機械の皇帝   作:赤髪道化

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 新世界編12年前の年。
 シャンクス(新世界編39歳)もミホーク(新世界編43歳)も、ルフィとゾロの目標だからか、登場時期が早い割にまだわからないことが多いですね。懸賞金とか。
 シャンクスが東の海(イーストブルー)にいた間は、孫達に会いに来たガープとは奇跡的に会わなかったことにします。シャンクスもずっとフーシャ村にいたわけではないみたいだし、遭遇すると島の1つ2つ消し飛びそうなので。
 ミホークがいつから世界最強の剣士になったのかはわかりませんが、剣の腕を巡り両腕があった頃のシャンクスと(しのぎ)を削っていたので、とりあえず大剣豪ではあるものの、まだ世界一とは呼ばれてないことにしておきます。


〝赤髪と鷹の目〟

 ハンコックや最近デビューしたソニアとマリーによる各地のコンサート、そのついでの九蛇(クジャ)海賊団による海賊狩りと、シャボンディとウォーターセブンの間の魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)に潜む〝影法師〟、そして海軍の巡回によって、シャボンディまで来る海賊が少なくなって来た。今年は世界会議(レヴェリー)、海軍は忙しそうにしている。加盟国の要人の護送や空になった国の防衛の担当決めとか、マリージョア周辺、つまりシャボンディの治安の強化とか。

 

 海賊が少ないので、最近は賞金稼ぎ(バウンティハンター)以外の時間が増えてきた。魚人島で海底遊園地アトランティスパーク(仮)の建設、アインやビンズと科学忍術合戦、リュウグウ城で王子達と修行、アインもついて来るようになったDr.ベガパンクの研究の手伝い、ステューシーから報告を受ける密会、ネプチューン軍にン熱血指導ゥ、ガープさんや姉さんから愚痴を聞きながらのティータイム、最近シャーリーが開店しメイプルも手伝っているマーメイドカフェに訪店、シャボンディでトリスタンと一緒にオレとミンク族のイメージ改善のためにボランティア、ルスカイナでの修行等々、色々やっている。

 

 

 先程まではルスカイナでの修行をしていたのだが、今回の修行中、ハンコックに加え、ソニアとマリーのファンクラブ会員カードの0番を持っていることが、ついに九蛇(クジャ)海賊団の船員達にバレ、カードを賭けて、一度目は一対一(サシ)決闘(デュエル)を50戦程行い、二度目は復活した全員から一斉に襲撃を受けたので、気配を消してドリルで地中に潜り行方を(くら)ませ、途中で隠れて食事をしながら、ルスカイナの動物とぶつかるように誘導して倒したり、闇討ちして倒したり、普通に倒したりして決闘(デュエル)終了。

 その間父さんは、いつの間にか知り合ったハンコックの侍女をしているエニシダという女に酌をしてもらい酒を飲んでいた。というか父さんが奴らにバラしていた。これも修行の内だそうだ。

 

 目を覚ました彼女達から口々に、『くっ、殺せ!』とか言われたが、そこまで命を懸けるなよ……纏めて船長(ハンコック)に引き取りに来てもらうと、一週間ルスカイナに島流しかつゴルゴン三姉妹に接触禁止という、非常に重いらしい判決を下され、燃え尽きていた。こいつら、ハンコック達が死んだら後を追って自害しそうだ。

 全員あまりにも気落ちして、この世の終わりのように悲しみに暮れていたのを流石に憐れ、ではなく鬱陶しく思い、立体幻像(ソリッドビジョン)で過去の三姉妹を映してやったら、『無礼を働きすまなかった。お前がNo.0で良い』と簡単に手の平を返され、すっかり打ち解けてしまった。七武海の海賊団だし別にいいか。シャボンディでもこのくらい簡単にいけば良いが……いやしかし、これでは何かキッカケがあればまた簡単に裏返りそうだ。

 

 飛んでシャボンディに帰還。でかい気配があるな……何かあったのか?

 父さんと一緒に歩いていると、

 

「おい、まさかレイリーさんか!? こんな場所にいたのか!!」

 

 オレ達2人の後ろから潜伏している父さんの名前を、驚きが混じった、よく通る大音量の無駄に良いバリトンボイスで叫ぶ男がいた。

 内容からして父さんの昔の知り合いか。たまたま人通りがないからまだいいが、気を付けてくれ。

 振り返ると……大物がいた。気配は普通だったが、このくらいのことは出来て当然か。

 

「わはははは!! ようやく気付いたか! 実は今までも何度かこの島ですれ違っていたんだぞ?」

 

 イタズラが上手くいった子供のように笑う父さん。楽しそうで何よりだ。

 

「いや、だったら声かけてくれよ!? あのあんたが死んだとは思っちゃいなかったが……えっ!? ずっとここにいたのか? すぐそこに海軍本部があるのに?」

「たまに別の島に出かけるが、本拠地はここだ。賭博場に行ったり、遊園地で遊んだり、女と寝たりしてるが、未だにバレてはおらんな」

「だっはっはっはっはっ!! マジかよ!? 大胆不敵過ぎるだろ!」

 

 大口を開けて、無邪気に笑うこの男は、かつて前人未到の偉大なる航路(グランドライン)制覇を果たし、解散した〝海賊王〟の船の元見習い。よく下らないことでケンカして、船員達の間でどっちが勝つか賭けの対象になっていたという見習いコンビの、バラバラの赤っ(ぱな)ではない方。

 現在は偉大なる航路(グランドライン)後半の海、新世界に君臨する四皇の一角、赤髪海賊団大頭(おおがしら)の〝赤髪のシャンクス〟。

 異名にもなっている赤髪に、見習い時代はなかったと聞くが、手配書と同じ左目の三本傷。口の周りにうっすら髭を生やし、胸元を大きく開けた白いシャツに柄のズボンを穿()き、腰の右側に帯刀し、上から黒いマントを着てサンダルを履いているが、麦わら帽子がなく、それどころか新聞でも見たが……戦争でもしてきたのか?

