ファンタルジニアの城に戻ってから2日後、俺達は砂漠の国を目指している。
矢内「山田、元の世界に帰れたのにわざわざ俺達についてこなくてよかったのだぞ。」
山田「何を言う。エルフの者達には世話になった恩がある。拐われたエルフの民を見つけるまではこっちにいる。」
勇者「山田さんもしばらくはご一緒なのですね。」
山田「ああ、矢内の娘。しばらく世話になる。」
勇者「あの…。山田さん、わたしの名前は一国の勇者です。」
山田「そうか、矢内の娘。」
エリカ「賢者ー!お腹すいたー!」
アリマ君「キー!」
矢内「飴ちゃんやるから大人しくしろ。」
エリカ「あたしブドウにしよう。」
アリマ君「キー!」
サチ「またスコールキャンディ…。」
畑中「何処で売ってるんだよ、ハッハーww」
勇者「賢者さま、二ついただきます。山田さんもどうぞ。」
山田「私はいい。」
勇者「えっ。」
山田「そんな顔をするな。私は自分で作ってきたべっこう飴がある。矢内の娘、気遣いは無用だ。」
畑中「ハッハーww!べっこう飴ww!」
サチ「貧乏くさいわね…。」
山田「馬鹿にするな、私は小さい頃からいつもおやつはべっこう飴を作って食べている。」
矢内「お前ら、山田の家は貧乏なんだ。あまり馬鹿にするなよ。」
畑中「いやいや、飴ちゃんぐらい買うだろ、貧乏でも。」
矢内「あのなあ、山田は昔、遊びに来た彼氏に昼飯にコオロギを素揚げして出すぐらい食うものに困っていたのだぞ。」
山田「なっ!何故お前がそれを知っている!」
矢内「高校の時にお前の元彼に相談されて泣きつかれたんだよ!それをお前の取り巻きのくそ女共が俺が別れさせたような言いかたしやがって!」
畑中「ハッハー!彼氏にコオロギ食わすってww!」
サチ「そんなのお昼ご飯に出されたら一瞬で恋も覚めるわね。」
山田「馬鹿者、コオロギは私の家では貴重な食材だ!」
エリカ「やっぱり賢者の友達は変な奴ばっかりだなぁ。」
矢内「まぁ山田の貧乏話は置いといてだ、お前ら水分補給はしっかり取るんだぞ。」
俺達は砂漠の道なき道を突き進む。
11月だというのに暑いな…。スコールを一口飲み、砂漠を歩いて行く。
「グルルルル…。」
ん?何の音だ?
「グルルルル…。」
勇者「賢者さま、何か聞こえてきます。」
矢内「サチが腹を空かせているだけだ。気にせず行くぞ!」
サチ「賢者さん違うわよ、人聞き悪い事を言わないで。」
「グルルルル…。」
後ろから聞こえる。
「グルルルル…。グルルルル…。」
声が近づいている。
山田「なんだ?」
矢内「後ろに何かいるな。嫌な予感がする。」
俺達は後ろを振り返った。
畑中「ああああああ!魔物がー!」
山田「ああああああ!来るな!食うなら矢内だけにしてくれ!」
矢内「に、逃げるぞ!」
俺達は全速力で逃げた。魔物が追ってくる。デカイみみずのような魔物だ。ファイナルファンタジーとかで出てくるサンドワームって奴だ。
「グルルルル…。キシャアアア!」
サンドワームの一匹が俺達を食おうと襲いかかる!俺は間一髪でサンドワームの突進を避けた。
俺達はサンドワームに囲まれてしまった。
エリカ「囲まれたよ。」
勇者「賢者さま…。」
矢内「不味いな…。」
俺達は互いを背中合わせにして足を止めた。するとサンドワーム達は砂漠の中に潜っていった。
サチ「潜られたわね…。」
畑中「ハッハーww!助かったぜ!」
山田「矢内!あんなのが居るなんて聞いていないぞ!」
矢内「俺に文句言うなよ。お前が勝手に着いてきたんだろうが。」
山田「ひどい目にあった。まぁいい、先に進むぞ。」
勇者「はい。」
山田と勇者達が歩きだすとまたサンドワームが砂漠から出てきて襲いかかって来た。
山田「ああああああ!まただぁ!」
矢内「クソっ!逃げるぞ!」
俺達は再度、全速力で逃げ出した!が、またしてもサンドワームに回りこまれる。
矢内「来るぞ!構えろ!」
エリカ「分かった!」
サチ「賢者さん、待って!みんな、足音を立てないで!じっとするのよ。」
勇者「えっ?」
サチ「説明は後でするわ。みんな、じっとしていて!」
俺達はサチの言われた通りに足音を立てずにじっとした。するとサンドワーム達は再度、砂漠の中に潜っていった。
