機械の皇帝   作:赤髪道化

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 年表で見て初めて知りましたが、3つの神の名を持つ古代兵器の内、2つについての出来事がこの年に起こってるんですね。もしかしたら今の所情報が出ていないウラヌスも、実はこの年に何か起こっているのかもしれない。
 今回で新世界編の10年前の年は終わり。


〝世界を滅ぼす兵器〟

「構わない」

 

 先程、パンダマンから電伝虫に電話がかかってきた。

 番号を教えた覚えはなかった、というか持ってなさそうだったから無駄と思って教えなかったんだが、ペドロ達から聞いたらしい。彼らにはトムさんが受話器を作っていたから教えていた。

 そして、赤い土の大陸(レッドライン)を挟んだ反対側の赤い港(レッドポート)まで飛んで行き、約9年ぶりに再会を果たした。見た目が全然変わってないな。

 そして、一緒にいた母娘、スカーレットとレベッカの保護を頼まれたので、承諾した。

 

「あの……頼って来たのはこちらだけど、良いの? まだ何の事情も話していないのに……」

「経験上わかる。奴隷にされてたとか、あらぬ罪を着せられたとか……何か危ない目にあったんだろ? 手配書で見た顔ではないし、その細腕、荒事とは無縁そうだ。むしろどこか仕草に品がある。そうだな……貴族の生まれで、お金目当てで近付いてきた執事かなんかに、家も財産も奪われ、挙句殺されそうになったところ、一家で逃走してきたといった感じか?」

 

 船旅に疲れて眠ったのだろうレベッカを抱え、困惑した様子のスカーレット夫人にそう答える。

 

「あっ、少し惜しいササ」

「たぶん勘違いしてるみたいだから言っておきますけど、私とこのパンダマンは、そういう関係ではまったくありませんからね?」

 

 なんだ。レベッカはパンダ顔じゃなくて母親似だなと思っていたが、パンダマンがパパンダマンになったわけではないのか。

 

 その後、事情を話したい様子だったので聞いてみた。

 

「なるほど、事情はわかった。変わらず構わない。〝天夜叉〟もオレのことなんて知らないだろうし、あなた達のことがバレないよう、オレからドンキホーテ海賊団に近付くこともしない」

 

 正直今までで一番気が楽だ。バレたら困る秘密なんて、生まれた時からあった。

 不特定多数の人間が欲しがりそうな情報であるしらほしのことに比べれば、気を付けなくてはいけない範囲が狭くて助かる。何より、見つかっても海賊と敵対するだけで済む。いつものことだ。

 

「……たぶん、ドフラミンゴは私達のことを、そこまで探さないと思うわ」

「何故だ? 実際に追手に狙われたんだろう?」

「おそらくは、私が反ドフラミンゴの旗印になることを恐れてね……でも、国の有事に逃げ出した元王女のところなんかに、人が集まったりはしないから……」

 

 起こった出来事を考えれば当たり前だが、あまり良い精神状態じゃなさそうだな。

 

「きついことを言うが、あなたが残っていたところで、何も変わらない。一国の軍隊を3人で滅ぼす戦力を相手に、あなたがいて何になる?」

「だけど……」

「とっくの昔に王族としてのあなたはもう死んでいるんだ。だったらあなたは、母親として出来ることだけ考えていればいい。他の人間の前はいざ知らず、娘の前でもそんな顔をしているつもりか? オレの親も追われる身だ。それで不便なこともあったかもしれんが、2人共よく笑っている」

「親がそういう状況で、あなたは、どうなの……?」

「ふははっ。あの2人が親で、オレは幸せだと胸を張って言える」

「ありがとう……少し、気が楽になったわ」

 

 そう言って彼女が微笑んだところで、ぐ~と、まるで誰かの腹の虫でも鳴ったような、小さくかわいい音が響いた。

 レベッカかと思ったが、違うらしい。

 そのレベッカを抱えた目の前のスカーレット夫人が、頬を染め、プルプルと震えながら下を向いていた。

 

「さてと……話も終わったし、オレの家に案内する。乗ってくれ。腹も減ったし、落とさないよう気を付けながら、急いでいく」

 

 3人が乗って来た小さい船を、能力で変化させながら言う。

 

 

「えっ? いや今のって」

「パンダマン、そういえばお前と同じようにパンダの顔をした女に会ったんだが」

「美人だったササ!?」

 

 話を逸らすと、飛び付いて来た。

 その間にスカーレット夫人が足早に【ライズ・ファルコン】の背に乗る。

 安心しろ、飛んでしまえば腹の音なんて風の音で聞こえないから。

 だがそれにしても、返答に困ることを聞かれた。パンダウーマン美が美人かどうかの見分けなんて、パンダマンと同じに見えるオレにはつかん。

 

「手先が器用で、よく気が利く人だ」

「スタイルは?」

「良い」

「紹介してくれササ!」

「いいぞ」

 

 それはいいが、お前は大丈夫なのか? すごく冷めた目で見られているぞ?

