機械の皇帝   作:赤髪道化

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 新世界編10年前。
 原作で色々起こって、だから早く書きたかった年ですね。


〝造った船に男はドンと胸をはれ〟

 赤い土の大陸(レッドライン)の上、聖地マリージョア。

 その中心にそびえたつ巨大なパンゲア城の中の通路を、1人の端麗な容姿の貴婦人が、溜息混じりに歩いていた。

 

「(マズイわね……せっかく彼が食事中以外で珍しく、年相応に可愛く喜んでいたのに、余計なことを……!)」

 

 

 天竜人直属、CP-0の諜報部員ステューシー。

 彼女が考えているのは、先程知った他のサイファーポール、CP-5の主官スパンダムが、古代兵器の設計図の情報を手に入れ、五老星に『世界政府が古代兵器を所持し、これを用いて大海賊時代を打ち払うべし』と進言し、一任された件だ。

 彼女にとって、政府が古代兵器の設計図を手に入れるのは別に構わない。この設計図を嗅ぎ回る海賊も存在するなら、政府が保管するなり破棄するなり古代兵器を復活させるなり好きにすればいいと思っている。それが兵器、機械であるのであれば、たとえ暴走したところで自分が主と仰ぐ者なら、悪魔の実の能力でどうにでも出来ると。

 

 

「(あの間抜けの七光り、出世欲だけは一人前ね。私が直接動いて上に怪しまれても困るわ。彼の立場を守るために、私のCP-0の立場は必要。ただでさえ彼には、こちらから手を出さずとも〝赤髪〟以外の四皇との戦争になり得る火種が4つ……いえ、また増えて6つもあるのに。リンリンとの火種だけでも、私が情報を止めないと……)」

 

 

 問題は、その設計図の、古代兵器プルトンが、1発放てば島1つを消せる威力を持つと言われる、造船史上最悪の化物と称される戦艦が、ウォーターセブンで造られた物であること。

 そしてプルトンの設計図は、数百年間代々ウォーターセブンの船大工の間で受け継がれた物であり、現在所有している可能性が高い人物が、コンゴウフグの魚人の船大工トム。

 かつてロジャー海賊団の船、オーロ・ジャクソン号を造った罪を、ウォーターセブンとエニエス・ロビー、サン・ファルド、セント・ポプラ、プッチの4つの島を結ぶ4本の線路とその上を走る海列車パッフィング・トムを完成させたことで、もうすぐ免除されるだろう。免除されるはずだっただろう。何もなければ。

 

 

「(こういう時は、他に動いて貰いましょうか。貸しは作ってあるし、偶然だけど縁もある。どの道もう見つかるのも時間の問題。そして何より、ギリギリ間に合う距離。彼らの判断に委ねれば、ロ、ロゼに後でバレても問題ないでしょう)」

 

 自分(ロゼ)の父親、シルバーズ・レイリーの船を造ったことで死罪になるのが帳消しになりそうだと聞き、誕生日にプレゼントに何が貰えるか楽しみにしている子供のように、まだかまだかとトムが免罪になるであろう裁判の日を楽しみにしていたロゼの様子を思い出し、ステューシーは自分の、サイファーポールとは別の一般人の部下に連絡し、トムを奪還すべく行動することを決めた。

 たとえ相手が自分より年下の少年であろうとも、ロゼの(あずか)り知らないところで色々と動いていても、ステューシーは尽くす女だった。

 

 

 

 3日後、ウォーターセブン

 

 

 トムの判決を決める司法船が到着し、その裁判をウォーターセブンの多くの住人が傍聴に来た。

 14年前の裁判時には、『〝海賊王〟の船を製造した事実を世界的凶悪犯への加担とみなし死刑』というトムに下された判決に対し、『当然の結果』『世界中が迷惑してる』『仕方ない』と考えていた住人達も、並の造船技師には到底作れない海列車を開通させたトムとその造船会社トムズワーカーズを称え、誰もが死罪は帳消しになると思っていた。

 

 ドゴオン!!!

