シャボンディの無法地帯。その比較的華やかな区画にある店。
本来であれば年齢制限が発生してしかるべき店に、オレは入っていく……薔薇の花束を持って。ここに来る時は必ず持って来るように言われている。非常に目立つが、こういう条件だ。シャボンディにいる間は、この薔薇が枯れない間に会いに来てくれと。でないとうっかり口が滑ってオレの秘密を喋ってしまうかも……だそうだ。
受付で名乗ると、ここのオーナーの部屋の鍵を渡される。本名ではなく別の名を言っているが、正直変えて欲しい。わかりやすくはあるが、自分で名乗りたくはない。
部屋に移動中に従業員から、何故子供が……という目で見られるが、何やら数人がひそひそ話した後、オーナーはショタコンだ、とか言う声が聞こえる。あいつ、自分で自分の首を絞めているじゃないか。この店を会合場所にしてこんな目立つものを持って来させるから……まあ別に風評被害ではなく事実だが。
そのショタコン呼ばわりされているオーナーの部屋の前に着き、鍵を開けて中に入る。
オレが今までに持って来た薔薇が、何本か花瓶に入れられたりしている。壁にはオレの写真が何枚も貼られており、
「ふふふ、いらっしゃい。今日はどのコースにする? 私のおすすめは、『女王様の朝までじっくりコース・本番あり♡』よ、〝
「開口一番それか……セクハラで訴えるぞ? ステューシー」
ベッドに腰掛けた女王様に花束を手渡す。
まだ若く(※ロゼの主観)スタイルの良い整った顔立ちの女性。
肩を出した袖なしの、スカートの丈が膝上の赤いドレスの上から、腰までの長さの白いマントを羽織っている。
短めのウェーブがかかった金髪の上に、白い帽子を被り、その帽子には赤い薔薇。
ここのオーナーで、他にも世界各地に飲食店に娯楽施設、ここのような大人の紳士淑女のための店等を経営しており、弱冠20代(※ロゼの憶測)にして裏社会で〝歓楽街の女王〟の異名を持つ女に、出会い頭のジャブ代わりに言葉をぶつけられる。
「残念ながら、あなたは未成年という以前に、世界政府非加盟国の国民どころか戸籍すらないから、訴訟を起こせないわよ?」
渡した花束の薔薇を花瓶に移しながらそう言われた。
オレはその隣に座る。
「そうだった……オレ、海賊と同じで人権なんて持ってなかった。社会的弱者だった。このまま泣き寝入りか……」
例えばオレが誰かに殺されたとして、その人間は罪には問われない。そもそもオレは存在していないことになるから。法的に人として認められていないから。
「大丈夫、私が泣かせるのはよがり声だから。気持ちよく寝かせてあげるから♡」
「11歳のオレを個室に連れ込んでそんなことを言っているから、店員達にショタコンと呼ばれるんだ」
「あら、見当違いも甚だしいわね。私は将来有望な男に、今の内から唾をつけているだけなのに。保健体育の実技を自分好みに教えているだけで、
ここから帰るとトリスタンから、雌の匂いがするって言われるんだよな……せめて女って言ってくれ。
「では報酬はお金で良くないか?」
「嫌よ。お金で〝
そう言って舌なめずりをするステューシー。
やはりお前はショタコンだし、我慢する気もないだろ。こいつの対象外の年齢になる前に、可能な限り友好関係を築いておかねば。まさか体を売る羽目になるとは……すまん母さん、あれだけ言われていたのに、ショタコンに捕まった。それも無駄に高性能な。
「その〝
誰の未来が茨の道だ。まだ11年しか経っていないオレの人生を勝手に決めるな。こいつによると、オレは間違いなく四皇とぶつかるそうだ。それも、オレの血筋だけが理由じゃないとのこと。何を知っているんだか。
「あら、だったらどれで名乗る? 〝機甲のロゼ〟? シルバーズ・ロゼ?
