今回のタイトルにあるビブルカード関連まで前回でやりたかったな……いや、やっぱ長いな。
海賊共の骨を折って、〝若葉狩り〟だけを鞭で縛りつけて海軍基地まで引きずって行く。
勢い余って、さっき殴り飛ばして顎を砕いた〝若葉狩り〟の骨も折ってしまうというタイムロスもあったが、まあ目を覚ませば逃げようとしただろうし、別にいいか。
無法地帯を通ってまた絡まれたら面倒なので、造船所やコーティング職人が集まってる50番台のグローブを通り、海軍基地がある66番グローブに向かう。
「おい、ロゼ。その腕、どないした……? なんやえらい腫れとるけど」
「あっ、ウィリーさん。ちょっとドジっちゃって。折れてはいないみたいだから、問題ないよ」
60番台のグローブの途中で友達のウィリーさんに会った。魚人街で暴れた奴でも海軍に引き渡した帰りかな。
この島の住人は魚人を怖がり差別するが、魚人を怖がっていては海兵は務まらない。ウィリーさんも海兵と普通に接している。まあ内心で魚人に対してよからぬことを思っている海兵もいるかもしれないけど、いくらこの島で魚人や人魚が差別されていようが、リュウグウ王国はれっきとした世界政府加盟国。面と向かって悪し様に言ったり、露骨に態度に表したりはしない。相手が海賊であるならともかく、世界政府直属である海軍所属の海兵がそんなことをすれば、普通に問題になる。
父さんに左肘を見てもらって、動かさないようにと言われたから、袖をまくったまま肩にコートをかけただけなので、いつもと違うのを不審に思って声をかけたんだろう。
正面から見たら変色して腫れた肘が丸見えだ。帰るまでに袖を戻しておくか。
ウィリーさんは魚人ゆえか大きな体格をしている、身長3メートル弱ある。
髪の色は白く、肌の色は黒と白のツーカラー。胸にタトゥーを入れて、虎柄の服を着ている。ゴーグルをかけて、トゲの付いた金棒を肩に担ぎ、首には鎖を巻いている。
普段あの鎖で暴れた海賊を縛って、コーティングした船に乗って海軍本部か海軍基地まで引き渡しに来てる。別にウィリーさんだけなら泳いでこれるが、コーティングした船に乗せないと連れてる海賊が溺死するから。
シャボンディで船をコーティングして魚人島に向かった海賊が暴れていると思うと、自分がやったわけじゃないとはいえ罪悪感が……いや、父さんは相手を選んでるみたいだけど。考えなしだったり喧嘩っ早い海賊はシャボンディですでに暴れて、海兵とかオレが潰してるし。〝白ひげ〟の縄張りになってから確実に被害は減ってるらしいし。
でも魚人島の住民相手に略奪すれば、船を壊されて移動手段がなくなることくらい少し考えたらわかるだろうに、何で暴れるんだ? 島の外に放り出されるだけで人間はアウトだろうに。理解出来ん。
実際ウィリーさんは人魚や魚人を攫って船で逃げようとした奴を、シャチの魚人お得意の水泳スピードで追いかけて、金槌で船底にコーティングのシャボンごと穴を開けて捕らえたりしてるらしい。
付いた異名が〝魚雷のウィリー〟だ。
海、それも海中で魚人や人魚にケンカを売るのは普通に考えて自殺行為だろう。陸でケンカを売れって言いたいわけではないが。
「よかったらでいいんだけど、こいつ海軍に引き渡してくれない?」
「ん? ああ、ええで。はよその腕医者に診てもらってきなァ」
「ありがとう。用を済ませたらすぐ行くよ。ちなみにこいつとその仲間が去年メイプル攫おうとした奴」
「……ほォ、こいつが話に聞いてた奴かァ……まあもう無事なん胴体ぐらいみたいやしええわ。今も引きずられながら痛みで呻いとるし」
「懸賞金は好きにしていいから」
「怪我人がいらん気ィ回さんでええさかい行ってきィ。後で家までこの鞭と一緒に持ってくわ」
「こいつの仲間の海賊たちは19番グローブに転がしてるから、海軍に伝えて連れてってもらって」
「19番やな、わかった伝えとく。ほな気ィつけてな」
ウィリーさんに縛った鞭ごと〝若葉狩り〟を渡して、空いた右手で左袖を戻して家に向かう。
☆☆☆☆☆
「ただいまっ。ノジコ起きた?」
「まだソファーで寝ている。怪我はないようだし、じきに目を覚ますだろう」
