わたしの賢者さま   作:ジャックオニール

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開国記念日大パーティー 6

矢内「勇者の奴も行ったし、俺もそろそろ別の所に行こうかな。」

茨木童子「賢者殿はどちらに?」

矢内「せっかく畑中が料理を作るのを代わってくれたからな。まだ乾杯をしていない奴の所に行く。」

茨木童子「そうですか、それでしたら…。熊童子!まだ酒は残っているか!」

熊童子「大声を出さなくても聞こえています!賢者殿、これを持っていって下さい。」

矢内「何から何まですまないな。」

熊童子「こんな楽しいパーティーに誘ってくれたんだ。俺達はいつだって賢者殿に協力する。これからもなにかあったら何でも言ってくれ。」

矢内「ああ、パーティーはまだまだ長いんだ。お前達も色々な国から来ている人々と楽しめよ。」

茨木童子「そうですね、私も色々な国の人達に楽しんでもらう為にもう少し料理を振る舞うとしましょう。」

熊童子「俺も他のエリアに酒を振る舞うとしよう。」

 

 

 

俺はまずは虎のおっちゃん、今は虎王だったな。その虎王を探しに城の中に入る。

中は少し片付いてはいるが俺達が戦った後がまだ残っている。一階の階段には血の後が2階、3階は壁が崩れたまま残っている。4階に上がり王の寝室にはおびただしい血の後が残っている。よく見ると奥にまだ階段がある。この上に虎王がいるのか?そのまま上に上がる。長い階段を上ると太陽の光が差し込んでくる。この上は屋上か。そのまま階段を上りきると奥で虎王が祈る様に座りこんでいる。近づいていくと虎王の前に墓がある。そのまま俺は虎王に声をかける。

 

矢内「それがあの王の墓か?」

虎王「け、賢者殿?どうしてここに?」

矢内「聞きたい事があってお前を探しに来たが手間が省けた。」

虎王「はい?どういうことでしょうか?」

矢内「ああ、その墓に用事が有るんだ。」

虎王「何をなさるつもりですか?せめて王を安らかに眠らせて下さい。」

矢内「何も壊したりなんかしねえよ。退いてくれ。」

 

俺は墓の前にいる虎王を払いのけて墓に語りかける。

 

矢内「この国はこれから先、皆で助け合って良くなっていく。今日、余所の国から来てくれている俺の友人達も協力してくれる。お前の心を操っていた神、ビーナスは必ず俺が倒しお前の無念を晴らす事を約束する。だから、ここからこの国をお前の友人を見守ってくれ。乾杯だ。スコール。」

 

俺は墓に先程もらった酒を墓の上から大量にかけて残った酒をいっき飲みした。

 

矢内「出来たら生きていた時のお前と飲み交わしたかったな。」

虎王「賢者殿…。わざわざ王の為に…。」

矢内「王の為に?違うな、友人と乾杯をするためだ。」

虎王「ありがとうございます…。王もきっと喜んでいると思います…。」

矢内「それよりも虎。お前、最初のパーティー開始の時から城に隠れていたのだな?」

虎王「いや、本来なら私は倒されていた側です。皆と騒ぐだなんて…。」

矢内「お前、このパーティーの意味が分かっていないな?」

虎王「だから、それは皆がこれから力を合わせて行くための記念の…。」

矢内「30点。やはり分かっていなかったな。この国だけじゃなくこれから先、国と国とが力を合わせて行くためのパーティーでもあるんだ。国の代表のお前がここで隠れていたら意味がないだろ。」

 

俺が虎王と話をしていると何者かが階段を上ってきた。

 

山田「矢内、国の代表でも無いお前が偉そうに言うな愚か者。」

矢内「山田、よくここが分かったな。」

畑中「山田さんだけじゃねえよ。」

虎王「貴校達もここへ?」

畑中「お前を探していたんだよ。早く下に行け、みんながお前を待っているんだよ。」

虎王「しかし、私はいわば国家犯罪者…。それを…。」

山田「前にも言ったと思うが罪を償いたいのなら先ずは自らが民の為に動け。民はお前と騒ぐ事を望んでいる。」

虎王「しかし、私は…。貴校達を処刑しようとしたのに…。」

畑中「かー!まだそんな事を言ってるのかよ、ハッハーww!」

山田「謝罪する暇があったらさっさと下に行け、みんながお前を待っている。」

矢内「そうだな。虎王、俺の仲間を処刑しようとしたことを不問にするから1つ頼みを聞いてくれるか?」

虎王「わ、私に出来ることなら…。」

矢内「そうか、俺は朝の早くからパーティー準備で疲れていてな。俺達の代わりに下に行って場を盛り上げてくれ。頼む。」

 

そう言って俺は虎王に頭を下げた。

 

虎王「そ、それは…。」

畑中「ハッハーww!諦めて下に行って来い。」

虎王「分かりました。その役目果たさせていただきます。」

矢内「そうか、助かる。所で少しだけ休める場所があれば使わせて欲しいのだが何処か無いか?」

虎王「それでしたら2階の奥の客間をお使いください。」

 