論外なのは置いておくとして、そもそもこの店でオレとわかる名で入りたくないな……。
「……わかった。〝
「ふふふ、私の
そうなのだ。このショタコンストーカーこそ、ハンコックの七武海入りを政府の中枢にいるという五老星に話をつけてもらった伝手にして、CP-0の諜報員。
経営している店の利益から天竜人の遊ぶ金を生み出したり、政府にとって邪魔な人間を女、酒、
今のこいつの大きな標的は四皇〝ビッグマム〟。あの女は5歳で5000万ベリーの賞金首になり、37年前から夫を替えながら毎年子供を産み続け、妊婦のままでも暴れ回った信じられん海賊だ。妊娠中くらい産休を取れ。ついでに海賊をやめろ。子供に海賊などさせるな。信用を得て近付き、内部から崩壊させようとしているそうだ。〝ビッグマム〟の後継者は、誰が2代目船長にふさわしいのか? という火種を焚き付けているとか。
この若さ(※ロゼの個人的な見解)で
オレを
「空を飛ぶオレを【
オレだけでなく、父さん達からも自分の存在を隠して家を見張るとは……。
「確かにあなたの見聞色は並外れているけど、普段から全力で使っているわけじゃない。標的に気取られないよう気配を消すのと、自分の心を殺して任務に徹するのは、コネで入ったどこぞのボンクラでない限り、覇気を使いこなせていない諜報員でも出来る、
何故その凄い技術をオレのストーキングに使ったのか。
こいつの恐ろしい所は、オレがマリージョア襲撃事件の犯人として怪しいと疑って調べていた……というわけではまったくなく、それ以前に
そんなん対策出来るか。ふざけるな。ソニアに気配がしないことで見破られてから、民間人程度の気配は出すようにしていたのだが、まさかそれが原因で尾行しやすくなって、こんな形で裏目に出るとは……仕事もせずにオレのストーキングをしていたくせに、他のCP-0が気付かなかったオレの犯行に唯一気付いた辺り、世の中おかしい。
オレを脅してきた時に、心の声を聞く見聞色でこいつのことは調べた。調べて後悔した。自分に向けられる情欲を詳しく知るというのは中々堪える……オレに自分の心を知られることで絶頂すら覚えていて、ドン引きだった。
「私がいる時に、あなたが客としてこの店に入ってきた瞬間、私は運命を感じたわ……(あれはもはや、つまみ食いしちゃえ♡という天啓よ)」
「……あの時は、素直に最高だったんだがな……」
そう。オレはまず最初に自分からこの店に来た。
当然性欲を持て余したから……ではなく、あれはオレが精通を経験した日のこと。両親に盛大に祝われた。誕生日よりも。人生に一度だからと。戸惑いながらも『何故知っているのか?』と聞けば、口を揃えて『見聞色』と返される。やめてくれ。本当にやめて。
正直放っておいて欲しかったが、羞恥に耐えながら『ありがとう』と伝える。
トリスタンだけがオレと一緒に顔を真っ赤にしていた。あいつにはオレの気持ちがわかるというか……すでに通った道というか……まあお互いに強く生きよう。
ここまでで終わっていれば、まだ愉快な家族の笑い話だった。だがオレの父親は、〝海賊王の右腕〟、〝冥王〟シルバーズ・レイリーは一味違う。
その数日後の夜、『風俗に行って大人の男になってこい』と言われた。拒否すれば師弟関係を解消するとも。普通そこまでするか……? だが所詮はオレも男、行かなければ師弟関係を解消されるから仕方ないと言い訳し、エロへの探求心に屈して行くことにした。父さんはそこまで考えて、わざとああ言ったのか……?
オレを送り風俗店に放り込んで、笑顔でサムズアップをしていた父さんの顔を見て、オレは修行以外で初めて、あの顔をぶん殴ってやりたいと思ったものだ。
入ってから、『そもそも年齢制限で追い出されるのでは?』と初めて気が付いた。浮かれ過ぎだ。だがここは無法地帯、お金さえ払えば問題ないようだ。
そして受付で淫靡な雰囲気を醸し出している数々のコースから『どれにしようか? というかどれもどういう内容なのかさっぱりわからん』、と思っていると、電伝虫が鳴り響き、受付の人が取りに行って受け答えすると、その表情が驚きに染まる。
何事なのかと思っていると、ここのオーナーがVIPルームにお連れしろと言っていたのだそうだ。『そうか……結局あのコースはどういう内容だったんだろう?』、なんてこの時はのんきに考えていたが、そもそもこの時点で大分おかしい。ここ以外の店に来たことはないから多分だが、普通はVIPルームに案内などされないはず。すべてを察することは不可能でも、少しは警戒すべきだった。
後で知ったが、この時ステューシーは、『カモがネギ背負って食べられに来た!』と小躍りしたそうだ。
