わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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エルフの森の山田さん 1

わたし達は今、迷いの森に来ています。ここを通ると砂漠の国まで直ぐなのですが何度森に入っても同じ所に戻って来てしまうのです。

 

勇者「また、戻って来てしまいました…。」

サチ「何度入っても同じ所に出るわね。」

エリカ「あっ、そうだ!あたし、しばらく会ってないけどエルフに友達がいるんだった。アリマ君、この手紙をあたしの友達に渡して来てよ。」

アリマ君「キー!」

サチ「エルフと友達?エルフは人間嫌いで有名なのに?エリカさん、きっとその人エルフじゃないわよ。」

エリカ「エルフだよ。自分で言ってたよ。エルフだって。」

勇者「エリカにゃん、その人、どんな人ですか?」

エリカ「気さくで楽しい奴だよ!」

サチ「はぁ…。エルフが気さくな訳ないじゃない…。エリカさんは騙されてるのね。ゆうりん、賢者さんを呼んで来てくれるかしら?」

勇者「あっ、はい。賢者さまを呼んで来ます。」

 

わたしはさっちんに言われた通りにゲートを開いて賢者さまを呼びに行きました。

 

 

 

俺は勇者の奴に連れられて、ゲートを通って迷いの森にやって来た。聞くと勇者の開くゲートは俺が居るところと自分が居るところしか繋がらないらしい。迷惑な話だ。後でゼクスの野郎はぶん殴っておこう。

 

サチ「来たわね、賢者さん。」

矢内「サチか、どうやらお手上げのようだな。」

サチ「そうね。」

エリカ「賢者!あたし、エルフの友達が居るんだよ。そいつもう少しで来るから道案内してもらおうよ。」

矢内「エルフの友達?」

エリカ「うん、そうだよ。気さくな奴だから大丈夫だよ。」

矢内「…。」

サチ「エリカさん、きっと騙されてるのよ。」

矢内「ああ、そうみたいだな。」

 

俺達が話込んでいると森の中から一人の青年が出てきた。耳はピンと尖っていて金髪の色白い男だ。

 

???「チョリーース!」

エリカ「久しぶり!ライアン!」

ライアン「エリカ!良く来たッス!」

 

こんなチャラいエルフがいるか!

 

エリカ「ライアン、元気だったか?」

ライアン「自分は元気ッス!エリカはお城の戦士になったって聞いたけど何でここにいるッスか?」

エリカ「今、あたしは勇者達と砂漠の国を目指して冒険しているんだ。仲間の勇者とサチ、そして変な所から来てる賢者。」

ライアン「変な所?もしかして異世界?今、自分達も異世界から来た人間の客人がいるッス。」

エリカ「へぇ~。どんな奴?」

ライアン「肌が少し褐色で変わった女の人ッス。」

エリカ「変な奴だったらきっと賢者の友達だよ。」

 

お前は俺をなんだと思っている!

 

勇者「賢者さま、あの人本当にエルフなんでしょうか?」

サチ「見た目はエルフだけど…。」

矢内「まぁ、アイツは放っておこう。この森が迷いの森か…。」

勇者「賢者さま、この森に入っても元の所に戻って来てしまうのです…。」

矢内「いいか、森があるから迷うんだ!だから全て燃やしてしまえばいいだけだ!準備にかかるぞ!」

サチ「さすがにその発想は無かったわ…。」

矢内「勇者、お前は木に登ってラッカーシンナーを木全体にかけるんだ。」

勇者「分かりました。わたし木登りは得意です。」

矢内「サチは森の前の草にシンナーをばらまけ!」

サチ「分かったわ。」

 

勇者とサチは段取り良く作業を進めた。

 

矢内「それくらいでいいだろう。勇者、サチ、森から離れてろよ。」

勇者「分かりました。」

 

矢内「いくぞ、必殺!ヤナイ…フレイム!」ゴォォォォ!

 

俺の魔法で森が勢い良く燃えている。森の入口の木や草にシンナーがかかっているから効果はバツグンだ!

 

矢内「これでしばらくしたら森は無くなるな。」

 

ヒュン!何かが俺の頬をかすめた。血がででいる…。

 

勇者「賢者さま!」

「動くな!」ヒュン!

 

勇者の足下に矢が刺さった。いつの間にか囲まれてる!

 

サチ「不味いわ。本物のエルフよ!」

 

エルフ達が弓を構えて俺達を囲んでいる!

 

「貴様!我々が住む森に火をつけるとは!名を名乗れ!」

矢内「俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

???「お前…もしかして…矢内か?何が賢者様だ!自分勝手にこの者達が住む森に火をつけるとは恥をしれ!この屑が!」

 

 

 

 

誰だ?褐色の肌にセミロングの黒髪の女、それに賢者様である俺に対してありえない暴言…。

 

矢内「あー!お前、もしかして!山田か?」

山田「やはり矢内か、異世界から来た賢者がこの森にやって来ると聞いて来てみたらよりによってお前か!」

矢内「やっぱり山田かぁ!ハハハ!最後に会ったのは成人式の時だから15年振りぐらいか!久しぶりだなぁ!」

勇者「賢者さま?その人、賢者さまのお友達ですか?」

矢内「ああ、山田だ。」

山田「私はこんな屑と友達になった覚えはない!」

矢内「所で山田、何でこの世界にいるんだ?」

山田「ああ、私は群馬県の観光地で仕事をしていたのだがな。水をくむ途中に井戸から落ちたらこの世界だった。」

勇者「あっ、わたしが初めて賢者さまに会った時に開いたゲートが井戸でした。もしかしてそこに落ちてしまったのでしょうか?」

 

お前が原因か!

