機械の皇帝   作:赤髪道化

39 / 48
 サン・ファルド編。
 島の名前と別名、あとは鉄が採れて、ウォーターセブンは造船の資材として仕入れている……原作ではこれ以上大した情報は多分なかったはず。


〝海列車特急→カーニバルの町〟

 一夜明けて次の日。

 ステューシーは満足して帰った。

 

「あン? なんか今日は師匠達機嫌が良いな」

「おいバカやめろ。触れるな。スルースキルを身に付けろ」

「はあ?」

「昨夜はお楽しみだったわ……♡」

 

 宿屋のロビーでの会話。

 朝からピヨピヨ!(※自主規制)の話をするのもあれなので、とりあえず昨日ガルドアに頼んだものを確かめる。

 もう終わったようだ。

 それをスカーレットに渡す。

 

「これは……修道服ですか?」

「そうだ。変装用。ガルドアにやってもらった」

「いつの間にサイズを……」

「オレが目測で」

 

 早速着られるか試してもらう。

 数分後、シスター姿のスカーレットが出てきた。

 

「ピッタリです……父子揃って高いセクハラ技能を……」

「相手の背丈やリーチを正確に把握するのは戦闘において大事なスキルだ。出来て当然」

「本当は?」

女体の神秘への探究心(エロパワー)

 

 足を踏まれた。今のは『何かボケろ』というフリではなかったのか……。

 だが……うん。裾が大きい頭巾で、レベッカ同様特徴的なきれいな髪も隠れているから、パッと見ではわからないだろう。

 修道服を着ているので独身と勘違いされれば、なおバレにくくて良し。

 

「信じる者は、救われます……あなた達に筋肉の加護のあらんことを」

「神ではなく筋肉の加護……筋肉教か?」

「腹筋、大胸筋、上腕二頭筋。すべて平等に価値のあるものです。この世に意味のない筋肉などありません」

「これは多神教になるのかしら?」

「なんやこの色物シスター……」

「シスターではなありません。マザーです。異教徒は導かねば」

「邪教の狂信者じゃねェか」

 

 割とノリが良いスカーレットに各々反応を返す。サイズは問題ないようだな。

 レベッカは意味がわからずポカンとしている。そのままのキミでいてくれ。

 

「これ、1日で作ったんですか?」

「いや、流石にそれは無理だよ。ロゼが持ってきたのをサイズだけ合わせた」

「……あなたは何故こんなものを?」

「昨日ステューシーの店で貰った。昼間は敬虔な修道女が夜はあの恰好で踊っていると思うと、背徳的で興奮す」

「神罰代行!」

「ぐふッ!?」

 

 唐突にもらった平手打ち。予想通りの肘。

 流れるような自然な動作で飛んできた、身に覚えはある制裁を受ける。

 

「まったく……悪いと思ってわざと制裁を受けるなら、何故最初から口に気を付けないのですか」

 

「「「今のはロゼが悪い」」」

 

 陪審員により有罪判決が下された。

 約数名に足をゲシゲシと踏まれる。

 いかん。昨日の今日だからいつもより思考がピンク寄りに……ネジが緩んでいたか。締め直さなければ。

 

 

 宿を出て海列車に乗り、サン・ファルドに到着。

 鉄鋼業が盛んらしく、島の奥に鉱山であろう山々がそのまま残っており、見た限り海と山に挟まれる形で人里の繁華街が存在しているらしい。

 カーニバルの町と呼ばれるように、陽気な雰囲気で賑わっている。

 どうも活火山もあるようでセント・ポプラより暑く、男も女も比較的薄着だ。たまに水着で歩いている人もいて、海パンさんが混ざっていても違和感がない。

 

「バトル・フェスティバル?」

 

 街中を歩いていると、そう書かれたチラシが配られていた様で、レベッカが声に出す。

 上から内容を覗いてみる。

 

「ふむ。トーナメント戦で優勝者には賞金か……興味があるなら出てみるか?」

「えっ、良いの?」

「ダメです!」

「は~い……」

 

 速攻母親に却下されてしまった。

 

「おいおい……」

な に か ?

「少しくらい良くないか? 仮面でもつければ……」

「夢で海賊と戦うのが、私の中で最大限の譲歩のつもりです!」

 

 まあスカーレット程ではないにしても、レベッカも目立たない方が良いか……今はガルドアに周りの視線が集まって助かっている。

 

「スカーレットも出ないとして、他に出たい人いるか? 殺しは失格だけど、人種を問わず悪魔の実の能力も武器もアリ。相手を気絶か降参させれば勝ちのトーナメント戦だそうだ」

 

 あと、この島の住人は出場出来ない様だ。小さく書いている。変わった参加資格だな。

 

「特に興味はないですね……誰かが怪我をした時に備えておきます」

「レイドスーツってアリなのかしら? でも祭り(フェスティバル)で毒を使うのもなんだし、遠慮しとくわ」

「アンがゲストで呼ばれたことがあるよ? おれは去年、決勝で負けちゃったんだよね。それの主催者がウチに衣装制作を頼んで、その縁で参加したんだ。ここの黄金でこいつを作った帰りに」

「何? ここってガルドアより強い奴がいんのか?」

 

 ガルドアがハルバードを掲げながら言い、シュライヤが興味を持つ。

 

「この島の人間じゃないけどね。ウォーターセブン近海、氷街道(ひょうかいどう)のラブリーランドを本拠地にしてるドン・アッチーノだよ」

 

 氷街道(ひょうかいどう)……その名の通り氷山が浮かぶ海域。氷が浮かんでいるだけなので、記録(ログ)はない。オレ達が通ってきた航路とは魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)を挟んで反対側だな。ここからも近い。

 ドン・アッチーノという名は聞いたことがないから、たぶん海賊ではないんだろう。

 

「そいつは聞いたことがあるな。賞金稼ぎ(バウンティハンター)一家、アッチーノファミリーのボスだ。確か能力者だったか。子供も妙な力を持ってるって。無茶苦茶でよくわからん噂の師匠より有名なんじゃねェか?」

「おれも海軍で聞いたな。何度か億越えの賞金首を沈めているらしい。最大10000℃の高温を体から発するアツアツの実の高温人間……なるほど。黄金を溶かされたくなくてリタイアしたな?」

「ははっ、アタリ。今日も来てるって、さっき耳に挟んだよ」

 

 ガルドアがお手上げのポーズを取る。

 今年は出る気がないみたいだな。

 まだそこまで武装色で防げないか。10000℃では黄金に限らず余裕で溶けてしまう……いや、見たことないから何とも言えんが、溶けるどころか蒸発するんじゃないか?

