機械の皇帝   作:赤髪道化

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 前回の予告通り決闘(デュエル)(リアルファイト)と、魚人街出身の何人かと会う話。アーロンの腹違いの妹シャーリーは新世界編29歳。たぶんこの年はまだ(ちい)サメ。
 ロゼがマリージョア襲撃に同行したことを知っている人は、タイヨウの海賊団ではタイガーとアラディンだけですね。2人とも黙っているし、はっちゃん達には10日間で会う機会がなかった。
 魚人街って元保護施設だし、シャボンで覆われて呼吸も出来るってことでいいんですかね。海の森でも普通に呼吸出来てたし、水中だと料理も薬の調合も出来ないでしょうし。
 ようやく、結構長くなってしまった新世界編の15年前の年も終わりです。よし!


〝魚人街の人々〟

 再び全身を機械に変えて引っ張ってもらい、魚人島を出る。

 タイガーさん達の出身地である魚人街は、魚人島の外の深海地区にあるらしい。

 下に泳いですぐに着いたが……

 

「なあ、あの馬鹿でかい船は何なんだ? 魚人島の半分くらいあるぞ」

「ああ、あれは〝ノア〟だ。来たるべき時まで決して動かしちゃいけねェって話だ」

「ネプチューン王が言うには、大昔に魚人島民総出で造った〝約束の方舟〟なんだそうだ」

「ほう……オレが生きている間に、あのデカブツが動く日は来るのかな」

 

 興味あるな。動かすなと言っても、そもそもこんな帆もない船を、一体どうやって動かすつもりなのか。

 

「さてと、あいつらがいる場所に行くぞ」

 

 ここでも周りから見られるが、こっちは魚人島よりさらにわかりやすいな。大体敵意で少し困惑。よほど魚人と人魚と人間が一緒にいるのが不思議らしい。

 しばらく歩いて進むと、船首が魚の船が見えてきた。帆に太陽のマーク、あれがこの人達の海賊船か。

 

「大アニキ、もう準備は出来てるぜ! ……その人間のガキは何なんだ?」

 

 ギザギザした長い鼻の魚人の男に指差される。

 わかりやすく不機嫌だ。ふははっ! 敵意も牙も剥き出しで、いっそ清々(すがすが)しい。

 

「前に話しただろ。おれとアラディンが世話になった、ハチ達が出入りしてる所のロゼだ」

「ああ、能力者だっていう。チッ、あいつらも酔狂なことをしやがる……人間の、海に嫌われた憐れなガキにわざわざ会うなんざ」

「お前は人のことを言えるような立場か、チンピラ」

 

 口から大きな2つの牙が見える、強面の魚人の男が言い捨てた。

 言い方こそオレを弁護するようだが、こちらも別に歓迎しているわけではなさそうだ。追い出す気はないが進んで仲良くする気もないといった所。まあオレもそうだからお互い様だな。

 

「ニュ? お~ロゼ! タイガーさん達が呼びに行ったのは知っていたが、随分早いな」

「船をコーティングするだけでも、もっとかかるはずなんやけどなァ」

 

 はっちゃんとウィリーさんの、結構会う2人だな。

 オレも2人に近寄って行く。

 

「船に乗らず、引っ張って泳いでもらったからな。2人もタイガーさん達と行くのか?」

「おれはそうだな」

「わいは残ることにしたわ。何人も一気におらんようになったら、ここの治安が心配やからな」

「そうか、良かった。はっちゃんなら、改めてオレが言わなくてもわかるよな?」

 

 オレが海賊に対して、どういう態度を取っているか知っているはずだ。見たこともある。

 

「ニュ~、おれァタイガーさんを手伝いてェだけだ」

 

 大丈夫そうだな。

 

「では気を付けて。オレの基準はともかく、海賊の罪は死ぬまで消えん。手配されれば尚更な」

「(レイリーのことか)ニュ~。ウィリーさん、ロゼ、おれがいない間、メイプルのこと任せて良いか?」

「ああ、もちろん」

「わいもハーケンさんに頼まれたし、そのつもりや」

「ハーケンさんって誰だ?」

 

 初めて聞いた。

 

「言ってなかったな」

「メイプルの亡くなった親父さんや。クラーケンの人魚の、えらい体がデカイ人やった」

「やっぱり他界していたんだな……」

 

 魚人街に住んでいるから、そうだろうと思っていたが。

 クラーケンか……実物を見たことなどないが、かなり大きなタコかイカのような見た目と聞く。北極に住んでいるとか。

 メイプルと大分違うな。あいつは小さいミナミハナイカ(※約6~8cm)の人魚だからか、人魚なのに足があり尾ひれじゃないからか、小さいイカちゃんだ。5歳下のオレと変わらん。はっちゃんも急に大きくなったから、これから伸びるかもしれんが。

