幻想野球異変   作:紗夜絶狼

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突然の守備交代にレミリアの炎上未遂があったものの、何とか無失点に抑えたドリームズ。そして魔理沙と霊夢が見たものとは。


第18話 新たなる刺客

「霊夢、あれはまさか・・・」

 

「えぇ、間違いないわ」

 

霊夢と魔理沙は、何か嫌な予感がするかもしれないと感じた。

 

「3回の裏、ドリームズの攻撃は、5番 ショート 十六夜咲夜」

 

この回もドリームズ打線は繋がっていく。咲夜、椛の連続安打で無死一、二塁とすると、魔理沙がレフトスタンドにホームランを放ちこれで4点目。更に小傘から4者連続安打があり10対5と差を縮め尚も満塁で打席には3番のサブロー。だが流石に乱調過ぎたのか梨味監督がベンチから出てくる。どうやら前渡を諦めるようだ。

 

「大阪バファローズ、ピッチャーの交代をお知らせします。前渡に代わりまして愛強久、背番号22」

 

「右のサイドハンドか、厄介だな」

 

サブローは上手投げの投手には滅法強いが、逆に横手や下手になると弱くなるという弱点がある。そのためあらかじめストレートに狙い絞り、ピッチャーを迎え撃つ作戦にした。マウンド上の愛強は、横手からカーブを中心に投げ込む。緩やかなカーブはサブローを苦しめ、ファールにするのがやっとだった。その後何とか喰らいつくも、キャッチャーへのファールフライに終わる。そして4番に入っている屠自古が打席に向かう。一死ながら満塁のこのチャンスに、球場全体が独特の緊張感に包まれていた。

 

「私が決めないといけないのよね、しっかりしなさい私」

 

そう自分に言い聞かせて自らを鼓舞した。だが急造で作られた屠自古の打撃では歯が立たず、わずか3球で片付けられてしまう。続く咲夜も三振に倒れてしまい3回の裏が終了する。流れを変えるために何とかものにしたかった満塁のチャンスだったが、それを生かせなかったドリームズに再び不穏な流れが傾いてしまった。4回のマウンドにも変わらずレミリアが上がるが、癖を見破られたレミリアには抑えられる力がなく、9番の水谷に安打を許すとそこから四球を2つ重ね満塁に。打席にはチャンスに無類の強さを誇る磯川が入るが、ここでまたも梨味監督が出てくる。すると磯川はベンチに引っ込んで行く。

 

「大阪バファローズ、選手の交代をお知らせします」

 

得点圏に強い磯川への代打に紫は不審がる。「なぜあそこで代打を?梨味監督の意図が読めないわ」何故代打を出したかはすぐさま分かることになる。

 

「3番の磯川に代わりまして、代打岡崎。バッターは岡崎夢美、背番号15」

 

「待ちくたびれたわよ」アナウンスとともに、夢美はベンチからゆっくりと姿を現す。その立ち振る舞いはまさに強打者そのものだ。今までの流れから何かを察した霊夢は「紫、私を出して」と直談判。勿論紫は出したくないのが本音だが、霊夢の強気の発言に鋭い眼差しに紫は根負けし、炎上したレミリアを諦め、ストッパーとして霊夢を登板させることにした。

 

「幻想郷ドリームズ、ピッチャーの交代をお知らせします。レミリアに代わりまして、博麗霊夢。背番号24」

 

球場はおもにドリームズファンにより歓喜に包まれた。当たり前である、霊夢は幻想郷の守護者にして人気者。まるでアイドルの始球式みたいだ。サウスポーの霊夢は入念に投球練習を行う中、打者の夢美は霊夢に声をかけた。「まさかまた貴方と対決出来るなんて嬉しいったらないわ」霊夢は投球練習を終えすぐさま言い返した。「なんでアンタが敵チームに居るかは分からないけど、全力で倒すまでよ」こうして始まった二人の対決。セットポジションから霊夢は、左の夢美から逃げるスライダーを外角低めへ決めストライクを奪い取る。その後ボールを2つ続けてしまうが、内角高めのストレートがストライクとなり追い込んだが、その間夢美はピクリとも動かず見逃している。球場は一層盛り上がりを見せる中。

 

「球審、タイム」

 

