わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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砂漠の国の大決戦 9

俺と山田は階段を降りて3階に戻ってきた。

 

勇者「げんじゃざま~!トンヌラざんが~!」ポロポロ

 

勇者が俺に泣きついてきた。まさか…。

 

矢内「サチ!」

サチ「…。」

 

サチが黙って首をふる。

 

矢内「そんな…。」

サチ「賢者さん…。私達が3階に降りた時にはもう…。」

矢内「回復魔法はかけたのか?」

サチ「いえ…。」

矢内「やれよ!簡単に諦めるな!」

ライアン「賢者様、死んだ者に回復魔法をかけても効果はないッス…。」

矢内「良いからやれよ!やれ!」

山田「矢内!おちつけ!ライアン…傷は治せるのか?」

ライアン「傷は治せるけど…。生き返る事は無いッス…。」

山田「やってくれるか?ここままではトンヌラが浮かばれない…。綺麗な形で逝かせてやりたい。」

ライアン「分かったッス…。」

 

トンヌラについていたナイフの刺さった傷が治っていく。

 

勇者「うう…。トンヌラさん…。」

矢内「くそっ…。」

サチ「…。」

山田「矢内…。悔やんでも死んだ者は生き返らない…。」

矢内「…。」

山田「矢内!お前が仕掛けた戦争だろうが!いつまでそうしている!まだ我々はアレスを助けに行かないと行けないだろうが!」

矢内「ああ…。行かないとな…。勇者、お前達はトンヌラを弔ってやってくれ…。」

勇者「賢者さま…。何処に行くのですかぁ。トンヌラさんが…。」ポロポロ

矢内「俺はアレスを助けに行く…。」

サチ「賢者さん…。立っているのもやっとでしょ?」

矢内「それでも行かないと駄目だ…。サチ、山田、後を頼む…。」

???「矢内!その必要は無いぞ!魔物は全滅させたからな!」

矢内「誰だ!?」

 

俺は声のした方に振り向いた。

 

ロキ「矢内!俺が援軍を呼んだからもう片付いている。安心しろ!」

矢内「って!何でいる!それより援軍ってどういうことだ?」

ロキ「何でいるだと?決まっているだろ?明日のパーティに参加する為だろうが!いつも言っているだろ!面白い事は俺達を誘えと。」

マナ「モチロンわたくしも参加いたしますわ!」

矢内「…。っで?援軍っていうのは?」

皇帝陛下「矢内、我らファンタルジニアの戦士達が街を襲ってくる魔物は全て退治した。」

矢内「ど、童帝!お前、なんで…伝言を送ったはずだろうが!」

「賢者様、陛下に無礼な発言は…。」

皇帝陛下「かまわぬ!」

矢内「街に魔物が向かったって事は…。貧民街にいた女や子供達は…。」

酒呑童子「賢者殿!それならワシ等が皆を城に避難させたから大丈夫じゃあ!」

虎熊童子「街に入られた魔物は自分が退治したのでご安心を。」

矢内「シュテちゃん!それに虎熊童子!お前等!ちゃんと伝言をつたえろよ!」

酒呑童子「いやー、ワシ等は明日のパーティの準備の為にこっちに来たらたまたま魔物が襲って来てのう。」

皇帝陛下「たまたま、パーティの準備の為に来たら街に魔物が襲って来たから我は退治しただけなんだがなぁ。」

矢内「たまたまってなんだよ!ったく。そうだ、アレスは?」

ジーク「賢者、俺達が連れて来た。ボロボロの状態だが大丈夫だ。」

かね童子「今は力を使い果たして眠っている。早く手当てをしてやってくれ。」

矢内「そうか…。」

畑中「ハッハーww!矢内!お前の思う道理に行かなくて残念だったな!」

矢内「その頭にくる笑いかたは畑中か!」

畑中「矢内、何でも抱え込むのは中二病の悪い癖だぞ。何が最悪の場合は人々を連れてファンタルジニアに逃げろ、だ。もっと仲間を頼れ、これは返すぞ。」

 