 

 停泊した司法船とその周りで皆がトムの到着を待つ中、突然号砲が鳴り響き、司法船に砲弾が撃ち込まれる。その砲撃は1発に終わらず、次々と船に放たれる。

 1人、トムズワーカーズの人達より一足先に港に来ていた、水色の髪を逆立たせ、額にゴーグル、アロハシャツに半ズボンで裸足のラフな服装をしているトムの弟子の船大工の1人、カティ・フラム……トムズワーカーズの人々からはフランキーと呼ばれている青年は、砲撃が放たれている海を見て……戦慄した。

 今まで自分が造ってきた戦艦〝BATTLE(バトル) FRANKY(フランキー)号〟。3日前にその35号で全長100メートルはあろう海王類すら仕留めた自分の戦艦が船団を成し、司法船を、人を襲っていた。

 

 何故? 一体誰が? こんなことのために作ったんじゃない。

 フランキーが混乱する間も、襲撃は続き、司法船のマストは倒れ、火は燃え上がり、怪我人は増えていく。自分の船を人を傷付けるために使われ、怒り戸惑うフランキーが船に向かう。

 時を同じくして騒ぎに気付いたトムと、フランキーの兄弟子(あにでし)アイスバーグも、襲撃を止めるために船に乗り込むと、すでにもぬけの殻。

 どころか近づいて来た別の戦艦に砲撃され、フランキーが着いた時には、2人は傷を負い、特にトムは体に深く銛が刺さり重傷だった。

 

 

 これは、出世のチャンスを逃したくないCP-5主官スパンダムが、古代兵器の設計図を手に入れるために、トムの罪が帳消しになっては困ると、罪人として取り調べるために仕組んだ、卑劣な策略。フランキーの造った戦艦を使い、トムズワーカーズに罪を着せ、逮捕するための。

 

 トム達3人は、スパンダム達CP-5に捕まり、手錠を付けられ町に司法船の襲撃犯として連行される。

 フランキーが、襲撃はスパンダムの仕業と、裁判長や町の住人達に訴えるも、戦艦に乗っていたフランキー達を現行犯で捕らえた政府機関のCP-5とその戦艦を造った船大工。信用は天と地の差で、信じる者はいない。

 

 

「あんな事する船なんて……! もう、あんなのはおれの船じゃねェ!!」

 

 ドカンッ!!

 

 自分の造った船が人を、自分の大切な人達を傷付けたことで、自分の船であることを否定したフランキーを、トムが手錠の鎖を引き千切り、殴り飛ばした。

 トムが拘束を外したことで、周りの海兵が銃を構える。

 

「…………!!? トムさんが……!! フランキーを初めて殴った!!」

 

 驚くアイスバーグ。

 今まで武器や戦艦ばかり造るフランキーに、凶器を存在させた責任を何度も問い掛けてきたアイスバーグに対して、トムは笑って許してきた。先程フランキーの戦艦に襲撃された時にアイスバーグが彼を責めても、トムは深手を負いながらも笑い、責めなかった。

 そのトムが、初めてフランキーを殴った。

 

「何すんだァ!!!」

 

「『おれの船じゃねェ』!!? フランキー……それだけは……言っちゃいけねェ……!!」

 

「言って何が悪い!! 後悔してんだ!! あの船さえなきゃ、誰も傷付けずに済んだんだ!!!」

 

「どんな船でも……造り出す事に、善も悪もねェもんだ……! この先お前がどんな船を造ろうと構わねェ!! ……だが」

 

 体に刺さった銛を、フランキーが刺さっても抜けないように作った銛を、怪力で無理矢理引き抜き、傷口が(えぐ)れ血を拭き出しながら、トムは言う。

 

「生み出した船が誰を傷付けようとも!! 世界を滅ぼそうとも……!! 生みの親だけはそいつを愛さなくちゃならねェ!! 生み出した者がそいつを否定しちゃならねェ!! 船を責めるな!! 造った船に!!! 男はドンと胸をはれ!!!」

 

 

 それが、船大工としてのトムの矜持。信念。

 

 罪を被せてきたのは世界政府、裁くのも世界政府。今回の疑いは晴れるはずがない。

 トムは覚悟を決め、アイスバーグとフランキー、2人の弟子に、自分がこれからする事への口出しを禁じた。

 

 フランキーの造った船をこんなことに使ったスパンダムを殴り飛ばし、周囲の海兵に麻酔弾で撃たれ、膝をつくトム。

 そして、司法船襲撃の罪を認め、海列車を造った事で何か1つ罪が消えるなら、今日の司法船襲撃の罪を消して欲しいと裁判長に頼む。

 

