が回ってきたので、普通のあったかい掛けうどんを頼んで幾つかの天ぷらを取っていく。

 

 

「香澄結構取ったな…そんなに食べられるのか?」

 

「え?」

 

 

会計を済ませ、席を探してる途中にそう言われる。確かに天ぷらが少し多いかもしれない。男の時のノリで取ってしまったが、この量は香澄の華奢な体に入りきるのだろうか?華奢って言っても男と比べたらだけども。女子的には多分標準に近い体型な気がする。とまあその辺色々考えるのは香澄に失礼なのでやめておこう。

 

 

「ん〜、多分大丈夫!食べ切れなかったら有咲にもあげるね!」

 

「いや、私は私で丁度いいぐらいの量取ったんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「もうお腹いっぱい…」

 

「だから言ったろ…」

 

 

うん、案の定入りきらなかったですね。うどんはなんとか食べ切ったが、天ぷらはまだ食べかけの物が二つ残っている。思えば弁当は香澄のお母さんが丁度いい量にしてくれてたから気にならなかったけど、自分で注文する時は気を付けないといけないな…

 

 

「有咲残り食べる?」

 

「いや、私ももういっぱいだから…」

 

「だよねー…」

 

 

このまま残してお皿の返品に行ってもいいのだが、勿体無い精神が俺を躊躇させる。といっても二人ともお腹いっぱいだ。都合良く誰か来たりしないだろうか?

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

いや誰も来ないのかよ!今フラグ立てたじゃん!ってまあそんなんで人が来れば苦労しないのだろうが。

 

 

「なあ、別に無理する事ねえって。食べ切れないなら残すしか無いって」

 

「でもなんか負けた気がするし…」

 

「いや別に勝ち負けとかねーから。」

 

 

ですよねー。

 

 

「ま、いっか!」

 

 

天ぷらが残っているお皿が乗ったトレイを持って立ち上がり、返却口へと向かう。有咲も呆れたように溜息をつきつつそれに続く。まあね、むしろただの天ぷらから戸山香澄による食べかけ天ぷらになったからね。価値上がったと言ってもいいよね。俺だったらむしろ普通の天ぷらより全然高値で買うね。うん、キモいね☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「やって来ました!カラオケ!!」

 

「ちょっと前に来たばっかだけどな。」

 

 

俺が香澄っぽく言った通り、カラオケにやってきた。女子高生が、というか高校生が出掛けてやる遊びとしてはかなり定番だろう。有咲の口ぶりからして前にも来た事がある場所のようだ。多分イベントのストーリーでの話だろうか?ポピパメンバーで休日遊びに行くという内容の話があったはずだ。もしかしたらこのショッピングモールはそのイベントの話に出たものと一緒なのかもしれん。というかここ以外にそんなに大きいショッピングモールが無いのか。

 

 

「取りあえず入ろうぜ〜、もう歩き疲れた…」

 

「えー?カラオケは休みに入る場所じゃ無いよ?」

 

「私にとっては休む場所だからいいんだよ。」

 

 

それ完全にイベントの為の遠征時の俺ですやん…。お金が無い時にカラオケで寝泊まりというのはよく使う手段だ。俺も出来ればホテルをとりたいが、大して給料が高くないとこに就いてしまったオタクは金になかなか余裕が出来ないものなのだ。でも遠征しちゃう悔しい。違うか。

 

 

「香澄〜、受付頼む〜。」

 

「はいはーい!」

 

 

有咲に言われ受付へと向かう俺。まさかカラオケの受付ぐらいで元の世界と違うところも無いだろ…。と、微妙に不安に思わない事も無いが、有咲はこういうの苦手そうだしな。

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

「二人で!」

 

「かしこまりました。それではこちらの用紙に必要事項をお書き下さい。」

 

 

うん、大して、というか全く変わらん。これなら問題無さそうだ。あ、そうだ。

 

 

「有咲〜!時間どうしよ!」

 

「ん〜?あ〜…一時間とかでいいんじゃね?」

 

「りょーかい!」

 

 

一時間ってどうなんだ?二人でカラオケ入った事無いから長いのか短いのか分からんな。少なくとも長いって事は無さそうだが。と、そんな事を考えつつも用紙を書き終え、受付のスタッフから部屋番号を教えてもらい、諸々必要な物を受け取る。

