日常の中にチョコより甘い香りを   作:ぴぽ

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旅行編の最後です。
旅行に行った後のお話しとなります。


5話

「こんにちは!誰かいませんか?」

潤は蔵の戸を開くと叫んだ。潤とりみが宮島から帰った数日後、テストも無事に(?)終え、日常に戻っていた。潤は宮島からのお土産をPoppin`Partyに渡す為に、有咲の蔵に来ていた。

「おかしいなぁ?返事がない?りみから今日は練習って聞いてたのに。」

潤がボソッと呟き、もう一度叫ぶ為に、息を思いっきり吸い込む。

「はぁーい!」

「ゲホッ!ゲホッ!」

息を吸い込み、叫ぼうとした瞬間、床の扉が開いた。それを確認した潤は叫ぶのを止めようとして、激しく咳き込んでしまった。

「だ、大丈夫!?」

「ゲホッ!だ、大丈夫です。戸山さん、こんにちは。」

心配する香澄を制し、苦笑いを潤は浮かべた。

「本当に大丈夫?」

「うん。お邪魔しても大丈夫かな?」

中に入り、地下の階段近くまで近づいた潤は入室の許可を取った。しかし、香澄は「あー…。」と珍しく煮え切らない態度を取った。

「どうしたの?」

「えっと…。りみりんがね…。」

「え!?りみがどうしたの?」

「えっとね。…見て貰った方か早いから…。どうぞ。」

香澄が潤を招き入れた。そして階段を降りながら「お邪魔します。」と言った。

「潤君。こんにちは。」

他のメンバーから思い思いの挨拶が帰ってきた。しかし、潤の恋人であるりみからは何の返事も無かった。

「(あれ?りみは?階段からは死角で見えない。)」

そんな事を思いながら、階段を降りると頭の上から湯気を出し、顔を真っ赤にしたりみの姿を見つけた。 

「り、りみ!?ど、ど、どうしたの!?」

潤が慌ててりみに駆け寄る。

「あっ…。じゅ、潤くん?」

りみがボソッと呟く。

「えっと。どうゆう事かな?」

潤は他のメンバーから事情を聞く為、振り返った。沙綾と香澄は苦笑いを、有咲は罰の悪そうな顔を、たえは無表情だった。

「あー。まぁ、私達がからかいすぎたからこうなりまして…。」

代表して沙綾が答えた。

 

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時は遡る事、30分前。練習の休憩中に、メンバー全員でお茶をしている最中。会話は自然とりみの旅行の話になっていた。