畑中がゲートストーンを投げつけてきた。ひのきのぼうでだいぶ痛みつけられたせいかキャッチ出来ず床に落としてしまった。

 

矢内「すまんな。」

 

ゲートストーンを拾いあげた。

 

畑中「で、国王は倒したのか?」

矢内「あ、ああ。しかし、トンヌラが俺達の為に犠牲になってしまった…。」

勇者「トンヌラさんが…わたしのせいで…トンヌラさんが…」ポロポロ

マナ「プッ可笑しな名前です事。」

山田「貴様!」

 

俺は山田がマナに掴みかかる所を制止させマナの顔面を思いっきりぶん殴った。

 

山田「おい、矢内…。」

矢内「もういっぺん言ってみろ。」

マナ「神の使いであるわたくしにたいして何を…」

 

俺はマナの顔面をもう一度ぶん殴った。

 

マナ「2度も殴った!このわたくしを!2度も!」

矢内「もういっぺん言ってみろ。」

 

俺はマナの顔面を思いっきりぶん殴った。マナは地べたに倒れこんだ。

 

マナ「女性の顔を殴るなんて!」

矢内「黙れ!!」

 

俺は倒れこんだマナを馬乗りにして徹底的に殴り付ける。

 

マナ「わたくしは思った事を…」

矢内「命をかけて戦って散った俺達の友人に対して言う言葉か!」

 

周りの人間が俺を止めに入るが構わずマナを殴り続ける。

 

畑中「矢内!落ち着け!」

サチ「賢者さん!もう良いでしょ!」

皇帝陛下「矢内!もう止めんか!」

矢内「放せ!止めるな!」

 

俺は周りの人間に押さえつけられた。顔がボコボコに腫れて倒れこんだマナが何か言おうとしている。

 

マナ「うぅ…。」

山田「女、まだ我々の友を愚弄するなら今度は押さえつけられた矢内に代わり私が相手をしてやる。」

畑中「山田さんも落ち着けよ。」

マナ「うぅ…。いぎ、か…える…。」

山田「何?まだ殴られ足りないのか?」

マナ「生き返る!わたくしの魔法で生き返れるから!」

山田「死んだ者が生き返るか!下らない冗談を言うな!」

 

今度は山田がマナに馬乗りなり容赦なく殴りかかる!

 

ライアン「客人!落ち着くッス!」

「ちょ、客人マジでカムチャッカファイヤーだし、ウケるww!」

ライアン「みんな、あの人これ以上殴られたら死んでしまうから客人を止めるッス!」

山田「ライアン!放せ!止めるな!こんな女は死ねばいい!」

サチ「山田!貴女まで殴りかかってどうするのよ!あんな女、殴る価値なんて無いわ。落ち着いて。」

 

山田は援軍で来たエルフの連中に押さえつけられた。

 

マナ「いぎがえる、いぎがえるがら!」

山田「まだ言うか!」

畑中「山田さん!落ち着け!」

勇者「トンヌラさん、本当に生き返るのですか?」グス…

 

勇者が泣きながらマナに問いただす。

 

マナ「ええ、わたくしにかかれば仮死状態の者を生き返らせる事など動作もない事ですわ。それなのにこのわたくしに対してこの仕打ち、あんまりですわ。」

畑中「このアホ女にそんな力があるのかよ…。」

矢内「トンヌラが生き返る?」

マナ「ええ、問題ありませんわ。」

矢内「直ぐにやってくれ!」

勇者「お願いします。トンヌラさんを…生き返らせて下さい。」

マナ「そうですわね。わたくしを殴ったそこの女、とりあえず土下座してもらえるかしら?」

 

マナが山田を指さして言い放った。

 

山田「どうやらまだ殴られ足りないみたいだな。」

 

またマナは山田に殴られた。

 

マナ「ごめんなざい!わだぐじがわるがっだでず!もうなぐらないで…。」

サチ「これ以上殴られたくなかったらさっさとしなさい!」

マナ「貴女!このわたくしに対してなんて物の言い方ですの!」

サチ「…。」バチン!