押せ押せムードの中、唐突にタイムをかけマウンドの霊夢の元に走る永琳。「何よ、今大事な場面なのよ?次で決めるつもりなんだから早く戻ってよ」集中していたため口調が荒々しくなる。それでも永琳は引くつもりはなく口を開ける。「もしかしてなんだけど、夢美は夢想封印を狙っているかもしれないの。だから夢想封印以外の球種には手を出していないの」この永琳の考えに霊夢は納得はしたものの「永琳、私は真っ向から勝負したいの」と言い、ポジションに戻るように促した。(どうなっても知らないからね)不安があるもののここは信じてみることにしポジションに就く。入念なサイン交換をし、霊夢は夢美に渾身の力を込めた夢想封印を投げ込む。コースは内角、ボールからストライクになる絶妙なコントロール、夢美は狙いすましたようにバットをスイングする。だが急激にブレーキがかかる球に態勢を崩されている。これは抑えたか?と確信に近づいた時。

 

「想像以上な球ね、だけどこれも想定の範囲内、打ち返せるわ」

 

その言葉通り態勢を崩されながらも夢美は真芯で捉えてみせた。打球は地を這うような弾丸ライナーで霊夢の足元を抜け、センターへ向けて伸びていく完全なヒット性。誰もが諦めたその時「バシッ!」何者かのグラブに打球が収まった音がした。一瞬の出来事だったが霊夢は見逃さなかった。その主はショートの十六夜咲夜、咲夜はあらかじめセンター寄りに守っていたため、あの痛烈な当たりを横っ飛びで反応し好捕する、今ので1アウト。これを見たセカンドの椛はすぐさま二塁に入り咲夜は流れるように椛にグラブトス、これで2アウト。捕球した椛は迷いなく三塁の小傘に送球する、三塁ランナーが飛び出しておりまだ塁上に戻れていないのだ。椛からの素早い送球を小傘は落ち着いて捕球し3つ目のアウトを奪い、まさかまさかのトリプルプレーの完成だ。このトリプルプレーに観客達の歓喜やため息が入り混じる中、誰よりも喜んだのはマウンド上の霊夢だった。

 

「咲夜、あんたよくやったわ!本当にありがとう」

 

この言葉に咲夜は「初回のミスを取り返したかったし、これ以上相手に乗らせてはダメでしょ」とてもクールに返してきたが霊夢は知っている、誰よりも喜んでいるのは咲夜自身だと。なんせ小さくガッツポーズもしてたしね。ベンチに帰ると魔理沙や勇儀達の手荒い祝福が霊夢と咲夜を襲う「よくやったよ霊夢」「ナイスプレー咲夜」もうお祭り騒ぎになっていた。

 

「ほーう、まさかあの打球を取るとはなかなかやるわね、紅魔のメイド長さん」

 

一方の打ち取られた夢美は、何かを得たみたいな小言を呟きながらベンチへ帰っていく、そして夢美は磯川が守っていたライトのポジションに就いた。そしてドリームズは勢いそのままに4回の裏に臨む。6番の椛はファーストの内野安打で出塁し、強肩の的井からすぐさま盗塁を決める、7番の魔理沙は豪快な空振り三振に倒れるが、小傘はサード側へ送りバントを決め、迎えるは前の打席でホームランを打ったフランだがバッテリーは勝負を避け歩かせた。打順はトップの文に戻り二死一、三塁のチャンス。

 

「塁審タイム」

 

ライトの夢美は急に塁審にタイムを要求し、マウンド上に内野手を集めて何やら指示を出しているようだ。「前の打席でも見たと思うが、射命丸は幻想郷最速の脚を持っている。だからあらかじめ前進守備をするのよ」その作戦に異議を唱えたのがサードの中村だった。「今は2アウトだ、無理に前進しては更に失点するリスクが高くなるぞ」確かに両ランナーは足も速く、長打になれば走者一掃してしまう。「大丈夫です、私に考えがあります」そう言うと文に向かい「貴方には単打しかありませんから、今から前進守備をさせていただきますね」元々乗せられやすい文だが、顔色一つ変えていない。「あれで大丈夫です、さぁ、早く守備位置に就きましょう皆さん」夢美の言葉が半ば信じられない内野陣だが、従うしかないとマウンドから散っていった。