 

矢内「山田、何でお前だけがドラクエみたいな展開なんだよ!俺なんか最初は会社の焼却炉から来てるんだぞ!帰りは焼却炉のゴミに火がついていて火だるまになって死にかけたんだぞ!」

山田「お前はそのまま死ねば良かったんだ!お前らのせいで私は巻き込まれたんだ!」

 

俺達が言い合いをしている間に森につけた火がエルフ達に消火された。

 

「なんとか森が焼けずにすんだ。では、森に火をつけたそこの人間達を縛り上げよ!」

 

俺達はエルフに捕らえられた。

 

「所で、客人よ。そこの男とは知り合いなのか?」

勇者「山田さんは賢者さまのお友達です。」

「何?客人、お前がこの男達を呼んだのか!やはり人間は悪だ。客人も引っ捕らえよ!」

 

山田もエルフに捕らえられた。

 

山田「違う!私は関係ない!」

 

俺達はエルフに捕まり迷いの森の中に連れて行かれた。この迷いの森はどうやら正しい道を通らないと元の入り口にもどされるらしい。

 

山田「私は無関係だ!この縄を解いてくれ!」

「静かにしろ!」

矢内「山田、ちょっとは落ち着けよ。」

山田「お前のせいでこうなったんだろうが!」

勇者「賢者さま、わたしたちはどこに連れて行かれるのでしょうか?」

矢内「まあ、成るようになるだろう。」

サチ「そうね。」

山田「お前達のせいで私まで…。」

「客人、お前が呼んだ者が我等の森に火をつけたからだろうが。着いたぞ。」

 

俺達はエルフ達に連れて来られて、森の内部に入った。中はちょっとした町になっている。そのまま俺達は一番大きな屋敷に入れられた。

 

「国王様、森に火をつけようとした人間達を捕らえて来ました。どうやら少し前から来てる客人の仲間のようです。」

国王「なんと、だからわしは人間などを町に入れるのは反対だったんだ!よし!地下の牢獄にぶちこんで置け!」

「ハッ!直ちに!その者達を連れて行け!」

山田「私は関係ない!無実だ!矢内だけを処刑にしたらいいんだ!」

「客人、見苦しいぞ!連れて行け!」

「ハッ!」

 

俺達は地下の牢獄に入れられた。

 

山田「矢内!どうしてくれる!お前のせいで!」

矢内「だから落ち着けよ。」

 

俺達を牢屋に入れたエルフは安心したのか牢屋に鍵をかけて戻っていった。

 

矢内「見張りはいないな…。よし、脱出するか、サチ、頼む。」

サチ「分かったわ。」

山田「おい、どうするつもりだ?」

矢内「ああ、牢屋の外から他の誰かに開けてもらえば出れるだろ。」

山田「はぁ?誰がいるんだ!」

矢内「だから、今から呼び出すんだよ!」

サチ「いくわよ。『パーソン エンター』。」

 

俺達が入っている牢屋の前に光の渦が現れた。

 

山田「何か出てきた!何をしたんだ!」

サチ「黙ってて。今から召喚するから。かー!矢内、お前って奴は、ハッハーww!」

山田「なんだ、今のは…。」

 

光の渦から畑中が出てきた。俺達がいる牢屋側に…。牢屋の外に出てこないと意味がないだろ。

 

畑中「矢内!また俺を巻き込みやがって!」

矢内「この、役立たずの!ブター!」バキ!

 

俺は畑中を思いっきり殴った。

 

畑中「いきなり何しやがる!今日という今日は許さねえ!ぶっ飛ばしてやる!」バキ!

 

殴り返された。

 

矢内「ぐわっ!」

畑中「クソッ。ゴッド打ってる最中だったのに…。」

サチ「また、お金を無くすだけなのに。懲りないわね…。」

畑中「いい感じに高確モードに入った所だったんだよ。」

勇者「屑野郎さんは相変わらずですねぇ。」

畑中「よぅ、勇者ちゃん!」

勇者「屑野郎さん、こんにちは!」

山田「お前は…。ひょっとして…畑中か?何がどうなっている?誰か説明してくれ。」

畑中「ん?もしかして、山田さん?ハッハーww」

山田「何が可笑しい!」

畑中「ハッハーww」

山田「誰か説明しろ!」

矢内「いいか?お前ら。三十過ぎても結婚すらできない女はちょっとしたことでイライラするようになるんだ。お前らも気を付けないと山田みたいになるからな。」

勇者「はい、気を付けます。」

山田「矢内!お前のせいでイライラしてるだろうが!」

 

