デート・ア・ライブ 千代クレイン   作:事の葉

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漫然とした違和感

-side 千代

 

 私が小学生だった時、折り紙を折ることが出来るというのは一つのステータスだった。それだけで、友達は出来た。金色や銀色の折り紙を持ってたら、それだけでスターだ。でも、中学校に上がると、そんなものはステータスではなく、ただの子供の遊びに成り下がった。

 私は今でも、たまに、本当にたまにだけど、折り紙で何か作ってみる。紙飛行機だったり、鶴は最近下手になった。

 

「すげぇな、どうやって作ってるんだ?」

 

 中学校のどっかの授業で折り紙を折ることになった日、私は一人の男子に声をかけられた。キラキラとした目でこっちを見て、中学生だっていうのに、いい意味で子供みたいで。

 けれど、私はあまり上手に話せなくて、もじもじしながら、手だけは折り紙を折っていた。

 その子とはそれ以降話すことはなかった。けれども、私は、また褒められるんじゃないか、って期待して、部屋で折り紙を折っていた。

 

 そんな感覚も忘れた高校生のある日。再び紙を折ろうとは、私は夢にも思わなかったんだろう。

 

 白かった紙は、染められる。もう、あの指には戻れない。

 

 

-side 士道

 

 今年最後のテストも終わった今日。外は雪が降っていて、二ヶ月前には想像できなかったろう程の寒さを感じる。昔はよくはしゃいだけど、最近は流石にちょっと鬱陶しさも感じる。

 

「五河くん。聞いてますか?」

 

 先生に呼ばれて、ふと目線をクラスに戻す。はい、と適当に帰してまた外に向ける。何故かは知らない。いつもと違って、真っ白だから、という予測こそつくものの、それが事実かどうか、甚だ疑問だった。

 

 

 

「士道、どうしたの?」

 

 昼放課、折紙がこちらに目を向け小首をかしげていた。

 

「ん、なにがだ?」

「今日は何かおかしい」

 

 ぐいと顔が近づく。それでも殆ど表情の変わらない折紙とは対照的に、俺は頬が熱くなってくるような気がした。

 

「い、いや、なんでもないって」

「嘘。何でもある」

 

 どうやらそう易々とは開放してくれないらしい。

 仕方なく、俺は今日一日の違和感を折紙に伝えた。熱はないのに、どうやらぼうっとしてしまうこと、その原因が未だ理解できないこと。

 

「それなら、私にもあるぞ」

 

 と、途端に話に入ってきた十香がくりんとした目を向けた。

 

「ずっと外を見てしまうのだ…なんでだ?」

「いや、俺もそれを知りたいんだけど…」

 

 そういえば、今日は十香も外を見ていたような気がする。まぁ、十香のことだから、雪に興奮しているだけということもあり得るけど。

 ふいに外を見てみると、いつもより元気な生徒達が雪で遊んでいた。雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり。それは、いい意味で子供っぽくて。

 

 それを見て頬を緩めていると、直後けたたましいサイレンが学校を支配した。刹那の間に学校内外を駆け巡り、空間を停止させる。ぼすん、と大きな雪玉が地面に落ちる音がどうしてか聞こえたような気がした。

 

「…精霊」

「そう、だな」

 

 窓から外を見上げ、俺達三人は今から起こり得る事全てを予測していた。やけに冷静に。体は動かないというのに、脳だけは変に回る。

 

「俺と折紙は精霊の方へ向かう。十香はどうする?」

「無論だ」

 

 その目に迷いは無し。純粋なまでの思いで答えてくれた。

 

 

 空間震が発生したのはこの学校から数百メートル離れた住宅街の一角。

 

『士道、気をつけなさい。いつもと同じと思っていたら死ぬわよ』

 

 耳につけたインカムから妹の厳しい声が聞こえる。死ぬ、なんてちょっと前までは軽く使ってたけど、今じゃ全然違う。本当に死ぬ。

 

「あぁ、それでも」

『分かってる。それでこそ私のおにーちゃんよ』

 

 なんだか照れくさくて頬をかいた。

 

「来る」

 

 霊装を纏った折紙が告げる。十香は天使<鏖殺公(サンダルフォン)>を構え、折紙は<絶滅天使(メタトロン)>でもって空へと舞う。

 

 

 爆音、衝撃、熱風。目の前に爆弾でも落とされたような衝撃が全身を覆って、それから後ろへと去っていく。

 それが次第に小さくなっていき、ようやっと目が開ける程度までなった時には、もうそこに元あった街は存在せず、スプーンでアイスを掬ったようなクレータが出来上がっていた。大きさは然程ない。なので、その中心に位置する精霊の姿も容易に分かった。

 彼岸花の添えられた黒い和服。膝下まではあろう長い髪。その隙間を縫って現れたのは白い翼。

 それは鳥が飛び立つような仕草というよりかは、ただ持ち上げられたように宙へ浮いていく。

 

『<ブランク>。ASTとDEMが最重要警戒と位置づけるほどの存在よ』

 

 そんな言葉が耳に入った気がする。けれども、今俺の頭に入るのは、眼前の光景のみ。

 白い翼が羽ばたく度にヒラヒラと落ちていく白い紙。その美しさたるや、俺達三人を虜にするほどだ。

 

「なぁ」

 

 暫くの後、俺は口を開いた。ゆっくりと精霊の目がこちら側を向く。深い藍色をしていた。

 

「なんだ…?」

 

 その言葉に返すよりも先に、天からはミサイルが降ってきていた。

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