わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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決戦前日 2

わたし達はこの国のヒーローである虎のおっちゃんを捜しています。さっちんの黒魔術で調べた所、どうやらヒーローは教会の方に居てるみたいです。あそこに人が居ますから聞いて見ましょう。

 

サチ「兵士が至る所にいるわね…。みんな見つからないようにしてね。」

エリカ「分かった。」

サチ「あら?ゆうりんは?」

エリカ「あっ!あそこの兵士と居る!」

サチ「ちょっと!」

 

勇者「あの…。わたし達は虎のおっちゃんを捜しているのですが、どこにいるか知っていますか?」

「虎のおっちゃん?ああ!お嬢ちゃんも虎のおっちゃんに助けてもらったんだな。でもな、虎のおっちゃんが何処に居るかなんて誰にも知らないのさ。何せ虎のおっちゃんは砂漠の国の伝説のヒーローだからな。」

勇者「そうですか…。」

サチ「ちょっと!ゆうりん!こっち来なさい!」

 

わたしは直ぐ様さっちんに連れて行かれました。

 

「お嬢ちゃん達!俺はいいが貴族出身の兵士には近づくなよ!」

サチ「?貴方、賢者一向の捜索をしているのでしょ?良いのかしら?私達を行かせて。」

「ああ、夜になったら分かるさ。またな!」

サチ「???まあいいわ…。」

 

私達は教会に向かいました。

 

勇者「虎のおっちゃんの居場所、誰も知らないのでしょうか?」

サチ「ちょっと!ダメでしょ!勝手な事をしちゃ!」

勇者「でも賢者様は町の事は地元の人に聞くのが一番だっていつも言っていました。」

サチ「だからって兵士に聞いたらダメでしょ!私達一度捕まってるのよ!」

勇者「ご免なさい…。」

サチ「まあ、何でか分からないけど大事に至らなくて良かったわ。あの人、わざと逃がしてくれたみたいだし…。所でエリカさんは?」

勇者「あっ…。あそこです。」

 

エリカにゃんが兵士の人に話しかけようとしています。

 

エリカ「なぁ、虎のおっちゃん何処に居るか知ってる?」

「あっ!お前は賢者の一味!」

サチ「ちょっと!さっき見つからないようにって言ったばかりでしょ!」

「引っ捕らえてやる!覚悟しろ!」

エリカ「えっ?なんで?」

サチ「エリカさん!早く逃げて!」

エリカ「えっ?分かった!」

 

兵士の人がエリカにゃんを追いかけてきました!

 

アリマ君「キー!」ボカ!

「ぐわっ!」

 

アリマ君が兵士の人を殴って気絶させました。エリカにゃんがその隙にこっちにきました。

 

サチ「アリマ君、ありがとう。助かったわ。」

アリマ君「キー!」

サチ「みんな、もう戻りましょう…。」

勇者「えっ?」

エリカ「なんで?今、捜しだしたばっかりじゃんか。」

サチ「あなたたちが好き勝手に動くから捜索出来ないのよ!帰るわよ!」

 

わたし達は虎のおっちゃんは見つける事が出来ないまま帰ることになりました。

 

 

 

その頃…。

 

リリー「なんで、私達が兵士に追われるのよ…。」

アレス「まだ追ってくる…。」

 

二人は重罪人の扱いを受けて兵士に追われている。

 

アレス「リリー、貧民街に逃げ込もう。あそこなら道が入り組んでいるから直ぐには見つからない。」

リリー「待って!前に大臣が居る!なんで居るのよ!」

 

何故か貧民街から出てきた大臣に鉢合わせた。

 

大臣「そのまま貧民街の奥に行け。夜明けになったら国を抜けるんだ。」

リリー「えっ?」

大臣「返事をせずにそのまま走るんだ。いいな、こんな事で死んではならぬ。」

アレス「リリー、言う通りにするぞ。」

リリー「え、ええ。」

 

アレスとリリーは貧民街の奥に駆け抜けた。

 

