ドアをくぐって孤児院の前にたどり着いた。俺はキサラギを叩き起こす。
矢内「着いたぞ。起きろ。」
キサラギ「ぐっ…。頭が痛い…。」
矢内「気がついたか?お前達は先に入っていてくれ。俺はこの男と話がある。」
キサラギ「お、俺は…。負けたのか…。あのような卑怯な手で…。負けたのに何故止めを刺さなかった…。」
矢内「本当に戦う事しか頭に無いんだな…。」
キサラギ「今までそう言う生き方しかしてきていなかった。これからもだが…。」
矢内「それだけの剣の腕があるのにいつまでも流れの傭兵のままでいるのか?例えばファンタルジニアに仕えるとか。」
キサラギ「あの国に仕えるだと?あの国王に仕える気にはならんな。ウィルが王にでもなったら考えるが…。」
矢内「ウィル公子か…。」
キサラギ「俺が傭兵で色々な国に仕えたがアイツだけだな。弱者の為に考えている奴は…。アイツは王族だのに疎まれてしたっぱの仕事をさせられているから王になるのは無理だがな…。」
矢内「じゃあ…。その他の王族を排除してウィル公子を国の代表にするか。」
キサラギ「何?お前、何をするつもりだ?」
矢内「クーデターだ。俺とお前とウィル公子でだ。」
キサラギ「は?」
矢内「隣のバッド王国が内乱になっている今が好機だ。」
キサラギ「俺がお前に協力する理由が何処にある。」
矢内「ウィル公子が治める国、見たくないか?お前、傭兵を止めてその国に仕えたくないか?」
キサラギ「…。」
俺達が話し込んでいると孤児院のドアが開いて子供達が出てきた。エリカも一緒にいる。
エリカ「ねずみかめん、なにしてるの?みんななかにいるよ?」
矢内「あ、ああ。」
子供達はキサラギを取り囲むように集まって行く。
「お兄ちゃん、僕達を助けてくれてありがとう!」
「兵隊をバッサバッサ斬り倒してスゲエカッコ良かったぜ!」
矢内「そうだお前達、晩ご飯が出来るまでこの兄ちゃんに剣術を教えてもらえ。」
「えっ?晩ご飯?」
矢内「今から作ってやるからな。」
「えっ?ねずみ仮面、ご飯なんか作れるのか?」
エリカ「あたし、おひるにごはんつくってもらった!すごくおいしかった!」
矢内「腹一杯食わせてやるからそれまで剣術を教えてもらってめいいっぱい腹を空かせておくんだぞ?」
キサラギ「お、おい!」
矢内「子供達の面倒を見てやってくれ。」
俺は孤児院の中に入っていく。
「お兄ちゃん、剣術を教えてくれよ!」
エリカ「あたしもやる!」
キサラギ「あ、あいつ、何を考えているんだ。晩飯だと?大人でさえ食うものに困っているのに…。」
「なあ、剣術教えてよー!」
エリカ「あたしもおしえてー!」
「お兄ちゃん見たいに強くなりたいんだよ!教えてくれよー!」
キサラギ「あー!分かった分かった!教えてやる!教えてやるから引っ張るな!」
孤児院に入り連れて来た神父さんに声をかける。
矢内「神父さん、危ない目に会わせてしまってすまないな。」
「いえ、貴方のお陰で子供達が救われました。」
ウィル「ここのシスターには話はしている。所でキサラギは来ていないのか?」
矢内「ああ、飯の時間まで子供達の相手をしている。」
奥からシスターが出てきた。
「あの…いきなり来て食事だなんて…。私達にはその日に食べるパンですら無いのです!それを!」
矢内「ここの孤児院の責任者の人か。」
「ええ、貴方達兵隊が戦争なんかして人が亡くなり戦争孤児が増えるのです。子供達は引き取りますが帰って下さい。」
矢内「俺はこの国の戦争を終わらせる為にやって来た。もう戦争孤児は増やさない、約束する。食事の件は…そうだな。台所を貸して貰いたい。材料はみんなの分を用意してある。」