 

「ロゼ以外で億越えを倒してる賞金稼ぎ(バウンティハンター)って初めて聞いたかもしれません」

「そりゃそうだ。海軍に入れば味方の援護に治療や情報の支援を受けられるが、それに比べりゃあ賞金稼ぎ(バウンティハンター)は当然規模が小さくなるし、ロゼがやってたみてェに1人の奴もいる。賞金首だって海賊団に入ったりしていつも1人でいるとは限らん。実力がねェと誰にも知られず返り討ちで死んで終わりだ」

「賞金首みたいに手配書で顔写真が公開されるわけでもねェし、たまに新聞に名前が載ったり、口コミの噂で広まるからな。だから師匠が愉快なことになってるわけだし」

「特に愉快ではない」

 

 同じ賞金稼ぎ(バウンティハンター)で能力者……オマケに億越えを倒す実力か。興味あるな。

 これからは賞金稼ぎ(バウンティハンター)のことも情報を集めるようにしてもいいかもしれん。母さんやステューシーに世間話で聞いてみたり、海軍基地とかでついでに聞けるか。

 

「道理やな……ってこの舞台、火山の近くにあるんやて。暑いんはなあ」

「焼きイカは嫌……」

「私は眠らせれば勝てそうだけど、観客にブーイング食らいそうだわ……」

 

 現在勝ち目がありそうな、たとえ10000℃であっても直接触れずに有効打を与えられそうな奴は不参加か。

 ドン・アッチーノが覇気使いかどうかはともかく、覇気使いにとっても最高温度10000℃は充分以上に脅威となる。気を抜けば死ぬ。そして他の能力者にとっても厄介な能力だろう。

 殺しは失格のルールがあるのでそこまで温度を上げるかはわからんが。

 

「今の私の武装色では、10000℃もの高温には耐えられそうにないササ」

 

 パンダマンの場合は武装色云々の前に、攻撃をまったく躱さないからだ。見聞色で先読みしても回避はしない。

 レスラーは戦いにおいて相手の攻撃を体で受けるものだと。受けの美学だな。それを捨てない限り、今勝つのは難しい。戦闘を放棄して逃げるくらいはするが。

 

「気にすんな、耐えられねェ奴がほとんどだろうよ。おれもやめとくか……銃弾が溶かされちゃどうしようもねェや」

「師匠が前に素手だとマズイ状況があるって言ってたけど、武器あっても結局マズイじゃねェか」

「何? はあ……仕方ない。オレが出て勝てると証明してやろう」

 

 こうしてオレが出場することにした。

 

「ちなみに、誰が優勝するかの賭けもやってるよ? 締め切りは決勝戦開始前まで」

「師匠にミカヅキの懸賞金残り全部賭けよう」

「私もおこづかい全部賭けるわ。倍プッシュよ」

「危険な遊びを覚えて……」

「証明してくれるんだろ?」

「ギャンブルの沼に溺れるなよ? 底がない。まあ今回は特別だ。しかとその目に焼き付けておけ」

 

 

 会場に行き、受付で選手登録を済ませる。

 えー何々……『〝免責同意書〟私は今大会の規則を理解及び遵守し、試合又は賭博若しくは規則違反の罰則において、損害、拘束、傷害、最悪死亡に至る危険がある事を承知の上で参加します』……ルールをちゃんと守って大会に参加して、ギャンブルで損したり、ルール違反のペナルティーで捕まったり、試合で重傷を負ったり死んでも文句を言わないと誓えってことだな。はいはい。

 本名でなくてもいいみたいだし……適当にZERO(ゼロ)でいいか。

 性別、男。年齢、15歳。職業、賞金稼ぎ(バウンティハンター)に丸。海賊って職業だったのか……何故選択肢にある? 懸賞金の額を書く欄まで……今までこういう大会に出たことはないが、これが普通なのか?

 

 そして大会が開始されたのだが……

 

「これトーナメントの意味あんのか? すでに二強じゃねーか。師匠大穴だな」

 

 

 シュライヤが言っているように、あまり意味はなかった。

 中央の舞台を囲み、見下ろす場所にある観客席から見ているが、ドン・アッチーノの方は高温の熱気の球を投げ飛ばし攻撃する技で、相手を焼いて一撃KO。

 反対ブロックのオレはオレで、能力を使うまでもなくワンパンで終わり。

 そこそこ強い双子もいたが、ドン・アッチーノの息子らしく、片割れ……ブリンドの方は父親と当たると即棄権。

 

 戦い自体よりも待ち時間に寄った周りの出店とかのお祭り騒ぎの方が楽しい。

 オープニング・セレモニーでのライブパフォーマンスとか。あれがあっただけでも来た甲斐があった。というか周りの反応を見るに最初からそれが目当ての客もいるらしい。

 

 だがわかったこともある。ドン・アッチーノは何か頭に来ることがあれば温度を上げるようだ。そして温度は上昇への一方通行で下げることは出来ん。能力を解除して氷で冷やしたり、気絶でもしない限り。

 

 

「去年もおれと彼でこうなったね。あの双子はいなかったけど。少しはドン・アッチーノと戦ったんだけど、対戦内容聞くかい?」

「いや、いい。実際に戦って確かめる」

「あの動き……一見ただの肥満ですが、内側に鍛えた筋肉が眠っていると見ました。タフですよ。あの双子も、特にロゼと当たる兄のカンパチーノの方はパワフルですね。あなたの相手ではありませんが」

「流石筋肉教シスター」

「マザーです。心を澄まして筋肉に耳を傾けるのです。さすれば聞こえるでしょう……『もっと自分を使え』『自分はもっと輝ける』という彼らの声が」

「ないです」

 

 そしてその後、準決勝でカンパチーノをKO。

 試合開始すぐに筋肉が増大したくらいで、特に妙な力なんてなかったな……【生命帰還(せいめいきかん)】か。オレのスピードに目がついてきていなかったので問題なくワンパン。