 

「ああ、メイプルも顔を覚えちゃいねェだろうが、生まれたばかりのあいつを連れて、重傷でこの魚人街までやって来たんだ」

「そん時の怪我で息を引き取ってもうたが……」

 

 あいつにそんな過去がなぁ。

 2人と話しながら、タイガーさん達のいる所に戻る。

 

「たしか、そっちがジンベエ()()で、こっちがアーロンで合っていたよな? ウィリー()()

「ああ、せやな」

 

「ちょっと待て、クソガキ! なんでおれだけ呼び捨てなんだ!?」

 

 何かと思えば……そんなの決まっているだろう。

 

「海賊だから。敬意が必要だとでも?」

「タイの大アニキやジンベエのアニキもそうだろうが!」

「まだ旗揚げしたばかりだから海賊扱いしていないだけだ。海に出れば2人にもさん付けするつもりはない。お前は以前から海賊を名乗っていたのだから、呼び捨てで問題ないだろう」

 

 オレはこの男をそんなに嫌っていない……むしろ、海賊狩りをしていることと昔メイプルの毒を食らってもおかしを食べ続けてくれていた話を聞いていることもあり、海賊にしては評価が高いくらいだ。

 だがそれはそれ、これはこれだ。今年になって初めて例外も出来てしまったが、基本的に海賊と仲良くする気はない。

 

「ふん、アーロン。お前、自分が人間を傷付けまくっておるのに、人間に好かれるはずがないじゃろう」

 

 ジンベエさんが何か的外れな勘違いをしているな。

 

「いや、何故オレが海賊を倒すことを(とが)めねばならん? オレは賞金稼ぎ(バウンティハンター)、海賊等の賞金首を捕らえて金を得ている者。ここまで来るってことはアーロンが倒していたのはほぼ海賊、人間だろうが好きに潰せばいいだろう」

 

 オトヒメ王妃の人間との共存のための活動を邪魔していることも聞いていたが、もういなくなるのだからわざわざ文句を言わなくてもいいだろう。

 

「……変わったガキじゃのォ……同じ人間がどうなってもいいと?」

「ジンベエさん。あんたはさっきアーロンのことをチンピラと呼んでいたけど、魚人だからって理由で同じだと思われたいのか?」

「ああ、なるほどのォ……ごめんじゃな(オトヒメ王妃が演説でそんなことを言うておったのォ。わしらは人間の一部のことしか知らんと)」

「おいアニキ、そりゃねェだろ!?」

 

 一緒にされたくないのだろう。オレもだ。海賊を一番出す種族は人間だからな。人口が一番多いから。

 

「あっ、やっぱりいるじゃなイカ。おーい!」

「ちょ、ちょっとメイプル! 今はマズイって! 兄さんがいる所じゃ……!」

 

 聞き慣れた声の友達と、フードを被り、黒い前髪で右目が隠れた、両手で水晶玉を抱えた青い瞳の人魚が、メイプルに連れられ近づいて来る。

 

「ロゼ! こっちがよく話してたシャーリーでゲソ。実は今度一緒にシャボンディの家に行きたくて」

 

「ああん!? ダメだダメだ! 今はまだ子供だから連れてけねェが、シャーリーはおれと一緒に、兄妹仲良く人間共をブチ殺すんだよォ!」

 

 話を聞いてたアーロンが血相を変えて物騒なことを言う。

 嫌な仲良死(なかよし)兄妹だな。シャーリーさんにその気はなさそうだが。

 

「お前まだそないなこと言うとんか。ええ加減諦めェや。しつこい(やっち)ャなァ」

「うるせェ! てめェは関係ねェだろうが! すっこんでろ!」

「(やっぱりこうなった。だから言ったのに……)で、でも兄さん……そんなことしてたらインペルダウンに入れられたり、麦わら帽子を被った人に鼻を折られたりするって、私の占いで出てるし……」

 

 シャーリーさんの占いはよく当たると聞いているが、すごく具体的だな……麦わら帽子と言えば、死人を除けば〝赤髪〟が有名だが、四皇にケンカを売るのか。無謀じゃないか? せめてタイガーさんやはっちゃんと関係ない所でやってくれ。そして鼻を折る程度で済ませてくれるのか……。

 