そして案内された部屋で、オレにとっては初めてステューシーと会い、彼女にとってはオレを見た時以来初めてオレの半径10メートル圏内に入った。
自己紹介の後に、何故呼ばれたのかを尋ねると、『実は私はシャボンディの
オレの会って話してみた印象は清楚な高嶺のお嬢さんというもの。よく考えればこんな店を経営している人間がそんなわけないのだが、この時のステューシーは、オレを逃がさないために全力で良い子ぶっていた。そしてオレは彼女の張っていた蜘蛛の糸にまんまと掛かった、どうしようもなく愚かな虫けら。
「私にとっても最高の夜だったわ……♡ 穢れなき少年が雄々しい男へと変わる瞬間……堪らないわ!」
「だからお前はショタコンなんだ」
「言いがかりはやめてちょうだい? まだあなたのドカーン!(※自主規制)は貰ってないのに。チュドーン!(※自主規制)にバーン!(※自主規制)やダダダダダ!(※自主規制)しかしてないじゃない」
こいつのどこが清楚なのか。あの時のオレの目は節穴過ぎる。
「オレはカーン!(※自主規制)の方が好きだ……待て、話が進まん。本題に入ろう」
「そうね、続きはまた後で♡」
「それで、ハンコック達を奴隷にしていた天竜人、
あいつらが七武海に入って、さらにアイドルなんて目立つ真似をして、バレないはずがない。
だから前に来た時ステューシーに頼んで、行動をチェックしてもらっていた。マリージョアに不法手段でなければ出入り出来んオレでは難しいが、CP-0のこいつには造作もない。
他には母さん用のウィスキーと、姉さん用のシャンパンも用意してもらった。
「ああ……死んだわ。海の藻屑ね」
「……何をした?」
「あら、私が殺したと思ってる? 殺したのはあなたがファンの蛇姫ちゃん……厳密に言えば海王類かしら? 私がしたのは天竜人が向かっていると電伝虫で教えたのと、彼女達に気付いた天竜人の背中をちょっと押しただけ。『所詮一度は心を折った、貴方様の物なのだから、望むがままに。七武海だろうと男子禁制だろうと、世界の創造主の末裔たる貴方様には関係ありません』って。誰にも話さず海軍の護衛も付けず、自分の雇った護衛だけ連れて
そうか、死んだか……。
「出来れば
「もし連絡したら、あなたはどうしてたのかしら?」
「簡単なこと。飛んで行ってすべての記憶が飛ぶまでぶん殴っていた」
殺しはせん。治療しながら何度も何度も頭を殴る。すべてを忘れれば、あの三姉妹もオレも安心だ。後はその辺の海賊に罪をなすりつけて海軍に引き渡せば問題ない。オレの能力を使えば、暴行現場の映像を簡単に捏造出来る。
「だから言わなかったのよ……でも驚いたわ。私が始末して、あなたがお気に入りのあの三姉妹に恩を売るつもりだったのに、自分でなんとかするなんて。〝
「カウンセリングしただけだが……まあ暗示に近いこともしたな。ハンコックは思い込みが激しいので、あとオレが罪悪感から力を入れたので効果が強い。元々
「なるほど。『強い者が美しい』から、『美しいから強いし、醜いから弱い』にすり替えたのね(そしてだから……ろくに男を知らない子達に、罪な人ね。これから先成長すればどうなるのか、ぞくぞくするわ……!)」
「それよりも……自分で始末するつもりだったって、流石にマズイだろ。お前の護衛対象だぞ?」
何かあったら教えてくれとしか頼んでいないのだが。
「ちょっとした罪滅ぼしよ。七武海入りの手助けでは足りないでしょうし。私は彼女達を助けなかったから……まあ不発に終わったけどね。それに私、本格的にあなたに鞍替えすることにしたから」
「は? どういうことだ? オレを
「今でもあなたが向いていると思うのは変わらないけど……もう世界政府も落ち目かしらって。CP-0の仕事は続けるつもりだけど。その方が助かるでしょ?」
「確かにそうだが……」
鵜呑みにしていいのか? こいつはCP-0、それに最初に会った時も……
「簡単に信用出来ない、といった所かしら? なら方法は決まっているじゃない。最近のことだからすぐに終わるわ」
「はあ……そうするか」
自分の手袋を外す。こいつの過去を見るために。
「ああ……私の過去があなたに丸裸にされるのね♡」
何か他に方法……思い付かんな。残念だ。
立ち上がって、仕方がなく素手で、座っているこいつの頬に触れる。
「あら、そこでいいの? 私はどこでもいいのよ?」
「それは後で」
「放置プレイで焦らす、というわけね」
お望み通り無視して、ステューシーの過去を見る。
こいつが政府に愛想を尽かせたエピソードだけを検索…………ヒットした。
浮かび上がってきたビジョンは……ハンコックのコンサート?
