この作品で最初にこの島が話題に出たのは、オリジナル設定の良く伸びるルビノクヨ繊維の話でだったかな?
大人組が酒盛りし、子供組がお菓子パーティー。そしていつものように【
飲み過ぎて頭を押さえている彼ら彼女らに水をあげたり、トリスタンが二日酔いに効くというツボを押して軽く呻き声が聞こえてくる。
ココロさんに海列車の運行情報を聞き、まずは〝春の女王の町〟セント・ポプラから行くことに決定。
アイスバーグさんに他の人間を船の見学に呼んでもいいかと聞かれ、特に断る理由もないので了承。
プライバシーの問題があるので、一応ウチの仲間達が寝泊まりしている居住区は立ち入り禁止とは伝えておく。特にインテリコンビの怪しげな薬や、ジェルマ経由で政府の許可があるとはいえ血統因子関連の研究資料、あとはオレのDr.ベガパンクから預かっている設計図あたりが見られるとヤバい。主にオレ達ではなく見てしまった人達が。
そして
畑の管理は能力で作ったお世話ロボット達に任せるとして、行き先の島々で目当ての物を手に入れた時は【
それから出勤に行くココロさんと一緒にウォーターセブン正面のブルー
早速触って過去を遡り、目当ての情報をサーチ。1年前の光景を見る。
これは……轢かれたというか、真正面から海列車を行かせまいとぶつかっているな。
傍らの角界ガエルが止めるように鳴く中バズーカを撃ち、最後にはその身一つで。根性ある。だが叶わず吹き飛ばされ、鼻が砕けて歯も折れて……骨も何本かイッているな。血塗れだ。
海列車はすぐに通り過ぎてこれ以上はわからなかったので、次は【ライズ・ファルコン】で空を飛び、人身事故現場の線路の方に触れる……なんて強運だ。着水して浮かんでいる所に、ボロボロの廃船が流れてきて乗り込んでいる。傷は深いが、生きている可能性が0ではない。
この辺りの海流からウィリーに大まかにでも予測を立ててもらって、後は人海戦術で虱潰しに調べよう。アクア・ラグナがあるとはいえ、島の周辺なら気候も落ち着いている。離れ過ぎて不安定な海域まで行ってしまえば、船が沈んだり海王類に食われたとかが困るが……。
一応わかったことをココロさんに伝えておく。
依然変わらず消息不明なので微妙な反応だ。まあ仕方がない。無事ならウォーターセブンに帰って来ていてもおかしくないからな。
とりあえず調べ事を終え、始発の海列車に乗車する。
「んががが!! じゃあ出発だよ!!」
ポッポーッ!!
ココロさんの号令の後、海列車が汽笛を鳴らし煙を吐きながら、ゆらゆらと海を漂う線路をパドルが掴み、海を渡る。
予想していたほど揺れはなく、風で進む帆船とは桁違いの速度で進んでいく。ココロさんによると昼にはセント・ポプラに着くそうだ。
皆で固まって座席に座り、窓から景色を見ながら過ごしていると、過去視で見た大きなカエル……ヨコヅナがクロールで泳いで海列車に突進してきた。そういえば昨日酔っぱらったココロさんが言っていたな。体の所々傷がある。
窓を開けて両手を分離、飛ばしてヨコヅナの体をキャッチ。
その後車掌室の屋根に乗せ、ココロさんがトムさんの話を伝える。
汽笛の音とヨコヅナの声で、他の客に内容は聞こえないだろう。車掌室の手前、今オレ達がいる車両には誰も乗っていないし。
ゲロゲロと泣き声をあげ喜ぶヨコヅナだが、海列車への突撃はやめるつもりがないようだ。
メイプルに翻訳してもらうと、もう二度と大好きな人が自分の目の前からいなくならない様に、大好きな人を守れる様に強くなるために、海列車に日々戦いを挑んでいるのだとか。
その心意気や良しということで、オレが覇気を目覚めさせる。ウォーターセブンに戻ればしばらく一緒に船に乗り鍛える代わり、海列車への突進はやめてもらった。強くなるためにトムさん達が長い年月をかけて作ったものを壊されては困るし、それはヨコヅナも本意ではないだろう。
「強くなる理由か……なあレベッカ。お前はなんで師匠に修行つけてもらってんだ?」
ヨコヅナの話から、シュライヤがレベッカに聞いた。
シュライヤが初めてオレ以外の仲間に自分から話しかけた……! 昨日のショッピングやバカ騒ぎで少しは打ち解けたのか? 良いことだ。暖かく見守ろう。
「え~っとね。兵隊さんとトンタッタの皆を助けるの!」
