最初の導入部分なので、説明的な部分が多くなりますが、最後まで読んでくれたら嬉しいです(^-^)
「えー…このように、足が15本あるとされている、始祖の神オクトスが宿す17個の『操作能力』が人々に分け与えられ…」
少し古びた木造建築の教室に、目の下に隈のついた教師がいかにも気だるげな声で喋っている。
生徒も同じく気だるげなのは言うまでもなく、熱心に聞いている者はほとんど…いや、1人もいない。
それもそのはずで、現在受けている歴史の授業内容がここ半年ほとんど変化が無いのだ。
従って、生徒たちは理由も分からずに何度も聞いた覚えがあることをひたすら耳に入れられていることになる。
…教師もまた、理由も分からずに同じ内容の授業を繰り返しているのだろうか。
歴史が浅くて教えることが少ないなら、他の勉強をさせた方が良いんしゃないか。
そんなふうに、ボサボサの黒髪を生やした少し小柄な少年、ライ=リードは細い目を更に細めながら頭の中で愚痴を垂らしていた。
「それはもう聞いた…」と思わず頭の中に留まらず小声で言ってしまいそうになってくると、チャイムが授業の終わりを告げた。
…まったく、何も得るものが無い時間である。
この授業が今日の最後の授業だったため、そのまま終礼となった。
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…17個の『操作能力』。
先生が言っていた通り、この世界には、『操作能力』というものが存在している。
俺が住んでいるスド国と北にあるノルド国は現在戦争中で、その戦力としてその能力が使われているらしい。
この世界に国は2つしかないため、仲良くやれば良いのに…と思うが、そうもいかないようだ。
スド国とノルド国は俺が生まれた4年後…13年前からずっと戦争をしたり、しなかったりを繰り返している。
原因は2国間の広い海の上にある、これまた広い島…チェントロ島というドーナツ型の島があるのだが、そのポッカリ浮いた中心部の海にポツンと浮かんでいる島…トレ島の地下資源の奪い合いによるものだ。そのため、現在チェントロ島は戦地となってしまっている。
そして戦争が始まったちょうど13年前、『操作能力』というものがスド国で発見されたのだった。
最初に見つかった操作能力は、『炎』。
当時11歳の少年がこの能力を持っていたらしい。
そして、その後『風』『電気』『地面』『光』『水』が次々と発見されて、能力者で構成された『特別軍』というものもある…らしい。
『らしい』ばかりだが、とどのつまり、俺のような一般人は全然分からないのだ。
『操作能力』はどのようなものなのか。
15年前にどのようにして能力は発見されたのか。
のようにして能力は発動されるのか。
『特別軍』の隊員はどのような人たちなのか。
…など、きりがないほど疑問がある。
だが、俺は一般人ながら知る機会は持っていた。
何故なら、俺には数少ない友人の中にマルブ=フィニックという『水』の操作能力者がいたからだ。
綺麗な白髪で目は丸っこく、身長は高い、という俺とは真逆のようなスペック。
これまでは、一般人が口を挟む話でも無いと思っていた。なので、特に能力について聞くことは無かったが、自分の好奇心を抑えることができずに遂に聞いてしまった。
「マルブ、操作能力ってどういうふうに発動させるんだ?」
まずは単純に気になることを聞いた。
「ああ、簡単だよ。自分の手を胸に置いて右に回すだけさ。心臓を右回りにねじるようなイメージで…って、こんなこと知ってどうするの?」
「ただ知りたいだけだよ。というか、意外と簡単に教えてくれるんだな。」
「…? 別に隠すことでもないでしょ。教えてくれる人は少ないだけど。」
「じゃあ、どんなふうに『水』を操作するんだ?」
「操作の仕方…か。操作能力は腕とイメージが大切なんだ。だから、自分が操作するのを頭の中でイメージして、そのままに腕を動かしたら操作できるよ。」
「へえ。じゃあ、操作能力って何なんだ。何でこんなものがあるんだ?」
すると、マルブは軽快に答えていたさっきとは打って変わり、突然考え込み、こう言った。
「それは…分からない。そもそも、操作能力自体まだ不明なことが多いんだ。神オクトスが17個の操作能力を分け与えた、なんて所詮神話の話だし、能力が17個あることなんて確認されてないしね。…誰か真実を知る人はいないのかな。」
能力者でも、不明なことが多いのか。
一説には、『無』から宇宙が生まれたように、突然17人の人間に操作能力が生まれた、と言われているが…どうも信じがたい。
あっ、そういえば、
「マルブっていつ自分に能力があるって分かったんだ?」
このことを聞くのを忘れていた。
知りたいことは山ほどあるが、中でもかなり気になる。
「ああ、それは…」
「マルブくん!」
声がする方を見ると、ミローグ=レミド先生がいた。
茶髪で眼鏡で目の下に隈…例の歴史を気だるそうに教えているあの人である。
「もう5時ですよ!」
「えっ!?あっ、そうか!急がなくちゃ!」
!?何があるんだ!?
「ライ!ごめん!続きはまた明日!」
「ちょっ、ちょっと…」
走って行ってしまった。
何を急いでいるのだろうか。
というか、いつの間にか5時になっていたのか。
俺は終礼後は即座に帰路に着くタイプなので、この時間まで学校にいるのは初めてだった。
「ライ君も、早く帰りなさい。」
「あっ、分かりました。」
教室に残っているのが俺だけになってしまったので、急いで荷物をバッグに詰め込んでいく。
「…君は、真実は何だと思う?」
「…?」
咄嗟のことすぎて反応できなかった。
どういうことだ?
「…いや、何でもないさ。気にしないでくれ。」
「…はい。」
本当は何を言おうとしたのか何故か追及する気にならなかったので、そのまま学校を出た。
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帰りにいつもの並木道を歩きながら、今日のことを考えていた。
なんだか、謎を減らすようで増えた1日だった。
マルブのこと。
そして、ミローグ先生の言葉の意味。
すると、突然マルブが言ったことを思い出した。
『自分の手を胸に置いて右に回すだけさ。心臓を右回りにねじるようなイメージで…』
…冬で寒いからなのか、周りに人はいない。
もしかして、自分にも使えたりするんだろうか。
いきなりそう思ってしまった。
なので、試しにマルブが言ったことをやってみることにした。手を胸に置いて右に回す…心臓を右回りにねじるようなイメージ…
!?
心臓の鼓動…突然「ドクン!」という大きな音が1度聞こえ、その1度の鼓動と合わせるように目の前の景色が大きく振動した。
一瞬の出来事。
何なんだ、一体…
…もしかして、これは能力を使えるということか!?
じゃあ、何の能力なんだ!?
頭の中が混乱し始める。
取り敢えず、腕を振り回した。
何も無い。
もし能力を使えるとしても、どんな能力か知らないので、イメージできない。
…そのまま、小一時間が経った。
「何なんだよ…」
何もできないじゃないか。
そう思い、天を仰いだ。
そして、能力が使えると勘違いした自分を思い出し、妙に恥ずかしくなってしまった。
誰も見ていないのに、どこか遠く…雲の裏にでも隠れたくなった。
そう思って、腕を降り下ろすと、
俺は空中に浮いていた。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
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