わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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エルフの森の山田さん 2

なんとかわたしだけ町に逃げ出す事が出来ました。早くエリカにゃんと合流してみんなを助け出さないと!

 

ライアン「とりあえず、自分が町を案内するッス!」

エリカ「みんな何処に行ったんだろう?アリマ君、分かる?」

アリマ君「キー…。」フルフル

ライアン「町は大きくないから直ぐに見つかるッス!」

 

あっ!エリカにゃんが居ました!エルフの人と一緒に居ます。

 

勇者「エリカにゃん!」

エリカ「あっ!勇者!何処に行ってたんだよ!探したんだぞ!」

勇者「エリカにゃん、みんなが牢屋に入れられたんです!一緒に来てください!」

ライアン「牢屋に?いったい何をしたんッスか?」

勇者「分かりません。さっちんと山田さんと屑野郎さんを助けて下さい!」

エリカ「賢者は?」

勇者「賢者さまが他のエルフの人達の注意を引いています。今の内にみんなを助けないと…。」

ライアン「分かったッス!国王の屋敷の地下ッスね!自分、国王の近衛兵だから顔パスッス!」

勇者「あっ、ありがとうございます。えっと…。」

ライアン「自分、ライアンって言うッス!よろしくッス!」

勇者「わたしは一国の勇者です。よろしくお願いします。」

エリカ「行こう!」

アリマ君「キー!」

 

わたしは無事にエリカにゃん達と合流出来てみんなを助けに行きました。

 

ライアン「警備が誰も居ないッスね。」

エリカ「勇者、みんなは?」

勇者「こっちです!」

 

間に合いました。みんな無事です。

 

勇者「皆さん、助けに来ました!」

山田「矢内の娘!」

畑中「早く出してくれ!」

ライアン「今開けるから、静かにするッス!」

山田「おお!ライアン、よく来てくれた!」

ライアン「カギを開けたッス!静かに脱出するッス。」

 

ライアンさんがカギを開けてくれてみんな出ることが出来ました。

 

サチ「所で…。牢屋から出ることが出来たけど…見張りが居るんじゃないかしら?」

エリカ「この屋敷の中には誰も居なかったよ。」

勇者「賢者さまが見張りの人と何処かに行ってます。」

サチ「…。嫌な予感がするわ。」

畑中「矢内を探すか…。」

アリマ君「キー…。」

山田「矢内など放っておけば良いだろう。」

エリカ「何言ってるんだよ。もうすぐ御飯の時間だよ。賢者が居ないと美味しい御飯食べれないじゃんか。」

サチ「そうよ。早く探しましょう。」

エリカ「ライアン、賢者を探すの手伝ってよ。」

ライアン「分かったッス。イベサーのみんなにも声をかけてみんなで探すッス!」

山田「別に探さなくていいだろ!早くここから出るのが先だろうが!」

畑中「…。山田さん、いいから矢内を先に探そう…。」

山田「はぁ?お前まで何を言ってる!アイツのせいで私達は牢屋に入れられたんだぞ!」

畑中「山田さん、あの子らの前で余り矢内の事を悪く言うな…。頼むから空気読んでくれ。」

山田「…。あー、分かった分かった。さっき見張りで来たエルフ達と共に行ったのなら矢内は今、町の外れの広場に居る筈だ。まずはそこから探すぞ。」

勇者「…。山田さん、ありがとうございます。」

山田「矢内の娘、礼は矢内を見つけてからでいい。」

 

わたし達は賢者さまを探しに町の広場に向かいました。でも、山田さんは何でわたしの事を矢内の娘って言うのでしょうか?

 

町外れの広場にたどり着きました。広場には人だかりが出来ています。なにやら歌声が聞こえてきます。

 

「最後に一度だけ~と♪唇噛み締めて~♪」

「握りしめた手のひ~ら♪燃えるように熱い♪」

「ひとつの季節だけには~とまっていられない~♪」

「風を見つけたおと~こは~♪夢を追いかけてく♪」

 

歌っているのは賢者さまです。ダンスもいつもよりキレがあります。

 

サチ「賢者さんは何をやってるの…。」

山田「何でこの曲なんだ…。」

畑中「『ごめんよ涙』は矢内のカラオケの十八番だ…。」

 

矢内「傷ついて♪愛しあ~い♪優しさに気がついたよー♪」

矢内「つらいと~き♪君のまなざしを~♪僕はしんじてる~♪」

 

