今回ロゼの風評被害が『お前人間じゃねぇ!』って感じの哀れなことになっていますが、理由は今までに助けられた人より恐怖を覚えた人の方が声が大きいからと
シャボンディ周辺の人以外は、実物を見たことがない上、ステューシーが仕事してくれたおかげで、海賊や海軍と違い名前すら新聞に載らなくなったので。シャボンディのイメージが改善しても、それが伝わっておらず好き勝手言われてるせいで、周りはむしろ悪化してる。
シャボンディを出発し、機甲旅団の愉快な仲間達と一緒に、
船が大き過ぎて、作った機械を送って会話が出来るオレ以外が連絡を取り合う時は、移動して会いに行くか、各々の子電々虫での連絡が必要なのが少し不便だな。
基本的な船の設備の他に、田畑と居住区に修行場、果てはプールに大浴場等の娯楽を詰め込み過ぎたせいな気もするが、航海を楽しむためには止むを得ない。
こんなちょっとした島より大きな船を、よくぞ作ってくれたデンさんよ。オレ1人で作っても、どこかの作りが甘くなって船の
航海中に起きたことを挙げると、
ウィリーが
「そういえばウィリー。大渦を魚人柔術で投げたり、逆回転させて打ち消したり出来ないのか?」
『出来る人もおるな。ネプチューン様とかすごいで? まあ、ワイはサイズによるわ』
「そうか……む? オレの魚人柔術はまだまだ未熟だが、【
『色々考えつくなァ。試すんやったら正面やで』
「ちょっと行ってくる」
『パンダマン、ええって言うまで
『アイアイササ』
操舵室のパンダマンに伝えて、【
「さて、【ウルトラマリン】! おっ、案外いけ……ダメだこれ。回転エネルギーが強過ぎる。やはり力不足か……だが、渦は中心に向かって移動するわけだから、【
思いつきを技に変えることに成功し、大渦を下から掴み引っ張り上げ、
「
「う~ん、今日のおやつはチョコクロワッサンで良イカ?」
「やったぜ」
牧場のウシやニワトリ達の世話をしながら食事やおやつの材料を調達し、
「うう……美味しい。でも、体重がぁ……」
「充分スリムで引き締まっているだろ……気になるようだったら、腹回りに余分な肉なんて付けられない程鍛えてやる」
皆でおやつを食べたり、
「お花さんお花さん、お水おいしい~?」
「うん、美味しいよ! いつもありがとうレベッカ!(※スカーレット裏声)」
レベッカとスカーレットが仲良くお花の世話をする傍らで、
「来たる収穫のためにもえんやこ~らせッと」
ズドン! ズドン! ズドン!
修行を兼ねて五本指で放つ【
「あれ……? もしかして私、天才……? ペンが止まらないわ」
「やはりキャロルは天才だったか……」
「はいはい天才天才。レベッカはどこかわからない所あるか?」
「この因数分解って、一体何の役に立つの?」
「お店の売り上げを要素ごとに分ける時とかね」
「計算はお兄様がいればそれで良くない……?」
「数学を勉強することで論理的思考がだな」
教鞭を執り、保護者の授業参観の下で子供達に勉強を教えたり、
「先攻ヒグルミモンキーボードッ!? サレンダァ!!」
「ああっ、試作品の薬を摂取したロゼが謎の呪文を唱えて卒倒ッ!?」
「……も、もしかして、これは私が吸い出すチャンスなのでは……? 口から」
「ま、まあ? 医療行為ですし問題ないはず……次は私が人工呼吸を」
「じゃ、じゃあ、私からいただきま」
「必要ない」
「え? ん? んッ、ちゅっ、ん~♡(ロ、ロゼのが、私の中に入り込んでくるッ……!)」
「(幸せそうな顔してますね……)」
「ごち。
「な、何故私の方を見て、近付いて来ているのでしょう? お、お仕置きですか……?」
「いや、物欲しそうな顔をしているからおかわりを」
「乱暴に、強引に、激しくお願いします……!」
「了解」
他には、姉さんとアインから電伝虫から電話がかかってきて、『人の道を踏み外してはいけない』というような内容のことを遠回しに、諭すように言われた。