「何処に逃げた!?」

大臣「お前達、何があった?」

「あっ、大臣殿!勇者アレスを追っていましてこの辺りに逃げたはずですが…。」

大臣「勇者…。それより異世界の賢者が関所の方に現れたと報告があった。そなたたちも直ぐ様向かわれよ!」

「しかし…。勇者アレスは重罪人、ここで逃しては…。」

大臣「今は賢者を捕らえるのが最重要事項だ。直ぐに向かわれよ!」

「ハッ!失礼しました!直ぐ様、賢者を捕らえに向かいます。」

大臣「頼むぞ!」

 

兵士達は関所の方に走り去った。

 

アレス「助かったのか?」

リリー「なんで私達を助けたのかな?」

 

大臣は隠れているアレス達の方に近づき一言呟いた。

 

大臣「明け方に関所の見張りを退かしておく。その間に国を抜けられよ。異世界の賢者にも会うことがあれば伝えてくれ。私にはこれぐらいの事しか出来なくてすまない。勇者達よ、許してくれ…。」

 

大臣は立ち去った。

 

リリー「ど、どう言うこと?」

アレス「取りあえず、奥に隠れよう。腹減ったな…。」

リリー「それはつまらないことにお金を使ったあんたのせいじゃない…。」

 

食材を買いに戻っていたので貧民街に着いたのは夜になった。みんなの元に急いで戻る。

 

「あっ!けんじゃさま!どこに行ってたの?」

 

貧民街の女の子が笑顔で声をかけてきた。始めに出会った時より大分元気になった。

 

矢内「買い出しに行っててな。直ぐにご飯の時間にしよう。」

「今日は虎のおっちゃんがご飯を持ってきてくれたから大丈夫だよ。けんじゃさま!いつもありがとう!」

矢内「そ、そうか。その虎のおっちゃんは何処に居るんだ?」

「ん?知らない。みんなのおうちにパンが置いてくれてたからきっと虎のおっちゃんが持ってきてくれたんだよ。」

 

虎のおっちゃんか。何者なんだ?勇者達と合流しよう。俺はみんなが居る奥の空き家に向かった。

 

矢内「みんな、遅くなった!」

山田「矢内、客が大勢来ている。どういうつもりだ?全員兵士だ。隣の空き家に居る。」

 

大勢?どう言うことだ?

 

「賢者様!戻られたか!あれから俺達が同じ境遇の者に声をかけて回ったんだ。俺達28名賢者様に忠誠を誓います!」

矢内「俺達は仲間だ。そう言うのは止めろと言っただろうが…。」

畑中「矢内、コイツ等全員仲間に引き入れたのか?」

勇者「凄いです!」

エリカ「すげぇ!」

矢内「畑中、お湯を沸かしてくれ。沢山だ。飯にしよう。」

畑中「ああ。お湯を沸かすって、まさかカップラーメンじゃないだろうな?」

矢内「すまん。今日はカップラーメンで我慢してくれ。」

サチ「賢者さん、今日は買い出しにも行ったわよね?どう言うことかしら?」

矢内「いいか?明日、俺達が勝ったら次の日は国民みんなでパーティーだろうが。だから今日は食材をケチりたいんだよ。」

山田「矢内、前哨戦だ。肉を焼こう。」

サチ「山田、貴女産まれて初めて良いこと言ったわね。決戦前よ!お肉にしましょう!」

矢内「話を聞いてたか?食材はケチりたいんだよ。これだから女子力0の女は…」

山田「これがある。」

畑中「まさか…。」

 

山田がサンドワームの肉を取り出した。

 

山田「誰か!網を持ってきてくれ!」

「は、はい!」

 

兵士の一人が金網を取りに行った。俺はミミズなんか食わんぞ!

 

畑中「矢内、今日はカップラーメンだけで我慢しよう…。」

矢内「ああ…。」

 

お湯が沸いてカップラーメンに注ぐ。今のうちに作戦を決めよう。

 

矢内「みんな、聞いてくれ。明日の作戦を立てる。」

 

みんなが俺に注目する。

 