 決勝でドン・アッチーノと戦うことになった。最後の舞台に上がるか。

 

 直前の試合でドン・アッチーノがアツアツの能力を使いリングと観客席の間を溶かした結果、溶岩が生み出された。普通の人間なら場外は死を意味する。

 

「ほ、本当にこのまま舞台整備なしの試合でいいんですね?」

「ああ。フィールドを自分の有利な状態に変え、盤面を整えるのは当然の戦術だ。してはいけないというルールもない。戻るまで待つ方が不公平。第一、試合中にまた変えるだろうから待つだけ時間の無駄」

 

 大量に汗をかいている審判員(レフェリー)に尋ねられ、そう答える。

 可哀想に。マグマのせいでリングから出られないようだ。試合後に飛ばして送ろう。オレも観客席から飛び降りてここに来た。

 

 主催者にも確認を入れ、問題ないと受理されたようだ。

 

「ははっ、(わけ)ェのに言うじゃねェか小僧」

 

 そう言ったのは、サングラスをかけ黒いひげを生やした上半身裸で肥満の男。

 能力で体温を上昇させているからか、体が赤く変色し、口には葉巻を咥えている。

 対戦相手のドン・アッチーノだ。

 

「それはどうも。さっきあんたの息子を倒してしまったがいいのか?」

「あんな優しく気絶させられちゃあ文句なんて言えねェよ。能力者の私に全く怯まねェとはむしろ気に入ったぜ」

「オレも能力者、機械人間だ」

「ほう……それが本当なら、何故教える? 今まで使った様子はなかったが?」

「オレはあんたの能力を知っている。後からそんなこと聞いていないと文句を言われたくはない。今まで使わなかったのは……アリを踏み潰すのに、わざわざ重装備を揃えるバカはいない。あんたはアリか? それともゾウか?」

「はははっ、この私の息子をアリ扱い……一丁前に挑発か! ブリンドがよく使う手だ。それにあんなものアツアツの能力のほんの一端、後悔するなよ小僧? 熱量アップ! 5500℃!

 

 プシュー!!

 

 体温を上昇させたようで、鼻と耳から白い蒸気が噴出する。

 5500℃……MAXの半分程度。まだ全力を出す気はないか。

 温度だけに限ればサカズキさんのマグマグの能力以上。現段階でも通常のマグマの約5倍の(あつ)さ。【ブレード・バーナー・ファルコン】が使うような炎系の攻撃には耐性があると見て間違いない。

 そんな相手、全力を出す前に倒すのがセオリーだが、これは試合……是非最高温度を引き出したいな。

 

 

「あ、あのバカッ! 喜々としてパーパを怒らせてやがる。誰にも止められなくなるぞ!」

「構わない。続けさせよう。彼もまた腕に覚えがある人間……〝機甲のロゼ〟だ」

「あいつがか……? ゼロなんてふざけた偽名を」

「大海賊時代開幕以降の〝機甲〟と、ロジャー時代の新世界を知る〝灼熱〟と呼ばれた男……今までで最高の試合が見れそうだろう? 何より、おれは彼のファンなんだ」

「性格悪いわよ、主催者様?」

「そう言うな、市長様。ちょっとしたサプライズさ」審判員(レフェリー)、試合開始の合図を』

 

 

「そ、それでは決勝戦! ドン・アッチーノVSゼロ、試合開始ィッ!」

 

 主催者が放送で急かし、ようやく始まった。

 

「【熱焼(アツヤ)豪球(タマゴ)】!」

 

 ポン!

 

 手のひらから高温のボール状の熱気を生み出し、こちらに投げつけてくる。今までの試合を決めていた技だ。

 それを紙一重でなく距離を取って躱しながら腰の鞭を取り出し、武装色の【魚鱗(ぎょりん)】で鞭を鋭利にコーティング。

 躱した熱球が地面に当たり、溶かしている。今までの試合とは威力が桁違いだな。

 

「【ブラック・ローズ・ガイル】」

 

 ズババババン!

 

 相手目掛けて鎌風を曲線の軌道を描きながら巻き起こす。

 まずは小手調べ。

 

 

「なるほど。斬撃を飛ばして……結局武器無しの【嵐脚(ランキャク)】でもいいじゃねェか」

「いや、どちらも良くないよ。あれはおれも去年やった」

 

 

「【熱化粧(アツゲショウ)】!」

 

 ドン・アッチーノの周りに、突如突風が吹き、オレの攻撃が上に逸れる。当然彼にはノーダメージ。

 限定的に風を操ることが出来るのか。

 熱を操り空気を急激に温めることで上昇気流を生み出し、風の障壁を作り出しているようだ。

 相手の攻撃の風圧を利用して躱す【紙絵(カミエ)】やスモーカーさんの【ホワイト・フロー】とは、ある意味で逆の防御法だな。

 あれでは鞭による直接攻撃(ダイレクトアタック)も、風で上昇し本人には当たらないだろう。鞭では軽過ぎる。

 

「鞭でやるこんな軌道のは流石に初めて見たが、飛ぶ斬撃など見飽きた! 熱上気(アツアゲ)】」

 

 両手で小さな台風を作りオレの方に投げてくる。

 風に巻き込まれ体が浮き上がった……この風では【RR(レイド・ラプターズ)】達も影響を受けるな。呼び出すタイミングには気を付けるか。

 

「【剃刀(カミソリ)】」

 

 宙を蹴り上に跳び、気流から力技で抜け出す。

 間接的な風の操作だからか、竜巻が追ってきたりはしないようだ。

 

「もう脱出したのか。早ェな……六式(ロクシキ)か。熱焼(アツヤ)豪球(タマゴ)】ッ!」

 

 ポン! ポン! ポン!

 

 またあの熱球を、今度は連続で投げてきた。

 風で身動きを封じてこれで決めるつもりだったか。

 それにしても狙いが正確。オレの動きに目がついてきている。

 

 このままドンを攻撃しても、また上昇気流で吹き飛ばされるだろう。

 ならばと、奴の攻撃を避けながら空中を【剃刀(カミソリ)】で加速し、地面に向かう。

 そして着地の直前に宙返り。【鉄塊片鱗(テッカイへんりん)黒足(くろあし)】……足のみに【鉄塊(テッカイ)】と武装硬化を重ね掛けして、

 

「【地砕(じくだ)】」

 

 ズドォンッ!!

