機械の皇帝   作:赤髪道化

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 本当はジェルマのビブルカードが発売されてからこの話を書きたかったのですが、調べてみると残念ながら発売予定は8月。ONE PIECE magazine vol.1ではレイジュが能力者と書いてましたが、本当に能力者なのかとか、ジャッジの北の海(ノースブルー)の4人の王を討ち取った四国斬り事件がいつのことなのかとか気になりますが、3か月も待てないな……。
 ジャッジはわからないけど、レイジュは新世界編24歳。イチジ、ニジ、ヨンジは新世界編21歳、そして珍しい血液型であるSのRH-ですね。まだこの年12歳と9歳×3人。
 新世界編の12年前はこれで終わり。この年は比較的真面目だったので燃え尽きた……今回非常に長くなりました。2万字越えました。投稿時間ギリギリまで書いて疲れましたぁ……。


〝機甲VS戦争屋〟

 フィードバックで動けなくなったアインを医務室に送った後で、海軍本部を歩くオレ。もう何度もやっているのだから、少しお姫様抱っこで運んだくらいで茶化さないで欲しい。アインが照れて降ろしてと騒ぐから。暇人じゃあるまいし。

 アインも科学班の研究についてくるようになったけど、まあ科学班には入らず普通にゼファーさんみたいに海兵になるだろうな。ずっと言っていたし。かつてゼファーさんが大将時代に掲げていた「生かす正義」を背負うつもりなのだろう。

 

 科学班の、というよりDr.ベガパンクの研究・開発費用がすごいことになっているらしい。前にステューシーの過去で五老星がお金を必要としていたのは、他にもあるのだろうがそのためだろう。まあ、世界政府の最高権力者がわざわざ話し合うことではないと思うが。アイドルのプロデュースなんて下の人間に任せればいいことだ。もしかしたら送り付けたハンコックの写真に少し魅了されていたのかもしれない。

 

 オレの能力が覚醒して、自分の体を変化させるだけでなく、より大きな機械を作り出すことが出来るようになったので、実現可能と判断出来たものを作り出すため、加速度的に必要な開発費は増えているそうだ。最近は人工衛星とやらを作るための、太陽の光を電力に変換するという太陽電池を作ろうとしている。

 世の中には不思議なことがたくさんあるが、オレが一番不思議なのはDr.ベガパンクの頭の中がどうなっているのかだな。だが知らずに放っておいた方が良いパンドラの箱のような気もする。

 

 

「貴様が、〝機甲のロゼ〟だな?(こいつがベガパンクの言っていた、機械の能力者。それも覚醒した……)」

 

 そんなことを考えながら、海軍科学班のマリンフォードの研究室の前を通っていると、声をかけられた。

 言葉からしてオレの知らない人物、振り返って確認すると……金髪で長髪の頭に金の兜を被り、尖った長く黒い髭と二つに割れた顎、白い手甲に黒い靴、グレーの上下の服の上にオレンジのマント。そして、マントの下のロングコートの膝の部分には66……マジか。66ってまさかあの……おそらくオレの想像は合っている。

 

「ええ、そうです。優雅な立ち振る舞いから、高貴な身分の方とお見受けいたしますが、私は下賤の身ゆえ存じ上げません。宜しければ御尊名をお聞かせ願えませんか?」

 

 そうでもなければ

 

「(違和感が凄いねェ……(だァれ)これェ? 言っちゃァなんだけどォ、気持ち悪いねェ……)」

 

 大将〝黄猿〟、ボルサリーノさんが付いているはずがない。

 長年元帥をやっていたコング元帥が退き、センゴクさんが大将から元帥に、ボルサリーノさんが中将から大将に、ストロベリーさんが少将から中将に昇進した。

 

「知らずとも無理はない。私の顔を知り生きている者など、取引相手か国民くらいだ」

 

 標的(ターゲット)は殺すから……ということだろうか? 遠回しにこれ、「私はお前に取引を持ち込みに来た。断れば殺す」って言っていないか? 考えすぎか? だがあの戦争屋ジェルマだからな……去年も東の海(イーストブルー)のコジアに侵攻したらしい。

 

「私の名はヴィンスモーク・ジャッジ。ベガパンクから聞いているだろう」

「ええ、常々。優秀な科学者で、なおかつ〝怪鳥(ガルーダ)〟の異名を持つ戦士、そして、世界政府加盟国最強の科学戦闘部隊を持つ、科学国家ジェルマの王と」

 

 あと、ジェルマの悲願、北の海(ノースブルー)の武力制圧に取り憑かれた亡霊と。

 

「なら話が早い。貴様を我がジェルマ王国に招待する。世界会議(レヴェリー)も終わり、もうすぐ我々はここから離れる。その前に我が子達の相手をしろ」

 

 はあ……ここまで嬉しくない招待をされたのは初めてだ。それもこちらの返答を一切聞いていない一方的な宣告。頷いて当然といった傲慢な態度。

 やはり王族というのはこういうのが多いんだな。オトヒメ王妃やネプチューン王と会うまでのオレの中の王族のイメージそのまんまだ。リュウグウ王国の王族達の、なんと慈悲深く心優しかったことか。

 

「お招き頂き光栄、恐悦至極に存じます。私も科学に僅かながらに関わる者として、あのジェルマ王国に足を踏み入れられるなど、一生の(ほま)れ。感謝の極みにございます」

 

「(こいつ凄いねェ……絶対(ぜェ~ったい)そんなことォ、1ビット(※デジタル信号の最小単位)も思ってないでしょォ?)」

 

 内心不満しかないが、今は出さない。

 

「そうであろう。物わかりのいい人間は長生きする。支度を済ませ、すぐにこの研究室に来い」

「あ~、わっしもちょっとこいつに用があるから外すねェ~」

「構わん。そのままいなくなった方が良いくらいだ」

「それは無理でしょォ~」

 

 ジャッジ王が研究室に入ったのを背に、ボルサリーノさんがこちらに来る。

 

「用って何だ? というかいなくなった方が良いって、護衛じゃないのか?」

「ジェルマ66(ダブルシックス)の総帥に護衛なんていらないでしょォ~。わっしは〝怪鳥(ガルーダ)〟が研究室で妙な真似しないように監視だよォ~。去年みたいなことがあるかもしれないしねェ~」

 

 王下七武海だった〝擬身(ぎしん)〟がやったあれか。監視でこの人ってことは……妙な真似をしたら戦闘ってわけか。物騒だな。

 そういえば、この人も北の海(ノースブルー)の出身だったな……用が無事終われば聞いてみるか。

 

「それで用ってのはァ、君ィ、あんな簡単に受けちゃってェ後でとんでもないことになるかもよォ~?」

「断ったら断ったで面倒そうだから、とりあえず様子見。向こうが何もしないならオレも何もしない。だがオレを脅迫したり強硬手段に訴えて来れば、それ相応の手段を使う。最善は切るだけ、最悪は国を爆撃して吹き飛ばしてでも帰って来る。ジェルマ王国は加盟国だけど特殊……それで海軍が動くことはないだろう?」

 

 

 ジェルマ、というよりヴィンスモーク・ジャッジは一度は逮捕されそうになった男。それが加盟国の王としていられているのは、ジェルマの科学力を政府が、そして加盟国の多くが欲しているから。もしジャッジ王がオレを手配するよう要請しても、ジェルマが出し惜しみしている科学力、レイドスーツ辺りを奪ってステューシー経由で渡せば、手配されずに済むだろう。司法取引……は少し違うか。闇取引だ。

 あいつはオレの監視の任務を、シャボンディに店を持っている自分以上の適任者はいないと豪語しもぎ取り、CP-0の任務として、天竜人の繁栄のため、世界のために、オレをストーキング出来るようになった。今までと変わらないようにも聞こえるが、他が来なくなるというのは大きい。

 

 オレはステューシーのことをCP-0ではなく、知り合いのきれいなお姉さんとして扱っている、今はそう上に報告しているらしい。他の奴に見張られるよりは大分良い、というか結果的には幸運と言える。報告の内容も、事前にオレと話して決められているし。だが、血縁のこととか他のことはバレておらず、悪魔の実の能力だけでこれか……いや、もしかすれば覇王色も含めての判断かもしれないけど。数百万人に1人の割に、使える人間が何人か知り合いだから忘れていた。オレには数百万人も知り合いなどいないのに。

 

 

「……過激だねェ~(海軍には好意的だしィ、わっしらが動かずに済むよう配慮すらするから忘れそうになるけどォ、敵にはこういう奴だったねェ。海軍じゃァ上層部しか知らねェことだけどォ、能力が覚醒してからCP-0が付けられたってェ話だ。まあ抹殺じゃねェってことはつまりィ、政府にとって利用価値があるって思われてるってェこと……古代兵器が復活した時の対抗策候補。相手がジェルマならァ、たとえそうなっても切られるのは向こうの方だろうねェ。それにしてもォ、傍で見ているだけで危なっかしい立ち位置にいる奴だねェ……)」