 まあそれはともかく、強さに興味がある。父さんに気を取られて笑っている間に、見聞色で覇気を見極めてみると……底が見えてこないな。これが海賊のトップクラスか。

 

「おっ? なんだ、そっちのガキ。使えるのか?(ルフィより上くらいか。この変わった前髪にゴーグル、どっかで見たような……?)」

 

 覇気のことだな。

 探られたことを特に気にした風ではない。というか面白い物を見つけた、というように笑っている。

 

「ああ、使える。失礼、お尋ね者を見かけたので、少々偵察を……南極さん

 

 見習いコンビの間で、南極と北極のどっちの方が寒いかケンカになって、実際に行って確かめて来いと父さんが言ったことがあるらしい。

 クザンさんが海を凍らせながら最近お気に入りの自転車でちょっと北極に行ったり、サカズキさんが海賊焼きに行ったついでに南極に寄ったわけでもないならば、通常南極の方が寒い。

 

ブッ!? ま、また懐かしいことを……レイリーさん、もうちょっと他に言う話とかいくらでもあるだろ……」

「何を言うか。他のも話してるに決まっておるだろうが。それで、行ってみたのか?」

「ああ、気温計がマイナス20度までしか測れなかったから、カンストしちまって結局どっちの方が寒いか数字はわからずじまいだったが。まあでも、やっぱり南極の方が寒かった!!

「ロジャーと同じことをしおって……今の今まで忘れていたが、バカをやったものだ」

 

 やったのか……。

 

「それで、そっちは弟子か何かか?」

「ああ、弟子で息子だ」

「へえ! あんた息子がいたのか! 名前は?」

「ロゼだ。まあ、縁があったらよろしく」

 

 聞かれたので答える。

 これから縁があったとして、敵対か放置、〝赤髪〟とはどっちだろうな。

 

「ロゼか~、ん? ロゼ……ロゼ……ああ! 〝機甲〟か! なんか見たことあると思ったら、1億とか書かれてたあの!」

 

 見られていたのか。

 

「今は店がないけど、試しに新世界に連れて行ってみるか?」

 

 ステューシーに事前に教えてもらい、新しく出来る人間屋(ヒューマンショップ)の店が完成間近になったら、姿を消して放火しに行っている。作っている側からしたら相当ウザイだろう。

 

「それは遠回しにウチの海賊団に入りたいって言ってんのか? はっはっは、やめとけ、ガキは大人しく父ちゃんと遊んどけ(ルフィみたいに、海賊に憧れてるのか? レイリーさんと仲良さそうに手ェ繋いでるし)」

 

 なんでそうなった。オレを捕まえて新世界の人間屋(ヒューマンショップ)に売り飛ばすという発想がないのか?

 

「誰が海賊になどなるか。お前の方こそ海賊には程遠い。さっさと自分の旗を降ろして焼き払い、故郷に引っ込んで女子供とキャベツ畑でも耕していればどうだ?」

「いや、おれそこまで言われるようなことお前にしたか!?」

「あ~、ロゼ。今のはどういう意味で言ったんだ?」

 

 どういうって……

 

「『海賊のくせに南極さんは高く売れる子供を捕まえようとしないなんて、性格的に向いていなさそうだから、早く海賊稼業から足を洗って、故郷で家庭を作り農業でも始めて、自給自足のスローライフで、余生を妻や子と孫に囲まれながら暮らしてみてはどうだ?』という意味だ」

 

 そんなにわかりにくいか? 海賊と農家は対義語みたいなものだろう。略奪者と生産者。

 

「すっげェ良い意味!? お前一体どんな口してんだよ、悪口になる呪いでもかけられてんのか!?」

 

 能力者だから、呪われているといえば呪われているが。魚人島では悪魔の実の能力のことを呪いという人が多い。泳げなくなるからだろう。水中を自由に泳ぐ種族らしい言い方だな。

 〝赤髪〟が父さんを手招きして少し離れる。なんだ?

 

「というかレイリーさん。こいつの海賊のイメージどうなってんだ? 実は仲(わり)ィのか?(おれの会うガキは、なんでこうも両極端なんだ……?)」

「よく自分を売り飛ばそうとする海賊や人攫いに襲われていたから、ロゼの常識では、海賊は喜んで子供を売るのだ。断じて私が原因ではない」

「偏り過ぎだろ……仲良いのは表面だけで、虐待でもされてんのかと思った……」

「誰がそんなことするかッ!」

 

 しばらく話してまた戻って来た。

 のんびり話している余裕はあるのか? なんか来ているが。

 

「あー、それでだな。さっきから気になってたんだが……シャンクス、お前左腕と麦わら帽子は一体どうした?」

 

 そう。麦わら帽子は割とどうでもいいが、四皇が片腕を落とすとは只事ではない。それも新世界ではなく東の海(イーストブルー)で。

 

「ああ、そうだ! 東の海(イーストブルー)面白(おっもしれ)ェガキがいてな! たぶんロゼより下で、海賊になるって騒いでた奴なんだが、そいつにくれてやったよ! どっちも! はっはっはっはっは!!」

「「はあ?」」

 

 父さんと声が重なる。

 つまり子供に左腕を切り落とされた挙句、麦わら帽子を取られたのか? 四皇が? 東の海(イーストブルー)はいつの間に魔境になったんだ……ベルメールさん達大丈夫か?