地味に説明し辛い……手配はされていないはずだが、母さんは元
とりあえず、『息子さんがオレに似ているので(※というかロゼが本人)、よくしてもらっている』とぼかして言ったら、絶句された。
何故だ?(※子持ちに『
そして現在、オレの部屋で3日に1回する風呂上がりのレベッカの髪を乾かし
「船の反応?」
『ああ、方角は……』
ウィリーに知らされた方向に、紫色の機体を透明化出来る、主に隠密による偵察と拘束用の【
掲げているのは海賊旗……あの兜を被ったドクロのマークは大カブト海賊団。船長が懸賞金3千600万ベリー、船長を含めた船員全員が兜を被っていることで有名な海賊団だな。
甲板を見ると、乱闘騒ぎが起きている。オレより少し下くらいの少年が暴れているな。船員の誰かの子供か? 身軽だな、良い体のバネをしている。だがまだパワー不足ってところか。
聴覚も共有すると……いつの間にか船に入り込んでいた侵入者で、海賊団とは無関係か。よし、あの少年以外全員ブタ箱にブチ込もう。
「ふんふふ~ん♪」
「はい、終わり。ちょっと出かけてくるから」
【エトランゼ・ファルコン】をアンテナ代わりに、遠隔で見聞色を発動させ、視覚と聴覚の共有は解除し、膝の上で鼻歌を歌っているレベッカに言う。ハンコックの曲だな。
「? どこ行くの?」
少し首を捻ってこちらを見ながら聞いてくるレベッカ。
ストレートヘアーも似合っている。ていうか何でも似合う。必ず似合うはず。
もし似合わないと言う奴がいれば、そいつはきっと視神経に重大な損傷を受けているのだろう。病院に行くと良い。
やはりファッションデザイナー急募。人目を引き過ぎず、かと言って地味ではなく、レベッカやウチの綺麗所を引き立たせる、なんか良い感じの衣装を作るファッションデザイナーがッ!
セント・ポプラ辺りで見つからないだろうか?
魚人島にもはっちゃんの友人のヒトデ、ヒトデの魚人ではなく人語を解するヒトデのパッパグがクリミナルブランドを立ち上げていたが、彼はデザイン画は書けても自分で服を作ることは出来ないからな。
ヒトデだから細かい手作業が出来ん。絵が描けるだけでも驚きだ。というか何故喋れる? 生命の神秘か……。
「ちょっと海賊団潰してくる」
「(そんな買い物行ってくるみたいに)……私も行っちゃダメ?」
「ダメ」
「な~ん~で~?」
ちょっと膨れて不満気だ。
「すぐに終わって出番がないから。来ても意味がない」
「むぅ……私、ホントに強くなってるの? 誰にも勝てたことない」
「それは周りが強い上、さらに上達しているだけだ。初めに比べたらレベッカも格段に強くなっているさ。その勝ちたいって気持ちは持ち続けるように。オレも負けてばかりだよ」
「海賊相手に負けなしだって、シャボンディの人に聞いたけど?」
「それは知られていないだけだ。父さんに毎回負けている。元だけど」
ジンベエは……あれはお互い拳だけで殴り合った、ただのケンカとして、他にも海賊になる前とはいえハンコックに石像にされたし、〝赤髪〟と〝鷹の目〟も、戦いになれば負けていたな。
当たり前のように武装色を使った飛ぶ斬撃に、鞘から抜くと同時に全身の武装色を剣に流し集中させ、軽く打ち消すあの挨拶代わりのやり取り。完全に格上だ。
ワノ国のサムライが乗っていた、元ロジャー海賊団の見習いである〝赤髪〟はともかく、〝鷹の目〟は独学……? もしくは〝赤髪〟の技を見て覚えたのか? そっちの方が恐ろしいな。
「1つ新しい技を見せてやるから、それで勘弁」
「私にも出来る?」
「今は無理。もっと脚力を鍛えようか」
「鍛えてるもん! いつも!」
櫛を返しながら言うと、『頑張ってるからもっと褒めろ~』といったかんじで、せっかく髪を整えた頭をオレの体にグリグリと押し付けてきたので、膝から降ろして頭を撫でつつ整える。
まあ、【
「よし、頑張っているレベッカにこれをあげよう」
タンスの中から取り出した物を手渡す。