「えっ?は、はい。そ、それでしたら…。こちらです。」
シスターの案内で台所へ向かう。
矢内「うーん、今日は何を作ろうかな。」
「あの…火を焚く薪を取って来ますので…。」
矢内「いや、カセットコンロがあるから必要ない。」
パーティの時に買ったコストコのディナーロールがえっと、3袋も残っている…。
矢内「シスター、このパン、めちゃくちゃ余っているから明日以降みんなで食べてくれ。」
「えっ?こんなに沢山…。良いのですか?」
矢内「俺のせいで子供が更に増えたからな。2日は食べていけるだろう。」
「あ、ありがとうございます!私、貴方に失礼な事を言ったのに…。あの…何か手伝える事は…。」
矢内「そうだな。このジャガイモをこんな感じで棒状になるように切っていってくれ。」
子供が喜ぶフライドポテトにしよう。お鍋に油を注いでカセットコンロに火をつける。その間にもうひとつカセットコンロを出してお鍋に水を沸かしてスープを作る。野菜が入ったミネストローネだ。キャベツの千切りとキュウリのスライスを和えたサラダにメインディッシュは…。
「あの…切れました。凄い数ですね…。これを次はどうしたら…。」
矢内「ジャガイモは油で揚げるから、この切った野菜を人数分に盛り付けてくれ。」
「は、はい!」
チキンナゲットも揚げるか。コストコで買い置きしていたクロワッサンに少し炙ったチーズとベーコン、サニーレタスを挟んだサンドイッチだ。なんとか形になったな。
矢内「シスター、そろそろ子供達を呼んで来てくれ。」
「はい、凄いごちそう…。これ…子供達の分ですか?」
矢内「みんなの分だ。出来立てが1番美味いからな。」
「はい、直ぐに呼んで来ます!」
シスターは大喜びで子供達を呼びに行った。
三神「あら?良いにおいね。」
クロノス「ヤー、晩ごはんも美味しそうだね。」
ウィル「これは、そなたが作ったのか?凄いごちそうだ…。」
食べ物の匂いに釣られて大人達が入って来る。
矢内「ああ、人数分作ってあるからテーブルに並べてくれ。」
ウィル「わ、分かった。」
クロノス「ヤー。」
三神「見たことも無い物ばかりだわ…。」
矢内「あっ、そうだ三神。」
三神「何かしら?」
矢内「ちゃんと人数分を分けているからつまみ食いしたら張り倒すからな?」
この女、出で立ちや格好がサチに似ているからな。念押ししておこう。
三神「人聞きが悪いわね。そこのバ神様と一緒にしないで貰えるかしら。」
クロノス「ヤー、つまみ食いなんてしないよ。」
フライドポテトも揚がったな。味見をしてみよう。
矢内「よし、見よう見まねだがうまくいったな。これは大皿にいれて塩をまぶして完成だ。これも持っていってくれ。」
三神「分かったわ。(山盛りね。一本ぐらいつまみ食いしてもばれないわね。)」
クロノス「ヤー、フライドポテトだ。」
次々と完成した料理を運ばせていく。メインのサンドイッチも完成だ。サンドイッチを置いた皿にチキンナゲットをそえて…。
矢内「よし、これで全部完成だ。運んでくれ。」
ウィル「凄いな。」
矢内「王族だからもっと良いもの食っているんじゃないのか?」
ウィル「…。」
矢内「冗談だ、悪かった。気にしないでくれ。」
台所を出てリビングに入る。神父さんが俺達に話しかけてきた。
「ウィル公子…。バッド王国に住む私達を匿っていただきありがとうございます…。子供達によろしくお伝え下さい。」
ウィル「どういう事だ?」
「私はそこの方とバッド王国に戻ります。私達が居なければ少しでも多く子供達に食べ物が行き渡ります。」