矢内「明日、まずは俺達が城に侵入する。」

山田「侵入する?」

矢内「ああ。ここに居る兵士の鎧を着てバレないように中に入る。」

畑中「門番はどうする?」

「あっ、俺が明日は門番だから素通り出来ます。」

矢内「中にはすんなり入れる手配になっている。」

山田「この中に牢屋番の者は居るか?」

「牢屋番は位の高い貴族の兵士です。我々は近付けません。」

山田「そうか。牢屋番を倒さないとエルフの娘達を助ける事が出来ないのだな。」

矢内「勇者、明日は山田と一緒に行動しろ。」

勇者「分かりました。山田さんとご一緒なのですね。嬉しいです。」

矢内「後、一人お前達の中で一緒に行ってくれ。」

「じゃあ、俺が行く。」

矢内「ああ、すまんな。戦わすはめになってしまった。」

「俺達はあんたにかけている。戦えて光栄だ。」

山田「頼もしいな、よろしく頼む。」

勇者「よろしくお願いします。」

「俺も美人と共に行動出来て嬉しいぜ。あっ、お嬢ちゃん!虎のおっちゃんには会えたか?」

サチ「貴方、あの時の…。夜になったら分かるってそう言うことだったのね。」

「やっぱり会えなかったんだな。」

勇者「はい…。」

エリカ「こんだけ味方が居るなら虎のおっちゃんは居なくても大丈夫だよ!」

サチ「そうね。私の苦労は何だったのかしら…。」

矢内「何を言ってる。明日も苦労してもらうぞ。サチとエリカは俺と一緒に国王を倒しに行く。」

サチ「ええ。」

エリカ「分かった!」

矢内「俺達に鎧を渡す者はここで待機だ。貧民街のみんなを守って欲しい。」

「分かりました。」

矢内「残りの者は臨機応変に動いてくれ!」

「ハッ!」

矢内「それでは作戦会議は終了だ。お前達の家族も呼んでこい!飯にしよう!」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「カップラーメンをみんなに配ってくれ。」

エリカ「分かった!」

「なんだこれは?」

矢内「ああ、これにお湯を入れて3分待ったら出来上がりだ。こんな感じだ。」

 

俺は出来たカップラーメンを見せて食べて見せた。

 

「おお!なんだこれは!待つだけで出来るなんて!魔法だ!」

 

人々が皆、歓声をあげる。

 

サチ「初めは絶対に驚くわよね…。」

アリマ君「キー。」

山田「これぐらいで良いだろう。肉が焼けたぞ。」

勇者「わたし、皆さんにお配りします。」

 

ミミズの肉が配られていく。肉が焼けた香ばしい匂いに釣られて貧民街の人達も集まってきた。

 

エリカ「みんなも食べなよ。」

 

エリカが貧民街の人達にも肉を配る。何の肉かは黙っていよう。

 

「ちょ!俺達の取り分が無くなるだろ!貧民街の奴等にあげるなよ!」

「なんだよ!兵士のお前達は毎日なんか食べれてるだろうが!帰れよ!兵士なんか来るな!賢者様達はお前達なんかには引き渡さないぞ!」

「何だと!俺達は賢者様に忠誠を誓ったんだ!俺達が先に食うんだ!」

山田「肉はたくさんある!ケンカするな!それにお前達、貧民街の人達も同じ砂漠の国の人間だ!それを差別するような発言は関心せんな。それではお前達が嫌いな貴族共と同じだぞ!」

「う…。悪かったよ…。俺達だって肉なんて初めて食べるんで興奮してたんだよ。お前達、悪かったな。」

「俺達もてっきりあんた等が賢者様達を捕まえに来たと思って…。すまなかった。」

エリカ「もう、良いじゃん。みんなで食べようよ。」

勇者「そうです!ご飯はみんなで食べるのが一番美味しいのですよ!」

 

みんなで取り囲んで食事が始まった。兵士の連中も貧民街の人々も楽しそうだ。

 

山田「ゴスロリ娘、肉を焼くのを代わってくれ。」

サチ「?分かったわ。」

 

山田が近付いてきた。

 

山田「矢内、そのままの状態で聞いてくれ。あの二人がこっちの様子を伺っている。」

矢内「あの二人?」

山田「ああ、勇者のアレスと魔法使いのリリーだ。」

矢内「そうか。山田、お前からカップラーメンを渡してやってくれるか?俺が渡すと意地をはって受け取らないかも知れないからな。頼む。」

山田「良いのか?お前に敵対してるのだぞ?」

矢内「ああ、アイツ等は良い奴だ。俺がそうしたいんだ。頼む。」

山田「フッ…。良いだろう。後で寝首を刈られても知らんぞ?」

矢内「そうなったらその時だ。頼む。」

 