 

 そのまま足を踵落としのように振り下ろし、ステージを蹴り砕いた。

 どうせ周囲はボコボコと音を立てているマグマ……改修せざるをえないから遠慮なく破壊させてもらう。

 なんなら船大工を紹介しようか。腕は海列車製作の手伝いで実証済み。ここまでその日の内に来れるぞ。

 ヒビが入り地面が隆起して、コンクリートの塊があちこちに出来る。

 

「【メテオ・ストライク】!」

 

 ドヒュン!!

 

 その塊にマリンフォードでドミノ達とサッカーをやった時とは違い全力でキックを入れ、蹴り砕かない様に触れた瞬間武装色を纏い硬化。そのままドンへと蹴り飛ばす。

 この勢いと重量なら、風の障壁込みでも頭に当たるはず。

 

「(あの黒色……覇気か!)火車輪(ネッタイヤ)】!」

 

 

 体をタイヤのように高速で前転させるドン。

 

 ドゴン!

 

 そしてそのまま岩を壊すのではなく回転で(はじ)かれる。

 飛ぶ斬撃は風の障壁で上に流し、重い攻撃は回転で逸らす……戦い慣れているな。覇気使いとの戦闘経験もあるようだ。

 

 

 オレがステージを壊したことで、グツグツと煮え滾ったマグマが侵入してくる。

 ここから先、地面に足をつく時は常に【黒足(くろあし)】が必須。素で突っ込めば使い物にならなくなり、代わりを作って戦わねばならん。

 

 ドヒュン!! ドヒュン!! ヒュン!

 

 オレの攻撃を対処した勢いのままこちらに転がってくるドンに、続けて3つのマグマに浸かったコンクリ片を蹴り飛ばす。最後のだけは硬化させずゆっくり蹴り上げる。

 

 三大将と戦う時は、オレに攻撃してきたサカズキさんのマグマを利用し、クザンさんの作った氷にぶつけることで大量の水蒸気を発生。ボルサリーのさんの光を多少弱めると共に目晦まし、気配を消して闇討ちしたものだが、アツアツの能力者にマグマの岩をぶつけた所で熱は効かないだろう。

 

 

「無駄だ!」

 

 ドゴン! ドゴン!

 

 その言葉通り、2つの攻撃が突破される。

 

「(……? 確か3つあったはず)」

 

 だがあの回転では視界が塞がれ、耳も転がる音で大まかにしか聞き取れない。オレの行動の詳細までは把握出来ん。

 

 ドスッ!

 

 先程蹴り上げた岩に、【魚鱗(ぎょりん)】で尖らせ硬化した【黒鞭(こくべん)】を突き刺し、そのまま岩も硬化。

 反応しないということは隠しているわけではなく、見聞色の覇気が使えないようだ。

 

 ギュルルルッ!!

 

 更にオレの体を改造……海軍本部将校、シャリシャリの実の能力者のシャリングルさんのように、鞭を持った手を手首で高速回転させる。

 

「オマケだ。受け取れ、ドン・アッチーノ! 巻力断頭(ウインチダントン)】ッ!」

 

 ドガンッ!!

 

 そのまま勢いをつけスイング。回転する鞭の先端の岩を、転がってくるドンに横から叩きつけた。

 

「ぬおっ!?」

 

 ドンの体が吹っ飛びマグマの中に沈むが、どうせ5500℃の体に熱のダメージはないだろう……そういえば、マグマは能力者にとって海の判定になるのだろうか? もしなるならこれで終わってしまうが。

 

 

「微妙に違うとはいえヨンジの技を……義兄弟の絆ね!」

「ロゼは強くなることに貪欲で器用だから、真似出来る技を取り込みます……まあ大抵下位互換になってしまうので、能力を上乗せしたりしますね。ロゼと組手すると、何人か知らない人間の影がチラつくんです」

「あの父子はただのスケベではありません。特に父の方は『隙アリ』とよく尻を触ってきて本当に困った人です……無駄にこちらの動きを読んで」

「シャッキーの前で豪胆過ぎなイカ?」

「あの家は皆仲良し!」

「……その環境でレベッカのこの性格は、奇跡なんじゃないの?」

 

「なるほど。ああやって戦うんだね……真似出来ないけど」

「海軍本部の階級で言うと、あのドン・アッチーノはどれくらいササ?」

「ん? 強けりゃすぐに昇進出来るってわけじゃねェが、中将以上は覇気が使えねェとなれない……大佐クラスはあるんじゃねェか? ぶっちゃけ将官以上の強さについてはロゼの方が詳しい。伊達に実際戦って認めさせてねェよ」

「あれでガスパーデより下か……」

「そうは言うても、ガスパーデの覇気がどれほどのモンかによるやろ。アメと高温の能力の相性は、ドン・アッチーノに分がありそうやし」

 

 

 しばらく音沙汰なかったが、無事浮上してくるドン。

 マグマは海ではないようだ。まあ、それだと砂漠に埋まっても能力が使えなくなるか。生き埋めになって窒息死することはあるだろうが。

 

「ふう……(ぬり)ィマグマだ。だが相手の攻撃なんざ、もう10年以上まともに食らってなかったか。それも、まだ能力を使ってねェときた。中々やるじゃねェか。効いたぜ」

 

「そちらも最高温度を使っていないだろう? 見たいなら使わせてみろ」

 

 マグマに入ったまま言って来たのを返す。

 やはり熱によるダメージはないようだ。温いで済ますか。

 体内に入ったマグマを口や鼻から出している。

 

「威勢がいいな。相当腕に自信ありか。覇気に六式(ロクシキ)に悪魔の実の能力。噂になっててもおかしくねェが、ゼロなんて名前聞いたことねェ。オメェ一体なんだ?」

 

「あんたと同じ、賞金稼ぎ(バウンティハンター)だ」

 

「同業者だったか! 私は海賊旗を集めるのが趣味でな。良かったら譲ってくんない?」

 

 試合中にそういうこと言うか?

 賄賂みたいで嫌だな……どうせ持っていないが。

 

「いや、全部船と一緒に売っているから譲れない」

 

「売った……だと……? なんッてもったいねェことしやがるこの小僧がァーッ! お前はこの手で溶かし尽くす! アツアツの能力全開ッ!! 最大熱量、10000℃ォッ!!

