Survivor from NeighborHood   作:くそもやし

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後半を読んでよ゛ぐわ゛がん゛に゛ゃ゛い゛ってなる前に6話の冒頭を読んでおくといいかもしれません。
僕は読んでないのでよくわかりません。


彼の異常/檻の記憶

 人っ子一人いない、『閑静』と呼ぶにはあまりに人の気配がしない住宅街。

 その一角で、見るも無残な光景が繰り広げられていた。

 

「もう1度だ、クマチャン」

「クマ、チャン、言うな……!」

 

 膝に手を付き、肩で息をする女子を無感情に見下ろす瞳。

 常に相手の弱点を探る事を習慣づけられたそれに晒された熊谷の首筋は、ぞわりとした震えで声の主の脅威を伝える。

 

「ふーっ、はー……よしっ、来い!」

「開始」

 

 瞬間。

 ぼっ、とスナップを利かせた左拳が突き出される。

 

「ん、くっ」

 

 辛うじて首を逸らして回避するも、息もつかせず繰り出される右拳。

 それを同じく右腕で防ぐ。

 

 よし、と思ったのも束の間。

 引き戻されていなかった左手が、熊谷の喉を鷲掴みにする。

 

「ぐぅっ!」

 

 鋭く、獣の牙のように喉にくい込む五指の感触。

 痛みはないが、それだけにくい込んだ()()がわかって怖気を煽ることこの上ない。

 

「1」

 

 機械じみたトーンで告げられる死のカウント。

 それを熊谷が認識したと同時に、要が指のくい込んだ首を捻る。

 

「かっ、は」

 

 猛烈な違和感。

 生身で「ここまでいったら死ぬ」という角度寸前まで捻られてもトリオン体は活動限界にはならない。

 ただ、それが今救いになっているかどうかは、熊谷の苦悶の表情が全てを物語っていた。

 

「2」

 

 再度告げられる自身の死亡。

 そのまま背負い投げの要領で地面に叩きつけられる。

 

「んぐっ」

(まずいっ!)

 

 休む暇などない。

 熊谷は死にものぐるいで転がった。

 それとほぼ同時に、だごんっと熊谷の口があった場所にかかと落としが突き刺さる。

 

(ひぇぇ……)

 

 思わず顔を青くしてぞっとする。

 もし生身だったら歯茎ごと歯が陥没して口内にめり込んでいた事だろう。

 

 転がったままの勢いで立ち上がった熊谷を見て、要が構えを下ろした。

 

「1度組み合って距離を取るまでに死んだのは2回。目覚ましい進歩だな」

「こっちは生きた心地がしないけどね……」

 

 いまだに荒い息を抑えるように胸に手を置いて、熊谷が呟く。

 要はその言葉に、まるで『よくわかってるじゃないか』とでも言いたげな雰囲気を纏って首肯した。

 

「そうだ、戦闘が始まれば自分は死んだものと思え。生きて帰るという目標を持つから生存の可能性と戦意に比例と反比例が生まれる。戦意の不安定は即ち油断や視野狭窄を生み、それが死に繋がる」

「…………」

 

 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。

 あっけらかんと『死』を語る要の目は、ついさっき熊谷に賞賛を送った時のそれと全く同じだった。

 

「少し状況が悪くなっただけで目に見えて動きに精彩を欠き死ぬ者、逆に僅かな戦況の好転で慢心して死ぬ者。たくさん見てきた。戦意は下げるな、上げるな」

 

 こいつは、たぶんずっと()()だ。

 朝食中のリビングに敵が突入して来たって、こいつは顔色一つ変えずにフォークとバターナイフで相手を殺すだろう。

 ソーセージと同じように相手の肉を突き刺し、バターを掬うように眼球を抉り取れる。

 

 やっとわかった。

 こいつの異常性が。

 10年戦ってきた事実が特殊なのではない。

 飛び抜けた戦闘力が本質ではない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『スイッチ』が無いとでも言うのだろうか。

 

 冷や汗が出てくる。

 動悸が止まらない。

 もしかして、自分は思ったより遥かに危険な人物の目の前にいるのではないか? 