「りみりーん!宮島はどうだった!?」

「うん。めっっちゃ楽しかったよ!」

りみが山吹ベーカリーのチョココロネを食べながら満面の笑みで答えた。

「紅葉、綺麗だった。」

りみがLINEのグループに投稿してあった写真を見ながらたえは言った。

「写真でこんだけ綺麗なら、実際はもっと綺麗なんだろうな。」

「りみりんも負けないくらい真っ赤になってるけどね。この時、何かあったの?」

沙綾がニヤニヤしながらりみに聞いた。

「…な、なんもないよ?」

目を泳がせながらりみが言うと他の4人は目を光らせた。

「えぇ~!りみりん!教えてよ~!」

「そうだよ。りみ。教えて?」

「皆、りみに悪いよ。…でも気になるなぁ~。」

「止めるか聞くかどっちかにしろよ!…でも…まぁ…気にはなるな。」

4人はりみに近づきながら口々に言った。

「わ、分かったよ。い、言うよ…。」

りみはそう言うと、深呼吸をして口を開いた。

「あ、あ、あのね…。わ、私が紅葉を見てはしゃいじゃって…。クルクル回ってたの。」

「クルクル?りみ、何してんだよ?」

「て、テンションが上がっちゃって…。そ、それで、潤くんがそんな私を見て…よ、よ、妖精さんみたいだって…。」

りみは言い終わると、俯き、恥ずかしそうにモジモジとした。

「りみ?顔上げて?」

「うん?おたえちゃん?」

りみが顔を上げると、手を合わせているたえがいた。その姿を見てりみは訳が分からず、首を傾げた。

「ごちそうさまでした。」

「おたえちゃん!?」

「確かに、言いたくなるくらい甘い話だな。」

「有咲ちゃんまで!?…もぉ~…嫌やぁ…。」

りみは再び俯いてしまった。

「まぁまぁ。ところでりみ?結局旅館に泊まったんだよね?」

スマホの写真を見ながら沙綾は言った。

「うん。潤くんのおじいさんが布団が古くてダメになったからって。宮島で1番高級なところらしいよ。」

「りみりん良いなぁ~!旅館では潤君と何をしたの?」

香澄が無垢な笑顔で言った。その瞬間、蔵はシーンとした。

「あ、あれ?わ、私変なこと言った?」

「…パンドラの箱を開けてしまいやがった…。」

「あ、有咲?ぱ、パンドラの箱って何?」

わたわたする香澄に、有咲がため息をつきながら額に手を当てた。

「ま、まぁまぁ。香澄?き、気にしなくて良いんじゃないかな?だよね?おたえ?」

沙綾がフォローを入れ、たえに同意を求めた。

「うん。カップルが旅行に行って、夜に何も起こらない訳がないから大丈夫!」

とんでもない事を相変わらず表情を変えずに言うたえに「おたえー!」と沙綾は叫んだ。

「沙綾も顔真っ赤だよ?ついでに有咲も。」

「お、お前なー!」

「ねぇねぇ。有咲も沙綾も何で恥ずかしがってるの?ねぇねぇ、何で?あと、パンドラの箱って何!?」

「香澄!うるせー!」

どんちゃん騒ぎをするPoppin`Partyのメンバー達。しかし、りみだけは固まったままだった。それに気付いた沙綾は「りみりん?」と声をかけた。しかし、りみから返事は無かった。

「りみりん?本当に大丈夫?」

沙綾が俯いているりみの顔を覗き込むと、見たことないくらい顔を真っ赤にして、あわあわしていた。

「(あっ。りみりんのキャパを超えちゃった…。)」

沙綾は苦笑いしながら思っていた。

 

─────────────────────

「…なるほど。」

話を聞き終わった潤はボソッと言った。

「潤くん…。ゴメンね?」

復活したりみもボソッと言った。顔は相変わらず赤いままだが…。

「りみは悪くないよ…。てか、誰も悪くない…かな?」

潤の言葉を聞き、有咲と沙綾は顔を見合わせた。ちなみに、香澄とたえは潤の持ってきたお土産の紅葉饅頭を美味しく食べる為にお茶を取りに行っている。

「でも…。まさか香澄があそこまで無知だとは…。」

「あはは…。」

有咲が呆れながら言う。沙綾も苦笑いをした。

「まぁ。戸山さんらしいけど…。」

潤とりみも苦笑いを浮かべた。

「ところでさ…。」

有咲は潤とりみの顔を交互に見ながら言った。

「…本当はどうなんだ?したの?」

「ち、ちょっと!有咲!?」

「だって気になるじゃん!沙綾は気にならないのかよ!」

「気にはなるけど…。」

今更だが、Poppin`Partyは高校生のガールズバンドである。高校生と言えば多感な時期である為、聞いてはいけないと思いつつも、好奇心が勝ってしまった。

「もうはっきりさせた方が良いかな?」

潤はりみの方を見ながら言った。りみは静に頷いた。

「結果から言うと、何もしてないです。」

「…マジ?」

有咲は潤の発言が信じられないと言った顔でりみを見た。りみは小さくまた頷いた。

「マジか…。」

「市ヶ谷さん?僕たちはまだ高校生ですよ?そんな事をするなんてまだ早いですよ。」

潤は真顔で答えた。しかし、心の中では「(まぁ…。興味が無いって言ったら嘘になるかな…。)」と思っていた。

「そ、そっか…。なんて言うか、一宮さんすげーな…。」

「う、うん。潤君が真面目って知ってたけど、ここまでとは。」

潤の発言を聞き、有咲と沙綾は賛辞を送った。

「ありがとう。一応、花咲川の風紀委員の紗夜姉さんの親戚だからね。似たのかな?」

潤は得意気に言った。

「それにしても、りみは大事にして貰ってるな。安心した。」

有咲がりみに言った。

「うん!本当に大事にして貰ってるよ!チョココロネ沢山買って貰ってるし!」

りみが嬉しそうに言うと潤は沙綾の方を見た。沙綾は視線を明後日の方向に向けた。

「じ、じゃあ、旅館では何をしてたの?」

沙綾が話題を変えた。

「えっと。テストがあったから勉強したり、ご飯食べたり…。あっ。そうそう。部屋にね、露天風呂があって、潤くんと一緒に入ったりしたよ。」

「ち、ちょっと!りみ!?」

とんでもない事を言い出すりみに潤は驚きながら止めたが、後の祭りだった。

「仲が宜しいことで…。ごちそうさま。」

「…だな。」

再び、固まってしまったりみを見て、潤は「はぁ~。」とため息をついた。

 

