「ご注文お伺いします」
「ねえ!凛ちゃん、今日のお昼休みに暁達と遊ぼ!」
「…で、でも仕事が」
「お昼休み!間宮さ〜ん!お昼休みに凛ちゃん借りてもい〜い?」
「ええ!たまにはみんなと遊んでらっしゃい」
「ね!決まり!お昼になったら迎えにくるから」
「…う、うん」
「わーい!凛ちゃんとお外で遊ぶのです!」
「ハラショー」
「今日は大縄跳びで遊ぼう!」
「あれ、雷も乗り気だねえ」
「う、うっさい!とにかく昼休み迎えにくるからそれまでに仕事おわらせといてよね!」
「…うん」
「いっくよー!いーち!にーい!さーん!よーん!ごーう!ろー」
「…ご、ごめんなさい…また引っかかっちゃった」
「でも今までで一番ながいのです!」
「みんなの息にあわせるといいよ」
「…う、うん」
「じゃあもう一回ねー!いーち!にーい!さーん!よーん!ごー」
「…っ!ご、ごめんなさい」
「…ちょっとあんたさ!響の言った通り息合わせる気あるの!」
「ちょっと雷!」
「ごめんなさい」
「あんたほんと暗すぎ!いい加減立ち直りなよ私らもさ、いつまでも付き合ってらんないし…なんだっけ?お母さん?亡くしたくらいでそんなにメソメソいつまでも引きずったままいられたら迷惑なの!」
…っ!!…
「雷!あんた、言っていい事と悪いことあるでしょ!」
「そうなのです!凛ちゃんに謝るのです!」
「なにさ、暁達だって本当は思ってるでしょ!」
「お前に…」
「な、なによ!なんか文句あるなら言いなさいよ!」
「お前らなんかに!私の気持ちは分からないよ!!頼んでも居ないのに毎日毎日話しかけてきて!最初から家族のいないお前らなんかに家族みんないなくなっちゃった凛の気持ちなんてわからないよ!!」
「こ、この!鳳翔さんにお願いされたから頑張ってきたのに!あんたなんてずっーと1人でいつまでもメソメソ泣いてればいいんだ!死んじゃったお母さんをずっーと思いながらね!!」
「っ!お前なんかー!」
「痛ったー!やったなこのー!」
「っ!…お前なんかお前なんか!」
「2人共やめな!」
「そ、そうです!電達は凛ちゃんと仲良くなろうと思って…」
「…う、うああああん…凛に叩かれたー!」
「…ヒッ、ぐ…ヒッ……ぐ」
「ご!ごめんね!凛ちゃん、雷が…あの子ちょっと気の強いところがあるから…」
「…ヒッ…ぐ…わ、私仕事に戻ります…ヒッ…」
「…凛のバカああああ〜!うああああん」
「…凛ちゃん、雷もきみと仲良くしたかっただけなんだ、また間宮にお邪魔するから雷がなんでこんな事したか考えてあげてほしい、じゃあね」
「…ただ今もどりました」
「あら!随分早かったわね…っ!凛ちゃんその顔の痣どうしたの!」
「…なんでもありません、すべって転んだだけです」
「滑ったって…凛さん…」
「なんでもありません!直ぐに仕事します」
「…凛ちゃん…」
「…暁ちゃん達と何かあったのですかね…」
「…私から鳳翔さんに伝えておくから、伊良湖ちゃんは手当をお願い!お顔の痣だから丁寧にね」
「はい!」
「…そ、そんなことが!」
「はい…すみません鳳翔さん、私の監督中にこんなことになって」
「い、いえ!私こそすみません、で凛の怪我の具合は!」
「伊良湖ちゃんに手当してもらってます、ちょっとほっぺが赤くなってるだけなので大丈夫ですよ!」
「ああ、もう何から何まですみません…」
「…でも、暁ちゃん達となにがあったのか…凛ちゃんの心の方が心配です…」
「…………」
「…ほ、鳳翔さんいますか〜」
「…あら、暁ちゃん、響ちゃん、電ちゃん…雷ちゃん!その痣!」
「…実は…」
「…ただ今…帰りました…」
「…凛、そこに座りなさい。」
「…はい」
「…顔を見せて………うん、大丈夫ね傷が残ることはないわ」
「……………」
「全部、暁ちゃん達に聞きました。」
「だってあの子!私の、私の家族のこと!」
「凛も言ったのでしょ!家族のいないお前らなんかにって」
「そ、それは!」
「言い訳するんじゃありません!!…凛、家族のいない悲しさ、寂しさを誰より知ってるあなたが、それを他の人に傷つける為に言うなんて絶対にダメな事です!そう…私達艦娘には親がいないわ、だからみんなで家族になってるのよ?人の弱みを傷つける為に言うなんて、私は凛にそんな子に育ってほしくないの、だから約束して。
もう二度と人を傷つける事は言わないって」
「…ヒッ、ぐ…うああああん、でも、でも!雷も私の…私の家族の事!…ヒッ、ぐ!」.