 いや、人物どころではない。

 人の生き死にと他の全てを同じ温度で見つめる視線、あれではまるで────

 

「んがああああああやめやめ! あんたとあたしは友達! そうなの!! そうでしょ!?」

「そうだが、突然どうした。医務室へ行くか?」

「あんたそれ他の人には絶対聞くんじゃないわよ!? 挑発にしか聞こえないから!!」

「何故そうなる? 理解できない」

「んも〜面倒臭い!」

 

 あーやっぱダメ、こいつバカだわ! バカ! バカバカバカ! 

 熊谷は思考を放棄した。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「やっぱ違う顔もできるじゃん」

「んぐ、何の話だ?」

「なんでも。……飲み込んでから話しなさいよ。ほら、汁跳ねてるわよ」

 

 ボーダー食堂にて。

 熊谷は要の正面で頬杖を突きながら一生懸命にうどんを啜る少年を眺めていた。

 さっきまでのどこを見ているのかわからない目ではない。

 今、要の全神経はうどんに注がれており、その視線は一心不乱にどんぶりの中の艶やかな麺(香川産全粒粉)を追っている。

 

「ほら、箸を持つ手はグーじゃなくてチョキでしょ。この前は出来てたじゃん」

「……まずいな、このところカレーづくしでスプーンしか使っていなかったから忘れていた」

 

「失態だ……」とグーで握った箸を見て愕然とする要を見て熊谷は思った。

 

 ──アホらし、怖がってたのが馬鹿みたい。

 

「そういえば、さっきの訓練だけどさ」

「なんだ」

「素手の訓練って意味あるの? 普通にトリガー持って戦った方が経験になるんじゃない?」

 

 純粋な疑問だった。

 トリオン体は基本的にトリオンでしか傷つけられないが、それでもとりわけ『打撃』の効果は薄い。いくら同じトリオン体だからといって、打撃でトリオン体を破壊するためには『スラスター』でも使わないと不可能なのだ。

 若干1名、要の所属する支部に『スラスターパンチ』を行う隊員がいるが、特殊すぎて誰も真似しようとはしない。

 噂では『弧月キック』なる高度なワザも存在するらしいが、これはまあデマだろう。 

 デマだよな……? 

 

 閑話休題。

 そんな訳で、C級のように一つづつ武器を持って斬り合うならともかく、徒手格闘訓練の有用性をいまいちよく分かっていない熊谷だった。

 

「意味はある」

 

 うどんを食べ終えた要はコップの水を1口含んでから言った。

 

「個人戦で10数回ほどアタッカーの武器、主に弧月を奪ってわかった事だが」

「あんた何してんの」

「ボーダーの隊員は優れた訓練システム故に、トリガーの扱いそのものには手馴れているが、素手になると何も出来なくなる者が多い」

「はあ」

 

 だって武器を消してもう一回出せばいいし。

 わざわざリーチが少なく攻撃力もない殴打で戦う必要は無いし、むしろ危険では、というのが熊谷の見解である。

 

「例えば、お前が相手の場合」

「箸で人を指すな。行儀が悪いわよ」

「ごめんなさい」

 

 ともかく。

 おもむろに要は熊谷の目を見つめる。

 何の感情も読み取れない暗い瞳が熊谷の目を捉えた。

 

「その『武器を消してもう一度出す』間に、俺ならお前を五回殺せる」

 

 ごくり、というつばを飲み込む音が誰のものだったのかは言うまでもあるまい。

 つい十数秒前までうどんを熱心に追っていた微笑ましい雰囲気は嘘のように消え去り、得体の知れない寒気が熊谷の首筋を撫でる。

 

「その致命的な隙を埋めるために、徒手格闘は必須の技術だと考える。例えそれが数秒しか出番がないかもしれないものであったとしてもだ」

「うん……それはそう、だよね」

 

