日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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第14話

「こんにちは!」

「こ、こんにちは。」

潤とりみは麻里から頼まれた買い物の為に、北沢精肉店に寄っていた。

「いらっしゃーい!潤君、待ってたよ~!」

北沢精肉店の看板娘、北沢はぐみが2人を出迎えた。

「潤君のかーちゃんから聞いてるよ~!ちょっと待っててね!」

はぐみが店の奥に入って行った。

「ところで、りみは何をリクエストしたの?」

「えっと、リクエストって言うか、チョコ以外に好きな食べ物ないの?って聞かれたからお肉が好きって答えただけで…。」

「…なんか、うちの母さんらしい。なんかごめんね?」

「え?い、いや。あ、謝るのはこっちだよ~!こんなことになるとは思わずに言っちゃって…。」

「いやいや。りみは気にしなくて良いよ。」

「でも…。」

「本当に大丈夫だから。折角だから美味しく食べよ?」

潤がりみを宥めていると奥からはぐみがやって来た。

「これがっ。頼まれたっ。お肉だよっ!」

はぐみが肉を潤とりみの目の前に置く。置いた瞬間に「ドーン!」という効果音がつきそうなくらい大きい肉の塊が鎮座していた。

「…はい?何これ?」

「こ、こんなお肉み、見たことない…。」

突然現れた肉の塊に潤とりみは唖然としていた。

「えっと、会計はまた今度で大丈夫だからね!ところで、潤君とりみりんは仲良しなんだね!手繋いで歩くなんて、本当に仲良しさんだ!」

はぐみが笑顔で言うと、潤とりみは「あっ!」と言った。潤が慌てて、手を離す。

「あぁ。うん。な、仲良しなんだ~。ね?りみ?…ん?りみ?」

潤が慌てて、はぐみの対応をして、りみに同意を求めると返事が無かった。潤が確認の為にりみの方を見た。

「りみ?…え?り、りみ?」

りみを見た潤はビックリしていた。りみはずっと潤を見ていた。りみの表情は頬を膨らませ、「むーっ!」と言いたそうな目をしていた。

「え?り、りみさん?ど、どうされましたか?」

「ふーんだ。」

「あれ?な、仲良しさんじゃない?」

はぐみも目の前で起こった突然の変化にビックリしていた。

「はぐみちゃん!そんなことないよ?仲良しさんだよ?お肉ありがとうね!」

りみははぐみにだけニコニコして肉を持ち、歩いていった。

「あっ。うん。お買い上げありがとうー!」

はぐみはりみに向かって叫んだ。

「り、りみ?ちょっと待ってよ。」

潤も慌てて、りみを追いかけた。

 