「シャーハッハッハ! 心配するな、水中で息も出来ねェ下等種族の人間なんざ、おれが皆殺しにしてやりゃァいいんだよ!」

「どうせアーロンさんいなくなっちゃうんだからいいじゃなイカ!」

(うち)の教育方針、人間撲滅に口出しすンじゃねェ!」

 

 それは家庭の教育方針では断じてない。

 千年抗争の最中の手長族と足長族なら、国の教育方針に互いの殲滅を掲げているかもしれんが。ハーフには生き辛い世の中だ。

 

「おい、アーロン! おれは何度も殺すなと言っているはずだぞ、たとえ相手が誰であってもだ!」

「何を甘ェことを言ってンだ、大アニキ! そんな海賊、聞いたことねェぜ!?」

 

 タイガーさんとアーロンが言い争っている。平行線で埒が明かんな。オレとしてはタイガーさんの言うことの方が好みだし、こういう時は

 

おい、決闘(デュエル)しろよ

 

 ビクッ!!!

 

 オレの言葉に、ウィリーさん、はっちゃん、メイプルの3人の体が震える。

 安心してくれ、そっちじゃない……カードなんて今は持っていないし。

 

「あァン? 下等種族の能力者のガキがこのおれと戦うだとォ? シャハハハハ! 自殺ならさっさとシャボンから出たらどうだァ?」

「オレが勝ったら、今後シャーリーの好きにさせる。貴様が勝ったら、()()()シャーリーの訪問を今後一切断る。気絶するか死んだ方の負けでどうだ?」

 

 まあオレが断ったところで、父さん達の誰かが認めればあの家には来られるので、実質シャーリーさんは何も賭けていない。

 アーロンはオレを殺そうとするだろうから、賭け金はオレの命だけ。

 まあそんなことはどうでもいい。勝つのはオレだ。

 

「ちょ、ちょっと!? 兄さんは強いし、人間が大嫌いなんだよ? そんなこと言ったら」

 

「(あかんシャーリー……それ逆効果や。あいつ妹に強い言われてすっかりその気になっとる。まあ平気やろ、トランプとかやない分まだマシや。あれは理不尽で心折れるわ……)」

 

「ほォ? 言っておくが、ガキだからって人間相手に手加減なんざする気はねェぞ、おれァ。降参なんか受け付けねェし、気絶程度で済ませると思うなよ?」

 

 乗って来た、話が手っ取り早くて助かるな。凶悪な面だ、自分が負けるなんて微塵も考えていない。オレも考えてなどいないが。

 こっちを向いたタイガーさんに目配せする。カモにするなら今だ。

 

「脅しのつもりか? 構わん。海賊との戦いに命の保証などないのは当たり前のことだ。ふははっ、下等種族のこのオレの心配なんて随分とお優しいなァ、上等種族様は? 殺したければ殺せ。貴様に出来るものならな」

 

「アーロン、じゃあおれとも賭けを追加しねェか? お前が勝てば、おれはもう何も言わねェ。お前が負ければ、言う通りにしてもらう(任せた。おれに負けた所で、こいつは堪えねェ)」

 

 オレの意図が伝わったようで何よりだ。

 

「いいのか? はっ、願ったり叶ったりだ!」

 

 決まりだな。ゴーグルを付ける。

 

「タイガーさんまで……止めないと!」

「大丈夫じゃなイカ? ほら、危ないから離れておくでゲソ~」

 

 メイプルが8本の腕でシャーリーさんの体を軽く持ち上げる。

 

「下ろしておくれよ、メイプル! あの子、あんたの友達じゃなかったのかい!?」

「だから平気でゲソ。カードゲームじゃないから大丈夫」

「なんでそうなるんだいっ!? どう考えてもカードゲームの方が平和だろ!?」

「それはない(シャーリーもロゼも初期手札がおかしいでゲソ……)」

 

 シャーリーさんが水晶玉を抱えたまま、尾ひれをピチピチ跳ねさせてもがいていたが、メイプルに遠くに連れて行かれた。

 

「シャーハッハッハ! 下等な人間の! 泳げねェガキが! 生意気言ってンじゃねェ!!」

 

 2人が充分離れた距離に移動してから、アーロンが向かって来る。

 オレの首を噛み千切る気か。

 

「ほら、どうぞ? もっとも、自慢の歯がズタボロになるかもしれんが」

 

 プライドを刺激し挑発しながら、噛みやすいように、左腕をアーロンの方に差し出す。

 一度自慢の歯を防ぐか。首より腕を噛まれた方が殴りやすい。

 

「アアッ!? 後悔するなよッ、下等種族!! (シャーク)ON(オン)歯車(トゥース)!!」

 

 牙を剥き、体を回転させながら、こちらに猛スピードで突進してくる。

 

鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒腕(こくわん)”】

 

 ガキィン!!