ドクロの周りに9匹のヘビ、
湧き上がる客の中には新聞で見たある国の要人や、天竜人の姿も。歌唱前のマイクパフォーマンスで、初対面の時以来見ていない見下すポーズをされながら罵倒し、何故か歓声が上がる。
そしてハンコックの歌声に合わせて、全員がペンライトを持ちキレのある動きで踊り出す。当然天竜人も。もう何度もやっているような、一糸乱れぬ訓練されたダンスだ。
演奏が終わり、ハンコックがかわいい顔をしながら、要約すると『またお金を用意しなきゃ来ない。来て欲しかったらお金を払え』という要求をする。それを合図に、今度は天竜人以外が跪き、天竜人が真っ先にハンコックに貢ぐ。今更跪いても、天竜人を敬っているようにはもう見えん。お前らさっきまであんなに仲良く踊ってただろ……ステューシーの知識によると、マナーの悪い客はハンコックに石にされるのでこうなったらしい。あとファンの間で貢ぎの品を早く渡せるのは非常に名誉なことなのだそうだ。意味不明。海賊に金品を渡すのが名誉? 海賊ってなんだ? 天竜人が去るまで他の客はずっと跪いている。
この時ステューシーはゴミを見る目で天竜人を見て、『なんで私
次に見えたのは……あれが噂の五老星か。会議で熱く語っている。蛇姫ちゃんのアイドルプロデュースについて。ウロボロスに代わる金のなる木だと。いい年に見えるご老人方が熱心にアイドルについて真面目に話し合う姿は正直引く。たまに接客業の専門家として呼ばれたステューシーが意見を聞かれるが、当の本人は内心『こんなことで私を呼び出して……世界の秩序について話しなさいよ』と思いながら、死んだ目で受け答えしていた。
これが宮仕えのつらさか……もういい、充分だ。
過去を見るのをやめる。
「お前はお前で苦労しているんだな……というかハンコックが原因か」
「本当に。まあハンコックちゃんはかわいいものね。昔を思い出すわ……」
「お前も全く見劣りしない美貌だろ。この肌も
頬を撫でながら
昔を思い出すって……たかが数年くらい(※ロゼの推定)の話で大げさな。
「ふふふ、ありがとう(〝
触れていた手を両手で握られ、頬ずりしてくる。女は少しでも若く見られたいものなんだな。
「だが、オレに鞍替えも何も、CP-0は辞めないなら今までと同じじゃないか? 給料でも払った方が良いのか? 現金で」
結局天竜人の護衛も自分の任務も続く。まあ、辞めるなんて言った所で、はいそうですかと辞めさせてくれるとは思えんが。外部に漏らされたら困ること、いくらでも知っているだろう。
「誰かの下に付くのが無理そうなあなたには理解出来ないかもしれないけど、世の中誰もがトップに立ちたいわけじゃないのよ? 誰かを神輿に上げて自分は実権を握り支配だけしたかったり、甘い汁だけ吸いたかったり、そして私みたいに、誰か自分が仕えるに足る人物に仕えて奉仕するのが悦びだったり。仕える対象が変わるだけで同じ仕事でも愉しくなるわ。あなたの周りだとトリスタンちゃんもその気質ね。それと給料はもちろん貰うわ、体で♡」
たしかにトリスタンはそんなかんじだな……何でもかんでも自分でされては恩を返しにくいから、もっとダメになって世話をさせろ、という意味の言葉を言われたことがある。ひどいことを言う奴だ。
そしてこいつもひどいな。オレは誰かの下に付くのが無理そうって、遠回しに社会不適合者って言ってないか? 何かでトップに立ちたいわけではないが、確かに誰かに仕えたい気持ちは理解出来ん。
だが
「誰かに仕えるのが喜び? 女王と呼ばれるお前が? あと肉体関係が報酬って愛情がないみたいで嫌とは思わないか?」
「誰かを悦ばせる術を知り尽くしているからこそ、私は〝
「なるほど……確かに一理ある」
実際、こいつに聞いた喫茶店の経営のこと、シャーリーが参考になったと言っていた。
そろそろ手を引っ込めて、また手袋をはめる。
「あら、もう
「必要以上に人の過去や隠し事を詮索したくはない。それにお前の場合、知ってはマズイことも知っていそうだ」
「そう、まあ賢明ね」
「では早速、2つほどお願いがある」
「お願い? どちらかと言えば、命令の方が気が乗るのだけど」
細かい……。
「はあ……まずはハンコックの宣伝をしろ。天竜人と、上が腐った国で。奴隷なんて買うなら、そっちの方が余程良い」
天竜人については機会はいくらでもあるし、後者も世界中にあるこいつの店で宣伝すれば、労せずして出来るだろう。