「…凛、ごめんなさい。私はまだ凛に寂しい思いをさせているのね…ごめんなさい」
「ほ、ほうしょうさんは悪くないもん!あやまらなくていいもん!泣かなくていいもん!…ヒッ、ぐ!」
「凛は人の悲しみが分かるいい子よ、私の自慢の娘。だから寂しくなったら私に言って?いつでも凛を抱きしめるから」
「…う、う、う…うああああああん!…」
「…うふふ、ちょっと休んだら外にでましょう、見せたいものがあるの」
私がまだ幼いとき、友達になろうとしてくれた人を傷つけたことがあった
あのときのお説教が今までで一番記憶に焼き付いた教訓になっている、…人を傷つける事は言わない…
でも、ごめんなさいと言いながら私を抱きしめ、泣いてくれた鳳翔さんの気持ちはその時の私にはまだわからなかった。
「ほら、見て…凛」
「…わああ!」
「響!こっちの標的援護お願い!」
「ハラショー」
「雷!こっちの援護お願いなのです」
「おっけー!」
「暁!そっち行ったよー!」
「任せといて!」
「電、向こうのよろしく」
「はい!なのです!」
「みんな毎日、こうして訓練をしていざという時は戦いにでるのよ」
「…暁ちゃんも……雷ちゃんも?」
「ええ、みんなその時は戦うのよ、そしてもう二度と戻って来ないかもしれないの」
「っ!なんで!なんで戻ってこないの!」
「…戦いで負けると死んでしまうかもしれないからよ…」
「そんなのやだ!みんな、みんな戦いなんてやめてよ!」
「そうしたらみんな生きられなくなってしまうのよ。だから戦いはやめられないの…」
「…ねえ、それって鳳翔さんもなの…鳳翔さんも戦いにいくの…」
「………ええ、その時がきたらね」
「嫌だ!嫌だ!ほうしょうさん行かないで!戦いなんか行かないで!私、いい子にする!もう人を傷つける事言わないから!戦いなんか行かないで!」
「…ふふ、私は凛の側からいなくなったりしないから!ね…みんな居なくなったら寂しいでしょ?」
「…うん」
「なら、まずみんなに謝って仲良くなって来なさい。凛だって間違って言ってしまったのでしょ?」
「…謝ったら、みんな戦いにいかない?」
「ええ、まず謝って。みんなと友達になってきなさい」
「…うん、行ってくる!」
「ふう、今日もつかれたねー!」
「なのです…」
「雷ちゃん!」
「…凛ちゃん…」
「…さっきは酷いこと言ってごめんなさい!みんなにも酷いこと言ってごめんなさい…私、あんまり運動もしたことないし、みんなみたいに海の上走れないし、あんな酷いこと言っちゃったけどみんながいないと悲しい!だから……私と友達になってください!」
「凛ちゃん!」
「電は気にしてないのです!凛ちゃんと友達になるのです!」
「ハラショー…凛、これからよろしく ほら、今度は雷が謝る番だよ」
「……わ、私こそ…その…ごめんなさい!凛の心傷つける酷いこと言って…その本心じゃなかったの…凛と仲良くなりたくて、いつも悲しそうな顔してたから…早く元気になってもらいたかったのに………うええええ〜ん!…ごめんなざい〜!」
「うふふ、よしよし!」
「えへへ、また一緒に遊ぶのです!凛ちゃん!」
「う、うん!またお昼休みに誘って…えへへ」
「…凛が笑った」
「立派なレディには笑顔が一番よ!」
「ほ、ぼんとだぁあああ!凛、ごめんでぇえええ!」
「雷は面白い顔で泣いてるのです!」
「ねえねえ!お風呂の前にまた縄跳びしようよ!」
「うん!今度はちゃんとみんなの息にあわせることができそう!」
「じゃあみんなで最高記録だそうよ」
「あ、ちょっと待って」
「どうしたのです?」
「鳳翔さんに先に帰っててって伝えてくるー!」
「先に行って待ってるからねー!」
「うんー!」
「はぁ、はぁ…鳳翔さん!」
「ふふ、どうしたの 凛」
「暁ちゃん達とちょっとだけ遊んで来てもいい?」
「ふふふ、仲直りできた?」
「うん!これからみんなで縄跳び最高記録目指すの!」
「うふふ、ええ!いいわよ!だけど晩御飯までには帰ってくること!」
「はい!じゃあ行ってきまーす!」
「…いってらっしゃい!」
「さて!今日の晩御飯は何にしようかしらね〜」
私が鳳翔さんの居酒屋を手伝ってから初めて休ませてもらった
あの後クタクタになって帰ってきた私は、鳳翔さんのご飯をたべてお店に立つ気でいたけれど、久しぶりに遊び疲れて直ぐに眠ってしまっていた。
その日大縄跳びで50回ほど跳んだ記憶があったけど、さっき暁に聞いたら20回だって…子供の時の記憶はあてにならないわね。
晩御飯、何を食べたかも覚えていない…酢豚だったか、ただの野菜炒めだったか…一番思い出したい記憶。
それから私はアルバイトの合間に勉強を教わった、これから生きていく上で勉学が必要だと鎮守府の提督さんにも勧められて
暁ちゃん達ともっと遊びたくもあったけど勉強も楽しかった。
今まで、なにも知らなかったのだと思い知り、それを学ぶのが本当に楽しかった
それに、そのおかげで今の私が成り立っている
書いてなかったけど、私は今医師をしている。
それも鎮守府で、戦いで被弾し修復材では追いつかない重症者を外科手術で救う、それが今の私の仕事
立派になったものよね…
全部、全てあなたのおかげです。
鳳翔さん、いいえ…お母さん。