 

 オレの左腕にアーロンが噛み付き、金属音が辺りに響く。衝撃で吹き飛ばされないように踏み止まる。

 修行の結果、全身はまだ無理だが、体の一部に【鉄塊(テッカイ)】をかけられるようになった。

 ゼファーさんの命名で【鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒腕(こくわん)”】。正直メカメカの能力と被るが、だからこそ慣れていて使いやすい。両腕の肘から先だけに【鉄塊(テッカイ)】をかけ、武装硬化で強化している。このまま殴ることも可能。

 

「(な、なんだコイツの腕はッ!? 噛み切れねェッ……!)」

「どうだ、お味の程は? ミンク族からは噛み応えが良いと評判だったんだが、お気に召したか? まあいい。ここからはオレのターンだ……電撃(エレクトロ)

 

 バリバリ!

 

ガアッ!?

 

 噛み付かれている腕から電気を流し、

 

【五百枚瓦正拳】!」

 

 ドン!

 

ゴファッ!?

 

 空いている右拳でアーロンの腹に正拳突きを放つ。【鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒腕(こくわん)”】を使用したまま。

 

 

「なんや、タイの大アニキ。ロゼに魚人空手教えたんか?」

「いや、教えちゃいねェ……」

「じゃが、あの正拳突きはあんたの打ち方じゃろ?」

「見せたことがあるだけだ(あいつ、たしかにあそこで何度も見せたが、まだ10日だぞ?)」

 

 

 歯が腕に噛み付いたまま外れて、アーロンの体が後方に飛んで行く。

 たしか歯が取れてもまた生えてくるとはっちゃんから聞いているから、大丈夫だろ。自分で外して手に持って武器に使うこともあると聞いた。

 

「(クッ、このおれが下等種族のガキに殴り飛ばされるなど……とにかく態勢を)」

 

「まだオレのバトルフェイズは終了していない」

 

 ヒュンヒュン

 

 左手で腰の鞭を取り出し、アーロンの首に巻きつける。

 腕を振るった衝撃で、抜けた歯が地面に落ちた。

 

電撃鞭(エレクトロ・ウィップ)

 

 バリバリ!

 

ガアァッ!?(コ、コイツ、またァ……!)」

 

 電気を流しながら、鞭を引っ張りこちらに引き寄せ、

 

【スクラップ・フィスト】!」

 

 ドゴン!!

 

 鞭を持ったまま、左拳で飛んで来た顔面をぶん殴り、地面に叩きつけた。

 

ガッ……ハァ……」

 

 気を失ったか。

 アーロンの体から力が抜け、倒れ伏す。

 

「(アーロンがまったく歯が立たんか。話は聞いておるし、敵対せん内は頼もしいが、たしかあのガキは賞金稼ぎ(バウンティハンター)で海軍本部によく出入りしておるとか……場合によっては一波乱あるかもしれんのォ)」

 

「アーロンの自慢の歯を防いだ上で連続攻撃。なんというか……えげつねェな」

「そうか?」

 

 近寄って来たアラディンさんがアーロンの治療を始める。

 

「オレの勝ちだな」

「や、やり過ぎじゃなイカ……?(最後のパンチは必要なかったような……)」

「オレのことは殺してもいいって条件だったんだ。大分軽いだろ」

 

 後遺症すらないはずだ。

 ゴーグルを外しながら言葉を返す。

 

「本当に兄さんを倒しちゃったよ……しかも無傷で」

「オレもそれなりに強いから、地上でのボディガードは任された。何ならシャーリーさんも少し鍛えてみるか?」

「え~っと……(あっ、思ったより普通の訓練なんだね)……じゃあお願いするよ」

「任された」

 

 シャーリーさんが水晶玉を見てから、オレの提案を受け入れた。いい結果の占いでも出たのか?