勇者「また潜って行きました。」
矢内「そうか!」
サチ「ええ。」
エリカ「えっ?どういうこと?」
サチ「アイツ等は私達の足音に反応して襲ってくるのよ。」
畑中「そうか、じっとしていたら襲われないって事か!」
山田「よくこの状況でそれに気がついたな。」
サチ「ええ。貴女が再び歩き始めた時にまたあの魔物が現れたので確信したわ。」
矢内「しかし、このままじっとしていたら俺達が暑さで干からびてしまう。」
サチ「一匹ならなんとかなるけど…。」
勇者「三匹います…。」
三匹か…。俺も一匹ならなんとかなりそうだが…。
矢内「よし、アイツ等をやっつけるぞ!」
山田「やっつけるって、どうするのだ?」
矢内「ああ、作戦を言う。まずは俺と畑中と山田でそれぞれ三方向に走ってアイツらを分断させる。勇者、エリカ、サチ、アリマ君で2手に分かれてサンドワームを倒す。」
畑中「俺達を囮にするのか!」
矢内「ああ。」
山田「ああ、じゃない!何故私達が囮にならなければならん!」
矢内「ああ、危険な事だから大人である俺達がやるのだ。サチ、戦い方は任せる。先に山田と畑中を助けるんだ。一匹なら俺にでも倒せると思う。」
サチ「分かったわ。」
矢内「よし、作戦開始だ!」
畑中「矢内、ふざけるな!」
山田「そうだ!私はまだ死にたくない!」
矢内「腹をくくれ!このままじっとしていて暑さで干からびて死にたいのか!」
山田「分かった!やればいいのだろ!その代わり私を1番に助けろよ!」
サチ「分かったわよ。品がないわね…。」
矢内「よし、三秒後に走るぞ。」
畑中「待て、矢内。1、2の3か1、2、3か、どっちだ。」
矢内「1、2、3、go!で行く。」
畑中「1、2、3、go!だな。」
矢内「行くぞ!」
山田「1!」
矢内「2!」
畑中「3!」
矢内、山田、畑中「go!」
俺達は三方向に分かれて走り出した。
「キシャアアア!」
作戦どうりサンドワームが一匹ずつ分かれて襲いかかった!
山田「ああああああ!く、来るな!」
「キシャアアア!」
サンドワームの一匹が山田に襲いかかる!
サチ「残念ね、あなたは食事をすることなく私達に倒される運命よ。黒魔術『カーズ マリオネット!』」
サチの黒魔術でサンドワームの動きが止まった!
サチ「エリカさん、今よ!」
エリカ「分かった!キサラギ流、居合い一刀両断!」
「キシャアアア!」
エリカの高速の一振りでサンドワームを真っ二つにした。
畑中「ああああああ!追い付かれる!ちくしょう!矢内、俺が死んだら呪ってやるからな!」
「キシャアアア!」
サンドワームの一匹が畑中に襲いかかる!
勇者「アリマ君、もっと上に上がって下さい!」
アリマ君「キー!」
アリマ君が勇者の奴の両腕を掴んで空高く上がっている。
「キシャアアア!」
サンドワームは勇者に気づかずに畑中に襲いかかっている。
勇者「アリマ君、放して下さい!ここからあの化け物の頭を狙います!」
アリマ君「キー!」
勇者「いきますよー!えーい!」グシャ!
「キシャアアア!」
遥か上空から落下しながら勇者が手斧でサンドワームの頭を叩き潰した!
勇者「やりました!」スタ!
勇者が見事サンドワームを倒し綺麗に着地した。畑中の上に。
畑中「俺を踏み台にするなよ…。」
勇者「ご、ごめんなさい…。」
山田「た、助かった…。」
畑中「ハッハーww!助かったぜ!」
よし、後は俺だけだ。サンドワームが俺を追ってきている。残念だがここからはずっと俺のターンだ。
矢内「こっちだ!」
「キシャアアア!」
畑中「矢内ー!俺達は助かったから後は安心して死ねー!そしたら次は俺が主人公だ!ハッハーww!」
矢内「うるせー!」
「キシャアアア!」
サンドワームが俺に襲いかかる!
矢内「そんだけ動くと喉が乾くだろう?こいつは俺からのプレゼントだ!喰らえ!『ティロ フィナーレー!』」バシャ!
「キシャアアア!キシャアアア!」
サンドワームの口の中にラッカーシンナーをぶちまけた。サンドワームは口の中を低温火傷してのたうち回っている。
矢内「こいつで止めだ!必殺!ヤナイフレイム!」ゴオオォォォォォ!!