「私にとっても気がかりが取り除けて嬉しいわ。ところで天竜人は簡単だけど、上が腐った国ってどのレベル? 加盟国にまったく不正がない国なんて、ほとんどないわよ? 国家元首がまともでも、私腹を肥やそうとする人は少なからずいる。世界貴族って頂点が好き放題やっていると、真面目にやるのが馬鹿らしくなっちゃうのね」
「では、まずは奴隷売買や
「私はもう取り扱ってないけど、確かにその対象ならわかりやすいわね。ついでに完全に私と裏社会との縁を切らせる気かしら?」
「いや、むしろそのまま潜入してもらいたい位だ。後で潰すために。得意だろ?」
「私のことを理解してくれて嬉しいわ。それで、もう一つは?」
正直こっちは出来るかわからんが。
「タイガーの対応について、
「
「何? どういうことだ?」
「マリージョア襲撃事件……あれって、私達
「すまん……」
オレが
「あら、あなたはいいのよ。命じたのはあの人達だし。まあそんなわけで、あなたとの素敵な出会いもあったけど、私達では任せられないって言われたのよ。ふふふふふふ……」
すごく根に持っているな……。
「それで、海軍については?」
「彼の件は海軍が全権を任されることになったわ。あのセンゴク大将、五老星を上手く乗せてたわね。たぶんこれを機に海軍の発言力を上げようとしているのでしょう。強いだけじゃなくてやり手ね。具体的な作戦については全く。私達CP-0が海軍から何て言われてるか、あなたなら知ってるでしょう?」
「天竜人の傀儡か」
海軍も把握出来ない越権行為を行うことがあるため、そう呼ばれている。
同じ世界政府の下部組織とはいえ、海軍と
それにしてもセンゴクさん……よくガープさんの手綱を握らされているからな。まああまり制御出来ているとは言えんが、あの人よりは扱いやすかったのだろう。あの人は話している途中で寝ることがある。寝ながらもせんべいを食べ続け、起きた時に『誰じゃァ!! わしのせんべいを勝手に食ったのは!!』と怒鳴ることもしばしば。お
「その通り。随分嫌われちゃってるから、聞き出すのは無理ね。あなたの方がまだ可能性があるわ。あとはそうね……フード付きのマントを着た集団が、彼に接触しようと探ってるみたいね」
フード付きのマント? そんなむしろ怪しさが増して目立つ服装、しかも集団、余程の理由がない限り……
「もしかして、ミンク族ではなかったか?」
「確かにそんな報告もあったけど……知り合いなの?
ノックス探検隊か……そんな格好で
確か彼らは、魚人島で
「ああ……たぶんな。その彼らの情報を隠すことは出来るか?」
「今から完全には無理だけど、遅らせるのは可能ね」
「それでいい」
せっかくまだ手配されていないのだから、このまま見つかるなよ。
「今日の所はこれで充分だ」
「仰せのままに。じゃあ……これからはお愉しみといきましょうか♡」
☆☆☆☆☆
「フッフッフ、お前がトレーボルの言っていた、おれと取引がしたいって言う命知らずか」
そう言って笑うのは、この場所を根城にする海賊団の船長、〝天夜叉〟ドンキホーテ・ドフラミンゴ。懸賞金3億4000万ベリーの海賊。
3メートルある長身の男で、口元は不敵な笑みを浮かべているが、サングラスで隠れた目が何を映しているのか、真意は見えない。金髪を逆立たせ、黒いシャツに赤いネクタイを締め白いズボンを
「はい、末端の人では話にならない……というよりも、信用出来ませんので。何せ取引の物が物、元王下七武海〝錬金術師〟ウロボロスが生前持っていた黄金を生み出す能力、ゴルゴルの実ですから」
大きなケースから、渦巻きのような奇妙な模様の果実を取り出しながら、中肉中背のこれといった特徴のない男が言う。
悪魔の実。売れば1億ベリーは下らないとされる海の悪魔の化身と呼ばれる果実。食べた者に特殊な能力が身に付く代わりに海に嫌われ泳げなくなるデメリットがあるが、黄金を生み出す能力を手に入れられるなら、船長に取り次がず、ドンキホーテ海賊団を離脱してでも強奪しようとする末端の船員はいると、この男は言っている。
「確かに、その実を欲しがる奴は多いだろうよ。だから解せねェ。何故自分で食わねェ?」
「欲しがる人が多いからですよ。こんな物を食べたら、この実が欲しい人に命を狙われるかもしれません。元王下七武海にして、元白ひげ海賊団、〝
