矢内「オェー!オェー!」ゼィゼィハァハァ
矢内「ゲート通るのってこんなに酔うのかよ!先に言えよ!」
勇者「オェー!」ゼィゼィハァハァ
矢内「ってお前もかよ!」
勇者「違います。わたしのはもらいゲロです。」
矢内「うるせー!オェー!」ゼィゼィハァハァ
俺たちは会社に現れた大カマキリを倒した後、食料などを準備してファンタルジニアにやってきた。
ダメだ!まだ気持ち悪い。少しスコールを飲んで気持ちをリフレッシュしよう。
矢内「所で、お前は何で俺をファンタルジニアに連れてきたんだ?」
勇者「え?」
矢内「え?じゃねーよ!」
勇者「それでは、賢者さま。王様の所に行きましょう!」
矢内「いや、質問に答えろよ。」
しかし、辺り一面木に囲まれるな。森の中なのか?迷ったら大変だな。勇者は道を知っているのだろうか。
矢内「勇者よ。ここは何処だ?」
勇者「ファンタルジニアです。」
矢内「ファンタルジニアの何処だって聞いているんだ!」
勇者「森です。」
見たら分かるわ。聞いた俺がバカだった。
矢内「道、分かってるんだろうな?」
勇者「歩いていたらいつか何処かに着くと思います。」
マジかコイツ!適当に歩いていやがったのか。それで森の中を右や左に曲がっていたらそりゃ迷うわ。
矢内「勇者、取りあえず真っ直ぐに進むぞ。さっきから同じ所をずっと歩いてるぞ。」
勇者「はい、賢者さま。」
暫く歩いていると原っぱに出て来た。真ん中に花がいっぱい咲いている。花の所に誰か居る。子供だな。
矢内「おーい」
子供は此方を振り向いた。尖った耳に豚の鼻、その瞬間、俺は異世界に来た事を改めて実感した。
豚鼻の少女「に、人間!」
勇者「初めてまして、わたしは一国の勇者です。此方は賢者さまです。」
豚鼻の少女「ゆ、ゆ、勇者に賢者?た、た、た、助けて!殺さないで!」
何だ?脅えてやがる。こっちは道を教えて欲しいだけなのに。仕方ない。ここは一つリラックスさせてやるとするか。
矢内「物まねやりまーす!まずは木村拓哉!」
矢内「ちょ、まてよ!」
豚鼻の少女「????????」
矢内「続きまして、宮川大輔。」
矢内「道を聞きたいだけやのにそんな脅えたら、アカーーン!」
豚鼻の少女「」ビク
勇者「何してるのですか?賢者さまー?」
矢内「続きまして、」
豚鼻の少女「あの、あなた達は私をイジメに来たのじゃないのですか?」
クソッ!次こそは爆笑させてやる自信があったのに…
勇者「そんな酷いことするわけ無いじゃないですか!」
勇者「お前は誰かにイジメられたりしているのですか?」
豚鼻の少女「わたしはお父さんがオークでお母さんが人間なんです。」
矢内「混血児ってやつか。」
豚鼻の少女「だから、人間にもオークにも嫌われていて……」
何か複雑な事情だな。
矢内「人間にもって言ったな。このあたりに村とかがあるのか?」
豚鼻の少女「あっ、はい。ここから西に少し行ったら人間の町があります。」
勇者「教えてくれてありがとうございます。良かったらお名前、教えて下さい。わたし達だけ自己紹介したのは不公平です。」
豚鼻の少女「わたしの名前はポーキーです。」
矢内「そっか、ポーキー。ありがとうな。お蔭で今日は野宿しなくて済みそうだ。」
コン、コン、ガン!
いてぇ!石飛んで来やがった!アッチからか?
矢内「なにしやがる!!」ヤベッ!ヒトニアタッタ!ニゲロ!
矢内「勇者!あのクソガキ共の頭を斧でかち割ってやれ!」
勇者「はい。賢者さま!」ウワァ!コッチニキタ!ニゲロ-!
俺達はクソガキ共の追っかけているうちに町にたどり着いた。
勇者「捕まえました!」
よし!ナイスだ勇者!このクソガキ共に大人の恐ろしさを見せてやる!!