そう言って虎王は階段を下りて行った。

階段を降りて俺達は2階の客間で少し休む事にした。

 

山田「矢内、たいした詭弁だったな。」

矢内「ああ、まあな。」

畑中「しかしあの虎、もう少しはじけていかないとだめだな。」

矢内「今までがそう言う状況じゃなかったからそれは急には無理だな。」

山田「しかし、今日のパーティーは凄まじいな。私もあらゆる所で揉みくちゃにされて大変だった。」

畑中「始めの乾杯の時なんか城の前に収まりきらない位の人が居たからな。」

矢内「ああ。この国の人だけじゃなく色々な国からも来ているからな。」

 

俺はスコールサワーを二人に手渡した。

 

矢内「もう少し飲むか。」

山田「お前、まだ飲むつもりか。」

畑中「スコールサワー、ハッハーww!なんだよこれ、初めてみたぞ。」

矢内「いいか、このスコールサワーはな、スコールブランドのデイリーとサッポロビールが共同開発した…」

畑中「そのくだりは長くなりそうだから後で聞く。」

山田「お前のスコールに対するこだわりはなんなんだ…。」

畑中「まあ、とりあえず飲もうぜ。」

矢内「そうだな。」

山田「所で矢内、何故私のだけマンゴー味なんだ?」

矢内「ああ、お前がマンゴーなんて高級品は生涯口にする事は無いだろうからな。俺からの細やかな気遣いだ、ありがたく思え。」

山田「馬鹿にするな、果物などその辺の山に何処にでもある。なければ家庭のゴミから種だけを集めて蒔けばその内に芽が出て果物など簡単に出来る。」

畑中「山田さんって、本当に残念な人だな。」

矢内「ああ。悲しくなるほど残念な奴だ。」

山田「何が残念だ。相変わらず無礼な奴だな。」

矢内「お前も相変わらずで良かったよ。それに今回は二人とも居てくれて助かった。感謝する。」

山田「私は正しいと思った事をしたまでだ。お前に礼を言われる筋合いは無い。変な気遣いは無用だ。」

畑中「ハッハーww!矢内、せっかくだから乾杯の音頭をとれ。」

矢内「そうだな、いつまでも変わらぬ俺達に…。」

山田「スコール。」

矢内「…。」

山田「なんだ矢内、お前の流儀に従ったまでだ。」

矢内「いや、何でもない。スコール。」

畑中「ハッハー、スコール。」

 

俺は乾杯をして飲みながら目を瞑り今までの事を振り返っていった。

勇者が一人で俺を訪ねて来て、町の子供達を助けて、共に旅する仲間が出来て、色々な村や国で良き友人達に巡り会えて助けてもらった。そして、今がある。

外からパーティーの盛り上がる声を聞きながら俺はいつの間にか眠りに落ちていった。

 

山田「矢内?」

矢内「zzz…。」

畑中「寝かせてやろう。矢内の奴、朝の早くからずっとパーティーの準備をしていたからな。それにしても、みんなが大好き賢者様、か。俺達の世界では嫌われ者だったのにな。」

山田「ああ、確かにな。まあ嫌われていたのは主に教師やリーダー格の人間達だったがな。」

畑中「そう言えば山田さんと二人で話をするのは初めてだな。」

山田「そう言えばそうだな、しかし心配しなくても矢内に巻き込まれてしまったからにはこう言う機会は増えるだろうな。これからもよろしく頼む。」

畑中「ああ、新しいエルフの国の残念な女王陛下、よろしく頼むぜ。ハッハーww!」

山田「残念は余計だ…。」

???「ヤー!賢者って、ここに居るの?」

畑中「誰だ?初めて見る顔だな?」

???「賢者が居るかって聞いてるのよ。」

山田「女、矢内は疲れ果てて眠っている。用事なら明日にしてくれ。」

???「話があるから今すぐ起こして。神様の言うことが聞けないの?」

畑中「なっ!」

山田「明日にしろと言っている。」

???「ヤー!起こしてって言っているのが分からないの?あたし神様だよ?」

畑中「山田さんまずい!この女、もしかして…。」

山田「仮に矢内が探しているビーナスとか言う神なら、好都合だ。力ずくで引っ捕らえるまでだ。」

???「ヤー!なんで意地悪するのよ!だからー賢者に用事があるから起こしてよ!」

山田「女、神様だかなんだか知らんが明日にしろと言っている。今日は外でパーティーしているから外で楽しんでいれば良かろう、そして明日にならお前の用事を聞いてやる。」

???「えっ、参加して良いの?ヤー!新しいエルフの女王様、話分かってるじゃん!じゃあ明日また来るから賢者に言っといてね。」

 

俺はその時眠っていて気づいていなかった。すでにこの世界が動き始めていた事を。

 

 

 

 

第15話

開国記念日大パーティー

END


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