勇者「賢者さま、わたしもご一緒します。」

山田「矢内の娘、この曲は私達が子供の頃の曲だぞ。」

勇者「この曲は賢者さまがいつも夜中に大きな鏡の前で練習しているのをわたしは見てました。振り付けもバッチリですよ。」

畑中「ハッハーww!夜中に練習って!」

サチ「隠れて練習している所を見られいるってwwカッコ悪いわね。」

 

矢内「その涙~ごめんよ♪想い出になるけ~ど~♪」

勇者「い~つまでも~♪い~つまでも~♪忘れはし~な~い~♪」

矢内「さよならもごめんよ♪抱きしめていたいけ~ど~♪引き留めず~♪行かせてくれ~♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

「チビッ子、やるじゃん!ウケる。」

「ウチラも負けてられないっしょ!」

 

サチ「エルフ達もダンスに加わりだしたわ…。何なの?これ…。」

畑中「教師びんびん物語かよ!ハッハー!」

山田「矢内がやると本当にダサいな…。」

エリカ「楽しそうだな。あたしも加わろう!アリマ君、行こう!」

アリマ君「キー!」

ライアン「自分も行くッス!」

 

矢内「はじめて会った頃は~♪子供のようだった~♪」

矢内「夏も遠い砂は~ま♪無邪気にふれあった♪」

矢内「あのとき純な気持ちで♪呼びあった名前が~♪」

矢内「今でも僕の心に~♪消えてはいないのさ♪」

 

山田「矢内が若いエルフ達を統率している…。何なんだ、これ…。」

 

矢内「美しい~♪昨日ほ~ど♪人は縛られやす~いよ~♪」

矢内「だけどい~ま♪それぞれのあした~♪二人い~きてみよう~♪」

 

サチ「ぷっ!賢者さんだけが足が上がっていない。」

畑中「かー!矢内の奴、三十路越えてるのに…。恥ずかしくないのか…。」

 

矢内「その涙 ごめんよ♪わがままをゆるし~て♪」

矢内「は~なれても~♪」

勇者「は~なれても~♪」

矢内 勇者「見つめてい~るよ~♪」

勇者「さよならも♪ごめんよ♪」

矢内「さみしさも分かるけ~ど♪ふ~り向かず行かせてくれ♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

畑中「凄いな…矢内と勇者ちゃん…息ぴったりだな…。」

山田「親子だから息は合うのだろ。」

畑中「ハッハー。そんな訳ないだろう。住んでる世界が違うのに。」

山田「いや、親子だ。間違いない!」

サチ「違うわ。…でも、そう言えばゆうりんの親の話は聞いた事がないわね。」

 

矢内 勇者「Ah い~つまでも♪い~つまでも~♪忘れはし~な~い~♪」

矢内「さよならも」

勇者「ごめんよ♪」

矢内「抱きしめていたいけ~ど♪ふ~り向かず行かせてくれ~♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

サチ「後ろで踊っているエルフ達も息ぴったりね。」

畑中「教師びんびん物語のオープニングそのままだな。」

 

タッタッタッタ、タッタッタッタッ、タッタッタッタン!

 

バッチリ決まりました!

 

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

 

エルフの人達の歓声が鳴り止みません!さすがは賢者さまです!

 

「お前らー!何をしているー!」

矢内「何してるって一曲歌っただけだろ。」

「お前ら!コイツらを何かってに牢屋から出してるんだ!」

「うちら、見張ってくれって言われたけど出すなって言われてないんですけど。」

「都合悪くなると大声で怒鳴るとかお前、マジでテンサゲだわ。」

「私はお前達の上官だぞ!お前って何だ!」

 

後から来たエルフの人と賢者さま達が何やら言い合いしています。

 

矢内「なぁ、スコール飲んでちょっとは落ち着けよ。」

 

賢者さまが後から来たエルフの人にスコールを差しだしました。

 

「何だこれ?私にくれるのか?飲み物か?はじめて見る…。」

矢内「それはな、スコールと言って俺達の世界で乾杯って意味をもつこの世で一番美味い飲み物なんだ。良いから飲んでみろ、気持ちがスッキリしてイライラしなくなるぞ。」

「よし、ありかだくいただこう。うん、美味いな!お前、人間なのに良い奴だな。よし、お前達、もうこの町を自由に行動して構わないぞ。」

矢内「そうか!話せば分かる奴で良かったよ!勇者、みんなはどうした?」

勇者「あっ、はい、みんなそこにいます。」

矢内「おう!お前ら!」

山田「矢内!お前はいったい何をやってるのだ!」

矢内「いやー、イベサーのみんながよーせっかくだから一曲歌ってくれって言うからよ。」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…。ハッハーww」