「ロゼ、あんたは大丈夫なの? 人質取られて怪我したって聞いたけど、輸血は必要?(ああ、良かった……! 思ったより平気そうね)」
「うん。オレは大丈夫。怪我も血を流すようなものじゃないし、輸血の必要はないよ」
オレの血液型はS型のRH-。少し珍しいため、輸血が必要になった時の為に定期的に採血してもらってる。まあ今は海軍の医者に診てもらえるから必要ないけど、いつ海軍に追われることになるとも限らないわけだし、まだ続けてもらっていた。
いずれ旅に出るのだから自分で出来るようにならないといけない。
「ダメじゃない、ちゃんと止め刺してバッキリ心を折らないと。半端に済ませて復讐心残しちゃうと、今回みたいに自分も周りも傷つけちゃうわよ?」
「ごめんなさい。身に染みたよ」
「というか気配出してくれれば、私たちも見聞色で異常があったって気づけるのに」
「……思いつかなかった」
「まあ、無事でよかったわ。とりあえず水袋に氷水入れといたから、冷やしときなさい」
「ありがとう」
水袋を受け取り、ノジコの眠るソファーの左側に座って肘にあてる。
体に怪我こそしていないようが、心の傷は時間と共に癒えることもあれば、いつまで経っても治らないことだってある。なんとかしないと。
「う、うーん……」
「ノジコ、大丈夫?」
30分ほど経過し、温くなった水袋の中身を入れ替えて戻るとノジコが目を覚ました。
「ロ、ロゼッ! 腕が、腕がぁっ!?」
「落ち着いて。折れてないし、なくなってもいないから。ごめん、驚かせて」
左腕を見せながらそう言った。
この反応、父さんの言う通りオレが腕をなくしたのがよほどショックだったらしい。折れたり脱臼したのを見た反応じゃないな。
「ほ、本当?」
「うん、本当だよ。ちょっと怪我したけどちゃんと治るから。ごめんね、怖い目に逢わせて」
「違うよ! あたしが1人になったから…」
「ううん、もしオレがノジコと一緒に行ってたとしても、たぶん防げなかった。だからノジコは何も悪くない。それどころか、ノジコが自力で海賊に立ち向かってくれたおかげでオレは助かった。ありがとう」
一緒に行ってもオレはトイレの前で待ってただけだろうし、女子トイレをずっと睨んで監視するなんて変態みたいなことはしなかっただろう。気配を探っても、知り合いならともかく、知らない人間の男と女の区別なんてつかない。女子トイレにオレに恨みを持った奴がノジコを人質に取りに入るなんてまったく考慮していなかった。去年のオレの詰めの甘さと、相手にオレの常識が通用しなかったからこそ、今回のことは起きたんだ。
ノジコに感謝こそすれ、謝られることは何もない。
「で、でも……」
「はいはい、2人ともそのくらいにしておきなさい?誰も死んだり、取り返しがつかない傷を負ったわけじゃないんだから。反省するのは大事だけど、気にしすぎちゃダメよ? これでも飲んで少し落ち着いて。うちの子のポカに巻き込んじゃってごめんなさいね」
「そうだな、あまり自分を追い詰めん方が良い(ロゼの姿を見るまで取り乱しておったのは自分だろう……)」
母さんがホットココアを持って来てくれた。
飲みながら話すか。
「い、いえ、ありがとうございます。えっと……」
「オレの母さんと父さんだよ。オレがあいつら海軍に引き渡してる間に、父さんにここまでノジコを連れて来てもらったんだ」
「シャッキーって呼んで? うちの人はレイさんって呼ばれてるわ」
しれっと嘘は言わず2人の本名も隠す母さん。
まあ海賊に襲われたばっかのノジコに、引退してるとはいえ海賊だったとバラすのは配慮がなさすぎるだろう。
「気づくのが遅れてすまなかった。怖かったろう」
「はい……ねえ、ロゼ。いつもあんなことしてるの?」
「心配しなくても大丈夫だよ。オレが怪我してノジコ達に会いに来ることなんて滅多にないでしょ? 海軍本部でやってる組手の方がよく怪我するよ」
「(そりゃ
この肘もノジコを送って海軍本部で診てもらおう。そこらの医者よりよほど腕がいいだろう。海兵に怪我は付き物だし。
「でもロゼの夢って野菜とか果物を集めることでしょ?