 

 プシューッ!!!

 

 ……? なんかよくわからんが本気になったようだ。

 再び蒸気を吹き出し、今まで以上に体が赤くなる。

 そしてあの風の障壁が渦巻いている。まるで摩天楼のように天井知らずの高さ。

 ようやく準備運動が終わったか。

 

 

「くっくっく……ハハハハ! 見たか、今の〝機甲〟の顔!? 一瞬ポカンとした後の、待っていたと言わんばかりの獰猛な笑顔! あの男、ドンの最高温度を前に同じくらい燃えている! 観客も目の前の光景を恐れながらも目が離せないようだ! これぞ白熱した試合(イッツ・ア・エンターテインメント)ッ!!

「笑いごとじゃあないぜ。この会場の耐久度にも限界があるだろ」

「ああなったら、もうおれ達でもパーパを止められねェよ」

「止める必要などない! 互いに負けを認めていないからな。当然続行だ! それに何よりおれが見たい!」

「……審判員(レフェリー)どうする気なの?」

「あっ………………ごめん……」

 

 

「骨も残らず溶けろォ! 【アツアツの熱湯乗り(ネットサーフィン)】!!」

 

 ドバアァァッ!!

 

 リングの周りのマグマが燃え滾り、津波のように前後左右から押し寄せてくる。

 そしてその上にドンがサーファーのように立つ。

 上以外に逃げ道はないな。

 熱と風に加えてマグマまで操るか。攻撃手段が豊富だな高温人間。機械程ではないが。

 

「完全にやる気だな。望む所だ。【アームズ・エイド】」

 

 ガシャン!

 

 地面を作り変え大きな拳を作り出し、左腕に装着する。

 ドンを殴るためのものだ。もう片方は鞭を持ったまま。

 

 さてと、あの風の影響を受けないのは……威力が高過ぎる【サテライト・キャノン・ファルコン】は会場も島も、そしてそこにいる人々も攻撃範囲だから論外として……あれでいくか。

 

「群れ成して現れろ。【RR(レイド・ラプターズ)―ワイズ・ストリクス】!」

 

 更にフクロウ型の【RR(レイド・ラプターズ)】を10体程呼び出す。

 人より少し大きいくらいの小型だが、こいつらに大きさは必要ない。むしろもっと小型化したいくらいだ。

 何より今は、1体で1人運ぶくらいは余裕な所が重要。

 

「悪いな、巻き込んで。こいつに掴まってくれ。安全な場所……観客席まで飛ばす」

「あ、ありがとうございます!」

 

 この世の終わりのような顔をした審判員(レフェリー)に呼び掛ける。災難だったな。

 掴まる審判員(レフェリー)の腕を、【ワイズ・ストリクス】の方でも落とさない様に足でしっかりと掴ませる。

 

「飛翔しろ」

 

 全機体を飛ばし、マグマの津波を越え観客席に飛ばす。

 

「ようやく能力を使ったか! だが他人の心配するなんざ、覇気使いだからって余裕かまし過ぎじゃねェか? おれは覇気こそ使えねェが、新世界で覇気使いを仕留めたことなら何度もある。お前のようななァ! 【スチームアイロン 10000℃プレス】ッ!!」

 

 灼熱の津波で周囲を囲み、上からドンがダイブしてくる。

 マグマで焼け死ぬか、10000℃のドンに肉体を蒸発させられ死ぬか……どちらでも好きな死に方を選べ、といったところか。

 だがそれで良いのか?

 

「【ブラック・ローズ・ガイル】!」

 

 ズババババンッ!!

 

 腕を振り上げ、再び鞭による斬撃をドンに飛ばす。

 

 

「なんであの技なんだ? さっき効かなかったじゃねェか」

「いえ、あれはおそらく能力で急激に周りの空気の温度を上げることで、上昇気流を生み出し攻撃を上に逸らす防御技。アツアツの能力では冷やして下降気流を生み出すことは出来ない。ドン・アッチーノが上から降って来ているこの状況なら、今まで程風の妨害はないはずよ」

 

 

「またそれか、猪口才な! 鼻息噴射(ハナジェット)】!」

 

 ブオオオオッ!!

 

 は、鼻から海列車の様に蒸気を吐き出し、ジェット噴射して避けた……だと? マヌケな絵面だが速い。方向転換はやり辛そうだが、オレの【RR(レイド・ラプターズ)】の飛行速度と大して変わらないだろう。物凄い鼻息だ。

 先に迫って来ているマグマをどうにかするか。

 武装色を纏っていないなら、そこまで脅威ではない。見慣れている。今のドンの10分の1位の温度だ。

 

「【機械変化(メタルフォーゼ)】」

 

 ドンの姿を視界の端に入れながら、片足の膝から下をチェーンソーに変化させる。

 そして足の関節を作り変え、可動域を広げる。

 

「【直角飛鳥(ちょっかくひちょう) ボーン大鳥(オオドリー)】!」

 

 ビュオオオッ!!

 

 元王国騎士にして〝船斬り〟の異名を持つTボーンさんの得意技、直角切り。

 その真っ直ぐな太刀筋の斬撃を足で直角に折り曲げながら螺旋に飛ばし、マグマを四角く切り抜き道を開く。

 足を元に戻して風穴を開けた場所に突っ込み、押し寄せるマグマの津波から逃れる。

 

「上から丸見えだ! アツアツ怒髪天(ヘッド)】ォ!」

 

 鼻息で飛んだ勢いのままこちらに頭から突っ込んでくるドン。

 

「そちらから来るなら好都合! スクラップ・フィスト】ォ!」

 

 ドゴォンッ!!