 オレの驚きと戸惑いを余所(よそ)に〝赤髪〟は続ける。

 

「おれァ驚いたよ! ルフィってんだけどな、ロジャー船長と同じことを言ったんだ。あの言葉を……!」

「ほう……?」

「……ルフィ?」

 

 その名前に東の海(イーストブルー)、オレより年下で海賊になりたい……ガープさんの孫と〝赤髪〟に接点があるのは知っていたが、祖父(じい)さんが祖父(じい)さんなら、孫も孫なのか。

 

「もしかして、その子供はドーン島にいなかったか?」

「そうだが……なんだ、知り合いなのか?」

「いや、その祖父(じい)さんと友達だ。たぶん」

「あいつの祖父(じい)ちゃんかぁ……どんな人なんだ?」

「〝拳骨のガープ〟と呼ばれ、海軍本部中将をやっている、元気な祖父(じい)ちゃんだ」

「へえ、〝拳骨の……はあ!? ルフィの奴、英雄ガープの孫なのに海賊になりたいって言ってたのか!? だっはっはっはっはっ!! やっぱバカだあいつ!」

 

 どうやらツボに入ったようで、目尻に涙を浮かべ、腹を抱えて笑っている。よく笑う男だ。

 ガープさんにとっては全く笑えん話だ。前にジンジャーエールでヤケ酒に付き合った。『またなのか、またわしの家族はァッ……おのれェェ〝赤髪〟ィッ!!!と嘆きながら酒を(あお)るガープさんに。

 会った時たまたま一緒にいたクザンさんは、捕まるのが嫌で床を凍らせ、【(ソル)】で地面を蹴り加速しながら、スケートの要領で滑って逃げたが。

 だが笑っている場合か? あっちはお前が目当てだろ。

 

「(シャンクスに麦わら帽子を託されたガープの孫か……一度、会ってみたいな。海賊になるなら、いずれここで会うだろう……ジジイの方は結構だが)ロゼ、私は行くが、お前はどうする?」

「オレは遠い2つは問題ないけど、近い2つがわからないな……まあ、大丈夫だろ。ここでいなくなっても、どうなったか気になるし」

「私も気になるから、後で見せてくれ。あとシャンクスに家の場所を教えといてくれ、後で飲もうと」

「ふはは、了解。夜にならない内から飲み過ぎないようにな」

 

 そう言って父さんが走って行った。大変だな、潜伏中の身は。

 

「あ~、笑った笑った。あれ、レイリーさんは?」

「身を隠した。13番グローブにあるぼったくりBAR(バー)にいるから、会うつもりなら周りに気を配って来てくれ。後で飲もうだそうだ。ほら、客が来たぞ。たぶん南極さんに」

 

 最低2人はそうだろう。随分怒っている。で、おそらく捕まっているのだろう1人に、残りの1人は誰だ?

 

「……いい加減その呼び方やめてくんねェか? シャンクスでいいって」

「では〝赤髪〟と」

「意地でも名前で呼ぶ気はねェッてか?」

「オレは賞金稼ぎ(バウンティハンター)だ。それに南極さんとは別に親しくもない」

「お前賞金稼ぎ(バウンティハンター)だったのか。それなのに賞金首みたいなことされてたのか! だっはっは! だが海賊がお前の事情を気にしてやるとでも? 名前で呼ぶならジュースやるぞ?」

 

 イタズラ小僧のような笑い方だ。

 頭に触れようとしてきたので避ける。

 ジュースって……いくらなんでもナメ過ぎだろ。

 

賞金稼ぎ(バウンティハンター)が賞金首の事情を考慮するとでも? まあ海賊というよりは、人をからかって遊びたいだけのおっさんといったところだが」

ぐっ!? おま、おっさんはやめろ……まだ20代だから」

 

 気にしているなら髭を剃ればいいじゃないか。それで若く見えるだろう、髭以外老けて見える所はないのだから。

 ……そろそろ〝赤髪〟から距離を取っておく。

 

 ズバァンッ!!

 

 遠方から〝赤髪〟に向かって斬撃が飛んで来る。

 

「おいおい、相変わらず随分な挨拶だな。〝鷹の目〟」

 

 キィンッ!!

 

 その斬撃を腰から抜いたサーベルを振るい、容易(たやす)く相殺して金属音が響く。

 サーベルを鞘に戻し、自分に斬撃を飛ばしてきた相手に、場違いなほど親しげに話しかける。

 このくらい、いつものことのようだ。

 

東の海(イーストブルー)で片腕をなくしたというのは本当だったか……それも、よりにもよって()き腕を。新聞で見た時は俄かに信じがたかったが。貴様ほどの男が最弱の海で片腕を失うなど信じたくはなかったが。そのザマで何を大声でへらへらと笑っている……? 〝赤髪〟ィッ!!