悪魔の実は同じ時期に2つと現れない。
能力者が死ねば、その能力の悪魔の実が世界のどこかに復活するとされている。
「ほう、だが……おれはわざわざ金を払わずとも、お前を殺せばそれを手に入れられるよなァ?」
欲しい物があるなら力ずくで奪う、それが海賊のやり方。
海賊と対等に取引がしたいなら、武力、知力、財力、情報力……等の、それ相応の力が必要。ないならただ奪われるだけ。
「それをするなら、そうする前に僕がこれを食べますかね。そして今度はあなたの部下になる代わりに、僕を守ってもらえるよう取引でもしますか」
億越えの海賊相手に臆した様子もなく、一歩前に進み、ゴルゴルの実を自分の口に近付ける男。
「フッフッフ、考えなしに来たわけじゃねェようだな。少し試しただけだ。最近、悪魔の実の取引絡みでムカつくことがあったからなァ。最高幹部の紹介だ……金は用意していた。その取引に応じてやる」
「ありがとうございます」
そうして表面上は比較的穏やかに、ゴルゴルの実の取引は行われ、男は金を持って去って行った。
「何者だ……? おれの糸を躱しやがった。それに覇気使い……カタギじゃねェな。フッフッフ、まあいい。このゴルゴルの実は本物だ。客寄せにはもってこいだし、ゆくゆくは……」
「んね~ね~ドフィ~? もう終わったのか~?」
ゴルゴルの実を持って来た男が去った扉から、ドンキホーテ海賊団最高幹部、トレーボルが入って来る。
船長同様サングラスをかけた、帽子を被り、地面に付くほどの布団のように厚い大きな上着を着た、ドフラミンゴの参謀。
「ああ、終わったとも。こいつがゴルゴルの実だ」
先程手に入れた果実を手に持ち、トレーボルに見せるドフラミンゴ。
「べへへ!! 流石我らがボスだ! よくゴルゴルの実を手放そうとする奴なんて見つけたな~」
「ああ……待て。あいつはお前が見つけて来たんだろう?」
「ん~? おれが~? 何の冗談だ~? 昨日ファミリーの前で、今日ゴルゴルの実の取引をするから、この時間帯は倉庫に入らず、周囲を見張っておくよう言ったのはドフィだろ~? べへへ、鼻出るわ!」
汚く鼻水を垂らすトレーボルと、出した覚えのない命令を
確かに昨日トレーボルの方が、ゴルゴルの実の取引をしたい奴が自分との取引を望んでいると言っていた。その時のことを思い出し……よく鼻水を垂らしている、今も垂らしているトレーボルが、昨日のあの時は一度も鼻水を出していなかったことに気付く。
「フッフッフッフ!! そういうことか! あの能力はくしゃみをすると解けるんだったなァ。それにしても、わざわざ自分のヒントを出すとは……一体いつから入り込んでいた……? 〝
「ん~? 七武海を除名されたコピコピの実の能力者……つまり~、昨日のドフィはあいつの変身で~、ゴルゴルの実を持って来たのも~、そいつだったって言いたいの~?」
「ああ、そういうことだ(だが……つまりあいつは、殺して奪ったのか! ゴルゴルの実を! どうやってその方法を知った……? あいつがやったのはウロボロス殺害と……)」
カメレオーネが七武海を除名され、懸賞金が上がった時の新聞で、
海軍にはドフラミンゴ自身が相棒と呼ぶ腹心のヴェルゴをスパイとして潜入させているが、海軍本部で科学班に彼を近付けることは出来ない。入隊時、全身を武装硬化したヴェルゴを覇気が切れるまで翻弄し、硬化が解けた瞬間一方的にボコボコにしてヴェルゴを子供嫌いにした、シャボンディの
『海軍と関係があり過ぎて今はまだバレないように殺せない。あのガキが成長して更に力を付けてから、それを上回り完膚なきまでに叩き潰し屈辱を晴らす』
と、ヴェルゴがベビー5が泣き出す程の、般若のような形相をしながら、しかし淡々とした口調で漏らしていたのをドフラミンゴは思い出す。そのガキは心の声を聞ける見聞色の使い手と報告を受けている。迂闊に近付けない。最高幹部、初代コラソンのヴェルゴを傷付けた、ドンキホーテ
ドフラミンゴもヴェルゴも知らないことだが、〝機甲のロゼ〟が心を読むことが出来ると海軍内で広めているのは、海軍本部中将〝大参謀〟つるの発案であり、心を読まれたくない海軍本部のスパイや不正者の炙り出しのために、以前ロゼ関連で隠し子だの隠し孫だの噂されたことをチャラにする交換条件として、ロゼと話し合ったことである。海軍