俺の魔法でサンドワームは火だるまになった。黒煙を上げながらのたうち回っていたが少しして動かなくなった。俺達の完全勝利だ!
勇者「賢者さま!」
矢内「勇者、良くやったな!」
勇者「はい、賢者さま!」
サチ「みんな無事でなによりだわ。」
アリマ君「キー!」
矢内「よし、先に進むぞ!」
畑中「待て!矢内、さっきのは何だよ!何で両手から火が出てきた!」
矢内「俺の魔法だよ。」
畑中「は?魔法?」
矢内「そうだよ。」
畑中「矢内、お前…。魔法に自分の名前ってww!ハッハー!必殺!ヤナイフレイム!ってww!ハッハーww!ダセー!名前のセンスww!ハッハー!腹痛えー!ハッハーww!」
矢内「新種の昆虫とかが発見された時だって発見者の名前が入っているだろ、何が可笑しい!」
畑中「ハッハーwwお前、魔法と昆虫を一緒にするなよww!ハッハー!腹痛えーww!」
一生懸命考えたんだぞ!山田が俺が燃やしたサンドワームの所で何かしている。
山田「や、矢内ww。この辺りをもう少し焼いてくれ、その、ククww必殺!ヤナイフレイム!でww。」
矢内「馬鹿にするな!」
山田「良いから焼いてくれ、その魔法のヤナイフレイムでww。」
矢内「焼いたらいいのだろ!必殺!ヤナイフレイム!」ゴオオォォォォォ!!
畑中「ハッハーww」
俺はもう一度、サンドワームの体に火をつけた。
山田「ククッwwヤナイフレイムはもういいぞ。丁度いい焼き加減だ。」
矢内「山田、何をしているんだ?」
山田「みみずの肉を切り分けている。」
サチ「まさか、それを食べるつもりなのかしら…。」
山田「みみずの肉は一般的に食する物だぞ。私達の世界のハンバーグレストランでは皆、みみずの肉を使っている。」
勇者「山田さんはいろんな事を知っているのですねぇ。」
そんな訳あるか!全国のファミレス店に土下座して謝れ!
畑中「矢内…。山田さんって知れば知るほど残念だな…。」
矢内「お前、知らなかったのか?」
畑中「ああ…。本当に残念だ。」
矢内「山田、そんなの泥臭くて食える訳ないだろ…。」
山田「何を言う。お前達もファミレスで食べてるだろう?」
畑中「食うわけ無いだろ、ハッハーww」
矢内「そんなのは都市伝説だ。大体みみずを食用にする位なら普通に牛肉を使う方がコストは安いんだ。店とかでみみずなんか使わない。さっさとそれを捨てて行くぞ。」
山田「聞き捨てならんな。みみずはただで手に入るのだぞ。さっき、味見をしたが普通のみみずより断然に美味かった。泥臭さが全く無いんだ。」
矢内「普通の人はみみずなんか食わない。さっさと捨てろ!」
山田「私は小さい頃から食べていたんだよ!」
矢内「お前だけだよ!」
サチ「いい年した大人が下らない事で言い争わないで。山田もそれを捨てて、そんなもの食べる人はどの世界にもいないわ。さぁ早く行きましょう!」
矢内「ああ…。そうだな。」
山田「待て!お前達、一度、味見をしてみろ。味は私が保証する。矢内の娘、お前からも言ってやれ。」
勇者「賢者さま、美味しかったですよ。食べてみて下さい。」
矢内「絶対に断る!行くぞ、日が暮れると厄介だ。」
俺達は喚く山田を相手にするのは止めて砂漠を歩き始めた。ってか勇者よ。何でも口に入れるのは止めろ。
日が暮れてきた。昼間の暑さとは打って変わって冷えてきた。今日はここまでにして明日に備えるか。
矢内「今日はここでテントをはって明日に備えよう。」
サチ「そうね。この辺りに結界をはっておくわ。」
畑中「結界?」
サチ「ええ、寝ている間に魔物とかに襲われないようにするのよ。黒魔術『ダークネスフィールド ディ タライ』」
畑中「なんだそりゃ?」
サチ「口で説明するより見た方が早いわ。今、テントを張る準備をしている賢者さんと山田を侵入者と見なして今から攻撃するわ。」
俺は山田に手伝ってもらいながらテントを張っている。
矢内「山田、そっちを抑えてくれ。」
山田「矢内、もっと簡単なテントは無かったのか?」
矢内「簡易の奴は小さいんだ。大きい奴の方がいい。」
山田「矢内、そっちは止まった…」ガン!