ウィル「子供達の為に命を投げ出すと言うのか…。」
「俺も無い頭を振り絞って考えぬいたんだ。お前、分かってくれるよな?」
バッド王国の兵隊だった男が俺に言い寄って来る。
矢内「神父さん、子供達にはあんたが必要だ。この孤児院に居てくれ。食うものは心配するな。」
ウィル「俺も約束する。子供達にひもじい思いはさせない。」
「神父さん、良かったな。あんたは死ななくても大丈夫そうだ。俺一人でバッド王国に帰るよ。」
三神「フフ、死んでも罪は軽くはならないわよ、おバカさん?」
「人の決意をバカにするな。」
三神「良いかしら?貴方がここに匿っているからバッド王国は隊長同士で争っているのよ?ファンタルジニアにとっても良いことなの。だから、今貴方がする事は死に物狂いで生き抜く事よ。」
「じゃあ、俺は…。」
矢内「死ぬことなんていつでも出来るから飯でも食いながらゆっくり考えたらいい。それよりゼクスは何処に行った?」
クロノス「シスターと外に行ったよ。」
俺達が話し込んでいるとゼクスが孤児院に慌てて戻ってきた。
ゼクス「大変です!シスターがファンタルジニアの兵士達に!」
ウィル「どういう事だ、何故民を守るべきファンタルジニアの兵士が…。」
矢内「そんなのは後だ、行くぞ。」
ゼクス「はい、こっちです!」
「お、俺も…。」
矢内「お前は中でみんなを守ってくれ。頼む。」
ウィル「良いのか?その男…。」
矢内「構わん、任せたからな。」
「あ、ああ。」
小屋を出るとシスターがファンタルジニアの兵士2人に絡まれている。
「ねえちゃん、美人だな?ちょっと相手をしてくれねえか?」
「や、止めて下さい。」
「止めて下さいだぁ?」
「離して!」
このままじゃシスターがファンタルジニアの兵士に襲われる!
ウィル「民を守るべき兵士がなんて事を…。」
矢内「急いで止めるぞ!」
俺達は急いでシスターの元へ急ぐ!が、いち早くキサラギが戻って来て兵士達に剣を構える!
キサラギ「止めろ!!」
「なんだテメエ!身分の低い傭兵ごときが指図するな!」
キサラギ「その人を放して退け、今退くと命だけは助けてやる。」
「お前、俺達が誰か分かっていないようだな?」
キサラギ「忠告は聞く気は無い様だな。仕方ない…。」
キサラギが兵士達を斬りにかかるがウィルが止めに入る。
ウィル「キサラギ!手を出すな、王の息子達だ!俺のいとこにあたる。」
キサラギ「何、王族か?」
「やっと分かったようだな、立場の違いによう!ハハハ!分かったら俺達のお楽しみの邪魔はするなよ?」
ウィル「待て!シスターを解放しろ。」
「ああ?誰かと思えばウィルじゃねえか?俺達に逆らったらどうなるか分かっていないようだな?親父に言い付けて今度こそ死刑にしてやろうか?」
ウィル「俺を死刑にしたかったらしろ、シスターは解放するんだ。」
ウィル達と兵士達が膠着状態の所に子供達が棒を持って飛び出している。
「お姉ちゃんを放せ!」
「放せ!」
エリカ「はなせ!」
子供達が棒を振り回して兵士達を叩いている!
「このガキ共!」
兵士達が剣を抜いて子供達に斬りかかる!
キサラギ「させん!」
キサラギが兵士達の剣を受け止める!
矢内「ウィル!シスターと子供達を先に逃がせ!」
ウィル「わ、分かった!」
ウィルが兵士達の隙をついてシスターを助け出した!
「お姉ちゃん!」
「みんな、ごめんね…。」
矢内「今のうちだ!ウィル!シスター達を連れて戻れ!」
ウィル「あ、ああ。」
ウィルがシスター達を連れて孤児院に逃げ出した!