 ──こいつは『その数秒』への備えが足りずに死んだ人たちを、数えきれないくらい見てきたんだろうな。

 自然とそういった感想が浮かぶくらい、要の目には妥協や誇張の類はまったく潜んでいなかった。

 

「それに、スコーピオンや……おそらくレイガスト相手にも厳しいだろうが、弧月持ちのアタッカー相手には効果は高い。うまく決まれば反撃・防御・回避の猶予を与えない絶対的な隙を作れるからな」

 

 断言。

 それはきっと、()()()()()敵を倒し──殺してきた実績、経験則からくる『事実』だった。

 

「あたしなんかがこんなこと言っていいのかわかんないけどさ……なんか、あんたがずっと生き残ってこれた理由がちょっとわかったかも」

「そうか。俺にはわからない」

「そっか。でもあんたはさ、そういうちっちゃな……ううん、大きな『もしものため』を見逃してこなかったんだね」

「それはそうだろう。多くの場合死ぬのは一瞬で、一撃だ。武器を再構成するための数秒も、トリオン体を再構成するための一日も、俺からすればどちらも同じだ。訓練を怠る理由にはならない」

 

 熊谷の目を見つめたまま、往時の苦痛など雀の涙ほども感じさせずに要は呟く。そのシャツの袖口から、肉を抉られたような傷痕が覗いているのを熊谷は見た。果たしてそれは、その『数秒』か『一日』のどちらで負ったものなのだろうか。

 そう考えると、こいつがいま目の前にいるのが奇跡のように思えてくる。

 

「そうだね……あんたにしては珍しく良いこと言うじゃん」

「いや、受け売りだ」

「え……」

「どうした」

 

 いきまり言葉を詰まらせた熊谷を見て要が尋ねる。

 

「いや、どんな人間関係があったのかな、って。いや、ごめん! 今のなし! 嫌なこと聞いたよね、ほんと、ごめん……」

 

 当の熊谷はたどたどしく話し始めたかと思うと、「やってしまった」とでもいうような表情を浮かべて慌てて謝罪した。

 

 別に、聞きたいのならば聞けばいいのに、何を遠慮する必要があるというのだろう。

 玉狛の面々や幹部たちに同じことを聞かれた時もそうだったが、要が向こうから来たことを知っている者たちは、向こうの話になると途端にこういう気まずそうな顔をするのが理解に苦しむ。

 

 別に、お前たちがあの場所で苦しんだわけでもないというのに。

 

「構わないが、長くなるぞ」

 

 こうして前置きするのもこっちに来て何回目だろうか。

 そんなことを思いながら、要は記憶の棚を探り始めた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「はっ……は、ぁっ……!」

「弱いな、きみ」

 

 心臓が暴れている。

 這いつくばりながら空気を取り込もうと喘ぐ要の頭上から、そんな声が聞こえた。

 嘲笑や落胆は一切含まれていない、ただ純粋に驚いたといった風な口調だった。

 

「普通ぼくの所に来れるんだったら生身とはいえもうちょっと出来ると思うんだけど…………きみ、自分と同等かそれ以上の奴と戦った事ないだろ」

 

 少し首をかしげて考えていた彼女は、納得したような声で、そんなことを言い出した。

 

 ──まさか。

 

 そんなはずはない。

 自分より強い奴なんて腐るほど見てきた。

 ただ、俺は()()()を見つけるのが早かっただけだ。

 

 だから、そういう奴を見つけたら直ぐに逃げた。

 帰投許可が出る前に作戦領域を離れると()()されるから、雑魚が多い場所に移って誤魔化して、『強い奴』に攻撃が集中し始めたタイミングで便乗して、リスクを少なく戦ってきた。

 

「別に責めてる訳じゃないよ。ただ、今までここに来た連中は強くなろうと()()してなくて死んでったからさあ」

 

 くく、と楽しそうな笑い声が漏れる。

 

「君のが正解だろ、どう考えても。極めて合理的だ」

 

 まだ息の整わない喉を震わせながら彼女を見上げる。

 

「君みたいなのを待ってたんだ」

 