矢内「山田、何を倒れて…」ガン!
痛!何か頭上に落ちてきた!
山田「いきなり頭上にタライが落ちてきた。」ガン!
矢内「はぁ?」ガン!
まただ!痛え!しかもけっこう大きいタライだ。
山田「ま、まただ…。」
矢内「痛え…。何なんだよ!」
勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」
矢内「勇者、気をつけろ。頭上からタライが落ちてくる。」
何が起こっている?
畑中「さっちゃん、あんなタライじゃ侵入者は防げないぞ。」
サチ「変ね。威力は抑えているけど大体は一発で気絶する位の魔力なのに…。」
畑中「じゃあ何で矢内達は平気なんだ?」
サチ「あの二人、魔力が強いのかしら?最大威力でやるわ。」
クソっ!何処から攻撃してきてるんだ?
山田「矢内、あの娘と畑中が怪しい。」
矢内「サチか?」
山田「ああ、あの娘、何か魔法陣を書いていただろ?」
矢内「ああ、そう言えば結界を張るって言ってたな。アイツ、俺達を実験台にしているな。」
山田「捕まえるぞ。」ガン!
矢内「ああ!」ガン!
また、俺達の頭上にタライが落ちてきた!かなり大きいタライだ。めちゃくちゃ痛え!
矢内「サチ!お前の仕業か!クソっ!痛え!」ガン!
畑中「さっちゃん、バレたぞ。」
サチ「不味いわね…。魔力が尽きるまでタライを落とし続けて気絶させるしかないわね。」
山田「貴様!私に何の恨みが…。」ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
山田にタライが容赦なく落ちてきた。山田は耐えきれず気絶した。
矢内「山田!」ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
俺の頭上にも大量のタライが落ちてきた。俺は力尽きた。
サチ「危なかったわね…。まさかバレるとは思わなかったわ。畑中、賢者さん達が目を覚ましたら何事も無かった様に振る舞うのよ。」
畑中「素直に謝れよ。」
サチ「駄目よ。そんなことしたら私の夕食が無しになってしまうわ。」
畑中「自業自得じゃねぇか!ハッハーww!」
少しして、俺は目を覚ました。
勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」
矢内「ああ、酷い目にあった。もうすっかり夜になっているな。砂漠の夜は冷えるからすぐに火をおこすぞ。」
エリカ「分かった。」
アリマ君「キー!」
旅も慣れてきたせいか、たき火をつけるのも早い。
矢内「直ぐに飯にするから火にあたって体を暖めてるんだぞ。」
勇者「はい、賢者さま。」
矢内「畑中、少し手伝ってくれ。」
畑中「おう、何をすればいい?」
矢内「六人分のヒレカツを揚げてくれ。」
畑中「ハッハーww!任せろ!」
矢内「それはそうと畑中、サチの奴はどうした?」
畑中「ああ、山田さんに説教されてる。」
矢内「そうか、アイツにはいい薬になるだろう。よし、いい感じに仕上がった。できたぞ。畑中、ここに揚げたヒレカツを乗せてくれ。」
畑中「トルコライスか!」
矢内「ああ、明日も砂漠を歩くからスタミナをつけないといけないからな。」
ワンプレートにオムライス、紫蘇のパスタ、揚げ物、サラダが乗った矢内流トルコライスだ。
矢内「出来たぞ!勇者、山田を呼んでくれ。」
勇者「はい!山田さん、ご飯ですよー!」
山田「分かった。直ぐに行く。」
サチ「ご飯の時間ね。直ぐに行くわ。」
山田「待て!まだ話は終わっていない!座れ!」
サチ「散々謝ったじゃない…。もう良いでしょ…。」
山田「そういう態度が良くない。座れ!」
矢内「山田、もうそれぐらいで良いだろ。こっちに来い。折角の飯が冷めてしまう、みんな待っているんだ。」
山田「分かった。」
サチ「流石は賢者さん、助かったわ。」
みんなが集まった。
勇者「賢者さま、今日は凄いですねぇ。」
矢内「ああ、今日は矢内流トルコライスだ。」
エリカ「凄い、早く食べようよ!」
アリマ君「キー!」
サチ「あの、賢者さん?私の分は?」
矢内「さぁ、食べよう!」イタダキマス!