 

サチが思いっきりビンタを放つ。サチはビンタを喰らって倒れたマナの胸ぐらを掴み一言言い放つ。

 

サチ「殺すわよ…。」

マナ「ひぃぃぃ…。」

ロキ「ダハハハハ!もういいからさっさと生き返らせろ!」

マナ「ロキ様、分かりましたわ。直ぐに生き返らせますわ。」

ロキ「お前、顔がボコボコに腫れて!ダハハハハ!面白れえ!」

マナ「ロキ様に喜んで頂けて光栄ですわ。殴られたかいがあったってものですわ。」

 

マナが眠っているトンヌラの前に座り込んだ。

 

 

 

アレス「うう…。ここは?」

ジーク「おっ?気が付いたか?」

アレス「ここは?」

リリー「アレス、良かった…。お城の中よ。」

アレス「俺を運んでくれたのか?すまねえ…。」

かね童子「気にするな。お前は良くやったよ。」

アレス「何も出来てねえよ…。俺がもっと強かったら…。」

リリー「アレス…。」

アレス「リリー、所で今はどういう状況なんだ?」

リリー「あのペテン師の賢者達と行動していた兵士の男が死んじゃってマナが生き返る魔法を使うところよ。」

アレス「マナが?所でなんでアイツは顔がボコボコに腫れているんだ?」

ジーク「ああ、あの女があの兵士の名前をバカにして賢者に殴られてた。」

かね童子「賢者が周りに取り押さえられた後、賢者の仲間の褐色の肌の女にボコボコにされてた。」

リリー「ねえ、賢者って本当に悪い奴なの?」

サチ「あら?貴方達、無事だったのね。良かったわ。」

アレス「ペテン師野郎の仲間の女…。」

サチ「それだけ口が聞けたら大丈夫ね。」

リリー「ひとつ、聞いていい?」

サチ「何かしら?」

リリー「あのペテン師の賢者って本当に他国を滅ぼした悪党なの?」

サチ「確かに勇者の兜を持っていた王さまをフォークリフトって機械で轢き殺したわね。自分勝手に権力を振る舞っている人達にとったら賢者さんは悪党なのかもね。後は自分達の目で確かめる事ね。」

リリー「…。」

アレス「自分の目で確かめる、か…。」

リリー「あっ。マナが復活の魔法をかけるみたいよ。」

アレス「あいつにそんな魔法が使えるのか?」

サチ「使えなかったら今度は殴られるぐらいじゃすまないわね。」

アレス「アイツが死んだら良かったのにな。」

リリー「ええ。本当よね。」

 

マナが寝ているトンヌラ前で復活の魔法を唱えようとする。

 

トンヌラ「…。」

マナ「…。」

トンヌラ「…。」

 

マナが立ち上がりトンヌラから離れる。

 

矢内「何処に行く。」

マナ「…。」

山田「何か言え。」

マナ「この男、死んでいませんわ。」

矢内「何?」

マナ「ええ、瀕死の状態で回復魔法をかけたのが効いて一命をとりとめていますわ。」

サチ「私達が運んだ時はすでに心臓は止まっていたわ…。」

マナ「簡単に諦めずに回復魔法をかけたのが幸いしたのでしょう。直に目を覚ますと思いますわ。」

勇者「トンヌラさん…。死んでいないのですか?」

マナ「ええ。それにしても面白い名前ですこと。」

矢内「まだ殴られ足りないか!!」

 

俺はマナの顔面を思いっきりぶん殴った!殴られたマナはトンヌラの上に倒れこんだ。

 

トンヌラ「ぐわ!何だ!」

マナ「あら?目を覚ましましたわね。」

トンヌラ「顔がぐちゃぐちゃに腫れて…。ば、化け物ー!」バタ!