「ネコ耳?」
「ああ、ネコ耳カチューシャだ」
ピンク色でもふもふである。
「……なんでこんなものをお兄様が持ってるの? 付けるの?」
オレが付けても
レベッカの頭に付けてみる。これが正しい使用法。
可愛い子に可愛いものが付いて、その相乗効果からくる魅力の破壊力は、見る者の精神に干渉するロリコン製造機の域に達しているが、既にシスコンのオレには何の問題もなかった。
「レベッカ……大人には、色々あるんだよ。オレはまだガキだけど」
「?」
よくわかってない様子のレベッカに、後でスカーレットの前で、カチューシャを付けたままネコの真似をすれば喜ぶと伝えながら、甲板に出る。
「さて、以前に説明した通り、【
レベッカから少し距離を取りながら質問する。
「え~っと……【
「正解、よく出来ました。【
さらにそこに【
「今からそれをやるから、ちゃんと見ておけよ?」
そう言ってゴーグルを掛け、周囲に突風を巻き起こしながら、オレは【
「速すぎてちょっとしか見えなかった……【ジェット・ウォリアー】や【
ロゼが飛んで行った後、自室に帰るレベッカ。
「あっ、おかえりレベッカ」
「ただいまニャン♪」
ネコ耳カチューシャを付け、ノーマルな人間もロリコンに変えかねない、罪作りなネコポーズをするあざといレベッカを見て、
「えっ……天使? 大天使レべニャン!?」
「ニャッ!?」
壊れたスカーレットがネコまっしぐらに大天使レベニャンに抱きついた。
☆☆☆☆☆
シルバーズ・ロゼに目を付けられた海賊船。
甲板に透明化した状態の【エトランゼ・ファルコン】を待機させ、再び感覚を共有することで、少年が海賊との戦いに危なくなれば割って入れるようにしながら、本体が【
忍び込んでいた少年が兜を被った船員達に囲まれる。
「ウハハハハ……コソ泥が。誰に手ェ出したかわかってんのか? この船のモンは全部、懸賞金3600万ベリー、この〝大カブトのミカヅキ〟様のだ。ガキの遊びじゃねェんだぞ」
一際大きな兜の男がそう告げる。
身の丈ほどの大きな刀を持つこの男が船長だ。
「どうせ人から奪ったモンだろ。それに、たかが3千万ぽっちの小物の癖に偉っそうに」
さっき倒した船員の1人から奪った拳銃を隠し持ちながら、少年が吐き捨てる。
「口の利き方がなってねェクソガキが……親の顔が見てェぜ」
少年の親は死んだ。両親も妹も友達も、
かつては造船技術で栄えた島も、生き残ったのは少年を含めて100人足らず。金も資源も奪われ尽くし、かつての繁栄は戻らない。少年の故郷は滅んだ。
生き残った僅かな人達は縁者を頼り、他の島々へと渡って行ったが、自分には頼れる者なんてもう誰も残ってはいない。たった1日ですべてを奪われ1人になった。
だから少年は、自分の仇と同じ海賊を狩りながら腕を磨き、復讐する道を選んだ。
倒した賞金首を連れて海軍基地に行った時、仇の情報を集めるために話をした海兵には止められた。『命を粗末にするものじゃない。別の生き方がある』、と。
自分のしようとしていることが愚かだということはわかってる。
仇を討ったところで死んだ人間は生き返らない。褒めてなんかくれない。復讐は何も生まないなんてよく聞く話。自分だって家族と友達を殺されるまではそう思っていた。
だが、復讐以外に今の自分に生きている意味なんてない。必ず自分の手でケリをつける。
「てめェがおれに何か言える立場か? 親に顔向け出来ねェことしてる自覚を持てよ、海賊」
今までで一番高い額、初めて見つけた1000万越えの賞金首。
だがあの時の海賊に、自分の仇に遥かに劣るこいつを倒せないようでは話にならない。
頭に血が上った奴が近付いて来た時、拳銃で脳天をブチ抜く。使ったことがなくても、殺したことがなくても、ゼロ距離なら外すことはない。子供の非力さも関係なく絶命させられる。
そう少年が自分に言い聞かせるように算段を立てていると、
ズドンッ!!
