タイトルの〝闇夜の裁き〟とは、タイガーの死後、後の新魚人海賊団の幹部連中等の人間嫌いの魚人達が、覆面を付けて人間に血液を提供した魚人島民を襲って家に放火したりしたこと。
まあつまり今回魚人島の話です。
全然関係ないですが、前話のジェルマの話を投稿した日に評価の投票者数がちょうど66人になって、なんか嬉しかったです。面白い偶然。
魚人島、竜宮城。
「クソがァァッ!! ふざけやがって人間がァァッ!! 【
ビュッ!
飛んで来る水滴を避ける。
このリュウグウ王国のネプチューン軍相手に訓練に混ざり出してからもう4年。馴染んだ者もいれば、昨年のタイガーさんの死でまた遠ざかった者もいるが、まあ基本的に敵意は向けられていない中、1人敵意どころか只ならぬ殺意を向けてくる者がいる。今目の前にいるホオジロザメの魚人、ホーデイ・ジョーンズだ。
まあ、目の前にいるといっても、今のオレには見えていないが。
「寝たままおれに勝つだとォ!? 魚人をナメるなァ下等種族がァッ!! ブッ殺ォス!!」
「むにゃ……魚人をナメてなどいない……すぴー、オレがナメているのは貴様だ、ホーディ・ジョーンズ。ぐー、仮にもネプチューン軍に所属する者の言葉遣いではないな」
ドスッ!
「オエッ!?」
噛み付いて来たホーディ・ジョーンズの大きく開けた口から
そして拳を開き、人より大きく却って掴みやすい喉彦を握る。
「むにゃ……貴様が歯に自信があるのはわかったが、ぐー。正面から大口を開けて突っ込んで来るからそうなる、すぴー」
寝言で指摘する。オレと同じように素手でする奴がいるかはわからんが、剣や槍で突き刺す奴はいるだろう。
今使っているのは【
1年くらい前にこいつが入隊してから、何度戦って何度殺意を切っても殺す殺すと言われるので、ならばいっそとアプローチを変えて、思いっきりナメて戦ってみている。力の差があり過ぎるから諦めろと。色々と。それか、腹が立つならさっさと動け。
「ぐー……これではオレに勝てんし、殺すなど不可能だなァ……すぴー」
見聞色でものの核を捉える要領で、関節の正確な位置を捉える。
「【
ゴキッ!
捉えたホーディ・ジョーンズの左肩の関節に、右手で【
「ゴホッオエッゴホッ!」
「【
ゴキッゴキッゴキッ!!!
そのまま肩が外れ、手を引き抜かれ
機械の拳を作り出し浮かせる【
もうこいつはまともに動けん。デコピンで後ろに体を倒す。
「ぐー【
ザン!
崩れ落ちたこいつの体の上を、チェーンソーに変えた足で切り払う。もう何度目かの、こいつの殺意を切った。
これで諦めたか? ……無理だろうな。はあ……どうしたものか。別にオレに向けられるだけなら何の問題にもならないが、今はまだ見通しが立っていないとはいえ、これから人間と魚人が友好を深めていく過程で、確実に問題になるよな、こいつ。
というか問題はもう起こっている。まだこいつ自身は動いていないため証拠がなく捕まえられんが。せめてさっさと動けば牢獄にブチ込めるんだが。お仲間達のように。腹立たしい。
「寝言を言うガキに……おれは……金魚以下だ……」
「では関節を元に戻すため、担架で医務室にでも連れて行ってやってくれ」
体が動かず地に倒れ、落ち込んでいるホーディ・ジョーンズを指差し、周りの兵に言う。
白い肌に黒い長髪、ネプチューン軍の格好をして、背中からサメのヒレが出ている。まあ、そのヒレは今は仰向けに倒れているから見えないが。
「おい、ロゼ君本当に寝たまま勝ったぞ……それもほぼ指だけで。ホーディだって弱かない、というか新入りの中では技術はともかく力はむしろ強いのに、あの子何? あの子より強い人間が地上にはいるらしいぞ。一度も勝てない相手がいるらしいぞ。地上ヤバイ……怖い」
「おれはホーディの方が怖ェよ……なんで毎回あんな殺意剥き出しなんだ? あんだけ殺す殺す言ってんのにあの子加減してアドバイスまでしてるのに。まあ今日のはアレだったけど。おれはああはなるまい……」
「そもそもあの子は王子達の客人で、人間との共存を願うオトヒメ王妃のいるこの城で、客人の人間に新米兵士があんな暴言吐いているのにクビになっていないのは、他ならぬあの子が止めているからなのに、そこはどう思っているんだろうな? ……まあクビを止めるよう言ったのは、野放しにした方が危険そうという理由らしいが。見える所に置いておいた方がよさそうという理由らしいが。あれを見ると本当に何かやらかしそうで反論出来ん……」
「オトヒメ様の活動も、フィッシャー・タイガーの死後あまり上手くいってはいないが、あの子が手伝ってくれていることは、人間が護衛も兼ねて手伝ってくれているのは王妃にとって力強い……たまにケンカというか、じゃれているが」
「この前の酒を飲んで呂律が回ってなかったオトヒメ様……可愛かったなぁ。よく聞かせてくれたロゼ君!」
「「「「ネプチューン王に言いつけなきゃ」」」」
「やめてくれ!?」
なんか周りの兵達が楽しそうに話してるけど、早くこいつを連れて行ってくれないかな……。
まあ、その内運ばれるだろう。放っておいて、フカボシ達の所に行こう。
「ロゼッ! あなたという子はっ! よくもこの前は私をベロンベロンに酔わせて、放送マイクを渡しましたね!? あれから恥ずかしくて外に出られなくなったのですよ!?」
「ふっはっはっ、『うるへいっ! あたすィは酔ってねいっ!』のだろう?