 

「たとえその望みが通ったとしても、14年前の振り出しに戻るだけだ。お前は再び極刑となる、〝海賊王の船製造〟の罪が残るぞ!!」

 

「ああ……その方がいい……!! わしは、ロジャーという男に力を貸した事を、ドンと誇りに思っている!!!」

 

 

 フランキーへの言葉通り、トムは胸をはり、オーロ・ジャクソン号を造った事を誇る。

 自分の造った船の責任から逃れようとしたフランキーへの、師としての最後の教え。船大工としての信念を貫く姿を、弟子達に堂々と見せつけた。

 

 自分の罪名が14年前に戻っても、大海賊時代以降廃れて人々に活気がなかった昔と違い、今のウォーターセブンは力に満ちている。たとえこれから自分の身に何が起きても、自分の造った海列車(パッフィング・トム)が町の力になれる。自分の夢はやっと走り始めたのだ。

 そうフランキーに伝え、体に麻酔が回ったトムは、倒れた。

 

 トムという男の信念に心動かされた裁判長が、彼の頼みを聞き入れ罪名を変更。司法船襲撃犯3人の逮捕から、〝海賊王〟の海賊船製造の罪によりトム1人が、司法の島エ二エス・ロビーに連行されることになった。

 司法の島へ行った罪人が帰って来た試しは一度もない。トムは2人の弟子を連れて行かせないために行動したのだ。世界政府を敵に回しては命がいくつあっても足りない。だから耐えろと、悔し涙を流しながらアイスバーグとフランキーを諭すトムの秘書ココロ。

 

 だがフランキーはトムを連れて行かせないと、スパンダムを殴り飛ばし暴れ回り、海兵達相手に大立ち回りを繰り広げるが、トムは海列車に乗せられ、エニエスー・ロビーに向かう。

 

「止まれ、パッフィング・トム。てめェ……生みの親をどこへ連れてく気だよ!!」

 

 ドン!! ドドン!!

 

 トムのペット、角界ガエルのヨコヅナと先回りして、武装したフランキーが線路の上に立ち、大砲を撃ち、海列車を止めようとする。

 

「止まれ、海列車ァ!!!」

 

 ゴオッ!!!

 

 しかし、トムの造った海列車には傷一つ付かず止められず、フランキーは海列車に轢かれ、体が宙を舞い、海に沈んだ。

 

 

「ワハハハ!! バカめェ! ただの船大工が、世界政府に、おれに楯突くからだァ!!」

 

「スパンダムさん、大変です!!」

 

 数十分前に、海列車に吹き飛ばされ死んだであろうフランキーの姿を思い出し、高笑いを上げていたスパンダムに、CP-5の諜報員が、先程フランキーが追って来た事を報告した時より慌てた様子で、後ろの車両から駆けこんでくる。

 

「今度は何だァ!?」

「侵入者です! 先程、この海列車に近付いてきた船から、数人が飛び移り、海兵や他の諜報員達相手に暴れ回っております!!」

「何ィ!?」

 

 目的は何だ。

 スパンダムがそう言う前に、

 

「【獣剣唐獅子(じゅうけんからじし)】!」

 

 ズババンッ!!

 

「ホベァーッ!?」

 

 トムに殴られ、フランキーに殴られ、結果顔が曲がり歯が抜け落ち、体が包帯で覆われ足にギブスと、すでに満身創痍だったスパンダム。

 そのスパンダムが、突然現れたミンク族の男に体の至る所を剣で切りつけられ、先程海列車に轢かれたフランキーよりボロボロになった、ボロ雑巾のような体が吹き飛ぶ。

 

「スパンダムさん!」

「道力たったの5のスパンダムさんがまたやられた!」

「おれ達の一番の穴が!」

 

 スパンダムが海列車の壁に叩きつけられ、騒ぐ彼の部下達。

 道力とは、人間の体技の強さの単位。武器を持った1人の衛兵の強さが10道力。

 つまりスパンダムの強さはその半分で、必ずしも直接戦闘するとは限らない諜報部員とはいえ、最低限の強さすら備えておらず、本来CP-5の主官など務まらないが、一般人には知られていない暗躍諜報機関CP-9の長官だった父スパンダインのコネで主官に就いた。

