わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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砂漠の国
愛の戦士 スコールマン 1


アレス「まさか?お前、俺達を騙したのか?」

矢内「違うな、間違っているぞアレス。俺達が騙したのではない。お前たちが勝手に騙されたのだ。」

サチ「子供でももう少しましな屁理屈を言うわよ…。」

アレス「クソー!テメエ、とんだペテン師野郎じゃねぇか!俺達を騙しやがって!」

矢内「俺達が悪いのではなく騙されたお前達が悪いのだ。」

リリー「酷い…。全部嘘だったの?」

矢内「遠くから来たって事は本当だ。」

畑中「ハッハーww!そこだけじゃねぇか!本当の事は!」

ガリアス「なっ!貴様!貴族ではなかったのか!平民がよくも馴れ馴れしくしてくれたな!」

山田「平民と言うより矢内は愚民だな。」

矢内「黙れ、貧乏人!」

エリカ「アイツら、何を怒ってるんだろう?」

 

お前が俺の存在をばらしたからこうなったんだよ。

 

矢内「まあいい。こんな奴等はほっといて今日の宿を探すか。」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「あっ、そうだ。サチ、今日の晩飯はエリカと1つ目からおかずを1つ取っていいぞ。」

サチ「ええ、そうさせてもらうわ。」

アリマ君「キー!キー!(何で!僕は関係ないよ!)」

矢内「いいか、1つ目。エリカの飼い主はお前だろ。連帯責任だ。」

アリマ君「キー…(あんまりだ、僕はバレないように空高く飛んでいたのに…。)」

マナ「ま、魔物が!」

エリカ「アリマ君はあたしの友達だぞ。魔物とか言うなよ!」

矢内「エリカ、そんな奴等相手にするな。さあ、行くか!」

アレス「行かせる訳ないだろ!」

 

やはり、戦わないといけないか…。

 

マナ「貴方達を見過ごす訳にはいきませんわ!」

アレス「ペテン師野郎!覚悟しろ!」

リリー「そうよ!人を騙すような奴は許せないわよ!」

矢内「アレス、どうしても戦うのか?」

アレス「なんだ、怖じ気づいたのかペテン師野郎!」

矢内「お前とリリーはいい奴だ。出来たら戦いたくない。」

アレス「な、何を言って…。」

マナ「アレス、賢者の口車に乗ってはいけません。賢者を倒し勇者の兜を手に入れるのです。」

アレス「そうだ、勇者の兜だ!お前を倒して手に入れてやるぜ!」

矢内「勇者の兜?ああ、あれな!この前、会社で鉄屑をスクラップに出す時に一緒に出した。」

勇者「えっ?」

サチ「はぁ?」

エリカ「えっ?」

山田「はぁ?捨てたのか?そんな大事な物を?」

畑中「ハッハーww!お前、捨てるなよww!」

リリー「えっ?今、なんて言ったの?」

マナ「捨てた?」

矢内「違うな、間違っているぞ!捨てたのではない!二束三文で売ったのだ!」

サチ「賢者さん…、馬鹿なの?」

アレス「お前!何考えているんだよ!そんな大事な物を!頭おかしいのか!」

マナ「なんということでしょう。そんな…。」

矢内「もういいか?じゃあ俺達は行くからな。」

アレス「だから行かせるか!お前、俺達を舐めてるだろ!」

 

アレス「みんな、戦うぞ!」

矢内「仕方ない。お前達、来るぞ!」

勇者「はい!」

エリカ「勇者、駄目だ。」

矢内「エリカ、どうした?」

エリカ「アイツらスゲー弱いから本気で戦ったら駄目だよ。」

アレス「馬鹿にするな!」

リリー「そうよ!こっちは魔法だって使えるのよ!」

ガリアス「アレス、私はこの事を国王に報告してくる。後は任せる。」

サチ「あら?貴族のお坊ちゃん。散々偉そうな態度をとっておいて逃げるのかしら?」

ガリアス「何?」

山田「どうせ貴族や王様とかの後ろ楯がないと何も出来ない小僧だ。相手にするな。」

ガリアス「私を侮辱するのか!貴様ら!絶対に許さん!」

 