移動中、この前ヤケ酒を飲ませ、酔ったまま魚人島一帯に放送した王妃様に捕まった。
ただこの人の愚痴を、心情を、住人達に吐露してもらうだけのつもりが、思いの外良い演説だった。結果オーライと言えるだろう。
それと、しらほしはどうもオレやオトヒメ様と同様、生まれつき見聞色を使えていたようだ。まあ親子だからな、そういうこともあるのかもしれん。あの子と初めて会った時、オレが食べられそうになったのは、オレが見聞色で聞かれないよう気配その他を消していたので、物か何かと思って口に入れた可能性が高い。
フカボシ達には心優しきオトヒメ様に睨まれない程度に、軽く覇気の戦闘法を教えているが、しらほしには見聞色の使い方だけ教えている。あの子は性格的にまったく戦いには向いていないが、それくらいはしないと苦労しそうだ。自分の力に振り回されるとか。オレみたいに。
「わざわざ能力で私の声真似までしてっ! それに、
皮肉を言われた。
この人も言うようになったものだ。オレの悪影響か?
「何を言っているのだ、オトヒメ様? あなたは知っているだろう。オレがマリージョアを攻めたことを。子供でも……まあしらほしは生まれて間もなかったから知らんだろうが、今の時代の最も重い罪の1つを犯した。オレが悪でなくてなんだと言うんだ。【
すかっ
オトヒメ様が平手打ちをしてきて、オレが躱す。
このやり取りも慣れたものだ。これが原因で【
これでオレは【
もっとも、それでも未だ、ただの一度も父さんに勝ったことはないが。能力が覚醒した後も。
父さんがオレにものすごく手加減していたことが発覚した。手加減されているのは前々からわかっていたが、まさかあそこまでの差があるとは……あの技、【
「何故いつも躱すのですっ! 私はあなたのためにブツのですっ! だからお受けなさいませ!」
すかっ
オレはまったくダメージを受けない。
「躱さないとあなたの手の骨が折れるから。オレは丈夫だから、折れるどころか粉々に砕けるかもしれん」
こっちは割と気が気ではない。あまり自殺行為をしないでくれ。
「そんな思いやりのあるあなたがっ、私やフカボシ達の心配をしている優しいあなたがっ、何故自分を悪などと否定するのですかっ!」
すかっ
平手打ちを傷付けないよう軽く受け止め、左から右に受け流す。
「オレがそんな人間かは知らんが、正義か悪かに、思いやりがあるか否か、優しいか否かは関係ない。思いやりがあり優しい人間だろうが、悪は変わらず悪。オレは悪だ」
オレは別に自分のすべてを否定しているわけでもなし。
「この頑固者っ! めんどくさい性格!」
すかっ
ひらりと身を躱す。
「確かにオレは面倒な性格をしているかもしれんが、今の時代がオレ以上に非常に面倒だ。第一、オレが自己否定ならば、あなたは自己犠牲。あなただって何度兵士に止められようが、王族なのに海賊がうろつく島内を出歩き、人並み外れて弱い体だろうが、自分の骨が折れることも厭わず平手打ちをかます頑固な〝愛の人〟。人のことは言えんなァ?」
「口ばっかり達者になって! あなたや兵士達がいるからいいじゃないの!」
すかっ
しかしオレには効かなかった。
「悪い。周りが心配する。出歩く方はまだしも、怪我の方は特にマズイ」
「それはあなたも同じでしょう!」
すかっ
オレは涼しい顔をしている。
「だからオレは悪だ。悪いし周りに心配かけている。もっと強くならんとな」
「……あなたその理屈ずるくないですか!?(間違っていると言っても『悪だからな』で流され、決して変わらない。何なのこのなかなか落ちない頑固な油汚れみたいな悪への考え……! 一番不思議なのはこうなってから気楽そうだということ、どういうことなの……?)」
「うう……お母様、ロゼさん……ケンカですかぁ……?」
「「あ」」
しらほしが、オレとオトヒメ様のやり取りで泣きそうになっていた。また体が大きくなっている。成長期が来たらどれだけ大きくなるのだろう?