 

目を覚ましたトンヌラはボコボコに腫れたマナの顔を見てまた気絶した。

 

矢内「…。トンヌラは大丈夫そうだな。本当に良かった…。」

畑中「矢内、この国の人達を城の外に集めている。行け。」

矢内「はあ?演説とかはお前がしろよ得意だろ。」

畑中「ハッハーww!お前が仕掛けた戦いだろうが!最後はお前が締めろ!」

矢内「あー、分かったよ!やればいいんだろ!やれば!」

 

俺はしぶしぶながら演説をすることにした。

 

矢内「アレス、立てるか?」

アレス「何だよ…。」

矢内「外にいるみんなに演説をする。一緒に来てくれ。」

アレス「ペテン師野郎、また俺をみんなの笑い者にするつもりかよ。」

矢内「違う。」

アレス「俺は…。国に襲ってきたサンドワームと戦って一匹も倒せなかったんだよ!あの男の口車に乗せられて英雄きどりしていただけで…。」

矢内「アレス、お前が先頭に立ったから国のみんなが協力してお前が先に一人で関所でサンドワームと戦ったから誰も死なずにすんだ。」

アレス「だからって何だよ…。これ以上俺を惨めにさせるな。」

矢内「アレス、勇者ってなんだ?」

アレス「何だよ…。」

矢内「俺が知っている物語に出てくる勇者って奴はな、真っ先に大事な人々の為に戦い最後まで諦めない奴の事だ。そんな勇者のお前が居たからこの戦いに勝つことができた。」

アレス「でも、俺は…。弱い…。」

矢内「だったらこれから強くなればいいだけだ。みんなはお前を待っている。行こう。」

アレス「…。」

矢内「これから先、色んな所で活躍したらこういう演説する機会が増えるから場数は今のうちに踏んだ方がいいぞ。」

アレス「分かったよ。」

 

俺はアレスを連れて城の外に向かったが階段を踏み外し下に転げ落ちた。

 

アレス「おい、大丈夫か!」

矢内「大丈夫じゃねえよ。魔力も尽きて歩くのもやっとなんだよ。本当は立っているのもしんどいんだよ。」

 

俺はふらつきながら立ち上がりアレスと城の外に出た。

外に出ると人々の歓声が響き渡る。

 

矢内「こういう事は得意じゃないんだがな。」

「賢者様ー!勇者アレスー!」

 

人々の歓声が止まらない。俺は精一杯大きな声をあげる。

 

矢内「みんな!聞いてくれ!みんなを今まで苦しめてきた国王とそれに従う貴族達はここにいる英雄、勇者アレスと共に何とか打ち倒す事が出来た!」

アレス「お、おい。」

 

アレスが俺に何か言おうとするが構わず演説を続ける。

 

矢内「この勝利は!俺達だけではなくみんなが共に戦ってくれたから得た勝利だ!」

 

国民みんながざわつきだすが構わず続ける。

 

矢内「今、この国は新しく生まれ変わる!そう!これからはお前達一人一人がこの国を作っていくんだ!そして明日はこの国の開国記念日として中央広場にてパーティーを行う!みんな絶対来てくれ!」

「賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

 

人々の歓声が鳴りやまない。

 

アレス「凄い…。」

矢内「アレス、俺の後に続け。」

 

俺はアレスに一言呟いた。そして、右手拳を高々と上げて叫ぶ!