レベッカが真剣な、とても凛々しい表情で答えた。
すかさず脳内保存。後でカラープリントし、スカーレットに渡してレベッカアルバムに保管しよう。
それにしても他に誰もいないからいいが……まあ、これからドレスローザの関係者と判別するのは不可能だろう。トンタッタはそこまで有名ではない。ドレスローザでも妖精さんの呼称で通っているそうだ。
レベッカ達がいたドレスローザは現在、ドフラミンゴ政権の支配下にある。
国民達は、おおよそ新しい王を受け入れていると聞く。
先王……スカーレットの父で、レベッカの祖父であるリク王の名は、惨劇を引き起こした首謀者として死後(※実際は生きている)も国民達からは恨まれているそうだ。
だがその一方、リク王の無実を信じる者もいるそうで、それこそがレベッカ達をノックス探検隊やパンダマンと協力し逃がした、片足おもちゃの兵隊さんとトンタッタ族らしい。
おもちゃの兵隊……オレと似たような
レベッカはその彼らを〝天夜叉〟から助けたくて、オレの教えを受けている。
「誰かを助けるため……か」
何か物憂げに呟くシュライヤ。
「もしもお前が復讐のために強くなろうとすることに、動機が不純とかで負い目のようなものを感じているのならば、強くなるためにそういったものは一切関係ないと言っておく。大事なのは上に昇ろうとする意志の強さだ。第一、誰かに勝ちたいと思うこと自体は、少なからず誰でも持っている感情だ」
「当たりだよ畜生……なんだその生暖かい目はッ! ッたく、あんたはおれに復讐して欲しいのか欲しくないのか、一体どっちなんだよ?」
「復讐はすればいいが殺して欲しくはない。どの道〝将軍〟は誰かが捕らえねばならん。お前がやらないならオレがやる。だがオレの望みを更に言えば、最終的にお前が笑っているなら何でもいい」
シュライヤが『人を殺せば破門』という言葉をどこまでと捉えているかは知らんが、師弟関係の解消という意味でオレは言った。別に殺して復讐しても、船に乗っていたければ構わない。
そもそもハンコック達とも、天竜人を殺したと知ってからも変わらず接している。未だに直接教えられていないが。
何か言われると思っているんだろうな……オレが助けたお前達が殺したということは、それはオレが殺したも同然なのだから、どうこう言う資格がない。
「……ああそうかよ。というか、師匠がその兵隊さんとかを代わりに助けられねェのかよ?」
ふむ。照れ隠しのように言われるが、当然と言えば当然の疑問だ。
「オレは国民すべてが人質にされた状態で〝天夜叉〟に勝てる程強くない。人質なしで勝てるかどうかもやってみるまではわからんが」
4年程前に海軍に保護されたドレークに聞いたことがある。
彼はシナンことロシナンテさんが〝天夜叉〟に撃たれたミニオン島にいたそうだ。
元少将の海賊にして彼の父、
そのバレルズ海賊団のアジトに〝天夜叉〟が現れ、いなくなったあとにはバレルズの死体が残っていたらしい。オペオペの実はどこかに消えたそうだ。
かつては尊敬していた父だが、海賊となってからは息子である自分に理不尽な暴力を振るうようになっていたので、別にそのことで恨んではいないそうだ。
しかし、その時〝天夜叉〟がイトイトの能力で出したのであろう島一つ覆う巨大な、壊れず触れる者を切り裂く糸の檻。そしてその中でバレルズ海賊団が体が勝手に動くと泣き叫びながら殺し合いを行う様子は、さながら地獄のようだったと、ドレークがトラウマを語るように吐き出していた。
島から出さない頑丈で大質量の檻と海賊団全員を操る数の糸……たまたまリク王の豹変に出くわしたと考えるより、人を操る糸でリク王軍に国民を襲わせ、救世主を装った自作自演と考えた方が自然。
だがそんな
大規模な悪魔の実の能力に加えて覇王色の覇気使い。
七武海は程度の差こそあれ、全員が覇気使いとジンベエからは聞いている。
ハンコックは会合に出たことがないので知らないそうだ。おそらく同じ七武海の顔も、面識があるジンベエ以外は覚えていまい。そういう世情はニョン婆とかソニア辺りの方が詳しいだろう。
とにかくそんなことが出来る〝天夜叉〟相手に、オレが国民を1人も殺させず、覇気使いかつ能力者が数多くいるドンキホーテ海賊団を1人残らず倒せる確率はどれくらいのものだろうか?