ガリアスが剣を抜いた。

 

サチ「賢者さん、アイツは私にやらせてもらえるかしら。」

矢内「いや、俺がやる。アイツは徹底的に痛めつけないと駄目だからな。」

山田「待て、私にやらせろ。あの小僧は口の聞き方から叩き直してやる。」

エリカ「駄目だよ!アイツが1番弱いから戦ったら駄目だよ!」

ガリアス「貴様らー!この貴族の私を馬鹿にするなー!」

山田「馬鹿にしているのではない。大体貴族だからといっても他の国々ではなんの意味もない。それが分からないお前は世間知らずの大馬鹿者なだけだ。後、年上の者には敬語を使え。」

ガリアス「殺す!女、顔が良いからって図に乗るな!」

 

ガリアスが山田に向かって突進してきた。

 

山田「矢内、ゴスロリ娘、残念だったな。アイツは私の相手だ。」

サチ「賢者さん、山田は大丈夫なのかしら?」

矢内「馬鹿言うな。山田は合気道の達人だ。本気で怒らせたらエリカより強いぞ。」

畑中「矢内、そのわりには山田さんを怒らせてるじゃねぇか。」

矢内「俺は本気で怒らせる一歩手前でおちょくってるだけだ。」

 

ガリアスが山田に斬りかかる!

 

勇者「山田さんに何をするのですか、たー!」ガキン!

ガリアス「ぐわっ!」

 

勇者がガリアスの剣を手斧で受け止めガリアスごと吹き飛ばす!

 

勇者「山田さん、大丈夫ですか?」

山田「ああ、あんな小僧は私一人で大丈夫だったがな。しかし矢内の娘、心遣いは感謝する。」

 

そう言うと山田は吹き飛ばされて倒れたガリアスの腕を取り関節技を仕掛ける。

 

ガリアス「ぎゃぁぁ!痛い!放せ!」

山田「小僧、口の聞き方が分かっていないようだな。」

 

山田が掴んだガリアスの腕に力を入れる。ガリアスの腕がミシミシいっている。

 

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁ!放せ!放してください!」

山田「まあ、良いだろう。ふん!」ゴキ!

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

山田「小僧、お前のお望みどうり放してやったぞ。ただし、離したのはお前の腕の関節だがな。」

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁ!何故…私が…こんな目に…。」

マナ「そんな…。ガリアスが…。」

アレス「ガリアスがやられた!リリー、行くぞ!」

リリー「分かってる!風を司る聖霊…」

サチ「あら?そんな長ったらしい呪文をいちいち唱えていると隙だらけよ。黒魔術『お口チャック。』」

 

サチがリリーに近づき黒魔術を放つ。

 

リリー「ん!んー!」

サチ「大人しくしてなさい。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

リリー「んー!んー!(体が動けない!何よこれ?)」

マナ「なに今の?また呪文を唱えないで魔法を…。」

アレス「リリー!女!リリーに何をした!」

サチ「少し大人しくしてもらっただけよ。害はないわ。安心しなさい。」

アレス「リリー!この女を倒して直ぐに魔法を解いてやるからな。」

 

アレスが剣を抜きサチに斬りかかる。しかし、エリカがアレスの剣をレイピアで受け止めてアレスの剣を弾き飛ばす。

 

エリカ「サチ、大丈夫か?」

サチ「ええ。助かったわ。」

アレス「剣が!」

矢内「アレス、もう止めよう。」

アレス「まだだ!俺の真の力を見せてやる!この不思議なメダルを使ってな!」

 

アレスが小さな袋を取り出した!

 

アレス「集めたメダル10枚全部使ってやるぜ!召喚!メダルガチャ!」

 

アレスが叫ぶと巨大なガチャガチャが出てきた!何が起きるんだ?