─────────────────────

旅行から帰ってきて1週間を過ぎた。世間は年末に向けて騒がしくなって来ていた。気温も段々と下がってきており、朝方には霜も降っていた。そんな日に潤は自室にて正座をしていた。潤の前には紗夜が仁王立ちで般若のような顔をしており、椅子には日菜が座って、その様子を見て笑っていた。

「潤さん?」

「も、も、申しわけありませんでした!」

紗夜の手には潤の答案用紙が握られていた。

「おねーちゃん!潤君のテスト見せて!」

日菜が言うと、紗夜は手渡した。日菜が点数を見ると最高点が70点、最低点が59点だった。

「潤君?今回もこの点数って?」

「…全部、平均点でした。」

「本当に全部、平均点ジャストって凄いよね!るんってきた!私、出来ないもん!」

「日菜…?出来なくて良いのよ…?」

紗夜は呆れながら言った。

「さて、潤さん。旅行に行く前、凄く、余裕そうに見えましたが?」

「さ、紗夜姉さん?い、一応、現状維持ですよ?り、りみも現状維持でした…し…。」

「貴方の点数の現状維持と、牛込さんの点数の現状維持を一緒にしないで下さい。」

紗夜はギロッと潤を睨み付けた。

「な、なんでりみの点数を紗夜姉さんが知ってるんですか!?」

「本人に聞きました。」

平然と答える紗夜に潤は頭を抱えた。いや、抱えたいのは紗夜の方だろうが…。

「はぁ~。全く…。なぜ、貴方は…。」

「まぁまぁ!おねーちゃん、それ位にしてあげなよ?」

「…そうね。」

意外に早く終わった説教に潤は胸を撫で下ろした。

「ところで、潤君!ギターは練習してる?」

日菜は部屋に置かれていた赤と黒のチェックのエレキギターを見て言った。夏に潤の誕生日に紗夜と日菜が送った物だった。

「一応は…。」

「弾いてみてよ!」

日菜が明るく言うと、潤は頷き、ギターを手に取った。弾き始めたのは「Determination Symphony」だった。潤がRoseliaの中で1番好きな曲だった。決して、上手いとは言えないが潤はなんとか弾ききった。

「だいぶ弾けるようになりましたね。」

「弾けるようにならない方がおかしいですよ。凄い人達に教えて貰ってますから。」

潤は紗夜と日菜には勿論の事、りみ経由で香澄やおたえ、更にバイト先では蘭やモカにも習っていた。

「勉強もそれ位、努力して欲しいです。」

「…善処します。」

潤が小さくなりながら言った。

「潤君って、いっつも善処しますって言うけど、善処したことないよね~。」

日菜が笑いながら言った。

「確かにそうね。」

紗夜が腕を組み、考え出した瞬間、潤の部屋の扉から「コンコン」と音がした。潤が「どうぞ?」と言うとりみが入ってきた。

「こんにちは。紗夜さんも日菜さんもこんにちは。」

「りみちゃん!いらっしゃい!」

「牛込さん。丁度良い所に来たわ。」

紗夜が言うと、りみは「へ?」と呟き、首を傾げた。

「どうしたら潤さんの成績が上がると思いますか?」

「ちょっと紗夜姉さん!?」

潤は叫んだが、りみは「あー。」と言い、納得した。

「なにか良い案はありませんか?」

「塾とかは?」

思案している中、日菜が言った。

「えっと、潤くんは塾に行っても、あまり効果がないような…。」

「りみ!?」

「あ、ご、ゴメンね?」

りみの意見に潤が抗議をした。

「私も牛込さんの意見に賛成です。」

「それで…なんですが…。紗夜さんが潤くんの家庭教師になるのが1番効果がありそうかなぁって…。も、勿論、紗夜さんの迷惑では無ければですが…。」

「りみ!?」

「いえ。それは名案だわ。そうしましょう。早速、来週から始めましょう。」

「で、でも、紗夜姉さん?来年は受験だよね?」

潤は、紗夜の家庭教師を避ける為に言った。潤の脳裏には夏休みの宿題で紗夜のスパルタな指導を思い返していた。

「大丈夫です。潤さんを教える事で私も復習になるので。」

「さ、紗夜さん。私も参加して教えて貰ってもいいですか?」

「勿論です。」

話がどんどん進んでいき、潤は「(ぼ、僕の意見は?)」と思っていた。しかし、そんな事を言ってしまったらと思うと、潤は受け入れるしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




旅行編、時間がかかってしまい申しわけありませんでした。
無事に完結出来て、ホッとしております。
感想&評価もお待ちしております。

ちなみに、潤がりみに大量にチョココロネを買っている理由はコラボ作品である「チョココロネの逆襲」を読んで頂けたらわかります。
沙綾が関係しています!
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