 

 斬撃を飛ばしてきたのは、羽飾りのついた黒い帽子を被り、鷹を思わせる鋭い目つきで整った口髭、黒を基調とした花の模様が入ったマントを地肌の上から着て、前は開いている。十字架を首にかけ、白のズボンを穿いている男。

 そしてその手に持つのは十字架を模した大きな刀、最上大業物12工の一振り〝(よる)〟、大剣豪〝鷹の目のミホーク〟だ。海賊団を持たず、ただ強者との戦いを求め、1人海を渡る孤高の海賊。昔もいたらしいな、団を持たない海賊。

 〝赤髪〟と〝鷹の目〟の戦いは度々耳にしていた。幾度も死闘を繰り広げながらも、未だに雌雄を決することはなく、戦い続けていると。

 それにしても凄い怒気と覇気だな。気付いて近い1人もこっちに来ている。それ以外も。〝赤髪〟の仲間か、オレみたいな野次馬か。

 

「貴様の腕を奪ったのはどこのどいつだ?」

 

「それを聞いてどうする?」

 

「知れたこと。おれ達の決闘の決着は付いていない。そして、永久に全力の貴様と決着を付ける機会はもはや失われた。代わりにそいつを切り捨てる」

 

東の海(イーストブルー)の魚」

 

 は? ガープさんの孫じゃないのか?

 

「ふざけているのか……?」

 

「しょうがねェだろ? 友達が死にかけで助けてっつってんだから。面白いガキでな……」

 

 その後も続けているが、オレの耳には入らない。

 この男……そのために利き腕を犠牲にしたのか。

 四皇の1人が。海賊団の船長が。海賊が。

 自分の身を守ることすら忘れて、友達を取ったのか。

 

「……だから、お前がおれの友達に刀を向けるなら」

 

 ドン……!!

 

 覇王色の覇気が〝鷹の目〟に向けられ、空気が震える。

 

「おれが相手になる。そもそも……おれの片腕がなくなったくらいで、勝手に勝った気になるなよ」

 

 ギロリと睨みつけ、腰に手を伸ばす。

 さっきまでの海賊らしくない人好きの笑顔とは違い、幾多の戦場を越え、死線を(くぐ)り抜けて来た、精悍な、歴戦の猛者の顔。

 これが四皇、〝赤髪のシャンクス〟か。

 

「(覇気はむしろ上がったか。だからこそ惜しい……!)片腕の貴様と決着を付けたところで何の意味もない……おれの渇きは満たされん。魚やガキを切ってもな。そのガキというのは、そっちの〝機甲〟の小僧か?(一度戦いを見に来たが、やはり剣士でなければ)」

 

「誰が海賊に命を助けられるかァッ!!」

 

 そんなことになったら、オレは憤死しかねない。

 それにしても〝鷹の目〟にまで知られているのか。この男、1人だというのに。

 はあ……やはり顔写真と子供、1億という額は結構印象に残るのか。あの写真よりは成長しているのだがな。まだある所にはあるし、ステューシーなんて部屋の壁に貼っている。

 

「だっはっは! こいつも変わってるが、(ちげ)ェよ。麦わら帽子もそいつに渡してきた」

 

 〝赤髪〟の表情から険が取れ、腰から手が離れる。

 

「フン、ずっと肌身離さず被っていたあれを手放すとは、随分な熱の入れようだ」

 

 〝鷹の目〟が刀を背の鞘に戻し、近付いて来る。戦意はもう感じない。

 とりあえず、ここがこの2人の戦場にはならないようだ。普通ならここで暴れる海賊なんてもはやそういないが、この2人の決闘(デュエル)の日々の話を考えると、場所を選ぶようには思えない。

 

「片腕を失った貴様を討ち取り、成り上がろうという輩が現れ始めている。この機に貴様らのナワバリに攻め込もうと準備を始めている奴らもいる。おれが認めた男が、あまり無様な姿を晒すなよ」

「ここに来る途中にもいたなァ……まあ、向かって来るなら戦うだけだ。ははっ、ロゼ。お前も狙ってみるか?」

「今は狙う気はない。賞金稼ぎ(バウンティハンター)が海賊と戦うかどうかなんて、どうなるかわからない先の事はともかく、南極のおっさんの懸賞金はいらないな」

 

 戦うことはあるかもしれんが、この男を海軍に引き渡すことはなさそうだ。

 

「お前…………ついに混ぜやがったなァ!?」

「さっきまでは冗談で言っていたが、今は親しみを込めている」

「よりバカにされてるようにしか聞こえねェよ」

「南極? なんのことだ?」

 

 〝鷹の目〟は知らないのか。仕方ない。

 

「むか~し昔、ある海賊団に、麦わら帽子を被った〝赤髪〟とバラバラの赤っ(ぱな)が……」

「言わんでいいッ!」

「まあ今はそんなことより、また1人客が来ているぞ?」

「(気になる……)」

 

 これもその名を上げようって輩なのか?

 

「いや、これは客というか……その、なんだ……」

「? 知り合いなのか?」

 

 煮え切らない態度だな。何だというんだ。

 

「くくく! この男の愛人だ」

 

 〝鷹の目〟が親指で隣の〝赤髪〟を指しながら、面白がって笑っている……この男、笑うんだな。

 いや、当たり前と言えば当たり前だが、どこか行動が浮世離れしているから。

 剣士としての腕を磨き、得た力で何をするわけでもなくただ戦う。〝赤髪〟とは違う意味で海賊らしくない。

 

「ちゃんとした客じゃないか。オレ達、消えといた方がいいのか? 邪魔だろ」

「違う! そうじゃねェ! てか、ガキが余計な気ィ効かせるな!」

 

 この狼狽(うろた)えよう……やれやれ、しょうがない男だ。

 