─────────────────────

「(はぁ~。やっちゃった。)」

りみは肉の塊を持ちながら歩いていた。普通に持っているように見えるが、実はかなり重く、やせ我慢をしている。

「(これ、何キロあるんだろ?…てか、潤君がいけないんだらね!)」

「りみー!」

潤が叫びながらりみに追いついた。

「りみ?どうしちゃったの?」 

「…ふーんだ。」

プイッとりみはそっぽを向いた。

「…りみ?ひょっとして…。手を離したことに怒ってる?」

「…うん。」

「(マジか…。え?まさかとは思ったけど、手を離したことに怒ってるの?え?マジで?怒ってる理由…か、可愛い過ぎない?)」

りみの顔を見ながら潤はポリポリと頬を掻きながら思っていた。一方、りみも

「(…うぅ。お、落ち着いてか、考えてみたらつ、付き合っても無いのに、手を離しただけで怒っちゃうって…。ど、どうしよ…。)」

と、思っていた。

「えっと…。ゴメンね?北沢さんに言われて恥ずかしくなっちゃって。」

「わ、私こそ…ご、ごめんなさい!あ、あのね。潤君が手を離したら急に寂しくなっちゃって…。」

「そ、そ、そうなんだ。えっと…。また手、繋ぐ?」

「え、つ、繋ぎたいけど…。と、と、とりあえず、これを持って欲しい…。」

りみは手をプルプルさせ、持っていた肉の塊が入った袋を潤に差し出した。

「わぁ!気付かなくてごめん!もちろん持つよ!」

りみから袋を預かる。余程重かったのかりみは「ふーっ。」とため息をついた。

「これ、思っていた以上に重いね。本当にゴメンね。」

「ううん。私が勝手に持って行ったから…。ね、ねぇ。…手…。」

「そ、そうだったね。はい。どうぞ。」

潤が手を差し出すとりみはいそいそと繋いだ。

「(ち、ちょっと待って!これ、最初よりは、恥ずかしい!)」

潤は顔が熱くなるのを感じた。りみを見ると、照れているのか、頬を赤く染めていたが、表情は満足そうだった。

「(機嫌治って良かった~。…でも、手を離した時の反応を見ると、紗夜姉さんとかの言う通り、りみって僕の事好きなんだ…。)」

今まで、散々言われてきたが、潤はずっと半信半疑だった。

「(りみの為にも、僕も早くハッキリさせないとなぁ。)」

潤は新たな決意を胸に前をしっかり向いて歩いた。ちなみに、肉が重くて、手が痺れているのは内緒である。

 

