見聞色で周りの気配を探知しながら、ビブルカードが動いていた方向にまっすぐ、音速を超える速度で飛ぶ。
途中で関係ない船を見つけては、勝手に乗り、立ち止まってビブルカードの示す方向を確認する。まだこの紙が燃え尽きていない以上、タイガーは死んでいない。また空を駆ける。
そうして飛び続け、日が暮れ始めた頃、見つけた。海軍の軍艦だが、知った気配がいくつもある。捕まったのか、奪ったのか。
見聞色で気配を探ると小さい反応が1つ。ビブルカードの確認をすると、焦げて小さくなっているものの、まだ残っている。
甲板に着地し、ゴーグルを外して船内に入る。
「は、ははは……どうしたァ……ロゼ? こんなとこまで来てよォ……おれァお前との約束を破っちゃいねェぜ……?」
体の至る所から血を流し、今にも命の灯が消えようとしているタイガーがいた。
その周りには傷を負い血を流している、はっちゃんにアラディン、〝海侠〟に〝ノコギリ〟等のタイヨウの海賊団の船員達がいる。奪った方だったか。
オレに気付いて驚きや戸惑い……そして怒りの感情を向けられる。
海賊に怒りの感情を向けられるなんていつもの事。どうでもいい。そんなことより
「何故さっさと輸血しない!? その輸血パック、SのRH-だろう、タイガーと同じ!」
タイガーが寝かされているベッドの脇には輸血パックを付けた点滴スタンドからチューブが伸び、先の針をアラディンが持っているが、何故か一向に輸血を始めない。
「そ、それは……」
「おれァ……海軍の、奴隷を容認してやがる奴らの血で生き長らえたくはねェ……」
言いよどむアラディンより先に、タイガーがか細い声で答える。
「だったらオレの血を使え! オレもSのRH-だ! オレの血も受け入れたくないか!?」
「よせ……自分でわかる……おれァもう死ぬ。お前の血がもったいねェ」
「うるさいッ! 海賊が、それも死に損ないの怪我人がオレに命令するな! アラディン、輸血パックだ、急げ!」
コートから輸血パックを取り出し、駆け寄ってアラディンにすべて渡す。
もしもの時のために、トリスタンに定期的に輸血してもらっているのを持ち歩いていた。
タイガーのことに限らず、自分用に。
「だ、だが……」
アラディンがタイガーの方を
本人の同意なしに輸血は出来ないってことか。
「はは、ホント勝手な奴だ……初めて会った時も、あの時も……アラディン、構わねェ……」
「ああ、わかった!」
アラディンが輸血パックに血を流すチューブを取り付けスタンドにかけ、針をタイガーに打つ。
「……何があった?」
深呼吸をしてからタイガーに問う。
「お前の場合、聞くより見た方が速ェだろ……お前に隠すことなんて、もうねェよ。誰かに知られたくねェことなんて、お前にはもう知られてらァ……」
「わかった……アラディン、オレからも血を抜いて用意しといてくれ。オレとタイガーでは体の大きさが数倍違う。あれだけでは足りん」
「ああ、準備するから、椅子に座ってくれ!」
「あと何でもいいから肉を。食って血を作る」
「なんだそりゃ、滅茶苦茶だな……第一お前、肉嫌いじゃねェか……」
「下らんことを言っている場合か!」
椅子に座り針を刺してもらってから、手袋を外しタイガーに触れ、ここ最近の過去を見る。
〇〇〇〇〇
今から数週間程前、タイヨウの海賊団がある島に立ち寄った時、1人の人間の女の子を託された。
名前はコアラ。名前は今初めて知ったが、オレと大して変わらない歳だったからよく覚えている。3年前までマリージョアで天竜人の奴隷にされていた、笑顔以外の表情が作れなくなった少女。
トラウマは、特に幼少期のトラウマは容易に克服出来るものではない。マリージョアでも姿を消し声を変え、背負って運びながら言葉を掛けたが、あの短時間で言葉だけではどうにも出来なかった。
コアラの故郷はその島ではなくフールシャウト島、故郷に返してやりたいが、島の住民達の航海術で
だから巷で〝奴隷解放の英雄〟と呼ばれるタイガーを頼った。
タイヨウの海賊団にコアラを加え、魚の船首の海賊船、スナッパーヘッド号は航海を始める。
コアラは船員達から何を言われようと、アーロンに殴られようと、ニコニコ笑いながら謝り、掃除の手を休めない。
だがその笑顔は表面だけ。覇気に目覚めたタイガーには、いや、覇気が使えずとも、コアラが他人に心を閉ざしているのがタイガーにはわかった。
わけがわからない船員達にアラディンが説明する。