 

「いや、あの、シャーリーはアーロンさんほど丈夫じゃないから、お手柔らかに頼むでゲソよ?」

「ああ。軽くいく」

 

 覇気が使えるようになるだけで大分違うはずだ。

 新世界の海賊も来る可能性があるこの場所で、それだけでは物足りないが、まあ大丈夫だろ。

 身を守るためには必ずしも敵を倒す必要はない。元々地の利はある。水中まで逃げられれば、そう簡単に殺されたり捕まったりはしないだろう。

 

 

 

「このおれが、人間の、こんなガキに……おれは……メダカ以下だ……」

 

 意識を取り戻したアーロンが、膝をつき項垂れ、ボソボソと呟いている。

 

「オレという化物相手に、お前の常識で考えるからそうなる。タイガーさんが賭け金を上乗せした時点で、警戒すべきだったな」

 

 オレを年齢で判断して舐めてかかって来る相手は倒しやすい。

 新兵の訓練では、『見た目に騙されて敵を侮るな』という教訓を与えるためだと、毎年ゼファーさんに全員の相手を頼まれている。だが、オレは別に騙してなどいない。戦場で敵の気を削ぎ、自分を有利な態勢に持ち込んでいるだけだ。

 さらに下等種族の人間のガキが何をしようが、自分の優位は変わらないと見下していたから、簡単に挑発に乗って来た。

 

「……お前より強い人間はどれくらいいる?」

「子供より強い奴なんてたくさんいるな。オレもまだまだ強くなる。この程度で終わるつもりはない」

「チッ、クソがッ! ……シャーリー、好きにしろ。大アニキも、さっきの約束、受け入れた」

「い、いいの!? 本当に!?(正直こっそり行くつもりだったけど、兄さんが認めるなんて……)」

「おう、これからはちゃんと加減しろよ」

 

 シャーリーが驚き、タイガーさんが念を押す。

 

「意外だな。もっとごねるかと思って、もう一戦やることも考えていたんだがな」

 

「「「(まだ殴る気だったのか……)」」」

 

「勘違いするな、化物! てめェとの約束だから守るんじゃねェよ……」

「そうか。まあ納得したのなら、オレはどちらでも構わん」

「てめェと行動することは認めるがな、シャーリーに傷一つ付けるんじゃねェぞ!? それに、ウスラトンカチのナンパ野郎も近付けさせるな!」

「「ああ~、あの人……」」

「ニュ~、あいつも悪い奴じゃねェんだけどな……」

 

 周りの人達は納得しているが、誰のことだ? まあその内聞くか。

 

その妹のことを放って海賊などやっている奴の言うことなど知らんが、オレの前で傷付けるような下らん真似はさせん」

ぐうっ!? 可愛げのねェガキがッ……!」

 

 海賊に可愛げがあると言われたところでな……(おぞ)ましい。

 

「(アーロンさん、気にしていたんじゃなイカ……)」

「そういえば、シャーリーさん」

「シャーリーで良いよ、メイプルも呼び捨てらしいし」

「じゃあ、シャーリー。どうして今までは来たことがないのに、急に来る気になったんだ?」

 

 オレを睨みながら複雑な表情をしているアーロンを無視して問う。

 さっき好きにしろと言った手前、人間に呼び捨てを許可することに文句が言えず、さらに妹にはさん付けなのに自分自身は呼び捨てにされているのはそれはそれで嫌、といったところだろうか?

 

「(反対するだろう兄さんがいなくなるから、とは言えないね……)私、カフェをやりたくて、参考に話を聞いてみたかったんだよ」

「なるほど。母さんに海賊からのぼったくりの極意を学びたいと」

 

 中々お目が高い。母さんのぼったくりはそんじょそこらとは桁が違うからな。

 

「えっ……? いや違」

「策を練って人間を騙し、欲しい物を奪うその狡猾さ。おれとは形こそ違うが、それがお前のやり方なんだな。やられたらやり返す! それが孤高なるサメの流儀だ! 流石我が妹! シャハハハハハハハ!!」

「(もうこの場ではそういうことにしといた方がいいかもね……)」

 

 

 その後、タイガーさん達と別れを告げ、帰りはイカとサメのマーメイドコンビに体をシャボンディまで引っ張ってもらった。

 アラディンさんの覇気は目覚めさせていないが仕方ない。海賊を強くする気はないから。バレたらその時はその時だ。とりあえず、自力で習得して心の声を聞かれないようにしてくれと言っておいた。無茶言うなと言われたが、普通は自力で習得するものだし、女ヶ島(にょうがしま)では出来ているらしいから、存在を認識して出来ると信じることも大事なはず。

 

 母さんの店が落ち着くまでに、改めて自己紹介をして、ついでにシャーリーに占ってもらうことになったんだが

 

「あんたは…………うん、女誑しだね(()()()未来のビジョンは初めて見たよ……)」

「違う……」

 

 それ、占いなのか?

 

「いや、違わないね。私の水晶玉がそう言ってるんだよっ! ()()が女誑しじゃなくてなんだって言うんだいっ!?

 

 シャーリーがカッと目を見開き、そう叫ぶ。

 

「いや知らん。その水晶玉が曇っているんじゃないか?」

 

 すごく叩き割ってやりたい。何を見た?