 これだから男は……みたいな。すまない、これが男なんだ。

 それに、パンダマンの境遇を思えば、この反応は仕方なくないか? 自分と似た見た目の者がいない中で見つかった異性。運命的だな。

 

「それでは飛ぶ。自信がなかったら座って乗るように。まあ、落ちてもオレが拾うから」

 

 そして移動途中、起きたレベッカがはしゃいだので、スカーレット夫人は【ライズ・ファルコン】から落ちた。オレが抱えて飛んだ方が早く着いたかもしれない。

 まあそれでも、落下中娘を離さず自分の体を下にしていたのは、流石と言っておこう。おかげで拾いやすかった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 パンダマンから電伝虫へ連絡があった日から数週間が経過した。

 最初は意外にも、いや、当たり前と言うべきか。スカーレットのオレの両親への印象は最悪だった。

 

 理由は単純にして明快、海賊だったから。海賊嫌いのオレに、それを責める資格は米粒程もありはしないな。

 父さんは普通に顔でバレた。元とはいえ世界政府加盟国の王族が、海賊王の船員(クルー)、ましてや副船長の顔と名前を頭に入れていないわけがなかったな。母さんは、父さんがバレたなら自分だけ隠しても仕方ないと、自分から打ち明けた。

 といっても、家に帰る前の会話もあって、2人の子であるオレに配慮したのか、罵倒したりはしなかったが。ただ直接話さず、会話はすべてオレを介して(おこな)っていた。

 

 それに対してオレの両親はどこ吹く風。普段通りの自然体で対応。

 海賊なんて嫌われていて当たり前と、気にもしていなかった。

 どころか父さんは口説いていた。『確かに私はお尋ね者だが、可憐な美女を口説かないなど、それこそ失礼を通り越して罪だとは思わないかね?』とは父さんの言葉。別にそんなことで罪になるとは思わんが、流石の貫禄である。

 

 今では母さんとはママ友で、父さんのあれも華麗にスルーするようになった。最初は『ふしだらなっ!』と言っていたが、順応したようだ。

 レベッカの方は、たまにオレが魚人島で船を作る時について来て、最近引きこもり気味のしらほしと遊んでいる。同い年の友達はお互い初めてだったようだ。

 パンダマンは……パンダウーマン美と乳繰り合っているんじゃないかな。

 

 そしてノックス探検隊。彼らは手配されてしまった。まあ、時間の問題だっただろうが。彼らには最悪ゾウという発見されにくい避難場所がある。だから大丈夫なはず……。

 トムさんは手配されていない。おそらく古代兵器の情報の拡散を防ぎたいのだろう。そもそも司法の島に連行されたことになっている。隠蔽する方向になったようだ。

 

 

「選べ。まだオレと戦うか、オレのいない安全な檻の中へ行くか……」

「あ、あんたがいないなら、どこでもいい……!」

 

 そして現在、例によって例のごとく、しかし回数は減ってきている、海賊との戦闘を終えた。

 掴んだ髪を離し、後ろ手に手錠をかける。これで全員か。

 いつもと違うのは、子電伝虫にセンゴクさんから連絡が来て、サカズキさんがシャボンディに出張って来たので、周りに被害を出さないよう上手く壁を作ってくれと言われたことだった。

 あの人のマグマを防ぐ防御壁を作って戦闘終了を待つ……なんて面倒なことをするより、オレが先に目当ての海賊を潰した方がシャボンディの住人にとって安全と判断し、実行した。

 

「フン……無駄足になったのう」

「どの道あんたがここに来た以上、こいつらに未来はなかっただろうし、懸賞金はいらないから大目に見てくれ。それに、まだこいつらを連れて行くっていう役目があるだろ」

「懸賞金なんぞどうでもええわい。それに、連行はわしが直接やることじゃありゃあせん」

 

 後から来たサカズキさんに、自分の分がないじゃないかと愚痴られる。

 

「それにしてもお前、妙な連中に囲まれちょるのう。どんな気分じゃ? 今まで散々化物呼ばわりして迫害してきた連中が、手の平返して自分を称えちょるというのは」

「騙してるみたいで複雑だけど、楽しそうだし良いんじゃないか? 危ないから、今までのようにオレの戦場から離れるという正しい判断をして欲しいけど」

 