サチ「賢者さん?ちょっと、無視しないで!私の分は?」
矢内「ああ、今日と明日はお前の分は無いからな。」
サチ「え?そんな…。」
畑中「さっちゃん、ちゃんと謝らないからだぞ。ハッハーww!」
サチが絶望した顔をしている。
サチ「仕方ないわね。魔力が尽き欠けているけどあれをやるしかないわね。ハァァァァァ!」
サチが黒魔術でドアを出した。お前の考えはお見通しだ。俺はサチより先にドアを蹴りあげた。
サチ「あっ!賢者さん!最後の魔力でドアを出したのに!」
矢内「お前の考えはお見通しだ。少しは反省しろ!」
サチ「そんな…。あんまりよ…。」
勇者「美味しいですねぇ。」
エリカ「アリマ君、美味しいね。」
アリマ君「キー!」
畑中「この1つ目の魔物、何でも食うんだな。スプーンとかも器用に使っているな。」
矢内「ああ、アリマ君は優秀だぞ。頭も良いし力もあるし、ペットのエリカの面倒もちゃんと見てるしな。」
畑中「立場逆になってるじゃねぇか。」
矢内「しょうがないだろ。事実だから。」
山田「けっこう量があるな…。」
勇者「そうですね。」
サチ「残すのなら私が変わりに食べてあげるわ。」
山田「ゴスロリ娘、少しは反省しろ。それともまだ説教が足りないのか?」
サチ「お説教は懲り懲りよ…。」
サチの奴が俺達の食うトルコライスをガン見してくる。食いづらい。
エリカ「サチ、あたしのサラダだけならあげるけど…。」
矢内「エリカ、嫌いな野菜を残すな。」
エリカ「嫌いじゃないけど、サチが可哀想じゃんか。」
サチ「エリカさんは何処かの中二病の気違いと違って優しいわね。」
矢内「山田、サチの奴が反省してないから食事が終わったらまた説教してやってくれ。」
山田「ああ…。」
畑中「かー!さっちゃん、ちゃんと謝らないからだぞ。少しは反省しろよ。」
サチ「あっ!私は畑中に黒魔術の説明をするために仕方なくしたのよ。私は悪くないわ。だから畑中、そのご飯は私がいただくわ。」
この女は反省するって事をしないのか。
勇者「さっちん、必死ですねぇ…。」
山田「あー!鬱陶しい!私の食料を分けてやるから喚くな!これを食ってろ!」
山田はさっき倒したみみずの肉を差し出した。
サチ「ちょっと、これって…。」
勇者「さっちん、良かったですねぇ。」
サチ「良くないわよ!これって、さっきのみみずじゃない!」
山田「そうだ。ありがたく食え。」
矢内「ハハハ!良かったなぁ、サチ。残さず食えよ。」
サチ「そんな…。あんまりよ。酷すぎる…。これじゃ何のためにこんな面倒臭い旅をしているのか分からないわ…。」
それ食って反省しろ!
サチ「これを食べるの?」
矢内「早くたべろよ。」
サチが恐る恐るみみずを口に入れる。
サチ「………。あら?意外といけるわね。」
マジかよ…。
山田「味は私が保証すると言っただろ。」
食の事でお前に保証されても信用できるか。
サチ「うん、なかなか美味しいわね。」
エリカ「えー。」
サチ「あら?エリカさん、嘘だと思うなら食べてみる?そのご飯と交換しても良いわよ。」
エリカ「あたしはこっちがいい。」
サチ「しょうがないわね。ゆうりん?」
勇者「わたしはさっき食べたのでこっちがいいです。」
サチ「畑中、良かったら…。」
矢内「いい加減にしろ!それを食わして貰えるだけ山田に感謝しろ!」
山田「口に合わないならしょうがないな。回収しよう。返せ。」
サチ「食べるわよ。一度もらった物は私の物よ!食べれば良いのでしょ!」
矢内「だったら文句を言うな!食べたらテントに入って直ぐに寝るぞ。明日も砂漠を歩くんだ。」
勇者「はい、賢者さま。」
食事を終え、俺達はテントの中に入り、明日に備えて早々と寝る事にした。
畑中「さっちゃん!」
サチ「何かしら?畑中、貴方もお説教をするつもりかしら?」
畑中「ちゃんと矢内達に謝るんだ。」
サチ「分かったわ…。明日に謝るわ…。」
畑中「明日じゃ駄目だ。」
サチ「でも…。賢者さん、凄く怒ってるわ。」
畑中「矢内には、俺からも言っておくからちゃんと二人に謝るんだ。」
サチ「分かったわ…。山田には今から謝る…。賢者さんには明日に謝る…。」
畑中「それでいいか。絶対に謝るんだぞ。」
サチ「分かったわ…。」
それぞれテントの中に入り、明日に備えて眠りについた。
「た、助けてくれー!」
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!大きなタライが落ちた音と共に夜があけた。