というかいたのか、気配を隠すのが上手くなったな。
フカボシ達みたいに呼び捨てにしてもらいたかったが、そう言い聞かせている時に保護者に見つかって途中で中断した結果、さん付け呼びという妥協案で落ち着いたようだ。
オレだけさん呼びなので、『あなた……しらほしに何かしたの?』と過保護者の追及を受けたが。呼ばれ方を変えようとしただけだ。
この人は、前に島民の子供が鼻を垂れていた時、『片方の鼻だけ垂れているからバカみたいに見える! 垂らすなら両方から垂らしなさいませ!』とよくわからんことを言いながら平手打ちをして自分の骨を折ってしまったが、自分の子には『ああかわいい、鼻水が片方から垂れてるけど』と非常に甘、愛情溢れる接し方をしている。
「ケンカじゃないわよ、しらほし(あなたが頑固だから、しらほしが泣きそうじゃないですか!)」
「本当ですかぁ……?」
「(それはお互い様だろう)本当だ。ただのお話……それにしても、上手に気配を隠していたな。偉いぞ~」
互いに心の声を読み合い、裏で結託し、しらほしに対処することになった。
「頑張って練習しました!」
「しらほしは頑張り屋さんですね。そういえば、この前行った遊園地はどうでしたか?」
「はい! こうバーンってなってビューンってなって凄かったです!」
泣きそうだったしらほしが、身振り手振りを交えて嬉しそうに話してくる。
「(ああ……かわいい。全然何が気に入ったのか伝わってこないけど)」
この前ネプチューン軍の厳重な警戒態勢の上で、遊園地に王族一行が遊びに来た。
まだ完成はしていないが、場所や骨組みは出来たので、乗り物部分だけをオレが能力で作れば動かせる。
電力は、シャボンの外の海から水圧管路を通して発電所へ送り水力発電。水は中心の湖に貯水され、余分な水は空中にシャボンで加工して作ったウォーターロードを通り、シャボンの外に排水される。このウォーターロードは何本も通っており、移動手段にも出来る。ここまで作るのに非常に時間がかかった。
デンさんはリュウグウ王国から給料をちゃんと貰っている。オレは拒否して、代わりに海賊の(賞金)首をここで現地調達して、地上に連れて行く。
最初はデンさんが作ってオレが材料集め、たまにウィリーに手伝ってもらったりしていたが、いかんせん人手不足。だが、去年オレが能力を覚醒させて一気に進んだ。貝殻やサンゴ礁をオレが能力で機械に変えてから戻すことで足場を作り、デンさんがコーティング。その後はデンさんは普通に大工作業、オレは能力で変化、戻すを駆使することで、鉄を好きなように加工出来るようになった。人手も機械で増やせる。
今のこの島は、竜宮城がある上層、島民の居住区、そしてその居住区の隣に、増設した遊園地をくっつけているので、3つ目のシャボンで覆われた空間が出来た。
「それは良かった。まだオレがいる時しか動かせないが、いずれ完成するから、フカボシ達と楽しみにしててくれ(邪魔さえ入らなければ、もっと早く出来るんだがな……オトヒメ様、彼らの様子は?)」
順調だが問題がないわけではなく、ふざけた覆面を付けた人間嫌いの魚人達から実力行使の妨害を受けるようになった。あのホーディ・ジョーンズもこいつらと関係あるようだ。まだ何もしていないが、ネプチューン様にはもう話し、警戒してもらっている。怪しい動きをすれば即座に捕らえられるのに、仲間と接触していないらしい。
国から給料も出ており、遊園地建設は
出来るだけオレを狙ってくれるように、あの遊園地はオレの能力で作っていることにしている。オレが死ねば消えると。実際はオレの死後も使えるように普通に作っているが。まあ能力も使って作っているし、今は能力で出来た乗り物もあるのでまったくの嘘ではない。
「(あなた、もうちょっとなんとかなりませんか? 毎回体も心も弱り切った状態で連れて来て……もう反省して大人しくしてます)」
「(あの状態でないと、牙を折らないと、檻の中とはいえ危なくてあなた達のいる城に連れて来れない。それに、あれだけボロボロにすれば、平手打ちは必要ないだろう。アメは任せた)」
捕らえた下手人はオレが鞭で少々特殊な拷問をしてから、ここの牢屋に連れてきている。
オレというムチの後にオトヒメ様のアメで更生の流れ。
「(自分で出来るくせに……)」
「(あんな英雄気取り、英雄ごっこのクソガキ共、自力で立ち直るまで放っておくくらいでちょうどいい。オレはあなたのようには慈悲深くない。嫌ならやめればいいが、嫌とも思わずやめないのはあなただ。それを責める気はないし、あなたらしくて素敵だと思うが)」
「(……あなたの、他ならないあなたの怒りはもっともなのだけど……)」
それに、今は人間であるオレやその周辺の方に来ているが、このままオトヒメ様の活動が続けば、人間との友好が上手くいきそうになれば、あいつらはあなたの活動を邪魔、いや、もっと直接的な手段も使うかもしれん。
良い機会だ。しばらくは、あなたの天使達と過ごして休んでいてくれ。
「母上、しらほし、ロゼ。こんな廊下でどうかしましたか?」
「お母様とロゼさんが大きな声でお話してましたので、こっそり近付いて驚かせました!」