「オレの目的が野菜や果物を集めるだけでも、海賊がナワバリにしてる島だってある。話が通じる奴もいれば通じない奴もいるだろう。それに今の大海賊時代、海に出たら海賊を完全に避けるのは不可能だよ。だったら強さは絶対に必要だ。船とか苗木とか種とかを買うのにお金も必要だしね」
「(普段の海賊への態度から、ただ海賊が嫌いなだけで
「じゃ、じゃああたしも大きくなったらロゼと一緒に旅に出る!」
ノジコがそう言う。
仲間になってくれること自体はうれしい。たとえ弱くてもオレが強くなって守るなり、鍛えるなりすればいいだけだ。でも……
「ベルメールさんとおいしいみかんを作るのはいいの? そのために頑張って勉強してるのに」
「そ、それは……」
「それに、一緒に来るって今日の事気にして言ってるでしょ? 純粋に一緒に旅がしたいならオレも歓迎するけど、そんなしょぼくれた顔して言われても、とても旅がしたいようには見えないよ」
「だって、ロゼ、あんなこと続けてたら死んじゃうかもしれないじゃん……危ないよぉ」
「ふははっ、死なないよ。オレが普段どれだけ死なないように、鍛えたり色々考えたりしてると思ってるのさ?」
「(まあ、普段から『手足が千切られたらどうやって戦おう……?』とか呟いてる子は心配よね……どうして手足が千切られることが前提なのかしら? お願いだから、そもそも手足が千切られないようにして……!)」
まだノジコは心配そうにしてる。
別に今すぐ旅に出るわけじゃないんだから、そんなに心配しなくていいのに。
「海に出るならもっと笑いなよ」
「なんでよ?死ぬかもしれないのに……」
「だからだよ。海賊がいなくとも海は、特に
まあ父さんに聞いたのは海賊の話だったけど、それ以外の船乗りだって覚悟は同じだろう。オレ自身はそんな覚悟決めた海賊に会ったことなんてないけど、父さんが言うんだからいるんだろうな。〝白ひげ〟とかそうなんだろうし。
「そうだっ! そんなに心配ならこれを渡しておくよ」
オレはコートの内ポケットに入れているビブルカードを取り出し、少し千切って、
「何? この紙」
「ビブルカード。別名、命の紙って呼ばれてる。ちょっと手の平に置いてみて?」
「うん……あれ? 勝手に動いてる……なんで?」
ノジコが手の平に置いたビブルカードが、オレの方に引き寄せられるようにちょっとずつ動いている。
「どうして動くのかはオレも知らないけど、そのビブルカードはオレの爪を材料に使って作ってある。爪の持ち主であるオレの体に引き寄せられるんだ。その紙が動く方向にオレはいる。濡らしても燃やしても平気」
「不思議な物があるんだね」
「それで、ここからが本題なんだけど、その紙は作るのに使った爪の持ち主の生命力を表してる。命の紙って呼ばれてる理由だね。その紙が無事ならオレもちゃんと生きてるから」
「本当?」
「ああ、本当だよ」
オレはそう言うが、ノジコはまだ不安そうにしてる。そんなにオレは死にそうなのか……顔に死相でも出てるのか?
それともすぐ死にそうなほど、弱そうに見えるんだろうか……? うーん……。
「今すぐ海に出るんじゃないから大丈夫だ。10年は後になるんじゃないか? 色々準備も必要だ。そうだな……オレが大人に、18歳になったら一度、どうにかして必ず会いに行く。ベルメールさん達と仲良く暮らしててくれ。その時になってもオレと旅に出るって気持ちがあったら、一緒に行こう」
「……うん! ロゼがぜひ一緒に来てくださいって頭を下げるくらい、美味しい果物作れるようになってるから!今日断ったことを後悔するくらい!」
「ふははっ、それは楽しみだ」
ようやく笑ったか。よかった、もう大丈夫か?
後悔させられるってことは、オレがその時頭を下げて仲間に誘っても断られるのか?まあ、会いたくなったらいつでも会いに行けばいいだけのことか。
「約束だよ?」
「ああ。必ず守る」
ノジコが左手を出そうとしてオレの左腕の怪我を思い出したのか、かわりに右手の小指を立てて出してきたので、オレも右手の小指を出し指切りに応じる。
だが何故か不満げな顔をされた。ジト目で見られる。一体なんだ?