それにしても拳銃か……殺したいなら能力の糸で首を刎ねれば確実なのに、わざわざ拳銃を使ったのは、肉親を殺した感触を糸伝いに味わいたくなかったのか? それが理由ならそもそも殺さなければいいとは思うが、他に理由は思いつかない。
「その上それで終わりではなく、四皇の百獣海賊団と連戦だ。バックについているらしい。現海軍本部元帥に聞いたことがある。オレが〝百獣〟に勝てるか、と。今のオレでは万に一つも勝ち目はないと言われたよ」
「ウソだろ……能力者の癖に、海楼石の手錠で両手と能力を封じて力が抜けた状態で、オレを覇気でボコる師匠が?」
「その〝百獣のカイドウ〟って奴な。昔海軍に捕まったことがあるが、能力者の癖に海楼石を付けたまま、中将も大将も元帥も、海軍の誰も殺せなかった正真正銘の怪物らしいぜ?」
そう元海兵のダディが言ってくる。
この人も四皇の強さをごく僅かではあるが味わっているからな。父親が世界一の狙撃手と信じるキャロルには秘密だが、海軍を辞めた理由だ。
赤髪海賊団の幹部、〝
少佐が1人で四皇幹部に挑むか普通? 他の幹部達どころか〝赤髪〟もいて、黙って決闘を認めたそうだ。
結果は敗北。だが、利き腕を撃ち抜いたという。充分健闘している。
決闘当時の話だが、射撃の腕は少し負けるが勝負になるレベルってところか。あとは覇気だな。
そして決闘に負けた自分を殺して止めを刺せと告げるダディに、〝
息子を愛してないのかと尋ねるダディに〝
これだけならただの育児放棄野郎だが、その後
『おれは息子に何もしてやることが出来ねェ。そんなダメな親はおれ1人でたくさんだ。いつも娘の側にいてやるがいい。1人ぼっちになんてしちゃいけねェ。まっ、おれが言えた義理じゃねェけどな!』
と告げて、止めも刺さず笑って去って行ったとか。
こうしてダディは海軍を辞め、娘の側にいることにしたというわけだ。
育児放棄には変わりないが、会ったこともないキャロルへの思いやりはある男のようだ。あいつが能力で悪戯したのも、親に会えず寂しかったからってのがあるだろうし。
〝赤髪〟も海賊として変わり者だったが、そういう船長だとそういう仲間が集まるのかね?
「いやそこは死んどけよ……なんでそれで死なねェんだ」
「あまり死んどけとか言うものではない。フィジカルがずば抜けているか、武装色が桁外れか……そんな感じだろう」
〝百獣〟の頑強さに驚くシュライヤに返す。
〝白ひげ〟が世界最強の男と呼ばれているのに対して、〝百獣〟は陸海空、生きとし生けるもの全てのもの達の中で最強の生物と呼ばれる海賊だ。どうも人間とは思えぬ強さらしい。
「あっ。海賊に手錠をかける時は、ちゃんと後ろ手にかけろよ? でないと両腕を切り落として逃げられるかもしれん」
ついでに
「そこまでしねェだろ」
「腕じゃないが、両足を切り落としてインペルダウンを脱獄した奴なら実際にいるな」
「マジかよ……そういや、あんた元海兵なのに、師匠の親父ほっといて良いのか?」
「元だから良いんだよ。おれもこいつの親父も。それに、こいつの親だぞ?」
「ああ……」
このニュアンス……オレの親だから慈悲を持って見逃してやろうって感じじゃないな。どちらかと言うと相手してられるかって雰囲気だ。
「こいつについても、もしおれらに被害が及ぶなら、大人しく捕まって取引するなり実験動物になるなりして出てくるって言ってるしな……まあ、今までの付き合いから信用出来る(女関係は信用出来んが。こいつもこいつの親父も)」
「処刑されずにハヤブサ及び疾風の如き速度で舞い戻って来てやるよ」
「はあ……はあ……きゅ、きゅる~ん……♡」
膝の上で快感に体を震わせ、声を抑えながら息も絶え絶えに喘ぐトリスタンの下半身へと手を伸ばし、丁寧にゆっくりと繊細な力加減で、そして極めて健全に尻尾のブラッシングをしながら雑談をして過ごし、海列車は目的地セント・ポプラに到着した。
オレ達のような観光で来たのだろう普段着の人や、仕事で来たのだろうビジネススーツの他の客達と海列車から下車し、ココロさんと海列車の屋根に乗ったヨコヅナに見送られながら、島を歩く。
〝春の女王の町〟と呼ばれるように気候は1年中暖かい。また街中にも木々が立ち並び、自然と人工物たる建物との調和を図った景観をしている。
林業が盛んで、ウォーターセブンへと運ばれ造船にも使われる材木の卸売市場がある島だ。