それで気配を消していたのか……かくれんぼみたいなものか。
「ああ、またか……」
「フカボシ数日ぶり。またですまん。リュウボシとマンボシも元気にしてたか?」
フカボシ達が廊下を通って来た。
「ロゼはまた反抗期か?」
「「反抗期? 反抗期~?」」
フカボシの後に、左右から同時にリュウボシとマンボシに聞かれる。
「そうだ」
「絶対これ反抗期じゃないわよ、天使達……何か
フカボシ達に、オトヒメ様はまだ心労でお疲れだから、一緒にいて癒してやってくれと言ってから、城を出てマーメイドカフェに向かった。
「この覗き魔! ようやく捕まえたよ!」
「おれの【カムフラージュカーペット】を見破り、【ボディ・DE・水晶クラッシュ】を破るとは……人間と関わるなどという乱心をしても、腐ってもアーロンさんの妹か……!」
「【ボディ・DE・水晶クラッシュ】って、ただ水晶玉を投げつけられただけじゃなイカ」
店の前で人だかりが出来、何やら騒いでいる。
「どうかしたか? もしかして、来た?」
「ああロゼ! よく来たね、こんな奴ほっといて、ゆっくりしていきなよ」
「シャーリー、去年からロゼに優しくなイカ?(最初は私が抱えてたけど、今ではロゼに陸上でお姫様抱っこで運んで貰うようになったし)」
「いやいやそんなことないよ?(前見た時と未来が変わってた……こんなこと初めて。気になる、もっと知りたい)」
「出やがったな、このイカサマ人間が!」
「イカサマ?」
見ると、青と水色の横縞のストライプの格好をした魚人がいた。分銅鎖で体を縛られている。切り傷もあるし、スミで麻痺もしているのだろう。
たしかサメのオオセの魚人。姿を消せる、自称〝魚人街の貴族〟のゼオだったな。厄介なのを捕まえられた。今は素顔だが、覆面を付けて〝闇夜の裁き〟を行っていた主犯格の1人だ。
それにしても、こいつらシルエットが特徴的だから覆面程度ではバレバレなのに、何故これでバレないと思ったのだろう? こいつに至っては姿を消せばいいだけだから、覆面は必要ない。
おそらくホーディ・ジョーンズはそのことに気付いていて加わらず、しかし人間に輸血した島民を襲撃もしたいので、指摘せずにこいつらにやらせていた。もうすでにオレの見聞色で見た過去の犯行の現場を、能力で作り出した印刷機で紙にプリントし、指名手配している。
確かにこの国には、「人間に血液を分かつ事を禁ずる」という法律が古くからあるらしいが、それで輸血した人を襲って良いということにはならない。そもそもオトヒメ様が、たとえ海賊でも人間の難破船の救助をネプチューン軍の兵士達と
「打撃、斬撃、銃撃、砲撃、爆撃、炎撃、電撃に陸・海・空中戦! 1つの悪魔の実の能力でどれだけ網羅する気だ貴様ァ! インチキ効果もいい加減にしろ!」
調べたのか? いや、ホーディ・ジョーンズからのリークかもな。こいつなら接触しても気付きにくい。
「ふん、いくらオオセの魚人だからと、服ごと体の色を変化させ、周りに同化出来る貴様に言われたくはない。たしか貴様は科学者だったな、お仲間達から聞いているぞ? どうやって変えているのか、科学的に教えて欲しいものだ」
オオセにそんなことは出来ん。体の色など変えられず、岩や砂に紛れ易いただの保護色だ。
「(でもそれだってロゼも出来るじゃなイカ。私のアイデンティティーの1つが……)」
「崇高な純血の選ばれた魚人族であれば、そのくらいただの体質で出来て当然! オオセの魚人であって、オオセそのものに
「【
バチィン!!
鞭で顔面を打つ。
本来は武装色で硬化し、鞭の弾力は残したまま横薙ぎに複数人まで鞭打つ技だが、今は拷問なので武装色は使っていない。痛みだけ与えればいい。
「アウッ!?」
それにしても本当に腹立たしい奴らだ。
シャーリーをアーロンの妹なのに人間と関わる乱心者などと勝手なことを言うのも、メイプルが人間と人魚のハーフであることを罵倒するのも、当然不愉快だが。
「メイプルも含めて、うちの人魚達の着替えを何度も覗いといて偉そうに」
「ロゼ? 私は言われ慣れてるから気にしないでゲソよ? 実際、今まで出来なかったわけだし。服ごと消える方は今も」
「まあ、それもあるから普段よりも怒っているみたいだけど……」
「人間などに屈しない! 人間に殺されたタイガーは選ばれた英雄ではなかったが、彼の意志は我々が」
バチィン!!
「オウッ!?」
どいつもこいつもタイガーさんの名を勝手に叫びながら、人間に輸血した魚人や人魚を襲撃しているのが、本当に腹立たしい。
さてと
「『私はあなたのためにブツのですっ! だからお受けなさいませ!』」
バチィン!!
「そんなわけアウッ!?」
「あっ、始まったでゲソ」
「これって、刷り込みというか……調教よね?」
オトヒメ王妃の声を能力で再現して、鞭で叩く。
シャーリーの言う通り、調教だ。こいつらが人間との友好を叫ぶオトヒメ様に、危害を加えないようにするための。
「『今からお前は最低の存在から最高の兵士に生まれ変わる! いや、私が生まれ変わらせる!』」
「い、嫌だ……! 嫌だぁぁぁぁぁっ!!」
「『口でクソたれる前と後ろに〝
バチィン!!