「ボルサリーノさんの任務も、オレの事言えないと思うけど?」

「そうかもねェ~。それで、もう一つ聞きたいんだけどォ……君ィ、フィッシャー・タイガーと知り合いだったりしたかい~?」

 

 ……来たか。まあ、どこまでのことを聞かれているかはわからないが、オレの答えは変わらない。

 

「ああ、友達だった。〝ノコギリのアーロン〟から聞いた?」

「いやァ、あいつは君のことなんて(なァ~ん)も言わなかったよォ。けどォ、最近元気なかったしィ、魚人島に出入りしてるのは聞いてたからァ、そうなのかと思ってねェ~」

「まあ、目の前で友達が死んだ経験なんて、今までなかったからな……」

「……彼の死に立ち会ったのかい?」

 

 ボルサリーノさんが目を見開く。

 本当に何も言わなかったのか。ということは……いつもの情報操作(あれ)か。

 

「タイガーさんのビブルカード、貰っていたから」

「それはァ、クザンと会った後ってことでいいかい?」

「そうだな。あの時初めて、タイガーさんのビブルカードの異常に気付いて、飛んで行った」

「……ロゼ、君の血液型は確かァ」

「SのRH-。タイガーさんと同じだ。オレの血で輸血しても、間に合わなかったけど」

「……フィッシャー・タイガーが、襲撃事件を起こした理由、何か心当たりあるかい?」

「見捨てられなかったからだろうな。自分と同じ境遇だった者達を」

 

 質問にはすべて嘘偽りなく答えた。

 

「(するってェとォ……こいつは、フィッシャー・タイガーの奴隷の過去を知ってて、助けようとして助けられず、その上友達の死に様が事実と違う報道をされたことも知っている、と。今回の件で、こいつのわっしらへの印象は最悪のはず……なのにィ)なんで君ィ、まだここに足を運ぶ? わっしらが憎くはないのかい?」

 

 しばらく黙って考え込んでから、そう聞かれた。

 

「タイガーさんは、天竜人に逆らえばどうなるかわかっていてやった。海賊になることがどういうことかわかっていてなった。覚悟が出来ていた。そしてオレは、こうなる可能性もあると思っていた。それでも助けられなかったのは自分が原因。海軍が海賊を倒すのはいつも通りの当たり前の任務。オレが恨むのは筋違いだ」

 

 オレにとっては海軍にも友達は多い。

 タイガーさんとは別の方法で現状を変えようと、内側から変えようとしているのも知っているから。

 第一、タイガーさんを殺したのはオレだ。

 

「……ストロベリーが言ってたよォ。フィッシャー・タイガーに言われたことにィ、何も言い返せなかったってェ。これが自分の正義なのかって」

 

 それはおそらく、ゼファーさんもかつて思い悩んだことなのだろう。

 

「そうか……オレは海軍も、ストロベリーさんも恨んではいない。だが、ずっと大嫌いなものがある」

「なんだい?」

「民間人を脅かす海賊が蔓延る大海賊時代が、タイガーさんが海賊にならざるを得なかった今の時代が、殺したい程、嫌いだ……!」

 

 吐き捨てるように、そう言った。

 

「(フィッシャー・タイガーの協力者ァ、こいつなんだろうねェ……けどォ)君にとってェ、海賊って何だい?」

「悪。たとえ善人であろうと、一度海賊になれば命を狙われても文句が言えないほどの大罪。だから海賊になるなら命を懸ける覚悟をしていてしかるべきだし、そんな海賊を相手にするオレみたいな奴も同様。オレの判断基準は正義か悪かだけではないから、海賊であっても見逃すことはあるけど。それで、どうする? オレを捕まえるか?」

 

 これだけ話せば、気付くだろう。

 

「(やっぱりィ……たとえそうでも、他の奴ならともかく、こいつが海軍に牙を剥くことはァ、なさそうだねェ……)ん~? 何故だァ~い? 相手が海賊とはいえ、怪我人に輸血したことを咎めることは出来ないねェ~。わっしが聞いたのはァただの世間話ィ。マリージョア襲撃事件はァ、首謀者が死亡しCASE CLOSED、解決済み。もう終わったことだよォ~」

 

 

 ウソつけ。あんな真剣な態度で、今まで世間話をしたことなんてなかっただろう。今は笑っているが。見逃されたか。

 色々考えた結果、政府や海軍に恩を売って協力的な態度を示す。オレが嫌なことは絶対にやらないが。加えて、オレの秘密がバレようが手が出せないくらい強くなる。捕まえて処刑するより、このまま利用した方が得だと思われるほどに。

 そして、あわよくば免罪という形で、父さんの手配書も取り下げてもらえないか、という発想に至った。オレがすべて帳消しに出来るくらいの功績を立てる……たとえタイガーさんが生きていても、この提案には乗らなかっただろうけど、選択肢は増やせる。

 

 今から12年前、ロジャー海賊団の船、オーロ・ジャクソン号を作ったことで、ウォーターセブンの船大工トムが死刑判決を受けたが、廃れゆくウォーターセブンの救済案として海列車の構想を発表し、10年の執行期間を得て、2年前に海列車パッフィング・トムを完成させ、司法の島エニエス・ロビーとの線路を開通させた。

 現在は他の3つ、カーニバルの町サン・ファルド、春の女王の町セント・ポプラ、美食の町プッチとの線路を作っているらしいが、このままいけば免罪になるだろう。

 一緒に魚人島で遊園地を作っているデンさんの兄でもあるし、良かった。

 

 ただ船を作っただけで死刑。では副船長の罪は、オレは一体何をすれば免罪に出来るだろうな……。

 

 

「では世間話ついでに気になるんだが、最近偉大なる航路(グランドライン)のどっかの島で、自分が船長をやっていた海賊船を降りたっていう、モンブラン・クリケット。北の海(ノースブルー)に、そんな姓の登場人物が出てくる童話があると思うけど」

 

 北の海(ノースブルー)発行の「うそつきノーランド」。この人なら詳しいことを知っているかも……。

 こんな雑談レベルのことをステューシーに調べてもらうのは忍びない。

 

「ああ。彼はそのモンブラン・ノーランドのォ末裔って話だよォ~?」

「本当か!? まさかとは思ったが……そうなのかッ……!」

「……君もォ、絵本とか興味あるんだねェ~」

「モンブラン・ノーランドといえば、確かに絵本の方が有名だが、新種の植物を発見・研究した、植物学者としても大きな功績を残した冒険家だぞ? オレが興味を持たないわけあるまい!」

 

 話とか聞けないものか……ああだが、相手は賞金首か。船は降りても手配書は残る。懸賞金は2500万ベリー。オレは賞金稼ぎ(バウンティハンター)だから、第一印象から悪いな……。

 

「なるほどォそっちかい……じゃあ、わっしは任務があるから、もう行くねェ~」

 

 そう言って、ボルサリーノさんが研究室に入っていった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 一度家に帰り、『ちょっとジェルマに行ってくる』と書き置きしてから、研究室に戻ってくる。

 その後、ジャッジ王が海軍本部から出るまではボルサリーノさんも同行し、赤い港(レッドポート)でボンドラに乗って、オレの生涯二度目の聖地マリージョア。

 といっても、赤い土の大陸(レッドライン)に上がった後は、マリージョアから離れた場所にある城を乗せた、66と書かれた巨大な電伝虫に移動。

 

 その城内でジェルマの王族と対面した。

 全員共通で眉毛がぐるぐるしている。すごい所が似ているな。わかりやすい姉弟だ。姉1人に弟3人。

 ピンク色の髪でシャーリーのように右目が隠れ、肩まで伸ばした髪を後ろで跳ねさせて、カチューシャを装着。紫色のスカーフを巻き、ダーツの的のような模様の袖なしのワンピースを着て白のロングブーツを履いているのがレイジュ王女。

 赤色の髪で右側が長く顎まで伸ばし、くせ毛なのか固めているのか、3つに分かれた髪型で、首に真紅のスカーフで1と書かれた赤いTシャツを着て、白のズボンに茶色いロングブーツを履いているのがイチジ王子。

 青色の髪でイチジ王子より更に分かれてリーゼントみたいに伸びた髪型、目にはゴーグル、水色のスカーフ、2と書かれた青いTシャツで下はイチジ王子と同じ格好のニジ王子。

 そして緑色の髪でドングリみたいな髪型、オレンジのスカーフ、3……ではなく4と書かれた緑のTシャツで下はイチジ王子と以下同文のヨンジ王子。

 中々特徴的な髪型を……オレは他人の事をどうこう言える髪型をしていないか。だがそれにしても髪の色がカラフルだな。

 