コアラは見てきたのだろうと。泣くからと、掃除の手を休めたからと殺される他の奴隷達を。だから何をされようと泣かないし、笑っている。ずっとそうしてきたから自分は生き残れたと、奴隷の生き方が体に染みついているのだ。
タイガーは、コアラの天竜人の烙印を焼きごてで太陽のマークに書き換える。痛みで気絶するコアラ。
だがこの烙印がある限り、コアラは奴隷であった過去を忘れられない。克服出来ない。タイガー自身も人間を恨み嫌う自分自身と戦っていた。タイガーがマリージョアから逃れて来て4年、すべての人間を恨み嫌ってこそいないが、自分を追って来る海軍を、『生かして倒すなんて生温い、殺してしまえ』と囁き実行しようとする、自分の黒い感情を押さえている。
気絶から目覚めたコアラは、気絶してしまったことを笑いながら謝り、殺さないでください、と笑いながら繰り返した。
そんなコアラにタイガーが告げる。
『泣きゃあいいじゃねェか! おれ達を
その言葉で、今まで我慢してきた感情が溢れ出し、おそらく奴隷になってから初めてコアラは泣いた。3年の時を経てようやく、天竜人の支配から解放されたのだろう。
『行くぞお前ら、こいつは必ず、故郷へ送り届ける!!』
タイガーが船員達に号令を出す。
航海の途中、タイヨウの海賊団との触れ合いで、まだ困ったら掃除をする癖があるものの、徐々に感情を表に出すようになるコアラ。
最初はコアラが人間ということで受け入れがたかった船員達も、すっかり心を許すようになった。
ただ1人、アーロンだけは人間である以上敵だと言い続けている。これまでの航海で、自分達を蔑む目で見ていた人間と同じだと。自分の慕うタイガーが手配され、奴隷を解放したことを悪だと断定され、海軍の追手と戦い続け、人間嫌いに拍車がかかったようだ。オレにはそれほどコアラを拒絶しているようには見えんが。最初はコアラを殴ったこの男だが、それ以来手を上げていない。口で言うだけだ。
アーロンの言葉にジンベエは、自分は違うように感じたと言う。蔑む者も確かにいるが、それは一部で他は怯えているように見えたと。シャボンディでしか普通の人間を知らないオレには判断出来ん。オレは魚人を蔑む人間を多く見てきたし、魚人の何が怖いのかもわからない。
疑問を解消するためジンベエがコアラに問う。何を恐れているのか、自分達が海賊だからかと。それに対してコアラが、何も知らないから、と返す。それを聞いて何か考え込んでいる。ジンベエはアーロンとは別方向に変わったようだ。
フールシャウト島の
村までタイガーが付き添う。他の者達も来たがったが、自分達は海賊、大勢で訪れても怖がらせるだけとタイガーだけコアラに同行することになった。
『あたし、村のみんなに言うよ!! 魚人には良い人達がたくさんいるって!!』
コアラが手を振り、タイヨウの海賊団に別れを告げる。
『良い人達って……おれ達ャ海賊だぜ?』
『海賊でも良い人達だよ! 〝英雄〟とその仲間だし!』
話しながら、コアラと手を繋ぎ村まで送る。
無事村に着き、村人の反応を訝しみながらも、コアラとその母の再会を見届け、満足した船への帰り道。タイガーは海軍の部隊に包囲された。全海兵が剣とライフルを装備している。
部隊の指揮官はストロベリー少将……オレが、覇気を目覚めさせた人だ……。
『君達がこの島に来ることは、
そこでタイガーが気付く。
先程の村人の住人の反応は、いつものように自分を恐れてのものではない。コアラの母の涙もただ娘との再会を喜んだだけのものではない。あれは……自分に向けられた後ろめたい感情、村の子供を送り届けてくれた人物への罪悪感。
『(海賊なんだ……まあ……しゃあねェか。にしても、汚ねェ真似しやがる)』
『我々としても子供を天竜人に引き渡すのは避けたい……本来、このまま捕らえ天竜人に引き渡して終わりだが、君にはチャンスがある。運が良いな』
『チャンスだと……?』
『ああ、条件を飲むのであれば、君を王下七武海に推薦する準備がある。つい最近、片腕の四皇に挑んで2人欠けてな』
……〝赤髪〟の奴、2人も倒してたのか。
『世界政府公認の海賊か』
『条件は、マリージョア襲撃事件当時の、君の協力者達を教えることだ』
『何だと……? あれはおれ1人でやった!』
『あれほどの短時間で、奴隷の解放にボンドラの制御室の制圧、マリージョアすべての電伝虫の破壊など、1人で出来るはずがない!』
『お前には関係ねェ話だ。おれは七武海にはならねェからな。お前らと違って、おれは人を売ることを良しとしねェんだ』
『ッ……残念だ……! 一斉射撃!!』
ドドドドドンッ!!!