「ヤることヤッといて認めないのは感心しないな。ふはは、気にするな。愛人くらい珍しくない。父さんにもいる」

「はあ!? あの人ガキの教育に悪過ぎだろ!? 初めて笑ったと思ったら、何てこと言いやがる!」

「海賊に子供の教育がどうとか言われてもな……孕ませた愛人から逃げる海賊に言われてもな……ちゃんと避妊しないから。海賊だから危険で側に置けないのだろうが、顔くらい見せてやれ。女と子供が可哀想だ」

 

 む? 待てよ? 上手くこちらに向かっている人に引き渡せば、海賊を引退させられるかもしれん。

 やってみるか。

 

(ちげ)ェッつってんだろ! というかお前、そういうかんじの奴だったのか!?」

「会ってからまだわずかしか経っていないのに、オレのことをすべて理解出来るはずがないだろう。何を驚く?」

「ワッハッハッハッハッ!! 確かに変わったガキだ……翻弄されっぱなしではないか、〝赤髪〟。くくく!」

 

 〝鷹の目〟が狼狽(うろた)える〝赤髪〟を見て、心底愉快そうに笑っている。

 

「〝鷹の目〟ェッ!! お前さっきから他人事だと思って笑いやがって! 言っとくが、ルフィはこんなんじゃねェぞ!? もっとからかい甲斐のある奴だからな!」

「子供のことをからかい甲斐のある奴って……ガープさんに殴られて頭蓋骨陥没骨折してしまえ」

 

 人の孫にそんなことをしているから、仕事で中々会いに行けん祖父(じい)さんを怒らせるのだ。

 

「お前ェ……仕舞いにゃ(レイリーさんの子供だってこと)バラすぞ!?」

「海賊の脅し、譲歩には一切耳を貸さない。これは海軍の常識だ。一度でも要求を飲めば、そのまま良いように搾取されるばかりか、調子に乗らせ海賊が増える一方で、大海賊時代はいつまで経っても終わらない」

「そんな大層な話はしてねェよ!」

 

「シャンクス様~!!」

 

 ついに来たか。

 一体どんな……黒髪ロングをオールバックにして、左目の周りに口を開けたヘビのタトゥー。背中には〝鷹の目〟の〝()〟程ではないにしても、大きな鎌を背負っている。何故か着物を着て、腰に鎖を巻いているが、先代九蛇(クジャ)海賊団船長の〝妖妃(ようひ)〟だな。病で死なずに存命していたようだ。

 この女はまだ海賊扱いで良いのだろうか? それとも引退済みか?

 

「げっ!」

「ふははっ、女性からの黄色い声に『げっ!』はないだろう、色男?」

「くくく、まったくだ。ほら、ご指名だぞ」

 

「ああ……なんてことっ!? わたくしが花嫁修業で離れている間に、あなた様の御左腕がっ! 一体誰が、〝鷹の目〟、あなたですか?

 

 幾度も死闘を繰り広げた、〝赤髪〟の左腕を奪った容疑者最有力候補に、今初めて気付いたようだ。恋は盲目というやつだな。

 ついさっきまでは恋する乙女のような緩い表情だったが、今は冷たい目付きで〝鷹の目〟を見ている。

 

「フン、おれであれば今頃生きてはいまい」

 

「ふははっ、愛されているじゃないか。というか〝妖妃(ようひ)〟だったんだな。なんで一緒に行動していないんだ?」

 

 〝鷹の目〟と〝妖妃(ようひ)〟が睨み合いながら言葉を交わす間、〝赤髪〟に聞く。

 民間人かと思いきや、九蛇(クジャ)の先代皇帝……覚悟なんてとっくに出来ているだろう。

 

「ウチの船に女は乗せねェんだよ!」

「何故だ? 何か彼女に不満でも?」

 

 〝赤髪〟越しに2人を視界に入れながら聞く。これは海賊を減らすチャンスだな。心配なのは、別に赤髪海賊団として船に乗せても大丈夫なだけの実力はあるところか。

 

「いや、そうじゃなくて……『男は船、女は港』って言葉知ってるか?」

「昔の船乗りの間で言われていた言葉だな。海の女神が嫉妬するから、女を船員として船に乗せないという」

 

 他にも、男は船のようにあちこちの港(女)に停泊して、女はそれをただ待つしかない。とか、色んな解釈もあるが。

 

「そういうことだ。海ってのはきまぐれで嫉妬深いんだよ。女を乗せたら雷落とされちまう」

「それだけなのか? はあ……今の時代になんと非科学的な迷信を。女海兵などたくさんいるし、海賊でも、そんな理由で海の女神の怒りを買うなら、〝ビッグ・マム〟が四皇などと呼ばれるものか。〝妖妃(ようひ)〟がいた九蛇(クジャ)海賊団など、女しか乗っていないが、何ともないだろう?」

 

 そもそも女を乗せようが乗せまいが、偉大なる航路(グランドライン)、特に後半の新世界は、常に海の女神が癇癪を起しているかのような気候らしいじゃないか。雷が降っている島もあると聞いたが。

 

「まあ、年貢の納め時ってことで」

「なんだ? おれと戦う気にでもなったのか? ……ってホントになんだよ?」

 

 突然足にしがみ付かれて、戸惑う〝赤髪〟。

 

「はあ……普段の隙が多い男だ。だから片腕を失うことになるのだ」

「ああん?」

 

 ヒュンヒュン

 