 【RR(レイド・ラプターズ)】を何体か配置した向こう側に、住民達が野次馬に来ている。良い意味、というより、オレを売り飛ばそうとしない、本来の意味でのオレのファンだ。

 今まで気付かれないよう避難させていたのを、普通に避難させて、血生臭く敵を倒していたのを止めて、【RR(レイド・ラプターズ)】を敵を逃がさん包囲網兼周りの人の盾にして、子供にも見せられる戦い方を心掛けている。

 

「フッ、安心したわい。わしの睨んだ通り、お前はわしよりイカレちょる。誰に嫌われようが誰に好かれようが、お前は海賊を狩り続けるじゃろうな」

「……オレがイカレてて安心するとか、あんたの方こそ頭は大丈夫か?」

 

 というか少し傷付いた。

 オレ、この人にイカレていると思われていたのか……こっちは気に入らない所はあれど、シンパシーも感じていたというのに。

 

「まさかいつまで経っても海賊を殺さないから、イカレているとか言っているんじゃないよな?」

「正確ではないが、まあ、多くは違わんのう……まず最初にじゃロゼ。わしがお前を同類じゃ思うたのは、お前が毎回海賊団ごと潰している所じゃ。賞金稼ぎ(バウンティハンター)は数いるが、そこまでする、しかも3つのガキがやっていたのはお前だけじゃけェ」

 

 多くは違わないのか……殺してイカレていると言われるのはわかるが、殺さずイカレていると言われるのは、何か納得がいかないな。

 

「何を当たり前のことを……取り逃がして、そいつがどこかでまた悪さして、その時一体誰が責任を取れるって言うんだ」

賞金稼ぎ(バウンティハンター)が、誰も責任なんぞ取ろうとせんわ。逃がした奴らが悪さして賞金が懸れば狙う、そういう連中が普通じゃ。まあ単純に実力不足でそこまで出来んっちゅうこともあるが」

「オレは海賊を家畜にして酪農をする気などない」

 

 それじゃあ海賊の数は減らないだろ。

 

「そしてじゃ。相手を殺さず自分も死なず、倒して制する。言うは易いが行うは難い。お前は覇気使い。挙句の果てにその若さで悪魔の実の能力が覚醒。強い力を持つ者は、殺さないつもりでも殺さない方が難しい」

「実際、危ないこともあったな」

 

 ジャッジが死にかけた。

 手動であれでは、自動操縦(オートパイロット)で戦闘なんてとてもさせられない。だがオレの手動で複数同時操作にも限度があるので、戦力強化のために避けては通れない。

 

「それで始めたあの修行が極めつけにイカレちょる」

「【RR(レイド・ラプターズ)】との戦闘のことか? 別に自分で作った機械と戦っても良いじゃないか」

「そこで『自分を殺せ』と命じるのがおかしい」

「殺さない方法と殺す方法は表裏一体。そして、それは殺されない方法にも繋がる。自分の体でどんな攻撃が死にかけて、どんな攻撃なら大丈夫か、を体験出来て、【RR(レイド・ラプターズ)】の自動操縦(オートパイロット)の教育にもなる。殺す攻撃を覚えさせなければ、『殺さず倒せ』という命令が出来ん。色んな効果を見込める、とても効率が良い修行じゃないか」

 

 あいつらは機械、自動操縦(オートパイロット)にすればオレにも攻撃の先読みなんて出来ず、目や耳で反応するしかない。見聞色に頼りがちなオレにはちょうどいい。

 

「じゃあ、お前はその修行を人に勧めるか?」

「何? そんなわけないだろ。死んだらどうする」

 

 この修行、父さんとの修行より死の危険性が高いのに。

 父さんはこれ以上やったら死ぬってところで止めてくれるけど、オレの【RR(レイド・ラプターズ)】との修行は『オレを殺せ』と命じているから、オレが命令を撤回するか消すかするまで止まらない。

 今の【RR(レイド・ラプターズ)】は、どんな攻撃で人が死ぬのかわかっていない子供。まだ『殺さず倒せ』と命じても、殺す攻撃をしてくることがある教育中の身だ。

 

「じゃからお前はイカレちょるんじゃ。そしてその修行の成果が、死なないが死んだ方がマシかもしれん痛みを与える攻撃の取得か。割に合っちょらんのう」

 

 何か呆れられているな。

 死んだ方がマシかもしれん攻撃は、先程の海賊達にもやった。もう連行されてここにはいないけど。

 

「リスクなしに自分より強く経験もある奴らを越えたいなんて、ムシが良い話だろ。というか、海賊を殲滅して、用済みになった天竜人も皆殺しにして、最後に法を破った自分自身を殺せば悪は消える……なんて過激過ぎる発想を持っている人に言われるのは、納得がいかない」

「何度も言うちょろうが。人間正しくなけりゃあ生きる価値なしと」

 

 誰であろうと、自分自身も例外ではない、か……。

 

「人口が激減しそうだ……」

「あそこまでするなら、わしももう何も言わん。文句があるなら、今日のようにわしより早く、お前のやり方で終わらせてみせい」

「……ふははっ、そうさせてもらう」

 

 他の2人がいないからかもしれないが、この人が譲歩してくれるとは。天変地異の前触れか?