 

アレス「俺はこのガチャガチャに不思議なメダルを1枚使う度に様々なアイテムを得て強くなる。それを今回は10枚も使う。お前達など直ぐにやっつけてやるぜ!」

勇者「賢者さま、あの人、何かするつもりです。」

矢内「ああ。みんな、気を抜くなよ!」

畑中「ハッハーww!大丈夫だ、何も起きないから。アレス!その袋の中よく見てみろ!」

アレス「何?あっ!」

畑中「ハッハーww!お前のメダルは砂漠を歩いてる時にパチスロのメダルにすり替えておいたんだよ!ハッハーww!お前がちょっと前に嬉しそうに説明してくれてたからな!ハッハーww!」

 

何!?畑中が役にたっただと?

 

アレス「返せよ!俺のメダル!一生懸命他人の家のタンスから集めたんだぞ!」

矢内「アレス…。お前…。ただのこそ泥じゃねぇか!」

アレス「ペテン師野郎のお前が言うな!返せよ俺のメダル!」

畑中「ハッハーww!返してやる、それ!取ってこい!」ポーイ

 

畑中が小さな袋を関所の外に遠投した。

 

サチ「貴方も関所の外に行ってらっしゃい。はぁぁぁぁ!」

リリー「んー!(体が浮いた!助けてー!)」

 

サチの黒魔術でリリーは関所の外に飛ばされた!

 

アレス「リリー!今、助けるぞ!お前ら!覚えてろ!」

 

アレスはリリーを助けるために関所の外に飛び出して行った。

 

マナ「そんな…。一瞬で…。アレス!そんな平民なんか助けないでよ!わたくしを一人にしないで!」

矢内「後は…。お前だけだな。覚悟しろよ。」

マナ「神に忠誠を誓ったわたくしに何かしてみなさい!貴方達に神の裁きを受ける事になりますわ!」

矢内「ほう?神の裁きだと?」

マナ「そうです!貴方達の行動に神々はお怒りの筈です!」

矢内「そうかそうか。じゃあ神々が俺達にお怒りかどうか直接聞いてみるか?」

マナ「へ?直接?」

矢内「いくぞ!ヤナウィス ヴィ ブリタニアが命じる!」

畑中「コードギアスかよww!三十過ぎの大人がやるなよww!ハッハーww!ダッセー!」

山田「いちいちダサいポーズをとるな。三十過ぎのいい年した大人が恥ずかしくないのか…。」

マナ「な、な、何をするのですか!」

矢内「開け!神々のゲートよ!」ギュイーン!

 

俺は自分の魔力で無理矢理ゼクスがいる神々の世界にゲートを開いた。

 

矢内「よし!上手くいった。」

マナ「あわわわわ…。そんな…。転位移動魔法を一瞬で…。あり得ない…。貴方は一体何者ですか!まさか魔王なのでは?」

矢内「魔王?馬鹿言え!俺は、みんなが大好き賢者様だ!来い!」

マナ「いやー!放してー!」

俺はマナの腕を掴みゼクスがいるゲートに向かった。

 

矢内「畑中!先に宿を探しておいてくれ!ちょっと行ってくる!」

 

俺はマナとゲートの中に入りゼクスのもとにたどり着いた。

 

ロキ「よう、矢内!」

矢内「おう、しばらくだな!」

マナ「ここは?いったい?」

ロキ「誰だ?その女?」

ゼクス「賢者様!無理矢理ゲートを開けないで下さい!それに勝手に知らない人を連れて来たら駄目ですよ!」

矢内「いやあ、まさか魔法でゲートを開けれるとはなぁ。」

ロキ「矢内、ちょうどいい。四人居るし麻雀しようぜ。」

矢内「遊びに来たんじゃねえよ!」

ロキ「なんだよ。せっかくお前の世界にある色々な遊び道具を買って来たのに。」

マナ「この人達はいったい?」

矢内「ああ、お前らの世界の神様のゼクスにロキだ。」

マナ「へ?神様?」

ゼクス「所で賢者様、なんでその人を連れて来たのですか?」

矢内「ああ、この女が俺達の行動にお前らがお怒りになってるとか言い出したから本当かどうか確かめる為に連れて来たんだよ。」

ゼクス「はぁ。」

矢内「で、どうなんだ?お前ら、俺達に怒ってるのか?」

マナ(なんでさっきから神様にため口なのかしら?)

