わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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蹴鞠の勇者さま 1

一度ファンタルジニア城から戻ってから3日後、俺達はゲートを通って冒険を再開した。

 

大臣「賢者様、いろいろとありがとうございました。」

矢内「気にするな。このゲートがあるからたまに顔を出すようにするよ。星熊童子もいろいろ助かった。」

星熊童子「いえ、俺も良い経験が出来ました。それに俺達はいつでも賢者様の力になりますよ。」

矢内「すまんな。ではそろそろ行くか。」

勇者「はい。賢者さま。」

 

俺達は大臣達に見送られて出発した。

しばらく歩くと真っ赤なモミジが茂っている。美しい景色を見ながらスコールを一口。今日のスコールは長野産巨峰だ。

 

サチ「そろそろ村につく頃よ。」

エリカ「早く行こう!」

矢内「そうだな…。村に着いたら宿をとって食事にしよう。昨日、良い太刀魚が取れたからな。」

 

村にたどり着いた。そして、そうそうと宿に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

矢内「じゃあ俺は食事の準備をするからお前らは一時間ぐらい外に行ってろ。」

勇者「分かりました。行って来ます。」

 

わたし達は賢者さまに言われたとおりに外に行く事にしました。

 

サチ「それにしてもこんなショボい村ではあまり暇つぶしは出来ないわね…。」

エリカ「広場の方に行ってみようよ!誰か居るかもしれないよ。」

勇者「そうですね。行ってみましょう。」

 

わたし達はとりあえず広場の方に行ってみました。あっ!何か飛んで来ました!

 

エリカ「危ない!」パシ!

 

エリカにゃんが球のような物を手で受け止めました。

 

???「そち、手を使うのは違反でおじゃる!」

 

なんだか顔が色白い奇妙な格好の人が出て来ました。

 

サチ「違反?この球が私達にぶつかりそうになった事を先に謝ってもらえるかしら?」

???「麻呂に対してなんたる無礼な!麻呂は遥か東の国の神アマテラス様から天啓を受けた勇者でおじゃるぞ!」

サチ「………また中二病設定ね…。流行っているのかしら?」

 

賢者さまも前に似たような事を言ってました。

 

エリカ「お前も勇者なんだ。とりあえずこれ返すよ。」

 

エリカにゃんが飛んで来た球を変な人に返しました。なんか嬉しそうにしてます。

 

???「おお、かたじけないでおじゃる。この鞠は麻呂の唯一の友でおじゃる。」

 

変な人ですね…。

 

エリカ「お前、ここで何してたの?」

???「麻呂は賢者という者が近々この村に現れると聞いてここで蹴鞠をして待っていたでおじゃる。」

 

賢者さまのお友達でしょうか?

 

勇者「賢者さまを探しているのですか。それならわたし達と一緒に宿に行きましょう。そろそろご飯が出来る頃ですし。」

???「そち達が賢者の所に案内してくれるのか?かたじけないでおじゃる!」

エリカ「早く宿に戻ろう!」

 

そして、わたし達はこの賢者さまのお友達の変な人を連れて宿に戻る事にしました。

 

サチ「ちょっと、ゆうりん!こんな変な人を連れて行く気なの?」

勇者「さっちん、この人はきっと賢者さまのお友達です。屑野郎さんも変な人だから大丈夫です。」

エリカ「サチ、大丈夫だよ。変な奴はだいたい賢者の友達だから!屑野郎も変な奴だもんな。」

サチ「………私はこの件は関わらないことにするわ…。」

???「奇天烈な服の女、歩くのが遅いでおじゃるよ。」

サチ「おかしな格好の貴方が言わないでもらえるかしら?」

 

 

 

 

 

 

矢内「よし、そろそろ太刀魚も焼き上がる頃だ。アリマ君、皿を並べてくれ。」

アリマ君「キー!」

 

アリマ君ぐらいだもんな…。手伝ってくれるのは…。アイツ等だったらすぐつまみ食いするからなぁ…。ガチャ!扉が開いた。勇者達が帰ってきたか。

 

勇者「賢者さま!賢者さまのお友達を連れて来ました!」

 

友達?俺は勇者達の方を振り返った。

 

矢内「………誰だ、その平安貴族は…。」

 

俺には平安貴族の格好をした友達は居ない!どこでどう間違うと俺の友達になる!