─────────────────────

潤が肉の塊と交戦している最中、潤の家では紗夜と日菜が首を長くして待っていた。

「潤君、遅いなぁ。」

「日菜!貴女は少しは落ち着いて待てないの?」

日菜はリビングをウロウロしながら、紗夜はソファーに座り、夕方のニュースを眺めて待っていた。

「だって!遅いんだもん!」

「潤さんと待ち合わせてる訳では無く、私達が勝手に待ってるんだから、しょうが無いじゃない。」

紗夜が座っているソファーの横では潤へのプレゼントが置いてあった。

「潤さん、喜んでくれるかしら?」

「毎年、喜んでるんだから大丈夫じゃない?」 

「今年は、ちょっと特殊だから、ちょっと不安なのよ。」

ちなみに、氷川姉妹は毎年、お金を出し合って潤にプレゼントをしている。去年は今、潤がバイトで使っている鞄、一昨年は潤の部屋に置いてある時計である。

「ただいま~。」

「お、お邪魔します…。」

「あっ!帰ってきた!」

「ちょっと!日菜!?」

潤達の声が聞こえると、日菜は一目散に紗夜の制止を無視して、部屋から飛び出した。

「潤君!おかえ…り?」

いつも元気よく潤を出迎える日菜だが、今日は最初はいつも通り元気があったが段々と尻すぼみしていった。

「日菜?」

紗夜も気になり、玄関に行くとビックリした表情の日菜がいた。

「あぁ。紗夜姉さんただいま。」

「紗夜さん。こ、こんにちは。昨日はありがとうございました。」

「潤さん。おかえりなさい。牛込さんもこんにちは。」

紗夜は挨拶をしたが、あの日菜が未だに固まっている理由が分からなかった。

「(2人に変わっている様子は…ありませんね。日菜は何にビックリしたのかしら?普段と一緒じゃない。手を繋いでいるだけで…。え?手?)」

紗夜が2人を観察している最中、潤は「日菜姉さん?どうしたの?」と言っていた。

「潤さん?牛込さん?…手…。」

「え?あぁ…。離すの忘れてたね。」

「う、うん。そうだね。」

紗夜の言葉を聞き、潤とりみは手を離した。少しだけ名残惜しそうに見えた。

「はっ!ビックリし過ぎて固まっちゃった!潤君!りみちゃん!付き合うことにしたの!手なんか繋いで!もうるるるんだよ!」

日菜が復活し、2人に詰め寄る。2人は圧倒されながらも「付き合っていない」事を伝えた。

「どうゆう経緯で手を繋いで帰る事になったんですか?」

紗夜もビックリしながら聞いた。

「えっと…。なんとなく流れで?」

「はい…。うぅ。恥ずかしくなってきたよ~。」

顔を赤くしながら言う2人を見て、紗夜は

「(どうゆう流れになったら手を繋いで帰る事になるんでしょう?)」

と思っていた。

「と、ところで、紗夜姉さんに日菜姉さんにどうしたの?何か用事?」

「潤君!今年も自分の誕生日忘れてたの?」

「う、うん。朝、りみに言われるまでは忘れてました。」

「やはりそうでしたか。私達は今年も誕生日プレゼントを渡しに来ました。ここじゃ、あれなんで、リビングに行きましょう。」

紗夜の提案により、リビングに向かう。その時に麻里に巨大な肉の塊を渡し、その大きさに紗夜も日菜も驚いていた。

「今年のプレゼントはこれです。」

「毎年、ありがとうございます。なんか…大きくないですか?」

「今年のプレゼントが1番るんって来るよ~!」

「る、るん?えっと、開けて良いですか?」

紗夜と日菜に確認を取り、箱に結んでいるリボンを解き、開けた。中身を取り出すと、見たことがある形をしていた。

「ギター…ですか?」

「うん!そうだよ!」

「高価なものをありがとうございます。大切にしますね。ところで、何でギター?」

潤は素直に嬉しかったが、ギターをプレゼントした氷川姉妹の想いまでは理解出来なかった。

「それはですね。「るんってきたからだよ!」日菜は黙ってて!…コホン。潤さんはCiRCLEでバイトをしてますが、音楽の事をあまり知らないので、CiRCLEの皆さんに迷惑をかけないように勉強して欲しかったのでプレゼントしました。」

「…なるほど。確かに紗夜姉さんの言うとおりですね。折角貰ったので僕も弾けるようになりたいので、また教えてください。」

潤は納得したように頷いて言った。

「もぉ~。お姉ちゃんは素直じゃないなぁ~。潤君がギター弾けるようになったら楽しくセッション出来るって言って、選んだのお姉ちゃんじゃん!」

「ひ、日菜!そ、それは内緒にしてって言ったじゃない!」

「あはは。紗夜姉さん?それは本当ですか?」

「うっ…。ほ、本当です…。」

「でしたら、早く弾けるようになるまで頑張りますね。幸い、僕の周りにはギターを弾ける方が多いので、いっぱい習えます!…りみも僕にギター教えてね?」

「わ、私、ベースだよ!?」

「え?似たようなもんじゃないの?」

「ぜ、全然違うよ!」

「ねーねー!潤君に問題~!ギターの弦は何本でしょうか!?」

「…5本…くらい?」 

潤が答えると、リビングがシーンとした。

「あ、あれ?」

「じ、潤君。貰ったギターを見てみたら分かるんじゃないかな?」

りみが苦笑いしながら言った。

「そ、そうだよね!」

潤はそう言うとギターケースのファスナーを開けた。出てきたギターは赤と黒のチェック柄で光り輝いていた。

「おぉ…。格好いい。」

潤が呟くと

「気に入っていただけましたか?」

紗夜が言った。

「もちろんです!あっ、弦の数は6本だったかぁ~。惜しい。」

「惜しいとかじゃ無いです!CiRCLEでギター見たことあるでしょう?」 

「あった…かな?」

潤が苦笑いしながら言うと、紗夜は呆れた表情を浮かべた。

「潤君、私も少しなら教えれるはずだから、一緒に練習しよ?わ、私も一緒に弾きたいから。」

りみが言うと潤は「うん。」と頷いた。そしてギターを構え

「絶対上手くなってやる!」 

と言った。しかし、紗夜も、日菜もそしてこの中では1番の味方であるりみも苦笑いした。潤はギターを左右逆に構えていた。

 

─────────────────────

「もう、お腹いっぱいだよ~。」

潤とりみが頑張って運んだお肉の塊は麻里の手により様々な料理となって、出てきた。それに舌鼓をうち、今は、潤の部屋で2人は談笑していた。

「潤君。朝に聞いた事なんだけど、昨日は何してたの?」

「そうだったね。詳しく話す約束をしてたね。実は、昨日、秋帆の墓参りに行ってたんだよ。」

「え?秋帆ちゃんの?」

「うん。今まで、墓参りに行こうとしても、足が竦んで行けなかったんだけど、秋帆の妹の夏希ちゃんに協力して貰ってね。実はね、その時に手紙を貰ってね。秋帆が書いた物なんだけど。」