聞くアテがあったウォーターセブンと違い、この島に知り合いはいないはずなので、まずはカフェに入って注文し、店の人に話を聞く。
こういう観光客には慣れているのか、すらすらと尋ねたことに返答してくれた。
会計時にチップを渡して店を出て、目的地に向け移動中……
「まさかこんなに早く会えるとは思わなかったよ……〝機甲のロゼ〟くん」
少し聞き覚えがある声で名を呼ばれる。
噂からはゴーグル以外のオレの容姿はわからない。戦闘を
振り返ると……すらりとした長い脚に、上流階級のようなフリルのついた服装。
茶髪のショートヘアで、端的に言って美形。オレより少し背が高い。
男版ハンコックのような存在が、中性的な美貌とはあまり似つかわしくない、大きく重量感のある、光り輝く黄金の
ハルバード……簡単に言えば、先端に斧がついた重い槍。切る、突く、叩く……色々な使い方が出来るが扱い辛い、上級者向けの武器だな。
「イケメンね。ロゼ程じゃないけど」
「いや、筋肉が全然足りないしタイプは違うけど、あっちの方が顔はロゼより上よ?」
「スカーレットは筋肉フェチやったんか……」
「なら何故私との仲を疑われた時即否定したササ」
「確かにきれいに割れた良い腹筋ですが……異性として見られません。それじゃあゴリラでもいいじゃないですか」
「あらら……振られちゃったゲソ。でも、パンダウーマン美がいるから元気出してパンダマン!」
「たしかあの人は……」
惚気るレイジュに性癖を暴露したスカーレット。
驚くウィリーに、唐突に振られたパンダマンと慰めるメイプル。
そしてトリスタンもガルドアを覚えているようだ。
「おれは華麗なる
周りに構わず真っ直ぐオレを見て、
「ガルドア様の決闘よ♡」
「相変わらずお美しい……♡」
周りの女性達が何やら騒ぎながら近づいてきている。多分あいつのファンだな。
「オイオイオイ、死ぬわあいつ……いや、殺さねェのか」
「お兄様は機甲旅団にて最強! というか全員束になっても勝てない……」
「1対多数の方がむしろ得意で、それに適した能力だものね」
「それお前もじゃね? 無差別催眠厨」
「私の能力はオンオフ出来るから。もしも一緒に戦う時があれば耳栓して。私は基本距離とって逃げるけど」
子供達がそれぞれオレの勝ちを疑っていないな。
うれしいが、今のオレ程度を世界の頂点みたいに思うのはちょっと問題か……是非積極的に師匠越えを狙って欲しい。
「ほう……わざわざお上品な奴だな。知り合いか?(こいつのうれしそうで好戦的な笑み……敵じゃねェようだな。海賊と戦う時はいつも不満そうなツラした奴だ)」
「ああ。ちょっとな」
拳銃での決闘経験のあるダディの言う通り、正々堂々名乗りを上げて、その上で手袋を投げ決闘だと言ってくる奴はオレも初めて見た。大体攻撃が挨拶代わりだ。
オレの手前の地面に落ちた手袋を拾う。これで受諾したことになる。
「合意と見てよろしいですね? お名前は?」
「ん? ロゼだ」
いきなり近付いて来た女性に、よく通る声で名前を聞かれる。
頭の上に大きなリボン。緑髪をツインテールにし、両サイドの髪がふわふわしている。童顔にそばかすが似合う、オレと同年代くらいの、人懐っこい笑顔を浮かべた美少女。緑を基調としたへそだしルックで目立つ格好だ。
手にはスタンドマイクが握られているな。
『さあ始まりました
ガルドアがパフォーマンスのようにハルバードを片手で振り回すと、周囲から黄色い歓声が上がる。人気だな。
あのポップなそばかすちゃんのマイクが町のスピーカーに繋がっているようで、大音量が響く。
内容から、今までのガルドアの戦いも実況していたことが窺える。
それにしても〝
『そしてそのガルドアの対戦者は、鋭い視線に大胆不敵な笑みを浮かべた謎の男! あなたは一体誰なの!? ガルドアに決闘を申し込まれた正体不明の風来坊ッ……ロゼ~ッッ!!』
「あっちが
キャロルの奴め。大声でなんてことを。
誰が
『実況はいつも通り、ここセント・ポプラや海列車で繋がる島々でアイドル活動中の、アンでお送りします。
「「
ハイテンションな実況の下、ゴングが鳴らされる。
アイドルだったのか。ハンコック達以外で初めて見た。
色気は断然ハンコック達だが、親しみやすい性格だな。最近は国の人とは親しくなったみたいだが、ファンからは基本崇め奉られている。
宣戦布告された時よりあいつとの間に距離がある。50メートル程だな。
「【
ドスン!