 

「包帯でわかりづらいが、紫の髪に目の周りの隈と黒い鼻、ゆガラがなんとかパンダだな」

 

ス パ ン ダ ム だ……! てめェら、こんなことしてただで済むと!?」

 

「元より覚悟の上! ロジャー達の、旦那達の、おでん様の船を作ってくれた恩人を、このまま連れて行かせはしない!!」

 

「(こ、こいつロジャー海賊団の関係者か!? やべェ~~ッ!!)……がくっ」

 

 

 ロジャーの名と自分を切った攻撃から、最初から戦う気などない自分は当然、連れて来た部下では敵うわけがないと見切りを付け、早々に気絶したフリを実行。スパンダムの、出世と保身のためなら普段の数倍は働く弁舌(べんぜつ)と脳細胞の内、脳の方がフル稼働する。

 結果、先程自分のことを道力たったの5だの穴だのと言うだけで、壁にも盾にもならなかった使えない部下達を切り捨て、責任を押し付け人身御供にする算段を立て終わった。

 

 そしてスパンダムがそんなことを考えている間にも、ミンク族の男、ノックス探検隊船長ペドロが剣を振るい、残りのCP-5を倒す。

 その後、彼らがいた車両の先。海列車の機関部、動力室に入り、海列車を止めるペドロ。

 

 

「おい、ペドロ! トムさんを見つけたはいいが、結構な深手だ! 応急処置はしてあったが、どこかでちゃんと手当てしないとマズイぞ!」

 

 他の車両を制圧し、トムの身柄を押さえたペドロの相棒ゼポが、寄って来て伝える。

 

「……船に残ったぺコムズ達が追いついて来たら、久し振りにあそこに行くか」

 

 懐からビブルカードを取り出しながら、そう言うペドロ。

 

「? ああ、あそこか! ビブルカード貰っといて良かったな」

「あガラに治せればいいんだが……」

 

「(ヒョウがペドロ(※ジャガーのミンクです)で、名前がわからねェシロクマ。何のミンクか、ミンク族かどうかもわからねェがぺコムズって奴。くそっ、どこに向かうんだ……?)」

 

 

 ペドロもゼポも、スパンダムが気絶していないことには気付いているが、戦闘の意志なしと放置している。

 たとえ向かって来たとしても、何の問題にもならない程弱いので、相手にされていないとも言う。

 

 船を操り追いついて来たぺコムズ達と合流したペドロ達。

 麻酔と傷で眠っているトムを連れたノックス探検隊は、舵を切り、ビブルカードを頼りに船は進む。

 船首が向かう先は、彼らが5年振りに訪れることになる、シャボン玉が飛び交う島。

 シルバーズ・ロゼの住むシャボンディ諸島。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 シャボンディ諸島のオレの家。

 椅子に座ってペドロから話を聞いていた。

 

「ということがあったんだ」

「それはまた……」

「(前から思ってたけど、うちの子ってトラブルを引き寄せる体質ね……)」

 

 

 久し振りに来たペドロ達ノックス探検隊。そして重症で風船のように丸い体の魚人。

 珍しく慌てて駆け寄った父さんによると、薄黄色の肌で目の上に角のようなトゲが生え、白くフサフサの髭と髪、頭にバンダナ、青く波の模様の入ったシャツにジーンズに革靴を履き、腰に斧や金槌などの工具を付けたこの人が、船大工のトムさんらしい。魚人島のデンさんの兄の。

 

 ペドロ達が偉大なる航路(グランドライン)前半の、毎年襲ってくる大規模な高潮アクア・ラグナによる水害に水位の上昇と大海賊時代以降増える海賊の被害で、衰退していく一方だったウォーターセブンに代わり、現在造船業で一番有名な島に滞在していた時。

 自分達以外の旅の2人組が

 

『ねえ知ってる~? なんか~、なんとかパンダとかいう紫色の髪で目の周りと鼻が黒い奴が~、海列車を造った人を罠に嵌めようとしてるんだって~』

『マジで~? 確かロジャー海賊団の船を造ったトムって魚人でしょ? 海列車作って免罪になるんじゃなかったの~?』

『それがさ~、その人が持ってる物を取り押さえたくって、罪人じゃないと困るんだって~』

『それマジヤバくな~い? 激ヤバのヤバタンなんですけど~』

 

 と、何故か無性に腹が立ってくる口調で、大声で話しているのを聞き、トムさんを救出しに行ったそうだ。

 なんでそいつらはそんな政府の陰謀みたいなことを知っていたんだ?