サチ「結局、賢者さんは遊んでいただけじゃない。」

矢内「まぁ、結果的にこの町で自由に行動できるようになったんだ。そろそろ宿をとって飯にしよう。」

サチ「はぁ、分かったわ。所で今日の献立は何かしら?」

山田「そんなのんびりしている場合か!国王を敵にまわしているんだぞ!」

矢内「今日の献立か…。そうだな、たまには豪華にいくか。ここで料理する。エリカ、お前はエルフ達みんなを呼んでやれ。今夜はパーティーだ。」

エリカ「分かった。」

ライアン「自分がみんなを呼んでくるッス!」

矢内「ああ、頼むぞ!勇者、サチ、お前らは俺の袋からスコールをありったけ出してくれ。畑中、料理を手伝ってくれ!」

畑中「料理って何をするんだ?」

矢内「ああ、みんなで摘まめる揚げ物にする。」

畑中「よし、任せろ!揚げ物は得意だ。矢内、お前は別の物を作れ。」

矢内「分かった。そうだな…。みんなで摘まめるスモーブローにするか。」

山田「矢内!私を無視するな!そんな事している場合じゃない!」

矢内「山田、さっき来たエルフも自由に行動していいって言ってただろうが。頭かてぇ奴だな。お前の頭はオリハルコンか!」

山田「いや、さっきのエルフはバカなだけだ。国王だと誤魔化せない!」

矢内「まぁ、任せておけ。」

山田「どうなっても私は知らんぞ!」

 

 

 

 

さぁ!気合い入れるか!俺達は張り切って料理に取りかかった。エルフ達が広場に集まって来た。結構な数が居るな…。さっきのイベサーのエルフ達が俺の所に近づいてきた。

 

「ヤナピッピ何してるの?」

矢内「ああ、パーティーの準備だ。今日は楽しんでってくれ。」

「ヤナピッピ、マジ、神対応。」

「ヤナピッピ、うちらも手伝うし。」

矢内「すまんな。助かる。そうだな、じゃあ盛り付けを頼む。」

「ヴィ。」

 

よし、こっちは何とかなりそうだ。畑中の方は串揚げか。なかなかやるな。

 

畑中「矢内!そっちはどうだ!」

矢内「順調だ!エルフ達が手伝ってくれている。」

 

そうこうしている内にエルフ達が集まって来た。

 

エリカ「賢者!みんな来たよ!」

ライアン「自分達も手伝うッス!」

矢内「料理を置くテーブルをたくさん用意してくれ。後、畑中の所を手伝ってやってくれ!」

山田「矢内、凄い人数だぞ!」

矢内「山田、突っ立ってないでお前も何か手伝え!馬鹿のエリカでも手伝ってるんだぞ!」

山田「貴様、言ったな!料理ぐらいで偉そうにするな!私にだってお前以上の料理ぐらいできるわ!」

矢内「ほぅ、じゃあ勝負するか?どっちの料理が美味いか。」

山田「良いだろう。私の手際を見せてやる!ライアン!畑中などの手伝いは良いからこっちを手伝ってくれ!」

ライアン「分かったッス!」

 

よし、これで3品は出来るな。じゃあ、俺はもう1品パスタを作るか。

よし、完成だ。

 

矢内「勇者、サチ、みんなにスコールをついでやってくれ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

集まったエルフのみんなにスコールが配られた。今日はアルコールは無いのでこれで勘弁してくれ。

 

矢内「畑中、乾杯の音頭を頼む。」

畑中「お前がやれよ!」

サチ「畑中、早くして。お腹すいてるのよ。」

畑中「あー!分かったよ!やればいいんだろ!」

矢内「早くしろ。」

畑中「うるさいわ!」

 

こういった面倒な事は畑中にやらせるに限る。

 

畑中「えーと。今日はわざわざ集まってくれてありがとう!ささやかだけど皆で摘まめる簡単な料理を用意した。みんな!今日は楽しんでいって欲しい!今日の俺達の出逢いに!」

勇者「スコール!」スコール!