 

エリカ「賢者の友達だろ?だいたい変な奴は賢者の友達じゃないか…。違うの?」

 

こいつ等、訳も分からず連れて来やがった…。変な奴って畑中の事か?失礼だろうが…。

 

サチ「はぁ…。やっぱり、知らない人じゃない…。」

矢内「サチ、お前あの馬鹿共を止めろよ…。はぁ、そこの着物を来たお前、いったい何者だ?」

???「そちが噂の賢者でおじゃるな。麻呂は勇者ヒコマロ!そちが持つ勇者の兜は麻呂がいただくでおじゃる。それは天啓を受けたこの真の勇者である麻呂にこそふさわしい!」

勇者「ヒコマロって名前だったのですね…。」

 

名前も知らない奴を連れて来たのか…。

 

矢内「あー、ヒコマロって言ったか。これから俺達は食事の時間だから食事をしながらお前の話は聞いてやる。とりあえずお前も席につけ。」

サチ「お米は私の黒魔術で炊けているわ。所で賢者さん?アイツも一緒に食べるのかしら?」

矢内「お前らが飯時に連れて来たんだろうが。アイツだけ食わさない訳に行かないだろ。」

 

そういうことで俺達はヒコマロも加えて食事にする事になった。

 

矢内「では、飯にしようか。」

勇者「賢者さま、今日は豪華ですねぇ。」

矢内「ああ。昨日、良い太刀魚が手に入ったからな。太刀魚の刺身に塩焼き。そして太刀魚とキムチの炒めものだ。骨が細かいからな。気を付けて食えよ。」

サチ「凄いわね…。一種類の魚で色々出来るのね…。」

矢内「では食おうか。」イタダキマス!

 

ヒコマロ「そち達…これは?」

矢内「ヒコマロ、遠慮せずに食え。早くしないと大皿の料理が無くなるぞ。」

 

いただきますと同時に一気に大皿の炒めものが減っていく…。

ヒコマロも炒めものに箸を進める。

口に合うと良いのだが…。

 

勇者「辛いです…。」

エリカ「辛いよー!」

 

キムチは甘口だから余り辛くないはずだが…。

 

ヒコマロ「いと うまし!」パクパク

 

どうやら気に入ったようだ。

 

サチ「ちょうど良い辛さね。美味しいわ。」

勇者「辛いけどもう一口いただきます。」パク

エリカ「あたしも!」パク

サチ「あら?二人共、後は私が全部いただくから別に無理しなくて良いわよ。」

勇者「でも、もう一口。」

エリカ「辛いけど、お箸が止まらない。」パクパク

勇者「お魚と一緒に食べると美味しいです!お箸が止まりません!」パクパク

ヒコマロ「いと うまし!いと うまし!」パクパク

サチ「みんな!これは味覚を狂わせる魔法よ!後は私に任せてお箸を置きなさい!危険よ!」パクパク

アリマ君「キー!キー!(独り占めしようしてもそうはいかないよ!)」パクパク

 

客が居るのに意地汚い奴らだ…。

 

 

そして食事を終えて俺達は少しくつろぎながらヒコマロの話を聞くことにした。

 

矢内「どうして勇者の兜が欲しいんだ?」

ヒコマロ「麻呂は遥か東の島国の勇者でおじゃる。旅の先々で麻呂が勇者だと言っても誰も信じてもらえなかったでおじゃる…。それどころか怪しい者として扱われ道中の村や町では少しも歓迎されなかったでおじゃる…。」

 

その成りだもんな…。無理もない…。

 

ヒコマロ「だから、勇者の兜を身に付いていたら麻呂も人々から歓迎されるはずでおじゃる…。」

サチ「で、あなたは人々からちやほやされたいから勇者の兜が欲しいのかしら?」

ヒコマロ「麻呂は…確かに勇者として魔王の討伐を命じられたでおじゃるが…麻呂はこの蹴鞠を皆に広めたいでおじゃる。」

勇者「どういうことですか?」

ヒコマロ「この蹴鞠は子供も大人も関係なくいろんな種族が楽しめる遊戯でおじゃる。だから、この蹴鞠を通して麻呂は世界を平和に導きたいでおじゃる!」

 

悪い奴じゃ無さそうだ。

 

サチ「その遊びを広めて世界中の人達と仲良くしていきたいって事かしら?」

ヒコマロ「そうでおじゃる奇天烈な服を着た女!これが広まればきっと魔王だって仲良くなれるでおじゃる!」

サチ「この服はゴスロリってファッションよ!次言ったらぶっ飛ばすわよ!」

矢内「奇天烈な服を着た女、落ち着けよ。」

サチ「汚い格好の賢者さんが言わないで!」

矢内「これは会社の作業着だ!俺がこの作業着を着て会社で働いているからお前等は飯が食えるのだろうが!奇天烈女が!」

サチ「エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!!