 見た目以外の特徴としては、レイジュ王女は長女でオレと同い年。顔は笑っているが、顔しか笑っていない。作り笑いだな。唯一オレを名前で呼ぶ。

 男3人は三つ子でオレの3つ下、イチジ王子が一番王族としてのプライドが高く、オレを庶民と呼ぶ。ニジ王子は一番キレやすく、オレを平民と呼ぶ。ヨンジ王子は一番バカそうで、オレを変な髪型と呼ぶ……確かにお前がこの中で一番普通の髪型かもしれんが。

 明らかにサンジ王子がいるであろう名前の付け方だが、ここにいないということは、もう亡くなっているのだろう。王妃の姿も見えないし、余計な詮索はしないでおく。

 

 

 自己紹介をして、客間で子供と侍女だけになってから、要約すると『平民にも何か取り柄くらいあるだろう、見せてみろ』というようなことを言われたので、平民から連想してトランプで大富豪をしたのだが、

 

「不条理だ!!」

「イカサマだ!!」

「非ぃ科学的だ!!」

 

 オレの手札はA(エース)が4枚、2が4枚、4が4枚、そしてQ(クイーン)が1枚。

 先攻は譲ってやると言われたので、革命を3連発してから、ハートのQ(クイーン)を出して上がった。

 

「……私は何もしてないわよ?」

 

 レイジュ王女が恐る恐るそう言う。

 彼女はカードを侍女に配らせず自分が配り、ゲームには混ざらなかった。姉なのに呼び捨てにされているし、姉弟仲良くないのか? だがそもそもこの三つ子も全員呼び捨てで呼び合っているし、こういうものなのかもしれん。

 

「バカな……このおれが負けるなんて!」

 

 負けて打ちひしがれるヨンジ王子。

 

「それでは先程仰られました通り、この憐れで(いや)しく変な髪型の平民かつ庶民に、あなた様方へ砕けた口調で献言する許可をいただけますでしょうか?」

「好きにしろ! おれ達に勝っておいて皮肉のように卑下しやがって!」

「実際に皮肉だからな。はあ……疲れた。息苦しいことこの上ない」

「お前ッ!! さては最初から平民の分際でおれ達に敬意を払ってなどいないな!?」

 

「(あの子、後で国王様に殺されないと良いけど……)」

 

 憤慨するイチジ王子とニジ王子。

 今更気付いたか。オレのことを庶民だの平民だの変な髪型だの言って笑う奴らのどこを敬えと言うのか。全部事実だが……いや、髪型は少々人と違うだけで変ではないはず。ただ個性的なだけだ。

 

「ふふっ……あっ、私もその口調で良いわよ? なんかさっきまでの言葉遣いは(へりくだ)り過ぎて気持ち悪いし」

「そうか、助かる」

 

 今のは普通に笑っていたな。

 

 今度は表に出て、『王族である自分達が直々に鍛えてやる、ありがたく思うがいい』というようなことをニヤニヤしながら言われ、1VS3で戦うことになった。なるほど……これがイジメか。「死ね」とか「殺してやる」とかはよく言われるが、初体験だ。そしてまたレイジュ王女は不参加。三つ子の男に姉1人ってのは馴染み辛いものなのかもな。

 3人が数字が書かれた缶詰めみたいなものを腰に当てると、数字を軸にグルグル回転し出す。そして一瞬で戦闘服に変わる。

 何あれカッコいい! これが変身……生ジェルマか。世界経済新聞で見たやつだ。

 

 そして王族3人直々の、オレへの訓練とやらが始まってしばらく。

 

「(何だこいつは!?)【火花(スパーキング)フィガー】!」

 

 カッ!

 

 火花を撒き散らしながら、イチジ王子(トウガラシ)の拳がオレに向かって来る。

 

「ぐおっ!?」

 

 それを、姿を消してオレの背後に回っていたニジ王子(ブルーベリー)で防ぐ。さっき【(ゲン)(コツ)隕石(メテオ)】を撃った時、周りにいた兵隊を壁にしてきたので、その仕返しだ。普通に避けてこいつらを攻撃したが。

 

「フン……少しは壁にされる者の気持ちがわかったか?」

 

「き、貴様ァッ! 何故ニジの【ステルス】が効かん!?」

 

覇気だ!

「この平民意味わかんねェ……」

 

 イチジ王子(トウガラシ)に答えると、片手で掴んでいるニジ王子(ブルーベリー)が呟く。

 覇気が使えないのは戦い始めてすぐにわかっていたが、まだ存在を教わってもいないのか。ジャッジ王は覇気使いのようだったが。

 

「くそっ、巻力断頭(ウインチダントン)】!」

 

 ヨンジ王子(キャベツ)が手を伸ばして体を掴んできた。地面に叩きつける気だな。

 

「お前が飛べ!」

 

 逆に手を掴んで振り回す。

 

「うおっ!?(こいつ、おれより力がッ……!)」

 

「【巻力(ウインチ)キャベツ断頭(ダントン)】!」

 

「キャベツじゃねェ! ヨンジぐわァッ!?

 

 ガン!

 

「ぐっ、このウスラトンカチがッ……!」

 

 ヨンジ王子(キャベツ)の頭をイチジ王子(トウガラシ)の腹に叩きつけた。

 

「沈め、トウガラシにキャベツ! 【起電(ヘンリー)ブルーベリードロップ】!」

「おれがトウガラシだとッ!?」

「誰がブルーベリーだ! てかそれおれの技「「「ギャアア!!?」」」

 

 バチバチバチ!!

 

 ニジ王子(ブルーベリー)を放り投げて、ニジ王子(それ)ごとイチジ王子(トウガラシ)ヨンジ王子(キャベツ)にドロップキックをかまして放電する。

 

「くっ、王族を足蹴に……なんと無礼な庶民だ!」

「戦場に王族も庶民もあるか」

 

「おれ達が3人がかりで……化物め!」

「はいはい化物化物。よく言われる。最高の褒め言葉だ」

 

「そもそも何故貴様おれ達の技を使える!? 変な髪型のくせに!」

「世界経済新聞に載っているから。髪型は生まれつきだ」

 

 お前らのレイドスーツの能力、オレはすべて「海の戦士ソラ」で見ているからな……スパーキングレッドにデンゲキブルー、そしてウインチグリーン。メカメカの能力の参考にしているのもあるし、こいつらが覇気が使えていないのも戦力差として大きい。

 

「いや、何故知ってるかじゃなくて、何故出来るかを聞いてるのだと思うわよ?(こいつらが相手にならないなんて……お父様でもここまでワンサイドゲームにはならないのに。参加しなくて良かった……)」

「ん? ジャッジ王から何も聞いていないのか? オレはメカメカの実を食べた機械人間、さっきのは悪魔の実の能力だ」

 

 てっきり聞いているものと思っていたが。

 

「化物ではなく悪魔だったか……ん? 待て、貴様さっき地面を変えていたな。そ、それで合体ロボを作れたりは……」

「何だと!?」

「で、出来るのか……!?」

 

 3人が目を輝かせ始めた。

 まあ、普通であれば気持ちはわかるが……

 

「出来るが……興味あるのか? ジェルマなのに?」

 

 あれ、お前らをぶっ飛ばす側の敵だと思うんだが……。

 

あれこそ王道、王たる条理だ!!!

「そうと決まれば早く見せろ!」

「何故さっき言わなかった!? 出し惜しみしやがって!!」

 

「(トウガラ、イチジ達のあんな姿、初めて見た……まあ、確かに全部の情が消えちゃったわけではないにしても……)」

 

 早く早くとせがまれた。

 王道て……確かに合体ロボは王道かもしれんが、ジェルマの政治は覇道だと思うぞ?

 だが、ようやくこいつらに親しみを覚えた。

 

「ふははっ、わかった。ちょっと離れていろ……現れろ、3体の超量機獣(ちょうりょうきじゅう)。【マグナライガー】【グランパルス】【エアロボロス】」

 

 呼び出したの陸・海・空の機獣。

 赤い機体の虎とライオンの雑種(ミックス)、ライガーの陸戦兵器【マグナライガー】。

 青い機体のイルカが2体並列した見た目の潜水艇、海戦兵器【グランパルス】。

 緑の機体の翼を持つ戦闘機、空戦兵器【エアロボロス】。

 

「変形合体」

 

 能力で宙に浮かせ変形。【マグナライガー】を胴体と頭部、【グランパルス】を両脚部、【エアロボロス】を両腕部と背の翼に変え、合体させる。

 

 ガシャーン!!!