ゼクス「別に怒ってませんですけど…。」

ロキ「矢内、そんな事よりそこの女も入れてこの人生ゲームやろうぜ。」

矢内「だから遊びに来たんじゃねえよ!俺は直ぐに戻らないといけないんだよ。」

ロキ「お前たまには遊びに付き合えよ!そうだ、あの醜男を呼べよ。アイツは毎日暇だろう。」

ゼクス「ロキ様!勝手にこっちに人を連れて来ようとしないで下さい!」

ロキ「良いじゃねぇか。堅いこと言ってるんじゃねぇよ。」

矢内「畑中も今は砂漠の国に居るから今は駄目だ。問題が解決したら遊んでやるよ。それまでその女を置いていくから三人だったら色々遊べるだろ。じゃあ俺は行くからな!」

マナ「えっ?置いていく?」

ゼクス「賢者様、砂漠の国にはゲートの設置は出来てます。」

矢内「ああ、助かる。」

ゼクス「次からはちゃんとゲートストーンを使って来て下さい。新しく設置したゲートストーンの色はエルフの森前がうぐいす色で砂漠の国が翡翠色です。」

矢内「また緑だろ!いい加減にしろ!分かりやすい赤や青にしろ!」

ゼクス「賢者様、緑色は目に良いのです。」

 

3回目だろ、そのやりとり。

 

矢内「じゃあ、俺は戻るからな。」

 

俺はゲートストーンを使った。

 

ロキ「矢内、さっさと終わらせてまた来いよ~!」

矢内「おう!あっゼクス!頼んでいたあれどうなった?」

ゼクス「バッチリ出来ましたよ!愛の戦士 スコールマン変身スーツです。」

矢内「おお!すげぇ!」

ゼクス「変身の仕方は簡単です。賢者様が魔力を開放してスコールを一口飲みラブ イン スコール!と叫ぶと変身出来ますよ。」

矢内「ゼクス、すまないな!行ってくる!」

 

俺は開いたゲートを通り砂漠の国に戻った。

 

マナ「そんな…。本当に置いて行かれた…。わたくしはどうしたら…。」

ロキ「女、取りあえずこの人生ゲームからしようぜ!ゼクス、お前銀行役と平行でやれよ。」

 

 

 

 

勇者「あっ賢者さま!」

矢内「おう!戻ったぞ。」

畑中「矢内、あの女はどうした?」

矢内「ああ、ロキの遊び相手に置いてきた。」

畑中「ハッハーww!置いてきたってww!あの女が1番災難だな。」

エリカ「賢者ー!そんなことよりお腹空いたよ!」

矢内「ああ、飯にするか。所で宿は取れたのか?」

サチ「賢者さん、それが…。この辺りは宿はなかったのよ。それでこの先の貧民街に空き家が有ったからそこを使わせてもらっているわ。」

矢内「いや、俺はお尋ね者になってるから好都合だ。そこでこれからどうするかを決めよう。」

山田「そうだな。」

 

俺達は直ぐ様城下町の外れの貧民街に足を運んだ。

 

「あら?そこのお兄さん?パフパフしていかない?」

山田「娼婦か…。悪いが我々は急いでいるのでな。」

矢内「待て山田!いくらだ?」

「あら?お兄さんしていくの?」

矢内「ああ。いくらだ?」

「お兄さん、旅のひと?じゃあ、サービスでVIPコース金貨三枚で良いわよ。」

山田「馬鹿者!矢内!そんな事をしている場合か!」

矢内「いいか?山田、パフパフはかつて伝説の勇者達が追い求めてきたロマンだ!俺はしていくぞ!」

山田「矢内、まずお前は勇者では無いだろ。何がロマンだ。諦めろ、行くぞ!」

矢内「馬鹿野郎!かつての勇者ロトもローレシアの王子様も英雄メルビンもレイドック城の王子もグランバニア王も天空の勇者達も受けてきた一大イベントなんだぞ!それに滅ぼされユグノアの王子様なんかは世界中でパフパフを受けたのだぞ!畑中、お前も行くよな!」