 

ガッシャーン!俺は宿屋の二階の窓から吹っ飛ばされた。

 

ヒコマロ「いと恐ろしき、奇天烈女…。」

サチ「スマッシュ!」バチン!!

 

ガッシャーン!今度はヒコマロが宿屋の二階から吹っ飛ばされた。

 

サチ「分かったかしら?私の黒魔術は無敵よ。無礼者はこうなる運命よ。」

エリカ「サチ…すげぇ…。」

 

 

矢内「クソッ!手加減ぐらいしろよ!また宿屋の修理代払わないといけないだろうが…。」

ヒコマロ「そち、大丈夫でおじゃるか?」

矢内「ああ…。二回目だからな。お前こそ大丈夫か?」

ヒコマロ「麻呂は勇者でおじゃる。痛く無いでおじゃるよ。」

 

やせ我慢するな。二階から落ちたんだぞ。

 

矢内「ヒコマロよ。お前、勇者の兜が欲しいんだよな?」

ヒコマロ「くれるでおじゃるか?」

矢内「せっかくだからこの勇者の兜を賭けて俺達と勝負しようぜ!勝負の方法はお前が決めて良いぞ。」

ヒコマロ「じゃあ、蹴鞠で勝負をつけるでおじゃる。」

矢内「………。良いだろう。アイツ等を呼んで来る。」

ヒコマロ「麻呂は先に村の広場で待っているでおじゃるよ!そち達も急いで来るでおじゃるよ。」

 

アイツ、嬉しそうにして行ったな…。よっぽど誰かと蹴鞠がしたかったんだな…。

俺は宿屋に戻り勇者達を呼びに行った。

 

矢内「お前達、今からヒコマロと勇者の兜を賭けて勝負する事になったから村の広場に行くぞ。」

サチ「はぁ!?私達が勝負するメリット無いじゃない!」

勇者「分かりました。行きましょう!」

エリカ「勝負って何をするの?」

矢内「蹴鞠だ!」

サチ「はぁ!?賢者さん、バカなの?相手の得意な事で勝負受けるって!」

矢内「サチ、お前が言いたい事は分かる。しかし、この勇者の兜、持っていて他の勇者とかに絡まれたら面倒だろ。だから僕達は頃合いの良いところで負けてアイツに兜を押し付けるんだ。」

サチ「………分かったわよ。私、あまりアイツと絡みたくないのだけど…。」

矢内「決まりだな。行くぞ!」

 

そして俺達はヒコマロと勇者の兜を賭けて蹴鞠で勝負する事にした。

 

 

広場に着くとヒコマロがうずうずしながら待っていた。

 

ヒコマロ「おお!そち達、待ちわびたでおじゃるよ!」

矢内「ああ、すまんな。」

 

ヒコマロは嬉しそうだ。

 

勇者「賢者さま、蹴鞠ってどういう遊びなんですか?」

矢内「そうだな…。初めは俺とヒコマロでやるから少ししたらお前等も混ざるといい。」

勇者「分かりました。」

矢内「ヒコマロ、待たせたな!じゃあ始めるか!」

ヒコマロ「分かったでおじゃる!麻呂から行くでおじゃるよ。」ポーン

矢内「上手く上げたな。」ポーン

 

俺とヒコマロで蹴鞠が始まった。俺達のラリーがしばらく続いた。

 

矢内「こんな感じでこの鞠を蹴って相手にパスをするんだ。」ポーン

勇者「こうですか?」ポーン

ヒコマロ「そうでおじゃる。こんな感じでおじゃる。」ポーン

エリカ「よーし、あたしもやってみよう。」ポーン

矢内「おわ、遠くに行った、間に合うか?」ポーン

ヒコマロ「なかなかやるでおじゃる…」ポーン

勇者「それ!」ポーン

エリカ「行くぞー!」ポーン

矢内「それ!」ポーン

 

外でボール遊びをするのも子供の時やった以来だな…。

 

ヒコマロ「奇天烈な服の女、行ったでおじゃる!」ポーン

サチ「奇天烈って言うなって言ったでしょ!!」バシ!