「サ、サー! イエッサー!」
「『声が小さい!』」
バチィン!!
「サー!! イエッサー!!」
「「オトヒメ様はこんなこと言わない……」」
当たり前だ。あの人が言うわけないだろ。そもそもあの人は女性だから〝
これはゼファーさん達が新兵時代に訓練教官の鬼軍曹に食らったという、前時代の海兵隊式新兵訓練を参考にしたものだ。当然今はこんなに酷くない。一番食らったのはガープさんらしいが、あの人は絶対に受ける前とまったく性格は変わっていないと思う。
叩く事数十回
「おれは貴族などではなく、ただの覗きです……」
だが、芯がない奴には良く効く。
天竜人にもやりたいが、去年、元帥に就任したセンゴクさんにチーズおかきを持って行った時、社会を良くするために、社会のトップの腐敗をブチ壊すためにもやって良いかと聞きに行ったら、『絶対やめろ!! それが発端となって、巡り巡って私が今どれだけ苦労しているとッ!?』と言われた。『頼む。お願いだ。お前まで、私を追い詰めてくれるなァッ……!』と。ダメか……昇進した瞬間なら許可が下りるかもと思ったが、あそこまで反対されるとは。何だあの魂の
「よし! 貴様に対して理解出来たのは、女の裸を見たいという、その気持ちだけだ!」
「「(見たいんだ……)」」
もう良いだろう。【ライズ・ファルコン】を呼び出し、連行する。
「そういえば、トリスタンはいないみたいだが、一緒ではないのか?」
自分のお腹に手を当てている2人に聞く。
戦闘の傷ならないが? 締まった細いウエストだ。
トリスタンは潜水艦に乗って一緒について来て、『ここでお菓子を食べてます』と言っていたはず。
それが今は入り江の方にいるな。
「あの子なら、流れ着いた難破船の救助に行ったよ」
「ホタテサンドを頬張りながら、跳ねて行ったでゲソ」
あいつらしいな。どっちも。
「では見張りも兼ねて、少しここで食べて行くか。帰って来るかもしれんし、遊園地には用心棒がいるようだし」
オレがいる時は問題ないが、いつも魚人島にいるわけではない。数日置きくらいにしか来ないため、いない間のために念を入れて遊園地とデンさんの護衛を依頼した。
マーメイドカフェとその従業員の人魚達も開店した時から依頼している。本来は海賊相手を想定した護衛だったのだが、魚人も含まれるようになるとは……報酬の値上げを要求されたので上げた。
「それにしても、開店当初から思っていたけど、よくあの人を味方に付けたでゲソな……」
「
人種が違えど、お金は大事だったようだ。
「ああ……」
いつものように足が尾ひれのシャーリーを抱えて、3人で店に入る。
「あらロゼ、いらっしゃ~い」
「ちょっとダメよ?
店員の女性人魚達と挨拶する。相変わらず華やかな店だ。
「今日のおやつは毒入りデザートで良いってことでゲソね」
「減給とサービス残業、どっちが良い? 嫌な方にしてあげる(子供相手にそんな……結構いい男になるみたいだけど。背も伸びるみたいだし……)」
「「ひぃっ!?」」
「……もしかして、この店の労働環境はブラックなのか? こんなに魚人島のきれいどころが集まった、美人な店長とかわいいチーフがいる目に優しい楽園のような場所なのに」
なんか夢が壊れるな……。
2人共、今年で18歳だが、随分背が伸びた。つい1,2年前まではオレと大して変わらなかったのに。
メイプルは170センチくらいで、シャーリーは2メートルを越えて、まだ伸びているらしい。少々抱えにくくなった。
「私、お菓子作ってくるでゲソ~」
「私は占ってあげるわ。ちょっと手の平見せて?」
メイプルがキッチンに行き、椅子に降ろしたシャーリーにそう言われる。減給とかは冗談だったのか?
それにしても、今日は水晶玉じゃないのか。最近バリエーションが増えたな。手相以外だと、トランプにタロット、人相とか。恋愛占い等もやっているらしく、シャーリーの占いはこの店の名物の1つだ。
「「(助かった……)」」
人魚達の踊りを見ながらおやつを食べて休憩していると、
「あの~、この方どうすればいいのでしょう?」
トリスタンが困り顔で入店して来た。
片手で持っているのは
「ダルマじゃなイカ」
小さな体と鋭い牙が特徴で、指名手配中のダルマザメの魚人だ。【エレキテル】を使ったのだろう、体がぴくぴくと痙攣している。
ミンク族としてはひ弱な部類だったようだが、トリスタンもやるようになったものだ。
「どうしたんだい?」
「難破船の怪我人に輸血していたら、いきなり地面から出て来て襲われまして……」
顔が出回って後先がなくなったからか、夜以外でも動くようになったか。
「でかした。では表でやるか」
「……もしかしてお手柄ですか? ならご褒美を要求します」
「いいぞ。手始めにここで好きなだけ食べて良し」
「やりました!」
跳ねるトリスタンから下手人を受け取り、店を出た。
バチィン! バチィン! バチィン!