喧しい奴だ。そんなだからいつまでたっても独り身なんだ。

 

畑中「何がどうなっているんだ?」

 

サチが畑中に今までの経緯を説明した。

 

畑中「ハッハーww!矢内、お前が全て悪いじゃねぇか。こりゃ死刑だな。次の主役は自動的に俺になるから安心して死ね。」

 

コイツ、結構この世界楽しんでいるよな…。

 

サチ「畑中のせいで脱出に失敗したから次の案を考えないといけないわね。」

矢内「ああ、畑中が来たから全て畑中に罪を押し付けて俺達は出してもらおう。」

畑中「いきなり呼んでおいてふざけるなよ。」

サチ「畑中、貴方が牢屋の内側に出てきたから私達は出られないのよ。だから貴方が悪いのよ。」

勇者「屑野郎さん、謝ってください!」

畑中「ごめんなって、何でだよ!もとは矢内が森に火をつけるからだろうが!」

山田「畑中、こいつらはいつもこんな感じか?」

畑中「まぁな。所で山田さんは何でこっちの世界にいるんだ?」

山田「ああ、私は井戸で水を汲む途中に滑って落ちてしまってな。気がついたらこの迷いの森だった…。」

畑中「ハッハーww!ちょ、井戸って!ハッハーww!何でドラクエ6みたいな展開なんだよ!ハッハーww!」

山田「笑うな!何が可笑しい!」

勇者「どんくさいですねぇ。」

山田「矢内の娘、もとはお前のせいだろ!」

矢内「山田。お前な、勇者の奴がゲートを広げたままだったから井戸から落ちても死ななかったんだぞ。勇者の奴にお礼の一つぐらい言えよ。」

山田「お前達のせいで牢屋に入れられたのだろうが!」

サチ「どんくさい山田、静かに!足音が聞こえるわ。誰か近づいて来るわ。」

山田「ゴスロリ女、何故私だけに言う。それに私の事を悪く言うな。」

サチ「今のところ貴女に良いところは何一つないわ。黙ってて。」

 

俺達が話込んでいるとコツコツと何者かの足音が聞こえてきた。足音が大きくなるにつれて話声が聞こえる。

 

「いいか?お前達、この奥の牢屋に凶悪な人間を捕らえている。しっかり見張りを頼むぞ。」

「ヴィ。」

「なんだその返事は!」

「ちょ、牢屋の見張りなんてマジ萎えなんですけど。」

「これからウチラ、イベサーあるのにショッキングピーポーマックスだわ。」

「なんだその喋り方は!いいからしっかり見張りをしとけよ!」

「ヴィ。」

 

どうやら見張りが来たらしい。見張りのエルフ達が俺達の牢屋に近づいて来た。

 

「あれ?ライアンが連れて来た人間の客人もいるじゃん。」

「ウケるww。」

「なんか、聞いてた数より多くね。ウケるww。」

山田「おい!私は無実だ!出してくれ!悪いのは矢内だ!」

「客人、ちょー必死wwウケる。」

 

なんかノリが軽いな。バカそうだしいけるかもしれない。

 

矢内「ちょ!俺と勇者の奴がショボパンなんですけど!マジべぇわ!ここから出られないとマジでべぇわ!」

サチ「ちょ、ちょっと賢者さん?何を訳の分からない事を言ってるの?」

「えっ、マジ?」ガチャ

 

牢屋が開いた。上手くいった!

 

「ちょ、ショボパンとかマジ?」

「便所そっちなんですけど。」

矢内「勇者、出るぞ。」

勇者「えっ?は、はい。」

山田「は?お前達だけか?」

矢内「とりあえずだ。勇者、俺がエルフ達の注意をひくからお前は隙を見て町に来ているはずのエリカと合流してみんなを助け出すんだ。いいな?」

勇者「はい。分かりました!」

 

俺と勇者は牢屋を出る事が出来た。

 

「ねぇ、何でウチラの言葉分かるの?」

矢内「ああ、それは俺がみんなが大好き賢者様だからだ。」

「何それ、ちょーウケるww」

「賢者って、スゲェ奴じゃん!ウケるww」

「そうだ、せっかくだからウチラのイベサー見ていってよ。」

矢内「マジ?ビョウで行くわ!アゲポヨなんだけど!」

「賢者様、名前は?」

矢内「矢内 孝太郎だ。」

「じゃあ、ヤナピッピ。ウチラのイベサー案内するわ。」

矢内「勇者、今のうちだ。」

勇者「は、はい。行って来ます。」

 

勇者が上手く町に抜け出せた。後は俺がエルフを引き付けるだけだ。

 

「ヤナピッピ、便所が先じゃね?」

矢内「ショボパンよりイベサーが先じゃね?最悪漏らせば良くね?」

「ウケるww」

「良い年した大人が漏らすとか、マジウケるww」

矢内「イベサーカチコミっしょ!」

「あっ!鍵開けっぱだし!」

「ウケるww」

 

上手くエルフを牢屋の外に誘導することが出来た。しかし、何か聞いていたエルフの情報と違うな…。

 

 


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