 

サチは強烈なシュート放った。

ヒコマロの顔面に鞠がクリティカルヒットした!ヒコマロは吹っ飛ばされて倒れた。

アイツ、ヒコマロと相性悪いな…。

 

勇者「ヒコマロ!大丈夫ですか?」

 

しばらくしてヒコマロがヨロヨロと立ち上がった。

 

ヒコマロ「………蹴鞠は友達、痛く無いでおじゃる…。続けるでおじゃるよ。」グスッ

 

泣いてるじゃねぇか!何が友達だ、翼君か、お前は!

 

サチ「………ねぇ、これはどうなったら勝ちなのかしら?」

矢内「………。」

ヒコマロ「………。」

 

考えてなかった…。

 

サチ「はぁ、考えてなかったのね…。」

矢内「そうだな…。1対1でやる競技にしようか。」

ヒコマロ「分かったでおじゃる。」

 

そして俺達は話し合ってサッカーとテニスを融合した競技に決まった。

 

サチ「では、公平なジャッジをする審判が必要ね…。今から呼び出すわ。『パーソン エンター』」

 

光の渦が出てきた。

 

ヒコマロ「な、何事でおじゃるか?」

サチ「黙ってて!今から召喚するから。」

サチ「かー!矢内、お前って奴は…。ハッハーww」

 

渦の中から畑中が出てきた。

相変わらず似てない物まねだな…。

 

矢内「現れたな、来生ヘアー。」

畑中「誰が来生ヘアーだ!俺を巻き込むの止めろよ!」

サチ「来たわね…。畑中、今からそこのヒコマロと勇者の兜を賭けて競技蹴鞠ってのをする事になったから審判をお願いするわ。」

 

俺は畑中にルールを説明した。

 

畑中「サッカーとテニスを融合した競技か。ところで矢内、そこの平安貴族は何者なんだよ。」

矢内「ああ、勇者のヒコマロだ。」

畑中「ハッハーww!お前、こんな変な奴が勇者って、ハッハーww!馬鹿も休み休みに言えよ!ハッハーww!腹痛えー!」

ヒコマロ「奇天烈な服の女!そちは陰陽師なのか?その麻呂を笑う無礼な式紙は何者でおじゃる!」

サチ「………」バチン!

 

サチがヒコマロに強烈なビンタを放った!

 

サチ「陰陽師?私はサチ、黒魔術師よ。そして、この男の名は畑中、毎日仕事もせずに暇を持て余している屑野郎よ。ちなみに次に私の事を奇天烈って言ったら殺すわよ。」

ヒコマロ「麻呂は勇者でおじゃるぞ…。」

サチ「黙りなさい!後、賢者さんが余所の国の勇者を1人殺しているから1人も2人も同じよ。」

ヒコマロ「いと恐ろしき…。」

畑中「かー!さっちゃん、そうカリカリするなよ。」

矢内「そうだぞ!奇天烈女、落ち着けよ。ヒコマロは悪い奴じゃないだろ…。」

サチ「エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!

 

サチの強烈なビンタで俺は5、6メートル吹っ飛ばされた。

 

サチ「良いかしら?私の事を悪く言う奴はみんなこうなる運命よ…。」

畑中「ビンタ一発であんなに吹っ飛ぶなんて…さっちゃん、何したんだ?」

サチ「今のは私の魔力を右手に送り込んで攻撃する一撃必殺の黒魔術よ。手加減してるからあの程度だけど本気でやったら大抵の奴は殺せるわ。」

ヒコマロ「いと恐ろしき…。」ブルブル

 

 

 

 

矢内「よし、じゃあ準備をしよう!」

 

俺達が競技蹴鞠の準備でネットになる網を村から借りて簡単に地面に書いたコートの真ん中に立てた。

そうこうしていると俺達が気になったのか村人達が集まって来た。

 

畑中「それでは!矢内vsヒコマロ 勇者の兜争奪戦、競技蹴鞠を始める!」ワー!