 

 それにしても、魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)を通ってよく無事だったな。運が良い。

 昔からあそこは毎年100隻以上の船が消息不明になっていたそうだが、今のあそこは特に危険地帯。ステューシーによると、“影法師〟は七武海入りする条件に、インペルダウンの囚人の影を要求し、各地で手に入れた死体に影を入れて、カゲカゲの能力で作った不死のゾンビ軍団を組織し、あの海で影狩りを行っているらしい。ゾンビの強さは入れた影の持ち主や死体の強さに比例し、名だたる海賊の影や死体も手に入れているとか。

 

 

「たっはっ!! ……!! ……!! ……ドンと生きてた!!」

 

「まだ安静にしてて下さいね? ちゃんと塞がったら糸を抜かないと」

 

 傷口の縫合手術が終わったトムさんが大口を開けて笑い、トリスタンが注意する。

 こいつはどちらかというと内科医で、手術があまり得意ではないけど、切傷や刺傷の縫合手術は上手くなった。なんか……ゴメンな? いつも海賊相手に暴れて。

 目が覚めてすぐに、舌を噛み切って自害しようとした時は焦った。政府に古代兵器の情報を与えないためだろうが、子供にミンク族、果ては〝冥王〟という客観的に見て意味不明なメンツにトムさんがフリーズした瞬間に、口に硬化した手を突っ込んで止めた。

 

「お疲れ様」

「キュルキュル~♪」

 

 ここが自分の椅子だとでも言わんばかりに、当然のような顔をしてオレの膝に横向きに座ったトリスタンを(ねぎら)う。

 

「すまない、トム。我々の船を造ったばっかりに」

「たっはっ……! なァに、あそこまでドンと乗ってもらえりゃあ、オーロ・ジャクソンも船冥利に尽きる! あいつを造ったことはわしの誇りだ!」

「……うれしいことを言ってくれる」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる父さんに、笑って返すトムさん。

 一切の悔いなしか。器のデカイ人だな、この人は。

 

「トムさんは、レイリーがここにいることに驚かないんだな」

「驚くも何も、シャボンディでコーティング職人をやるからやり方を教えてくれってドンと頼まれた!」

「え? そうなのか?」

「ああ。海賊団が解散して、シャボンディに住むと決まってから会いに行った」

 

 初めて聞いた。

 デンさんもコーティングが出来るから、同じく魚人島出身の船大工であるトムさんが出来ることに不思議はないが、父さんが出来るのはそういう理由だったのか。

 思い付きのノープランであれがやりたいとかこれがやりたいとか言い出す〝海賊王〟の要望にあれこれと応えていたら、色々出来るようになったと言っていたので、器用だな~って思っていた。

 

「それにしても、勿体ないな。古代兵器の設計図なんかより、あんたがこれから船大工として他の島々も海列車で繋げられれば、世界中の交易が大きく変わるだろうに。そこらの船大工には作れないんだろう?」

 

 オレが能力で作れたとしても、気絶か死亡で消える危険な乗り物になってしまう。

 

「たっはっ……! ……! その夢はアイスバーグとフランキーにドンと託してきた! あいつらならやれる、わしの弟子だ! わしはこいつらの船で船大工をやらせてもらうかな」

 

 へえ、弟子も腕が良いのか。ウォーターセブンはここから近いし、旅に出たら探してみるか。

 

「一緒に来てくれるなら心強いが、いいのか? ここからすぐ下の魚人島がゆガラの故郷なんだろう?」

「デンに会ったらそれでいい。あの国も立場は微妙、わしがおると今回みたいにドンと不利な事になりかねん。それに、お前達の旅が終われば、久し振りにイヌアラシやネコマムシに会ってみたいしな」

「旦那達も喜ぶだろう。よろしく頼む!」

「ああキャプテン・ペドロ。船の改造、修繕はドンとわしに任せておけ! どんな海も越えられるようにする!」

 

