今、トルネコのカバンには、レミラーマ草は一つしかなかった。
「試し打ちはどうだった?」
まだトルネコが2番アイアンを持っていた時に大量に消費したのに加え、それを取引に使ってからは、まさか今後使うことは無いだろうと思っていた。
「まあまあといったところか。実戦で試したことはないゆえ、何とも言えんが」
黄金の弓の効果は、放った矢を自在にコントロールできることだ。レミラーマと地獄耳の巻物があれば、一方的に攻撃できるのに。
「下の階へ行けば幾らでも実戦できるぜ」
それから10階程降りて行った。実戦は確かに幾らでもできた。だが、地獄耳も出なかったし、世界樹の葉も出ない。
どうやら、アイテムの引きは相当悪いらしい。
リリパと名乗った少年と一緒にパトリック族長を急ごしらえの寝床に移すと、とりあえずパンと釣った魚を焼いた。パトリックは未だに昏睡状態だったし、たとえ起きたとしてもすぐに普通の食事ができる状態ではなかったので、族長には薬草粥を用意しておいた。
これなら、なんとか喉を通るはずだ。あとは族長の回復力に任せるしかない。
「さあ、とにかく、君も食べなよ」
そう言って皿(あの瓦礫から勝手に持って来た。まさか、最後に僕が使うことになるなんて……)をリリパットに差し出した。
「いらない」
もうずっと夢以外は見ることのなくなった目を傾けると、幽かにそう呟いた。
こんな時に、食欲などないことはよく知っている。
「でも、食べないと体が持たないよ。残ったら僕が食べるから、今の内に、すこしでも食べて」
リリパは、黙って僕が差し出した皿の方に視線を移した。おそらく、視力があった時の癖がまだ抜けてないのだろう。
「やっぱりもういいよ」
「じゃあ、しばらくここに置いておくから、お腹が空いたら適当に食べてよ」
一瞬にして全ての家族とこの世の光を失って、すぐに食欲が沸くわけがないのは重々承知しているつもりだ。今日の出来事を、この子は一生背負っていかなくてはならない。でも、それに負けちゃだめだ。これ以上、負けちゃだめだ……
とにかく、今は食べよう。僕は自分の分のパンを食べ始めた。
「……」「……」
食事中に会話が無いことがこんなに不自然だなんて、初めて知った。いや、誰も会話を必要としないことに。
焚き火のパチパチと燃える音だけが聞こえる中――
「う゛ぅ゛……」
背後でアリのクシャミ程度の小さなうめき声がした。
「族長さん、目が覚めたんだね。」
これからの見通しなんて何一つ決まってはいなかったが、とりあえず族長が目を覚ましてくれたのは嬉しかった。族長には、まだ生きる意志がある。
「私は゛…ま゛だ…」
「まだ喋らないで。あの後、また意識を失って…体力の消耗が激しい。薬草粥があるから、とりあえず一口だけ食べてみて」
粥をよそおうとしたときだった。
「奴ら゛は゛……どこ゛に゛い゛る゛……?」
変声機を使ったような声――それは、僕たちに今日何が起こったのかを改めて思い出させた。そして、その前の出来事も……
「コ゛ロ゛ス゛……必ず殺す゛……武器は゛……武器は゛どこ゛だ……?」
降りた先はモンスターハウスだった。
トルネコたちはまたいつものように作業プレイを開始する。
まずライアンが天上へ向って矢を放つ。何本も同時に。⇒その間、迫りくるモンスターはトルネコがその時の気分で選んだ好きな銃器類で倒す⇒矢がモンスターを襲う
だが、このモンスターハウスはやけにモンスターの数が多かった。モンスターの間に、チラチラとミニデーモンの姿がみえる。大方、他のモンスターの蔭から近づいてアイテムを盗もうというのだろう。
「ライアン、あの地獄の鎧を殺ってくれ」
そう言うと、すぐに地獄の鎧はハリネズミと化し、本当に地獄へ落ちた。