畑中「矢内、ここで金貨三枚も出して騙される位なら俺達の世界で激安ソープでも行ってるほうがましだぞ。」

 

どいつもこいつもロマンの無い奴だ。

 

サチ「賢者さん、どうしても行きたいなら明日、一人で行ったら良いじゃない。早く空き家に行きましょう。みんなお腹空いてるのよ。」

矢内「あー!分かったよ!明日にするよ!娘さん、コイツらがうるさいので明日していくよ。所で何時からやってるんだ?」

「うーん、お昼頃からかな?」

矢内「分かった!昼前には行くよ。」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…。どんだけパフパフを受けたいんだよ。ハッハーww!」

 

そう言って俺は凄十を一気飲みして貧民街の奥の空き家に向かった。

 

山田「精力剤を飲むほどの事か、情けない。」

矢内「馬鹿野郎!勇者が受けた一大イベントだぞ!気合いを入れないでどうするか!」

サチ「はぁ…貴方は勇者じゃなくて賢者じゃない…。」

貧民街の奥の空き家にたどり着いた。ここなら人目につくことが無いだろう。

 

矢内「俺は飯の準備に取りかかる。」

サチ「分かったわ。」

 

野菜をふんだんに使ったシチューにしよう。たまには野菜を食べさせないとな。後は…。そうだ、シチューができる前にあれを作ろう。

 

勇者「賢者さま。」

矢内「勇者、もう少しで出来るから待ってろ。」

勇者「あの、沢山の人達が来てます。」

矢内「まさか、城の兵士とかか?」

勇者「違います。でも、どうしたら…。ちょっと来て下さい。」

矢内「ああ、分かった。」

 

俺はシチューを炊いていた火を弱火にして使っている小屋を出た。沢山の人がこっちの様子を伺っている。子供も沢山いる。みんな痩せこけてみすぼらしい格好だ。

 

サチ「賢者さん、どうやら貧民街の人達だわ。」

エリカ「みんな、こっちを見てるよ。どうしよう?」

 

俺達が様子を伺っていると一人の女の子が近づいて来た。

 

「あなたたち誰?」

矢内「俺達は旅の途中でな。宿がこの近くに無かったのでこの空き家を勝手に使わせてもらっているんだ。」

「何してるの?」

矢内「食事の準備をしてた所だ。」

「ご飯?きょうはご飯の日じゃないよ?」

エリカ「ご飯の日?」

「うん、わたしたちは明日がご飯の日なんだよ。」

サチ「どういう事かしら?」

 

毎日食べられないのか?

 

「すみません!ほら、こっちに来なさい!」

 

女の人が近づいて子供を連れ戻す。

 

矢内「待ってくれ!みんなの事を詳しく聞かせてくれ!」

 

俺達は集まって来ている人達に話を聞いた。聞くとここの貧民街の人達は貴族達の為に毎日ろくな食べ物も与えられずに大人子供関係なしに働かされているということだ。そこに俺が作ろうとしているシチューの匂いにつられて来たのか。

 