 〝赤髪〟の体に何かが巻き付く。

 先端に分銅が付いた長い鎖だ。

 〝赤髪〟が顔を引くつかせながら鎖を視線で辿ると、鎖の付いた大きな鎌、いや鎖鎌を持ってニコニコ笑っている〝妖妃(ようひ)〟と、呆れている〝鷹の目〟がいた。

 

「……おいロメリア、なんのつもりだ?」

 

「〝鷹の目〟が『連れて行くなら今』と。攻められる時に攻めませんと、シャンクス様はすぐお逃げになられるので」

 

「こんなもの引き千切って」

「まだ慣れていないようだな。貴様は片腕だろう」

 

 片腕で体に巻き付いた鎖を引き千切るのは、少し厳しいだろうな。

 

「ちなみにサーベルはオレが貰っている」

 

 鎖が巻き付いた時に外した腰のサーベルを掲げて、〝赤髪〟に見せる。

 その後歩いて〝妖妃(ようひ)〟に手渡す。

 

「ありがとう、ぼうや! あなたはわたくしのキューピッドだわ!」

「骨抜きにしてやってくれ。あと、もう気配は隠しといた方が良い」

 

 自分のキューピッド姿を想像して、あまりの似合わなさに吐きそうになるのを我慢しながら、サムズアップをした。

 

「お、お前ら……いつからグルに……!」

「貴様が余所(よそ)見をしている間にアイコンタクトで」

「女と乳繰り合いながら、子供とごっこ遊びでもしていてくれ(※家族仲良く暮らせよ、の意)」

 

「では参りましょうか! 実は先程ここに来る途中休憩場所を見つけまして……」

 

「お前ら覚えとけよォォォォォォォォォ……!」

 

 断末魔の叫びを上げながら、〝赤髪〟は抱えられ連れて行かれ、小さく見えなくなった。

 うん、良いことをしたな。

 

「……貴様なら、片腕を失わずに助けることも出来たはずだろうに……それほど焦っていたか」

 

 オレに言っているわけではなく、つい零れた言葉のようだ。

 余程〝赤髪〟と決着を付けたかったのだろう。心なしか髭が垂れて、背中から哀愁が漂っているように見える。どこか寂しそうだ。

 そんな〝鷹の目〟の様子を見て、

 

「そこまで〝赤髪〟と対等な条件で決着が付けたいならば、お前も利き腕を切り落とせばどうだ?」

 

 今ならいけるかもしれないと思い、大剣豪の海賊を弱体化するよう、ダメ元で唆してみた。

 

!!! ………………ふう……小僧、そんなことをして付けた決着に何の意味がある? 無益だ」

 

 思ったより惜しかったが、やはりダメか。

 ……おっ、来たか。タッチの差だったな。

 

「〝赤髪(あ~か~が~み)〟ィ~ッ!!! よくもわしの孫を(たぶら)かしおったなァァァッ!!!」

 

 ガープさんが【月歩(ゲッポウ)】で海軍本部から空を駆けて来た。

 片手でクザンさんを掴んでいる。一緒に連れて来られたか。

 

「随分怒っているな、ガープさん」

「ロゼか! 〝赤髪〟がどこに行ったか知らんか!?」

「女と一発ヤりに行った」

「あんのガキャァァァァ!!! どこまでもわしをナメくさりおって!!」

「ガープさん……うるさい。鼓膜破れる……」

 

 クザンさんが耳を押さえている。

 アイマスクして結構余裕そうだが。

 

「黙っとれ青二才がァ!! 忌々しい〝赤髪〟めェ……!!」

「軽く聞いてみたら、一応命の恩人みたいだけど?」

「確かにルフィを救った様じゃが、そもそもルフィが悪魔の実を食ってしまったのは奴の管理が甘いせいじゃし、ルフィが山賊にケンカを売ったのも〝赤髪〟が原因!! 最初に山賊をブチのめしておればそれで済んでおった!! 何より……わしよりルフィに好かれとるのが気に入らんッ!!!

 

 なるほど。詳しい事情は知らんが、絶対最後のが怒っている理由だな。

 

「クザン!! 〝鷹の目〟はお前がやれ! わしは〝赤髪〟の若造を()る!!」

「いや、おれはともかく、あんたはそもそも任務じゃないでしょ……勝手に四皇の〝赤髪〟と接触するのはマズイんじゃないのォ?」

 

 ガープさん任務じゃないのか……というかクザンさん任務で来てたのか……てっきりサボって昼寝中に連れて来られたとばかり。何故任務で来たクザンさんがアイマスク着用で、任務じゃないのに来たガープさんが()る気満々なのか。

 

「そんなもんセンゴクに任せて適当に言っとけばいい!!」

「酷い……センゴクさん可哀想」

「滅茶苦茶じゃないっすか……あ痛っ!?」

 

 ガープさんがクザンさんを地面に叩きつけ去って行った。見当違いの方向に。

 頭に血が昇り過ぎて見聞色を使えていないな。それでも父さんがいる方向に向かっているあたり恐ろしい。

 クザンさんがアイマスクを頭にずらし、体を払いながら立ち上がる。

 

「嵐のような男だ……それで、貴様はおれと戦うのか? 海軍本部大将〝青雉〟」

 

 そう、クザンさんは大将に昇進した。いい加減サカズキさんより階級が下で、ことあるごとにそのことを言われるのが嫌だったようで頑張っていた。反動で最近またサボり気味。

 だから階級的にはガープさんの方が下なのだが、さっきのやり取りからとてもそうは見えない。

 