だが、ショットガンを構えるトルネコの前に現れたのは、7,8匹ものミニデーモンだった。
こんなにいた訳がない。恐らく分身か身代わりの巻物を使ったのだ。こうなってしまえば、とにかく全部撃ち殺してみるしかない。うまく本物に命中すれば、一発で終わるだろうが。
一匹目――期待したがハズレ。二匹目もハズレ。もう距離がない。次で決めないと盗まれてしまう。
祈りながら3発目を撃つ。命中したが――これもダミーだった。
ミニデーモン達はトルネコの懐からアイテムを盗みだすと、すぐにフロアのどこかへワープしていった。
「ね、うまくいったでしょう?」
悪魔神官は微笑しながらそういった。とは言っても、表情は仮面で隠れて見えはしないが。
「あぁ、確かにな」
アークデーモンが頷く。
「分身の巻物があってもこんなにうまくいくとは思いませんでした。きっと、強い武器に頼っていたせいで完全に油断していたのでしょう。倒すなら今が好機でしょうね」
「でもよ、さっき商人からアイテム盗んだだろ、あれでまた警戒してるんじゃねえのか」
神官はそれを聞いて深いため息を漏らした。仮面の奥からでもハッキリきこえてくる程に。
「あなたはホントに気が小さい。もう少し大きく構えてください、高貴な悪魔族の眷属なのでしょう?」
「悪魔族にもいろいろあるんだよ」
「それは言われずとも分かってますよ。しかし、あなたの場合は慎重ではなくて、ただ臆病なだけです。それを一般論でごまかさないで下さい。前に約束したでしょう。もう、下らない言い訳はしないと」
「分かったよ。ちょっときいてみただけだ」
「それが言い訳だと言うんです」
「分かったって」
「まあ、いいでしょう」
そう言うと悪魔神官はロケットランチャーを手渡した。
「あのミニデーモンがうまくやってくれました。これだけ強力な武器があれば、まず間違いなく勝てます」
「アンタは? 一緒に戦ってくれるんだろ?」
頼み込む目がアークデーモンとは思えない程だ。むしろチワワに近い。
「いいえ、戦うのはあなたお一人で、です」
仮面に隠された顔からその表情を窺い知ることはできない。
「あんな化け物2匹相手に、一人で戦えるかよ」
「ですから、その化け物の武器を奪ったのです。これで敵の戦力は落ちた上に、こちらの戦力は大幅に強化されました。あなたは今、化け物と同等の力を有している訳です」
「確かに、それは分かる。でも、それでも2対1だ。圧倒的に不利じゃねえか」
悪魔神官は心底うんざりした。
鋭い爪――どれ程の敵をサイコロステーキにできるのか――尖った歯――どれ程の肉塊を赤いペーストにできるのか――筋骨隆々たる肉体――そしてどれ程の敵を肉塊に変えられるのか。それら悪魔本来が持つ殺戮の才能は、使われることもなく倉庫にしまわれたまま。戦いに特化した肉体を持ちながら、あわよくば他人に戦いを押し付けようとしている。どうせアークデーモンの役割など、遠くからロケットランチャーを撃つぐらいだ。
これなら、まだあのミニデーモンの方が勇敢なぐらいだ。
しかし、まあいいだろう。こうなることは分かっていた。
悪魔神官は靴音を鳴らしながら壁に近づくと、どう見ても岩にしか見えない擬態されたスイッチを押した。
「私の戦闘力では足を引っ張るだけなので、長年かけて開発したこのキラーマシンに頑張ってもらいます。あなたの仕事は、ロケットランチャーを商人どもにお見舞いしてやることだけです。」
動いた壁からのぞくキラーマシンの眼は、悪魔神官以上に表情に乏しかった。
「それでも、ようやく五分じゃねえか。いくら強い機械でも、やつら二人を一度に相手にできるのか?」
「それは心配には及びません。どうせあの欲どうしい商人のこと、きっと――
