わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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砂漠の国の大決戦 8

矢内「どうだ!潔く降参したまえ!」

大臣「私が倒れる訳にはいかぬ。」

 

俺のデンマークバッグブリーカーが虎の大臣を締め上げる。

 

矢内「いい加減降参したまえ。このままだと背骨がへし折れてしまうぞ!」

大臣「私が倒れると王は独りになってしまう…。」

 

何故この男はそこまであの王に忠誠を誓える?分からない…。

 

矢内「下の階から足音が聞こえるだろう?皆、他の兵士達はもう降伏している。」

 

下の階からたくさんの人々が押し寄せてきた。後ろにサチもいる。

 

「あれは!虎のおっちゃん?」

「俺達を助けに来てくれてたんだ!」

「でも、あの緑の奴にやられている。」

「今まで俺達を助けてくれた虎のおっちゃんを今度は俺達が助けるんだ!」

 

何?上がってきた人々が俺に向かってひのきのぼうで殴りかかってきた!

 

矢内「痛!止めろ!敵はあっちだ!」

「虎のおっちゃんをはなせ!」

 

技が解けてしまった。虎の大臣が体勢を立て直す。

その隙に人々にボコボコにされる。

 

サチ「あっ…賢者さん…。ボコボコにされてる。」

「よし!こいつを倒したら後は国王だけだ!」

矢内「止めろ!俺は敵じゃない!」

サチ「はぁ…。そんな格好してるからよ…。仕方ないわね。魔力がもう殆どないけど私の黒魔術でみんなを止めるしかないわね。『ダークネスフィールド ディ タライ!』」

 

助かった…。人々の頭上にタライが次々に落ちてきて気絶していく。

ダメージを負いすぎたのか、俺の変身が解けてしまった。

 

サチ「賢者さん、大変よ!町にサンドワームの大軍が押し寄せて来てるわ!」

矢内「何?」

大臣「この国は神のご加護で魔物は近づけないはずだが…。どうして?」

サチ「今は詳しい事は省くけどその神様が利用価値の無くなったこの国を見捨てたのよ。」

矢内「虎、一時休戦だ。みんなを助けに行かないと。」

大臣「先に王に報告をさせてくれ。」

サチ「分かったわ。畑中が兵士達を引き連れて国民のみんなを避難させているから被害は少ないと思うし。」

矢内「あのデカイミミズが大軍で来てるのだぞ!戦う奴が居ないと!」

サチ「賢者さん、それはアレスが一人で食い止めているわ。」

大臣「なんと、勇者は国から逃げずに戦っているのか?この国の為に…。」

矢内「なんで止めなかった!先に奥の部屋に行って勇者と合流する。その後、直ぐにアレスを助けに行く。」

サチ「賢者さん、魔力も尽きて立っているのもやっとの状態でしょ?なんでそこまでアレス達を助けようとするの?」

矢内「アイツを見捨てたくねえ。魔力がなければ命を燃やすだけだ。」

大臣「賢者殿…。私も勇者を助けに行くのを手伝わせてくれ。」

矢内「ああ!砂漠の国の伝説のヒーローがいたら百人力だ!頼む。」

 

俺達は勇者と合流する為に奥の部屋に向かった。

 

 

 

 

この先の扉に王様が居るのですね。何やら中から男の人の悲鳴が聞こえてきました。

 

トンヌラ「今のは国王の声だ!」

山田「扉を開けるぞ!」

勇者「は、はい!」

 

わたしは勢い良く扉を開けました。

 

ガリアス「ちっ!もう来たのか!くらえ!」ヒュン!

 

ガリアスって人がこっちに何か投げてきました!

 

トンヌラ「お嬢ちゃん!危ない!」グサ!