「あららら……クールに見えて、結構血の気が多いじゃないのォ。ガープさんはともかく、こっちはそういうんじゃないよ。まずはこれを……あれ? どこにやったっけ? なあロゼ、あれァどこだ?」

 

 自分の服のポケットに手を突っ込み、何かを探しているクザンさんに聞かれるが……

 

「いや知らん。そもそもあれって何だ?」

「ああん? そりゃあお前……あれだ。え~っと…………ああ!! そうだそうだ!! センゴクさんが五老星から渡された、〝鷹の目〟の王下七武海への推薦状だ」

「そんな大事な物を忘れるな! ……って七武海? 今欠員いないだろ? 去年補充したばかりじゃないか。2人も」

「まだ公表されちゃいねェが、片腕を失った〝赤髪〟相手に挑んで、返り討ちになったんだよ。前回みてェに元七武海が政府の手を離れて野放しになったわけじゃねェから、公表されるのは後任が決まってからだろうなァ。ったく……ただでさえ世界会議(レヴェリー)で忙しい時に、気軽に寝れやしねェ」

 

 そういえばさっきシャボンディに来る途中で、誰かと戦ったみたいなことを〝赤髪〟が言っていたな。あれ七武海だったのか。軽いな。有象無象と大して変わらん扱いだったぞ。

 まあハンコックではないだろ。ルスカイナから帰る前に会ったし。

 

「あんた大将だからもしもの時の各国要人の警護のために、マリージョアか海軍本部から動かないじゃないか」

「ああその通りだ……サカズキと一緒にな」

「それは寝れないな。だがまあ、普通に仕事中寝るのが悪い」

 

 まあたぶん、クザンさんがサボらないようにそうなったんだろう。

 

「ボルサリーノさんはいないのか?」

「あいつは今別件だ。まあそういうわけで、シャボンディに〝鷹の目〟がいるってんで、七武海に勧誘したいが、半端な奴じゃ決裂した時マズイってことで、おれが貰って気分転換がてら来たってわけだ。そん時ァ手伝ってくんない?」

「え~、いいぞ

 

 ここで暴れられたら困るからな……最悪海兵が集まって来て父さん達が見つかる。メインの戦闘は任せて、サポートでいいだろ。

 

「……おれから言っといてなんだが、軽いなァ。まあサンキュー。おっ、あったあった」

 

 そう言って、懐から書簡を取り出し〝鷹の目〟に見せる。

 

「どうする? おれとしちゃァ、受けてもらった方が楽でいいんだが」

「普段であれば一考に値しないが……今のおれは少々飢えている。条件次第だ」

「おっ、結構話せるじゃないのォ。なんだ? 呑めるかどうかはおれには判断出来ねェが、掛け合ってはみるぞ?」

 

 七武海の任命権は世界政府にある。海軍に出来るのは政府に話を通すくらいだ。

 

「定期的に海軍本部中将クラス以上の実力の強き剣士と戦わせろ……手始めに貴様だ。ヒエヒエの実の能力で氷のサーベルを作って戦うらしいな。見せてもらおうか、貴様の剣術を」

 

 そんな条件あるか?

 可哀想に……間違いなくこの条件は通る。政府の懐は痛まない。何なら決闘(デュエル)の内容を中継して、天竜人の余興に出来る。海軍本部中将以上と王下七武海、どっちが負けようと、結果を知られれば海賊に影響を与えるので、勝敗は非公表で行われるだろうが。

 

「あららら……そう来たかァ。これ、どっちにしろおれとは戦う流れじゃないのォ……気分転換のつもりがえらいことになったな……こいつじゃダメか?」

 

 そう言ってオレを指差す。

 

「ふははっ、残念だったな。オレは剣士ではない」

「おれだって別に剣士じゃねェし、お前も足をチェーンソーに変えて戦うじゃないの」

「何? 小僧、それは本当か?」

 

 〝鷹の目〟が目を見開き喰い付いて来た。どれだけ戦いに飢えているのだ。

 

「確かにそうやって戦うこともあるが、せいぜい剣使いだな。剣士とは言えん」

 

 そもそもチェーンソーって剣か? 工具だろ。いや、武器として使っているオレが言うことではないが。

 

「けどお前、斬鉄も飛ぶ斬撃も出来るだろ」

「あんなこと剣士じゃなくても出来る。動かず意志を持たない鉄を切るより、人を切る方が余程難しい。飛ぶ斬撃も【嵐脚(ランキャク)】が出来れば剣がなくとも出来る」

 

 何故オレが〝鷹の目〟、それも七武海になりそうな奴とこんな理由で戦わねばならんのだ。

 こいつ、弱い人間に興味がないそうで、全然民間人を襲わないのに。目の前で暴れられるならともかく、気が乗らん。放置したい。その上仮に七武海を倒せたところで懸賞金は0、得る物なし。ハイリスクノーリターン。割に合わん。

 

「足で切る……邪道の類の剣術か。興味が湧いた。だがまだ発展途上の子供。今はそれより貴様だ、〝青雉〟」

「参ったなァ……とりあえず報告して、七武海に任命されてからだな。ここだとマズイから場所も変えるぞ」

「構わん。おれは一度、帰って寝る。決まれば伝書バットなり何なり寄越せ」

「おれはまだ寝れそうにねェな……」

「オレまでロックオンされたじゃないか」

 

 参ったなァじゃないぞ。参っているのはこっちだ。

 

