凛として、生きて 前編   作:樋口晶子

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第4話 幸せ

「せーの!鳳翔さんお誕生日おめでとう!」

 

「まあ!みなさんありがとうございます」

 

「みんなから鳳翔にプレゼントデース!」

 

「そ、そんないいんですか?」

 

「ええ、鳳翔さんにはいつもお世話になってますから」

 

「加賀さん…ふふ、開けてみてもいいですか?」

 

「どーぞ!なのです!」

 

「まあ!新しいフライパンね!」

 

「はい!なんでも焦げ付かないフライパンセットらしくて、これでもっともっと美味しいご飯を作っていただきたいと!」

 

「赤城さんが言うと自分が食べる為にきこえますね」

 

「あら〜霧島さん、みんなだって鳳翔さんの美味しいご飯食べたいとおもいますけど?」

 

「…み、みなさんピザも焼けたのでどうぞ!」

 

「オーウ!とっても美味しそうなピザネー!凛が焼いたですカー?」

 

「はい!みなさんどうぞ」

 

「んー!とっても美味しいわよ凛ちゃん!」

 

「間宮さん、これ編み物教えてもらったお礼にと思って…髪留めです、間宮さんに似合うかなと思って…」

 

「まあ!気にしなくてもいいのにありがとう凛ちゃん…ところで、いつ鳳翔さんに渡すの?…」

 

「…みんなが帰った後渡します…」

 

「…ふふふ、鳳翔さんの喜ぶ顔が見られないのは残念だけど、きっと喜んでくれるわ…」

 

「…ありがとうございます…」

 

「凛、あなたあと一ヶ月きっているというのに随分と余裕みたいね」

 

「か、加賀先生………」

 

「テストに及第しなかった場合、わかってるのよね」

 

「…わかってます、心配いりません!」

 

「…そう、ならいいわ」

 

「じゃあ!この良き日を青葉が特ダネスクープとして記事にするのでみなさん写真を撮りますよー!」

 

「あ、秋月さんもうちょっとしゃがんで……飛龍さんもって近づいて!…龍驤さんは前です………じゃあ撮りますよ!はいチーズ!」

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

「凛ちゃんまたねー!」

 

「うん!暁ちゃんもありがとー!」

 

「…凛、ありがとう…こんなに素敵な誕生日にしてくれて」

 

「んん!凛だけじゃできなかったし、みんなが手伝ってくれたからだよ!でもお母さんに楽しんでもらえて良かった!」

 

「うふふ、とっても楽しかったわ!」

 

「えへへ…お母さん!凛からお母さんに誕生日プレゼント!」

 

「っ!え!凛が…私に?」

 

「うん!…開けてみて!」

 

「まあ!!これマフラー…もしかして凛の…」

 

「そう!凛が編んだの!間宮さんに教えてもらって!」

 

「っ!…………うっ!ぐ…っりん!…」

 

「わ!…お、お母さん…どうしたの!」

 

「…ヒッ、ぐ………ヒッ、ぐ………りん………」

 

「えへへ、お母さん泣かせちゃった…」

 

「…うふふふ!……ありがとう凛」

 

「ね!巻いてみてよ!」

 

「そうね!……こんなかんじかしら」

 

「…うん!すごく似合ってる!」

 

「まあ!綺麗に編んであるわね」

 

「間宮さんに教えてもらったんだよ!」

 

「ふふふ、今度お礼いわなくちゃね!」

 

「じゃあ凛は後片付けに入ります!」

 

「そうね!はじめましょう」

 

「ダメ!お母さんは主役なんだから後片付けはしちゃダメなの!」

 

「そうは言っても量がたくさんよ?」

 

「いいからお母さんは座ってて!」

 

「ふふふ、はいはい!」

 

 

 

ふう、山城さんは一時CPAから挿管して緊急手術、左腎動脈からの出血でショック状態だったけどなんとかたすけることができたわ

ふふふ…あの日の写真みんな良く撮れてる

お母さん、こんなに素敵な笑顔して

でも…3日勉強しないで誕生日の準備してたからそれからは…ほんと大変だったのよね

 

 

 

「凛ちゃ〜ん注文お願いなのです!」

 

「…丁未の乱、推古天皇、冠位十二階、17条の憲法、小野妹子、遣隋使…ご注文お伺いします」

 

「り…り、凛ちゃん…なんか怖い…」

 

「…庚寅年籍ですね、少々お待ちください…壬申の乱…」

 

「い、いやそんなの頼んでないから!」

 

「はっ!ご、ごめんね!雷ちゃん…歴史のテストが近くて…」

 

「凛、大丈夫?」

 

「うん!大丈夫!このテストが終わったらまたみんなと遊べるから」

 

「でもそんなに一生懸命勉強してて、凛ちゃん偉いのです!」

 