 

トンヌラさんがわたしを庇ってガリアスって人が投げたナイフがお腹に刺さっています。

 

勇者「トンヌラさん!」

トンヌラ「お嬢ちゃん…。無事で…良かった…。」

山田「トンヌラ!しっかりするんだ!」

ガリアス「ちっ。勇者のガキを庇ったか。まあ、今の内に逃げるか。この国はもう終わりだな…。」

山田「待て小僧。逃がすと思っているのか?」

ガリアス「先程俺が斬った国王を差し出す。それでお前達は満足だろう。」

勇者「なんで…。あなたは王様を斬ったりしたのですか…。」

ガリアス「もうこんな無能の王には用はない。だからこいつが身につけていた宝石類をいただく為に斬ったまでの事。他国に亡命するにも金はいるからな。」

勇者「酷い…。酷すぎます!」

山田「お前は本当に自分の事しか頭に無いのだな。今までお前の為に辛いめにあった者達の恨みを晴らすため尚更ここで逃がす訳にはいかないな。」

ガリアス「権力のないカスの事などどうなろうと知った事ではない!」ヒュン!ヒュン!

 

ガリアスさんがたくさんのナイフをわたし達に投げてきました!

 

トンヌラ「くっ…。美人の姉さん、お嬢ちゃん!グハッ…。」グサ!グサ!グサ!グサ!

山田「トンヌラ!」

トンヌラ「ねえ…さん…、おじょ…ちゃん…。ぶじか…。」

勇者「トンヌラさん!どうして…。」

トンヌラ「ぶじ…だな…。よか…た…。」ガク!

山田「トンヌラ!くっ…。勝利を目前にして…。こんな事に…。」

ガリアス「ちっ!また邪魔されたか。しかし次は邪魔は入らない!」

勇者「えーい!」ブン!

 

この人のせいでトンヌラさんが…。許せません!この人は絶対許せません!わたしは精一杯、斧を振りかざしました。

 

ガリアス「くっ!このガキ!」

勇者「やー!」ブン!グシャ!

ガリアス「ぐっ!ぎゃああああ!俺の腕が!このガキ!よくも!」

 

左腕を切り落としました!この人を許す訳にはいきません!次で止めです!

 

勇者「あなたのせいで、トンヌラさんが!トンヌラさんがー!」

ガリアス「止めろ!そんな末端の兵士がどうなろうとお前にはどうでもいい事だろ!止めろ!」

山田「矢内の娘、もういい…。」

 

山田さんがわたしが振りかざした手を持ち止めに入りました。

 

勇者「山田さん、止めないでください!この人のせいでトンヌラさんが!トンヌラさんが!」

山田「矢内の娘…。こんな男の為にお前が人殺しの業を背負う事はない。」

勇者「で、でも…。」

 

扉が開き誰か入って来ました。

 

矢内「勇者、無事だったか?」

勇者「け、賢者さま~!トンヌラさんが…。わたし達を庇って…。うわ~ん!」

矢内「トンヌラ?」

山田「私達と行動を共にした兵士だ…。」

矢内「そうか…。」

 

賢者さまが倒れたトンヌラさんの体を抱き抱えました。

 

トンヌラ「け…けんじゃさま…。」

矢内「トンヌラ、すまない…。俺達の為に…。」

トンヌラ「ちゅうせいを…ちかった…あん…たらの…た…めに…しねる…んだ…。くいは…ない…。」ガク…

勇者「トンヌラさん!」

山田「くっ…。」

矢内「バカ野郎…。」

サチ「賢者さん、その人を下に連れて行くわ…。」

勇者「さっちん…。トンヌラさんは…。わたし達の為に…」グス…

サチ「エルフなら回復魔法が使える。今ならその人をもしかすると助ける事ができるかもしれないわ。」

勇者「さっちん…。トンヌラさん、助かるのですか?」

サチ「こんだけナイフが刺されたら助かる可能性は低いわ…。グスグスしていたら本当に死んでしまうわ。急いで運ぶわよ、ゆうりん手伝って!」

勇者「はい!」

矢内「サチ、頼む。俺達の友人を助けてくれ!」

サチ「分かったわ。」

 

わたしはさっちんと一緒にトンヌラさんを運んで下に降りました。

さっちんはいつもわたしを助けてくれる最高の友達です。

 

 

 

大臣「賢者殿、申し訳無い…。」

矢内「謝罪などいい…。お互いの用事をすませてアレスを助けに行くぞ。これ以上犠牲者を出したくない…。」

 