矢内「こんな事あってたまるか…。」

勇者「賢者さま…。」

矢内「勇者、サチ、エリカ、アリマ君、今日の飯は遅くなるがいいか?」

畑中「矢内、お前?この人数だぞ!まさか?」

矢内「ああ、そのまさかだ。」

山田「矢内、気持ちは分かるが止めておけ。根本的な解決にならない。」

矢内「分かってるよ!でも見捨てるなんて出来るか!食材ならまたゲートを通って俺達の世界で買えばいい。はした金でみんな助かるんだ!」

畑中「かー、矢内、お前って奴は…。分かったよ、お前は言い出したら聞かねえからな。勇者ちゃん達もいいか?」

サチ「分かったわ。賢者さん、袋の中の缶詰め全部開けるわよ。」

矢内「ああ、頼む。」

山田「矢内、分かってるのか?今日だけじゃないんだぞ!」

矢内「ああ、明日も明後日もだ分かってる。それに俺がこの国でするべき事が決まった。」

サチ「私は賢者さんに従うわ。」

勇者「賢者さま、わたし達は何をしたらいいですか?」

矢内「まずはここの人達をお腹いっぱいにしてやろう。」

エリカ「分かった!お腹空いてると力でないもんな。」

矢内「みんな!一列に並んでくれ!ご飯の時間だ!」

 

俺の一言で貧民街の人達がざわつきだした。すると先程の女の子が近づいて来た。

 

「ご飯?」

矢内「ああ、みんなのご飯だ!」

畑中「矢内!出来たシチューを持ってきたぞ!」

矢内「畑中、気が利くな!ほら、出来立てのシチューだ。冷めないうちに食べるんだ。」

 

俺は発泡スチロールのお椀にシチューを入れて女の子に手渡した。

 

「食べていいの?」

矢内「ああ、食べるんだ。」

 

女の子がシチューを一口食べた。

 

「お、おいしい…。ありがとう…。」

 

泣きながら女の子がお礼を言った。

 

矢内「俺は急いでシチューを作る。後は任せる。みんなに配ってやってくれ!」

山田「皆!腹が減っている者は並べ!」

 

先程のやりとりを見た人達が一斉に並びだした。

 

山田「お前達!押さなくていい!ちゃんと全員分を用意する!」

勇者「食べて下さい。」

「ありがとう…。ありがとう…。」

エリカ「いっぱい食べなよ。」

「ありがとうございます…。」

 

辛かったんだな…。みんなが泣きながら食べている…。多目に作って良かった。

 

畑中「矢内、全員分行き渡ったぞ!」

矢内「ああ…。みんな、美味いか?」

「おいしい…。ありがとう…。」

矢内「じゃあ、明日も食べたいか?」

「えっ?」

 

俺の一言で人びとが動揺している。構わず俺は話を続ける。

 

矢内「明日もみんなのご飯を用意する!だから俺達がここに居る事は誰にも内緒にしてくれるか?」

「はい!」

「誰にも言いません!」

「約束します!」

 

上手くいった。ここだと誰かがリークしない限り見つからないはずだ。

 

「あの…。よろしければ貴方のお名前を教えて頂けますか?」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

サチ「毎回それを言うのね…。」

畑中「ハッハーww!」

「賢者様!ありがとうございます!」

「賢者様!ありがとう!」

「けんじゃさま!ありがとう!」

 

人びとは皆、俺に礼を言って帰って行った。

皆が帰った後、俺達は遅めの夕食をとりながら今後の事を話し合う。

 

矢内「俺は明日の朝から一度帰って食材を買ってくる。」

山田「お尋ね者は矢内だけだから私達は城に行き情報を集めよう。」

矢内「山田、気を付けろよ。」

山田「お前と違って権力者に喧嘩を売るバカではない。」

矢内「お前ら、明日は山田と一緒に行動するんだぞ。」

エリカ「分かった!山田、よろしくな!」

勇者「山田さん、よろしくお願いします。」

畑中「山田さん、気を付けろよ!」

山田「お前も来い。何を言い出す。」

矢内「じゃあ、今日はもう寝て明日の夜にまた集まろう。」

山田「矢内、昼間は空くはずだろう。」

矢内「どうしても行かないといけないところがある。だから帰りは夜になる。」

畑中「矢内、まだ諦めてなかったのかよ!ハッハーww!」

矢内「馬鹿野郎!パフパフは勇者のロマンだ!」

畑中「ハッハーww!お前は勇者じゃなくて賢者じゃねえか!ハッハーww!」

山田「はぁ…。情けない男だ…。」

 

そうして俺達は明日に備えて各々眠りについた。そして、夜が明けた。


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