 

 

「有咲!行こ!」

 

「ん。」

 

 

オイちゃんと返事しろ。可愛くなかったら許さないぞ。でも可愛いんだよなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「へー…。」

 

 

部屋に着いてから早速デンモクを弄くる俺。世界が違うからって、カラオケのやり方が違うなんて事は無くて一安心だ。曲も元の世界と変わりないように見える。歌った履歴を見ると結構有名な知ってる曲があり、この辺を入れておけば間違いは無さそうだ。

 

 

「何真剣に見てるんだ?」

 

 

俺がえらい真剣な表情を(多分)しているのが気になったのか、向かいの席から移動してデンモクの画面を横から覗き込んでくる有咲。有咲さん、近いです。ツインテールがさわっさわ頬とか耳とかに当たっててなんだかドキドキするのでやめてくれませんかね…。こんな事でドキドキする20代男性(精神年齢)もどうなんでしょうね…、うん、有咲可愛いししょうがない。

 

 

「何歌おっかな〜って見てただけだよー。」

 

「ふーん、前は結構すぐ曲入れてたよな?」

 

 

そうなのか、と思ったが香澄ならまあそうなるか。

 

 

「有咲〜…私の事単細胞だとか思ってない?」

 

 

ちょっとムッとしながらそう言ってみる。そして言いながら香澄は単細胞という言葉の意味分かるのかとかも思ってしまう。

 

 

「な、なんでそうなるんだよ!?というかそれは言わずとも前から思ってたっつーか、むしろ単細胞という言葉を知ってる事にびっくりしたっつーか…」

 

 

有咲にも思われちゃってたよ。まあそうだよな、基本アホの子だもんな。

 

 

「私だって考えることぐらいあるもん!曲どうしよっかな〜って!」

 

「もっと他にも考える事あると思うけど…勉強とか…あと勉強。」

 

「ちょっとー!それは無しだよー!」

 

 

うがーっとしながら有咲に反論になってない反論を返してみる。我ながら香澄の演技は結構慣れたものになってきた気がする。この世界に来てしまった当初と比べて心に余裕がある程度出来たのもあり、好きなキャラを演じる事自体は楽しいところもあったりする。まあ余裕があると言ってもどうにかはしたいのだが。それに、演技を抜きにしても有咲とこうやって話すのは悪くない。一つ気になる事と言えば、本当の意味で『俺』と話す人間はいないという事か。気になる程度の問題では無いが、その程度の問題という事にしなくてはならないのだ。これを真剣に考えれば、きっとドツボに嵌ってしまう事だろう。だから、都合の良いように自分の気持ちを信じたり、心に嘘をついたりする。言ってしまえば自己防衛行為だ。

 

 

「無しってなんだよ…。それで、曲決まった?」

 

「うん、えっとね…」

 

 

言いながら、隣にいた有咲が向かい側の席に戻ろうと立ち上がる。と、その時

 

 

「うわっ!」

 

「えっ?」

 

 

歩を進めようとした有咲の足に機材のコードが引っ掛かりバランスを崩す。立て直しかけたかのように見えたが重心を倒れそうな方向と逆に掛け過ぎたのか、背を向けてたのがそのままくるっと回りつつ、こちらへ倒れてきた。これが一瞬の内に起こったせいで俺も反応出来ず…

 

 

「わっ!」

 

「ちょっ!」

 

 

そのまま有咲に押し倒されるような形でソファに倒れ込んだのであった。

 

 

「うぷぷ…」

 

 

なんだか豊満なものに顔が埋もれている。しかも胸を鷲掴みにされているような…ようなじゃないですね、完全に掴まれてますねこれ…

 

 

「ぢょっ…あり…」

 

 

駄目だちゃんと喋れん。何とは言わんが豊満なものの攻撃力が高過ぎる!鷲掴みにされてる方は実際は女の子じゃないので特に気にならないが、豊満なものは精神男の子にはキツ過ぎる色々と!