「どうかしたか?」
「指切りする時くらい、その手袋取ってよ」
「ああ、うん。それもそうだな……まあいいか」
ノジコに指摘され、手袋を取り、改めて指切りする。
「……傷があるわけじゃないんだね。何でいっつもつけてるの?」
「そうだな……今日は色々あったし、また今度教える。ベルメールさん達にもまだ言ってないから秘密にしてくれないか? そのうち自分で教えるから」
「? うん、わかった」
どの道、この腕じゃしばらく実戦も激しい訓練もしない方が良いだろう。治るまでは本を読んだり、ノジコ達と話して過ごそうか。しばらく会えなくなるしな。
「じゃあそろそろマリンフォードに戻るか? ナミちゃんを待たせてるし、プリン買って行こう」
「うんっ。あっ、そういえばベルメールさんのプレゼントは?」
「ちゃんと無事だ、ほら」
コートのポケットに入れていたプレゼントを手渡す。少し包装が乱れてるが、許容範囲だろう。
「ありがとう! じゃあ早く帰ろっか。ナミがふくれてそう」
「それはいかんっ、急ごう! 飛んで行くぞ!」
「あははっ、そうだね」
「気を付けてね。ちゃんと医者に診せるのよ?(どうしたんだろう? なんかこの子、さっきから口調が……)」
「ああ、行ってくる!」
「私も途中まで送って行こう(普段の喋り方から、海賊と戦ってる時のような口調になっているな。あれよりは表情や目つきが穏やかだが。この子を心配させないためか?)」
急いでプリン買って行かねば。
☆☆☆☆☆
何事もなくプリンを買い、沿岸まで父さんに送ってもらい、ノジコを小脇に抱えてマリンフォードまで飛ぶ。
片腕でノジコを抱えてるのでバランスが悪く、落とさないようにして飛ぶのが少し大変だったが、なんとか到着。
「ただいま。ナミ、おとなしくしてた?」
「プリンも買って来た。ビンズとアインもありがとう。全員分あるから食べてくれ」
ノジコと部屋に入って肩にかけてた袋を手に持ち、3人に声をかける。
「おそーい! ノジコとにぃにだけでずる~い」
「すまん、遅くなった」
「この子ちゃんといい子にしてたわよ」
「ああ、慣れずに戸惑うこともあったが、問題なかった」
「というか、別に財布取ろうとしないじゃない」
「なんだとっ?」
オレはいつものように取られてるんだが……今日は慣れない人と一緒だから猫でも被ってたのか?
「そもそもナミにいつも財布取られてるの、ロゼだけだよ? 海兵のベルメールさんがそんなの許すわけないじゃない」
「何故オレだけっ!? まるで意味が分からんぞ……」
「遊ばれてるんじゃない? すぐ許しちゃうし」
「毎回ちゃんと叱っているんだが?」
「いやあれ、全然怖くないから……(さっきのロゼ、ナミが見たら怖くて泣いちゃうんじゃないかな……? あたしもちょっと怖かったし。ていうか口調、どうしたんだろ?)」
「むう……もう少し厳しく叱った方が良いのか……?」
他の人から取っていないならいいか? 別にちゃんと返してくれるからオレも困らないし。ただのお茶目なイタズラか、仲の良い兄妹(自称)のコミュニケーションだろう。
今はそれよりも、この肘を診てもらわないとな。
「ちょっと皆でプリン食べていてくれないか? ちょっと怪我したから医者に診てもらってくる」
「そういえばコートの着方が変ね。怪我したのってその左腕?」
「ああ。ちょっと
「……え~、さんぽは~?」
「不服か……?」と聞かれれば「不服よっ!」とビンタを伴って返しそうな感じの、口を尖らせて不服そうな表情で、ナミちゃんはジト目でオレを見て、両手で右袖にしがみつきながらそう言う。やめろ……そんな目でオレを見ないでくれ……。
まるで「あんた〝
……たしかにオレは怪我をしており、ちゃんと医者に診てもらうようにも言われている。父さんにも母さんにもウィリーさんにも。
だがしかし、ナミちゃんとの約束はその前からしている。その約束を後から、オレの失態が原因で怪我をしたからと後回しにするのは人として、いや兄(自称)としてどうなんだろうか? 教育上よろしくないのでは?