 そう、本人に知られたら怒りそうな失礼なことを考えていると、目立つ長身の男が、素っ転ぶのが目の端に映った。結構派手に転んだのに音が聞こえない。というか気配もしない。数年前から見なくなった光景だな。

 しかし、どういうことだ? このまま話しかけたら、最悪サカズキさんに敵前逃亡としてあの人……

 

「そういえばサカズキさん。最近オレの友人のサッカー少女が、サカズキさんの家の近くでリフティングしながら散歩しているんだけど、あんたの盆栽ってどこに置いてるんだ?」

「蹴鞠遊びは人の通らん広い場所でやらんか。軽く叱りつけてやらにゃあ、ロクな大人にならんけェ、見かけたらちぃとお灸を据えるとするか(無事でいてくれェ! わしのアカマツゥッ!!)」

 

 そう言って、サカズキさんは表面上クールに去って行った。

 後で、もう散歩しながらリフティングをするなとドミノに言いに行こう。でないとマグマ親父が噴火する。

 さてと

 

「ロシナンテさん、あんたは戦死したんじゃなかったのか?」

 

 転んだと思っていたら、いつの間にか服に火まで()いて、地面を転がって消していた男、ロシナンテさんに手を差し出しながら話しかけた。

 

「? ! ?」

 

 何か口をパクパクさせているが、声が聞こえてこない。

 

「【(カーム)】を解除してから喋ったらどうだ?」

「あっ、忘れてた……」

 

 まあ、それどころじゃなかったんだろう。

 オレの手を取って立ち上がる。

 

「ありがと。それで……お前誰だ? 能力のこととか知ってるみてェだが」

「はあ? ……ああ、ゴーグルをしているからか?」

 

 ゴーグルを取って、顔を向ける。

 

「ああ……あ~? 悪ィ、やっぱ誰?」

「……ロゼ」

「ロ、ロ……ロー?」

「誰だ!? ロゼだと言っているだろうが!」

 

 ……もしかして、記憶がないのか? ありうる。死んでいなかったにしても、死にかけの傷を負ったり、ショックを受ければ飛ぶことは結構ある。オレが今まで倒した連中にも、記憶がなくなったのはいるし、スカーレットとレベッカも、夫であり父のことを忘れているようだった。

 

『プルルルル……プルルルル……』

 

 そこまで考えた時、子電伝虫に連絡が着た。

 このタイミング……センゴクさんだな。丁度良い、この人にも早く教えよう。息子のように想っていたと、涙を流し落ち込んでいたし、喜ぶだろう。

 

『ガチャ』

「今オレの目の前に、死んだはずの人間がいる。誰だと思う?」

『? いきなり何を……シナン、何故お前がその島にいる?』

 

 シナン? ……ロシナンテの真ん中の三文字か。

 

「センゴクさん?」

 

 突然の呼称を普通に受け入れているロシナンテさん。

 何故そんな呼び方を……生きているのを隠している? 通信の盗聴を警戒しているのか?

 

「……もしかして、知ってた?」

『……ああ。そいつを今まで隠していたのは私だ』

「あれ演技だったのか!? オレの涙を返せ!」

 

 秘密を抱えているオレに言う資格はないかもしれんが、それでも文句ぐらい言いたい。

 

『嘘はついていない。お前とはもう会えなくなった……と言ったのだ』

「子供のオレに気を遣った婉曲表現だとばかり思っていた!」

「ガープの修行に笑ってついていくお前を見て、私は子供扱いなど無意味と悟った」

 

 この〝仏〟、まったく悪びれない。

 というか、『嘘はついていない』って……演技はしてたってことじゃないか。

 

『とりあえず、事情を話すから、私の部屋に来い。お前の能力は使うな。最悪墜落する』

「墜落って……【月歩(ゲッポウ)】で走って来いってことか?」

『シナンに聞け……ガチャ』

 

 通話が終了した。

 あの努めて平静を装っているかのような素っ気ない態度……またオレは余計なことに首を突っ込んでしまったようだ。誠に遺憾である。

 