「女が逃げた!貴様等、せっかくのお楽しみを~!」
キサラギ「何がお楽しみだ、それが国を守る兵士のする事か!ましては王族がする事か!!」
矢内「まあ、待てよキサラギ。」
キサラギ「止めるな。」
矢内「お楽しみを邪魔して悪かったな。俺達がもっと楽しい所へ案内してやるよ。ついてきな。」
「ああ?なんだテメエ!おかしな仮面をつけやがって!何者だ!」
矢内「ああ、俺か?じゃなかった。俺が何者だなんてどうでも良いだろ?ついてこいよ。良いものを見せてやるから。」
キサラギ「どういうつもりだ?」
矢内「さっきの小屋に連れて行く。」
俺はキサラギに耳打ちした。
「良いものってなんだ?」
矢内「行ってからのお楽しみだ。一時の快楽より良いものだ。お前達の株の上がる良いものだ。」
「なんだ?」
俺達は兵士達を先程バッド王国の隊長達を殺した小屋に連れて行く。
矢内「着いたぞ、この小屋だ。」
「ああ?こんな町の外れの小屋に何が有るって…。」
ファンタルジニアの兵士達が小屋のドアを開ける。
「な、これは!」
矢内「バッド王国の1小隊とその隊長だ。」
「この数を殺ったのか?」
矢内「ああ、そうだ。」
「確かに敵国の隊長の首を持っていけば俺達の株も上がる…。」
矢内「そうじゃねえだろ?隊長の首1つで良いのか?」
「どういう事だ?」
矢内「だからこの兵隊の服に着替えてバッド王国に進入して後二人の隊長もたおすんだよ。」
「そうか!上手く行けばバッド王国は俺達の物に出来る!」
キサラギ「…。(この男は何をするつもりだ?)」
ファンタルジニアの兵士達はバッド王国の兵士の服に着替える。その間に俺はキサラギに小声で話しかける。
矢内「ここなら死体を隠すのに問題ないだろ?俺が合図をしたら殺ってくれ。」
キサラギ「分かった。」
着替え終わった兵士達が俺に話しかけてくる。
「これでバッド王国に潜り込めるって訳か。あの女を逃した事は不問にしてやるよ。ウィルにもそう言っとけ。」
矢内「1つ教えてくれ。」
「ああ?お前、さっきから口の聞き方が成って無いな。」
矢内「ウィル公子は何故王族なのに国境の警備なんかやらされているんだ?」
「神の意向だ。我が神アフロディア様は醜いものが嫌いでな。妹のヴィーナス様の為にも顔の美しいものにしか城には近づけないんだよ。」
矢内「そうか、あの顔ではしょうがないか。(ヴィーナス…。こんなに早くに見つけれたか。)」
「そうだな。俺も男前に生まれて来て良かったよ。」
矢内「服は預かっておく。貸してくれ。」
俺はファンタルジニアの兵士の服を2着受け取った。
「確かに良いとこに連れて来てもらったな。」
俺はキサラギに目を向けて合図をする。
矢内「良い所に行くのはこれからさ。二名様、地獄の底までご案内だ!頼む。」
キサラギ「そう言うことか。」
キサラギが鋭い突きのラッシュで兵士達を刺し殺した!
「がっ…。貴様!こんな事をして…。ただで…。」
兵士達は息を引き取った。
矢内「連撃乱舞か。」
キサラギ「何故その名を?」
矢内「あっ、いや、なんかカッコ良さそうな名前がパッと浮かんだんだよ!ハハハ!」
キサラギ「まあいい。で、どうする?何か考えがあってここに誘導したのだろう?」
矢内「ああ、ここで殺して全て燃やしたら分からないだろう。服もこっちにあるしな。」
キサラギ「証拠隠滅か。」
矢内「で、協力してくれるのだな?」
キサラギ「ウィルしだいだ。」
矢内「分かった。すまなかったな、汚れ仕事をさせてしまって。とりあえず戻るか。」
キサラギ「ああ。」
小屋に火をつけて俺達は孤児院に戻った。