 

 

「いたた…って、あっ!ご、ごめん!」

 

 

状況に気付いた有咲が慌てて飛び退く。そして自身の手をチラチラ見ては、こちらの様子を申し訳無さそうに伺ってくる。どうやら有咲の方は鷲掴みにしてたのを気にしていそうである。事故な上に女の子同士とはいえ、流石にがっつり掴んでしまったのは申し訳無いと思ってるのかもしれない。しかし有咲がこんな某ハーレム物みたいな転び方するとは…女子だけど。そしてそれのヒロインみたいに押し倒されてるのは精神男っていう…もう訳分からんなうん。

 

 

「ううん、大丈夫!有咲は怪我してない?」

 

「あ、ああ、私は大丈夫だけど…」

 

 

取りあえず無事なようだ。転んだ拍子に机の角とかにどこか打ったらかなり痛いからな。実は小さい頃にやらかした事がある

 

 

「香澄は大丈夫か…?」

 

「あ、うん。私は平気だよ。」

 

 

なるべくにこにこしてそう返す。にこにこしたら逆に怖いとか無いよね?

 

 

「や、その…なんかごめん…」

 

「え?」

 

「その…む、胸…」

 

 

おっと言ってしまうのか有咲さん。お互い触れないのが一番平穏なのに!

 

 

「べ、別に気にしてないよ!大丈夫だってば!」

 

 

手をぶんぶんと振って気にしてない旨を伝える。若干キョドったのはワードのせいで豊満なものを思い出したからとかじゃない。絶対無い。

 

 

「そ、そうか…?なんか…顔赤かったから…」

 

 

え?マジ?それ多分君の豊満なもののせいだね、うん。自分の方のは全然気にしてないというかホントに。これが見知らぬ男だったら気にするけども。有咲なら香澄も別になんとも思わないだろう。

 

 

「とにかく!大丈夫だから!ね!?」

 

「う、うん…分かった。」

 

 

取りあえず納得してくれたようだ。しかしアレだな、どうせなら元の世界で高校生の時にこういうラブコメ的な事起こって欲しかったよ?役得な気もしたけど向こうはあくまで香澄だと思ってるしなぁ…。まあ俺が元の姿でこんな事起こったら通報されちゃう自信あるけどね。なにそれ有咲から転んできたのに理不尽すぎるぜ。

 

 

「とにかく歌お!あ、デュエットとかどうかな?」

 

「わ、分かった分かった。」

 

 

俺の香澄っぽい圧に押し負けたのか、引きながらもどことなく嬉しそうな表情で、そう答えてくれた。なんだか、久し振りに彼女がちゃんと笑っている表情を見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!楽しかった!」

 

 

夕暮れの中、有咲と二人帰り道。結局あの後デュエットっで時間いっぱい一緒に歌い、とても有意義な時間が過ごせた。香澄の、というか女の子の声で歌うのはなかなか新鮮である。前にバンド練習の時などに歌ったが、その時は色々と余裕が無かったのでノーカンだ。今回のような遊びとして歌うのは、とても気持ちが良かった。

 

 

「私は疲れたけどな…」

 

 

そう言いながら、有咲もちゃんと楽しかったと顔に書いてある。とても分かりやすい。まあ疲れているのは本当のようだが。

 

 

「またまたー!そんな事言って、ホントは楽しかったでしょ?」

 

「…ん、まあ。」

 

 

頬を赤く染めながら顔をプイッとそっぽに向け、ぶっきらぼうにそう答える。ホントツンデレのお手本みたいなキャラしてるな。

 

 

「…あの、さ…」

 

「ん?」

 

「…ホントは、他の皆、誘ってないんだ。」

 

「…え?」

 

 

突然、有咲から告げられたそれに、俺は呆気に取られてしまう

 

 

「えっと…、どういう事?」

 

 

この可能性は有り得ると思ってはいたが、具体的な理由が想像つかなかった俺は、有咲の真意が気になった。嘘をついてまであえて香澄と二人で出かけた目的はなんなのだろうか?香澄っぽくする事は忘れないように意識しつつ、俺は有咲に答えを促す。

 

 

「最近さ、私ら微妙な感じだったろ…?だから、その…怖かったんだ。このままバラバラになるのが…」

 

「…」

 