 

矢内「この国の明日は!」

アレス「この国の明日は!」

「この国の明日は!」

矢内「この手で作り上げる!」

アレス「この手で作り上げる!」

「この手で作り上げる!」

「賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

「賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

矢内「さあ!明日はパーティだ!今日は解散だ!明日は派手に盛り上がろうぜ!」

「オー!賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

矢内「アレス、城に入るぞ。」

アレス「…。」

矢内「ん?どうした?」

アレス「俺は英雄なんかじゃねえ…。」

矢内「なんだ、まだそんな事を言っているのか。」

アレス「そんな事じゃねえよ、俺は…。」

矢内「いいんだよ今回は俺達が英雄で。俺だってたいした事はしてないからな。」

アレス「なんだよそれ。」

矢内「なんだ?俺はお前が言うペテン師野郎だからな。人々を騙すくらい訳ないさ。」

アレス「そんな事、みんなを騙して良いわけないだろ。」

矢内「嘘も方便ってやつだ。城に入るぞ。」

アレス「おい!待てよ。」

矢内「早くしろよ。」

 

人々の歓声が鳴りやまないまま、俺達は城の中に戻った。

 

城の中に戻るとみんなが俺達を待っていた。

 

勇者「賢者さま!」

サチ「賢者さん、お疲れ様。」

矢内「おう、これでとりあえずは解決だな。」

皇帝陛下「矢内よ、我等は1度国に戻る。」

酒呑童子「賢者殿、明日は宴じゃあ!ワシも村の衆を連れてまた来るぞぉ!」

矢内「わざわざ俺達の為に助けてくれてすまない。」

 

俺は助けに来てくれた友人達に頭を下げた。

 

皇帝陛下「矢内、頭を上げんか。明日はパーティーだから我も国の者達を連れて朝から参る。色々と準備があるだろうからな。手伝う事があったら何でも言ってくれ。」

酒呑童子「賢者殿!明日、共に酒が飲めるのが楽しみじゃあ!ガハハハハ!」

矢内「ああ!俺も楽しみだ。」

ロキ「矢内!1度コイツらを連れて戻る!また明日な!」

矢内「ああ!すまない、今回は本当に助かった。」

ロキ「ダハハハハ!堅苦しい事を言ってるんじゃねえぞ!明日のパーティーの為だ!」

 

ロキは童帝達を連れて開いたゲートの中に消えて行った。

 

エリカ「ウーン…。あ、あれ?」

サチ「エリカさん?良かった、気がついたのね。」

 

倒れていたエリカとアリマ君が目を覚ました。

 

矢内「エリカ!大丈夫か!」

エリカ「あれ?賢者?あたし…。」

矢内「無事だな?」

エリカ「う、うん…。でも…。」

矢内「そうか、良かった…。」

エリカ「なんで…。良くないよ…。あたし…。悪い奴に倒されて…。」

矢内「バカ野郎、お前が無事だった事が1番大事な事じゃねえか。」

サチ「そうよ。」

勇者「エリカにゃん…。心配したのですよ…。無事で良かったです…。」

エリカ「賢者、みんな、ごめんな…。」

アリマ君「キー…。(ごめん…。)」

勇者「アリマ君も無事で良かったです…。」

アリマ君「キー…。(僕がもう少し強かったら…。)」

矢内「エリカ、アリマ君、お前達が俺達の後ろを守ってくれたからこの戦いに勝つ事が出来たんだ。」

アリマ君「キー…。(でも…。)」

矢内「明日はパーティーだぞ?だからそんな顔をするな。」

エリカ「分かった!賢者、ありがとう!」

矢内「ああ。」

 

山田が後ろから声をかけてきた。

 

山田「矢内、話し込んでいる所すまないが少し良いか?」

矢内「なんだ、改まって。」

山田「客だ。我々と話があるそうだ。上の階だ、来い。」

矢内「分かったよ。畑中、後を頼む。」

 

俺は勇者達や城の中の連中の事は畑中に任せて山田と上の階に上がると虎の大臣が待っていた。

 