何度も止めたが、仕方がない。
トルネコの希望で、結局は別々に行動することになった。
トルネコは、ロケットランチャーを盗まれたにも関わらず、久々にいい気分だった。
これ程気持ちよくモンスターを倒していったことは無い。まして、勇者と冒険していたときはそれを馬車から遠く眺めるだけだった。今のモンスターハウスを勇者に見せてやりたい。
「うん、オッサンにしては悪くない。なかなかセンスがあるんじゃね? 魔法無しも得点高いね。ただ、少し飛び道具に頼りすぎかな」とか言いそうだ。
まぁ、今頃は故郷の村でハッピーエンディングの真っ最中だろうが。
「たすけて……」
一匹のシルバーデビルが、矢の刺さった体を引きずりながら命乞いをしている。
ちょうどいい。この合成生物に2回連続攻撃を付けたかったところだ。すぐさま拳銃でそのシルバーデビルの頭を撃ち抜くと、ナイフで解体して壺の中へ押し込んでいった。
「済まなかった」
ライアンが近づいて言う。
「そんなことはねぇよ。よくやってくれた。むしろ俺の方が済まないと思うぜ」
「いや、私がもっと弓の扱いに慣れていれば、あのミニデーモンを逃がすことはなかったかもしれん」
「俺がすまねえというのはそういう意味じゃねえ。これから別々に探しに行く手間をかけさせてすまねえという意味さ」
やっぱり、なんとしても反対すべきだったのかもしれない。
いくら強くても、万が一の場合もあり得る。トルネコは「その“万が一”が起こっても悲しむ奴はいねえ」と言っていたが、ライアンにとっては大迷惑だ。ここで死なれては、自らの生活にも影響が出るし、このダンジョンの秘密も分からず仕舞いになってしまう。
何より、これから一緒に酒を飲む友人が減ってしまう。ダンジョンに潜る前に買ったあのワインは、二人で飲まねば――意味がない。
トルネコは大丈夫だと言っていた。ここのフロアのモンスターの強さなら、別々でも何の支障もない。だが、盗まれたロケットランチャーは後々絶対に必要になるという。大抵の敵は、ボスクラスでも一撃で倒せるからだ。
それなら、確かに取り戻す価値はある。
仕方がない。それ程強力な武器が盗まれたのだから。
そうだ。仕方がない。
ライアンは自らの悪い予感を打ち消すように――もはや何者もいなくなってしまった部屋の中で――何度も自分に言い聞かせた。
アークデーモンは遠くの茂みの中に身を隠しながら、トルネコがキラーマシンと対峙する様子を眺めていた。かなり離れていても、一人と一台の発する殺気に、逃げ出したい気分を抑えるのが精いっぱいだ。
撃つタイミングは悪魔神官から事前に聞いている。にらみ合っている今ならたやすく倒せそうな気がするが、そこではまだ撃ってはいけない。キラーマシンがチャンスを作る。決定的なチャンスを。そこを一発で決める。もし外してしまえば、かなり厄介だ。商人たちは警戒するし、少なくとも射程距離内には入って来ないだろう。そこにあの黄金の弓を持った戦士が来れば、最悪だ。あの弓では流石のロケットランチャーでも危ない。
とにかく、重要なのは、機を逃さず、一撃で獲物を仕留めることだ。敵はもうすでに、半分は網にかかったも同然なのだから。
どうやら、ただのキラーマシンではないようだ。Lv換算で少なくとも20~30はあるだろう。ボウガンを向けてくるが、防御する気は、トルネコには全くなかった。
マグナムを2丁構えると、キラーマシンへ向ってジリジリと歩み寄る。
驚いた。自信か蛮勇か、あの商人は全く身を守るそぶりすら見せずにキラーマシンへと近づいてゆくではないか。それとも、盗まれたものへの執念か。そのいずれかは、観客の自分にはハッキリとは分からないが。
一人と一台はようやく至近距離まで近づくと、しばし睨み合った。
