マッド・トルネコ   作:トラネコ

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36.グレイト・ヴィレッジ9

 ギーガ組は、ギーガとネック・ポポロのふた組みにさらに分かれて捜索することにした。ポポロにとっては幸いだった。ブランクがあるとは言え、長年戦場にいたギーガは隙がない。しかしネックは自分をいまだに友人だと思っているのだから、隙だらけと言ってよかった。

 そろそろ、打ち合わせの時間が迫ってきている。

 そこで、ポポロはネックに丘の上へ登るように提案した。高い場所に登ることによって何か発見できないか、という名目だったが、これにはもちろん別の目的があった。

 

 

 突然ポポロが丘の上に登ってみようと言ったので、ネックは最初面食らいました。どうしてそんなことをする必要があるのか、分からなかったからです。ポポロの言う目的を聞いてもそれほどピンとはきませんでした。

「うーん、でもなあ……上からならキメラが偵察してるだろうし、今さら俺たちが行ってもあまり意味がないと思うぜ」

「自分の目でも確認してみるべきだよ」

 ポポロが力説しました。

「見落としてるかもしれないし、それにこのままアテなく探索するより、まずは情報を集めてからでないと」

 そう強く言われてみると、それも最もな気がしてきました。確かに、このままあてどなく漫然と探索し続けても成果は得難いでしょうし、キメラが見落としていることでも、もしかしたら自分たちの目で見ることによって発見できるかもしれないからです。

「それに今日は満月だし、明かりは充分だよ」

 それが決定打になりました。正直言って、このときすでにネックの心の中には持ち前の飽き性が頭をもたげてきたのです。ここの村人が盗みなどするわけがないし、どうせドラキーが一時的なショックを受けて家出しただけだろう――そういう風に考えていたのです。

 そうやって、二人は満月に吸い込まれるようにして丘の上へ登っていきました。

 この村で一番高い丘――アポロンの墓のある場所です。昼間だと絶景に思えた場所でしたが、夜に登ってみるとこれ以上の不気味な場所はないと思えるような場所になっていました。そのうちアポロンの霊が化けて出るのではないか、と思ったほどです。

 そして、ようやく丘の上から辺りを見回して見ました。木々を、家々を、月光がモノトーンで照らし出していました。普段は煌々と灯りの点っている家も、今日ばかりは全部真っ暗でした。それは死んだ世界で辛うじて形を保っているだけの廃墟のように見えました。

 そしてその光景はしばらくの間、ネックの目をとらえて離しませんでした。

 しかし、どこを見ても何も異常は見つかりませんでした。

「ポポロ、そっちはどうなんだよ?」

 

 

 クソッ、そろそろかと思ったのに、何やってるんだ、あいつら。とっくに時間は過ぎたのに、まだ合図が上がってないなんて。あれだけちゃんと計画を決めておいたというのに、結局僕がいないとこれだ。決められたことくらいサッサとこなせよ、クズモンスターが。ああ、もう、ネックが話しかけて来た。これはまずいぞ。このまま何もないなんて答えたら最悪だ。すぐに丘を降りることになるだろうし、森の中に入ったらさすがに合図があっても分からなくなるだろうし……とりあえずここは適当に取り繕っておこう。

 

 

「う~ん……」

 ポポロは曖昧な返事をしました。

「何か見つかったのか?」

「確証はないんだけど、あっちの方に何か見えたような気がするんだ……」

 ポポロが指差した方を凝視しましたが、何も怪しいところは発見できませんでした。

「ていうか、あっちの方はシーザーの屋敷じゃねえかよ。何もねえに決まってら」

 シーザーの屋敷は、現時点で灯りの点いている唯一の建物なので見間違えようがありません。来た方向から考えても、ポポロが指しているのは屋敷であることは間違いありません。

「本当に何か見えたんだけどなあ……ネックは3つも目があるからよく見えないの?」

「ハハハ、目が3つあっても視力は人間と変わらねえよ。俺たちライオネック族の第三の目は、魔力の流れとか普通の目で見えないものを見るためにあるからな」

「へえ、そうなんだ、ふ~ん」

「なんだよ、もしかして疑ってるのか?」

「いや、別に。ただ、ひょっとしたらまたデタラメ言ってるのかなって」

「それを疑ってる、て言うんだよ!」

 