 

楽しい宴会が始まった。俺の作ったスモーブローにナスとベーコンのアラビアータ、畑中の作った串揚げに唐揚げ。そして、山田が作った…。スープか?色がついていない…。一口飲んで見るか。

………。

 

矢内「味がしない…。」

山田「どうだ、矢内。私の作ったコンソメスープは?」

矢内「ただのお湯じゃねえか!!」

山田「バカ言え!ちゃんとコンソメスープのもとを奮発して半欠片入れたぞ!」

矢内「バカ野郎!!これだけの量で半欠片で味がつく訳ないだろうが!」

 

「このスープ味がしないんだけど…。」

ライアン「このスープは客人が作ったッス!」

「ただのお湯だし、ウケる。」

 

ほらみろ。不評じゃねえか。

 

矢内「あー。みんな!スープは作り直すからこっちに戻してくれ!」

山田「なっ!矢内!何を!」

矢内「もうスープは俺が作り直すからお前はあっち行ってろ。」

山田「何が不満だ!」

矢内「あっち行け、シッシッ!」

勇者「山田さーん!こっちですよー!」

矢内「ほら、さっさと行け!邪魔だ!」

山田「くそっ!覚えてろ!今日はたまたまエルフ達の口に合わなかっただけだからな!」

 

一生涯、俺が山田に料理の腕で負ける事は無いだろう。パスタで使ったトマトピューレを入れてミネストローネにしよう。野菜を煮込んで塩コショウとコンソメのもとで味を整えて後は待つだけだ。

その間、俺も料理を摘まみながらみんなの様子を見て見るか。

 

「ヤナピッピ!これ、メチャウマなんだけど!」

「ヤナピッピ、マジ神だわ!」

 

さっき一緒に踊ったイベサーのみんなか。

 

「人間、今日は感謝する!」

「お前、良い奴だったんだな!」

「こんな楽しい食事は始めてだ!」

 

俺達を捕まえたエルフの兵士達か。喜んでくれて何よりだ。

 

勇者「賢者さまー!」

矢内「おう!今行く!」

 

俺は勇者達の所に向かった。

 

矢内「お前ら、楽しんでるか?」

ライアン「賢者様、スゲーッス!全部美味いッス!」

エリカ「賢者の魔法の料理だよ、ライアン。美味いのは当たり前だよ!」

アリマ君「キー!」

畑中「ハッハー!魔法って!」

サチ「畑中、あなた達の世界じゃ当たり前の物かも知れないけど始めて見る人にとっては魔法に見える物なのよ。賢者さん、今日の料理は42点ね。」

 

何が42点だ!

 

畑中「42点って!ハッハーww!低いじゃねえか!ハッハーww」

サチ「50点満点中、42点よ。」

山田「悔しいが、確かに美味いな。」

矢内「山田、屑の畑中ですら料理が出来るのに…。お前ときたら…。」

畑中「ハッハーww!ただのお湯をだしてコンソメスープだもんな!ハッハーww」

山田「何が可笑しい!」

矢内「そうだ!山田、今日お前は何も役に立っていないからせめて余興でみんなの前で一曲歌え!」

山田「はぁ?何故私がそんな事を!」

矢内「ああ、そうか。料理の腕で俺に負け歌も音痴だとお前、俺に勝てる物がないもんな。済まなかったな!忘れてくれ。適当に俺の料理を楽しんでくれ!」

山田「待て!聞き捨てならんな。私がお前に勝てる物がないだと?良いだろう。矢内!私が一曲披露してやる。私の美声を聞くがよい!」

矢内「みんな!山田が今日の為に一曲歌ってくれるから注目してくれ!」

 

エルフ達が一斉に山田の方を向いた。

 

山田「なっ!貴様!」

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

矢内「ほら、どうした?みんなお前に期待してるぞ?」

勇者「山田さん、お願いします!」

 

勇者がさっき使っていたマイクを山田に差し出した。

 

矢内「山田、どうした?美声を聞かせてくれるのじゃないのか?」

山田「クッ!少し待ってろ!」

 

山田が自分の携帯を取りだし曲を選択しだした。

 

畑中「なあ矢内、山田さんってあんな人だったのか?」

矢内「ああ、山田の煽り耐性は0だ。」

畑中「ハッハー!」

矢内「まぁ、それだけじゃないがアイツも変わっていなくて良かったよ。」

サチ「美人だのになんか色々と残念な人なのね…。」

畑中「美人だのになんか勿体ないな…。」

 

俺達が話し込んでいると山田の準備が終わったみたいだ。

 

山田「よし、準備ができたぞ。」

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

 

山田の携帯からイントロが流れだした。

 