 

「【超量機神王(ちょうりょうきしんおう)グレート・マグナス】、降臨!」

 

 合体ロボの完成だ。

 

「おお……これがッ!!」

「夢にまで見た合体ロボ……!!」

「すごいぞーかっこいいぞー!!」

 

「(……サンジもいたら、喜んだのかしら……?)」

 

 凄い喰い付きだ。キャッキャキャッキャと喜んでいる。

 

「おい庶民。これをおれ達に寄越せ!」

「えー……やだァ~」

「何だとッ!? くっ、また作れるくせに足元見やがってェ、この平民……」

「チッ、いくらなら、譲ってくれる?」

「いや、お金ではなく、こんな危険なものを戦争屋に渡せるか」

 

 当たり前だろ。惨劇になるわ。いくら血が流れることか……。

 

「フンッ、笑止! 勝者こそ正義! おれ達が何を使おうが、気に入らなければ勝てばいい。弱い奴が悪い!」

「じゃあさっきオレが勝ったんだから、正しいのはオレだろ。変わらず渡さない」

「……いや待て、今のは無しだ!」

 

 イチジ王子が取り消した。(はえ)ーよ。

 

「別に無しでも構わん。どちらにせよ、今の大海賊時代に勝った者が正しいなんて、そんな略奪者、海賊を正当化するような理屈は認めない。肯定出来ん。否定する。正義を貫くために力は必要不可欠だが、奪われ虐げられる弱い民間人に罪はないし、悪くなどない。第一オレは勝ったが正義ではない、悪だ」

「……?(なんで、自分を悪なんて言うんだろ……?)」

「貴様ァ……庶民が言うに事欠いて、我々ジェルマのあり方を海賊風情と同じだと!?」

「……なるほど。確かに戦争屋が負けるなど論外だな。悪かった」

 

 負ければ死ぬな。そういう考えにもなるか。

 

「「「誰が論外だ!!!」」」

「ん?」

 

 ……あー、そうか。こいつらはさっきオレに負けたから、この言い方だとお前らは論外だと言ったも同然だな。こいつら視点だと、敗者に言葉で鞭を打つ凄まじく嫌な奴だな、オレ。

 それにしてもこれほど反応するとは……平気そうに見えて、実は結構気にしているのか? 負けたことを。

 

「おれ達はあの出来損ないの失敗作とは違う!」

「? 何のことだ?」

「……お母様がなくなられてから、サンジって弟が、ここからいなくなったのよ。こいつら元々四つ子なの」

 

 王妃が命を落としているのも、サンジ王子がいるのも、まあ予想通りだが……

 

「いなくなったとは?」

「あいつは逃げ出した。失敗作だからな。おれ達について来れず、父上にも見放され、死んだことにして檻に入れられてたんだよ」

「そろそろ死んだかもなァ、あいつ」

「ぎゃはは! どこでどうやって野垂れ死んでたら面白いかな?」

 

「【(ゲン)(コツ)流星群(りゅうせいぐん)】!!!」

 

「「「(イッテ)ェ~!!?」」」

 

 また【(ゲン)(コツ)衛星(サテライト)】を作ってしこたまブチ込んだ。3人にタンコブが積み上がる。

 決めた。後であの虐待髭仮面にも叩き込む。

 

「何しやがるこのド平民が!!」

「教育的指導だ。失敗作とか、死んだら面白いとか、ふざけたことを言っているんじゃない」

「ふざけたこと? ふざけているのは、不条理はお前の方だ! あいつはヴィンスモークの恥!」

「そうだ! 落ちこぼれを笑って何が悪い!」

「まだ言うか……」

 

 少しは親近感が湧いたと思ったら……

 

「……無駄よ。こいつら、無感情の戦闘マシーンだから」

「レイジュ王女、お前もか。こいつらが年の割に強いのは認めるが、感情がないとか、そういうのは肉親に言うことでは」

「「「と、年の割にィッ……!?」」」

 

 なんか3人がショックを受けている。

 なんでだ? 褒めているじゃないか。筋が良い。

 

「そういうことじゃなくてッ! はあ……ちょっとこっち来て。あんた達は頭でも冷やしてもらってきなさい(それにしても、こいつらが年の割に、かあ……普通に大人の兵士倒してるんだけど……?)」

「待て、レイジュ! まだおれはそいつとの話が終わって」

「いいからさっさと行って来いッつってんのよッ!! また拳骨食らいたいの!?」

 

 レイジュ王女が一喝し、オレの腕を掴み、拳を3人の方に向けると、しぶしぶ侍女を連れてどこかに行った。

 そんな人のことを猛獣でもけしかけるみたいに……どちらかというと銃口を向けるみたいか?

 

 オレ達も移動し、階段を降りて牢屋がある場所に着く。

 

「最初の印象より気が強いんだな」

「あら、気が強い女はお嫌い?」

「いや、従順なお人形さんより、自分の意見をはっきり言う人の方が好ましい。それで、どうしたんだ?」

「あそこには映像電伝虫があるから。私達の戦闘とか身体能力を記録するために」

「……牢屋の方がありそうなんだが?」

 

 ここから逃げ出さないように。逃げ出してもすぐわかるように。

 

「ないわよ。ここは元々サンジを閉じ込めるためにわざわざ作った場所。私達ならこんな檻壊せるけど、サンジには無理だから監視なんて必要なかった。それに今は誰も入ってない、使われてないから」

「だが、現に檻は曲がっているぞ? サンジ王子が自力で壊して脱出したんじゃないのか?」

 

 たとえ最初は無理でも、出るために鍛えたのかもしれない。

 

「お父様達もそう思ってるけど、違うわ……それ、やったの私だから」

 

 

 その後、少しずつレイジュ王女は教えてくれた。今まであったことを。

 レイジュ王女の幼い頃、ジャッジ王がこれから生まれてくる四つ子に、戦争に勝つために感情をなくすため血統因子の手術を行い、ソラ王妃はそれに猛反発し、腹の中の我が子達の血統因子に影響を及ぼす程の劇薬を飲んだ。

 イチジ王子、ニジ王子、ヨンジ王子はジャッジ王の思惑通り、戦闘に不必要な感情をなくし人間を越える異常が見つかった。だが、サンジ王子だけは違い、力は普通、感情も備えた、普通の人間として成長した。

 ソラ王妃はそのことを心から喜んだが、薬の後遺症で衰弱し、今から1年以上前になくなった。

 以降、ジャッジ王は起きた事のすべてをサンジ王子のせいにして、辛く当たる様になり、鉄仮面を付けられ半年以上ここに監禁。

 コジアを攻めに東の海(イーストブルー)に行った時に、サンジ王子が檻から出て鉄仮面の鍵を取りに行った時にジャッジ王に遭遇。その時にジャッジ王が、『こんな役立たずでも自分の子を直接手にかけることは出来なかった。自分の意志で消えてくれて助かるよ。私がお前の父親であることは絶対に人前では口に出さないでくれ。誰にも知られたくない汚点なのだ』というようなことをサンジ王子に言った。

 2人で泣きながら城を出た後、サンジ王子を船に乗せて逃がしたそうだ。

 

 

「……気に入らない話だ。オレには〝怪鳥(ガルーダ)〟がイチジ王子達を愛しているのは、親として子を愛しているのはわずかでしかなく、ほとんど便利な戦争の道具として愛しているように聞こえる」

 

 でなければ、サンジ王子にそこまでの仕打ちが出来るとは思えん。

 

「……否定は出来ないわ。私にも情は残ってるけど、身体能力の強化と毒を操る特殊能力が備わってる。そして何より、父に逆らえないよう血統因子を改造されてるわ」

「サンジ王子と一緒に、逃げようとは思わなかったのか?」

「逃げる……? 逃げられるわけないじゃない!! ロクにジェルマのことも知らずに、簡単に言わないでよ!? サンジが逃げられたのは父に見限られたから。父が見捨ててくれたから! 私は違う!! 私が逃げたら必ず父は追って来るわ、どこまでも! どこまでも!! どこまでも!!! それに、私は今までずっと一緒にイジメられたくないからって、あいつらと一緒にサンジを笑ってたのよ!? 今更一緒に行く資格なんてあるわけないじゃない!!」

 

 涙を流しながら、レイジュ王女が叫ぶ。今まで我慢して溜め込んでいたものを吐き出すように。

 それで最初、作り笑いが張り付いていたのか。

 

「それはサンジ王子が決めることだ……どっちに転ぶかはわからんが、1つ提案がある。それに乗るかどうかは、お前が決めろ」

 

 たとえレイジュ王女がオレの提案に乗らずとも、乗ってどちらに転ぼうが、あの男は一発どころではなくブン殴る。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ねえ、ロゼ。上手くいくかしら……?」

 