 

「私も常々そう思っていましたが、やはりロゼはそうなんですね……」

「流石シャーリー……何でもお見通しじゃなイカ」

「何でもは見通せないよ。水晶玉が映し出す、断片的な未来のビジョンだけ。それに、見たビジョンに自分の姿も映らないから、自分のことはわからない」

 

 こいつら……オレという共通のオモチャを前に結託している。

 

「私はファーストキスを奪われたし、よく気付いたら膝の上で寝かされてるでゲソ……」

「どちらかといえば奪われたのはオレだし、泣きついて来て、オレの膝を濡らして勝手に寝るのはお前だ」

 

 ご丁寧に頬を染めているが、お前の変色はもう見慣れた。

 

「私も体を撫で回されたり、一晩中抱きしめられたりしてます……」

「ミンク族にはただの挨拶なのだろう? それにオレを抱き枕にして、涎で寝巻をベタベタにするのはお前だ」

 

 お前が嫌がっているかどうかは、見聞色を使わずとも、尻尾を見ればわかる。

 

「2人共、記憶が定かではないと言うなら、オレの過去の記録(ログ)に証拠が残っているから、上映会でもするか?」

「「ごめんなさい、調子に乗りました。だから寝顔を映すのはやめて!!」」

「ならばよし」

 

 まったく……お前達がオレに、腹黒さで勝てるはずがなかろうが。

 

「まあ、そんなうら若き乙女の寝顔を何度も盗み見ているあんたが、やっぱり女誑しなのは明らかだけども」

「言い方……」

「好意を伝えられて即拒否するのはオススメしないね……その子()が死ぬかもしれないよ?

「そんなバカな!」

 

 というか達って……。

 

「なんというか、あんたを好きになる子って、あんたの言うことを聞かなかったり、脅してきたり、面倒見ないと死ぬかもしれなかったり、拒絶されたら身投げか心中しようとする子だから、その……頑張りな、ロゼ。場合によっては国が滅ぶよ?」

「え、いや、冗談だよな?」

 

 なんか本気で心配して、オレを憐れんだ目で見ているような……見聞色で真偽を確かめたくない。

 最初の方はともかく、甘えられるのは構わんが、自立して生きられん軟弱者はあまり好きではないんだけどな……鉄の意志も鋼の強さも感じられない。鍛え直してやらねば。

 そしてそんな理由で滅ぶ国など一回滅んでゼロからやり直せ。ふざけているのか。働け権力者。

 

「そうだ、まだ時間はあるみたいだし、トランプでもしないかい?」

 

 ビクッ!!!

 

 オレの言葉がスルーされる。まあいい、所詮は占いだ。

 放たれたシャーリーの言葉に、父さん、トリスタン、メイプルの体が震える。さっきも似たようなのを見たな。

 

「オレはいいぞ」

「乗り気だね。私、カードゲームで負けたことがないんだよ」

「気が合うな。何を隠そう、オレもだ」

 

「シャーリーさんってお強いんですか?」

「ロゼと同レベルでゲソ……」

「ああ……別次元領域の住人でしたか……」

「どっちが勝つんだろ?」

「私達に勝ち目は?」

「あるわけないでゲソ」

「ですよね~。はぁ……」

 

 お通夜ムードの2人を余所(よそ)に、オレとシャーリーの視線がぶつかり、火花を散らす。

 

「……では、私がカードを配るから、子供達でやりなさい」

「ありがとう」

「何か悪いね……」

「何、気にすることはない」

「「(あっ、その位置ずるい!!)」」

「(はっはっは、これが大人の状況判断というものだ、若人よ! 世の中戦うだけがすべてではないと知りなさい!)とりあえずババ抜きでいいかね? 手札が同時になくなれば引き分け、覇気も能力も、当然イカサマも使用禁止の、ぼったくりBAR(バー)スペシャルルールだ」

「ああ」「ええ」

「「はい……」」

 

 そうしてババ抜きが始まり、父さんがジョーカー1枚を含む53枚のトランプを、熟練のカード捌きでカット&シャッフルする。クザンさんもやってたリフルシャッフル(※ショットガン・シャッフルとも言う)だ。

 なんであの人海兵なのにカードの扱いに手慣れていてマジックまで出来るんだ? あそこまで達者なカード捌き、今まで一体どれだけサボって遊んで身に付けたんだ……よく部下の人達と遊んだりもしているが、元は女を口説くのに覚えた可能性が高い。父さんがよくやる手口だ。

 