「それでシナンさん。どうやってマリンフォードに行くんだ?」

「オレの移動手段を使う。ついて来てくれ」

 

 そう言った、ロシナンテさん改め、シナンさんの後を歩く。

 それにしてもシナンか……本名から取っているが、何故そんな呼称にしたのか、とてもわかりやすいな。

 しばらく歩いた先にいたのは……

 

「超フラミンゴ? 北の海(ノースブルー)の」

「ああ。相棒のミンゴだ」

フッフッフ、待ちくたびれたぞ……ロシー(グァッグァ)

 

 水辺で泳いでいる巨大なフラミンゴがいた。何故かサングラスをかけている。

 

「こいつで直接元帥の部屋の窓から入れってことだろう」

「何故それで今までバレない……」

「普段はオレから会いに行かねェからな。じゃあ乗ってくれ、ロー」

「だから誰だよ……ロゼだ」

 

 2人で背に乗り、飛んで行った。

 

 そして海軍本部の元帥室の窓から入る……ギリッギリだな。ミンゴの背から降りる。

 室内の壁に掛けられた額縁には、「君臨する正義」と書かれ、扉の前に開けられないためだろう机やらソファーやらが置かれていた。

 

「シナン、音を消してくれ」

 

 窓とカーテンを閉めながら言うゼンゴクさん。

 

「【サイレント】」

 

 パチン!

 

 シナンさんが指をならし、部屋を覆う防音壁を張る。これで内外の音は遮断された。

 

「さて、まずはサカズキの件、ご苦労だった。そして……すまんかった!!」

 

 勢い良く頭を下げられた。

 

「いいよ。腹は立ったけど、必要なことだったんだろ?」

「いや、見聞色の強いお前をどうやって誤魔化そうかと思っていたら、普通に信じられて涙を流されたから、つい演技に熱が……」

「殴りたい」

 

 オレは『つい』で騙されたのか……確かにオレはよく疑うが、流石に人の生き死にに関わる知らせを、わざわざ見聞色で真偽を確かめるほど疑り深くはない。

 

「はあ~……まあいい。何故死んだことにしていたかも、別に言わなくていい。シナンさんのことは黙っていれば良いんだな?」

「お前のその踏み込み過ぎない姿勢は私も買っているが、今回に限っては構わない。元々、一部は告げるつもりだった。お前も無関係ではない(こいつ自身は踏み込み過ぎないようにしているのに、本人も知らぬ内にドップリ浸かっているな……不憫な奴……)」

 

 そう気になる前置きをしながら、お茶とお茶請けを用意するセンゴクさん。

 全員着席し、テーブルの上のお茶を飲みながら、今までのことを話された。

 ロシナンテさんが〝天夜叉〟の実の弟で、ドンキホーテ海賊団に潜入し、最高幹部コラソンだったこと。

 3年前、オペオペの実の取引があった日にスパイ行為がバレて殺されかけたが、記憶を失ったものの辛くも生き延び、死んだことにして、以降シナンと名を変えたこと。

 

「〝天夜叉〟の弟だったのか。兄を止めるためにねェ……そして、土壇場で能力を覚醒させ、銃弾が致命傷になる前に止めた、か……」

 

 音を消す能力が覚醒し、周りの物体の動きを止める能力が増えたか……音を消すだけよりも使い勝手は良さそうだ。

 凪は本来無音ではなく無風状態。だからか?

 オレに能力を使うなと言ったのは、オレの機械が止められるかもしれないからか。ナギナギの能力を使わなければ良いだけだが、この人の場合、何かの拍子で使ってしまったりしそうだからな……。

 そしてミンゴは動物だからその心配はないと。

 

「何かそうらしいな。覚えちゃいねェが……」

「元天竜人というのは驚かんのか?」

「いや、驚きを通り越して……ガープさんだなァって……」

 

 元天竜人というのは、実はスカーレットからもそうかもしれないと聞いていた。

 空白の百年後、ドンキホーテ一族が天竜人となった後、リク王家が誕生したと伝わっていると。この情報を知っていることも、殺されかけた理由かもな。

 

 20年以上前、ガープさんが天竜人に拳骨をかまし、説教をした結果、数年後マリージョアを降りたのが〝天夜叉〟の父、ホーミング聖らしい。

 

「それで、死んだことにしてドンキホーテ海賊団を探ってでもいるのか?」

 

 あまり驚いていないことに疑問を持たれても困るので、話を逸らす。

 

「いや、因縁深いドフラミンゴに下手に関わらせ、何かのきっかけで記憶が戻り、パニックになって見つかる可能性もあるので、別のことをしてもらっていた」

 