 日も落ちた頃、〝怪鳥(ガルーダ)〟に呼ばれ、レイジュ王女と手を繋いで玉座のある部屋に向かっている。

 レイジュ王女は呼ばれていないが、オレの提案に乗ったので連れてきている。

 イチジ王子達にも話した。合体ロボをやると言ったら、快く引き受けてくれた。そして、オレの提案が必ず失敗するとも言っていた。

 

「心配するな。たとえ失敗してもお前は変わらない。失うのはオレだけだ。どう転ぼうが失敗するつもりはないが」

「なんであなたがそこまでするのよ……?」

「オレが〝怪鳥(ガルーダ)〟を殴りたいのだから、オレが自分のすべてを懸けるのは当たり前だ。一国の王を殴るなんて、何をされても文句が言えない悪だ」

「まあそうかもしれないけど……そういえば、昼間はなんで、自分を悪って言ったの?」

 

 レイジュ王女が聞いてくる。

 色々理由はあるが、彼女に一番わかりやすいのは

 

「自己紹介した時に言っただろ? オレは賞金稼ぎ(バウンティハンター)。他人を暴力で傷付けて金を手に入れている。そんな人間が正しいはずがない」

「確かに私もそうやってお金を稼ぐ戦争屋ジェルマは滅ぶべきだと思うけど、あなたが倒しているのは賞金首でしょ?」

 

 まあ確かに、オレもオレ以外の人間が賞金稼ぎ(バウンティハンター)をやっているのを見て悪だとは思わない。オレが悪である理由は他にもある。会ったばかりで言いたくないだけで。

 

「悪を倒したらそれは正義、なんてことには断じてならない。正義はそんなに単純ではない。悪と悪が戦うことだってある。賞金首にも、海賊にも、良い奴らはいる。だが、それで海賊が悪でなくなることは決してない。海賊をやめない限り。免罪されない限り」

 

 相変わらずオレに正義はわからないが悪ならわかる。悪が悪を倒して、それが正義になってたまるか。オセロじゃあるまいし、そんな簡単に引っくり返るはずがない。

 そんな簡単に変わるなら、何故タイガーさんは正義じゃない? 認めない。海賊を見逃すことはあっても、他の海賊が悪でないなど断じて認めない。例外はハンコック達七武海だけでいい。

 そして、タイガーさんを助けられなかったオレが正義になることも認めない。オレは悪だ。

 

「じゃあなんであなたは賞金稼ぎ(バウンティハンター)を続けてるのよ……」

「オレは生まれて1年経っていない頃から海賊が嫌いだから、気に入らないから、肯定出来ないから、否定する。海賊に悪くないと言える奴がいても、それは海賊だからではない。悪くない奴が海賊になる今の時代が間違っている」

 

 オレは別に悪でいい。

 海軍(正義)とは戦いたくないけど、海軍(正義)は悪でも見逃すものがある。利用価値があれば見逃す。その最たるものが天竜人。

 あいつらや海賊程堕ちたくはないが、そこまでいかないなら悪でいい。

 最後の一線は守る。殺さない。殺されようが殺さない。絶対に殺さない。タイガーさんがそうやって死んだように。

 もう二度と殺さない。オレがタイガーさんを殺した時のようには。

 

「よく覚えてるわね。生後1年未満なんて、そんな昔の事……」

「ああ、毎日声を聞いていたからな」

 

 悲鳴嘆き阿鼻叫喚。海賊が作り出すこの世の地獄。海賊は疑いようのない悪だ。

 人を助けるか否かに正義か悪かは関係ない。ただ力があるかどうか。悪でも人を助ける。海賊が人を助けようが、オレが人を助けようが、悪が正義になることはない。オレは悪だ。

 海軍は海賊を殲滅する。海賊が生み出す悲劇をなくすために。今の世界を変えるために。海軍は正しい。肯定出来る。

 だがたまに理解は出来ても納得出来ないことがある。それはオレが間違っているからだ。悪に正義は納得出来ない。オレは悪だ。

 海賊()として奴隷にされた人々を解放したタイガーさんより悪でいい。不殺の悪だ。

 

「さてと、【(ゲン)(コツ)衛星(サテライト)】」

 

 床から【衛星(サテライト)】と

 

獰猛(どうもう)なるハヤブサよ……激戦を切り抜けしその翼(ひるがえ)し、寄せ来る敵を打ち破れ! 現れろォ! RR(レイド・ラプターズ)-ブレイズ・ファルコン】」

 

 赤と黒の機体の【RR(レイド・ラプターズ)】を呼び出す。

 

「え? な、何?」

「戦闘準備」

 

 ガシャン!

 

「これで良し。こいつらは部屋の外で待機させる。お前も準備してくれ」

「わかった。それにしてもこれが……大丈夫なの? なんか、すごく大きいけど」

「大丈夫だ。〝怪鳥(ガルーダ)〟は殺さないし、戦闘で付けた傷も、お前達の問題も解決する当てがある。連絡はしたし迎えも送った。そろそろこっちに着く。〝怪鳥(ガルーダ)〟のジェルマの悲願、過去の栄光に縋る妄執はオレが断ち切る。お前はその後頑張れ。弟に会いたいんだろ?」

「! ええっ!」

 

 良い笑顔だ。これからもこいつが心から笑えるように、オレも頑張るか。

 

 

 機械を配置し、玉座の間に入る。

 

「来たか……レイジュ、お前は呼んでいないはずだが?」

 

「オレが連れて来た。気に入ったから。良い子だな」

 

「ああ、自慢の娘だ。昼間と違う口調が気になるが……まあいい。昼間の戦闘はモニターで見ていた。重要なのは力だ。戦争に勝つ力だ。お前の機械の力があれば、北の海(ノースブルー)の制圧、ジェルマの悲願も成就に一気に近付く。何が欲しい? 金か?」

 

 やはり力が目当てか。まあ最初からそう思っていたし、手間が省ける。

 

「ではこの子をくれ。さっきも言ったが気に入った。そうしてくれればいくらでもオレの力を貸そう」

 

 そう言って、レイジュ王女の手を強く握る。

 

「嫌よ! なんで私があなたなんかに!」

 

「(レイジュの力は確かに強いが、一度に相手出来る敵は精々数人、だがこいつの能力は違う。昼間の戦闘では見られなかったが、本人がその気にさえなればバスターコール並の殲滅力があると聞く。1人の能力で軍を、国を滅ぼせる。サンジの穴はおろか、レイジュを手放してもおつりがくる)良いだろう。レイジュはお前の好きにしろ」

 

 ……受け入れたか。受け入れてしまったか。レイジュ王女が嫌がっているのに。こんなあっさり。

 イチジ王子達は貴様が断ると言っていたよ。レイジュは失敗作ではないからと。オレもそっちを望んでいた。貴様がレイジュ王女を手放すことを拒み、オレが逆上したふりをして貴様を襲い、()()を果たす。その後レイジュ王女がオレを倒して親子和解。そうなればいいと思っていた。イチジ王子達は、オレが貴様に負けるからどの道失敗すると言っていたが。信じられているな。

 レイジュ王女の手を指で1回ノックする。あらかじめ決めていた合図。1回ならジャッジはオレの提案を肯定、2回なら否定。

 すると、レイジュ王女が涙を流した。

 

「ご、ごめん……まだ終わってないのはわかってるけど、嬉しくて。これで私、サンジと同じになれたのね……」

 

 子供が、親に手放され、涙を流し、悲しむと同時に喜んでいる。そこまで追い詰められていたか。そこまで追い詰めていたか。

 今、何を言ってもこの子には聞こえない。黙ってハンカチを渡し、背中をさする。

 

「チッ、ジェルマの悲願が達成されるというのに、あの失敗作の名を口にし涙などを流すとは……やはりお前の感情も消すべ」

 

黙れ。自分の娘が泣いて、何も感じないのか?」

 

「感じているとも。レイジュの感情も消すべきだったと。このままではサンジのような出来損ないになるかもしれん。まあいい。お前の力が手に入れば、それでいい。充分穴は埋められる……なんだその目は? 言いたいことがあるなら、男なら拳で」

 

「【(ゲン)(コツ)隕石(メテオ)】!!」

 

 ドゴォン!!

 

 武装色を纏った拳を飛ばし、仮面の上から叩き込む。

 そして、レイジュ王女の肩を叩き、部屋の外に出て避難するよう指で指示する。

 

「グォッ、何を!?」

 

 壊れた仮面が外れ、素顔が見える。

 そんな顔をしていたのか。

 

「オレの(ことば)は聞いてなかったのか? ならもう一度口でも言ってやる。戦争屋、ジェルマ66(ダブルシックス)は、今日! オレが!! 殲滅する!!!