 それぞれにカードが配られ、同じ数字のペアを場に出し、手札を作ると

 

 ざわ……ざわ……

 

「初手おかしい……」

クソゲーです……」

 

 オレの手札が14⇒2枚、シャーリーが13⇒1枚、トリスタンとメイプルが13⇒9枚になった。

 

「なかなかやるようだね……ババ抜きで私の場の支配から逃れて、初期手札がそんなに減るなんて」

「そちらもな。オレの無手札必殺(ハンドレス・コンボ)によるZERO(ゼロ) TURN(ターン) KILL(キル)が防がれるとは……凄まじいフィールだ」

 

 凄腕の決闘者(デュエリスト)のようだ。もっとフィールを高めなければ。

 

「この2人は一体何を言っているんです?」

「さあ? 見えている世界が違い過ぎるでゲソ……1人で壁とやってるのと、変わらないんじゃなイカ?」

 

「では……決闘(デュエル)開始ィィィ!」

 

 父さんが高らかに宣言する。

 順番は時計回りで、トリスタンがメイプルから引き、オレがトリスタンから引き、シャーリーがオレから引き、メイプルがシャーリーから引いて一周する。

 そして、オレのターン! ドロー!

 

「どうやら、オレの方が手札を捨てるのが早かったようだな」

「「(早い……)」」

 

 6のペアが揃い、場に出す。オレの勝ちが決定した。

 

「まだよ! これで同じ数字を引き当てれば引き分けに持ち込める!」

「果たしてそうかな? ならば、オレのカードを引くがいい」

 

 シャーリーが引いた、オレの最後のカードは

 

「(ジョ、JOKER(ジョーカー)ッ……!)」

 

 不敵に笑う道化師が描かれていた。

 

「とりあえず、一戦目はロゼの勝ちみたいでゲソ」

「何なんです、この人達? 積み込みですか?」

「そんなことをしていないのは知っているだろう? 当然能力も覇気も使っていない」

 

 オレは配られる前のカードに触れてはいけないというハウスルールがある。イカサマなどしたことはないというのに……。

 

「使わずに()()という事実が恐ろしいでゲソ……」

「私も、やると大体こうなるんだよね。そして勝ってしまう。負けるなんて初めてだよ」

「何ですか、その怪奇現象は。確率を無視しないで下さい」

「自分の望むカードを引けずに、決闘者(デュエリスト)は名乗れない」

でゅえりすとって何でゲソ?」

 

 順当にシャーリーがまず上がり、トリスタンとメイプルの熾烈なドベ争いの結果、メイプルが勝利した。

 

「負けました……」

「(感情が尻尾に出ているじゃなイカ。わかりやすい)」

 

「次は私が勝つわよ?」

「受けて立つ」

「もう2人でやって下さい」

「私達は見てる方がいいんじゃなイカ?」

 

 トリスタンとメイプルはやらないようだ。

 なので、その後は2人で他のトランプのゲームをした。

 

「(すごい……神経衰弱がただのじゃんけんです。じゃんけんで勝った方が全部めくっちゃいます……)」

 

「(ダウトなのにうそつきがいない……初期手札がマーク以外完全に同じになって配られてるでゲソ。シャッフルした後半分のカードでやっているのに、1~13が互いの手札に揃うなんて……どちらもダウトを宣告せず先攻を取った方が勝つから、ただのじゃんけんじゃなイカ)」

 

「(ちゃんとシャッフルしてるよな? 私も今まで旅の中で色んなものを見てきたが、世界にはまだまだ未知が溢れている……)」

 

「私とほぼ互角……やるわね、ロゼ」

「シャーリーもな……またやろう」

 

 シャーリーと握手を交わした。今回は引き分けに終わったが、次は負けん。

 

「(まだやるんですか……)」

「(あんなイカれた手札でやって楽しいのか? まあ仲良くなったみたいだし、良イカ)」

 

「それと、あの子の手伝いしてくれて、ありがとね」

 

 耳元で小声で礼を言われる。

 

「どういたしまして……そういえば、アーロンはよくあれでメイプルを怒らないな」

 

 たしかシャーリーがメイプルのおかしの、最初にして最長の被害者と聞いているが。はっちゃんには効かないから。

 

「『あいつに悪気はない。ただあほなだけだから』ですって」

 

 どうにかしてその寛大さを、人間に向けるよう仕向けられないだろうか……厳しいか。

 

 客が捌けて店が落ち着いて、客となることを拒んだものを放り出し、血も拭いた後で母さんも合流し、いくつかシャーリーが母さんに質問して、お土産に貰って来たおかしを食べながら過ごした。

 その後でシャーリーの覇気も目覚めさせたのだが、

 

 ギン!