包囲していた海兵が照準を合わせ、ライフルから一斉に銃弾が発射。辺りに銃声が鳴り響く。
タイガーも武装色で急所はガードしたが、手足を銃弾が貫く。
『覇気使いだったか……!』
『おれの首は、お前らにはやれねェな……押し通らせてもらう!!』
銃弾を食らい血を流しながらも少将相手に奮闘するが、1人対ストロベリー少将含む海兵数百人、多勢に無勢。さらに攻撃を避け反撃しようと動けば動く程、タイガーの体から血は流れる。血を流す程動きは鈍くなり、斬撃や銃弾を食らいやすくなる。ジリ貧だ。
銃声を聞いて、途中で船に残っていた船員が合流する。そちらでも奇襲にあったようで、戦闘の傷が所々見られる。
負傷したタイガーとの2人がかりで、ジンベエがストロベリー少将に深手を負わせ、軍艦数隻、総勢数千人に及ぶ1旅団の包囲網の一部を突破。海軍の軍艦を一隻奪って逃走し、アラディンがタイガーの体内の銃弾を摘出したが、タイガーの血液型は希少なS型のRH-。船員達に同じ血液型の者はおらず、奪った軍艦にあった血を輸血しようとするが、タイガーがそれを拒む。そして、自分が奴隷だったこと、マリージョアの奴隷達を放ってはおけず3年前の事件を起こしたことを告げた所で、情けない顔をしたオレが来た……。
☆☆☆☆☆
「何故、受けなかった……? バレたとしても、オレは自分のことは、自分でなんとかする……」
過去を見るのをやめて、タイガーに聞く。
「最初に聞くのがそんなことか……第一お前……受けたとして、通ると思うか……?」
「ッ……!」
……厳しいと思う。たとえ海軍が推薦しようと、決めるのは政府。絶対に通るとは言えない。
「それに……たとえ通ったとしても、おれは、何があろうと友を売らねェ……!!」
「そのくらいのことで、オレは売られたとは思わんし、恨みもしない……」
「おれの問題だ……いいか、よく聞け……お前らも!」
タイガーの言葉に、少し離れていた船員達が駆け寄って来る。
「おれは好きなように生き、結果、オトヒメ王妃をひどく邪魔しちまったが……あの人は正しい! 誰でも平和が良いに決まってる!! だが、本当に魚人島を変えられるのは、コアラのように何も知らない世代、人間への怒り、憎しみを持たない次の世代だ!!」
息を荒くしながらも、タイガーは続ける。
「だから頼む……! 島には何も伝えるな……!! おれ達に起きた悲劇、人間への怒りを……!! この世には、心の優しい人間はいっぱいいる……! 海賊嫌いのくせに、海賊のおれを助けに来てくれたお節介もな……だが、おれのことをそのまま伝えちまえば、魚人島が変わる未来が遠のいちまう……おれは、死んだ後まで恨みを残し、あの人の邪魔をしたくねェ……!」
「縁起でもないことを言うなッ!! 輸血を負えて傷を癒せば、また元気になる! 4年前もすぐに治っただろう!!」
「お
「解放してもらったすべての奴隷にとって、おれにとって、あんたは一生の大恩人なんだ!! 偉業を成した〝魚人島の英雄〟なんだよ!! まだおれ達は、あんたに何も返せちゃいねェんだ、生きてくれ!!」
「……! 嬉しいねェ……だが、もうおれには、お前らの顔も見えねェんだ……お前ら……全員……愛し、てる、ぜ……」
笑いながらそう言った後、上に伸ばしていたタイガーの腕が力なく下がり……オレの手の中のビブルカードが、燃え尽きた。
「「「「「お
船員達が涙を流し、悲しみの声を上げる。
何故、タイガーさんが死ななければならない? どうすれば助かった?