 

 相変わらずネックは余計なお喋りが多かった。恐らく、この騒動にすでに飽き始めてきたのだろう。

――ああ、すぐに終わらせてやるよ。

 ポポロは強くそう思ったが、肝心の合図はまだだった。

 本当に、早く、しろよ……

 もしできることならこの村をマダンテで吹っ飛ばしてやるかメドローアで消し去ってやりたい気分だった。ただ、今はこの計画で一番不確実な部分だ。ここを乗り切らないと、ポポロの将来は開けない。イライラしながら適当にネックのお喋りの相手をして待っていると――ついに合図が見えた。

 これで全てがうまくいったわけではない。しかし一番の難所は乗り越えた。

「ねえ、あれ! あれ見てよ!」

 

 

 ついついお喋りに夢中になってしまったネックでしたが、やがてドラキーの探索のことが頭の中でまたしても気になり始めました。おそらく今頃はギーガかシーザーが発見していることでしょう。きっとたあいもないことに違いありません。そんなことより、ネックはゴールドを盗んだ外部犯のことに思いを巡らしていました。

 ネックの想像上では、実行犯はケチな盗賊ですがその背後に魔族の大物組織が控えており、潜在能力に目覚めたネックは見事その組織を叩き潰して残った人材、拠点などを乗っ取り魔界に一大勢力を築き上げる足がかりにするところまで構想は膨らんでいました。その過程でギーガとシーザーはいつの間にかネックの最重要幹部になっていました。

「ポポロはこの村のこと、どう思う?」

「うん、いい村だと思うけど」

「けど、何なんだよ?」

「けど……ネックは何か不満があるみたいだね」

 ズバリと言い当てられてしまいました。

「俺もいい村だと思うさ。でもさ、この村は閉鎖的だと思うんだ。平和を実現するなら、もっと外に出て敵対勢力を叩き潰さないとダメだ」

「でも、それをやったら平和じゃなくなるんじゃない?」

「戦争を終わらせるために戦争をするんだよ」

「ふ~ん、変なの」

 ネックはそれが変でない理由を説明しようとしました。魔界の勢力は全て自分の保身や利益のために戦争をしているだけで、誰ひとりとして戦争をやめる気などないことを。彼らはむしろ戦争が続いてくれさえすればいいのです。そうすれば、好き放題に暴れまわって略奪できます。そしてそれを止めるための戦争など、誰も行おうとしないことを。

 しかし、あまりに多くのことを語ろうとすると人間は言葉に詰まってしまいます。それは魔族も同じでした。ネックもしばらく何か言おうとしましたが、結局は常套句に逃げました。

「まあ、ポポロは子供だからまだよく分かんねえよ」

 言われたポポロはたまったものではありません。全てお前の理解力がないせいだ、と言われたに等しいのですから。

「そんなことないよ!」

「そうやってムキになるところが子供なんだよな~」

「だから違うって!」

「はいはい、違いますよ、大人ですね、ポポロ君は」

「もうー! 何なんだよ!」

 ポポロは呆れてソッポを向いてしまいました。

 いつもならここで大笑いしていたネックですが、この時ばかりは笑う気になれませんでした。むしろ自分の切実な志が理解されず、月夜の墓の前ということもあって寂しさばかりが募りました。隣にいるポポロまでもが遠い異邦人に見えてきます。

――ま、いいや。

 生来、あれこれものごとを深く考える性質ではありません。それより、今はドラキーを捜索することです。

「とにかく行こうぜ。またオッサンに怒られるし」

「……うん、そうだね」

 ポポロはなぜかあまり乗り気でなさそうでした。

 丘を下ろうと振り返ると、そこにはアポロンの墓石がありました。そこにはアポロンの完全な顔が彫られていました。ネックはしばらくうごくせきぞうの石像に手を合わせると――捜索がうまくいきますように――すぐに丘を下ろうとしました。