「良いじゃないのォ。どうせお前ェ、その内標的になってたと思うぞ? 七武海入りの条件に組み込んだ方が、死ぬことはないんじゃない?」

「クザンさんクザンさん、オレは海軍本部中将以上ではない。野良の賞金稼ぎ(バウンティハンター)だ。対象外だ」

「海軍本部中将()()()()()()()()()だから、海軍所属じゃなくても大丈夫でしょ。お前は中将以上の条件、覇気を習得してるんだし(前にロゼの海賊との戦いを見たが……はっきり言って別人だ。態度もそうだが、こいつァ訓練で海兵と戦う時より、海賊と戦ってる時の方が覇気が強い。意図したものじゃねェようだが、子供が高額賞金首を圧倒しといて名前を広めたくねェ、〝鷹の目〟に目を付けられたくねェなんてのは無理でしょ。気持ちはわかるがなァ……こいつ、向上心はあっても功名心はねェし。自分が捕らえた海賊を海軍が捕まえたことにしてくれって言うくらいだ。懸賞金はちゃんと持ってくが)」

 

 別に覇気が使えるからといって中将になれるわけではないはずだが。基本的に手柄がないと昇進は出来んだろ……あっ、オレ手柄あるな。海賊を捕まえまくっていた。

 

「強き者と戦えるならどちらでも構わん。まったく……おれが何のために海賊になったと思っている。その方がより多くの強き者と戦えるからだというのに、貴様ら海軍はいつの頃からか全くおれを追わなくなった。つまらん。暇だ」

「暇て……駄々っ子か」

 

 なんて理由で海賊になったんだこの男。

 

「お前は強い奴しか狙わねェし、追手をやらなきゃ襲っても来ないから、放置して他を対処することになってんのよ」

「勝手なことを……」

「ところでロゼ、お前なんか焦げ臭くねェか?」

「そうか? 煙の匂いが移ったのかもしれん」

 

 焚き火を起こしたりしていたし、すっかり匂いに慣れてしまった。

 

「いや、そんな残り香ではない。小僧、貴様の胸辺りだ」

 

 胸? 何も焦げてな……待てそこには

 

「お前鼻良いな……」

「五感を研ぎ澄まさねば、勝てん相手もいる」

 

 ドクン!!

 

 心臓が跳ねる。

 自分のコートの内ポケットに手を入れ、中の物を取り出す。出てきたビブルカードの1つ、タイガーの物が焦げて小さく……ビブルカードは爪を使った本人の生命力を表す。つまり……ッ!

 

「用事が出来た! 【ジェット・ウォリアー】」

 

 そう言い残して、ビブルカードが動いた方向へ飛んで行く。

 

『魚人のタイヨウが落ちる』

 

 シャーリーに言われた言葉が、色んな解釈が出来る占いの結果が脳裏に浮かぶ。

 まだだ……まだ燃え尽きてはいない! 全身を武装硬化させ、今の自分の限界のスピードで飛行した。




 ベガパンクの研究の手伝いにアインが来るようになった
 フィルムZのオフィシャルムービーガイドで知ったのですが、アインって科学者だったそうです。もしかしてゼファーの義手のメンテナンスや、パシフィスタのPX-Z(通称白くま)をゼファーの命令に従うようプログラムしてたのってアインなのかな? この()凄い。
 というわけで、ちょうどいいのでロゼに勝つためにメカメカの能力でやられそうなことを知るため科学の勉強を始め、ベガパンクの研究の手伝いにもついて来るようになりました。

 シャンクス左利き
 左手で抜刀したりスプーンを持ったりしてたのでたぶん左利き。
 シャンクスがルフィに左腕をくれてやったなんて、紛らわしい言い方をしたのは、ロゼが自分に憧れて、海の過酷さも知らず海賊になるって簡単に言わないようにです。ルフィに対しても最初は、お前なんかが海賊になれるか、って突き放していたので。まあ全然海賊に憧れてなかった上賞金稼ぎ(バウンティハンター)だったので、結局話したんですが。

 九蛇(クジャ)先代皇帝〝妖妃(ようひ)
 ハンコックの初期設定を再利用したキャラで、設定画で「何かお飲みになる?」の一言だけ喋っていたので、お嬢様言葉に。
 〝九蛇革命〟で名前が出ただけで登場はしてなかったので、忘れた人のために言っておくと、アルスト・ロメリアって名前。
 恋煩いの相手は、凪の海(カームベルト)を渡れる実力者でないと恋に落ちる機会すらないので、大海賊か海軍本部将校の二択。海軍だと告白からのブタ箱もあり得るので大海賊から選ぶことになり、モテそうだからシャンクスに。見習い時代に、自分の船を持ったら世界を見て回ると言っていたので、会う機会もありそう。
 ハンコックに蹴り倒された時は、すでに恋煩いでシャンクス以外見えなくなっていたので魅了の石化が効かず、しかし熱に浮かされ弱体化していた。

 大将〝青雉〟
 〝黄猿〟とどっちを先に大将に昇進させようかと思いましたが、〝黄猿〟はこの時中将でしたし、原作で元帥の座を争ったのが〝赤犬〟と〝青雉〟なので、〝青雉〟を先にしました。

 ミホーク七武海入り
 自分が認めた宿命の強敵(ライバル)が、雌雄を決する前に勝手に弱体化してしょんぼり。悲しみを埋めるために、定期的な死闘を条件に七武海入り。
 ロゼのことは前に見た時剣士じゃなかったので関心がなくなったけど、今回でまた興味が出た。ロゼから挑んだならともかく、暇潰しに切って再起不能にしたくないと思う程度には将来に期待しているので、今は戦う気がないグルメな戦闘狂。

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