 

「加減してるとはいえ平気そうだな。人によっては弱い電流が流れるみたいな感覚が苦手みたいなんだが」

「そういうのはメイプルのおかしで慣れたよ」

 

 憐れな……。




 ハーケン・リード
 メイプルの父親のオリキャラ。クラーケンの人魚。故人。
 アーロンが言ってた「ウスラトンカチのナンパ野郎」はオリキャラではないです。大分後に登場。こいつのことを知らない人は多いであろうマイナーキャラ。

鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒腕(こくわん)”】
 何かゼファーの影響を受けた技が欲しかったので出来た、肘から先に【鉄塊(テッカイ)】をかけ武装硬化をする技。ゼファー先生がノリノリで名付けてくれました。足に使えば【鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒足(くろあし)”】ですね。
 本文で述べたように能力で体を金属にするのと被ってますが、これが役に立つ日も来る。
 部分的にしか【鉄塊(テッカイ)】が出来ない代わりに、他の体の部位は動かせて攻撃にも防御にも使えるので、早い話がCP9のジャブラが使う【鉄塊(テッカイ)拳法】の劣化版プラス武装色。

 おれは……メダカ以下だ
 海賊無双3でアーロンが【ネガティブ・ホロウ】を食らったらこう言う。他のキャラの反応も隙あらば書きたい。
 シャーリーは人間への復讐に燃えるアーロンを避けてたみたいですが、アーロンはシャーリーをどう思っていたのか原作では出てなかったと思うので、想像でシスコンにしました。人間への怒りが強い分、身内には優しいイメージなので。まあオトヒメの署名活動の邪魔とかネプチューン軍にたかろうとしてましたから、場合によるかもしれませんが。
 アーロンの人間への怒りはまったく消してないはずなのに、シスコンにしただけですごくコミカルなキャラになっちゃったな……おかしい。

 シャーリーの水晶玉占い
 シャーリーのビブルカードの覇気の欄は空欄、つまり未来を見る見聞色を使った未来予知ではたぶんない。水晶玉占いってすごい……そんなことが出来るなら、カードゲームも強いだろうとああなった。サイコロをいくつもまとめて振ったら全部6が出そう。場の支配とかフィールとか、次元が違う。元の次元にお帰り。
 たぶんホーキンスも運命力が高い。まだ愚か者と法王の逆位置の効果しかわかっていませんが、早く【藁人形(ストローマン)ズカード】のすべてのアルカナの正位置、逆位置の効果が知りたいです。声的には青雉の方が似合うね。「当然!! 正位置ィ!!」「何ィ!! 逆位置だと!?」
 シャーリーがロゼに覇気を鍛えられたら、水晶玉とかタロットカードに武装色を纏って、鈍器として使い殴ったり盾として使い銃弾を弾いたり、カード手裏剣として投擲し突き刺して来る。
 最近購入したONE PIECE magazine Vol.1によると、シャーリーは初期設定ではタコの人魚っぽい予言者の老婆だったようです。
 片目隠れ美女で良かった! タコバアじゃなくて良かった! そういえばスリラーバーク編で「人魚はパンツなんかはかねェよ」って言ってたから、シャーリーはノーパン

 シュシュッ!(無言のカード手裏剣) グサッ!

作者「なっ! 何をするだァーッ! ゆるさんッ!」
シャーリー「人魚占術(マーメイド・マジック)黒水晶(モリオン)”】!(※水晶玉に武装色を纏って攻撃する物理占術)」

 ドンッ!

作者「タコスッ!?

 ブシャァッー!!

シャーリー「品のない作者……ん? 水晶玉に未来のビジョンが……次回は2年後、王下七武海にアイドルが加入するね……この水晶玉、ホントに曇ってるのかもね……」
作者「次回予告は……思いつきでやったりやらなかったりします……あと、飛ばした年に起きる結構大きな出来事については、もうちょっと後の年に触れます……」
シャーリー(ノーパン)「あら、まだ意識が……そして、まるで反省していないようだねぇ? 人の名前に何してんだい」
作者「シャーリー(穿いてない)は、なんで決闘者(デュエリスト)になったのか……だが、悔いはない……!」
シャーリー(下半身丸出し)「そうかい。じゃあ、太陽のアルカナ(こいつ)を使うとしようか……【ゴッド・フェニックス! 灼熱の翼で死の抱擁を受けな!!
作者「貴女はどちらかと言うと姉上サマじゃイワァァァークッ!!!
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