「あの日から…私達と距離を取ろうとする香澄を見て…私分かんなくなっちゃったんだよ…前までの香澄となんだか雰囲気も変わってるような気がして…まるで…香澄が、香澄じゃなくなってるような気がして…!」

 

 

泣いて、いた。その少女は、涙を流しながら言葉を続けた。

 

 

「変、だよな…おかしいよな…こんな事、思うなんて…でも、さ…思っちゃったんだ…!私が…私達が!香澄の事信じてあげなくちゃいけないっていうのに…!こんな…こんな!疑うような事…!」

 

 

有咲が考えていた事、抱えていた物。その正体が分かってしまった。初めて出来た親友をどうしようもなく疑ってしまう、自分自身にずっと嫌気がさしていたのだろう。香澄が変わってしまった日からずっと違和感を覚え続け、そしてそれは積もりに積もって、香澄がまるで別の人に変わったような感覚になっていった。香澄を初めての親友として認識している有咲だからこそ、それに気付いてしまっていた。そして、それは実際に起こり得ているのだが、有咲からすればその答えは本来現実的に考えて有り得ない。だから、そんな有り得ない答えが頭の中で出てしまった事に、1番の親友だと思っている人物にそう思ってしまった事こそが、彼女の苦しみとなっていたのだろう。別に彼女の信じる心が弱い訳では無い。むしろ、とても強いからこそ別の人間が入った戸山香澄にとてつもない違和感を覚えたのだ。

 

 

「だから…だから私…!」

 

「…確かめたかったんだよね…」

 

「…え…?」

 

「私が、私なのかどうか…」

 

 

口を挟んでしまった。それ程、見ていられない姿だったのだ。香澄になってしまった事自体は自分のせいだとは思わない。だが、今こうして彼女がどうしようもない悲しみに駆られているのはきっと、俺のせいでもある。俺が香澄をしっかり演じ切れれば良かった。中身が男だからと言ってしょうもないプライドを優先せず、香澄の抱きつき癖までちゃんと再現しようとすれば良かった。ギターが弾けなかったことだって、事前に考えれば気付けたはずだ。そんな様々な後悔が頭を賭け巡った。実際にそれが現実的に出来るような事だったのかは関係無い。そう思ってしまったのだ。もっと頑張れたのでは?と。

 

 

「…どうして…」

 

 

どうして分かったのか、そんな事を言いたげな表情をしている。

 

 

「有咲…今日の私、どう思った…?」

 

「……一緒にいて、楽しかったよ…楽しかったけれど…なんか…なんか…!」

 

 

当然だろう。楽しかったと言ってくれたのは嬉しいが、俺が俺である限り一度感じ取ってしまった違和感は拭える事は無い。だって、俺は戸山香澄じゃないのだから。

 

 

「…有咲。」

 

 

涙を流し続ける少女の名を呼ぶ。俺が今からやろうとしている事は、もしかしたら悪手なのかもしれない。それでも、何度もこの少女を傷付ける事を容認する事は俺には出来なかった。いつか彼女と交わした約束…嘘のつもりだったが…

 

 

「…?」

 

 

これは俺のエゴだ。彼女を救えるかは分からない。ただ、このままでは彼女は少なくともこの憑依現象が終わるまでずっとこのままだ。しかも、終わる保証も無い。大切な親友をずっと疑い続け、自己嫌悪に陥り続けるだろう。

 

 

「私……いや、」

 

 

だから、ここでその自己嫌悪を終わらせる。親友を疑っていると思っているからいけないのだ。疑ってもしょうがなかったと思わせればいい。自分は悪くなかったと思ってくれればいい。これを言えば、彼女が信じなかったにしろ、彼女は自己嫌悪の渦からは救われるはずだ。信じなければ頭がおかしくなってしまったと思われるだろう。そういった類の病気か何かになってしまったと。だから、本当におかしかったのなら疑ってもしょうがないと。少しは、救われるだろう。そして、信じれば…きっと俺が恨まれるだけだ。自分を嫌悪する必要は無くなる。

 

 

 

 

だから、俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、戸山香澄じゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued…




かすあり好きなせいで有咲が香澄大好きさんになってますね…まあ元々大好きだとはおもうんですが。
あ、好きは好きでもこの作品ではゆりゆりはしないのであしからず()
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