山田「さく~ら♪さく~ら♪いつまで待っても来ぬひとと~♪死んだ人とは同じこと~♪」

山田「さく~ら♪さく~ら♪は~な吹雪♪燃えて、燃やした肌より し~ろい~花~♪」

山田「浴びてわたしは 夜桜お~し~ち~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪弥生のは~なよ~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪はなふ~ぶ~き~♪」

 

勇者「山田さん、お歌上手ですねぇ。」

畑中「演歌ww」

サチ「こぶしがきいてるわね…。」

 

そうこうしている内に曲も終盤に入った。

 

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪さよなら あ~ん~た~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪はなふ~ぶ~き~♪」

 

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

 

エルフ達が全員山田を絶賛している。

気に入らないな。山田だぞ。

 

山田「どうだ、矢内!私の美声に恐れ入ったか!」

矢内「山田…。今は10月でもうすぐハロウィンだ。季節を考えろ。」

山田「この大歓声に対しての負け惜しみか?」

矢内「言ったな?次は俺の番だ!見とけ!」

 

サチ「いい年してつまらない事でムキになって…本当に残念な大人達ね…。」

 

 

 

矢内「よし!みんな!俺が取って置きのマジックを見せてやる!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

 

よし、みんなが俺に注目している。

 

山田「なっ!マジックだと!」

エリカ「なぁ、マジックって何?」

畑中「手品の事だ。」

勇者「賢者さまは何でもできるのですねぇ。」

 

さて、準備に入るか。

 

矢内「チャラララララーン♪チャラララララーララー♪」

 

畑中「ハッハーww!自分でメロディー歌いだしたww!」

 

矢内「今宵のよ~るに♪たの~しい~ひとと~きを~♪」

 

山田「勝手に変な歌詞をつけ始めた…。三十才過ぎているのに恥ずかしくないのか…。」

 

矢内「さて!今から、この種も仕掛けもない横縞のハンカチが合図と共に模様が変わります。エン…ト…トライ…。」

 

俺は目にも止まらぬ速さでハンカチの向きを変えた。

 

矢内「はい!ナント!先程の横縞のハンカチが縦じまに大変身!」

エリカ「スゲー!」

勇者「模様が変わりました!」

「スゴイ!何をしたんだ?模様が変わった!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

サチ「ハンカチの向きを変えただけじゃない…。エリカさんやゆうりんはともかく、エルフの人達もみんな騙されてる…。何これ?」

山田「ここのエルフ達はみんな頭が悪いんだ…。」

 

ボルテージは最高潮だ!

 

「貴様らー!何を騒いでいる!」

 

誰だ!俺は声のする方を振り向いた。

 

山田「不味い、国王だ…。」

国王「わしの食事をいつまでも持ってこないと思っていたら貴様ら、何をやってるか!」

矢内「みんなで楽しくやってるんだよ。お前、いい年した大人が自分の飯ぐらい自分で作れよ。」

国王「なっ!貴様ら!どうやって牢屋から出てきた!」

矢内「どうやってって普通に鍵を開けてもらって出たんだよ。別に入れって言われたけど出るなって言われてないからいいだろ、なぁ、みんな。」

「そうだー!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

「確かにそうだ。賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

山田「エルフの民を掌握している…。」

サチ「弱者を味方につけるのは賢者さんの基本スタイルよ…。いつもの事だわ。」

国王「貴様らー!人間は悪だ!騙されるな!引っ捕らえろ!」

勇者「わたし達は悪い人じゃありません!」

「そうだー!チビッコー!」

矢内「よし!こんな奴は無視してパーティーの再開だ!マジックの続きをやるぞ!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

「賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

矢内「はい!さて、先程の模様の変わったハンカチを元の横縞に戻したいと思います。エン…ト…トライ…。」

 

俺は再度、目にも止まらぬ速さでハンカチの向きを変えた。

 

矢内「はい!ハンカチの模様が元通り!」オー!

勇者「スゴイです!」

国王「…。ハンカチの向きを変えただけだろう。何がマジックだ!ワシでもできるわ!」

矢内「何カリカリしているだよ。スコール飲んで落ち着けよ。」

国王「悪党の差し出した飲物など飲めるか!」バシ!