 

(きぃいいいい、腹が立ちますね。だったら外野の頭越してやりますよ)

 

どうやら顔色は変えなかったが、侮辱されたことに物凄く苛立っていたようで、夢美の作戦が成功していた。まんまと夢美に乗せられた文は、何でもない直球に力んだスイングをしてしまいどでかいフライを打ち上げてしまう。これでは自慢の脚が生かせない、これこそが真の狙いであり、文はあえなくライトの夢美に捕球されこの回は無失点に終わる。大事なチャンスだったこともあり、ドリームズベンチは酷く落胆した。皆重苦しい空気の中5回の守りに就いていく。その後試合は霊夢と近鉄投手陣の投手戦となり、打線も霊夢を援護したいが、毎回残塁に終わり無情にもスコアボードには0が並んでいきついに8回表まで来てしまう。点差は5点、逆転するには厳しすぎる展開。打席には1打席目に先頭打者ホームランを打った大木、ここで紫は動く。捕手の永琳に変え式神の藍を、レフトのフランを下げ、守備固めの瞬足のあうんを起用。好投した霊夢に変えセットアッパーの衣玖を登板。すると藍は早速動き出す。

 

「咲夜、椛、守備位置を右に3歩。外野も同じだ」

 

藍の指示で出来た守備シフトは極端な右寄りのシフト、いわゆる王シフトに似ている。だが打席の大木は、衣玖の外角への龍魚ドリルを華麗にレフトへ流し打ち。レフトのあうんは左中間に守っていたためすぐさま打球を追う、それを見た大木は一塁を蹴るとギアをあげて二塁に向かってスピードを上げていく。

 

「よし、2塁はもらった」

 

余裕と確信したのか、緩やかにスライディングを開始する。一方のあうんは、大木が一塁を蹴ったと同時にレフトのフェンス際で打球を処理する。するとすぐさま小さく素早いテークバックで、二塁上にいる椛に向かって弾丸のような速い送球を投げる。その送球は考えられない速さだが、それを椛が捕球しタッチするとほぼ同時に大木のスライディングが入る。タイミングは微妙、二塁審の判定は「アウト!!」大きな宣告と共に右手が高々とあがる。あうんの超ファインプレーだ。二塁打だと確信していた大木は大きくうなだれながらベンチに帰っていく。

 

(ありえねぇ・・・。足に自信のある俺が、レフトフェンスからの送球で刺されるなんて・・・)

 

あうんのレーザービームを頭に入れた藍の采配により、試合は進んでいく。続く2番の益田をカットボールで三振に仕留め、いよいよ夢美が登場する。

 

「私の計算上、お二人のバッテリーに打ち取られる確率は低いんですが、私を歩かせた方が先決ではないでしょうか?」

 

藍に向かって事実上の敬遠を持ちかけてきた。「ふざけるな、私達は真剣に勝負しお前を打ち取るつもりだ。だからその申し出は断らさせてもらう」藍は強く断りを入れ、早く打席に入るように促す。「その気持ち、嫌いじゃないわ」そして藍と夢美の駆け引きは白熱し、気付けばカウントはフルカウント、この打席だけで既に19球。セットアッパーの衣玖は息が上がっている。藍は決着をつける為に、まだ使っていないカットボールを内角高めに要求する。衣玖は小さく頷き全力で投球、それに対し夢美はフルスイングで応える。バットはカットボールを根っこで捉えた、それと同時に「バキッ」バットが見事に砕け散る、ボールはホームベース付近に転がるが、砕けたバットの先端は、回転しながら物凄い早さでマウンドにいる衣玖に向かって飛んでいく。その間藍は転がっている打球を処理しファーストに送球し3アウトを奪った。

 

「ボフッ!」

 

藍は鈍い音がする方に視線を移すと、欠けたバットが直撃し、マウンド上で倒れこむ衣玖の姿だった。ドリームズナインは一斉にマウンドに駆け寄る。意識はあるが、左胸を押さえたまま動いていない。

 

「永琳先生、鈴仙、すぐさま治療を!!」

 

2人はすぐさま球場に常備してある担架に衣玖を乗せ、紫のスキマで急いで永遠亭に向かった。




あえて後書きは無しで、今後どうなるかは考察や予想してみてください。
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