この程度の約束も守れずに、これから胸を張ってこの子の兄(自称)と言えるのだろうか? 誇れる兄(自称)でいられるだろうか?
「……先に散歩に行ってからでも」
「バカッ! あんだけ踏まれてたのに、さっさとお医者さんに診てもらってきなさいっ!」
スパーン!といい音を鳴らし、平手で頭を叩かれる。
やるな。スナップの効いた中々の平手打ちだ。
「しかしだノジコ。約束を守るのは人として、兄として当然で」
「やかましいっ、あんたは兄じゃないでしょうがっ!」
ドスンッ!
「グゥッ……!?」
少し身長差があるためかボディアッパーではなく、魚人空手の正拳突きのような、ノジコの左拳によるコークスクリュー腹パンがオレに炸裂し、オレの体が倒れる前に腕で支えられる。
結構効くな……それを海賊にぶちこめば、もっと早く自力で脱出できたんじゃないか…?
それに、何やらノジコの頭にうっすら鬼みたいな角が生えているような……? すごい気迫だな。
そのままノジコにオレの体は肩に担がれる。
お前そんなに力、強かったのか?オレの体、お前より大きいし、当然その分重いんだが……赤ん坊の頃のナミちゃんを抱っこして力がついたのか?
「あたしはこいつをお医者さんに診せてくるから、おとなしくしててね、ナミ?」
「イ、イエスマムッ!(にぃにがいちげきでやられた……! いまのノジコこわい……)」
「わたしたちもいるから安心して(この子って強いの? そうは見えないけど)」
「おとなしく医者に診てもらってこい(何やら凄みを感じる)」
いつもと様子が違う
そのままオレはノジコに、これから出荷されるエレファント・ホンマグロみたいに肩に担がれ、医務室まで強制連行された。
なんかずいぶんと情けないな……そして無様だ。普段オレが引きずってる海賊共もこんな気分なのだろうか?
ノジコに部屋の外で待っていてもらい、医務室でドクターに診てもらったが、どうしてもっと早く来なかった! とすごく怒られながらも、手術を行った後、ギプスで左腕を固定してもらった。
絶対安静にしてるように、左腕を動かすな、訓練なんて以ての外だぞ、絶対だからな! とかなり念を押された。
まあオレ、割と医務室常連だからな。ガープさんやゼファーさん達にボコボコにされる度に来てる。怪我のしすぎで信用なんてもうないだろう。最初の頃は心配されていたが、いつの頃からか、またお前かっ! という反応をされるようになった。
散歩は別にいいよな? 歩かないと帰れもしないし。
「ね、ねえ……なんか平気そうな顔してるから大丈夫なのかと思ってたけど、その左腕の怪我、そこまでひどいの? 大丈夫?(なんかお医者さんのすごい怒鳴り声が聞こえてきた……)」
「ふははっ、平気だ。
「……ほんとなの?」
「ああ、1週間もすれば治るんじゃないか?」
ドクターにはリハビリ込みで1か月くらいかかるだろうと言われたが、大体いつも言われた治療期間より大分早く治る。医者としての腕がいいな。もしくはオレが無理しないように大げさに言ってるだけだろう。
「……ねえ、さっきから思ってたけど、喋り方どうしたの?いつもとちょっと違う気がするんだけど。さっき海賊と話してた時みたい」
「少しは強く見えると思ってな。海賊相手にする時も、油断しないように口調を変えるようにしている。まあ、単純に嫌いだから冷たい口調になってるってのもあるが。変か?」
「ちょっと慣れないかな……怒ってるんじゃないんだよね?」
「何を怒ることがある? それより早く戻ろう。きっとナミちゃん達がオレ達が戻るのを首を長くして待ってる、オレの妹がっ!」
「ああ、うん、通常運転だね……(そのうち慣れるかな? ていうかさっきあたしが兄じゃないって言ったの、もしかして根に持ってる?)」
雑談しながら駆け足で部屋に戻ってきた。
3人ともプリンは食べ終わったようだ。
「すまん! 待たせた。治療も済ませたし、散歩に行こうか」
「……にぃに、そのうでへーきなの?」
「ああ、大丈夫だ。オレは〝機甲〟と呼ばれているらしいからな。この程度は問題にならん」
「あら? その異名、ようやく知ったのね?」
