おせおせと反撃のムードが入り混じる球場は、更なる熱気に包まれる。そんな中、ドリームズが誇る強力下位打線が、神戸投手陣に立ち向かう。
鳴り響く応援歌の中、藍が打席に入り、山下は2イニング目のマウンドに上がる。
「差は3点差、この場面はまず出塁が先決。まだ諦めない」
山下はモーションを起こし、160キロに迫る速球を投げ込む。これに藍は微動だにせず見送り、小さく頷く素振りを見せた。ゆっくりと足場を均し構え直す、山下は再び速球を投げる。藍は狙いすましたようにバットを始動する。
「カーーン!」
打球はセンターに向かってライナー性の当たりが伸びていく。センターを守る谷は全速力で打球に向かって走るが、捕球する前にワンバウンドして谷のグラブに収まる。それと同時に藍は一塁到達する。
無死一塁とし続くは小傘。だがここは手堅く送りバントを決め二塁に進める、だが次の咲夜は三振に倒れ2アウトとなる。そしてここで八雲紫が動く。チャンスの場面で9番のあうんに代わり、代打に早苗を起用し勝負をかける。昨日の大阪戦では劇的なアーチを架けた守矢の現人神にこの勝負を託す。
「ターイム!」
ここで神戸のリー監督が投手の交代を主審に告げる。そして球場に投手交代のアナウンスが響く。
「神戸ブルーウェーブ 山下に代わりまして、レティ・ホワイトロック 背番号94」
アナウンスと同時に電光掲示板にスペルカードが表示される。神戸のフォーク使いの水田浩二選手だ。
ゆっくりとマウンドに歩いきながら肩を回すレティ、到着するなり投球練習を開始する。よく見ると落差十分のフォークもキレキレだ。
「早苗、あのフォーク打てそうか?」
「サブローさん・・・。ここは打つしかないでしょう!」
「なるほど。心配するまでもないって感じだな、楽しんできな」
何気ない会話をし気が楽になったのか、早苗は笑顔で打席に入っていく。そして中断された試合が再開される。
初球は力んだのか高めに外れボールとなるが、次の球はアウトローいっぱいに決まりカウントを整える。そしてレティは3球目に魔球フォークを投じる。
(このフォーク、ちゆりさんのに比べれば・・・、捉えられる!)
鋭く風を切るバットは、フォークを芯で捉え前に飛ばす。「わあぁぁぁぁ!!!」快音残して打球は歓声を切り裂き高く舞い上がる。打った早苗はゆっくりと確信歩きを始める。「よっしゃー、ホームランだ」ベンチの魔理沙達は大声で叫ぶ、だが霊夢はある異変に気付いた。
「待ってよく見て、なんか早苗の打球の様子がおかしいわ」
霊夢に言われ夜空に浮かぶアーチを見ると、レフトの頭上辺りで急激に失速している。失速した白球は、フェンス手前でブラウンが捕球しレフトフライとなった。誰もがホームランと確信したアーチは単なるフライに終わり落胆するドリームズベンチ。そして誰よりも落胆する早苗はゆっくりとベンチに戻ってくる。
「早苗落胆してる暇はないわよ、そのまま守備に就きなさい。まだ試合は終わってないわ」
この紫の一声を聞いた早苗は、グラブをハメてあうんがいたレフトに走っていく。「霊夢、あのフォークのタネ分かったかしら?」紫が問うと霊夢は冷静に答えた。「間違いなくあのフォークには、とてつもない回転と球威が関係してるわね」霊夢の答えに紫は小さく頷いた。(この試合マズいわね・・・。)
時刻も午後10時を回り、試合は神戸が3点有利のまま9回の表に突入する。神戸は1番の葛城からの好打順、対するドリームズは影狼を続投させる。影狼は緩いカーブを軸にピッチングを続けるが、先頭の葛城にライト前に運ばれ出塁を許す。ここで紫はすぐさま影狼を下ろし、ビハインドの場面で茨木華仙をマウンドに送る。
「まさかこんな場面で登場ですか。抑えるしかありませんね」
華仙はその言葉を胸に魂の投球を魅せる。2番の尾上に送りバントを許し一死二塁となるも、今日ホームランを打ってノリにノッている谷を、決め球のドラゴンズグロウルで三振に抑え込み二死二塁となる。4番のブラウンには、フォークを捉えられるも、ショートフライに打ち取り、9回の表を無失点で終わらせる。そして迎えた9回の裏、ドリームズベンチではサブローを中心に円陣を組んでいた。
「皆、まだ終わりじゃない。この回、レティを打ち崩して逆転していこうぜ!」
「おぉーー!!!」
ドリームズも1番の文から始まる好打順だ。だがここでも紫は動く。核弾頭の文に代えて聖を起用する。その聖は積極的にレティに喰らい付いていき、フォークを真芯で捉えライトへ運ぶも、やはり打球は失速していき、平凡なライトフライに倒れる。1アウトになり2番の椛に回る、持ち前の選球眼と粘り強さを見せたものの、最後はファーストライナーに打ち取られ2アウトに。
「3番 ライト サブロー」
9回2アウトの場面でキャプテンのサブローがアナウンスされる。屈伸などのルーティーンを済ませ、落ち着いた様子で構える。初球レティは外角高めにカーブを投げる、これに対しサブローは何もせず見送り簡単にストライクを取られる。
(この球じゃない、あのフォークを狙うだけ・・・)
だがフォークを投げる様子はなく、ストレートとスライダーを中心の投球を続ける。だが自慢のバットコントロールで何とかカットを続け、気付けば両者の戦いは37球目を迎えていた、そしてその37球目に魔球フォークを投じる。高めから真ん中に落ちるキレのいいフォークだ。しかしコースは真ん中、明らかな失投だった。
「これは紛れもない失投。頼む、届いてくれ」
迷わず振りぬいたバットは真ん中に落ちてくるフォークを捉え、バックスクリーンめがけて飛んでいく・・。
「ゲームセット!!!」
「皆様ご来場いただきましてありがとうございました。本日の神戸とドリームズ試合は・・・。」
久しぶりの投稿になりました。
これにて、第2戦である幻想郷ドリームズVS神戸ブルーウェーブの戦いが終わりました。
次回はどうなるのやら・・・。