 

「何だとッ!? 乱心したか! レイジュ、この愚か者を捕らえるぞ! ……レイジュ、聞いているのか!?」

 

 自分の言う通り動かず、ただ避難して行くレイジュ王女に声をかける〝怪鳥(ガルーダ)〟。

 その間に拳を付けなおす。

 

「聞いていない。違う、聞こえていない。彼女は耳を栓している。ここに来る前に。貴様の前に出る前に」

 

 命令に逆らえないなら、そもそも言葉を聞かなければいい。もちろんこんなものはその場しのぎ。

 だから、耳を塞いでいる間にオレが終わらせる。

 

「レイジュ、お前も私を裏切るのか!?」

 

「裏切る? 違う、裏切ったのは貴様の方だ。子供を、妻を、裏切った愚かな親にして夫が貴様だ。来い、【衛星(サテライト)】」

 

 部屋の外から飛ばして自分の周りに浮かべる。

 

「文句があるならオレを倒せ。オレを捕らえ、感情を消すなり絶対服従の兵器にするなり好きにしろ。勝った者がすべてを手に入れ、負けた者はすべてを失う。それが悪の流儀だろ?」

 

「小僧がッ、正義の味方にでもなったつもりか!?」

 

 ブチッ!

 

「オレが正義だと? ふざけるな、オレは悪だ!! 来い、貴様のすべてを奪ってやる」

 

 ボッ!

 

 武装色を纏い、電気を発生させた槍を持ち、靴から噴射し、加速して〝怪鳥(ガルーダ)〟がオレに向かって来る。

 

「【電磁(デンジ)シャフト】!」

 

 ガキンッ!!

 

 オレの拳と〝怪鳥(ガルーダ)〟の槍がぶつかる。

 

「悪だと!? 悪の世界にも仁義はある! 取引を反故にし、王に歯向かう逆賊がッ!」

 

 ガキン! ガキン!

 

「仁義だの、王だの、親の責任を放棄し、妻を死なせたことを子に八つ当たりした臆病者風情が、偉そうに吠えるなァッ!!」

 

 ガキン! ガキン!

 

 拳と槍が何度もぶつかる。

 

「やはり武装色はあまり得意ではないようだな! 拳がボロボロだぞ」

「構わん」

「ならばこのまま砕けろ! 【電磁(デンジ)クラック】!」

 

 バリィッ!!

 

 電気を発生させた靴で蹴りかかってくる。

 

「砕けて結構。【(ソル)】」

 

 その蹴りを靴を掴み、拳を分離。もう片方の靴も飛ばした拳で掴む。

 そしてオレは距離を取る。

 

「【(ゲン)(コツ)超新星(スーパーノヴァ)】」

 

 ボボウン!

 

「グオッ!?(自分の両拳を爆発させた!? 靴の加速装置と浮遊装置がッ!)」

 

 拳を自爆し、靴を破壊。

 

「その拳は元々作り物だ。ここに来る前、付け替えた」

 

 ガシャン!!

 

 周りに飛ばしていた本当の拳を付ける。

 

「機動力は奪った。これでオレの攻撃を躱せない。(ゲン)(コツ)流星群(りゅうせいぐん)】!!」

 

 ドゴゴゴゴゴン!!

 

 拳が〝怪鳥(ガルーダ)〟に降り注ぐ。

 何発かは槍で防いでいるものの、数十発の拳を体に叩き込む。

 

「クッ、この騒ぎに兵達は何をッ……!」

 

「来ない。兵達は王子達の命令で待機中。自分達の命令には絶対服従、貴様がそうした。そういう兵を望んだ。だから来ない。来い、【ブレイズ・ファルコン】」

 

 待機させていた【RR(レイド・ラプターズ)】が飛んで来て、オレの前に降りる。

 

「次は、その槍とレイドスーツだ……赤熱の怒りを滾らし、反逆の槍を突き立てろ! 迅雷(じんらい)のラプターズ・ブレイク】!!」

 

 ビュン!!

 

 電気を帯びた金属の粒子を、【ブレイズ・ファルコン】の体内の加速器内で電圧をかけて、亜光速まで加速させて口から放つ。

 槍を貫き、レイドスーツごと肩を貫通させた。ベースボールの球くらいの風穴が空き、血が噴き出す。

 

「か、荷電粒子砲……実現したのかッ。ベガパンク……!」

 

 レイドスーツは機能を失い、オレの打撃と砲撃のダメージで、〝怪鳥(ガルーダ)〟の体が地面に倒れる。

 

「いいや、実現していない。理論だけでまだ悪魔の実の能力が前提の試作段階。それに、武器として有効にしつつ殺さない程度に威力を抑えるのに、苦労していたようだ。もっとも、Dr.ベガパンクが考案した本来の用途、重粒子線治療。医療方面ならすでに実現している。さあ、最後だ。終わらせようか」

 

 歩いて近づくオレ。

 ……そこ。

 

「【機甲の慚愧(シルバーズ・ソウルシェイブ)】」

 

 ザンッ!

 

 足をチェーンソーに変え、倒れた〝怪鳥(ガルーダ)〟の体の上、虚空を切った。

 

「何故、切らない……? 殺す気だったのでは……(すべてを奪うと)」

「いや、切った。貴様が今まで妻や子を犠牲にしてまで達成しようとしていた、最も大事なもの、ジェルマによる北の海(ノースブルー)の武力制圧。体を切らず、貴様がそれに懸ける思いだけを切った。奪った」

 

 最近出来るようになった。本来は戦いを避けるために、人を切らず、物を切らず、相手の戦意や闘争心だけを切る技だが、今回はこの男をブッ飛ばしたかったので、ブッ飛ばしてから切った。

 見聞色で捉え、こいつから切り離した。切り捨てた。

 まあ、思いを切っても過去は変わらない。このままだとまたジェルマの悲願を成し遂げようとするかもしれん。一時的なもの。

 試し切りをした時、天竜人の驕りを切っても、次に見た時にはまた戻っていたし、リュウグウ王国のオレに殺す殺すとうるさい兵士の殺意を切っても、戻っていた。ただ切るだけでは無意味。

 だから、ここから先はレイジュ王女達の戦場だ。ただの他人のオレの言葉より聞くだろう。効くだろう。

 

「そして殺さない。殺さず生かす。親が子を縛るものじゃない。もうあいつの好きにさせてやれ。ジェルマの悲願などという、下らん雑念が消えたすっきりした頭で、精々考えてみることだ。貴様が今まで何をしたのかを」

「何を……」

 

 オレの言葉を聞いた後に、〝怪鳥(ガルーダ)〟は気を失った。緊張の糸が切れたか。

 

「それで? ここに2人でいるということは、無事成功したのか? Dr.ベガパンク」

 

 レイジュ王女の隣にいる、白衣の男に話しかける。

 連絡した後、オレの【ライズ・ファルコン】を自動操縦(オートパイロット)モードにして送った。オレが許可した人間の言う通りに動き、現在地は把握出来る。

 

「ああ。勿論だとも。血統因子の()()()()()()()、私以上に知っている人間はいないと自負しているよ。彼女はもう、ジャッジの命令に逆らえる」

「頼もしくて助かる。その調子でイチジ王子達も元通りにしてくれ」

「話を聞く限り、素直に頷くとは思えないけどね、感情を戻す方は。私の戦闘力は一般人かそれ以下。バナナの皮に足を滑らせ転べば骨を折る自信がある。階段の上から転げ落ちれば死ぬ自信がある。彼ら相手に力尽くなんて、私には無理だよ?」

 

 そう言って細い腕で力こぶを作っている。

 簡単にへし折れそうだ。

 

「あんたにそういうのは求めていない。説得はもうしている。『レイジュ王女には元々感情がある。感情を戻して弱くなるということは、お前達はレイジュ王女より兵士として劣っている。というか、お前らオレに負けたよな? 感情があるオレに。庶民かつ平民で変な髪型のオレに3人がかりで負けたよな? それでジャッジ王の理想の戦士か……はっ!』って鼻で笑ったら、承諾した」

 

 怒っていたが。あいつらに怒りの感情があって助かった。

 

「……自分より年下の子供を唆して、君は悪い子だね、ロゼ」

「ああ悪い。他にも国王を殴り飛ばして風穴を開けた。反抗期だから。あれ、本当に治るのか?」

 

 風穴から血を流し気絶しているジャッジを指差す。

 どのくらいなら治せるか聞いたら、体の一部が吹き飛んでも治せると返されたが……

 

「治るよ。私が治す。クローン技術は元々、臓器や脊髄等体の一部を再生させるために生み出したものだ。まさかクローンの軍隊を作り出した上、自分の子の血統因子を操作し理想の兵士になんてするとは……元同僚の暴走を止めてくれてありがとう。本来は私がするべきなのだが、私が行っても、捕まるだけなのがね……私の発明を使ってこの国を吹き飛ばすわけにもいかないし」