 ぼかしたな。これには突っ込まないでおこう。

 

「それで、〝天夜叉〟が七武海になれたのは、出生関係で何か不都合な情報でも握られている、とかかな?」

「(……見聞色は使われていない。つまりたまたまか……? 恐ろしい)……まあ、そんなところだ」

「だからこそ、何故海軍は動かないんだ? 要するに天竜人にとっては邪魔な存在なんだろう? 具体的に言えばバスターコール。世界のすべてを恨んでいるらしいドフラミンゴを、状況が少し似ているオハラのように消したりはしないのか? ドレスローザごと消して欲しいわけではなく、むしろやって欲しくないから聞きたいんだけど」

 

 本当に。不安で仕方がない。

 理由として、『スカーレットとレベッカの故郷だから』、『ドレスローザの国民が攻撃される(いわ)れはない』、というのは当然あるが、まだオレはドレスローザに一回も行っていない。

 最後に会った時、ヴェルゴさんに『ドレスローザは自然豊かな国だから、きっと君も気に入るだろう。是非行ってみたまえ』と教えてもらった。消されるのはとても困る。

 

「あの時とは似てはいても状況が違う。理由は2つ。1つは時期だ」

「時期? 大海賊時代開始すぐだったから、機先を制したかったとか?」

「そういう面もあるが、もっと単純だ。あの年に何があった?」

 

 何って、オレの父さんが人間屋(ヒューマンショップ)に身売りして、爆破して帰って来た……というのはセンゴクさんも知らないことだろうし、もっと、当時2歳のオレでも知っているような……

 

「なるほど。〝金獅子〟のインペルダウン脱獄があったな。確か、あんたが〝金獅子〟を追っていたんだよな?」

「その通りだ。奴は、オハラが研究していた世界を滅ぼす兵器、それを手に入れ、世界を支配する計画を立てていた。その奴があのタイミングで脱獄……黙って余生を過ごすつもりとは思えん。何としてもシキが兵器を手にすることだけは阻止する必要があった」

 

 政府の思惑はともかく、それが、この人がオハラへのバスターコールを決断した理由か。

 

「どこにいるかわからない〝金獅子〟を探すより、何の関係もなかったオハラの住民を消した方が早いと?」

「1人でも何か知っていれば、そこから世界が滅ぶ危険があった。情報を聞き出す手段はいくらでもある。お前なら理解しているはずだ。見聞色が並外れたお前なら。だからお前は必要以上に踏み込もうとしない。覇気使いでもない学者や住民達に、心の声を聞く見聞色に抵抗する術などない。たとえシキにその力がなくとも、奴の仲間に1人でもいれば終わりだ」

 

 見聞色以外にも、悪魔の実の能力や、誰でも出来る暴力で脅すという手段がある。

 

「だから民間人ごと? お前らを利用する凶悪な海賊がいるから、でもそいつがどこにいるかはわからないから、危険な情報を持っているかもしれない手軽に殺せるお前らが死ねと?」

「オハラの件、すべての責は当時大将として指揮した私にある」

 

 この人は揺るがない。

 オレの言うことなんて、全部すでに考えて、その末の行動だったんだろう。

 

「はあ……すまん、もう終わってしまったことに。理屈では理解出来る。そして、理屈で理解させられた以上、あんたを言い負かす言葉をオレは持たない。だが感情では納得出来ない。無関係なオレが納得出来ない以上、死んだ住民達も納得出来ないだろうし、生き残った当時8歳の子供にとっては、終わったことと流せないんじゃないか?」

「たとえそうだとしても、兵器の復活は何としても阻止せねばならん」

 

 つまり、〝悪魔の子〟ニコ・ロビンが、古代兵器を復活させるような奴でなければ、覇気を目覚めさせて鍛え、〝金獅子〟や兵器を求める者から逃げられるようになった方が都合が良いな。

 もし鍛えた後に心変わりして、古代兵器を求めるようなことがあれば、オレがその企みを潰せば良し。

 

「そういえば、さっきからシナンさんが静かだな。【(カーム)】でも使った?」

「話に入り込める空気じゃなかったんだよ……センゴクさん。さっき言ってたロー……ゼがガープ中将とやった修行ってどんなの何です?」

 

 何度オレの名前を間違えそうになれば覚えてくれるのかな? たった2文字だぞ?