ガルドアが虚空にハルバードを突き出し、【飛ぶ
ついでに黄金が太陽を反射し眩き光を放っている。ゴーグルがなければ目に毒だ。
それを首を横に傾けることで躱し、歩いて近づいていく。
「まっ、キミなら避けるよね~。だけど、これで終わりじゃないよ! 【
ドガガガガッ!
乱れ突きが飛んでくる。先程よりも輝きを増して。
黄金のオーラを纏って見えるガルドアに、周囲の乙女達が刺激が強かったのかバタバタと倒れていく。覇王色いらないな。
それにしても普通より更に重いだろう黄金製の武器を息も乱さず連続で……見た目の派手さだけでなくパワフルな攻撃だな。
だが構わず歩いて進んでいく。
『な、何ィッ!? ガルドアの得意技ッ、幾度となく相手を魅了し倒してきた華麗なる飛ぶ刺突の連続攻撃が、無人の野を進むが如く、余裕の笑みを浮かべながら紙一重で躱されていく!? まるで攻撃の方がロゼを恐れて避けているようだ! ていうか私が怖い!』
「【
見聞色と能力、そして反復練習を繰り返し体で覚えた【
さらに進み、もうすぐ飛ぶ攻撃の関係ない、槍が直接当たる間合いまで来た。
槍を避けながら一歩踏み出し、射程内に入る。
「これ以上近寄らせない! 【
ズバンッ!
武装色を纏ったハルバードをオレの体に目掛け刃筋を立て、黄金の残像と共に横薙ぎにスイングした。
煌びやかなその太刀筋に心奪われた者は、気付けば切られ、倒されているというわけか……当たればだが。
『な、なんとォ! 躱すどころかガルドアが薙ぎ払ったハルバードの先にサーフィンのごとく乗った!?』
「え~ッ!?」
「このくらいで叫ぶな」
柄を靴で滑り降りて、驚いた顔のガルドアの懐に潜り込み、着地と同時にしゃがむ。
「【スクラップ・フィスト】ッ!」
武装硬化した機械の拳を、立ち上がった勢いをそのままに、顎に下から殴りつけようとした所で、
「キャ~ッ! ガルドア様のお美しいご尊顔がッ!」
「(ここまでかッ!)」
能力を解き手を開き、オレの手のひらが顎に触れる。
『お~っと、これはどうしたことだァッ!? ロゼが攻撃を中止したァァ!!』
「えっ?」
手を離し跳びあがって、改めて握り拳を作り、【
ゴツンッ!