鞭打つ事数十回
「おれなんて、
「火達磨になっても生きろ!」
仕事を終えて、また【ライズ・ファルコン】で連れて行かせ、入店した。
「いや、あの、勝手にそんなことして大丈夫なんですか、ロゼ? あなたこの国の人じゃないでしょう? 人種問題以外にも、国際問題とか……」
悲鳴を聞いていたのだろうトリスタンに聞かれた。
「前に言っただろう? オレはこの国に滞在している間だけだが、現在この国唯一の人間の住民扱いだぞ? 第一勝手にではなく、
そもそも国際問題って、オレはここ以外無国籍かつ無所属だというのに、どこと問題になるんだ。
あえて言うなら、アマゾン・リリーかジェルマ? どちらとも毎日連絡を取っている。ハンコック達はもう少ししたらまた会いに来ると言われ、レイジュには弟や父とのことを世話が焼けると言いながらも少し嬉しそうに話される。
「そういえば、前にお菓子を食べながら聞いたような……つまりロゼは、人間なのに人間社会では国籍がなくて、魚人島では国籍があるんですね。変なの……」
確かにおかしい。現代社会は複雑怪奇だ。
何度も入国審査をするのが面倒だからと言われ、あと人間との友好のための政策の一環として、リュウグウ王国の限定付きとはいえ国籍を認められ、告知もされている。身分証明書が出来た。
「さてと、トリスタンの顔も見たし、オレは遊園地の方に行く。今日も美味しいメニューときれいなダンスをありがとう」
お代を払う。
ここのメニューは肉や魚を食べられない人魚のために、貝や海藻を使った物が多い。つまりオレやトリスタン好みということだ。オレは貝もあまり食べないけど、海藻は好き。浅瀬がないシャボンディではどちらもあまり見ない。
「別にあんた達なら色々世話になったし、お代なんていらないのに……あんたのところ程じゃないにしても、うちもぼった、特別料金だから(陸上でさっきみたいにお姫様抱っこしてくれるだけで充分なんだけど……)」
「その時はチップになるだけだから貰っといてくれ。ではまた後でお土産を買いに来る」
「いつもの3つなら、今から作っておこうか?」
「お願いする」
母さんもここの海藻メニューを美容に良いからと気に入っている。ワカメブリュレとかモズクタルトとかコンブスフレとか。すでに息子のオレの目からも一児の母に見えず驚きだというのに、まだアンチエイジングするのか……オレが生まれた時と見た目がまったく変わっていない。凄いな、人体。
マーメイドカフェを後にし、遊園地に来た。
「ドスン……おれのハンマーがっ!」
「オトヒメ派のウィリーはともかく、なんでアーロンさんに何度も誘われながらも従わなかったお前が、人間の味方をするッヒ、ヒョウゾウ!?」
砕けたハンマーと刃ごとぶつ切りになった槍が地面に落ちている。
ピンク色の髪に青い肌の巨体、シュモクザメの魚人のドスン。黒色の髪にヘルメットを被った8本腕、ダイオウイカの魚人のイカロス・ムッヒ。さっきの2人と合わせて、主犯は全員だな。
まだ残っているのが他にもいるし、竜宮城にも
「アーロンにはさん付けでわいは呼び捨てか……まあそれはともかく、オトヒメ様を呼び捨てるたァ、随分偉なったなァ?」
「おれが大して酔う間もなくノサれちまったくせに、ナマァ言ってんじゃねェよガキ……飲み足りねェぜ、ひっく。人間だの魚人だの、おれにはどうでもいい……あいつは今までの誰よりも金払いが良いからなァ。恨むなら、自分達の気の毒な程薄っぺらな財布を恨め」
転がった指名手配犯の側に立つ2人の内の1人は、魚人街で〝闇夜の裁き〟の下手人を探していたウィリー。
そしてもう1人は、黒髪で突き出た口、酒が回り少し赤みがかった肌。酔った熱さ故か、ネクタイを締めず首に掛け、下の方しかボタンの留めていない白シャツに黒のスーツを羽織り、酒の入った瓢箪を片手に持つという、父さんもたまにやっている、同僚と職場帰りに一杯やった帰宅途中みたいな酔っ払いスタイルの用心棒、ヒョウゾウだ。もう片方の手には鍔のない刀を持っている。
ヒョウゾウは毒種ヒョウモンダコの人魚で、如何にも毒を持っていそうな色と模様のタコ足6本の人斬り上戸。泥酔すると誰彼構わず刀を振るう、酒癖の悪い危険な
飲んでいるな……まあ飲むのは良い。人を切らんなら良い。早く飲んで泥酔しても人を切らないようになってくれ。捕まるには、遊ばせておくにはもったいない実力。というかそもそも、タイヨウの海賊団の船員として実力者が出ていった今の魚人島で他に対等に渡り合えるのは、ウィリーかネプチューン様くらいだろう。
追加料金を払って、さらに殺せば減給と念を押しているので、今の所死なない程度の加減はしてくれている。
遊園地完成後はネプチューン軍が巡回するので問題なし。その後は以前同様、マーメイドカフェで
彼は彼で放っておけば殺し屋か辻斬りになり
「大漁だな。デンさんは?」
「ん? おお、ロゼ。向こうで作業中や」
「そうか、順調そうで何より。ではこいつらにも拷問拷問っと」
バチィン! バチィン! バチィン!