 ノックス探検隊に船大工が加入か。

 これから新世界に行くらしいし、あの海は前半よりも異常な海域が多いらしいから、心強い味方になるだろう。オレとしても政府に追われる身となったペドロ達と、政府に古代兵器の設計図を狙われているトムさんが、力を合わせて身を守れるのは、少し安心出来る。

 重要なのは

 

「今回の件で写真や情報が集まれば、お前達は指名手配されるだろうが、聞いておきたいことがある」

「? なんだ?」

「お前達は海賊団か? それとも探検隊か?」

「!!?」

 

 膝の上のトリスタンが、ビクッと震えてもがきだした。

 心配せずとも、海賊と名乗ったからって追い出したり戦ったりはしない。海軍にあまり被害を与えたくない、だがペドロ達に死んで欲しくもない。だから、オレがどこまで手を貸せるのかの線引きを明確にしたいだけだ。

 

「(なんだ、トリスタンのあのジェスチャー……?)おれ達はまだ探検隊のつもりだが……世間からは海賊団と呼ばれるんじゃないか? 別に構わんが」

「そうか、お前達が海賊になる気がないなら別に良い。海賊旗を掲げないなら別に良い」

「(良かった……ロゼのあれは、もはや海賊アレルギーです)」

 

 

 トリスタンを撫でながら言う。

 助かった。オレは普通じゃないからな。九蛇(クジャ)海賊団はまだ無理だが、ハンコック達とかは大丈夫だし、ペドロ達なら海賊であったとしても大丈夫だと思うが、気軽に海賊を助けられない。タイガーさんの件以来は特に。

 

 今までも頭痛に腹痛、吐き気を催したりはしていたが、前にどうせもう悪だからと、医者というわけでも戦えない民間人というわけでもないオレが、自分で捕らえた、特に気に入ったわけでもない海賊の手当てをするという、海賊の被害に遭った人に殺されても文句が言えない極悪非道をしたら、血を吐いて倒れ、自分の血溜まりに沈み、慌てたトリスタンに回収された。

 トリスタンからは病気だと言われてしまったが、三つ子の魂百までと言うし、まあ仕方がない。タイガーさんと同じくらいには助けようと思わないと、体が受け付けない。タイガーさんを助けられなかったくせに、こんな奴は助けるのかと拒絶しているんだろう。

 

 

「そういえば、ぺコムズはもう月の獅子(スーロン)の制御が出来るようになったのか?」

「いや、まだだ……」

「そう落ち込むな。実はあの後思ったことがあってな。確か、ぺコムズは能力者だったよな?」

「ああ、カメカメの実のカメ人間だ」

 

 モデルは不明……と。

 カメといえば、硬い甲羅と長寿辺りが特徴。あまり強いイメージはないな。ライオンのミンクと合わさって、噛む力が強そうというくらい。まあこの際それはいい。

 

「悪魔の実についてはまだ解明されていないことも多いが、聞いた話では2つ、大きな力を発揮することがある。1つは〝覚醒〟、まあオレがそうだが、超人(パラミシア)の場合は……」

 

 適当に壁を冷蔵庫にでも変えて、また元に戻してみせる。

 

「こんな感じで周りに影響を与えたり、能力の範囲が広がったり……動物(ゾオン)の場合は、超人的なタフネスと回復力が得られるとか。そして、もう1つが〝暴走〟。悪魔の実には意志があるって話も聞くし、能力者に操りきれず能力が独り歩きし、勝手に体が動いたりするらしい。悪魔の実の能力と月の獅子(スーロン)の力、この異なる2つの要因があるから、上手く扱えないんじゃないか? 月の獅子(スーロン)中に悪魔の実の能力が暴走しているとか」

「ガオ……けど、たとえそうだとしても、そんなもんどうすれば……」

「そこでそれ」

 

 意識がないトムさんに付けられていた手錠を指差す。

 鍵も一緒に奪って持って来ておいて良かったな。なければ外すために、一度両手を切り落として、縫い合わせてくっつける羽目になる所だ。

 

「ガオ? 手錠がどうかしたか?」

「ただの手錠ではなく、これは海楼石の手錠だ」

 

 一度手錠を引き千切ったらしいから、能力者でもないのにこれを付けたんだろう。普通の手錠はオレでも腕力で壊せる。

 