勇者「なんで石なんか投げてきたのですか?」
子供 A「ごめんなさい。他に人が居るなんて思わなかったから…」
子供 B「だっていつもこの時間帯はアイツしかいねーからさぁ。」
勇者「ポーキーに当たったらどうするつもりですか!!」
子供 B「別に良いじゃん!アイツ人間じゃねぇし。」
子供 C「そうだ!よそ者が口出ししてんじゃねぇよ!」
子供のリーダー「おいお前ら、どうしたんだ?」
子供 B「あっ、キール、良いところに!」
キールと呼ばれた偉そうなガキが近づいて来た。きっとガキ共のリーダーなんだろう。
キール「あんたら見ない顔だな。コイツラが何かしたのか?」
勇者「原っぱでポーキーとお話していたらこの子たちの投げた石が賢者さまに当たったのです!」
キール「お前ら!下らねー事しやがって!この人達に謝れ!」
子供 ABC「ごめんなさい…」
勇者とキールとかいうガキの所為で俺がコイツ等に大人の恐ろしさ見せる機会がなくなってしまった。
矢内「それはもういい。それより俺達は今日、泊まる所を探しているんだが、何処か知らないか?」
キール「あんたら、旅の人か?まさか人攫いじゃねぇだろうなぁ?」
人攫いだと?なんか面倒な事が起きそうな予感がする…
勇者「今のお話、詳しく教えて下さい!」
キール「あんた等、一体何者なんだ?」
勇者「あっ、自己紹介が遅れました。わたしは一国の勇者、そちらは賢者さまです。」
子供ABC「ゆ、勇者〜〜!」
キール「本当に勇者なのか?俺の親父は町長なんだ!是非会ってくれ!」
嫌な予感が当たりそうだ。
矢内「いや、俺達は町長なんかより泊まる所をだな…」
キール「何言ってんだよ!あんた賢者なんだろ!すげー頭いい奴なんだろ?」
このキールとかいうガキ、なかなか分かっているじゃねぇか。
キール「親父の悩み聞いてくれよ!賢者様だろ?賢いんだろ?」
矢内「ハハハ!俺は賢者さまだからなぁ!賢いからなぁ!悩みなんて一発解決さぁ!ハハハハハハ!」
子供ABC『この人チョロいなぁ。』
勇者「キール、賢者さまが悩みを聞いてくれて良かったですねぇ。」
俺達はキールの案内で町長の家に向かった。
町長「これはこれは勇者様に賢者様、よくお出でなさった。」
勇者「町長さん、こんにちは。」
矢内「町長さん、俺達は泊まる所を探しているんだが。」
町長「キールから話を聞いています。町に一つ空き家が有りますのでそこをお使い下さい。火をおこす薪など必要な物は後でキール達に持って行かせます。」
矢内「いろいろと心遣いありがとうございます。それでは…失礼します。」
町長「あぁ、お待ちください賢者様!実は今、我々の町でですね子供達が攫われる事件が有りまして…」
クソッ!やはり話聞かなきゃいけないか。
町長「それで子供達を攫った犯人を探して欲しいのです。」
矢内「何か犯人に心当たりは無いのですか?」
町長「最近、東の原っぱにオークが目撃されています。もしかすると」
勇者「ポーキーがそんな酷いことするわけありません!寧ろこの町の子供達のほうが酷…」
矢内「勇者、少し黙ってくれ。」
勇者「だって賢者さま、」
矢内「少し黙れ!」
矢内「町長、勇者が失礼しました。犯人は明日我々で調査します。今日は、宿のほうに戻ります。」
町長「賢者様、よろしくお願いします。」
矢内「それでは失礼します。勇者!行くぞ!」
町長の家を出て提供してくれた空き家に入った。小綺麗に片付いている。頻繁に手入れをしているのだろう。
勇者「賢者さま!さっきは何でポーキーの味方しなかったのですか!」
矢内「勇者、お前は一体ポーキーの何を知っているんだ?さっき会ったばかりだろう?」
勇者「ポーキーは大人しい子です。」
矢内「そうだな。でもこの町の人達はそれすらも知らないのだ。」
勇者「だからって子供達がポーキーに石を投げつけていい理由なんてありません!」
矢内「そうだな。でもな、人は自分と少し違うってだけで怖い物なんだ。だから大勢でその違う物を叩く。虐める。」
矢内「少し人より太っていたり、肌の色が黒かったり、禿げていたり、種族が違ったり、チンコの皮が被っていたりしても、心は通じ合えるはずなんだ。」
勇者「そうですね…わたし、明日ポーキーの所に行って来ます。」
矢内「何しに行くのだ?」
勇者「もちろん、お友だちになりに行きます。」
矢内「お前、ポーキーに同情して言ってるのか?」
勇者「違います!わたしが仲良くしたいから行くのです!」
矢内「いい子だ。町で犯人探しは俺がするから行って来い!」
勇者「賢者さま、ありがとうございます。あっ、あとわたしは賢者さまが皮っ被りでも絶対酷いことはしないので安心して下さい。」
俺はズル剥けだ。クソが!