潤は引き出しを開け、封筒を取り出し、りみに手渡した。

「…読んで良いの?」

りみが聞くと潤は頷いた。丁寧に封筒を開け、りみは読み始めた。その様子を潤は黙って見ていた。するとりみの目から涙が零れた。

「…ありがとう。」

りみが読み終わると一言だけ言い、潤に手紙を返した。

「なんか、僕ってりみの事泣かしてばかり…だよね?ゴメンね。」

「わ、私が泣き虫なだけだよ。秋帆ちゃんって、潤君の事、本当に好きだったんだね。」

「そうみたいだね。」

「そして、潤君も秋帆ちゃんの事大好きだったんだね。」

「…そうだね。秋帆に出会えて本当に良かったって思えるよ。」

潤が遠くを見ながら言った。

「…本当に素敵な関係だなぁって思っちゃうなぁ。恋人ってだけでも素敵だと思うけど、お互いが信頼していて…。なかなか出来ない事だし、凄いなぁって思っちゃうなぁ~。」

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。」

潤が微笑みながら言った。

「あとね。秋帆ちゃんの手紙に書いてある、潤君の良い所、分かるなぁ~。本当に優しいと思うし、相手をちゃんと思いやれるし。それに、バイトをしている姿も真面目で、一生懸命だし。」

りみが指を折りながら潤の良いところを挙げた。それを聞いた潤は顔を真っ赤にした。

「や、止めてよ。照れるじゃん。そんなの普通だよ。」

「それを普通って言い切れるところも凄いと思うなぁ。」

りみが笑顔で言った。

「や、や、止めてよ~。褒められ慣れてないから恥ずかしいから。」

潤は恥ずかしさのあまり、りみの顔が見れなくなっていた。

「…ねぇ。…潤君?」

「ん?」

「………好き。」

「へ?」

りみの発言に潤はビックリしてりみの顔見た。りみはモジモジとしていた。顔は伏せていた為、見えなかった。

「じ、潤君の良いところって、あ、会う度にふ、増えていくんだよ。初めて会ってからまだ数日だけど…。だ、大好き…で…す。」

伏せていた顔がパッと上がり、目を潤ませ、頬を赤くしたりみが言った。

「りみの気持ちは薄々感じていたよ。そして、今日、手を繋いで、確信に変わったんだけど…。」

「や、やっぱり気付いてた…んだ。」

「うん。紗夜姉さんからも言われたりしてたしね」

潤が苦笑すると、りみは「うぅ…。」と言った。

「りみの気持ちはとても嬉しいよ。でも、返事は待ってくれないかな?正直ね、まだ好きになるって気持ちが分からなくてね。このまま中途半端な気持ちでりみと付き合っちゃうと、りみに対して失礼だし、りみの事、傷つけちゃうかもだから…。墓参りに行ったのも自分の気持ちを整理する為もあったし…。」

「返事はいくらでも待つよ?で、でも、あ、焦らない…でね?あ、あと、潤君、優しいから、私を傷つけたくないからつ、付き合うっていうのも止めてね?」

「もちろん。分かってるよ…。待たしてゴメンね。お言葉に甘えるよ。…りみにも、僕の事好きになって良かったって思って貰いたいから…。」

「ううん。大丈夫だよ。わ、私も潤君にす、好きになって貰えるように頑張ってアピールするね。…何を頑張っていいか分からない…けど。」

りみが苦笑いしながら言う。そんなりみを微笑みながら潤は立ち上がり、カーテンを開けて、空を見た。頭上にはアンタレスが輝いており、潤にはいつも以上に輝いているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




りみりんが拗ねて、「むー!」って頬を膨らます姿が見てみたいと願う作者です。イベントでやってくれないかな?
とうとう2人の仲が進みました。けど、まだまだ物語は続きますよ!
ちなみにですが、作者も高校時代にバンドをやっていてギターでした。この前、久々に弾いたら指をつって「もう弾かない泣」となりました笑
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