「なんだ、知っていたのか? オレは今日呼ばれて初めて知ったんだが……」
「拙者も知っていたぞ? そもそも、その異名は海軍本部で噂になったものらしいからな」
勝手にオレの悪魔の実の能力がバレそうな異名を付けないで欲しいんだが……能力者とバレそうなだけでも結構嫌だというのに。オレについてあんな海賊共に教える情報など何一つない。
「何故教えてくれなかったんだ?」
「放っておいても勝手に知ると思って。というかなんで今まで知らなかったのよ?」
「聞いたことはあるが、オレのことだと思っていなかったんだ。しかし、どうせなら〝農業王〟とかが良かったな……」
「まだ1つの農作物も育ててないのに、
「たしかに」
トマトに武装色でも纏ってぶん投げて攻撃でもするのだろうか……? もったいないな、ちゃんと食べろよ。
まあ一度付いた異名は仕方がない。知られようが関係ないくらい手札を増やせばいいだけのこと。能力者共通の弱点、海や海楼石もそのうちどうにかすればいい。
「ねえにぃに、ホントにだいじょうぶ? しゃべりかた、いつもとちがうよ?」
「(そうなの? 別にいつもと変わらないような。私には昼間のこの子への喋り方や態度の方がよっぽど変だったと思うけど……何だったの? あれ)」
「ちょっと思うところがあってな。そして、そう言いながらオレの財布を弄ぶんじゃない……」
「(これが話に聞いていた……この子、本当にいつの間に財布を取ったんだ? くの一の類か?)」
オレの左腕のギブスをつんつん突きながら、もう片方の手で財布をポンポン投げていた。いつもいつも、いつの間に取っているんだ?
そしてやっぱり取るじゃないか……本当にオレ以外取られていないのか?
とりあえず自分の財布を奪い返した。
「コラッ、ダメじゃないかっ! 人の物を取ってはいかんといつも言っているだろう? 取っていいのは海賊共の物だけだ」
「(いや、前半はともかくその叱り方はどうなのよ……そんなことをいつもこの子に言ってるの?)」
「ごめんなさ~いっ、てへっ」
ナミちゃんが謝り、かわいらしくウインクしながら舌を出す。
「ふははっ。仕方がないやつだな……海賊共以外の他の人からは取るなよ? じゃあ散歩に行くか」
「はーい!(しゃべりかたはちがうけど、いつもどおり? じゃあいっか)」
「そんなんだから財布取られるんじゃない(ナミのあれは人に謝る態度じゃない……)」
「本当に他の人から取ってないならこれでいいだろ。それで3人はこれからどうする?」
「わたしは海軍に入った時の為に航海術の勉強してくるわ。あんまり怪我人がうろちょろしちゃダメよ? どうせ言っても無駄でしょうけど(あんな小さな子が海図を書く勉強してるなんて……まだ本の文字読めないみたいだから読み聞かせたのはわたしだけど)」
「拙者は竹刀を振ってくる。ご馳走になった。ではまたな」
「ああ、2人とも今日はありがとう。じゃあな」
「ばいばーい!」
ビンズとアインの2人と別れる。ナミちゃんの様子を見る限り仲良くやっていたようだ。
「お前はどうする? やはり色々あったし休んでいるか?」
「休まなきゃいけないのはあんたでしょ……あたしも行くわ。あんまり無理してると止めるからね?」
そう言いながら拳を構え、虚空に正拳突きを放っている……物理的に(息の根を)止めるつもりじゃないだろうな?
なんか今日の1件の影響かたくましくなったな。ちょっとベルメールさんに似ている。
「ねえ、はやくいこ? まちくたびれた~。ノジコもはやく~!」
「はいはい。ロゼはあまりその腕動かさないでね」
「わかっている」
ナミちゃんを真ん中に3人で散歩に行く。まだ体力がついていない1歳児がいるのでゆっくり歩く。
「ねえねえ、そのうでどうしてそうなったの?」
「これか? うーん……ちょっと
「うん、わたしかわいいから!」
「いや、何適当なことを言ってるのよ……?」
「1歳に言うような内容ではないだろ? 大きくなってまた会った時にでも話せばいい」
「その時、ナミはあんたのことまだ覚えてるかしら?」
「不吉なこと言うなよ……」
まだ1歳だから普通に忘れられる可能性は高い。笑い飛ばせない。大丈夫だよな?