 

 上に放った【アームズ・エイド】を装備したオレの拳と、鼻息で加速しながら落ちてくるドンの10000℃の頭がぶつかり合う。

 

「ぐおッ!?(リングを蹴り砕いたことといい、見かけによらずなんて力だ!)」

 

 そして力尽くで殴り飛ばした。

 殴って近付いたのが一瞬でも熱い。マグマで溶けない様に足の硬化に武装色を回しているからか、はたまたいつもの武装色のパワー不足か、少し【アームズ・エイド】が溶けているな……素手だと拳がなくなっていたか。

 

 再びドンの体がマグマに墜落する。

 だがまだ気絶していない。見かけ通りのタフさだな。

 

「ぷはあッ! 一度ならず二度までも……この強さだといくつもの海賊団を潰し、海賊旗がもう手に入らなくなってるな。クソッタレ! あのバケモノ共をろくに知らずに、やれ海賊王になるだの、新世界に行くだのほざく奴らの海賊旗を奪うのが楽しみだってのに」

 

「さっきも言っていたが、新世界に行ったことがあるのか?」

 

 腹を立てているドンに尋ねる。

 初対面でいきなり海賊旗コレクションの邪魔したから死ねと言われても知らん。

 

「ああ……若ェ頃にな。前半より荒れ狂う海も脅威だが、そんなもの赤子に思えてくる程のバケモノ共。空飛ぶ海賊艦隊にアクア・ラグナ以上の大津波を起こす怪物。喋る太陽や雷雲を従える女傑に巨大なリュウ。それらを出し抜いて偉大なる航路(グランドライン)を制覇したロジャー海賊団や、そいつらを追う能力者でもねェのに山を砕く〝海軍の英雄〟に巨大な仏。あの海は魑魅魍魎が跋扈する魔窟だ」

 

 戦ったことはないが、目にしたことはあるって感じだな。

 

「大海賊時代以降、成り上がったルーキーは〝赤髪〟ただ一人だけ。他はあのバケモノ達に潰されるか傘下に入るかだ……四皇に比べりゃ有象無象のアリンコに過ぎねェおれに手も足も出せねェ癖に、新世界に行くと息巻いてあんな布切れのために命を懸けるバカ共を叩きのめすだけで大金が手に入る。まったく、賞金稼ぎ(バウンティハンター)こそ最高のビジネスだぜ。オメェもそう思うだろ?」

 

 結構強いのに覇気が使えないのは、新世界で異次元の強さを目撃してしまったことが関係しているのか。マグマでサーフィンするあんたも大概なんだが。

 

「そうか。ならば精々今の内に取れるだけ取っておくことだ」

 

「あン? どういう意味だ?」

 

「オレの目的の障害となる、大海賊時代を終わらせるという意味だ」

 

「……笑えねェ冗談だ。四皇(あいつら)全員ブッ倒すとでも? 身の程知らずのバカが。海賊王になるってバカと、大して変わらねェ」

 

「だったらよく見ておけ。今からバカが増えるぞ。叩きのめして笑え……出来るものならな。【R・R・R(レイド・ラプターズ・レプリカ)】」

 

 観客席の下に飛行させ配置し終えた【ワイズ・ストリクス】の瞳から、立体幻像(ソリッドビジョン)でオレを10人投影する。

 

「なんだこれは……分身?」

 

立体幻像(ソリッドビジョン)……この辺りだとビジョビジョの能力と同じようなものと言った方が早いか」

 

 アインの分身を見て思い付いた技だ。

 やっていることはかなり違うが……というかあんなの再現出来ん。

 実体がないからすり抜ける。ただの目晦ましでしかない。このままなら。

 

「要は幻か……分身にしても、腕のアームズ・エイド(それ)を映し忘れてるぞ、マヌケ。これじゃどれが本物か丸わかりだ! 熱焼(アツヤ)豪球(タマゴ)】!」

 

 ポン!

 

 何度目かの熱球を放り投げてくるドン。

 

「意味がないことをするはずない。二千枚瓦正拳・R(レプリカ)】」

 

 ドン!

 

 本体のオレが回避すると同時に、オレの分身がドンの体を殴った。

 

「(なっ、どういうことだ!? 分身じゃ……)」

 

 立体幻像(ソリッドビジョン)に【ワイズ・ストリクス】を通して攻撃の瞬間だけ武装色を纏わせ、物理攻撃を可能にする……重さがないのでオリジナルより威力は大幅に落ちるが、これなら風の障壁で攻撃を逸らされずに、熱も気にせず思い切り殴れる。

 

「だったら……全部撃ち落とす! アツアツの銃乱打(ガトリング)】!」

 

 ポン! ポン! ポン!

 

 ドンが拳をラッシュしながらこちらに近付き、手を使わずに、だからか遅い速度で【ワイズ・ストリクス】へ熱球を飛ばしている。

 手数に対抗するため、分身を別の物に映し変える。

 

「【(ゲン)(コツ)流星群(りゅうせいぐん)R(レプリカ)】!」

 

 ドドドドドン!

 

 武装色を纏った立体幻像(ソリッドビジョン)の鉄拳で熱球をすべてマグマに跳ね返し、そのままレプリカでドンに攻撃し、

 

「これで終わりだ! スクラップ・フィスト】ォッ!!」

 

 ドゴォンッ!!

 

 こちらに向かって来るドンの顔面を殴り、地面に叩きつけた。

 

 ……ようやく気絶。覇気なしでここまで耐えられるとは。非覇気使い相手なら一撃で終わることがほとんどの威力の技ばかりだ。

 それにしても、【アームズ・エイド】がもうドロドロで使い物にならないな。

 とりあえず外して…………熱いとは思っていたが……後で左手をトリスタンに診てもらうか。戦闘の熱が冷めると痛み出してきた。

 

『ブラボー! 〝灼熱のドン〟と呼ばれた、賞金稼ぎ(バウンティハンター)一家のボス……ドン・アッチーノを、終わってみれば無傷で倒したのは、〝機甲のロゼ〟!!』

 

 正確には無傷じゃないが……この分だと死亡や四肢欠損もあり得た。

 そしてさらっと偽名がバレている。観客は湧いているので主催としては大満足だろうが、オレの個人情報は保護されないのか……とりあえず、戦後処理としてマグマをどうにかするか。

 

「現れろ。【RR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン】」

 

 装着していた【アームズ・エイド】と10体の【ワイズ・ストリクス】を再構成、合体させる。

 

「【レヴォリューショナル・エアレイド】」

 

 ヒュー……ボン! ボン! ボン!