「ほう、これがそうだったのか……海楼石はワノ国で採れると、昔聞いたことがある」

「海と同じエネルギーを発する鉱物で、能力者の力をドンと無効化し、並の技術では加工すらままならんと聞いたな」

 

 ペドロとトムさんが話に加わって来た。

 

「どちらもその通り。パイロブロインって成分が含まれていて、現在ワノ国でしか採れず、加工技術が一番高いのもワノ国。それでワノ国の黒炭オロチが足元を見て値段を釣り上げているから高いそうだ。その手錠も、能力者が触れると能力が使えず体の力が抜けるが、罪人が自力で歩ける程度に作られている」

「つまり、これでぺコムズの能力を封じた上で、まずは月の獅子(スーロン)だけの制御を試してみろ、ということか?」

「そういうことだ。色々試して海楼石の効果の穴を探すのとかも楽しいし、慣れれば能力者でも海楼石に触れた状態で覇気を使える。オレはやったことないけど、対能力者の戦闘にも使えるしな。手錠を掛けて腕を切り落とせば回収も出来る。民間人や海兵にやったらブッ飛ばすけど」

 

 海楼石に触れても能力で作ったものは消えない。少なくともオレの機械はそう。

 なら、能力によっては合鍵なんかを作って海楼石の手錠や檻を開けることも出来そうだ。クザンさんのヒエヒエの能力であれば、鍵穴に水を入れて凍らせて作ったりとか。元々あの人は海を凍らせることが出来るし、可能だろう。

 

「民間人や海兵でなければ良いのか……それじゃあ、ぺコムズのストッパーであるおれが持っておくか」

 

 そう言って、ペドロが海楼石の手錠とその鍵を懐にしまった。

 非能力者の方が能力者より使い勝手が良いだろうな。

 どの道放っておいても、能力者が戦闘中に海楼石の手錠を掛けられたら、敵なり味方なりに腕を切り落としてもらってでも外すだろ。死ぬよりマシだ。オレなら敵の攻撃を利用して切り落とす。後で縫い合わせてもらうなり、義手を作ればいい。

 

「暴走って言ってもよォ、ぺコムズの能力ってそんな危険か? カメだぜ? 攻撃に使ってるの見た事ねェよな?」

「防御の時は使っているが、普通に手で殴っているな」

「だが、甲羅の硬さはダイヤモンド並だ! ガオ!」

 

 ゼポとペドロの言葉に、ぺコムズが答える。

 ふむ……

 

「ダイヤモンドの硬さの甲羅に入ったぺコムズを人間砲弾として射出し、【エレクトロ】を使いながら敵に向かって突撃するというのはどうだ? 名付けて、【カタパルト・タートル】」

「「その手があったか」」

 

 ペドロとゼポが手を打つ。

 

「ガオ!?」

「たっはっ……!! っ!! ……!! 射出機(カタパルト)ならドンと任せておけ!! ……!! ……!!」

 

 何なら甲羅の上に誰か乗せて、一緒に突撃も出来るな。

 ミンク族には尻尾を回して飛べる奴もいるらしいし、というかペドロが出来るらしいから、帰りはそれで帰って来れば良い。

 

「そんなことしたら滅ぼすぞ!! ガオ!!」

 

 なんだか笑いのツボに入っているトムさんに、ぺコムズが掴みかかった。

 まだ怪我は治ってないから、程々にな?

 

「ぺコムズ……大丈夫だ、問題ない。だから安心してロケットのように飛べ」

「ペドロの兄貴!?」

 

 

 

 ノックス探検隊の旅の話を聞いたり、ぺコムズが人間砲弾として射出されてたまるかと、カメの能力を使った新しい技を編み出すのに付き合ったり、ペドロに新世界の島の永久指針(エターナルポース)を渡したり、ゼポにパンダウーマン美というパンダマンに似た奴がいたことを教えたり、トムさんの覇気を目覚めさせたりして過ごすこと数日。

 トムさんの傷口が塞がり抜糸が済み、療養中に父さんがコーティングしたノックス探検隊の船で魚人島に行くのについて行き、去年中に完成した遊園地の管理人となったデンさんの所に案内した。

 兄弟でも、2人は似ていない。デンさんはオオカミウオの人魚で、青白い長髪の上から黒いシルクハット、眼鏡をかけ両耳にピアス、細長い体形をしている。両腕に四葉の刺青、同じ所にトムさんには、太陽のような刺青が入っている。