ドクン……
海軍が悪い? 違う。海軍は海賊を倒しただけ。任務を果たしただけ。どこも責める所はない。
通報した島の住人が悪い? 違う。海賊の情報を海軍に知らせるのが間違っているはずがない。
フールシャウト島の村の住民が悪い? 違う。どの道海軍の奇襲作戦は実行された。子供と海賊、天秤に掛け、子供を選んだ判断を責められるはずがない。
天竜人が悪い? 違う。事の発端は奴らだし悪いことなど腐るほどあるが、今回奴らは何もしてない。マリージョアで上手い飯でも食べているだろう。
タイガーさんが悪い? 違う。海賊になるのは悪いことだが、その後の行動は〝英雄〟とさえ呼ばれるもの……そもそもタイガーさんは笑って最期を迎えた。自分の死を受け入れていた。何も、後悔していない。
ドクン……ドクン……
なら……
「お前ェ……!!!」
アーロンが、オレの胸倉を掴み上げる。
オレの腕に刺していた針が抜ける。
「なんで、なんでもっと早く来なかったッ……! なんでェ……もっと早く、来てくれなかったんだァ……!!」
その目から涙が溢れている。
こいつはオレに怒っているんじゃない。嘆いている。
何故、タイガーさんは助からなかったのか、死ななきゃいけないのかと。
「よさんか、アーロン……! タイのお
「わかってんだよ、そんなことは!! だがよォ……タイの大アニキは、元奴隷でありながら、天竜人にケンカ売って、種族関係なく奴隷を解放して、この3年間も商船から奴隷を解放して、それで人間が何をした!?
オレを離し、アーロンが飛び出して行く。
オレの体が地面に落ちて尻餅をつく。
「アーロンさん!」
「好きにさせてやれ……今のわしらに、奴を止める言葉は見つからん……」
ドクン……ドクン……ドクン!
そうだ……目を逸らして、考えないようにしていただけだ。オレが悪い。
タイガーさんを助けたくて、助けられなかったのはオレだ。オレにはタイガーさんの死を未然に防げる行動を取る選択肢があった。だがそうしなかった。
結果、助けられず、泣いているのは弱いオレだ。泣くしか出来ないのは力なきオレだ。
もっと速く飛べていれば……力があれば、間に合った。力がないから、間に合わなかった。
電気による心臓マッサージ、トリスタンがいるからと練習しなかった。していれば、助けられたかもしれない。
タイヨウの海賊団にタイガーさんが助かると希望の光を見せ、力が足りず、より深い絶望の闇に落としたのはオレだ。それが現実だ。
弱いことは罪じゃない。だが、力がないと自分の目的は達成出来ない。
ドクン……ドクン……ドクン! ドクン!!
「ロゼ、すまねェ……お前も大分血を失った、輸血を」
「いや、ズズッ、いい……これくらい、ズズッ、食事を摂れば戻る……」
力がないと、選択肢はない。運命を変えられず、屈した。
こうしていれば、そうしていれば、ああしていれば、どうしていれば……終わってしまった後で悔やむだけ。
弱い奴には、いや
「弱いオレには、何も、誰も、守れないッ……!!」
ドクン……ドクン……ドクン! ドクン!! ドクン!!!
弱くちっぽけなオレとは裏腹に、先程から心臓が強く、大きく脈打っている。
何かが暴れているように。殻を破り、何かが誕生しようとするように。
「一体何じゃ!? 床や壁が!!」
オレの周りの物が勝手に動き、集まっていく。椅子が床が壁が変化し、オレの目の前に、一つに集まり、体を構築する。
そして、金属的な甲高い産声を上げたのは、体長5メートル程の巨大な機械仕掛けの鳥。おそらくは、オレが力と速さを望み、設計したイメージが具現化したハヤブサ。
運命に反逆し、逆境を乗り越え今より高みへ飛翔する翼を備えた、敵を襲撃し、勝利をもぎ取る爪を研ぎ澄ませた猛禽、
悪魔の実の能力者は、稀により強力な力を扱えるようになる。覚醒したのだ、メカメカの能力が。悪魔の実の力が。
「害はない、オレの能力だ……【
「ニュ~、ロゼ、大丈夫か……?」
はっちゃんが心配そうに聞いてくる。
自分だって悲しいだろうに、今も涙が流れているのに。余程今のオレはひどい顔をしているようだ。
「ああ。しばらくは休むが、いつまでも立ち止まれない……タイガーさんは魚人島の現状を
オレに
速い、そしてオレ自身が飛ぶより自在に飛ばせる。どうも能力で浮かすことも出来るようだ。方向転換にいちいちジェット噴射せずに済む分、動きに無駄がない。
シャボンディへの飛行途中、1隻の船を見つける。
来る時にも見かけた船、漆黒の船体にドラゴンの船首、立派な船だ。海賊旗はないが、大量の砲台で武装しており、大勢の気配がする。今の時代、民間の船でも大砲くらい積むが、それにしても多い。海軍の軍艦以上の数だ。戦闘を前提としているかのような武装。
……この進行方向だといずれタイヨウの海賊団と鉢合わせするな。海賊船が海賊旗を普段は降ろし民間の船に擬装し、襲撃の時だけ掲げるのは別に珍しいことではない。
海軍の軍艦に乗っているとはいえ、この武装は……彼らも腕に覚えがある……
少々手荒だが、見極めるか。
ギン!!!