「それでベルメールさんのプレゼントなにかったの? おしえてー!」
「お揃いのブレスレットよ。ナミの分もちゃんとあるからね」
「ほんとっ!? みせてみせて~」
「ベルメールさんにプレゼントするまでのお楽しみよ」
「え~、けちっ!」
「そういえば、今日あった事ってベルメールさんにはどうしよう?」
「プレゼントを渡したら教えてくれ」
「えっ? あんたは一緒に渡さないの?」
「娘2人から渡された方がベルメールさんも喜ぶだろう。オレはその後で今日の事を謝る。先に謝ったらプレゼントのことがバレる」
「謝るって、今日の事で誰が一番悪いかって言ったらあの海賊達じゃない。別にロゼが謝らなくても……」
「あいつらが悪いことを否定する気はオレにもないが、オレが原因でベルメールさんの娘を、お前を危険な目に逢わせたことに変わりはない。1つ間違えば取り返しがつかなかった」
ちゃんと謝ろう。オレが怪我してたら怒りづらいだろうから早く治さないとな。
「そんなに重く考えなくても……」
「そうだ! プレゼント渡す時にナミちゃんとこう言うのはどうだ?」
話を切り上げて、前から思っていたことをノジコに耳打ちする。
「え? でも、大丈夫かな……?」
「まずは形から入るのも大事なことだ。それに、必ず喜ぶはずだ」
「そ、そうかな? たしかにあたしもよく言ってるし……うんっ! 後でナミにも言って、やってみる!」
「その意気だ」
「ねえねえ、なんのはなし? なにをやるの?」
「部屋に帰ったら教えるわ」
「? わかった」
その後も雑談をしながらマリンフォードでの散歩を続けた。
そして1時間くらい経った頃、
「つ~か~れ~た~……にぃに~、おんぶして~」
ナミちゃんの体力が尽きてしまったようだ。まあ1歳児だしこんなもんだろう。
「いいぞ。頑張ってたくさん歩いたしな。今は左腕が動かせないからしっかり掴まって」
「いやあたしがやるから……片腕動かせない状態でおんぶなんて危ないでしょ?」
「むぅ……落とすわけにはいかないし、その方がいいか……」
さっきこの3人の中で1番重いオレを平気な顔して担いで歩いていたし、ノジコなら大丈夫だろう。
「じゃあノジコ、おんぶして~」
「お願いする時くらい、お姉ちゃんって言ってもいいんじゃない?」
「ノジコはノジコでしょ?」
「はあ、これだ……ちゃんと掴まってなさいよ?」
「うん! ありがとう、ノジコ!」
「ありがたいならお姉ちゃんって呼んでよ……」
もはやお約束のようないつものやり取りをしながら、妹をおんぶする姉。まあ、そのうちお姉ちゃんと呼ばれるだろう。仲が良いのは間違いない。
ノジコがナミちゃんをおんぶして、一緒に部屋に戻る。
「じゃあ今日はもう帰ることにする。ちゃんと怪我のことを報告する必要もあるからな。じゃあまた明日」
「怪我してるんだから無理しないでね?」
「またね~、にぃに~!」
2人に手を振り別れる。
予想外のこともあったが、大事にならなくて何よりだ。
後はオレがベルメールさんに謝れば今日の問題はすべて終わり。
もうすぐ別れだというのに悲惨な事件にならずに済んでよかった。
〝魚雷のウィリー〟
本来の初登場予定はもう少し先だったが、オリ主を早く医者に診せるために登場。
はっちゃんとメイプルもぼったくりBARで出して、タコイカは手足切り落としてもナメック星人みたいに生えてくるって話をしようかと思ったが、治療が遅れるので止めた。
せっかくなので異名を付けた。
シャボンディには海軍基地か造船所エリア、ぼったくりBARくらいしか出入りしてないが、無法地帯以外に定期的に来る魚人は目立つだろうし。懸賞金は魚人街に寄付したりしてる。
別に映画では関西弁を喋っていないが、喋り方に特徴があった方が誰が喋ってるかわかりやすいのでこうした。ジンベエも方言口調だし。
映画の出番が非常に短いので魔改造したキャラ。あわせて数分あればいいくらいの短さだった気がする。
シャチは海のギャングとか海の殺し屋とか呼ばれ、海の食物連鎖のトップ筆頭候補。
知能も高く、シャチのショーをやってる水族館もある。
偏食だから、人間の方が危害を加えるなど、余程のことがない限り人間を襲うことはないらしい。