「痛いッ!?」
「目を閉じるな! 戦場で相手への警戒を怠らないッ!」
『まさかの拳骨ゥッ!? そして突然のお説教だァァ!!』
ガルドアが悲鳴を上げて尻餅をつく。
「うわ、あれ痛ェんだよな……」
「私も最初同じことされたぁ……DV……」
「(レベッカ相手には大分威力を落とさせているけど)」
「それで、まだ続けるか?」
「いや、やめとくよ。勝っておれの部下にしたかったんだけどなぁ」
『決着ッ! 見事勝負を制したのは、謎の
とりあえず地面に座ったガルドアに手を差し伸べ起こす。
「ありがと、ロゼ」
「刺突を飛ばすとは、上達したな」
『あの~、お二人はどういった関係なんですか? お知り合いみたいですが……』
「ああ。昔ガルドアと家族が揃って戦争から船に乗って避難したけど、オレがいたシャボンディに漂着。そこを拾って、海軍に頼んで希望する場所に軍艦で送ってもらった」
「(ああ……私やレベッカと似た感じなのね)」
マイクを持って近付いて聞いて来たアンに答える。
他にも気になっていた人はいたようで、代表して聞いたという感じだ。
セント・ポプラに行っていたんだな。
「それだけじゃないよ? ロゼはオレに戦いの手解きをしてくれた、いわば師匠だね。そして……あの〝機甲〟なんだ!」
『えっ!?』
アンが大声をあげて後ずさりした。周りもざわついている。
これから毎回こうなるのか。カタギの人間を脅かすのは本意ではないんだが……。
「はははッ! そうなるよね。おれもこの島で彼の噂聞いて驚いて、その後家族と腹抱えて笑っちゃったよ。話が大きくなり過ぎてもうおかしくってさ~!」
「こっちは笑えん。オレはしがない
「いやそれはない」
笑いながら大きく手を振ってないないと主張してくる。
失礼な。お前には父さん達のことを教えていないぞ。
「そういえば、『勝っておれの部下に』って、何の部下だ?」
「ん、興味ある? おれもたまに服作ってる、両親のブティック」
「(ファッションデザイナーとして)お前が欲しい。オレと一緒に来てくれ」
すかさずガルドアを勧誘した。
「「「キャ~ッ♡」」」
なんだ? 周りが騒がしい。
見ると、何人か幸せそうな顔で卒倒している……春だからな。昨日も似て非なるものを見た。
「ちょっと誰か、今の録音してない!? 毎日寝る前に聞きたい!」
「ロゼならともかく、してるわけないやろ」
「本人に直接言ってもらいなさい(私も意識を持っていかれそうになったわ……絵になるわね)」
「ふふん。私は『毎日お前のお菓子が食べたい』って言われたことがあるでゲソ」
「羨ましい!」
周りだけでなく、オレの身内も騒いでいた。
「安心なさい、王女様。私が録っておいたわ」
「ありがとうステューシーさん!」
「いや誰だよアンタ!?」
「この前会った、お兄様の友達……でいいんだよね?」
「ふふふ、もっと……ふ か い な か ♡」
居たのかステューシー。オレすら気付かなかったぞ。
レイジュとがしっと力強く握手を交わしているが、もう片方の手には……録音ではなく録画していたようだ。
「うん。そういう意味で言ったんじゃないんだろうけど、キミって結構迂闊だね」
「そんなことないだろ。隠し事は得意だ」
「胸張って言うことじゃないよ……」
『あの! ちょっとお二人の写真を撮らせてもらっていいですか?』
「ん? ああ良いぞ。でも新聞社とかに晒すのは勘弁。話題を集めて名を上げたい……みたいなのが寄ってきたら迷惑」
オレ達の許可を取ってから、ポラノイドカメラを構えるアン。
目当てはガルドアだろう。超イケメンだし。
ポーズとかの注文を付けられながら、フラッシュと共に撮影。
「やっぱり迂闊じゃないか」
「何が?」
ガルドアが何か言ってくるのと同時にカメラから写真が出てくる。
『ビジョビジョ♪ ビジョン♪』
アンが写真に触れ、指先を空へと向ける。
すると、空間が揺らぎ……軽く微笑んでいるオレと、カメラ慣れしていそうな笑顔のガルドアが、肩を組んでいる姿が浮かび上がった。大喝采が聞こえる……少し怖い。
「
「彼女……アンはキミと同じ悪魔の実の能力者。ビジョビジョの実のビジョン人間さ。触れた絵や写真がビジョンとして現れる。効果時間こそ短いけど、悪魔の実の能力や本人しか知らない情報まで備えてね。アンがロゼの隠し事を暴くつもりだったら、ヤバかったかもね?」
ガルドアがドッキリ成功といった笑顔でウィンクしながら種明かしする……これは迂闊と言われても仕方ないな。
悪意がまったく感じられなかったので、警戒していなかった。
「くっ! 色仕掛けに惑わされたか……!」