 

「たっはっはっ!! 元気だったか、デン? しばらく見ねェ内に楽しげなのがドンと建っとる! お前が造ったのか?」

「ハハハ、うん。手伝ってもらったけどね。兄貴こそ色々あったみたいだけど、ドンと生きてて何よりだよ! ココロさんからの手紙で司法の島に連れて行かれたって聞いた時は肝を冷やしたけど、ドドンと元気そうだねェ……でもお弟子さんのフランキーって子が……」

「たっはっ、なァに、あいつはしぶとい! 初めて会った時も廃船島のガラクタで大砲造って(たくま)しく生きとった! わしが生きてたんだ、あいつもドドドンと大丈夫だ!」

「そのお弟子さんのこと、ドドドドンと信頼してるんだね!」

 

 ……この2人は、何度ドンドン言うんだろう。太鼓か?

 デンさんも普段からよく口癖で言っているが、2人揃うとより一層凄いな。

 

「まあ、オレも海に沈むのはともかく、列車に轢かれたくらいで死なないし、旅に出たらそのフランキーを探してみよう。水色の髪の海パン野郎だよな?」

「たっはっ、そう、海パン野郎だ! ドドドドドンと恩に着る! ……! ……!」

「海パン野郎がツボに入ったみたいだねェ……それにしても、なんか悪いね? 遊園地のアトラクションの構造を教えてもらったりした上、人探しまで……」

「遊園地の件はこっちから頼んだことだし、海パン野郎探しもついでだから、気にすることはない」

「でも、旅の仲間の船大工のお誘いも断っちゃったし……そうだ! まだ船なかったよね? 僕にドドドドドドンと任せてくれないかい?」

「良いのか? 凄く助かる。ドドドドドドドンとデカイ機帆船が良い」

 

 どんどん〝ド〟が増えていき、どこまで増えるんだろうとか考えていたら、嬉しい申し出を受けた。

 シャボンディでは、そんなバカデカイ船が造れるかと断られていたんだ。

 

「ああ、ドドドドドドドドンと任せてよ!!」

「動力の熱機関は当てがある。完成したら地上から持って来て、オレも船造りをやるよ。その方が愛着も湧く」

 

 ここの遊園地を完成させた後に、Dr.ベガパンクの故郷の冬島、未来国バルジモアを島ごと温める未完成だった土暖房システムを、オレの作った機械を自動操縦(オートパイロット)にして労働力として貸し、完成させた代わりに、船の動力を作ってもらえることになった。そっちに体力を吸われ過ぎて、干乾(ひから)びてミイラになるところだったが。寝ながら食事が出来るようになっていて良かった。

 ようやく船が手に入るのか。最悪別の島の造船所まで飛んで行き、作ってもらおうかとも考えていたので、渡りに船だ。




 トム(生きていれば新世界編77歳)、ノックス探検隊に加入
 ノックス探検隊がロゼに教えられ、歴史の本文(ポーネグリフ)を探すのは罪と知り、隠れて探しても結局政府と敵対するあたり、歴史の強制力みたいですね。別にそんなつもりはないんですが。
 ノックス探検隊の原作との違いは、今まで手配されていなかったので、そこまで過酷な旅ではなく、原作ではこの年に旅を続けられずぺコムズに率いられ離れた者がいますがこの作品では出ず、更に伝説の船大工が増えたことですね。トムは片手で大きな船を持ち上げられる程の怪力だし、戦力にもなりそう。コンゴウフグって皮膚から弱い粘液毒を出すそうです。魚人空手や魚人柔術は使えるだろうか? 相撲が一番似合うかな。ペットがヨコヅナだし。

 スパンダム(新世界編41歳)
 彼結構丈夫ですね。フランキーの戦艦に誤射られても2,3ページでピンピンしてる。ギャグ補正込みとはいえ道力9なのに。
 今回の本文で道力5と書いていたのは、まだ過去なので、『CP-9の長官で9なら、CP-5時代は5でいいや』という適当なもの。

 悪魔の実の暴走
 エニエス・ロビー編でチョッパーがランブルボールを3つ食べたら巨大化し、理性を失った変形。新世界編で【怪物強化(モンスターポイント)】になった。
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