俺達は辺りを見回した。国王が倒れて血溜まりになっている。トンヌラを刺した張本人のガリアスがいない。

 

山田「矢内、どうするつもりだ?」

矢内「ああ、ガリアスに止めを刺す。アイツはどうしても許せない。何処に逃げたんだ!」

山田「あそこだ。あの壁、隠し通路になっている。またどこかの国に繋がっているのかもしれない。」

矢内「ちっ!アイツを追う時間もあまりない…。この隠し通路は二度と使えないようにしよう。」

山田「ああ、釈然とはしないが仕方ない。どうせあの傷だ、長くはもたないだろう。」

 

俺と山田は2度と隠し通路が使えないように仕掛けを壊した。これでこの隠し通路は開かない。大臣が倒れた国王を抱き抱えている。

 

大臣「王!国王陛下!」

国王「あれ?おまえ…なんか…でかくなったな…。」

大臣「な、なにを言っておりますか?」

国王「あれ?どこだ…ここは…。」

大臣「あなたの部屋ではございませんか。」

国王「ウソ言え…。おやじの…へや…じゃ…ないか…。」

大臣「陛下?」

国王「おれ…ながいあいだ…ゆ…めをみてた…。」

大臣「夢?」

国王「おれが…おうい…けいしょう…して…から…みんな…を…くる…しめて…」

大臣「まさか…。つかぬことをお伺いします。今のお歳は?」

国王「じゅう…なな…らいねん…おう…い…けい…しょう…じゃ…な…いか…。」

大臣「そんな…。」

国王「なぁ…。おれ…は…いい…おう…さ…まに…なれ…る…かな…。」

矢内「ああ、きっとなれるさ。今は休め…。」

大臣「賢者殿?」

国王「だれ…だ…?ま…あいい…や…。そ…うか…すこ…し…やす…む…。」ガク…

 

国王は力尽き息絶えた。

 

大臣「国王陛下!そんな…。」

矢内「虎、今の国王の年はいくつだ?」

大臣「27歳になります…。」

矢内「10年も操られていたのか…。」

大臣「いったい誰が何のために!」

矢内「お前達の言う神様だ…。自分の都合の良いように利用するためだろう。」

山田「そんな自分勝手な神様が居てたまるか!」

矢内「ああ、そんな奴を許すつもりはない。いずれは倒すつもりだ。それよりアレスが心配だ、虎、俺達は先に行く。国王を手厚く葬ってやってくれ。」

大臣「賢者殿、すまぬ…。」

 

俺と山田は大臣を一人残して下に降りていった。

 

 

 

 

その頃、アレスは関所前でサンドワームの群れの相手をしている。

 

アレス「来い!この勇者アレスがいる限り国には一歩も入れさせないぞ!」

 

サンドワームの群れがアレスに襲いかかる。アレスが一匹のサンドワームに斬りかかるが横からサンドワームの体当たりをまともに喰らう。

 

アレス「ぐわっ!まだだ…。俺が生きている限り関所は通さない。」

 

アレスは再度サンドワームに斬りかかる。しかし、再びサンドワームの体当たりを喰らい倒される。

 

アレス「くそっ!まだだ…。」

 

アレスが気力を振り絞り立ち上がるがそこへサンドワームの一匹が大きな口を開けてアレスを食おうと襲いかかる。

 

リリー「風を司る精霊シルフよ、数多の敵をなぎ倒すため我に大いなる力を!『ウイングショットカッター!』」

 

魔法のちり取りに乗って飛んできたリリーの放った風の魔法が目の前のサンドワームに襲いかかる!

 

アレス「今だ!」

 

アレスが魔法を喰らい怯んだサンドワームに斬りかかる!

 

「キシャアアア!」

 

サンドワームを一匹倒した。

 

リリー「アレス!」

アレス「リリー!なんで来た!みんなと避難しろよ!」

リリー「嫌よ!アレスは戦っているじゃない!」

アレス「俺は、勇者だ。」

 

二人が言い合っている隙にサンドワームの一匹がリリーに襲いかかる!

 

アレス「っ!!」

「キシャアアア!!」

アレス「リリー!危ねえ!」

 

アレスがリリーを庇いサンドワームに右肩を噛まれた!