突然何かが少年と海賊の間に降ってきた。
「よっと。あ~少年。突然で申し訳ないが、こいつらオレに倒させてくれないか? なに、懸賞金も積荷もキミが持って行っていい。どこか行きたい場所があるならオレの船に乗せて連れて行ってもいい。どうだ?」
「……(なんだ、こいつ?)」
降ってきたのは人だったらしい。
ゴーグルと口元を覆う赤いスカーフで素顔はわからないが、スカーフのせいで聞き取り辛い声と背丈から無理矢理判断するに、少年の少し年上くらいで、まだ若そうだ。
翼のような不思議な髪型で、ギリギリ地面に着かない丈の紺色のコートに、黒いズボンと茶色い革靴を履いている。
「心配するな、怪しい者ではない」
少年の沈黙をどう受け取ったのか、くぐもった声でそう言ってくる謎の男。
「いや、どっからどう見ても、まごうことなき不審者だろ……」
思わずツッコむ少年。
「何……だと……?」
表情は見えないが、ショックを受けたような反応の不審者。
何故そこまで顔を隠して怪しく見えないと思うのか?
少年には全く見当がつかないが、これはこの不審者が『戦闘中怖い』と妹に言われたから、試しにゴーグルに加えスカーフで口元を隠し、『今までより素顔がわからなくなれば、怖さがなくなるのでは?』と余計なことを考えてしまった結果である。
「違うぞ。不審者ではなくオレは」
「何だテメェ!? いきなり来て好き勝手言ってんじゃねェぞ!」
不審者が何か言おうとするのを遮り、少年に挑発され、突然の乱入者にも景品のような扱いをされ、我慢の限界が来た〝大カブトのミカヅキ〟が不審者に切りかかる。
少年が告げる間もなく、刀が不審者に当たり、
ガキンッ!!
音を立てて真っ二つになった。
……不審者に触れた刀の方が。
「……は?」
切りかかったミカヅキが、男を切り倒すはずが逆に折られた自分の刀に戸惑う。
「はぁ……まだオレが喋っている途中だろうが。ふっ、
だがそんなミカヅキを気にも留めず、先程の少年とミカヅキの会話を踏まえた言葉を発しながら、ゴーグルの男が海賊の方に振り向く。明らかに今までと纏う雰囲気が変わっている。
その男のコートの背中は、不思議なことに一部だけが黒く変色し
「通りすがりの
ただの決定事項を告げるような、一方的な宣言を受けて、刀、槍、斧、拳銃……各々の武器を持った海賊達が、中でも刀を持った者達が声を上げながら、最前列で不審者に、
「【
バチィンッ!!
少年には見切れなかったが、黒い鞭を持った左腕を斜め下に下ろしており、最前列の海賊達が、一纏めに船の壁に叩きつけられている。
少し怯んだ様子の海賊達だが、今度は拳銃を持った狙撃手達が発砲する。
その音が聞こえると同時に、
「【ブラック・ローズ・ガイル】」
ズババババン!!
ヒュンヒュンという風切り音と共に、斬撃音が鳴り響く。
海賊達の武器や兜が勝手に壊れ、血飛沫が舞う。明らかに鞭の射程範囲外の者まで。
それどころか真っ二つになった銃弾まで地面に転がり、少年が持っていた拳銃も、気付けば真っ二つになっていた。
鞭以外にも何か刃物の武器を使っているのか? それとも自分の憎き仇と同じ悪魔の実の能力者?
少年の疑問を置き去りに、次第に苦痛の絶叫を伴い、バタバタと倒れていく海賊達。ミカヅキもいつの間にか倒れている。
そして大した時間もかけず、すべての海賊が倒れた……ついぞ少年の目の前の
圧倒的……勝負事に絶対はないが、今の自分がこの男に勝つことは不可能だと言い切れる。格が違う。
この男なら、自分の復讐相手にも……どうすれば、自分もそこまで強くなれるのか?