 

 氷結弾を空から連続投下し、マグマに降り注ぐ。

 数分後、冷えたマグマの上から氷のステージが出来上がった。これで涼しくなったな。

 戦闘中では風の妨害も受けやすい上、冷やしたところで能力を使い溶かされてしまう。

 

「くそっ、負けちまいやがって! 賞金稼ぎ(バウンティハンター)風情がッ! おかげで大損だ!」

 

 ステージの入り口から毒づきながらゾロゾロとガラの悪いのが入ってくる。

 出場者でもあるな。オレがワンパンで倒したり、他の理由で負けたりで印象に残っていないが。

 口ぶりから、負けた後にドンに賭けてたみたいだな。ウチの者にはこうはなって欲しくない。

 

「その風情に倒されたのはどこの誰だ? それにギャンブルはそういうものだ。損して文句を言うなら最初から賭けるな」

 

 ドンと乱入者の間に立つ。

 

「黙れッ! 1人は倒れ、1人は戦闘後。もうルールなんて知るか! テメェら殺してこの祭りを血祭りに変えてやる!」

 

 よく見れば賞金首も交じっている。

 全試合終わったし、まとめて氷漬けにして頭を冷やしてやるか。

 

「【レヴォ

 

『わたしの主催する大会で暴れるつもりか……ならば、それ相応の措置を取らせてもらう』

 

 放送で声が聞こえた後、ステージの入り口から入ってきたのは……オールバックの髪にシルクハット、所々に星のマークが入った煌びやかな白と金のステージ衣装を着て、片手にマイクとスタンドを持った男。

 ここサン・ファルドの人気歌手(シンガー)にしてこの大会の主催者……ギルド・テゾーロ氏だ。オープニングで歌った時と違い、両手に黄金の籠手(ガントレット)を装着している。

 そういえば免責同意書に罰則とか書いていたな。

 

「まさかパーパを倒すとはな……おれを倒しただけのことはある」

「カンパチーノ兄さん、おれ達兄弟の真の力をあいつに見せつけてやろうぜ」

「そうだなブリンドよ。おあつらえ向きにステージは氷……おれ達のテリトリー、ラブリーランドと同じだ」

 

 脇にはドンの双子の息子、カンパチーノとブリンドの姿も。

 父親を倒したオレへのお礼参りというわけではなさそうだ……やる気みたいだし、空気を読んで手を出さないでおくか。全員攻撃の射程範囲内だ。何かあれば動けるようにだけしておこう。

 それにしても、マッチョ体型でノースリーブ姿の男が2人、ピッタリくっついて腕でハートのポーズを作っている……暑苦しい。

 

 

「【黄金爆(ゴオン・ボンバ)】!」

 

 ゴオンッ!!

 

 黄金のガントレットに武装色を纏いルール違反者を殴りつけたり、マイクスタンドを振り回したり、ワノ国'Sヤクザキックを入れるヤンキー主催者。

 ファンキーなマイクパフォーマンス(物理)だな。マイクの電源は切ったようだ。

 ガントレットは体に纏えば上から一緒に武装色を纏えるので、扱いやすい武器だろう。本来は防具だが。

 それにしてもガルドアといい、この辺りでは黄金の武器が流行っているのか? 鉱山で採れるからかもしれん。そして前半の海では珍しい覇気使い……結構鍛えている。

 

「「もっはっはっは! 見よ! これが我ら兄弟のコンビネーションプレイ!」」

 

「テメェら能力者か!?」

 

 こっちはこっちで……なんだこれ?

 双子が赤と青の光を発し、互いに引き寄せ合ったり反発したり、その力を利用して薙ぎ倒していく。

 

「能力者? 我らは悪魔の実など食べてはいない」

「おれ達兄弟が磁力の様に引き合うのは兄弟愛の力……つまりそう!」

 

「「双子だからだ!!」」

 

「「「ンなわけあるかァーッ!!」」」

 

 一対一ではなくバトルロイヤルで当たっていれば、もう少し戦えていたかもな。

 

 

「話に聞くジェルマみたいな能力ですね、レイジュ……レイジュ?」

「天然の血統因子の異常かしら? イチジ達は胎児の頃に纏めて血統因子の操作が行われて特殊な力が備わった。父親のドン・アッチーノが悪魔の実の能力者であることが胎児の血統因子に影響を? それともお母様が毒薬を飲んだことでサンジの異常が備わらなかった様に、外的要因によって……」

「思考の海に沈んでるでゲソ」

 

 

 数の優位こそ奴らにあったが、大番狂わせは起きず鎮圧された。

 まあ海賊か否かに関わらず、自分の主催した祭りを血祭りにするとか、子供の前で親を殺すとか言って怒りを買わないわけがないので、残念でもなく当然。

 

 

『では諸君、ハプニングも終わったことだし、閉幕式(フィナーレ)といこうか!』

 

 双子がドンと乱入者を連れて行き、場の空気を変えるためか、予定にはなかったアンコールライブが行われた……オレの【レヴォリューション・ファルコン】に乗って飛行しながら。中々肝が据わっている。

 ライブ後サン・ファルドの市長、ギルド・ステラ氏に賞金を貰って大会は終わった。テゾーロ氏とは夫婦だそうで、有名なおしどり夫婦らしい。

 

 そしてそのバカップルに呼ばれた。

 トリスタンに左手を診てもらい、しばらく物を殴るなと言われた後、何の用かと思いながらもVIPルームへ行く。新しい手袋が必要だ。替えを船から持って来よう。

 何故かアッチーノファミリーの3人もいる。

 

「おれとステラはシャボンディで天竜人の奴隷にされかけたことがあってね。まあそれは偶然居合わせたサングラスのナイスミドルが不思議な術で天竜人や店の人間を気絶させ、首輪を外して助けてくれたんだが、あの島でのキミの人攫いや人間屋(ヒューマンショップ)との大立ち回りの日々は痛快だったよ!」

 

 それで〝機甲〟がバレたのか。オレの子供の頃の写真まで持っているようだ。

 オレが手配まがいのことをされた黒歴史の写真を……そしてサングラスのナイスミドルで思い出した。この2人、テゾーロさんの方はゴージャスな服装に気を取られ気付かなかったが、昔父さんに礼を言っていたのを見たことがある。人間屋(ヒューマンショップ)を爆破して帰ってきた時のか。

 成程、テゾーロさんが覇気を使える理由がわかった。父さんの覇王色が原因だな。

 そのことを2人に告げる。

 