 

村人達の歓声が響きわたる!こんなショボい村だから娯楽がないのだろう…。

畑中が村人にルールを説明している。簡単に言うとテニスの要領で点を取り、先に五点取ったら勝ちだ。これから面倒な説明はあいつにさせよう。

 

畑中「では、試合開始!先行、ヒコマロのサーブ!」ワー!

ヒコマロ「いくでおじゃる!」ポーン

 

返しやすい球を蹴ってきたな。始めはヒコマロに合わせて隙をついてスマッシュを決めてやろう。ポーン

俺とヒコマロのラリーが続く。そろそろ先制点を頂くか。

 

矢内「よし、もらった!」バシ!

ヒコマロ「クッ!」

 

俺のシュートがコートの右端に見事に決まった。先ずは一点目だ!

 

畑中「矢内!先制!」ワー!

勇者「賢者さま!凄いです!」

 

俺の先制点でギャラリーが盛り上がる!

 

ヒコマロ「次はそうはいかぬでおじゃるよ!」

畑中「ヒコマロ サーブ!」

ヒコマロ「」バシ!

 

チッ、今度は左端を狙ってきたか。

 

矢内「クッ!間に合え!」ポン!

 

ワントラップして相手コートに返す。ちなみに自分のコートに毬が着かなければトラップはOKだ。

 

ヒコマロ「いとおかし…」バシ!

 

次は右端を狙ってきた!

 

矢内「クソ!」ポーン!

 

なんとか返せたがまたヒコマロのチャンスボールだ。今度はきっと左端を狙ってくるな。

 

ヒコマロ「頂くでおじゃる!」バシ!

矢内「甘いな。読みどおりだ!」バシ!

 

読みどおりの球を俺はそのまま左に返して二点目も頂いた!

 

畑中「2vs0 矢内リード!」ワー!

ヒコマロ「麻呂は負けぬ!」バシ!

 

しばらく俺とヒコマロの勝負が続く。

一進一退の攻防だ。

 

畑中「ヒコマロの得点!2vs1 矢内リード!」ワー!

 

流石、といったところか。直ぐに一点を返されてしまった。

2vs1のまま俺とヒコマロのラリーが続いた。

 

勇者「賢者さま、頑張って下さい!」

エリカ「二人ともスゲーな!」

 

ヒコマロ「クッ!」ポーン

 

ヒコマロのミスキックで俺のチャンスボールだ。ここは確実に頂く!

 

矢内「ヒコマロ!喰らえ!これが俺の必殺!」

ヒコマロ「まずいでおじゃる!」

 

ヒコマロは後ろに下がった。かかった!

 

矢内「ドライブシュートだー!」チョン

 

俺はヒコマロサイドのネット前にボールを落として確実に一点決めた。

 

畑中「矢内の得点!3vs1、矢内リード!」

サチ「やり方がセコい…。」

アリマ君「キー。(セコい。)」

矢内「セコくない!これも作戦だ!」

畑中「何がドライブシュートだ!セコい奴だな。お前が翼君になれるか!」

矢内「黙れ、来生ヘアー!」

 

何故俺が責められる!

 

ヒコマロ「そち、まれに見る好敵手、名を名乗るでおじゃる!」

矢内「………矢内 孝太郎だ。」

ヒコマロ「矢内 孝太郎、ここからは麻呂の奥の手を使わしてもらうでおじゃる!覚悟するでおじゃる。秘術『ヒコマロコール』」パチン!

 

ヒコマロが右手を上げて指を鳴らした!

何が起こるんだ?

 

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

ヒコマロ「麻呂のサーブからでおじゃるな。」ポーン!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

何だ?何処からともなく声が聞こえる。ポーン!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

ヒコマロ「麻呂は勝つ!」バシ!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

矢内「クッ、しまった!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

畑中「ヒコマロの得点!3vs2で矢内リード!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

さっきから何だ?力が入らない。

 

畑中「矢内のサーブ!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

クソ!何なんだ!この耳障りな声は!ポーン!

 

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

声がでかくなってきた!力が入らない。何なんだこれは!ポーン!

 

矢内「クソ!」ポーン!

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

声がだんだんでかくなる!

俺は周りを見渡した。

村人が全員ヒコマロを応援している!声は更にでかくなっている!まるで世界中がヒコマロを応援している様だ!

 

ヒコマロ「矢内 孝太郎、余所見は禁物でおじゃる!」バシ!