「ふん、安物の脆い装備だ」
「て、てめェ……なんの恨みがあっておれ達を……」
少年が自問していると、船長の〝大カブトのミカヅキ〟が、仰向けに倒れながら苦しげに呟く。
すでにトレードマークの兜は壊されているが。
「鞭の一太刀とはいえ、復活が早いな……腐っても船長か」
意外そうに呟く男だが、驚いたのは少年の方だ。
よく倒れた海賊達を見ると、兜に武器に体、すべての傷跡が一筆書きのように繋がっている。
この男は、鞭で切るだけでなく、全員を倒しわざわざ武器まで破壊するのを、すべて一撃でこなす曲芸を
おそらく二撃目の攻撃を加えぬよう、一度攻撃した前列の者達の隙間を縫って、後列の者達を切ったのだ。ご丁寧に最初の一撃で叩きつけられた者達も、兜と武器だけを切る念の入れようで、すべてが壊されている。
それを裏付けるように、男の鞭が、元の黒と滴る返り血の赤が混ざり、黒みがかった濃い赤色……見る者に畏怖の念を抱かせつつも、どこか美しい黒薔薇のようになっている。
「『なんの恨みがあって』だったか? 貴様ら海賊が気に食わない。これで満足か? なんの恨みがあって……今まで貴様らに襲われた人達も、同じようなことを思い、理不尽な暴力を嘆き、散っていった。貴様らは暴力で好き勝手やっていたところを、より強い力に打倒された……ということだろう? 自業自得だ。さて、現れろ……」
不愉快そうに、まるで実際に見てきたようにそう吐き捨てたところで、
悪魔の実の能力者……だが、これはつまり、今まで能力を使わずに敵を圧倒していたということだと、ミカヅキと少年が戦慄する。
「【
機械のハヤブサ達が金属音のような鳴き声をあげ、主の敵を威圧するように睨めつける。
無慈悲に宣告し、機械を従える男の姿は、暴君か、覇王か、皇帝か……いずれにしても、敵から逆らう気力を根こそぎ奪っていく。心の弱い者は立つことすら出来ない謎の迫力を放っている。
「ゴーグルに、機械……き、〝機甲のロゼ〟ッ!?」
少年の目にも、ミカヅキの心が完全に折れたのがわかる。
「なんだ、オレを知っていたのか。特にうれしくもないが」
少年もその名は聞いたことがあった……良い噂とは言い難い、悪名として。
曰く、
曰く、シャボンディ諸島最凶最悪の化物。海賊団を1人残らず食らい吸収、成長する怪物。
曰く、海軍が生み出した生物兵器。一度命令を出せば標的を殲滅するまで止まらない、陸・海・空、すべてを網羅する大量殺戮兵器。
本当に存在するのかも疑わしい、眉唾物の
「人間だった、のか……」
「どういう意味だ」
少年が抱いたのと同じ感想を呟き、ミカヅキは意識を失った。
☆☆☆☆☆
移動中、少年が完全に殺る気だったので、急いで海賊との間に飛び込んだ。
一度殺しの動作が
少年には人を殺す覚悟をする前に、泥に塗れようが生きる覚悟をしてもらいたいものだ。どこか自棄になっている雰囲気があるな。よく見れば目の下にフックみたいな刺青まで入れていた。
まあ、子供が1人で海賊船に乗り込んでいる時点で……ああ、これはオレも同じだな。人のことを言えん。
とにかく、訳有りなのは見聞色を使うまでもなく状況からわかる。放っておくのは少々不安。野垂れ死にそうだ。
とりあえず不審者という謂われなき疑いを向けられながらも少年と会話を試みていると、後ろから切りかかってきた海賊がいたので【
そんなに急いでやられに来ずともすぐ倒すというのに……オレが考えなしに敵に背を向けるバカだと思われているのだろうか?
適当に全員鞭でシバいた。どの道やることは変わらない。順番が変わるだけだ。
ついでに武器も少年が使わないようにすべて壊した。子供にはまだ早い。身のこなしは中々良かったが、拳銃に関しては完全に素人の扱いをしていた。それだと暴発するぞ。
「で、だ。周りも片付いたことだし、話の続きをしようか。さっき言った通り、懸賞金その他はキミのだ。元々後から来たのはオレだからな。行きたいところがあるなら、送ろうか? 1人じゃ船を動かせないだろ」
少年に振り返りながら、【
何故かこの少年呆けているな。
原始人が言語的な会話をしている光景を目撃したかのような、何か意外なものを見たって感じだ。
「……取って食う気じゃねェだろうな?」
「何故初対面でそこまで言われるのか」
誠に遺憾である。
そんなに今の姿は怪しいのか?