オリ主の血液型S型RH-
ワンピースの血液型を現実のにあてると、たぶんX=A型、F=B型、S=O型、XF=AB型。
オリ主の設定からこんな性格かなと色々決めた後、血液型性格判断を見た結果、驚くくらいO型の性格に当てはまっていたのでS型に決まった。
本来XF(AB)型のレイリーとX(A)型のシャッキーの間にS(O)型の子供は生まれないが、現実でまれにシスAB(XF)型という血液の人がいて、その場合O(S)型の子供が生まれることもあるみたいなのでそういう理由にして下さい。実は血がつながってないとかではないです。正真正銘血の繋がった親子。
RH-にしたのはO(S)型のRH-は大体誰にでも輸血できるらしいので、旅に出て輸血が必要になった場合、血液タンクになってもらうためついでにつけといた。まあ今の所、誰か原作キャラがオリジナルイベントで大怪我する予定はないので、ただの保険だが。これでいちいち血液型の心配して調べなくて済む。わからないキャラが多いから。
冷やして応急措置
作者は医学に詳しくないので、前話でオリ主が負った怪我の応急措置がこの方法で正しいかはわかりません。
一応調べはしましたが、肘を反対方向に踏みつけられ、折れてはいないけど脱臼し、靭帯断裂した時の対処法なんてわからない。普通は骨も折れる。骨が金属製だから脱臼で済んだ。
体に異常がある場合、オリ主みたいに腕が腫れたままうろちょろ出歩いたりせず、早く医者に診せて安静にしていましょう。
これはフィクションです。
オリ主が
2歳の途中からやってるが、最初の頃、特に悪魔の実を食べる前は毎回レイリーかシャッキー、もしくは両方が授業参観よろしく気配消してコソコソ物陰に隠れて様子を見守ってた。海軍本部には授業参観してない、流石に自重してる。
イメージとしては子供時代の砂砂団に入ったビビを見守ってたコブラ王達みたいな感じ。だからオリ主の普段の態度と海賊に対する態度が違うことも知ってる。
数十年前に海賊引退したシャッキーはあまり気にしてないが、数年前まで海賊やってたレイリーは結構気にしてる。だからオリ主から昔の話を聞かれたらちょっと喜ぶ。
ちなみにこの2人が言ってることと心の声が大分違うことがあるのは、子供の前で親の威厳を保つため、ちょっとカッコつけてるから。オリ主に見聞色で読まれないように隠してさえいる。
あとキャラ崩壊を出来るだけ心の声だけにとどめたいというメタな事情もある。無駄な抵抗かもしれない。
18歳で大人
サボの出身地、ゴア王国の貴族の男は、18歳で本当の貴族と呼ばれるからそうなんじゃない?
酒やタバコも18歳からかな?
ノジコの腹パン
戦闘パートはともかく、ギャグパートではオリ主が暴走しても腹パン一発で簡単に止まる。これから体を鍛えても変わらない。この手(拳)に限る。
ギャグパートの腹パンの前では、能力による機械の体も
医者の言う治療期間
正確に告げてる。オリ主の治癒速度が単純におかしいだけ。調べたら半年から1年って書いてたけど、この世界大分医学発達してるし人も丈夫だしこんなもんかな。
でもたしぎやペルがロビンに背骨や足の骨折られてもその日のうちに歩いたりしてるからこのくらいおかしくないどころか遅いくらいかも。まあ折れたまま気合で動いてるだけかもしれないけど。
細かいこと考えると面倒だし、オリ主の傷は1日で治した方が良かったかもしれない。
今はまだ子供なので比較的回復が遅いが、これからもっと速くなる。骨折られようが飯食ったり寝たら治ってる。まあ体分離出来るようになって骨折るのさらに難しくなったけど。
オリ主の口調の変化
これまで子供口調が僕の技量不足やその時々のオリ主のテンションにより安定していなかったが、これを機にオリ主は周りに少しでも心配されないようにと強い口調に統一することに。それで心配されなくなることはないが。まあ安定してなかったので前から結構強い口調出てたけど。成長するにつれて徐々に変えるつもりだったが、自分で書いててこんがらがったのできっかけを与え一気に変えた。
この口調でナミちゃん呼びは凄く違和感があって気持ち悪いが、まだちゃんづけ。相手まだ1歳だし。ナミが成長したらなんやかんやで呼び捨てになる。