鞭打つ事数十回×2人分
「おれは魚人なのにカナヅチ頭だコツン……海底に沈めばいい……」
「おれなんて、一杯やるのに丁度いい、ただのスルメだッヒ……」
「おいロゼ、酒持ってねェか? こいつ炙って酒の肴にする……ひっく」
「やめろ酔っ払い、血迷うな。こいつは牢屋で干す。酒なら自分の手で持っているだろ。バーの酒って意味なら、魚人島に来た時、マーメイドカフェに置いて来た」
さっさと2人を【ライズ・ファルコン】に連れて行かせる。
「二日酔いの時に飲むあそこのシジミ汁は一段と上手い……ひっく。それに、シャーリーはアーロンの妹の割に、タダで酒の肴くれて気前が良い」
「ヒョウゾウ、お前絶対わいがおらん時に深酒すんなよ?」
「ケチなこと言ってんじゃねェよ……ウィリー。酒は飲みてェ時に好きなだけ飲むもんだ……ひっく」
「飲んで良いから人を切らないでくれ」
「コイツの方がまだ話がわかる……ひっく」
オレが話がわかるのではなく、酔っ払いが人の話を聞かんのだ。
その後、しばらくデンさんと一緒に作業をしたが、誰も襲って来なかった。何故だ?
「止まれェッ人間ッ!!」
遊園地を出て魚人島を巡回していると、人通りの少ない場所で乱暴に声を掛けられた。
よ う や く 来 た か ァ ッ !!!
「何を嬉しそうに笑ってやがるッ!? 同志達を何百人も捕まえやがって、ふざけんじゃねェぞ!?」
「嬉しいからなァ、潰したくて潰したくて仕方がない奴らが目の前に現れたのだから。探していたぞ? 貴様らも〝闇夜の裁き〟の下手人だな? ならばオレが相手だ!」
見ると、確かハモの魚人のハモンドとカサゴの魚人カサゴバ、アンコウの魚人ヌルだったな。
「誰がテメェみたいな化物相手にバカ正直に正面から突っ込むかァ! ハモハモハモ! だが、その余裕も今日までだ! こっちにはこいつがいる!」
最初の頃はバカ正直に背後から襲って来ただろうが。オレにこいつらでは正面も背後も大して変わらん。帰りの水中で襲われたこともあるが、魚雷と放電で撃退した。
3人の後ろから、体中からトゲの生えた男、確かハリセンボンといった。
そいつが魚人の、オレより年下そうな男の子を抱えていた。ギザギザのヒレが生えている。あの子もカサゴの魚人か?
「その子が秘密兵器か? 強そうには見えないが」
というか怯えて
「こいつは魚人街出身でありながら人間と仲良くなりたいってェ、言うなれば魚人族の聖戦参加を拒否した裏切り者だ! こいつの命が」
ギンッ!!!
覇王色を子供以外にぶつけて気絶させる。
手前勝手な理論で人を襲っているような奴らが、聖戦なんてきれいな言葉を使うなよ。同胞を襲撃しといて、どの口で魚人族の裏切り者などとほざく。
「【
倒れてトゲが刺さる前に、魚人の子供を抱える。
「う、うん……ありがとう……(速っ、いつの間に? というか何今の。睨み倒した?)」
「礼なんて言ってくれるな。悪かった。オレがさっさとこいつらをブチのめしていれば、怖い目に遭わずに済んだのにな。1人で帰れるか? 無理そうなら遊園地に魚人街の出身の2人がいるから、送ってもらうか?」
「うん……ねえ、1つ聞いていいですか?」
恐る恐るといったかんじで聞かれる。
「なんだ?」
「人間って、良いの? 悪いの?」
「それは自分で考えるべきことだ。そもそも、オレの価値観は少々他と違うらしいから、あまり参考にならん。まあ、1つ言えるとすれば、魚人に見た目や考えが違う色んな奴がいるように、人間にも良い奴もいれば悪い奴も色々いる」
「……お兄ちゃんは?」
「悪い奴」
「じゃあきっと、良い人間はいっぱいいますね。おれはお兄ちゃんのこと、良い奴だと思いますから。色々聞いてますよ」
そうきたか……オレはここの住人にいつも通りに接しており、人間に幻想を抱き過ぎないように、自分の攻撃的で苛烈と言われる面も隠さず出しているつもりなんだがな。まあここでのその主な対象は、海賊と〝闇夜の裁き〟の連中の2つに対してだけど。
オレが繕ったところで、魚人を偏見なく見る人間もいるが、魚と差別し見下す人間だって確実にいるという現実は変わらないから。
そして、それはどうも権力の上の方にいる人間程多い傾向らしい。この国が人間と友好を求めるなら、前にオトヒメ様が酔って演説で言っていたように、人間にぶつかるくらいの気持ちでちょうどいい。
変わらなくてはいけないのは、最近の〝闇夜の裁き〟で明るみに出た、魚人島の、特に深海の魚人街で受け継がれてきた人間への怨念めいた感情もそうだが、人間の側の方こそ多い。どうにか出来ないかな……主に
ハモンド達を拷問の後に連行。
その様子を見て、「う、う~ん、やっぱりわからない……どっち?」と呟いていた、オニカサゴの魚人だったらしい少年をウィリー達の所に送った。少々刺激が強すぎたか。
その後、マーメイドカフェに行く途中、
「ロゼ、久し振りじゃな」
「〝海侠のジンベエ〟、1年振りだな……何故そんなに親しげなんだ?」
最近七武海になったらしい、2代目タイヨウの海賊団船長に遭遇した。
初対面時は、間違っても笑顔で話しかけられる仲ではなかったが。まだ会うのは3回目だ。
「タイのアニキのために飛んで来てくれたお前さんに、今までのような態度は取れん……それに、住人達から話は聞いた。色々力になってくれとるそうじゃな。恩に着る」
「助けられなければ意味はないし、自分の好きにやっているだけ」
「そのことなんじゃが、今からネプチューン王にも話すのじゃが……」
ジンベエの話によると
「……タイガーさんが生きているかもしれない?」
顔半分にタトゥーを入れたドラゴンと名乗る男にそう言われ、預けたらしい……よく信じる気になったな?