自分の姿を
「なんだこの不審者はッ!?」
「いや
そこにはまごうことなき圧倒的不審者がいた。というかオレだ。
なるほど、これは信用されない。通報不可避。『奴を
今度から口元を隠すのは止めよう。ゴーグルだけでいい。
「(やっぱおれと大して歳変わんねェ……)」
「ふぅ……で、だ。行きたいところがあるなら送ろうか?」
スカーフを口からずらし、ゴーグルも外して首にかけてやり直す。
「……送るって、あれでか?」
少年が【
「いや、あっちの船でだ」
「あれ船だったのか……島かと」
親指で指差すと、そう返される。
まあ、木とか植えているし、遠目にはそうも見えるか。
「じゃあ、頼みがある」
「何だ? 言ってみろ」
「オレを鍛えてくれ! 殺したい奴がいるんだ!」
地面に座り、土下座をしながら弟子入りを志願された。
ふむ。『倒して欲しい奴』でも『殺して欲しい奴』でもなく『殺したい奴』か……まあ、初めてのことではない。シャボンディのスラムの子供にも、頼まれて鍛えたことはある。
「復讐か。相手は?」
「ガスパーデ海賊団。特にガスパーデとニードルス」
「〝将軍〟……9500万ベリーの賞金首。〝海軍最大の汚点〟とも呼ばれる、元海軍本部中将。体を水飴状に変化させたり、硬化させることも出来る、アメアメの実の能力者か」
最初から力を手に入れるためだけに海軍に入隊したのだろう。だから汚点。だが元中将の実力は折り紙つき。能力者の覇気使い。生半可の実力で倒せる相手ではない。
オレに鍛えてもらうというのは良い判断だ。なんせこいつは知らないとはいえ、オレは覇気を目覚めさせる覇王色持ち。加えてキャロルの能力に手伝ってもらえば、精神的な休息は必要だが、1日24時間ほぼすべてを鍛錬のために使える。
「良いだろう。だから土下座をやめろ。ただし条件が2つある」
「……なんだ?」
恐る恐るといった感じで聞いてくる。
何故か苦渋の選択を強いられているかのような表情だ。まるで今から悲願のため、悪魔に魂でも売り渡そうとしている人間のような……
「オレの船に乗れ。お前の標的は強い。たまに会った時に鍛えるだけでは、到底追いつけん」
「それは、おれとしても願ったり叶ったりだが……もう1つは?」
「オレに教えを請う以上、ある程度オレの思想に従ってもらう。『人を殺すな』、これは守ってもらう。破れば破門だ」
重々しい顔をしていたが、拍子抜けしたように、ポカンとした顔になる。
「……それだけか? たとえガスパーデ達を殺したとしても、破門になるだけなのか?」
「ふははっ、破る気満々だな。まあ想定内だ。お前の言う通り、破門になるだけ。禁を破ったから死んでもらう、なんてことはない。自分の目的のために誰かを巻き込むとか、破門になった後で手配されるようなことをするとか、そういうことがあればオレがブン殴りに行くが、そんな感じだ」
別に復讐するのは構わない。
そういう理由で海軍に入った人だっているし、仇敵を捕らえて復讐を終え退役し、今は自分と同じく海賊によって家族を失った人々を元気づけるために、島々を巡る劇団をやっている人もいる。
問題は過程と、復讐以外に何もないって風の、こいつの雰囲気だ。復讐を終えた後、こいつはどうするつもりなんだろうな。
「わかった、それでいい。これからよろしく頼む、師匠。おれはシュライヤ。シュライヤ・バスクードだ」
「そうか。以後よろしくなシュライヤ。先程図らずも異名で呼ばれたが、改めて名乗らせてもらう。オレの名はシルバーズ・ロゼだ。お前をガスパーデを倒せる実力までランクアップさせてやる。それがお前の望みなら、自分の因縁にケリをつけろ」
後から明かしても拗れそうだし、打ち明けておく。
差し出された手も、手袋を外して握手に応じる。
少々驚かれた。
ダディの時もこんな感じだったな。いや、あの時の方が驚かれたか。『海賊嫌いは偽装だったのか!?』と聞かれた。素だと答え、父さんとの仲も良好だと伝えると、『何でだよ!』と理不尽に怒られた。どうしろと……。