覇王色で正体不明の船を威圧する。
次々と消えていく気配……ただの民間人達だったか? そう思ったが、5つの気配が残る。それも今までより大きな気配を放っている。覇気使い……その気配の内4つが甲板に出てくる。1つは出ようとした直前で引っ込んだので、大きな足しか見えなかった。
手配書では見たことがない顔だな……見ていたら絶対に忘れない。だが、カタギではなさそうだ。あんな民間人はいない。いてたまるか。
タトゥー黒マントとアシンメトリークラブ、グラサン痴女に……形容しがたい変態。なんだ、あの濃い連中? しかし、突然来訪、いや来襲したオレに攻撃をする意志が感じられない。ただ突然現れたオレに戸惑っている。凄腕の使い手のようだが、この様子だと、タイヨウの海賊団とも戦闘にはならないだろう。
そのまま放置して、オレはシャボンディに向かった。
☆☆☆☆☆
「な、なんだったんだっチャブル!? あのマシンボーイ……」
そう言うのは、4メートル半の長身だが巨大な顔故に三頭身の人物。
紫色のアフロヘア―の上に王冠、長い付けまつげ、紫の唇に特徴的な出っ張った顎、首に真珠のネックレス、手には肘の手前の前腕を覆う長い手袋に、詰襟が付いたハイレグ水着のような服、しかし明らかにサイズが合っておらず、体の前面が剥き出しになっており、更には網のマントに網のストッキング、ヒールのロングブーツの、赤紫色で統一されたコスチュームを着ている。
先程の言葉をロゼに聞かれれば、『お前がなんだ?』と返されること間違いなしの、どこに行っても恥ずかしい、
母親のシャクヤクが
「覇王色の覇気……私達以外は全員気絶したな。ゴア王国で拾った新入り達はもちろん、正式な同志達も。猛禽類みたいな鋭い眼光だったが、あんな涙の跡が残った、赤く充血した目のぼうやに睨まれてもな……」
ピンク色のショートヘアーの上にゴーグルを付けた帽子を被り、サングラスを掛け、上半身裸にネクタイを締めジャケットを着ているが前は開きっ放し、前が非常に短く後ろは長いフィッシュテールスカートにニーハイソックスとハイヒールを履いた、過激な格好のスタイルの良い女性ベロ・ベティが、泣いた痕跡がある子供を慮っているが、その
「目? 先程飛んでいた時はゴーグルを付けていたが、今は外していたのか……だが猛禽類は中々的を射ているな、ベティ。あの子供は〝機甲のロゼ〟。シャボンディ諸島では名の知れた
ベティの言葉に、この中では現在最も顔が知れ渡っており、顔を知られているとマズイと判断し、姿を見せなかったクマのような大男が、ロゼの情報を伝える。
クマ耳の付いた帽子を被り、黒の長髪、服の上からマントを着てフードを被ったこの男は、バーソロミュー・くま。世界政府加盟国ソルベ王国の国王。
「
ロゼの言う所のアシンメトリークラブ、トランプのクラブのような髪型で、頭にサングラスをかけ体には膝下までの長さのファー状のロングコート、髪とコートが正中線から右半身が白色、左半身がオレンジ色の左右非対称なカラーリングで、片手にワイングラスを持った女性、イナズマだ。グラスに飲み物が入っているが、まだ未成年なので当然アルコールではなくただの赤いジュース。
そしてイナズマが尋ねた相手こそ、この一癖も二癖もある個性的なメンツを纏めるリーダー。
顔の左側に大きなタトゥーを入れた、黒ずくめの格好の、後に〝世界最悪の犯罪者〟と呼ばれるようになるが、今は無名の男。モンキー・D・ドラゴン。
「(あの子供が、昔親父の言っていた……)」
ドラゴンの脳裏に、数年前のガープとのやり取りが浮かぶ。
『今、見所のあるロゼって子供を鍛えてるんだが、嬉々としてついて来て、ついやり過ぎてしまう。ぶわっはっはっはっは!』
『親父の