『ちょっ! 言いがかりはやめて下さいよ! 皆さんの私に抱いているイメージが! な、なんか睨んできてる人いるし!』
「(ビジョビジョの実……聞いてはいたけど要注意ね。ロゼについて余計な詮索をしない様釘を刺しつつ写真も回収して、彼女を宣伝する代わりにたまにお仕事手伝ってもらおうかしら? この辺りの人脈と影響力がありそう。
ステューシーが真面目な眼だな。
まあ任せて大丈夫だろ。
「アンは美人で人気だからね。まあ……どっちもおれ程じゃないけど」
『あっはい』
ポーズを取って張り合うガルドア。
周りがガルドアに黄色い声を上げている……何故か寒気がするが。
『というわけで、思ったよりも天然臭がする〝機甲〟さんでした!』
「これで少しはキミのイメージも変わったかな?」
「敵からは嫌われた方が潰しやすい……そのために決闘を?」
「いや? 目立ちたかったから。負けちゃったけど、皆楽しんでたみたいだし、結果オーライかな?」
オレがさっき迷惑だと言ったことをすでにやっていた……まあ知らない仲ではないからいいか。
ステューシーが『ちょっとお話があるんだけど……いいかしら?』と話しかけ、ヘビに睨まれたカエルのようなアンだったが、まあ平穏無事に済んだ後、ガルドアの両親がやっているという店に向かう。
「黄金の武器って強いのか?」
「柔らかくて加工はしやすいが、だからこそ武器としての耐久力も低くあまり向いてない。ただ武装色を鍛えればそこはカバー出来るし、重いのはちゃんと扱えるなら利点か。腐食し辛いのも良い所かもな」
黄金のハルバードに興味を示したシュライヤに答える。
光を反射するのか、はたまた腐食に強く輝き続ける神秘性を強化したのか、ゴルゴルの実の能力者は鍛錬次第でレーザーが撃てるとか。
「へえ……ガルドアはそこまで考えて」
「いや、単に派手だからだよ? これ、純金なんだ! きれいだろ?」
「あっそう」
一番柔らかくて高い奴だな。手入れが面倒そうだ。
「そういや師匠って、男も助けるんだな」
「お前の中のオレのイメージがヒドイ」
確かに女も手を貸すけど。とある姉妹とか、〝疫病神〟と呼ばれた奴とか。
「ロゼは男女関係なく助けるけど、男女関係なく戦うゲソ。加減は一応してる」
「そうだな」
「それでステューシーさんは何故ここにいるの?」
「いえ、そういえば結局あなたに教えてなかったから改めて実演して伝授しようかと……私の店もある場所だし」
「恋愛先生!」
オレの今夜の予定が埋まった。
「そういえば、ガルドアは男のオレから見ても美形だけど、キャーキャー言わないな?」
「ふむ。それを子供は当然として、あの3人やCP-0に聞かず私に聞くあたり自覚がありますね」
「それは残酷だろ」
「よろしい。では『教えてお母さん』と言えば答えてあげましょう」
「普通に教えてくれ」
「『私が母だから』という普通でつまらない答えで満足出来ないなら、『教えてお母さん』。
「……教えてお母さん」
スカーレットの要求に、たかが呼び方と自分に言い聞かせ屈した。
「ふふっ、いいでしょう。遠くから眺める分にはとても眼福なのですが、自分より肌がきれいな男の子というのは……少々腹が立ちます。やはり男は筋肉です。その点あなたは素晴らしい肉体ですよ?」
すごい本音が返ってきた。
だがなるほど。ウチは美形が揃っているし、ある程度プライド高いんだな。
「納得したようですが、あなたも相当きれいな肌してますからね? ベジタリアンだからかしら?(お花やフルーツみたいな体臭してるし……)」
「ガルドアはともかく、オレに嫉妬しないで。自分に自信を持ってくれ」
「なので、あなた達2人が並んでいるところを見るのは非常にグッド。シュライヤも見込みありそうなので、男避けは充分といったところですね。それにイケメンを囲うのは良い気分です」
「生々しい。ぶっちゃけ過ぎだ。だがありがとうお母さん」
冗談めかしてそう締め括るスカーレット。
そして店に着き、ガルドアの両親とも再会。
話し合いの結果店の宣伝も兼ねてガルドアの乗船が決定した。
「へえ、シルバーズ・ロゼって名前だったのか……きれいな名前だね?」
「そ、そうか?」
「「「(照れてる……)」」」
「おれ程じゃないけど」
「そうか」
あとは夜までにルビノクヨの木を含めた目当ての物を取引して船に送り、全員が泊まる宿を決めるくらいか。
それにしてもガルドア……オレが教えたことなんて僅かだが、教えてもいないハルバードを使いこなし、武装色を纏えるようになっていた。
優秀だからナルシストなのか、ナルシストだから自分磨きに余念がなく優秀になるのか……どっちだ?