 

リリー「アレス!」

アレス「くそっ…。まだだ…。」

リリー「なんで…。そこまで…。」

アレス「人々の為に戦うのが勇者だ。みんな避難するまでは倒れねえ。リリー、お前も避難するんだ。」

リリー「アレス…。」

アレス「来い!化け物共!俺は…まだ倒れてはいないぞ!」

 

アレスはふらつきながらも虚勢をはりサンドワームに立ち向かう。

が、サンドワームの体当たりを喰らいアレスは倒される。

数匹のサンドワームはアレスに興味を無くしたのか関所を越えて町に入っていく。

 

リリー「ああ…。町に魔物が…。」

アレス「待て…。行くな!俺と戦え!」

「キシャアアア!」

 

一匹、巨大なサンドワームがアレス達を丸のみしようと大きな口を開けて襲いかかる!

 

リリー「ああああ…。」

アレス「くそう…。体が動かねえ…。リリー、逃げろ…。」

 

絶体絶命のアレス達を助ける為に一人の男が二人の前に現れた。

 

???「砂漠の国の勇者達よ。よくぞここまで町を守り抜いた。後は我に任せておくがよい。」

アレス「だ…だれだ…。」

皇帝陛下「勇者アレスよ。矢内から報告は受けている。我が国の戦士達を連れて貴公達を助けに来た。我はファンタルジニア帝国の皇帝だ。」

リリー「皇帝?」

皇帝陛下「民の避難は完了した。後はあの魔物を討伐するだけだ。我がファンタルジニアの勇敢なる戦士達よ!我が友!矢内 孝太郎の道を邪魔する魔物達を殲滅する!皆!我に続け!」

 

皇帝陛下が先陣をきって魔物に突進する!皇帝陛下がサンドワームを次々と倒して行く。

 

「陛下!クソ!皆!陛下に続けー!手柄を独り占めされるぞ!」

「急げ!日頃の鍛練の成果を出すのだ!行けー!」

 

ファンタルジニアの戦士達も皇帝陛下に負けじとサンドワームを次々倒して行く!

 

リリー「凄い…。戦士の一人一人が一騎当千の豪傑のようだわ…。」

ジーク「二人とも大丈夫か?」

リリー「ええ…あんた達は行かないの?」

かね童子「俺様達はお前達を守るのが仕事だ。今更行ってもあの魔物は全滅してるしな。」

アレス「ちくしょう…。俺は…今日1日何も出来なかった…。あのペテン師野郎の足を引っ張っただけだった…。」

リリー「アレス…。」

 

少しの時間でサンドワームは全滅し、皇帝陛下がアレスの元に戻ってきた。

 

皇帝陛下「これで魔物達の驚異は去った。皆!矢内達を迎えに城に向かう!」

アレス「ま、まってくれ!なんで俺達を助けた!俺達はペテン師野郎の敵なんだぞ!」

皇帝陛下「貴公達は矢内 孝太郎の友であると聞いている。我が友、矢内達がここにいたら命懸けで貴公達を助けていただろう。」

 

皇帝陛下は戦士達を連れて城の方に歩いていった。

 

リリー「私達、知らなかっただけでずっと賢者に助けて貰ってばっかりだったんだね…。昨日の夜ご飯もきっと賢者が美人のお姉さんに渡して私達にくれたんだよ…。」

アレス「何が勇者だ…。何が人々の為に戦うだよ…。ペテン師野郎の手のひらに踊らされていただけじゃないか…。ちくしょう…。」

リリー「アレス…。私達も戻ろう?」

アレス「…。」

ジーク「掴まれ。その状態じゃまともに歩けないだろう。」

アレス「すまねえ…。一般の戦士が簡単に倒せたサンドワームを俺は…一匹もろくに倒せなかった…。」

かね童子「ああ…。あの人達が異常に強いんだ。たぶん、ファンタルジニアがマジで戦争なんかしたら全部の国を滅ぼす位の戦力だ…。」

ジーク「ああ…。だから気にするな。」

アレス「すまねえ…。」

 

アレスは力尽き気絶した。ジークとかね童子はアレスを連れて城に戻っていった。


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