 そのとき、ポポロが指差して言ったのです。

「ねえ、あれ! あれ見てよ!」

 言われた通りに振り返ってポポロの指差した方角を見ました。最初は何も見えませんでしたが、やがてそこから細い煙が立ち上がっているのが見えたのです。煙はみるみるうちに太くなってゆき、いくつにも枝分かれしていきます。それは屋敷から立ち上っていました。

 そして、炎も遠くからでも見えるほど大きくなっていきました。ネックには目の前の光景が信じられませんでした。中には村のモンスターたちが立て篭っているのです。

 そしてそれ以上に、屋敷が燃えているという事実は、ドラキーがただならぬ状況であることも暗示していました。

「なんてこった……大変なことになってるじゃないか!」

「うん、そうだね」

「ひょっとして犯人のやつ、俺たちが捜索に出て手薄になった隙に屋敷を襲いやがったのか」

「うん、そうだよ」

 ネックは聞き流すところでした。しかしその前に、その言葉の本当の意味が一瞬で、思考を経ずに理解して愕然としました。

「おい、ポポロ、まさか――

 振り向いた時には、ポポロの手がネックの顔に当てられていました。それは花でも摘むような感じです。

 触れられた瞬間、ネックの精神はカーテンで閉ざされたようにその働きを失い、月光の照らさないところへ沈んでいきました。

 

 

 スラ吉はパチパチという音で目を覚ましました。それは音楽会の割れんばかりの拍手の前に遠慮がちに始まるまばらな拍手のように聞こえました。しかしその後に続いたのはゴウゴウという地の底から響いてくるような唸り声だけでした。それはますます大きくなっていきます。

 スラ吉が目を覚ましたとき、最初は何が何やら分かりませんでした。しばらくしてから、ようやく目に映る映像を心が理解することができました。周囲は炎で完全に赤く染まっていたのです。まさか、ここはさっきまでいた屋敷なのでしょうか。

 一体なぜ、みんなは屋敷に火を放ったんだろう……

 考えましたが、その答えは目の前に転がっていました。トリシーの骸です。口からヨダレを垂らしたまま、絶命していました。顔は意外にも安らかな表情をしているようにスラ吉には見えました。

 トリシーが死んで悲しい、という思いも当然ありましたが、今はそれよりここからどうやって脱出するか、それが先決で、頭の中から悲しみを追い払ってしまいました。

どうやら体は動かせそうです。しかしどこを見てもゴウゴウと燃え盛る火炎に、モクモクと立ち上る煙の柱しか見えません。しかもその包囲もどんどん狭まっているのです。

何とかしてここを脱出してシーザーにこのことを知らせなければ……

 スラ吉はそのことだけを考えました。シーザーはまだ村人たちの本性が変わってしまったことを知りません。このままではシーザーは騙されてしまうかもしれません。そして何よりも、ここを脱出してせめて一矢でも報いたい――そういう切実な思いもありました。

 しかし火炎と煙はどんどん迫ってきて、屋敷を飲み込んでいきます。すでに火炎の熱さは限界にまで達していました。このままではそのうち沸騰したバブルスライムみたいになって蒸発してしまうでしょう。

――なんとかするんだ! なんとか……!

 必死に考えましたが、事ここに至っては何も有効な手段は思い浮かびませんでした。

そして炎が非情にも迫ってきました。

 

 

 とりあえず、ネックには持てる限りの精神感応能力を流し込んで、幻覚を見せておいた。しばらくはあの場所で自らの幻影と戦っていることだろう。もっと本気を出せば洗脳できなくもないが、ここで能力を消耗するのは得策ではない。もしシーザーを仲間にできれば、シーザーに戦わせて弱らせてからで十分だ。

 そうやって隙を作った間にポポロは村の屋敷に向かった。さぁ、あとはむき出しになった本丸に攻め入るだけだ。

 月光の中、屋敷の炎が大きくなるにつれて、ポポロの鼓動も緊張でだんだん大きくなっていった。

 神様、どうかうまくいきますように……

 

 