 薄暗く、薬品の匂いが鼻をつく室内で、天井のライトの逆光に隠れた彼女の顔が、にんまりと悪魔の様な笑みを浮かべた気がした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ぼくの事は先生と呼んでくれたまえよ、きみ」

 

 くい、と。

「先生」を自称する女がそんな事を言いながら、ゴーグルを付けて眉間を押し上げる仕草をした。かっこいいと思ってるのかな。

 

「はい、先生」

「わはは! 素直だなー!」

 

 機械油がところどころを黒く汚した表情を破顔させて、『先生』はそう言った。

 言葉通りにそう呼ぶと、彼女はますます機嫌が良さそうに、おお、と驚く。

 

「まぁなんでもいんだよな、名前とか。ぼくも自分のことよくわかんないし」

 

 からからと笑う彼女は、クソマズいと有名らしいレーションの包装紙を「やらねーぞ」と釘を刺して開けながら、話題を変えた。

 

「で、ぼくは今しがたきみをトリガーを使った戦いでボコして、生身同士でもボコボコのボコにした訳だけど」

「…………」

 

 先程の苦い記憶が蘇る。

 相手の実力が高いと見るや脱兎のごとく逃げてきた要には、トリオン体を破壊寸前まで追い込まれるという体験が初めてだった。

 

「まずトリガーね。試作型とはいえ最新なだけあって性能はバリバリだね。でも捻りがなくておもんないから3点」

「はあ」

 

 それを俺に言われても。

 要はそう思ったが口には出さない。

 何が琴線に触れて殺されるかわからないのだ。

 迂闊な事は言わないのが賢明である。

 

 この前は穏やかそうな女性の奴隷が士官のシャツの裾がズボンから出ているのを教えて射殺されていた。恥をかかされたと思ったのかもしれない。

 要は殺された女性を哀れんだ。

 殺された事にではない。

 そんな下らない親切心を持ち、かつそれを己の自己満足のために口に出してしまった事を、だ。

 

 ここでは──少なくとも要たち(奴隷)にとっては──『情』というものはびた一文の得にもならない、と要は思っている。

 事実その余計な感情のせいでいらぬ行動を起こし彼女は死んだ。

 例は極端だがそういうことなのだ。

 

「100点にするにはどうすればいいかって? ぼくにやらせればいいんだよ」

「はあ」

 

 聞いていないしどうでもいい。こいつの話面倒だな。

 空返事の要をよそに、先生の饒舌は止まらなかった。

 

「というわけで改造するからトリガー見せて」

「はあ……は?」

 

 ぴしりと固まる。

 割と今のトリガーに慣れているのであまりやりたくはないが、士官相手に断るという選択肢はそもそも無い。

 

「大丈夫大丈夫、失敗したらぼくが作ったやつあげるし。かっこいいぞ! 光るし喋るし効果音まで鳴っちまうんだ!」

 

 行動範囲拡張許可が降りたからといって、こんな所に来るんじゃなかった。要は強くそう思った。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「いつか絶対、自分よりずっと強い奴と正面切って戦わなきゃいけない時が来る」

 

 調整が終わって、ベッドに寝そべる要の枕元に腰かけた彼女が、クソマズいレーションを煮詰めて作った悍ましい色の液体を飲みながら、さっきとは打って変わって静かに告げる。

 その瞳に、口調に、何か得体の知れない薄ら寒さを感じた要は息を呑んだ。

 

「きみにちょっかいを出したのは気まぐれ。でもその生き汚なさは使えると思ったんだ」

 

 つぱ、と水音を立ててストローを口から離した先生が、それをじっと見つめながら話を続ける。

 

「でもまぁ言われないでもわかるだろうけど、きみはこのままじゃ死ぬよ」

「……」

 

「いくらきみが強くたって、戦い続ける以上一度も負けないなんてことはありえない。さっきだってぼくにコテンパンにされたろ。きみはぼくの服に埃ひとつ付けられなかった」

 

 それは、確信に満ちた言葉だった。

 何か、常識的な観点からくる推論とは全く異なる根拠を持っているかのような。

 