シュライヤには、『元々人外の化物に弟子入りする覚悟だったし、海賊の子でも人の子ならむしろ安心した』と言われた。
なあ、さっきの海賊もそうだったが、どういう意味だ。
確かにオレは化物かもしれんが、何故生物学上の分類が人間であることさえ疑われているのか。自然発生したとでも? それとも
何にせよ、こいつにとって、オレ達との旅が楽しいものであれば良いが。人生楽しんだもの勝ちだ。
まあ、何かリフレッシュする趣味とかを見つけなければ、オレのシゴキに耐えられず精神的に潰れるかもしれんので、今は何もないのかもしれんが、これから頑張れ。オレに弟子入りして人を殺した奴は今の所いない。
シュライヤを弟子に取ることになり、海賊船ごと
海賊は専用に作った独房に入れる。海軍基地に寄って引き渡そう。
皆に紹介する前に、かなり汚れていたので大浴場に放り込み、服を洗濯、乾燥させる。ウォーターセブンでこいつの服を調達しないとな。ついでに鞭の返り血を洗い流して消毒しておこう。
予備の子電伝虫をシュライヤに渡した後皆に紹介し、少々似た境遇の母娘等何人かが号泣したが、それ以外は特に問題なく受け入れられた。
というか、『またお前拾ってきたのか……』みたいな空気。トリスタンは自分から来たし、大体は世話をするより、望む場所に送る手段を用意する方針だぞ、オレは? 今までだってそうしてきたし、スカーレットとレベッカ、シュライヤみたいな行くあてがないのが例外だ。
紹介した後、リクエストされてオレが作ったチャーハンを、腹が減っていたのか勢いよく食べ終えて、シュライヤの、鍛錬の鍛錬による鍛錬のための生活が開始し、朝昼晩、おはようからおやすみどころか寝た後の夢の中まで鍛錬漬けの生活の、夜の部が終わった。
そうして夜が明けた次の日、シルバー電伝虫が鳴った……受話器に『赤』と書かれた奴が。
とりあえず食事を取りながら、積荷を降ろして
☆☆☆☆☆
その島で、ある2人の男が向かい合っていた。
1人は、改造した海軍将校のコートを着た、鍛え上げた肉体の巨漢の男。コートの背には海軍のマークの上から×印が書かれている。
1年前にシュライヤの故郷を滅ぼした海賊。
元海軍本部中将にしてガスパーデ海賊団船長、〝将軍〟ガスパーデ。
そしてもう1人は、
海賊団の船長でもあるが、海賊としてはまだ無名。
体を紙に変える力を持ち、〝神懸かりのサイモン〟と呼ばれる男である。
「おれに同盟を持ちかけるなんざ、酔狂な男だ。それとも単なるバカか……おれが誰だかちゃんと知ってんのか?」
「元海兵のキミだから声をかけた。海軍の巡回ルートを知り尽くし、新世界のレベルを知るからこそ前半に留まる慎重さ。海軍も、自分達の失態をあまり知られたくないようで、額を億未満に調整しているが、前半では最高峰の相手だろう(王下七武海……政府の狗を除いて)」
ガスパーデを持ち上げつつ話を続けるサイモン。それだけ重要なことなのだろう。
「何より、能力者だ……私の故郷に、古代文明の遺跡がある」
「おいおい……宝探しなんて下らねェ話なら、他当たれ」
まったく興味がなさそうなガスパーデ。
この男の信条は、力こそすべて。権力を手っ取り早く手に入れるために海賊になった。
海賊でありながら、海や、夢見る海賊を激しく嫌悪しており、暇つぶしに海賊を騙し潰すことを、ちょっとした楽しいゲームのようなものと捉えている。
だがその信条故に実力は本物で、強い者を好む。
サイモンが気に入らない弱者であれば、すぐにでもここで彼のゲームが開始されただろう。
「宝? もっと良いものだ。かつて私の故郷の島を引き裂いた、古代兵器!」
「……
オハラの件はガスパーデも当然知っている。
世界政府が復活を恐れる、世界を滅ぼしかねない、神の名を持つ最悪の兵器。
その武力を想像し、ガスパーデは再び話を聞く気になった。