『たしか……4歳とか5歳とか言っていたなァ』
『それ人間か? 海王類の5歳とかじゃないだろうな?』
「(親父の話を聞く限り、仲が良い海軍にも入る気がないのに、おれについて来るとは思えんな。下手に接触すれば、将来素性が海軍や政府にバレる恐れも……そうなればルフィの自由は……)いや、やめておこう。それより気になることが出来た、少し寄り道をしてくる。お前達は気絶した者達を起こしていてくれ」
「ちょっ、ドラゴン!? ヴァナタは一体どこへ……って、もういないィ~ンヌ!?」
ドラゴンは1人、ロゼが飛んで行ったのと逆方向に向かった。
☆☆☆☆☆
フールシャウト島から離れて移動中のタイヨウの海賊団。
タイガーが死に、二代目船長にジンベエがなり、タイガーの遺体を海軍の軍艦で魚人島へ運んでいる途中。
船員達に指示を出し、タイガーの遺体の傍らでジンベエは、先程のことを考えていた。
『弱いオレには、何も、誰も、守れないッ……!!』
ロゼの泣きながら、絞り出すような言葉を。
そして同時に、まだ自分がアーロン達と共に魚人街でゴロツキをやっていた頃、タイガーと会った時のことを思い出していた。
『まだまだだな……踏み込みが甘いんだ。そんな拳じゃ、誰も守れねェよ?』
『あァ? 守る? ぐわッ!』
腕に自信があった自分やアーロン、他の者達を、次々とタイガーが薙ぎ倒していった時のことを思い出していた。
『他に挑んでくる奴がいねェんなら、おれがこの魚人街を仕切る!! おれはタイガー!! おれがアニキになったからには安心しろ、お前達の命はおれの命だ。子分達はおれが守ってやる!!』
タイガーがいたから、今の自分がいる。
タイガーがいなければ、自分は魚人街で今も腐っていただろう。
「(魚人と人間、海賊と
「驚いた……海軍の軍艦なのに魚人が乗っているのはおかしいと思ったが、まさか勧誘しようとしていた〝奴隷解放の英雄〟がいるとは。海賊嫌いと聞いていたが……? すでに息はないが……血はあるか。魚人の、マリージョアを素手で登り切るほどの、この男の生命力ならば、もしかすれば……」
「誰じゃァ、貴様はッ!?」
考え事をしていると、いつの間にかいた、ぶつぶつと独り言を言う見知らぬ男に
その叫び声に船員の何人かが気付き、そして黒ずくめの格好にフードを被った男にも気付き、取り囲む。
「何者だ、お前!」
「海軍の追手か!?」
「おれはドラゴン……革命家ドラゴン。この男、おれに預けてくれれば、今ならまだ蘇生出来るかもしれん」
「……なんじゃと?」
「ジンベエさん、耳を貸すことはねェ! こんな突然現れた得体のしれない男に!」
「ああ、こいつが政府の手の者じゃない保証なんてどこにもない! お
猛反発する2人の船員、黒髪のアフロヘア―を上で2か所ゴムで留め、道着を着て黒帯を締めた、肘に大きなヒレがある男と、金髪に半袖のTシャツに半ズボン、大きく突き出した口が特徴的な男。2人の、クロオビとチュウの言うことはもっともだ。
大事なアニキ分の遺体を、突然現れた男に自分なら助けられるかもしれないと言われても、信用出来る材料がない。そもそもタイガーはついさっき人間に罠に嵌められ命を落とした。この男も、天竜人に逆らったタイガーを死後も辱め、今後反逆者が出ないようにしようとする政府関係者かもしれない。
だが、ジンベエには目の前の男が嘘を言っているようには見えない。自分を魚人と蔑まず、恐れず、目を背けず、正面から対等の人として見て、タイガーを心から助けたいと言っているように見える。
それは気のせいではなく、ジンベエはこの3年間の戦闘を経て、そして先程の海軍の罠で窮地に陥れられた時、
「本当に出来るのか……?」
「「ジンベエさん!?」」