「シーザーはん、大変でっせ!」

 キメラが突然舞い降りてきて、シーザーに言いました。

キメラの話はシーザーにとって信じられないことでした。色んな考えが頭をよぎりました。これはこの村を潰そうとした魔界の勢力が仕組んだことなのか……

 いえ、それよりもシーザーが思ったのは、もしかしたら敵の策略にまんまと乗って戦力を分散させた上に、一箇所に避難させたせいで余計に被害が大きくなったのではないか、村人に死者(いないに越したことはないか、いてもおかしくない)が出たとしたら、自分の判断が間違っていたせいではないのか、と激しく後悔しました。

 しかし、この緊急事態に自分を責めても何も始まりません。まだ村人はトリシーの指揮の元、シーザーたちの助けを待っているのでしょうから、今は一刻も早く屋敷へ駆けつけ、悪い侵略者を根絶やしにしなくてはなりません。そして敵は一体何者なのか、それも確かめなければいけません。

 屋敷の炎は、すでにシーザーの位置からでも見えるようになりました。月光に照らされた煙まで見えます。本来なら、楽しい収穫祭を迎えていたはずでした。

――それすら許されないというのか……

 しかし、今はその憤りをなんとか噛み殺しました。

「分かった。私はすぐに屋敷へと向かう。君はすぐに飛んでいって、ギーガにも知らせてやってくれ。頼んだぞ」

「承知でっせ」

 キメラの目の前で、シーザーは翼を広げて、目にも止まらぬ速さで飛んで行きました。

 キメラはどんどん小さくなって闇の中へ溶け込んでいくシーザーの後ろ姿を見ながら、ボソッと呟きました。

「ホンマ、単純なやつやな~。こりゃ騙されて当然やわ」

 ポポロのようにほくそ笑むと、キメラはそのままどこかへ飛び去っていきました。

 

 

 そうやってポポロが燃え盛る屋敷にたどり着いた頃、すでにシーザーとモンスターのやり取りが始まっていた。今、シーザーはそのやりとりに集中している上、いくら満月とはいえ夜で視界もよくない。シーザーの視界に入らないように気をつけながら、ポポロはシーザーに隠れながら忍び寄っていった。

 

 

 ネックがハッと気づいたときには、すでにポポロの姿がありませんでした。それにしてもなんということでしょう。まさかポポロが今回の騒動の犯人だなんて……

 ネックにはいまだにそれが信じられませんでした。いいえ、信じたくありませんでした。ポポロはそこらへんの小動物ですら殺せないような性格なのです。

 よく見ると、燃えていたはずの屋敷はすでに真っ暗になっていました。どうしたというのでしょう。しかも村の広場では松明が煌々と照らされて、収穫祭が行われていました。チンドンチンドンと太鼓や鳴り物の音が聞こえます。ところが、広場に目を凝らして見ても何も人影が見えないのです。村の家々にもあかりが灯っていますが、おそらく無人なのだろうと思いました。しかし、収穫祭の騒ぐ音は確かに聞こえてくるのです。

 ネックは第三の目を使って見てみました。魔法で幻覚でも見せているのかと思ったからです。しかし、そこには何ら魔力の流れも痕跡も発見できませんでした。

「おい」

 どこからともなく声がしました。最初は何かを空耳したのかと思いましたが、確かにはっきりと呼びかける声が聞こえました。

「いいからこっちを見ろ」

 背後からです。ギーガの声ではありません。でもどこかで聞いたことがあるような気がしました。

 言われた通りに後ろを見ると、そこには案の定墓石しかありません。

「よう」

 墓石が喋りました。正確に言うと、墓石に彫られたアポロンの顔がそう言ったのです。

「俺と楽しいお喋りしようぜ。お前大好きだろ、そういうの。ぺちゃくちゃ無意味なことばっかり喋りやがってクソガキが」

 いきなりのことだったので最初は面食らいましたが、すぐに腹が立ってきました。

「お前、アポロンじゃないだろ? 一体何者なんだよ」

「ハハッ、俺は一体何者なのか……なんて哲学的で深い問いかけだ。明日の朝までの宿題にしてもいいかな?」

「真面目に答えろよ。それに明日の朝まで生きていられると思ってんのか? お前らが何者か知らねえけど、チンケな魔法で墓石から喋りかけているってことはきっと弱いんだろうな」