すでに何人も処断されているが、ヴェルゴに関しては、訓練時にロゼに敗れてひどくショックを受けた姿がよく知られているため、接触を避けても疑われずに済んだが、自分が当時一桁のガキに敗北したことが知れ渡っているという事実がヴェルゴのプライドをひどく傷付け、そのことでロゼに対して激しい殺意を抱いているのを見聞色で悟られないよう、徹底して接触を避けているが、いずれこの手で殺す為、海軍
「さっきまでいたんなら~、追いかける~?」
「いや、最低おれとお前はもうコピーされている。他にも何人コピーされたかわからねェ。追っても混乱するだけ無駄、どころか同士討ちになりかねん。放っておいて、まずは幹部以上を召集するぞ……フッフッフ!!」
「なんか~、嬉しそうだね~、ドフィ?」
「何のつもりか知らねェが、良い情報を貰った。ドレスローザを返してもらう準備が出来たら奪うとしよう……王下七武海の席を!!」
七武海の地位を得て、科学班の研究所に直接近付く。
悪魔の実は良いビジネスになるだろうと、ドフラミンゴは幹部を集めて今後の方針を話し合った。
ドンキホーテ海賊団のアジトから離れた場所
「そろそろ良いか……」
先程海賊と取引をしていた特徴のない男の姿が変わる。
長い舌にカメレオンを模したヘルメット、その下からピンクの髪を伸ばした男に変わる。背中にはカメレオンのマーク、裏地には多くのドクロを刺繍した虹色のカラフルなコートを地肌の上に着て、前は全開で左肩に舌の、腹にはGIVE MEとタトゥーが入っている、緑のズボンにフタマタのシューズを履いた、非常に目立つファッションの男だ。
「ギジギジギジギジ!! やっぱこの服装じゃねェとな! ドフィにちゃんと俺様のプレゼントは伝わったか……? いや、あいつも中々素敵なファッションだった。気付くだろ」
男が独り言を言うが、素敵なファッションと察しの良さには何の因果関係もない。
この隠密とは程遠い服装をした男が、9年前に白ひげ海賊団でありながら〝白ひげ〟の首を狙うが撃退され、逃げ延びた元白ひげ海賊団1番隊船員。
「オペオペの実が手に入らなかったのは残念だが、ドフィのセンスは良いし、
敗れたものの殺害した当時の白ひげ海賊団の他の隊の隊長2名、船員数十名の首を手土産に加盟したが、今年に除名された元王下七武海。
「Dr.ベガパンクも頭の出来は良いが、
海軍科学班の研究資料を奪い、同じく七武海〝錬金術師〟ウロボロスを殺害し、七武海を除名されたにも関わらず、四皇からも政府や海軍からも行方を捕捉されずに暗躍している、〝
「約1年間、世話になったなァ……ドフィ。楽しかったぜェ? お前の
突然カメレオーネの周囲の地面が動き出し、人の形に変化していく。
悪魔の実の能力は、稀に覚醒し、強い力を使えるようになることがある。
カメレオーネは変幻自在人間。覚醒したコピコピの実の能力者。自分の意のままに動く、能力や人格をコピーした操り人形を作り出す。
変化が終わると、そこにいたのは
「ギジギジギジ! 相っ変わらず髪型だけはセンス良いなァ、マルコ」
「うるせェよい」
胸に白ひげ海賊団のタトゥーを入れ、パイナップルのような特徴的な髪型の、無精ひげを生やした男。
白ひげ海賊団1番隊隊長にして船医、〝不死鳥マルコ〟の異名を持つ、
その人物をコピーした人形だった。
「そんじゃまァ……アシ、よろしく! 動物アレルギーを治療して貰ったから、心置きなく使えるぜ」
「サイクロンが来ても知らねェよい」
「そん時ャお前をナミュールあたりに変えるわ」
体を不死鳥へと変化させたマルコの人形の背に乗り、カメレオーネは飛んで行く。
彼らの海賊団が再び世を騒がせるのは、まだ先。
☆☆☆☆☆
「ただいま」
夕飯を食べに帰宅した。
「おかえりなさ……雌の匂いがします!」
出迎えに近付いて来たトリスタンにそう言われる。
ちゃんとシャワーは浴びて来たんだがな。
「せめて女の匂いって言ってくれないか?」
「これは雌の匂いで間違いありません! またイケナイ夜遊びですか! 日も沈まない内に! このスケベ!」
「知っている」
トリスタンに甘噛みとマジ噛みの中間くらいで噛まれたので、宥めるため頭を撫でる。
そのまま抱っこしてソファに座り、トリスタンを自分の膝の上に乗せた。
「キュル~。こ、こんなので誤魔化されないんですからねっ!」
「わかっている。もっとやれってことだな」
「ひゃうっ!?」
ポカッ!