時間というものは、よく一方向に一定の速度で流れていると思われているが、それは客観時間の話であって、それぞれの主観時間は流れる速さも変わるし、時たま遡ることさえある。
アークデーモンが感じた1時間も、実際は1分もなかった。
ほぼ同時にボウガンが放たれ、マグナムが鋼鉄の獣を放った。
乾いた破裂音が何発もダンジョン中に響き渡った。
しかし、両者の決着は飛び道具では着かなかった。どちらも、すでに弾は撃ち尽くしている。リロードしている時間はなさそうだ――剣を振りかぶるキラーマシンを前にそう判断した、矢ダルマのになった商人はマグナムを捨てると久々に正義のソロバンを取り出した。
だが、接近戦ではキラーマシンの方が動きが早い。剣は吸い込まれるようにトルネコの肩から首の付け根に振り下ろされ首を切断した――かに見えた。
さしもの肉の鎧も、このキラーマシンの剣撃をまともに喰らってはひとたまりもないが、トルネコは肉に剣が食い込んだその瞬間を狙って、肩と顎で剣を挟み込んだのだ。
キラーマシンの腕が高音のうなりを上げて力を入れても、食い込んだ剣はビクともしない。表情のない一つだけの目玉が、忙しそうにキョロキョロと動いた。機械に感情など無かったが、その眼の動きは焦っているようにしか見えない。
トルネコは悠然とソロバンを振り上げると、キラーマシンの頭部に叩きつけた。
キラーマシンの頭部が大きく凹み、眼らしきところから火花が散る。今度は死の恐怖でも感じているのだろうか。
そんなことにはお構いなしに、トルネコが止めの一撃を振り下ろしたが、それは咄嗟にボウガン本体で防御されてしまう。当たり所が悪かったのか、正義のソロバンは柄の真ん中で真っ二つに折れ、珠が地面に散らばった。
もう、キラーマシンにさっきまでの理性は残っていない。肩に刺さった剣を諦めると、トルネコを素手で殴りまくった。その様子はまさしく壊れた猿のオモチャに似ている。
トルネコは折られた正義のソロバンの柄を、思いっきりキラーマシンの顔面に突きたてた。
柄は後頭部まで貫通すると、高級な殺人兵器をただの粗大ゴミへと変えさせた。
あのキラーマシンが負けた。悪魔神官との打ち合わせとは少し違うが、今が商人を倒す好機なのは間違いない。少々避けられても、こっちにはホーミング機能がある。
トルネコがカバンから回復アイテムを取り出そうとしているのを見計らって、アークデーモンはロケットランチャーの引き金を引いた。
手こずらせやがって、ケツ拭きマシンが。それより薬草、薬草……
ん、何か飛んでくる音がするが……
ロケット弾は見事にトルネコに命中し、爆炎を上げた。
傍に痴呆のように佇んでいたキラーマシンの残骸は、爆風に煽られると人形のように手足の関節をアクロバティックに曲げながら、地面を転がっていった。
さて、こちらの仕事は終わった。あとはピンク色の戦士だけだが、キラーマシンがああなってしまった以上、また作戦を立て直さねばならないだろう。
物陰から立ち上がったが、そこでアークデーモンはただならぬ気配を感じ、またもや物陰に隠れた。
今まで周りからは臆病だと言われてきたが、その分敵の気配を察知することは人一倍敏感だ。今までにこの勘は外れたことがない。じっと目を凝らしてみると、地面を転がる焼き豚寸前の肉塊がゆっくり起き上がっているではないか。
何と、まだトルネコには意識があったのだ。
どうやって助かったのかは知らないが、ここで確実に倒しておくにしくはない。回復されたら厄介だから、間髪入れずに次のロケット弾を放った。
弾丸は真っ直ぐにトルネコに向かって突き進んでいく。何の感情も込めずに。
爆音で一瞬、頭の奥が痛む。
(殺ったか?)