「ああ。政府に、世間に生存がバレずに済む方法もある。だが、それを使えば君達との再会は遅れるかもしれんが……」
ジンベエの脳裏に、魚人島の未来を思うタイガー、数週間共に過ごしたコアラ、先程駆けつけたロゼの姿が浮かぶ。
「……タイのアニキを頼む」
「本気か、ジンベエさん……あんなことがあった直後に!」
「わかっておる……だがわしは、タイのアニキの意志を消したくはない……人間を信じてみたい!」
「任された……この男の運命は、まだ終わってはいない」
☆☆☆☆☆
場所が戻って漆黒の船、ヴィント・グランマ号
「ドラゴン! ヴァナタ、こっちの返事を聞かずにいなくなるのはいい加減やめっチャブル!!」
リーダーなのに、よく単独行動をするドラゴンを諌めるイワンコフ。
「すまんイワ、許せ」
「ゆ~る~せェ~? そんなこと言われても簡単にィ……ゆる……ゆる……許ゥ~す!! 許すのかよ、一本取られたよ! ヒーハー!!」
いつもならツッコんでくれる
自身の片腕、イナズマは現在、ゴア王国で拾った重傷かつ記憶喪失の少年、サボの看病をしている。
「イワンコフ……顔がうるさい」
「いやいや顔は関係なっシブルよ、ベティ!?」
「ドラゴン、全員目は覚めた……いつでも船は動かせる。その男、フィッシャー・タイガーか?」
リーダーが帰って来ても、非常にマイペースかつ漫才のようなやりとりをする2人を無視して、くまがドラゴンの連れて来たものにいち早く気付く。
「そうだ。今は心臓が止まっているが、お前達ならなんとか出来るだろう?」
「本人次第だっチャブルよ。すでに死の運命……どころかもう死んでるわ。並大抵の生命力では蘇生しなっキャブルね」
「ああ、こりゃダメだな……諦めてるタマナシ野郎のイワンコフに、奇跡は起こせないんだろう?」
「ヴァターシは野郎ではなく、オカマだっシブル!!」
「イワンコフ、その指摘は的外れだ。ベティも口が悪過ぎるぞ」
口では悪態をつきながらも、皆タイガーに集まる。
まずくまが手袋を外し、手の平の肉球を
くまはニキュニキュの実の肉球人間。一体何の役に立つのかわからないような悪魔の実の能力者だが、手の平の肉球であらゆるものを弾くことが出来る。自身を弾き飛ばす事で瞬間移動をしたり、相手の攻撃や大気、更には体の痛みや疲労といった実体がないものまで弾き飛ばすことが出来る。
ポンッ!!
その肉球でタイガーの肉体のダメージを弾き、肉球型のそれを海に落として、今はタイガーの胸に手を当て、心臓マッサージを行っている。
その間にイワンコフが、ドラゴンの持って来た血液パック、ロゼのSのRH-の血液パックを使い、タイガーの腕の血管に針を刺し、輸血を
「ヒーハー! さっさと帰って来いやァ~ンナ!! 【エンポリオ・治癒ホルモン】! オラァ!!」
ドスッ!!
注射針のように伸びた指先をタイガーの体に刺す。
イワンコフはホルホルの実のホルモン自在人間。様々なホルモンを指先から注入し、性別・体温・色素・成長・テンションなど、人間を内側から変えてしまう人体のエンジニア。
タイガーに注入したのは傷を癒す【治癒ホルモン】。使用した対象者の寿命を削るリスクはあるが、もう既に死んでいるタイガーに躊躇いなく打ち込んだ。
そして、タイガー、イワンコフ、くまの後ろで
「もっと気合入れろォ!! お前らァァァ!! それでもキ〇タマついてんのかァァァ!」
船内から取って来た旗を振り、応援(?)と声援(?)を送るベティ。コブコブの実の鼓舞人間。
彼女は鼓舞した相手の内なる力を呼び起こし、身体能力を増強させることが出来、その力で3人の力を底上げしている。決して罵倒しているわけではない。
「お黙りベロベロガール! ヴァナタにもキンタ〇付けてやろうかァ!?