 

 

アレス「アイツ等、なんか食ってる…。」

リリー「お腹空いたね…。」

アレス「兵士も居るな…。」

リリー「ねぇ、アレス。賢者って本当に悪い奴なのかなぁ。」

アレス「なに言ってるんだよ…。アイツは俺達を騙したんだぞ。」

リリー「でも、貧民街の人達も兵士達も楽しそう…。」

山田「なら、お前達も一緒に楽しめば良い。矢内には内緒で持ってきた。食べろ。」

リリー「あっ…。美人のお姉さん…。いつから?」

山田「お前達が後ろで見ていた時から気づいていた。」

アレス「なんでだよ!俺達は敵だろうが!なんで…。」

山田「少なくとも私はお前達が敵だとは思っていない。その様子だとろくに食事も出来ていないのだろう。」

リリー「でも…。」

勇者「早く食べないと麺が伸びて美味しくなくなりますよ。良かったらこのお肉も焼きたてなので食べてください。」

アレス「なんで…。俺達にやさしくするんだよ…。ちくしょう…。」

勇者「だってあなた達がいたからわたし達は砂漠の国にたどり着けました。だから困った時はお互い様です。」

山田「そう言うことだ。気にせずに食え。」

リリー「ありがとう…。食べよう、アレス…。」

アレス「ああ…。すまねえ…。」

 

お二人は涙を流しながらカップラーメンを食べ始めました。

 

アレス「うめぇ…。ちくしょう…。」

リリー「おいしい…。」

アレス「ちくしょう…。なんで…。」ポロポロ

リリー「わだじだち…なにもわるいことしでないのに…。」ポロポロ

山田「辛かったな。訳も分からず犯罪者に仕立て上げられて…。今は精一杯泣けばいい。矢内の娘、行くぞ。」

勇者「はい。」

 

わたしは山田さんとみんなの居る所に戻る事にしました。

色んな事を知っていてカッコよくてとても優しい山田さんがわたしは大好きです。

 

リリー「お姉さん…。ありがとう…。」ポロポロ

アレス「すまねえ…。この恩はいつか絶対に返す…。」ポロポロ

 

 

 

矢内「畑中、少しいいか?」

畑中「なんだ、改まって。」

 

人に見付からないようにみんなが居る所から少し離れて話をすることにした。

 

畑中「誰かに聞かれたら不味いのか?」

矢内「ああ、みんなの士気を下げてしまうからな。お前に頼みがある。」

畑中「だからなんだ?」

矢内「ああ、先にこれを渡しておく。」

 

俺はゲートストーンを畑中に渡した。

 

畑中「…。どういうつもりだ。」

矢内「ああ、今回勝てる見込みは正直五分五分だと思う。戦いが長引いたらまず勝てない。」

畑中「それで?」

矢内「最悪の場合、それでここにいる人達や勇者達を連れてファンタルジニアの城に逃げて欲しい。童帝には話をつけてある。お前にしか頼めない…。」

畑中「勇者ちゃん達がお前を見捨てて逃げると思っているのか。」

矢内「だからアイツ等位お前なら上手く言いくるめられるだろ。」

畑中「かー。矢内、お前って奴は…。俺を悪者にするつもりかよ。」

矢内「頼む。」

畑中「俺に頭を下げるな。それで?他に俺がやることがあるのだろ?言えよ。」

矢内「ああ。」

畑中「どうせ、貧民街の人達をここから出さない様にしろって事か?」

矢内「よく分かったな。」

畑中「まぁ、長い付き合いだからな。分かった、これは預かっておく。だから、必ずこれを取りに戻ってこい!いいな?」

矢内「ああ、分かった。」

 

 

 

 

 

準備は出来た。後は神にでも祈るか…神様ってゼクスとロキじゃねえか。無駄なお祈りなんかせずに明日の為に早く寝よう。

 

第13話

決戦前日

END

 


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