「いや、それとは別だ。その名も、〝大いなる力〟シュシバルバ……古代文明が生み出した、悪魔の実の能力者を食らい、島1つ滅ぼすまでに成長する最悪のバケモノだ! 遺跡には能力者でなければ入れぬ場所がある。それを確認すれば信じる気になるだろう。こいつを利用し、私が、私達がマリージョアに上がる!」
「はははははッ! 悪魔の実の能力者を食って育ったバケモノで、
ガスパーデとサイモンが握手を交わし、世界政府転覆を企む海賊同盟が結成した。
お互い心の底から信用している訳ではない。
海賊は基本的に、自分の欲望を最優先に行動する生き物。
隙あらば相手を蹴落とし、最終的には自分だけが頂点に立つ。共通の目的のためだけに手を組み、それが終われば殺し合う。危険な役回りを押し付けたりと、裏切りが常なのが海賊同士の同盟である。
「だったら良い狩場がある。能力者の囚人共がいる海底監獄インペルダウンだ。特に政府に存在をもみ消された奴らが入るLEVEL6なら、さぞバケモノの養分にはちょうどいいだろうよ。どの道何もない牢獄で、血統因子の研究だかに使われ一生を終える、惨めなモルモット共だ」
「……奴隷同然のまま終わるくらいなら、政府を貫く槍となった方がまだマシか」
2人がサイモンの故郷……ナナツ島の支配や、古文書を解読しバケモノを手に入れるまで邪魔が入らないよう海上封鎖等、今後の行動を決めるために話し合う。
「(ホホホ、これは面白そうな話を聞きましたね……彼にも伝えますか)」
気配を消し、2人の会話を隠れて聞いていたシルクハットの人物が、笑みを浮かべながらその場を去る。
後に、ガスパーデへの復讐を果たそうとするシュライヤの因縁、そしてもう1つの因縁により訪れることになる機甲旅団、権力を求めるガスパーデ海賊団と世界の統率者にならんとするサイモン海賊団の同盟勢力、さらにそれぞれの思惑により介入する第三勢力が、ナナツ島にて激突することになる。
【
召喚口上が、『まだ見ぬ勇猛なハヤブサよ。猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!』なので、姿が見えなくなる能力に。
アニメで技名が出てきていないけど、姿を消すという特性上、このまま技名なしの方がいいかもしれない。
ミカヅキ
大カブト海賊団船長。懸賞金3600万ベリー。海賊団の名前的に、〝大カブトのミカヅキ〟って異名なのかな?
ガレーラカンパニーで船の修理代を踏み倒そうとしたせいで、船大工達にフルボッコにされたケチな海賊。カリファ基準で代金踏み倒しはセクハラらしい。スパンダムは存在がセクハラ。
大天使レべニャン
子供ver.はないけど、16歳ver.がトレクルにある。猫耳レベッカとかで調べたらたぶん出てくる。
必殺技名の「罪作りな猫ポーズ」でツボった。
シュライヤ・バスクード(新世界編21歳)
映画『デッドエンドの冒険』登場の
主人公を
今年の映画『STAMPEDE』に登場したみたいですが、僕は見つけられませんでした。他の仲間予定のキャラは見つけられたけど。
〝将軍〟ガスパーデ
映画『デッドエンドの冒険』登場の、元海兵の海賊。懸賞金9500万ベリー。
映画では元の階級は不明でしたが、異名が〝将軍〟で〝海軍最大の汚点〟とも呼ばれているし、元中将に。つまり覇気使い。
元ナバロン所属にしたのは、映画でナバロンの
体を水飴状に変化出来るアメアメの実の能力者。たぶんシャーロット・カタクリのモチモチの実のような特殊な
部下のニードルスは懸賞金5700万ベリー。異名考えとかないと……武器から〝鉄爪のニードルス〟でいいか?
〝神懸かりのサイモン〟
ゲーム『ナナツ島の大秘宝』のボスキャラ。たぶん懸賞金はゲーム内で出てきていなかった。プレイしたのが昔で記憶が曖昧。
しれっと覇気使いになってる。まあこいつの登場ゲーム、戦闘に3人参加出来るので、つまり麦わらの一味(アラバスタ編直前時点)が3人がかりで倒せた敵なわけで、覇気使いでいいかなって。
体を大量の紙に変身、分裂することが出来、ガスパーデもそうだけどほぼ