矢内「国王の埋葬は終わったのか?」

大臣「賢者殿…。火葬して城の屋上にお墓を建てるつもりです。王が新しく生まれ変わる国を上から見れるように…。」

矢内「そうか…。手厚く葬ってやってくれ…。それで話ってなんだ?その事じゃないだろ?」

大臣「はい、私の処分についてです。」

矢内「どういうつもりだ。」

大臣「私の処刑を賢者殿にしていただきたい。」

矢内「…。」

山田「死んで罪が消えて無くなるか愚か者!罪を償いたかったら生きて死に物狂いで国に捧げろ!」

大臣「しかし、私は国家を脅かした言わば犯罪者…。民が私を許す訳がない。」

山田「だからと言って」

矢内「山田、止めろ。」

山田「矢内!貴様はこの者を死刑にするつもりか!」

矢内「だから、落ち着けよ。虎、お前はこの国の人々からなんて呼ばれているか知っているか?」

大臣「…。」

矢内「砂漠の国のヒーロー、救世主って呼ばれている。」

大臣「しかし、私はそんな大層な人物ではない…。」

矢内「でも、この国の人々はそう思っている。お前と戦っている時、俺は援軍に来た人々にボコボコにされたんだぞ。みんなお前を助ける為に必死だった。」

山田「それはお前が変な格好をしていたからだろうが。」

矢内「山田、黙っていろ。そんなヒーローを俺に処刑させるのか?そんなことをしたら今度は俺が人々に殺される。」

大臣「しかし、私はヒーロー等では…。」

矢内「そんなことを言ったら俺なんか賢者なんて大層な奴じゃない。」

大臣「賢者ではない?何故そんなことを?」

矢内「嘘も方便ってやつだ。だから、お前もヒーローで良いじゃないか。」

大臣「賢者殿は、この私を許すと言うのか。」

矢内「許すも許さぬもない。戦いは終わったんだ。これからも国の為に尽くして欲しい。この国の王が操られる前の志を継いでやってくれ。」

大臣「賢者殿…。」

矢内「明日は新しい国を祝うパーティーだ。これからの事はそのあとに決めていけば良い。明日の準備があるから俺はもう行くぞ。必ず来いよ?」

 

俺は階段を降りて勇者達のもとに戻った。

 

大臣「賢者殿、待ってくれ!私は…。」

山田「もういいではないか。」

大臣「しかし…。」

山田「それよりお前は王の埋葬が残っているのだろう、それをすませてやれ。」

大臣「かたじけない。」

山田「最後に1つ、これからは全てを一人で抱え込むな。周りを頼れ。お前には矢内 孝太郎という友がいる。」

大臣「矢内 孝太郎…。」

山田「お前達が知る賢者様とか名乗るペテン師だ。」

大臣「賢者殿…。」

山田「アイツは友人を見捨てる事は絶対にしない。アイツはそう言う男だ。」

大臣「私が賢者殿の友…。何故貴女はそこまで賢者の事を?」

山田「ただの腐れ縁だ。つまらん詮索は無用だ。私もそろそろおいとまする。明日はパーティーだそうだ。私もお前もそうそう休んでは居られないぞ?」

大臣「分かりました。この国の為にありがとうございます。」

山田「矢内の奴が居たらこう言われるぞ?友人に対して礼など要らないとな。」

 

再び、勇者達がいる下の階に降りて来た。

トンヌラも目を覚ましている。まだ立ち上がる事は出来ないみたいだ。

 

矢内「トンヌラ、気がついたか?」

トンヌラ「賢者様、目が覚めて周りの連中から話を聞きました。すみません…。俺なんかの為に…。」

矢内「何を言ってるんだ、お前は俺達の友人だ。お前が傷ついたら助けるしお前をバカにするような奴はぶっ飛ばす。当たり前の事じゃねえか。」

トンヌラ「賢者様…。俺なんかに…。そこまで…。」

勇者「トンヌラさん、無事で良かったです。」

トンヌラ「賢者様…。勇者のお嬢ちゃん…。俺は生涯あんた達に忠誠を誓う。」

矢内「だからそう言うのは…。」

サチ「分かったわ。」

矢内「おいサチ、何を勝手に言ってるんだ。」

サチ「賢者さん、黙っていて。まず、明日までに身体が動けるように今日はゆっくり休む事。そして、今日から私達の事を友達として接する事。それが出来なければ忠誠は誓わせないわ。」

 

たいした詭弁だな。つくづくこいつが仲間で良かったと思う。

 

トンヌラ「ああ、助けてくれてありがとうな。お嬢ちゃん達。」

サチ「ええ、明日のパーティー、精一杯楽しみましょう。」

 

さて、パーティーの準備だ。あそこで食材を揃えるか。

 

矢内「畑中!いるか!」

畑中「大声を出すな!聞こえてるわ!」

「あっ!賢者様!」

 

畑中は子供達の相手をしている。あれはキールにエースにポーキーに…。なんでいる!