ハンコックは才能がある努力家だな。
☆☆☆☆☆
「はっ! 今ロゼがわらわのことを想っていた気がする!」
「いきなりね……びっくりしたわ」
「あと、わらわと
「多少似てたとしても、
「ふむ。それもそうじゃな」
姉と同じくバスローブ姿のサンダーソニアとマリーゴールド。
最初の頃は姉妹交代で見張りに立って湯浴みの時間を島に告知、背中に見たものを石と変えるゴルゴンの眼があるからと、入浴時に自分達から遠ざけていた3人。
だが天竜人が
すでに知っているロゼ達はともかく、余所者には決して秘密を明かさぬ鋼鉄の誓いの下、今までよりも親密になり、たまに姉妹以外とも一緒に大浴場に入るように……鼻血を出して倒れる者がいるのが玉に傷だが。
最初は不安もあったこの島での生活だが、今では3人にとって大切な場所となっていた。
「ムスッ! ぼくより目立とうとしている奴がいる気がする……!」
王城のバルコニーからバラを咥えて、自分の姿を見るために集まる女性達に、輝く笑顔で手を振っていた王子……キャベンディッシュが、突然顔を歪めた。
「「「キャ~ッ♡ 怒った顔もカッコいい~♡」」」
「フフ……そうかい?」
ファン達の歓声に気を良くし、すぐにいつも通りの柔和な表情に戻り、ムシャムシャとバラを食べ始めるキャベンディッシュ。
ここブルジョア王国では、世にも美しき美貌を持つ王子に魅了され、連日城に国中の女性達が殺到し、年頃の娘が誰一人結婚しない異常事態が発生していた。感極まって気絶している者までいる。
絶世の美女と名高き
「ああキャベンディッシュ様!? そのバラは観賞用で食用ではありません!」
「美しいぼくが美しいバラを食べれば……フフッ、最強だろ?」
「理解不能説明不要の美しさ! 眩しくて直視出来ません!」
観賞用のバラを咀嚼する王子に、衛兵が注意するが満面の笑みで撃退される。
「バラがないならぼくを見ればいいじゃない」
「……おれ、王子なら抱ける。抱かれたい」
「はあ~ッ……おいまただ! 1人檻に追加しとけ!」
「やめろォーッ! おれは悪くねェッ!」
剣術の天才でもあるキャベンディッシュの人気は同性にまで及び、王子の純潔を守るために、日々投獄される衛兵も後を絶たない。
今日も1人、道を踏み外し未知なる世界へ突入せんとしていた者が、両脇を抱えられ連れて行かれた。
「キャベンディッシュ様~♡ 結婚して~♡」
「ごめんね。スターは誰のものでもないんだ」
この騒ぎは、8年間ブルジョア王国の出生数0という驚愕の事実を重く見た現国王が、このままでは国が滅ぶと苦渋の決断を下した結果、愛する息子を『人気ありすぎの罪』でわずか74人の各分野に秀でた部下とたった5億ベリーを渡し国外追放するまで続いたという。
そしてそれは同時に、美し過ぎる王子が一国という狭い檻から、広き世に放たれてしまったことを意味するのだった。
七武海全員覇気使い
ビブルカードには覇気使いとされていない人達もいますが、この作品では覇王色に覇気覚醒効果を付与しているのでその影響。
クロコダイルは〝白ひげ〟と戦った時、モリアはカイドウと戦った時、くまはドラゴンが覇王色と仮定しての話。
ドラゴンも覇気使いとされていないけど、個性的な革命軍のリーダーだし使えるんじゃないかな。
ヨコヅナ
トムのペットの角界ガエル。
しばらく鍛えるための一時加入。
ガルドア(新世界編26歳、キャベンデッシュと同じ)
アニメのコリーダコロシアムで5分くらいしか出番がなかった、キャベンディッシュに負けた
役職デザイナー。
飛ぶ刺突【
アン
東京ワンピースタワーのLIVE ATTRACTIONと今年の映画スタンピード登場のキャラ。
ビジョビジョの実の能力者で、絵や写真に触れると、それがビジョンとなって浮かび上がる。つまり
トンガリ島出身らしいけど、ワンピースタワーの方はわからないので、もうセント・ポプラでいいや。
【
見聞色、メカメカの能力、【
キャベンディッシュ(新世界編26歳)
とても愉快な性格をしている超イケメン。バラは食べる派。
努力せず覇気を使えるようになった名刀デュランダルを持つ天才剣士。相手によるが美し過ぎる見た目で疑似的な覇王色も可能。
愛馬のファルルとは子供の頃から一緒で、馬なのに椅子に座って足を組み、前足でティーカップを持ち紅茶を飲む、驚異の礼儀正しさに育てられている。