後ろから軽く頭を殴られる。
振り向くと、呆れた顔の母さんがいた。
「何セクハラしてるのあんた……昔の清らかなロゼはどこに行ったのよ」
「これはセクハラではなくミンクシップだ、母さん。あとオレは成長したに過ぎない」
嫌がることもしていない。
「レイさんの似なくていい所を受け継がないで欲しいわね」
「済まない母さん……オレは男なんだ」
「はあ……あの日から、どんどんこうなって……あの女にロゼが毒されていく……(少しでも嫌がる素振りを見せれば私も動くけど、この子ノリノリだし……)」
「大丈夫だ。最後の一線は越えていないから。オレはスキンシップで満足だから」
「それはそれで
「わはははは!!」
父さんはそんな会話をするオレ達を見て、大笑いしていた。
〝歓楽街の女王〟ステューシー(新世界編
〝ゴルゴン三姉妹〟の時にレイリーの心の声の新しく出来た風俗店は、今回出てきたこの人の店。レイリーとこの人がロゼのエロ方面の先生。六式を教わる案も最初はありましたが、この作品のステューシーの場合、体術そっちのけで寝技ばかり教えそうなので止めました。
この人を通して世界政府や天竜人に少し干渉したり出来る。
政府にとって邪魔な人間を搦め手で消しているのは想像で、原作でそんな描写はたぶんなかった。【飛ぶ
〝
ワンピースプレミアショー2012のキャラ。本来の懸賞金は3億ベリー。
笑い方は『ギジギジギジギジ』、モットーは『お前のものは俺様のもの。お前の命も俺様のもの』。
容姿と悪魔の実の能力をコピーするという、派生作品だから許されたようなチートな悪魔の実、コピコピの実の能力者。くしゃみで変身が解除される以外は大体マネマネの実の強化版。ショーで死んだエースに変身していたので、一度コピーすれば死人でも変身可。
くしゃみをすれば解除される弱点があるのに動物アレルギーというキャラなんですけど、動物アレルギーって完全になくす方法はないけど、症状を抑える方法はあり、治療期間として1年かかり費用は2,3万円らしい。それで悪魔の実にある弱点をある程度克服出来るなら、誰でも治療するよねってことで治療済み。薬で抑えることも出来るらしい。
所属の隊はマルコに追跡されていたので1番隊に。覚醒した能力者に変更。異名も元はなかったので付けました。年齢はマルコと同じ、新世界編45歳ってことにしときます。
ナミュール
白ひげ海賊団8番隊隊長の魚人。異名は〝一撃のナミュール〟、何の魚人かは現在不明。
カメレオーネに殺された隊長、船員の中に原作キャラはおらず、何年後かに欠けた12番隊と16番隊の隊長として、比較的若そうなハルタとイゾウが入りました。
次回予告茶番
作者「ステューシーの年齢が
ステューシー(100歳オーバー?)「
ドスッ!!
ステューシー(20代)「ふふふ、お・バ・カ・さ・ん……これでこの作品での私の年齢の決定権は貰ったわ……私は永遠の20代よ。さて次回は……1年後、シャンクス君と接触するわね。まあ彼は、まだ原作で戦闘描写がないから、戦闘にはならないでしょう」