 

「新兵に自分達を狙撃の的にして撃たせ、銃弾が飛び交う中での組手だ。ちなみに、こいつは機械の能力を使用禁止という条件付きでだ」

 

 センゴクさんが懐かしの修行内容を答えた。

 ガープさんは飽きっぽいから修行内容がコロコロ変わるが、あれは新鮮だった。

 能力の鍛え方なんてガープさんは教えられず、オレが自分で見つけるしかないから、覇気と身体能力の育成がメイン。新兵の狙撃だからミスショットもあり、見聞色で先読みした通りに飛んで来るとは限らない上、ガープさんを狙った流れ弾が飛んで来る可能性もあり。中々スリリングだった。

 思えば、あれが原因でダディさんはオレへの発砲に躊躇いがなくなったのかもしれない。

 

「……ドン引きです」

「どっちに?」

「当然2人共に、だ」

「さて、話を戻すぞ。ドレスローザにバスターコールをしない理由、もう1つはドフラミンゴを倒して終わりではないからだ」

「どういうことだ?」

「奴は裏でカイドウと繋がっている」

「真っ黒じゃないか……三大勢力の均衡はどうした」

 

 〝百獣〟の異名を持つ、一対一(サシ)なら最強と言われる四皇じゃないか。

 

「ドフラミンゴは、自分を倒さないことが三大勢力の均衡を保つことになるという状況を作り出したのだ。話し合いが通じるような男ではないカイドウに、どうやって取り入ったのか……狡猾な男だ。そしてお前に関係があるのはここだ」

「何? どんな内容だ?」

 

 どこにオレが入り込む余地があるのだろう? どちらとも接触はないはずだが。

 

「ドフラミンゴがカイドウに、お前がカイドウの縄張りに入ってきたら、生け捕って渡してくれと言っていたらしい」

「はあ!? オレは〝天夜叉〟と会ったことなどないぞ!?」

 

 心当たりはあるが、スカーレットとレベッカのことが原因なら、何故自分の部下を送って来ない?

 狙われているなら仕方がない。新世界に行くのは、四皇と戦える位強くなってからにしよう。それまでは前半や4つの海を訪れてみるか。

 

「だろうな。お前と接触する機会などなかったはずだ。気になる様なら、お前も海軍に入隊すれば、安全だと思うが」

「市民の安全を守るべき海軍に、我が身可愛さに入隊なんて資質なしじゃないか?」

「入る気はないか……まあわかっていたことだ。〝機甲〟が気に入らんようなので、別の異名まで考えていたんだが(戦闘力だけでなく、七武海2人に加盟国の2か国との繋がり。欲しい人材ではあるが、海軍に入れずとも、こいつは変わらん。無理に入れる必要を感じん)」

「へ~、なんて言うんです?」

 

 シナンさんが聞いた。

 

「海賊を討つ破魔の色、銀だ。入隊するなら教えるが?」

「海軍は好きだけど、他にやりたいことがあるから」

 

 (シルバー)だと……? 実は血筋のことがバレていて、泳がされているんじゃないだろうな?

 だが、それにしてはサカズキさんの態度が……あの人は、悪と判断すれば仲良くなっていても粛清するタイプ。その後涙の1つでも流してくれるなら御の字だろう。

 

「そうか……まあ心配するな。ヴェルゴ大佐がドフラミンゴを見張っている」

「ヴェルゴさんが? そういえば因縁があるのだったな。ドンキホーテ海賊団が主催する闇オークションを見つけ出して、見事ゴルゴルの実の奪取に成功して食べたんだよな?」

 

 ヴェルゴさんにドレスローザに行くことを勧められたが、まだまだ行けそうにないな。残念だ。

 

「ああ。彼はドレスローザの件で、一番近くの支部にいたのに止められなかったと、責任を感じていてな。これ以上奴の好きにはさせんと、進んで見張り役を買って出てくれた。ドフラミンゴに話を付ける時は自分が行くと」

「あの人は真面目だからな。〝鬼竹(きちく)〟なんてあまり音が良くない異名が付いているが、あの戦闘力の高さ、破竹の勢いから〝破竹のヴェルゴ〟の方が相応しい」

「正に然り。はみ出し者が多い海軍G-5支部において、例外的に市民からの信頼も厚く、模範的な海兵だ。ゴルゴルの実という厄介極まりない能力をドフラミンゴから奪取出来たのは僥倖。彼であれば、人格的にも能力的にも安心して任せられる。ドフラミンゴへの切り札だ」

「新兵時代とはいえ、オレがヴェルゴさんに勝てたのは運が良かった、これに尽きる。あの武装色の全身硬化に対して、オレは破る術を持ち合わせていなかった。小細工を弄しなんとか勝てた。いや、優しいヴェルゴさんが勝ちを譲ってくれたのかもしれない」

 

 オレに出来たのは口で挑発したり、足を引っかけて転ばせたり、地面を蹴り砕いて埋めようとするくらいだった。硬化が切れた瞬間攻撃を叩き込むことでなんとか勝てた。

 