矢内「しまった!」

畑中「ヒコマロの得点!3vs3で同点!矢内のサーブ!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

矢内「クソ!」ポーン!

 

しまった!ネットにかかってしまった!

 

畑中「矢内のサーブミス!4vs3でヒコマロのリード!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

まずい…。何とかしなくては…。

 

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

勇者「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

エリカ「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

勇者「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

エリカ「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

矢内「ん?……………タイム。」

畑中「タイム!どうした?矢内。便所か?」

 

俺は勇者達の所に近づいた。

 

勇者「勝つのはヒコマロ!」

エリカ「負けるの矢内!」

サチ「勝つのはヒコマロ…」ボソ

アリマ君「キー!キー!(負けるの矢内!)」

矢内「お前らまでヒコマロを応援しているじゃねぇ!!」

勇者「すみません…。みんなが楽しそうなのでつい…。」

矢内「クソ!試合再開だ!」

 

ん?なんか身体が軽くなってきた。

 

畑中「試合再開!矢内のサーブから!」

矢内「いくぞ!」バシ!

ヒコマロ「いとおかし!」ポーン

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続く。

ヒコマロの蹴った毬が中央のネット前に高く上がった。

ここで決める!

 

矢内「悪いが勝たしてもらう!喰らえ!俺のジャンピングボレーシュート!」バシ!

ヒコマロ「グワッ!」バチン!

畑中「ああーとっ!ヒコマロ君!吹き飛ばされたー!!」

 

俺のジャンピングボレーシュートがヒコマロの顔面に直撃してしまった。

 

畑中「矢内の得点!4vs4!」

矢内「ヒコマロ!すまん、大丈夫か?」

ヒコマロ「蹴鞠は友達、痛くないでおじゃる…。」グス

 

涙目じゃねぇか!やせ我慢するな。翼君かお前は!

 

矢内「ヒコマロ!追い付いたぞ!」

ヒコマロ「勝つのは麻呂でおじゃる!」

 

泣いても笑ってもこれで最後だ。

 

畑中「ヒコマロのサーブから!」

ヒコマロ「いくでおじゃる!」ポーン

矢内「悪いが勝たしてもらう!」ポーン

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続く。ギャラリーの村人達がヒートアップしている。しかし、勝つのは俺だ!

 

勇者「賢者さまー!頑張って下さい!」

「ヒコマロー!がんばれー!」

サチ「賢者さん…。わざと負けるのじゃなかったの?何を熱くなっているのかしら?」

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続くなか何処からともなく一人の女がこちらにやって来た。

 

「山賊に襲われて、助けて下さい!」

ヒコマロ「まことでおじゃるか?」

 

ヒコマロの動きが止まった!今だ!

 

矢内「もらった!」バシ!

ヒコマロ「あっ!」

畑中「矢内の得点!ゲームセット!5vs4で矢内の勝利!」

 

勝った!

 

「ふざけるな-!女!お前が邪魔するからヒコマロが負けただろうが!」

「いい試合の邪魔しやがってー!死ねー!」

「何が山賊だ!勝手に襲われてろ-!」

 

試合を邪魔したせいか村人達が女に罵声を浴びせる!

 

ヒコマロ「そち達、麻呂は東の島国から来た勇者でおじゃる!麻呂は今からこの者を襲った山賊を退治して来るでおじゃる!」

 

ヒコマロは女に襲われてた場所を聞いて一目散に向かって行った。

 

勇者「賢者さま!行きましょう!」

矢内「いや、待て!勇者、お前はサチと畑中と一緒に村に残れ!」

勇者「どうしてですか?」

矢内「いいか?もし全員で行って山賊と入れ違いになって村が襲われる可能性がある。だからお前はサチと畑中とで村を守るんだ!」

勇者「分かりました…。」

矢内「よし、いい子だ。エリカ!アリマ君!俺達はヒコマロを助けに行くぞ!ついてこい!」

エリカ「分かった!」

アリマ君「キー!」

矢内「その前にサチ、ちょっとこい…」

サチ「何かしら?」

矢内「あの女、見張っていろ。なにか怪しい。」

サチ「あの女村人の格好ではないよね…。分かったわ。」

矢内「では、行って来る!畑中、後は頼むぞ!」

 

村は畑中達に任せて俺はエリカとアリマ君を連れてヒコマロを追って行った。


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