「その男の船ならオレもあの帰りに見かけた……というか、威嚇して何百人も気絶させた」
「はあ!? 何やっとんじゃあお前!?」
「いや、怪しい武装船だったから。だが船もなく1人だったなら、おそらくそいつは能力者。生きているなら、そいつか仲間の能力で何かしたのだろう」
もしそうなら、威嚇せずに放置しておいた方が良かったか?
そうか、生きているかもしれんのか……連絡がないのは副作用でもあるのか? 動けないとか記憶が飛ぶとか。(※副作用で寿命が数年縮み、副作用関係なく性別が変わりました)
まあだが、たとえ生きていたとしても、オレが一度死なせたことに変わりないか。生きていれば、いずれ会うことになるだろう。
「ところで、アラディンやはっちゃんもいるのか?」
「ああ、シャーリーが始めたという店に行ったわい」
「なるほど。あそこの海藻メニューは美味い」
「そうなのか。わしゃあもずくとフルーツが好きでなァ。アーロンにゃあ『その顔でフルーツ好きなんて似合わねェ』と笑われとったが」
「何? お前もフルーツ好きなのか?」
「そう言うゆうことはお前もか?」
オレの中のジンベエの評価が上がった。
瞬発的に成長する植物の種、ポップグリーンのごとく、
「そういえば、インペルダウンから釈放されたという〝ノコギリのアーロン〟もいるのか?」
しばらくどこのフルーツは美味いとか、そういった話をしてから、思い出して聞いた。
問題ないとはシャーリーが言っていたが、あの場所から出てくるとは思わなかった。丈夫だからインペルダウンの拷問では死なないとかそういう意味かと。
もしくは前に言ってた、まだ麦わら被った奴に鼻を折られてないからとか。あの麦わら帽子はガープさんの孫に渡ったみたいだが、そのルフィとぶつかるのか?
「いや、あいつや他のいくらか、主に元アーロン一味は来ておらん。タイのアニキが生きてるかもしれんなら、探すと言うとった。会うまでこの国に戻るつもりはないとも」
探すつもりなのか。手掛かりはドラゴンって名前くらいだから、厳しいんじゃないか? あと個性的な船員達。
まあだが、こう言ってはなんだが、あいつが来なくて良かった。ホーディ・ジョーンズとは会わせない方が良い。
彼は同じ魚人族まで襲うような奴ではないと思うが、タイガーさんが死んでから変わっている可能性もある。
「シャーリーにも会わないのは、少し腹が立つが……」
「そこはお前がいるからじゃろう」
「そうかァ?」
その後、マーメイドカフェまで一緒に行き別れた。
店に入ると、1年振りの2人、アラディンとはっちゃんと再会。
トリスタンがアラディンから医学を教わっていた。アマゾン・リリーのベラドンナという医者からも習っていた。その姿勢は素晴らしい。こいつは基本独学だから勉強になるだろう。
はっちゃんはタコ焼きの屋台を再開するようだ。あとヒョウゾウを雇ったことを驚かれた。
何故皆驚く? まあ確かに善人ではまったくないが、非常にわかりやすい奴だ。お金が好きで酔っ払いなところが、生まれた時から知っているような親しみを覚える。
話し込んでいたら遅くなったので、お土産を買いトリスタンと潜水艦に乗って帰った。
【
寝たまま体を動かす技。ポケモンでいうねむねご戦法。
【
1人、もしくは複数人の体を貫かず関節を外す技。
昔古本屋で呼んだジャンプ漫画にこんな技があったと思うけど、なんて漫画のなんて技名か思い出せない。(※ウルトラレッドの球突でした)
【
武装硬化した鞭で相手をしばく技。遊戯王のローズ・テンタクルスの攻撃名から。
後の新魚人海賊団(ホーディ他幹部全員新世界編30歳)
11年前でその上
船長のホーディが
現時点で一番強いであろう用心棒のヒョウゾウ(新世界編39歳)は、そもそも魚人至上主義ではなくただ金で雇われただけなので、金で味方に出来る。
ぼったくり
この世界って酒の製造の法律どうなってるんでしょうね? まあでも、元海賊が無法地帯でやってるぼったくり