「お前にしては少々加減を知らん攻撃をしたようだな。まるで海賊を相手にしているような」

「言い訳はしない。ただオレが未熟だった」

 

 一撃入れた瞬間、猛烈に嫌な予感がした。まるで濃密な殺気でも向けられた時のような。

 それに驚いて、つい手に力が入り過ぎて、多めに殴ってしまった。修行不足だ。

 

「な、何故か知らんが悪寒が……?」

「〝天夜叉〟の、記憶を失った原因であるところの兄の話をしたからじゃないか?」

「かもしれんな。記憶が戻るに越したことはないが、ドレスローザ乗っ取りが既に終わった以上、あまり急いでも仕方ない。焦らずいけ」

「はい……」

 

 用も済んだので、窓から飛んで帰った。

 

 

「お帰りなさ~い、お兄様」

「ただいま、レベッカ」

 

 トテトテ駆け寄って来たレベッカの頭を撫でる。

 よくわからんが、手袋越しに頭を撫でられると落ち着くらしい。

 初めて言われた時は、『直接私に触らないで』とでも言われているような錯覚に陥りそうになったが、そういうわけではなく本当に落ち着くようだ。不思議なことを言う。

 

「ロゼをお兄様と呼んで懐いてるレベッカとっても可愛い……シャッキーさん。あの子レベッカの兄にくれませんか? ロゼが息子なのも、それはそれで良いです」

「アハハ……ダメ。ぶっ飛ばすわよ?」

 

 母さんとスカーレットが不穏な話をしていた。

 

「スカーレットに不満はないけど、オレの母も父も1人ずついれば良い。他には不要だ。レベッカの兄になることには何の異論もないが」

 

 レベッカを抱えて近付きながらそう言った。

 

「お兄様はお兄様だよ? また後でご本読んで~」

「はいはい」

「ふふふ……ごめんね、スカーレット。この子私のこと大好きだから……ちょっと貸してあげるだけよ?」

「母さん!?」

 

 突然裏切られた。貸し出された。

 ショックだ……スカーレットとレベッカの生活費を出しているのはオレなのに。子供に養われて良いのか? 前に父さん達ではなくオレが出しているって言ったら、『一回り下の子に養われてた……!?』と落ち込み、『借りてるだけ、後で返すわ!』と復活していた。

 

「というか、妹が増えるのは良いんですか? 確か1人いるんですよね? 妹同然の子が」

「あ、ああ……そりゃあ、妹や弟って後から増えるものだから」

 

 トリスタンの質問に答える。

 まだダメージが抜けていないが。

 

 その後、レベッカに本を読んだりして、家で穏やかな時を過ごすことしばらく、ドミノに注意するつもりだったことを思い出し、マリンフォードまで飛んで行くと、時既に遅し。マグマが噴火した後だったようだ。

 謝ると、『この裏切り者~ッ!』と怒られた。

 すまない。完全に忘れていた。




 ロシナンテ生存
 土壇場でナギナギの能力を覚醒させ、致命傷になる前に銃弾を停止し、自力で生存。
 たしか原作では死んですぐ、おつるの軍艦が来たと生死確認をせずに出航していたので、ドフラミンゴ達も生きていると知らず、治療を受け生存したがセンゴクが死んだことにして、シナンという名に変えた。
 ドフラミンゴ絡みでコラさんの胃痛が心配なので、記憶をなくしてもらった。ついでにヴェルゴがスパイとバレない方が面白そうだったので。
 超フラミンゴなんて原作でいませんが、それにミンゴと名付けペットにしてる。どういう深層心理の現れだろうね?
 ガープとホーミング聖の話は完全に捏造。ガープは一回くらい天竜人殴ってそうだなというのと、ホーミング聖は昔から異端だったらしいけど、子供時代のドフラミンゴが奴隷買いに行こって言ってたし、何かしら決定的に他の天竜人とは異なったきっかけでもあったのかなって。

 ヴェルゴ、ゴルゴルの実の能力者に
 もしゴルゴルの実がフィルムゴールドのボスキャラ、ギルド・テゾーロに奪われなかったら、順当に考えればヴェルゴが食べていたと思うのでこうしました。
 行動としては、ドフラミンゴがAIBO(あいぼう)のヴェルゴにゴルゴルの実を食べさせた、ただそれだけのことなのに、ファミリーの強化、ゴルゴルの能力があれば政府に収める収穫の一部は渡していないも同然、海軍でのヴェルゴの地位・信頼の向上、ドフラミンゴとヴェルゴが会ってもおかしくない口実作り、秘密の悪巧みと、爆アド。
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