「あ、あはは…これには事情があって……」

 

「ん?どんな事情?」

 

「ひ、響ちゃん…そんなことよりご注文どうぞ!」

 

 

 

「凛ちゃん!注文お願いします」

 

「…摂関政治…は、はい!ただ今………お伺いします、赤城先生」

 

「ふふふ…教室の外まで先生はやめてください」

 

「は、はい…赤城さんはいつものボーキ丼極み盛でよかったですか?」

 

「私だって毎回ボーキ丼だけじゃないですよ!」

 

「は、はい…ではお伺いします」

 

「そうですね〜ボーキ丼極みとお刺身盛り合わせとほっけと生つくねください!」

 

「は、はい…では少々お待ちください」

 

「凛ちゃん、ふふふ…お勉強大変なんじゃないですか?」

 

「ど!どうしてそれを!」

 

「ふふふ…加賀さんとは同じ部屋なんですよ?凛ちゃんを教える先生同士相談もします!」

 

「う…うう」

 

「…どうして居眠りなんてしちゃったんです?私の数学の授業なんていつも真面目に聞いてくれてるのに」

 

「…うう、それが…」

 

 

 

「…花の御所は…………」

 

「凛、最近お勉強大変そうだけど大丈夫?しばらくお店休んでもいいのよ?」

 

「…応仁の乱…へ?あ、お母さん何か話してた?」

 

「凛が勉強大変ならお店休んでもいいのよ?」

 

「え!んん!お店は休まないよ!だってこれは私の居眠っ!」

 

「?…いねむ?」

 

「な!なんでもない!とにかくどっちも頑張るから大丈夫!」

 

「そう…」

 

「…加賀一向一揆…ぷっ…これ軸にできそう…」

 

 

 

 

「起立、礼、よろしくお願いします…着席」

 

「よく逃げなかったわね」

 

「…約束しましたから」

 

「まあ、いいわ一ヶ月前に宣告していた通り、今日は日本史のテストよ制限時間は80分…では始め」

 

668年倭国は百済とともに唐、新羅を相手に戦った白村江の戦い

以下の問いに回答用紙ア、イ、ウにそれぞれ6行以内で記せ

1.倭国は百済といかに国交を結び連合軍との戦争に至ったか

2.唐が新羅と連合を組みこの戦いに介入した理由

3.敗戦後の倭国と唐の関係

 

1185年征夷大将軍となった源頼朝により鎌倉幕府が設立された

以下の問いに回答用紙エ、オに下記該当する語句を用いて6行以内で記せ

1.それまでの貴族と武家の関係はどのように変わったか

2.何故、源頼朝は幕府を開くまでの権力を手にしたか……

 

「…うげ………本当に論文形式……でも、わかることから書いていこう!………」

 

 

「…止め」

 

「……………」

 

「…とりあえずは埋めてるみたいね、すぐに採点するわ」

 

「……………」

 

「62点」

 

「そ、それは…」

 

「ひとまずは合格点よ」

 

「っん!…やったーーー!!」

 

「何を喜んでるのかしら、こんな基礎のテストが及第ギリギリにできて私なら悔しくて仕方ないところよ」

 

「で、でも先生のテストに合格できたら授業続けてくれるって!」

 

「そんな約束、私はした覚えはないわ」

 

「そ、そんな…」

 

「これから三者面談を行います、普段のあなたの授業態度とこのテストの出来を保護者を交えてじっくり…お話しましょう」

 

「っ!……」

 

 

「…というわけで凛は極めて優秀です」

 

「…へ?」

 

「良かったわね凛!加賀先生に褒められて」

 

「凛の年齢で学ぶことはおろか、今は高等学校で学ぶ範囲を履修しています。何より勉強に対する意欲が並外れています」

 

「まあ、そんな先の勉強を…」

 

「はい、ゆくゆくは私達で教えられる範囲を逸脱するでしょう…そうなると、差し出がましいようですが外の学校で学んだ方が凛にとってはいいかもしれません」

 

「…そ、そんなの嫌です!私はここでみんなと!お母さんと一緒に!第一にこのテストは基礎だって!」

 

「凛!先生がみえてらっしゃるのよ!」

 

「っ!………」

 

「…そのテストは大学入試を参考に作ったのよ……凛の将来を考えるなら外の学校で高等教育を受けさせ、さらに広い視野で社会を見ることのできる人間になれると理数担当の赤城さんと出した結論です」

 

「娘にそこまで教えてくださりありがとうございました」

 

「…では私はこれで、明日は教室にいつもの時間来なさい…科目は漢文よ」

 

「………………」

 

 

 

「凛、今日は何が食べたい?」

 

「…………」

 

「どうしたの?凛」

 

「……わ!私、外の学校なんて行かないから!」

 