 

矢内「お前達!何でいる!」

キール「ああ、賢者達を助けに城の戦士達が出陣するって聞いてついてきたんだよ。」

エース「ジークとかね童子は弱っちいから俺達が助けてやらないとな。」

 

ジークとかね童子…。居た!子供達の相手をしているな。俺は二人に近づいた。

 

ジーク「賢者、どうしたんだ?」

矢内「このカス共が!!子供達を連れてきてるんじゃねえ!危ない目にあったらどう責任とるんだ!」

かね童子「いきなり何だよ!コイツ等が勝手についてきたんだよ!」

矢内「元はお前達がくそ弱いからだろ!ふざけるんじゃねえぞ!」

ジーク「いきなり何だよ!もう我慢出来ねえ!俺達が弱いかどうかその体に教えてやる!俺達と戦え!」

矢内「ほう?賢者様である俺と戦うってか?」

山田「矢内、下らない言い争いをするな大人げない。お前は立っているのもやっとの状態だろう。」

 

山田が上の階から降りて来た。

 

ジーク「あっ、賢者の仲間の女。」

山田「ああ、お前達か。矢内、明日の準備があるだろう。こんなことで時間を止めるな。」

矢内「山田、やっと降りて来たか。よし、買い出しに行くぞ。」

かね童子「賢者!俺達から逃げる気か!」

矢内「お前達の相手は明日のパーティーでしてやる。明日のパーティーの買い出しに行ってくるからちゃんと子供達の事を見とけよ。」

ジーク「分かってるよ。そこは任せて置け!」

矢内「よし、畑中、山田、ついてきてくれ。」

ポーキー「賢者様、行っちゃうの?」

矢内「明日のパーティーの買い出しに行くんだ。明日は凄いぞ!今まで見たことのないご馳走が待っているからな。」

ポーキー「そうなんだ…。でも…。私達、この国の人じゃないから。」

矢内「何を言ってるんだ。ちゃんとジーク達が連れて来てくれるさ。一緒に楽しもう!」

ポーキー「え!いいの?」

矢内「お前達は俺の友人だ。みんなで来てくれ。」

キール「また、パーティーしようって約束したもんな!」

矢内「今回だけじゃないぞ。きっとこの先この国だけじゃなく色々な国でもするかも知れないからな。」

「すげえ!」

矢内「ああ!だからみんな!また明日な!畑中、山田、行くぞ。」

畑中「何処に行く気だ?」

矢内「行くって決まっているだろう。コストコだ。」

勇者「賢者さま、わたし達もお供します。」

エリカ「あたしも行くよ!」

サチ「賢者さん、買い出しのついでに何か美味しい物を食べるつもりよね。自分だけ美味しい物を食べようだなんてそうはいかないわよ。」

 

お前達も来るのか。後、荷物持ちがいるな。そうだ。ガリアスの元用心棒のアイツ等がいた。

 

矢内「おっ、いたいた。お前達、ちょっと付き合え。」

「何だ賢者?」

矢内「買い出しだ、手伝ってくれ。」

「何だよ、荷物持ちかよ。」

矢内「よし、行くか。」

畑中「矢内、コストコまでどう行くんだよ。」

矢内「コイツだ。ゼクスにコストコ前にゲートを作ってもらった。」

 

俺達はゲートストーンを使ってゲートを開いた。

さあ明日はパーティーだ!

 

 

 

第14話

砂漠の国の大決戦

END

 


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