「騒がしい奴らだ……」
「(もう一人くらい、こいつらを纏める器を持つ者が欲しいな……)」
実力は確かだが、癖が強過ぎるメンツを眺めて、ドラゴンは自分達の組織のNo.2を欲していた。
傍目には医療行為にはとても見えない光景が繰り広げられ、タイガーが息を吹き返した。
「げほっごほっ! い、一体何が……なんだお前ら!?」
目の前の個性が溢れ過ぎている人物達に驚きながら、事情を聞き、礼を言う。
そして
「あ、あんな死に別れをして、どんな顔してあいつらに会えばいいんだ……?」
タイガーは地面に両手をついて沈んでいた。
「どんな顔して会えばいいかわからないィ~ンナら、いっそ変えてみれば、ヴァナタの世界も変わるかもねェ……【エンポリオ・女ホルモン】!」
ドスッ!!
「ぐう!?」
イワンコフにホルモンを注入されるタイガー。
すると、タイガーの体が変化し、髭はなくなり、丸みを帯びたフォルムに、女性の体に変化する。
「な、なんじゃァこりゃァあ!?」
タイガーが、大きく変わった自分の胸を掴みながら吠える。
元々タイガーの服装は頭にバンダナ、下はジーパンにサンダル、上はシャツを着てコートを羽織っているが、シャツもコートも前が全開でタイヨウのシンボルを
「どの道ヴァナタが生きていると政府にバレたらヤバっシブル。死亡が広まるまではその姿でいた方がいいわ。会わせる顔が決まったァ~ンナら、ヴァターシにお言い! ちゃんと戻してあげるから!」
そう言って、サムズアップしながらウィンクをする。
ハ‘‘‘チョーン!!
「危ねェッ!?」
ウィンクで起こった爆風を避けるタイガー。
規格外だなと思いつつも、自分を気遣っての事、そして元に戻れるのならと、この時は感謝したタイガーだが、後にイワンコフがインペルダウンに投獄されたせいで、これから10年も女のままで過ごす羽目になってしまうことはまだ知らない。
「それで……結局お前達は何なんだ?」
「我々は……革命軍。世界に変革をもたらすものだ。フィッシャー・タイガー、君を我々の同志として勧誘したい。人々の自由のために、我々と行動を共にしないか? 世界が君を必要としている」
メカメカの実の能力覚醒
3歳に食べて9年後の12歳で覚醒、早い。
覚醒の条件を満たし、ロゼが力を渇望したことにメカメカの悪魔が応えて覚醒。後に魂でも取られそうなキッカケですが、これでようやく
覚醒こそしましたが、まだしたてのひよっこなので、これから能力を使う程、科学が発展する程、まだまだ成長の伸び代はある。
【
遊戯王のモンスター。見た目は機械族だけど鳥獣族。
召喚時の口上は、その時のロゼのテンションによって、叫んだり省略されたりする。
攻撃名は、すべての敵を引き裂く【ブレイブクローレボリューション】。
革命軍の濃い人達
おそらく風を操れ、飛行手段もあるであろうドラゴン(新世界編55歳)、ドレスローザ編のサボのこの頃の回想では女だったけどいつから
サボもいたけど気絶。記憶がなく不安定な精神状態で、全力の覇王色に耐えるのは無理。
革命軍自体はドラゴンがルフィの父になる前に結成していたようですが、まだ同志を集めてる段階で、世間に知られていないことにしてます。
〝under the rose〟の話でステューシーが言ってた怪しいフードの集団は、ノックス探検隊もそうなんですが、革命軍のことでもありました。似たような恰好だったので同じ集団と思われてる。ノックス探検隊の方は
タイガー蘇生
フェイント入れましたが生存。書き始める前はここまで、どころか旅立ちまでを1か月で書けると思ってました。現在30万字越えだから、実現するためには一日最低1万字感謝の執筆……うん、絶対無理でしたね。ですが旅立ちがあと少しの所まで進んできました。
死んで生き返った場合ビブルカードは……まあ流石に灰が集まってまた紙になるってことはないでしょう。
タイガーの人間への感情は原作と変わってるけど、ついさっき自分を罠にかけた者達の血を受け入れるのは無理だった。
蘇生を実行するにあたり、『魚人とはいえ心臓が停止してから結構時間経つのに心肺蘇生出来るのか?』とか、『死人にイワンコフ達の能力は効くのか?』とかも気になりましたが、一番の気がかりは、『ドラゴンが怪し過ぎてそもそもタイガーを預けてもらえるのか?』です。見た目で判断しない魚人だから、人間を信じることさえ出来れば大丈夫。たぶん。
すまない、女体化タイガーさん、略して
沈んだタイヨウがまた昇るのはまだ大分先。