 

 この人は善人過ぎて、自分の発明が悪用されるという発想も悪用の仕方も思い付けない。そのくせ一つ間違えば大量殺戮兵器として悪用されるような物を次々と思い付く。非常に怖い人。

 まあ、悪用しているオレが言うのはなんだが。もし他にこの人の発明が悪用されたら、オレが壊しに行こう。制御を乗っ取って自爆させよう。

 

「礼には及ばない。気に入らないから倒しただけだ。ここの姉弟達の感情と命令への絶対服従を何とかしてくれればそれでいい」

「血統因子を弄った結果、生まれた能力は放っておいて良いのかい?」

「それは本人達次第ってことで。自衛手段は必要だろ。レイジュ王女はどうしたんだ? ……レイジュ王女?」

 

 何やらボーっとしているレイジュ王女に近付き、呼び掛ける。

 

「え? ええ、私はそのままにしたわ。消してあいつらにバカにされるのは嫌だから……本当にもう終わったの?」

「終わった。もう彼の北の海(ノースブルー)制圧への思いは切った。お前も彼の言いなりになる必要はない。父を説得するも良し、出奔して弟を探しに行くも良し」

「本当に……?」

「ああ。お前を閉じ込める(カゴ)は壊した。もうお前は好きに生きられる。困ったことがあったら呼んでくれ。すぐに飛んで行くから。じゃあまたな」

 

 踵を返す。

 もう遅いから家にでも帰るとするか。

 

「嫌!!」

 

 突然手を掴まれた。

 嫌? 何が?

 

東の海(イーストブルー)でこんな言葉を聞いたわ……私には、縁なんてないと思ってたけど」

「何だ突然? どんな言葉だ?」

“恋はいつでも!! ハリケーン”!!!

 

 それ、昔ニョン婆からも聞いたな……。

 

あなたと一緒に生きたい♡ 好きな人と好きに生きたい♡ 大好き♡ 私の王子様♡

「え? は?」

 

 レイジュ王女に力強く抱き着かれた。オレは丈夫だから大丈夫だが、これ普通の人間だったら潰されているな。

 見ると、髪で隠れていない方の目がハート形になっている。

 ふっはっは、ジェルマの科学の産物か? ……そんなわけないよな。

 

「レイジュ王女?」

レイジュって呼んで♡

「ではレイジュ。あの」

これで呼び捨てで呼び合う仲♡ 素敵♡

 

 途中で遮られた。オレの話を聞いてくれ。

 

そうだわ♡ お父様は確か私をあなたに渡すって言ったはず♡ 私は耳栓して聞いてなかったけど、確かにあなたが提案して合意されたはず♡ 私と結婚して♡

 

 確かに合意はしていたが、しかし……今はあの人がいるので、小声で言うか。

 

きゃっ♡

「オレは海賊の子だ。王族と結婚するって、たぶん許可されないと思うぞ?」

 

 抱き寄せて耳元で言った。Dr.ベガパンクに聞こえないように。

 

私のお父様は戦争屋、私は人殺しの娘よ♡ お揃いね♡ お父様達なら大丈夫♡ 絶対もう戦争屋なんてさせないし、あなたとのことも認めさせるから♡

 

 オレの胸に頬ずりしながらそう言った。

 そうきたか……お揃いなのか……。

 

「会ってたった1日で、結婚なんて決めるものではない」

その1日で、私の世界はがらりと変わったわ♡ そ、それとも、ロゼは私のこと嫌い……?」

「いや好きだ。ヴィンスモークの良心はサンジだけじゃない。お前だって愛情と優しさを備えた強い人だ。今までよく1人で耐えた。確かに、お前はサンジに間違ったことをした。だが、サンジはお前の存在に救われたはずだ。逃がしたこと以外にもな。お前は良い姉になるよ。間違いなく」

嬉しいっ♡ 私が今まで生きてきたのは、きっとあなたに会うためよっ♡

 

 絶対他にもっとあると思うが。

 

「お前の人生はこれからだ。楽しいことなんていくらでもある」

ええ♡ あなたと一緒なら、何があっても私は一生幸せよ♡

 

 話がッ! 噛み合わないッ……!

 

「君はあれだね。海賊を殺さないけど、女殺しだね」

 

 他人事だと思って笑っている天才白衣もやしがいる。

 

「下らんことを言っている暇があるなら、助けてくれ」

「いや、私も恋する乙女の邪魔をして、馬に蹴られて死にたくはないし……というかその子に蹴られたら、たぶん私は余裕で死ぬよ?」

「オレではなく、そっちで気絶しているヴィンスモーク・ジャッジのことだ。【RR(レイド・ラプターズ)】で一緒に運ぶから」

「ああ、いきなり恋物語(ラブロマンス)が始まったのですっかり忘れていた……これ、急がないとマズイよ!!」

「何ィッ!?」

まあ大変♡ お父様のお葬式と私達の結婚式、どっちを先にする? ロゼ♡

「頼むから帰って来てくれ……」

 

 とにかくジャッジを連れて全速前進だ!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 ジャッジの傷を治してもらい、ベッドで寝かせる。

 その後、イチジ達の能力はそのままに、感情を戻し、ジャッジの命令に逆らえるようにもしてもらい、Dr.ベガパンクはオレの【ライズ・ファルコン】に乗り帰ったのだが、3人全員泣きに泣いた。

 レイジュはそれを見てドン引きしていた。それでもオレから離れなかったが。

 特にイチジが酷い有様で、『おれは(サンジ)になんということを……! 王には王たる、兄には兄たる条理があるッ。おれはなんて不条理な兄だァッ……!!』と酷く取り乱し、頭を床にガンガンと叩きつけ、トウガラシヘアーが折れていた。

 レイジュの話だと、イチジは感情が最も欠落し、冷酷な性格だったようなので、感情を取り戻した影響が大きいのも当然か。

 

 その様子を見て、『男がいつまでも泣いてんじゃないの! 泣いたところで私達がやってきたことは変わんないでしょ!』と言って、レイジュが活を入れていく。

 口調はきついけど、やっぱこいつ良い奴だな……ジャッジに呼ばれるまで話していた時、今までの愚痴を聞いていた時は、可愛げのない冷酷な弟達に、戦争に勝って先祖の過去の栄光を取り戻すことしか頭にない傲慢な父で、一緒にいて息が詰まるって言っていたのに、見捨てていない。

 もし父さん達がジャッジやイチジ達みたいなら、オレはすぐさま家族喧嘩、いや家族戦争を起こすぞ。オレは父さん達が親だから好きなわけでも海賊だったから好きなわけでも全くなく、ただその在り方、性格、オレへの愛情等で好きなだけなのだから。

 それにしても、オレにもそんな感じの喋り方で良いんだけどな。

 

 そしてジャッジが目を覚ました後、レイジュ様によるマシンガントークの火蓋が切られました。言葉の弾丸でジャッジめを蜂の巣になさる。

 非常に饒舌でいらっしゃった上、同じことを繰り返し何度もループして仰られていたので、僭越ながらこの私めが要約させていただくと、

 

お母様が反対してたのに弟達の感情を消すとは何事か。そのせいでお母様はなくなったのにサンジに八つ当たりまでしてそれでも親か。ふざけんな。そもそも戦争屋なんてロクでもない。300年も大昔、それもたった66日の天下にいつまでも未練がましくしがみ付くな。みっともない。見苦しい。現実を見ろ。ジェルマの時代はとっくの昔に終わった。それでもまだ続けるなら、私がロゼと一緒にこの国を滅ぼすぞ、けつあごのおっさん

 

 とのお言葉をヴィンスモーク・ジャッジ(けつあごのおっさん)は感涙に(むせ)びながら、床に正座し、心に深く深く刻んで頷いており、その様子をご覧になり、レイジュ様は大変ご機嫌麗しい様子であらせられました。今まで御労(おいたわ)しくも仰ること叶いません境遇でしたので、鬱憤が溜まっていたのでしょう。

 

 しかしながら、私めはこの国を滅ぼすことに頷いておりませんよ? 戦争屋ジェルマ66(ダブルシックス)を殲滅するとは申し上げましたが、あなた様の国は残すつもりでした。あなた様にお仕え出来ない国民達が大変憐れなので。ジャッジめを折檻し悔い改めさせるだけのつもりでした。悔い改めなければまた参上(つかまつ)り、何度でも何度でも何度でも叩きのめすだけで終わらせるつもりでしたよ、レイジュ様?