「あの時のステラを口説いたロックな御仁はキミのお父上だったのか! 奇妙な縁だ」

「親のギャンブルで苦労した私達が、ギャンブルで身売りされたあなたのお父さんに助けられるなんて、不思議な話ね……」

「まったく。ギャンブルは人生だけで充分だ。お前達も、今回のことで味を占めて溺れるなよ?」

 

 皆に言う。

 ウチの連中、全員オレに結構な額を賭けていた。どうせ勝つからと。レベッカまで……何故止めないスカーレット。

 

「ハハハハ! ギャンブルは胴元に限る。絶対儲かる様にルールを決められる上、人々にエンターテインメントを提供出来るからな」

 

 だよな……商売なんだから、最終的に主催が儲かる様に出来ているよな。手数料もあるし。ここの控除率がどれくらいかは知らんが。

 まあスリルをお金で買っている面があるから人気なんだろう。父さんが昔そんなことを言っていた。

 

 突っ走るテゾーロさんをステラさんがサポートする感じかと思っていたら、そこまで大人しい人でもなかったらしい。

 

 この大会、賞金をエサに海賊を集めて、この島で暴れる前に試合でガス抜きと不穏分子の把握をする目的もあるそうだ。鉱山の資源目当てで来る者の対策にステラさんの発案で。

 そして実際に何か騒ぎを起こせば、テゾーロさんが出向いたり、下手に抵抗せずアッチーノファミリーに連絡して捕らえてもらい回収する手筈だと。

 この島の住人が参加出来ないのはそういうことか。出店とかの主催側か、観戦で楽しむのが主。

 実際にドン達が大会に出場するのはたまにらしいが、つまり最初からグル。互いに利がある提案で、アッチーノファミリーは快く受け入れたそうだ。

 苦労したからか見かけより(したた)かだな。




 ギルド・テゾーロ(新世界編41歳)、ステラ(新世界編43歳)
 テゾーロは『フィルムゴールド』のボスキャラ。父親がギャンブル好きで金を使い込み貧乏生活。父は病気で死亡、手術代があれば助かっていた。
 ステラはテゾーロが愛した女性。父親のギャンブルが原因で売り飛ばされた。映画では故人。
 〝天駆ける竜の蹄〟とかで話題に出した、レイリーが爆破して帰ってきた人間屋(ヒューマンショップ)にいたのでステラ生存&奴隷回避。まさか実際に登場させるのにリアル時間で半年以上もかかるとは……ステラが生きていたので、テゾーロはわざわざ危険を冒してドフラミンゴからゴルゴルの実を強奪せず前半の海にいた。
 映画程お金がすべての考えではなくても、ステラと会う以前の貧乏で苦労した幼少、ヤンキー時代の過去が変わったわけじゃないのでお金は好き。武器も黄金製。
 テゾーロのこともあり、〝世界を滅ぼす兵器〟の話でヴェルゴがゴルゴルの実の能力者と明かすかどうか、スパイだとバレるか、あとコラさんの記憶をどうするか、択が発生していて結構悩んでいた。
 パンクハザードで突然ヴェルゴがゴルゴルの実の能力者と発覚する気の長い案や、こち亀30周年企画でエニエス・ロビーに登場した両津勘吉が海軍にスパイだとバレたヴェルゴの代わりにゴルゴルの実の能力者かつドンキホーテファミリー幹部〝遊び人の両さん〟になるとかいう出オチ案もあった。ギャグ漫画の住人は強過ぎる。

 ドン・アッチーノ
 アニメ『アイスハンター』編に出てきた賞金稼ぎ(バウンティハンター)一家、アッチーノファミリーのパパ。
 ドンが名前なのか首領という意味なのかは不明。タイトルでは灼熱のドンとも言われていたので名前かもしれない。
 超人(パラミシア)系アツアツの実の能力者。最高温度は10000℃。炎や熱に耐性を持ち、マグマに落ちても平気。彼にとってはぬるいらしい。
 上半身裸の肥満体型で、ルフィには裸風船と呼ばれる。だがゾロの【三十六煩悩鳳(ポンドほう)】で倒せない。大体の物は触れれば溶ける超高温。CP-9のブルーノが全く見えなかった、ルフィの【ゴムゴムのJET(ジェット)(ピストル)】を2度目は見切って躱し【JET(ジェット)銃乱打(ガトリング)】を耐える等、アニオリとはいえエニエス・ロビー後の敵だけあって前半の海では強い部類と思われる。
 若い頃新世界に行ったことがあるのは捏造設定。シャッキーと同じくらいの年齢だと思う。

 カンパチーノとブリンド
 ドン・アッチーノの息子でマッチョな双子。
 能力者でもないのに、双子の絆パワーで磁力の様に互いに引き合ったり反発したりする。ギアなしのルフィと2人がかりならそれなりに戦える。

地砕(じくだ)】【メテオ・ストライク
 地面を砕く技と岩などを蹴って攻撃する技。どちらも遊戯王の魔法カードから。
 子供の時から砕いていたけど、今回のは見聞色でものの核を捉えたわけではなく、単純に力で砕いた。
 サンジが『フィルムZ』で使った技に似たような名前の技があるけど、そっちは【恋のメテオストライク】で微妙に違う。

アームズ・エイド
 大きい拳を作って装着する。遊戯王のシンクロモンスター。

RR(レイド・ラプターズ)―ワイズ・ストリクス】」
 アニメに登場しなかったカードなので召喚口上も攻撃名もない。リンクモンスター。
 目のスカウターみたいなのから立体幻像(ソリッドビジョン)を出現させる。【R・R・R(レイド・ラプターズ・レプリカ)】という、本来トラップカードを技名にした。質量がないので威力は本来の技で普通に攻撃した方が高い。

 シャリングル
 エニエス・ロビー編のバスターコールで招集された大佐。体の各部を車輪にして高速回転出来るシャリシャリの実の車輪人間。

 Tボーン(新世界編53歳)
 エニエス・ロビーの手前でゾロと戦った大佐。趣味人助け、モットー一日百善のぐう聖。ただし顔は怖い。
 義務感の高さから、よく重要人物の護衛任務に指名されるらしい。

 氷結弾
 革命軍のリンドバーグが使っていたので、実現は出来ると思うけど、原理はわからない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。