「疲れたろ。帰檻時刻までにはきみの独房(部屋)に送ってやるから、今は寝てなさい」

 

 プシュ、と首元で音が聞こえた。一瞬の痛みの後に、何か冷たい物が首の中に流れ込んでくる感覚。そのどこか心地よい感覚を最後に、要は目蓋を重く閉ざした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

『甲型急7-21段17番に通達、起床時間です。繰り返します、起床時間です』

 

 柔らかな口調の声が独房に響き渡る。

 精巧に人間の女性の声を真似ているが、隠しきれない空虚さが滲むこの音が要は嫌いだった。

 ベッドから起き上がると同時に、要はぼんやりと意識を失う前の事を思い出した。

 

(俺は……そうだ、あの時)

 

『先生』と名乗る謎の女に半ば無理やりトリガーを改造され眠らされたのだ。

 

 要がそこまで思い出した時、その思考を断ち切るように再びアナウンスが発せられる。

 

『おめでとうございます。貴方は本日付で所属部隊を異動になります』

「……どういう」

 

 事だ、と言おうとして止まる。

 思い当たる節なんて一つしかない。

 

『つきましては、部隊長からのメッセージをご確認下さい』

 

 要の混乱など知ったことかとでも言うように、音声はそこで一旦途切れ、つい最近聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

『やほ、これを聞いてるって事はぼくの申請が受理されたって事だね。とりあえずきみにはその、ぼくが改造したトリガーのデータ収集をしてもらいます。改造前の使用感を崩さないようにしてるからそうそう使いづらいってことはないんじゃないかな。ぼくが改造したんだから強いよな? 強いって言えよオイ……! 自信なくしちゃうだろ……!』

 

 ふざけた口調で告げられる命令。

 こういった無茶な要求はもう慣れている。

 士官どもはこういう奴らだと納得もしている。

 だが、だからといって易々と受け入れられるかと言えば、それはまた別の話だ。

 

 まあ、こちらには最初から拒否権なんてものは存在しないのがいやなところだ。

 

『この要望を通すのにどれだけ苦労したことか。めんどくさいんだぞ、こういうの』

 

 何故、とは聞かない。意味が無いから。

 ついでに言うと興味も無かった。

 あとちょっとムカついていた。

 

「俺は何をすれば?」

 

 意識するのは何時だってそのことだ。

 逆らうから傷つく。

 だったら、やれと言われたことにすぐ頷けばいい。

 頭を垂れ、傅き、犬のように返事をして命令を実行するのだ。

 そうすれば死なずにすむかもしれない。

 

 そしてふと思い出した、この音声が録音だという事に。

 またあそこに行かなければならないのか、と思ったところで、録音の中の先生が続けて話し始めた。

 

『今頃きみはこう思っているだろうね。「で、俺はなにをすればいい?」って。従順だねえ』

(…………得体の知れない女だ)

『得体の知れないヤツだって思った? それはむしろぼくが知りたいんだよなあ』

「…………」

 

 独り言の多い奴だ。

 

『独り言の多いヤツだっておも────』

 

 要はインカムをひったくりメッセージを中断した。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 その国は資源にあふれ、その高い技術力は近界においても非常に高いレベルにあった。

 しかし不運な事に多数の国の領域と重なる軌道を描くその星は、多くの国家に攻め込まれることとなった。

 

 その国を暗黒の海から見下ろしながら虎視眈々と好機を伺う複数の遠征艇。

 

 その一つが、一夜にして血の海に沈んだ。

 

 

 

 

『やって貰うこと? 今までと変わらないよ。命令を聞くだけ。送り迎えは任せな。遊び相手はたくさんいるから、ぼくが迎えに行くまで退屈はしないだろ』

 

 

 

 

 

 

 

 




毎度の事ながらうろ覚えで書いてるので「原作と違うぞ帯島ァ!」「てめェーの作品内ですら矛盾が起きてるぞ帯島ァ!」みたいな指摘を頂けたら原作を読み返すのに夢中になって次の投稿を1ヶ月延ばすことができます

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