 

 その後、『あなたが、自分の意見をはっきり言う人が好みだって言ってたから、思ってたこと全部言っちゃった♡』と、先程までの無慈悲ながらもどこか美しく凛とした女王様は一体どこに行ったのかと思うくらい、無邪気で可憐なお姫様が舌を少し出して、オレの腕に抱き着いてきた。かわいい。守ってあげたい。とりあえず体勢を変え、背中から抱きしめた。

 だがイチジ達が怯えているぞ? 取り戻した恐怖心で。

 この5人の新たなヒエラルキーの頂点が決定した。レイジュがトップだ。

 

 色々話した後に、レイジュに離してもらう代わりにオレのビブルカードを渡すと、お返しに、そして二人が出会った運命の記念としてと銀朱色のスカーフを貰った。RRと刺繍がしてある。Raid(レイド)Raptors(ラプターズ)ではなくReiju(レイジュ)Rose(ロゼ)のイニシャルらしい。いつも付けて欲しいと言われた。

 

 

 その後、我が家に帰ると、『ジェルマに行くなんて大事(おおごと)をこんな短い書き置きで済ませないで』と母さんに怒られた。今日あったことを話せば呆れられた。オレだってこうなるとは思わなかったぞ。

 

 

 後日、というか次の日、レイジュから番号を教えていた電伝虫に連絡が入った。

 ジェルマは戦争屋を廃業、クローン兵は今いる人達はそのままにもう生産は中止、以降はオレが置いて来たロボを解体(バラ)して研究し、機械兵を生み出すことになったらしい。まあ、軍隊は必要だろうし、戦争屋をやめるなら別に構わない。オレの機械を飛ばして送っても良い。解体(バラ)してもオレの能力で作った物、場所はわかる。そもそもジャッジがまた何かしようとした時には、発信機にも爆弾にもなる合体ロボとして置いてきたからな。

 戦争屋をやめた代わり、ジェルマの科学でゲームを作って売り出すことにしたらしい。イチジ達がオレに勝てるカードゲームを作ろうとしているとかなんとか。『次に会った時は、貴様に神を見せてやる』との伝言を預かったと。

 そして、許可は出た、というか出させたので、オレの準備が出来れば一緒に旅について来るそうだ。ジェルマの力を使わず、自分でサンジを探すのと、見聞を広めるために。

 それまではジェルマの科学を頭に叩き込む、あと今度会う時までにもっと女を磨くと。

 楽しみにしておこう。




「生かす正義」
黒腕(こくわん)のゼファー〟の大将時の正義を、フィルムZでは出てこなかったと思うので考えました。
 同期のガープの正義はいつわかるのか。ビブルカードでも書かれてませんでしたが、隠す意味あるんですかね。空白の100年にあったある王国の思想と同じとか?

 大将〝黄猿〟、センゴク元帥
 新世界編12年前、原作開始10年前で節目というかキリが良いので昇進させました。これで原作時の元帥と三大将ですね。

超量(ちょうりょう)
 遊戯王カード。合体ロボ。
 お(あつら)え向きに赤、青、緑とイチジ、ニジ、ヨンジのカラーとマッチしてる。

RR(レイド・ラプターズ)-ブレイズ・ファルコン】
 炎を使いそうな名前なのに電気を使うのは、【迅雷(じんらい)のラプターズ・ブレイク】という技名と、【ブレード・バーナー・ファルコン】と被らないため。
 荷電粒子砲、ガンダムとかのビームライフル装備のヤバイハヤブサ。威力抑え目。両翼に付いたファンネル飛ばして撃つことも出来る。これでランク5というのが恐ろしい。

 その気になればバスターコール並の殲滅力
 ロゼの現在の最悪卑劣戦法は、自分は安全圏で食料を食べ続け【生命帰還(せいめいきかん)】で体力を回復しながら、一個旅団、数千体の【レヴォリューション・ファルコン】を自動操縦(オートパイロット)モードにして、目標の殲滅を命じ、空から絨毯爆撃して、辺り一面焼け野原にすること。
 本人が死人が出るからやらないだけで、一切の誇張なしにバスターコール並。そりゃCP-0の監視も付けられる。監視で済んでいるのは、今までの協力的な行動故と、力尽くで言うことを聞かせるのは、本人の武力や他の要員もあり困難と考えられたから。

(ゲン)(コツ)超新星(スーパーノヴァ)
 拳を爆発させる技。着実にロゼがボンバーマン化してきて、Mr.5(本名ジェム)が可哀想。

機甲の慚愧(シルバーズ・ソウルシェイブ)
 技名は遊戯王の魔法カード、ソウル・シェイブ・フォースから。
 見聞色を応用した、殺意や戦意といった形がない思いとかを切る技。今回の最初の方で、ジャッジが脅したりしてきたら最善は切るだけと言っていたのは、この技のことで切り殺すとかいう意味ではない。別にチェーンソーでなくても、ナイフや包丁でも出来る。ロゼ流マインドクラッシュ。
 原作の見聞色にこんな設定今の所ないですが、アラバスタ編のゾロの回想でコウシロウが言っていた、『世の中にはね、何も斬らない事が出来る剣士がいるんだ』『〝最強の剣〟とは……守りたいものを守り、斬りたいものを斬る刀』という言葉から想像したものの一つ、活人剣や護身術の一つの境地としての技です。
 ロゼ以外でも見聞色を鍛えて素養があれば出来るし、ロゼはまだ出来ないけど、別の、もっと実戦的な使い方がある。ミホークはそれが出来る。たぶんその内ミホーク戦とかで出る。かも。

 ベガパンク登場
 そろそろ原作に登場すると思ってたけど、間に合わなかったので勝手に設定作りました。
 力はもやし。初登場時のコビーとヘルメッポより貧弱。性格は完全な善人。善人過ぎて人の悪意に気付けず、自分の発明を悪用されるという発想がない。そのくせ、悪用されれば大量殺戮兵器になりかねないものもポンポン思い付く。
『またプルトンの奴にイジメられたよ~。ベガえも~ん』『しょうがないな~ロゼ太くんは~。はい、核爆弾』『やった~。じゃあ、これをラフテルにブチ込んで、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)ブッ壊してくるね~』こんな感じ。すごく(たち)が悪い天才。ある意味ドジっ子。世界を滅ぼせるドジっ子。
 これならフィルムZでゼファーがイカレた科学者と言ったのも不思議じゃないと思うんだ。普通は義手を付けてくれた人にイカレてるなんて言わないし、ゼファーは元大将で軍の教官だから色々知ってて言葉に重みがある。でも原作で今の所出ている情報では、ベガパンクはむしろ善人そうということでこうしました。
 もし原作で出てきた時に性格が全然違えば、二重人格ということにでもします。ジキルとハイドみたいな。

 レイジュ陥落
 サンジの姉だからこんなかんじかなって。
 レイジュは一緒に旅に出る仲間になります。医者と悩みましたが科学者です。早くサンジと会わせたいですね。
 そしてようやくロゼがスカーフを手に入れました。ずっと付けてませんでした。これでスカーフで口元を隠し、ゴーグルを付ければ完全に不審者。
 これに限らず、ロゼの設定はレイジュの境遇をどうにかするために付けたものも多いです。メカメカの実とか。まあ、メカメカの実にした理由はまだ他にもいくつかありますが、まだ全然書ける段階じゃないなぁ。話進めないと。

 ジェルマ改革
 ジェルマは以後戦争屋を廃業、軍隊はそのまま保持。国だから軍事力は必要不可欠。クローン兵こそもう増えませんが、ロゼの能力で作った機械を研究して量産した機械兵が増える。そしてカードゲームや携帯ゲームで稼ぐ科学大国に。ロゼの見た目を遊戯王キャラにする前は、普通に科学の発達した工業国にするつもりでしたが、これはこれで個性的でありかな。遊戯王次元が侵略して来てる。
 イチジ、ニジ、ヨンジは、サンジを虐待していた加害者ですが、情を消されてジャッジの教育を受けた結果の被害者でもある上まだ9歳以下の子供だったので、情を戻し、ジャッジの命令に逆らえない血統因子の操作もレイジュを含めて消し、更生の機会を与えました。感情を戻すとかが可能かどうかはわかりませんが、劇薬が原因でサンジだけが普通に生まれたので、不可能ではないと思います。ポイズンピンクとかの力はそのままです。
 ジャッジは正直どうしようか迷いました。サンジにしたように鉄仮面を付けて監禁とか。しかし、ジャッジが不在になって、ジェルマの科学力を欲しているどこぞの四皇が奪いに来ても困るのでこうしました。もうジャッジはレイジュに頭が上がりません。自分が死なせたソラと似ているから余計に。
 ジャッジは多分殺してるけど、レイジュやイチジ、ニジ、ヨンジはまだその手で人を殺していない。レイジュは足に66のタトゥーもない。原作でレイジュが、手は汚れている、父の共犯者だから自分はジェルマと一緒に死ぬべきと言っていたので、その前に変えました。
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