顔を上げて見ると、そこには期待した焼き豚はなく、さっきと同じトルネコがいるだけだった。おかしいと思ったアークデーモンの肩に、矢が突き刺さった。
間一髪、間に合うことができた。高速で動くロケット弾に矢を当てる自信はなかったが、戦士の集中力と黄金の弓の魔力はそれを可能にした。
それにしても、まさかモンスターが奪ったアイテムを使いこなすとは――完全に予想外のことだった。撃ってきたとおぼしき茂みにも一発お見舞いしてやったが、あれで完全に敵がくたばったとも思えない。また撃ってくる前に、何としてもトルネコを救出しこのフロアから脱出しなければ――そう考えていると、場所を変えてまた撃ってきた。一度コツを掴んだとはいえ、絶対落とせる訳ではない。敵は用心深く戦い方を心得ている上、こちらは障害物もなく負傷したトルネコを庇いながら闘わなくてはならない。
黄金の弓を手にしてから、ライアンは初めて戦場での不安を感じた。
もう油断はしない。悪魔神官の作戦通り、一発撃つごとに場所を変える。こうすることで、黄金の弓の標的にならずにすむのだ。ここで頑張れば――もう自分を臆病者呼ばわりする奴もいなくなるだろう。
トルネコの傷は酷かったが、薬草の応急処置で何とか立てる程には回復していた。
どうやら、直撃する寸前に爆破よけの盾で防御したのが大きかった。盾は爆発の衝撃で原型を留めてはいなかったが、おかげでトルネコは原型をとどめることはできた。
「ライアン、右に3歩、上に5歩だ」
何のことだろう? とうとう脳にまで重い障害が現れたというのだろうか。
「出口だ、ライアン」
出口と言っても階段は見えない。見渡す限り平らな地面が広がっている。一体何のことを言っているのだ?
「幻覚じゃねえ。目薬草だ。さっき薬草と一緒に飲んだんだよ。おかげで普段は見えない落とし穴がバッチリ見えるぜ」
「それを聞いて安心した。一瞬、もう駄目かと思った」
「本当にすまねえことになっちまったな」
「次の弾丸を撃ち落としたら移動する。動けるか?」
「肩を貸してもらえば、なんとか」
なら大丈夫だ。敵は移動してる分、それ程頻繁に撃てるわけではない。
次の一発さえ凌げば。逃げる時間は十分ある。
「これを使え。最後の目覚まし草だ」
集中力を限界まで引き出す草。ライアンはそれを飲み下すと、弓を引き絞った。
飛んで行った矢は、真っ直ぐにロケット弾に命中した。
アークデーモンは肩にトルネコを担ぎながら移動するライアンを見て、今なら両者を一度に屠ることができると思った。
もう次の弾が飛んできた。さっきより間隔が早い。
「あと一歩だ」
ライアンはトルネコを信じて、一歩を踏み出した。ライアンの目にはそこはただの地面にしか見えない。もしここが見た目通りただの地面なら、二人とも生きて地上に戻れないだろう。だが、ここで心配だけしていても仕方がない。
ライアンは意を決すると、トルネコと一緒に足を踏み出した。
惜しかった。悪魔神官とアークデーモンは落とし穴があった場所を眺めながら、改めて自分たちが逃した魚の大きさを噛みしめていた。
作戦は中々うまくいっていたし、それぞれがよく役割を果たした。逃がしたのは誰のせいでもない、ただ、強運が商人側にあったというだけの話だ。
落とし穴は、爆発の衝撃で跡形もなく吹き飛び、今は焦げた地面がそこに残っているだけだ。誰もここを見て、落とし穴があったなどとは思わないだろう。
悪魔神官は悔しがるアークデーモンの横をすり抜けると、キラーマシンのバラバラになった残骸へと歩み寄り、串刺しにされたその頭部を拾いあげた。
なかなかの自信作だと思ったのだが――どうやら、更なる改良が必要なようだ。正義のソロバンの柄を引き抜くと、その頭部を懐へしまう。
中の制御チップが無事なら、今回の戦闘の経験値を次のマシンに生かすことができる。
まだまだ戦いはこれからなのだ。
相変わらず表情のない仮面の下で、悪魔神官はほくそ笑んだ。