ガチャ、丁度ドアが開きキールが町長の使いで薪などの必需品を持って来てくれた。
キール「賢者様、必需品持って来ました!」
矢内「キールか。ありがとう。その辺に置いてくれ。」
キールは必需品を置いてもまだ帰ろうとしない。
矢内「キール?まだ用事が有るのか?」
キール「勇者、明日俺も一緒に連れて行ってくれ!俺はこの町の子供達のリーダーなんだ。だから…」
矢内「お前の言いたい事は分かるがそれじゃあダメだ!」
キール「なんでだよ!アイツ等だって俺の言うことなら絶対聞くはずなんだ!」
矢内「それでは意味が無いんだ。確かにお前は反省しているのかも知れない。」
キール「かもじゃないよ!この皮っ被り!」
矢内「ズル剥けだ!ぶっ飛ばすぞ!話がそれた。お前が言うと子供達は言う事を聞くだろう。お前の前ではな。」
キール「………」
矢内「だがそれだと、お前の居ない所で他の子供達はポーキーをイジメるんじゃないか?」
キール「もういい。俺は一人でもアイツに会いに行く。」
バタン。キールはトボトボと帰って行った。
勇者「賢者さま、キールはせっかくポーキーがみんなと仲良く出来るようにと思って言ったのになんであんな風に言ったのですか?」
矢内「あぁ、多分だがキール自身はポーキーをイジメたりしていない。」
勇者「なんでそうだと言えるのですか?」
矢内「そうだな。キールは石をぶつけられた話をした時、下らねえ事って言ったよな。」
勇者「そうですね…。言ってましたね。」
矢内「キールはそういうイジメ行為自体下らねえと思っていたんだ。」
勇者「じゃあなんで今まで、何もしなかったのですか?」
矢内「アイツもどうしたらいいか分からなかったんだと思う。町長の息子って立場もある。それに大人達からもオークには近づくな、とか言われてたのだろうしな。」
勇者「でも、それじゃあ」
矢内「大丈夫だ。お前、明日ポーキーと友達になるんだろ?それにキールの奴も一人でも会いに行くって言ってたじゃないか。」
勇者「そ、そうですよね!安心しました。」グー
矢内「ハハハ!なんだ、勇者。安心したら腹がへったのか?話し込んだから飯の時間が少し遅くなってしまったな。」
矢内「もう少し待てるか?今から作ってやるからな。」
勇者「はい!賢者さま!」
よし。飯を作るとするか。まずはあらかじめ買って来た、チャッカマンで薪に火を付けて、キールが持って来た必需品に中に鍋とフライパンに包丁に水に野菜があるな。米はお湯で温めるやつがあるから鍋に入れて、あと、俺が買って来た食材でうーん、焼きそばでいいか。肉はないが野菜を炒め塩コショウを振りかけソバを入れ鳥ガラスープの元に醤油で味付けて、最後に半熟の目玉焼きを上にのせる。ご飯はもう出来てるな。
矢内「よし、出来たぞ!」
勇者「これはなんて食べ物ですか?」
矢内「あぁ、矢内流醤油焼きそばだ。」
勇者「こんな速い時間でお料理が出来るのですね!魔法みたいです。」
矢内「さぁ、早く食べよう。冷めてしまう。」イタダキマス!
そういえば、誰かに飯作ったのって初めてだな。口に合うといいんだが……
勇者「美味しい!凄く美味しいです!」パクパク
良かった。本当に良かった。作って良かった。誰かに美味しいって言われるのって本当にいい気持ちだなぁ。
勇者「あれ?賢者さま食べないのですか?」
矢内「あぁ、今から食う所さ。」モグモグ
一瞬だが、勇者が食べている姿を見て、いろんな事に巻き込まれているのを忘れてファンタルジニアに来て良かったって思った。
そして、ファンタルジニアに来てからの長い1日が終わった。