「強いか弱いかなんて無意味なんだよ。そんなことはどうでもいい。問題は使えるかどうかだ。そこが重要なんだよ。てめえの脳みそは重要なことは何も把握できないし理解できない。そしてその目も重要なことは何も見ようとしない」

 いい加減にネックもウンザリしてきました。

「楽しい話をするんじゃなかったのかよ。全然楽しくない説教しやがって」

「ああ、悪かったよ。俺も口が悪いもんでね。地獄に落ちるとみんなそうなるのさ……無礼を許してくれたまえ」

 全然許してほしそうな口調に聞こえませんでした。むしろ言葉の隅々に嘲りや軽蔑が含まれていて、余計に腹立たしく思えました。

「まあ、ようやく話もほぐれてきたところで、だ」

 アポロンの彫像が言いました。

「何の話をする? 俺は何の話でもいいぜ」

「とにかく、お前は何者なんだ? それから何を要求しに来た?」

「俺はただの石ころだよ! それ以外の何に見えるって言うんだよ! 石ころだから何もわかんねえ! 何も知らねえ!」

 ネックはもう限界でした。何か情報を聞き出せると思っていたのですが、このままでは無意味な会話で時間だけが流れていくでしょう。

「そうか、お前みたいな馬鹿に聞いて悪かったよ」

「お前こそ馬鹿でした、て謝れ! ただの馬鹿な石ころに話しかけてるんだからな! ギャハハハハ!」

 ネックは耐え切れなくなてアポロンの彫像を蹴ろうとしましたが、そこで急に体が後ろに倒れて、そのまま目の前が真っ暗になりました。

 

 

――おい! 大丈夫か!

 一体どれくらいの時間が経ったのでしょうか。ようやく意識が戻って、ネックは目を開けました。

「よし、大丈夫なようだな」

 目の前にはギーガの大きな一つ目が満月と並んでいました。

「なんだ、オッサンじゃねえか」

「なんだとはなんだ。お前は幻覚に惑わされて一人芝居をしていたんだぞ」

「えっ」

「俺が助けてやらなかったら、今頃お前はアポロンの墓を粉々にしていただろうな」

「あ、いや、そんなことより――

 そこまで言ってネックは体を起こしました。まだかすかな頭痛がします。

「屋敷が大変なことになってるんだよ!」

「ああ、俺ももう見た」

「だったら早く出発しなきゃ!」

「待て、まずお前の身に起こったことを話せ。状況が分からないと行っても足手まといだ」

 ネックはポポロと丘に来てからのことを話しました。

「でも、ポポロはきっと違うと思うんだ」

 ネックは必死で言いましたが、ギーガは表情一つ変えません。

「ネック、よく聞け。ポポロは魔物使いだ」

 魔物使い……それは魔物と絶対に相容れない存在です。もし相容れる時があるとすれば、魔物が洗脳されたときだけです。

「ポポロは魔物使いの能力を使って、お前に幻覚を見せたのだろう」

「そんなの、簡単にできるわけねえ」

「そうだ。簡単にはできない。人間を警戒している魔物相手ならばな」

 ネックは何も言い返せずにただうなだれました。

「お前に一つだけ言っておく。お前はここに残れ」

「どうしてなんだよ。俺だって戦えるさ」

「無理だ。お前にはポポロは殺せない。殺せないなら行くだけ邪魔にしかならん。わかったな?」

「オッサン、むしろ俺にしかポポロを殺せねえよ。俺が殺す。俺にだけ殺す資格があるんだ。だからオッサンこそ邪魔すんじゃねえ!」

 ギーガはしばらく黙っていました。

「いいだろう。そこまで言うなら邪魔しないでおこう。お前自身で決着をつけろ」

「へっ、言われなくても分かってるさ」

 ネックは立ち上がり、ギーガと一緒に急いで丘を下りてゆきました。

 




可哀そうすぎなんだよなぁ……
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