「凛…でも先生があなたはとても勉強ができるって」

 

「そんなの嘘だもん!先生このテストは基本だって、授業でも凛はわかってない!その程度の理解力なの!っていつも、いつもダメ出しするんだよ!」

 

「凛…でもあなたはいつかここを出て自分の道を生きて行くのよ、幸いあなたはとても勉強が出来る…それは素晴らしいことじゃない!先生達も凛はもっと勉強が出来る所に行った方が幸せなんじゃないかって言ってくれてるのよ?」

 

「凛は!凛はここにいたい!鎮守府に…みんなのいる鎮守府にいたいの!」

 

「でも、言ってるでしょ?あなたはいつか…」

 

「お母さんは…お母さんは凛と一緒にいたくないの?……だから…」

 

「っ!そんなわけないでしょ!!」

 

「っ!………い、痛い………痛いよ、お母さん…」

 

「はっ!凛…ご、ごめんなさい…お母さんはあなたに!」

 

「もう…もういい……お母さんなんて大っ嫌い!!」

 

「あ!凛!待ちなさい!」

 

 

 

一ヶ月続いたテスト勉強から解放されたときはほんと嬉しかったけどまさか…だったわよね…あんなことになるならもっと手を抜いとけばよかった…それは違うか。

お母さんが私を叩いたのはあれ一度きり、今ならわかるわよね…あの時なんで打ったか、お母さんだって私と離れたくなかったはずなのに私は………

なんで、心にもない事言っちゃったんだろう…

人を傷つけることは言わないって約束したのに

でも飛び出した先で金剛さんに会ったのよね、本当に良かった。

 

 

 

「ヘーイ凛!こんなとこトボトボ歩いてどうしまシター?」

 

「……金剛さん…金剛さん、金剛さん!」

 

「ワッツ!一体どうしたデース!いつも元気なガールの凛が」

 

「…っぐ…ぐすん、…ヒッ、ぐ……」

 

 

「…なるほどネー、つまり凛を外の学校に入れましょうって事ですカー」

 

「…はい…」

 

「それで凛は勉強をいっぱいして将来何になりたいデス?」

 

「えっ…それは考えた事ないです…」

 

「ならそんな勉強ばっかりしてても仕方ないデース!」

 

「…金剛さん」

 

「凛はまだ8歳のガールネ!そんな先の勉強じゃなくて暁、響、雷、電みんなといっぱい遊んで、鳳翔にいっぱい甘えたらいいデース!」

 

「…いいんですか?私はここにいてもいいんですか!」

 

「当たり前ネ、鳳翔も本当は凛にいてほしいけど、凛の将来を思って言ったネ…でも…そうだネー凛の将来したいこと、なりたい仕事が決まったらここを出た方がいいですネー」

 

「ど!どうしてですか!」

 

「ここは鎮守府ネ、敵と戦う基地ダヨー…凛は戦えないでしょ?だからここにいつまでもはいられないネー」

 

「…………」

 

「凛が鳳翔を大好きなのはわかりますけど、鳳翔の気持ちも考えてあげてくだサーイ…凛に幸せになってほしいんですよ?」

 

「…お母さんの気持ち…私の幸せ……」

 

「凛は自分の幸せを探すデース!じゃあミーは帰るネー!」

 

「ありがとうございます…金剛さん」

 

 

「お母さん!」

 

「凛!ごめんなさい…私、私…あなたを…」

 

「お母さん!さっきはごめんなさい…お母さんのこと大好きだよ!」

 

「っ!凛、ごめんなさい…お母さん、あなたに幸せになってほしくて」

 

「うん!さっき金剛さんに教えてもらったの!私はこれからどうしたら幸せになるのか」

 

「こ、金剛さんに?」

 

「うん!凛は今は鎮守府から離れない!お母さんと一緒に今まで通り暮らす!」

 

「…凛」

 

「でも!それは凛の将来やりたいことが決まるまで!それまでは加賀先生と赤城先生に勉強教えてもらってそれからは自分で勉強する!それでやりたいことが決まったら貯めたお金で大学に行くの!それが凛の今の幸せだよ!だからまだみんなと遊びたい!間宮さんとお母さんのお店で働きたい!お母さんと一緒にいたい!だから!…だから!私をまだ一緒にいさせてください!!」

 

「っ!………凛、凛…っぐ…ええ!一緒に凛の夢を探しましょう!」

 

「…えへへ」

 

「…うふふ」

 

 

「あ、今日の晩御飯、凛が飛び出しちゃって聞いてなかったからまだ作ってないわよ!」

 

「じゃあお店でマカナイ食べよ!」

 

「ダメよ、ちゃんとしたもの食べなきゃ」

 

「お母さんの料理は全部美味しいからいいのー!」

 

「うふふ、もう!凛たら」

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