 

俺の差し出したスコールが地面に叩き落とされた。

 

勇者「あわわわわ…大変です!」

エリカ「なんて事をするんだよ。賢者、すげぇ怒るぞ!」

サチ「今のは不味いわね…。みんな、巻き添えをくらわないように口を慎むのよ!特に山田、お願いね。」

山田「何故に私だけに言う…。」

矢内「…。勇者、斧を貸してくれ。」

勇者「は、はい。」

 

俺は斧を受け取った。

 

矢内「これより取って置きの切断マジックを行う!このマジックは国王が協力してくれる!」

国王「なっ!」

矢内「この転がっている樽の中に入れ!」

国王「何をする!」

 

俺は国王を樽の中に押し込んで頭だけ出して出られない様にした。

 

矢内「それでは皆さん!この種も仕掛けもないこの国王の入った樽を斧で一刀両断すると国王の首と体が2つに分かれるマジックをやります!」オー!タノシミダ!

国王「おい、仕掛けがあるのだろ?教えてくれ。」

矢内「ありません。死ね。」ボソ…

国王「なっ!わしを殺す気か!止めろ!助けてくれ!誰か!」

 

山田「国王の様子がおかしい…。」

サチ「賢者さん…。そんなマジック本当にできるのかしら?」

畑中「ハッハーww矢内にそんなマジックできる訳ないだろ!」

サチ「ああ、ここであの国王を殺すつもりなのね…。」

山田「お前達!何言ってる!」

 

山田達が話しこんでいる間に俺は斧を大きく振りかざした。

 

矢内「では!いきます!」

山田「矢内-!止めんか-!お前達!矢内を全力で止めろ!」

 

俺は山田達に取り押さえられ、マジックは中止になった。

 

国王「はぁはぁ、客人よ。助かった。」

山田「いえ、私こそ長い間もてなしていただいて感謝しています。皆のもの!中途半端になってしまったがパーティはこれでお開きにさせてもらう!」

 

山田の一声でエルフのみんなはそれぞれの家に帰って行った。国王も山田に言いくるめられて自分の屋敷に戻った。

 

矢内「俺達も片付けをして宿にもどるか。」

勇者「はい!賢者さま!」

山田「待たんか、矢内。」

矢内「何だ、俺はなにもしてないお前と違って忙しいんだ。」

山田「お前、国王を殺そうとしたな?」

矢内「ああ、それがどうした?」

山田「なっ!お前!国王だぞ!国の代表がいきなり死んだら残された民はどうなる!お前の下らない理由で…。」

サチ「山田、それ以上はダメよ!」

矢内「山田、後で話がある。俺達が泊まる宿に来てくれ…。」

ライアン「泊まる所は自分が用意しているッス。」

矢内「ライアン、気が利くな。助かる。」

ライアン「こっちッス。自分達の町は宿屋が無いので自分の家で我慢して欲しいッス。」

山田「待て、ライアン。私はライアンの家で世話になっている。こいつらも家に入れるのか?」

ライアン「えっ、そうッスよ。」

山田「あ、悪夢だ。」

 

俺達はライアンの家に案内された。

 

ライアン「ここッス。」

矢内「けっこういい家に住んでるな。」

勇者「おじゃまします。」

ライアン「狭いけどみんなくつろいでほしいッス。」

山田「矢内、お前達男共は一階だ、私達は2階で寝る。」

矢内「あー、分かった分かった。」

 

山田達、女共は2階に上がっていった。

 

矢内「ライアン、すまないな。急に押しかけて。」

ライアン「今日のパーティ、みんな喜んでいたッス。だから気にしないでほしいッス。」

畑中「矢内、俺はベッドを使うからお前は床で寝ろ。」

 

お前も床で寝ろよ。

 

ライアン「所で賢者様達はこれからどうするんッスか?」

矢内「ああ、俺達は明日から砂漠の国に向かう。」

畑中「頑張れよ、矢内。」

矢内「お前も来るんだよ!」

畑中「カー!俺を巻き込むな!」

ライアン「砂漠の国…。だったら自分が森の外まで案内するッス。」

矢内「何から何まですまないな。」

ライアン「客人からも教えてもらっているけど賢者様達の世界の事を色々教えてほしいッス。」

矢内「山田から?」

ライアン「そうッス。客人は凄く博識で自分達に色々な事を教えてくれるッス。客人の世界では嵐とか関ジャニ∞とかキスマイフットが大人気みたいッス。」

畑中「ハッハー!ジャニーズ!」

矢内「ああ、山田はジャニオタだからな。後、一昔前だと光ゲンジにTOKIOだな。重要な事だから覚えておくといい。」

ライアン「分かったッス。」

畑中「お前もジャニオタかよ!」

矢内「明日は早い、そろそろ寝よう。畑中、お前も床だ。ベッドは家主のライアンのだ。」

 

俺達は早々に寝ることにした。そして夜があけた。

 


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